特許第6148910号(P6148910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6148910-破砕処理施設における延焼防止方法。 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148910
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】破砕処理施設における延焼防止方法。
(51)【国際特許分類】
   B02C 23/04 20060101AFI20170607BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   B02C23/04
   A62C3/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-133443(P2013-133443)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-6649(P2015-6649A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池尻 研一
(72)【発明者】
【氏名】辻本 充良
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−191272(JP,A)
【文献】 特開2011−240295(JP,A)
【文献】 特開2006−176262(JP,A)
【文献】 特開昭59−199058(JP,A)
【文献】 米国特許第06076752(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 23/04
A62C 3/00
B09B 3/00
B65G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を破砕する破砕機、破砕機で破砕された廃棄物を移送するコンベア、及び該コンベア下流からの廃棄物を次工程に導くシュートを備えた廃棄物処理設備において、前記シュートには前記コンベアに設けられた火災及び/又は爆発感知手段からの信号によりシュートの通路をコンベア上の破砕物の全てをシュート内に蓄積できる空間を形成し得る位置で遮断する遮断手段、及び該遮断手段により遮断されたシュート内を水で充満させる散水手段を備えた廃棄物処理設備の防火装置。
【請求項2】
廃棄物を破砕機に投入し、破砕された廃棄物をコンベアで移送し、該コンベアの下流からの廃棄物を、シュートを介して次工程に導く廃棄物処理において、コンベアに設けられた火災及び/又は爆発感知手段がコンベア内で火災あるいは爆発を感知した場合、シュートの通路をコンベア上の破砕物の全てをシュート内に蓄積できる空間を形成し得る位置で遮断し、前記コンベア上の廃棄物を該遮断したシュート内に蓄積させ、蓄積した廃棄物に散水して前記シュート内を水で充満させる廃棄物処理における防火方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕処理施設において破砕物中の赤熱金属片などによる破砕物の火災が発生した場合の延焼を効率的に防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材質や大きさが様々な都市ごみや産業廃棄物を処理するに当っては、まず、破砕機で所定の大きさに破砕してから、金属/非金属、可燃物/不燃物などに選別し、性状にあわせて処理している。
【0003】
小型ガスボンベ、スプレー缶など、可燃性物質が収納された容器類は、危険物として予め分離されるが、万一破砕機にこれら危険物が投入された場合に備えて、特許文献1では、破砕機内に窒素ガスを導入し、酸素ガス濃度を8〜11%の濃度地に保持して、可燃性ガスが発生しても爆発限界値とならないようにしている。
【0004】
さらに、金属を含む廃棄物を破砕機で破砕すると、廃棄物中の金属は破砕されるときの摩擦熱により赤熱金属片となる。この赤熱金属片は200℃もの高温となることがあり、このような高温の赤熱金属片に可燃性廃棄物やコンベアベルトが接触すると、これらは次第に加熱されて発火し、火災を発生させる。
【0005】
このような火災は、破砕機で破砕された破砕物を次工程に移送するコンベア上で生じることが多く、また、前述の爆発が生じた場合、コンベア上の破砕物に引火することも多いので、破砕機からのコンベアには火災及び/又は爆発感知手段を設け、感知手段がコンベア上の破砕物の高温部や破砕物の火炎を検知した場合、破砕機とコンベアを停止させ、コンベア上に散水して冷却又は消火を行なっていた。
【0006】
しかし、この方法では破砕物の表面の高温部の冷却や燃焼の消火は可能であるが、破砕物の内部の赤熱金属片まで冷却することはできず、一旦消火した後に、再び火災が発生することがあった。
しかも、破砕物の内部の赤熱金属片が原因で発生する火災は、高温部が広範囲に及んでいることが多いので大規模な火災となり易く、さらに、破砕機から破砕物を移送するコンベアは、次工程の選別機などの上部から破砕物を投入するため上向きに設置されているので、フードで覆われたコンベア内は煙突と同じ機能を果たし、一旦火災が発生すると消火が困難となり設備に重大な損傷を与えることが多かった。
【0007】
このような破砕物の内部の赤熱金属片などが原因で発生する火災を防ぐため、特許文献2では、コンベア部の火災検知信号により、コンベアを逆回転させてコンベア上の破砕物を系外に排出し、そこで散水消火するようにしている。
しかし、この方法では、系外に排出した破砕物を処理するためには、系内に戻すか、別途処理する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−13770号公報
