特許第6148927号(P6148927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148927
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】電車駆動システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 11/18 20060101AFI20170607BHJP
   B60L 13/00 20060101ALI20170607BHJP
   B60L 9/04 20060101ALI20170607BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20170607BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170607BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   B60L11/18 C
   B60L13/00 D
   B60L9/04 Z
   B60L3/00 S
   H02J7/00 B
   H02J7/00 P
   H02J7/00 S
   H02J7/04 A
   H02J7/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-162523(P2013-162523)
(22)【出願日】2013年8月5日
(65)【公開番号】特開2015-33262(P2015-33262A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】田川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】東海 勝人
(72)【発明者】
【氏名】川村 淳也
(72)【発明者】
【氏名】影山 真佐富
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−284690(JP,A)
【文献】 実開昭57−001003(JP,U)
【文献】 特開昭56−031305(JP,A)
【文献】 特開昭55−127807(JP,A)
【文献】 特開2009−183079(JP,A)
【文献】 特開2010−252524(JP,A)
【文献】 特開2013−123280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
H02J 7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車と、前記電車を駆動する電力を供給するための蓄電池と、前記蓄電池を充電するための充電装置とを有する電車駆動システムであって、
前記電車は、走行用の電動機を有するとともに該電動機を制御する主回路と、電車線から集電する集電装置とを搭載し、前記蓄電池と、該蓄電池を前記主回路に入切可能に接続する開閉器とをさらに搭載し、
前記主回路は、前記集電装置及び蓄電池に同時に接続されず、電車線がき電されているとき、前記集電装置に接続され、電車線が停電したき、前記開閉器が入操作されることによって前記蓄電池に接続され、
前記充電装置は、地上側に設けられ
前記蓄電池の充電時において該蓄電池を保護する装置が、前記充電装置に設けられ、
前記主回路は、その回路に流れる電流が所定の電流上限値を超えないように制御され、
前記蓄電池は、放電電流の許容最大値が前記電流上限値以上であり、
前記電流上限値は、前記主回路が前記集電装置に接続されているか蓄電池に接続されているかにかかわらず同じ値とされ、
前記蓄電池は、リチウムイオン電池であることを特徴とする電車駆動システム。
【請求項2】
前記主回路は、その回路に流れる電流を直並列制御及び抵抗制御によって制御することを特徴とする請求項に記載の電車駆動システム。
【請求項3】
前記主回路は、前記集電装置に接続されているとき、入力電圧が所定の電圧下限値以下に低下したときに入力電流を遮断するように構成されており、前記蓄電池に接続されているとき、入力電圧が前記電圧下限値以下に低下しても入力電流を遮断しないように設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電車駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車を駆動する電力を供給するための電車駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電化区間を走行する鉄道車両として、電車がある。鉄道における電化区間には電車線が設けられている。電車は、電車線から電力が供給されて走行する。通常、電車が運転されている時、電車線は、き電されているが、災害や電気設備の故障等によって停電することがある。電車線が停電すると、電車は、自力走行できないので、駅間で停止することがある。電車線の停電が長引く場合、乗客は、乗務員の誘導に従って、電車から地上に降りて、最寄り駅に徒歩で移動する。しかし、最寄り駅までの徒歩移動は、乗客及び誘導する乗務員にとって容易ではない。また、電車が橋梁上やトンネル内で停止した場合、乗客を車外に誘導することは安全上好ましいとはいえない。また、災害が発生して乗客の迅速な避難が必要となった場合、駅間に停止している電車から地上に降りることは時間が掛かる。また、災害時には、徒歩移動が困難な乗客への支援を駅間において提供することが難しい場合があり得る。更には、一旦乗客を地上に下ろすと、運転再開前に線路内に人がいないという安全確認に時間を要する。
【0003】
走行用の電力を供給する蓄電池を電車に搭載すれば、電車は、電車線停電時においても自力走行が可能になる。このような電車は、蓄電池に走行用のエネルギーを蓄える必要がある。
【0004】
蓄電池及び充電器を搭載し、惰行運転時に架線電力で蓄電池を充電し、減速運転時に発電・電動機で発電して蓄電池を充電し、加速時に蓄電池の電力で発電・電動機を駆動する電気鉄道車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
電化区間では架線から集電して蓄電池を充電し、非電化区間では蓄電池を電源として走行する路面電車が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
車載バッテリ(蓄電池)及び車載充電装置を搭載し、停留所に設けられた剛体架線から集電して車載バッテリを充電し、車載バッテリに蓄積された電力で誘導電動機を駆動して非電化区間を走行する鉄道車両が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