【特許文献2】特開2011−240295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、破砕機で生じた爆発、あるいは破砕物の内部の赤熱金属片などが原因で発生する火災およびその延焼を確実に防ぐとともに、消火後の処理が簡単な消火方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、廃棄物を破砕機に投入し、破砕された廃棄物をコンベアで移送し、該コンベアの下流からの廃棄物を、シュートを介して次工程に導く廃棄物処理において、コンベアに設けられた火災及び/又は爆発感知手段がコンベア内で火災あるいは爆発を感知した場合、シュートの通路を遮断し、前記コンベア上の廃棄物を該遮断したシュート内に蓄積させ、蓄積した廃棄物に散水して前記シュート内を水で充満させることを特徴とするものである。
【0011】
廃棄物として混在する金属材は、破砕機で破砕されて多数の赤熱金属片となり、他の廃棄物の破砕物中に分散されるので、コンベア上の破砕物の表面に、赤熱金属片による高温部又は赤熱金属片が原因で生じた発火炎が検知された場合、その周辺の破砕物中にも赤熱金属片が混在している可能性が高いが、本発明によれば、このような検知部の周辺の破砕物中に混在する赤熱金属片を含めてシュート内に蓄積し、水を充満させて冷却、消火するので、赤熱金属片を原因とする火災およびその延焼を確実に防止できる。また、破砕機内で爆発が生じた場合にも、可燃物を収容していた容器が金属の場合には、赤熱金属片が端物に混在するが、本発明によれば、このような場合にも、破砕機からの引火による火災だけでなく、赤熱金属片を原因とする火災の発生およびその延焼を確実に防止できる。さらに、このような処理を系内で行うことから、消火後の処理も通常通りに行なえるので簡単である。
【0012】
さらに、本発明の方法は、廃棄物を破砕する破砕機、破砕機で破砕された廃棄物を移送するコンベア、及び該コンベア下流からの廃棄物を次工程に導くシュートを備えた廃棄物処理設備において、前記シュートには前記コンベアに設けられた火災及び/又は爆発感知手段からの信号によりシュートの通路を遮断する遮断手段、及び該遮断手段により遮断されたシュート内を水で充満させる散水手段を備えた装置により実施することができる。
【0013】
本発明における火災感知手段としては、破砕機で破砕された廃棄物を移送するコンベアにおいて、火災の原因となるコンベア上の破砕物の高温部や発火炎を検知する感温、感炎検知器が例示でき、爆発感知手段としては、破砕機での爆発を感知する圧力検知器が例示できる。
【0014】
係る火災及び/又は爆発感知手段からの検知信号により破砕機を停止するが、破砕された廃棄物を移送するコンベアは駆動したままとし、該コンベアと次工程を接続するシュートの通路を遮断し、該シュート内にコンベア上の破砕物の全てを蓄積し、破砕物内の赤熱金属片を冷却するため、散水によりシュート内を水で充満させる。
【0015】
したがって、コンベアで移送された破砕物を次工程へ導くシュートおよび該シュートを遮断する遮断手段は、必要な強度と耐水性を備えた部材で構成し、遮断手段で遮断されたシュートの内部には、コンベア上の破砕物の全量が収容可能で、散水される水を充満し得る容器状空間を形成させる必要がある。
【0016】
シュートの遮断手段としては、シュートの底面開口を塞ぐスライド式の防火ダンパが例示されるが、シュート内に上記空間を形成し得るものであれば、手段を問わない。
【0017】
遮断されたシュート内で充満された水により赤熱金属片が冷却された破砕物は、シュート内又は外で固液分離され、次工程で通常通り処理される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、廃棄物等の破砕施設において、大規模火災の原因となる赤熱金属片を確実に冷却し火災の発生および延焼を防止するとともに、かかる処理を系内で行うので、消火処理後の破砕物の処理も通常通り行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の施設のフロー図
図2】第2のコンベア上流部の固液分離手段の例
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施例を図で説明する。1は、破砕機2に廃棄物などの被破砕物を投入するための投入コンベア、3は、破砕機2で破砕された破砕物を次工程の設備に投入するため高所に移送するための第1のコンベア、6は、第1のコンベアで高所に移送された破砕物を次工程の設備に移送する第2のコンベア、4は、第1のコンベアから落下する破砕物を第2のコンベアの上流側に導くシュート、5は該シュートを閉塞する防火ダンパ、10は、第1コンベアの内部を監視する監視カメラである。
破砕機2で破砕され、第1のコンベア3、第2のコンベア6で移送された破砕物は、磁気選別機7で鉄が分離され、選別設備8で、(破砕)粒度差や比重差により、非鉄金属、プラスチック、木材、紙などに選別される。
【0021】
第1のコンベア3の適宜の箇所には、散水器11、感熱検出器12、感炎検出器13が設けられ、コンベア3上の破砕物の表面の高温部の存在や発火部の炎を検知すると、破砕機2を停止させ、貯水槽9のポンプを起動し散水器11から散水して破砕物の表面の高温部の冷却や発火部の消火を行うとともに、シュート4を防火ダンパ5で閉塞する。
【0022】
破砕機は停止するので、破砕機から第1コンベアへの破砕物の排出も途絶えるが、第1のコンベア3の駆動は継続しているので、検出器12,13により高温又は炎が検知されたときに第1のコンベア上に存在した破砕物はすべて、防火ダンパ5により閉塞されたシュート4内に蓄積される。
【0023】
シュート4内に蓄積された破砕物が完全に水没するまで散水すれば、破砕物内に混在する赤熱金属片の冷却・消火は確実に行われる。その後、防火ダンパ5を開き、水没した破砕物を水とともに第2コンベアの上流部に落下させる。第2コンベアは、図2に示すように若干上向きに設置し、上流側のベルトの三方を最後尾のスカート16、及び側面のスカート17で覆うようにしておけば、固形の破砕物はコンベアベルト15により上方に移送され、水はスカート16,17とコンベアベルト15の隙間から流出し、排水枡14内に流入するので、破砕物から水分を分離することができる。
【0024】
水分が分離された破砕物は、通常どおり、次工程の選別施設で選別される。
【0025】
さらに、防火ダンパの開放と同時に粉砕機を起動させることにより、冷却消火によるシステムの休止期間を最小限とすることができる。
図1
図2