車載バッテリ(蓄電池)及びバッテリ用充電装置を搭載し、電化区間を走行中に車載バッテリを充電し、車載バッテリに蓄積された電力で誘導電動機を駆動して非電化区間を走行する鉄道車両が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
このように、蓄電池を搭載し、架線等の電車線からの集電電流と、蓄電池からの放電電流とを利用する従来の鉄道車両は、集電電流や制動時の回生電力を利用して蓄電池を充電している。このような鉄道車両は、蓄電池を充電する充電装置や電力回生のための装置を搭載するので、高コストである。また、蓄電池を搭載しない既存の電車に充電装置や電力回生のための装置を搭載することは、大規模な改造となり、高コストとなる。
【0009】
電車走行用の電力を供給する蓄電池として、リチウムイオン電池等のエネルギー密度が高い蓄電池を用いると、蓄電池が軽量化される。このような蓄電池を搭載する従来の電車は、エネルギー密度が高い蓄電池を安全に使用するために、蓄電池を保護する装置を搭載している。例えば、図5に示されるように、蓄電池は、蓄電池システム103として構成され、電車に搭載される。蓄電池システム103は、蓄電池モジュール131と、蓄電池モジュール131を保護する保護装置134とを有する。蓄電池モジュール131は、複数の電池セルを接続した電池セル群132と、蓄電池モジュール131の温度を検知する温度センサ133と、温度センサ133が検知した温度や電池セルの端子電圧(セル電圧)等を監視する監視基板135とを有する。監視基板135は、電池セル群132の充放電時の過充電、過放電、異常発熱等を異常として検知する。監視基板135が電池セル群132の異常を検知すると、保護装置134は、保護動作として、電車の主回路105と蓄電池モジュール131との間の電路を遮断する。このように、電車に蓄電池を搭載する場合、蓄電池を保護する装置も搭載するので、一層高コストとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−69510号公報
【特許文献2】特開2008−62680号公報
【特許文献3】特開2008−172857号公報
【特許文献4】特開2008−263741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解決するものであり、低コストに電車を電車線停電時に自力走行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電車駆動システムは、電車と、前記電車を駆動する電力を供給するための蓄電池と、前記蓄電池を充電するための充電装置とを有するものであって、前記電車は、走行用の電動機を有するとともに該電動機を制御する主回路と、電車線から集電する集電装置とを搭載し、前記蓄電池と、該蓄電池を前記主回路に入切可能に接続する開閉器とをさらに搭載し、前記主回路は、前記集電装置及び蓄電池に同時に接続されず、電車線がき電されているとき、前記集電装置に接続され、電車線が停電したき、前記開閉器が入操作されることによって前記蓄電池に接続され、前記充電装置は、地上側に設けられることを特徴とする。
【0013】
この電車駆動システムにおいて、前記蓄電池の充電時において該蓄電池を保護する装置が、前記充電装置に設けられる。
【0014】
この電車駆動システムにおいて、前記主回路は、その回路に流れる電流が所定の電流上限値を超えないように制御され、前記蓄電池は、放電電流の許容最大値が前記電流上限値以上であり、前記電流上限値は、前記主回路が前記集電装置に接続されているか蓄電池に接続されているかにかかわらず同じ値とされる。
【0015】
この電車駆動システムにおいて、前記蓄電池は、リチウムイオン電池である。
【0016】
この電車駆動システムにおいて、前記主回路は、その回路に流れる電流を直並列制御及び抵抗制御によって制御してもよい。
【0017】
この電車駆動システムにおいて、前記主回路は、前記集電装置に接続されているとき、入力電圧が所定の電圧下限値以下に低下したときに入力電流を遮断するように構成されており、前記蓄電池に接続されているとき、入力電圧が前記電圧下限値以下に低下しても入力電流を遮断しないように設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電車駆動システムによれば、電車は、蓄電池を搭載するので、電車線停電時に蓄電池に蓄積されたエネルギーによって自力走行することができる。蓄電池を充電するための充電装置が地上側に設けられるので、車両側に設けるよりも台数を少なくすることができ、低コストとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る電車駆動システムの回路構成図。
図2】同システムの構成図。
図3】同システムにおける電車走行中の回路構成図。
図4】同システムにおける蓄電池を充電中の回路構成図。
図5】従来の電車に搭載される蓄電池システムの回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る電車駆動システムを図1乃至図4を参照して説明する。図1に示されるように、電車駆動システム1は、電車2と、蓄電池3と、充電装置4とを有する。蓄電池3は、電車2を駆動する電力を供給するための二次電池である。充電装置4は、蓄電池3を充電する装置である。電車2は、主回路5と、集電装置6とを搭載する。この電車2は、蓄電池3と、開閉器7とをさらに搭載する。主回路5は、走行用の電動機51を有するとともに電動機51を制御する。集電装置6は、電車線8から集電する装置である。開閉器7は、蓄電池3を主回路5に入切可能に接続する機器である。主回路5は、集電装置6及び蓄電池3に同時に接続されない。主回路5は、電車線8がき電されているとき、集電装置6に接続される。主回路5は、電車線8が停電したき、開閉器7が入操作されることによって蓄電池3に接続される。充電装置4は、車上側ではなく、地上側に設けられる。
【0021】
本実施形態では、電車2は、直流電化区間用の直流電車であり、電車線8は、架線(架空電車線)である。電車線8は、架線に限定されず、例えば、第三軌条方式又は剛体複線式等の電車線であってもよい。通常、電車線8には、変電所から直流がき電される。主回路5及び集電装置6は、本実施形態における電車2だけでなく、蓄電池3を搭載しない既存の電車にも搭載されている。電車線8がき電されているとき、主回路5の主回路断路器MDSが閉路することによって、主回路5が集電装置6に接続される。
【0022】
蓄電池3は、開閉器7を介して主回路5に接続される。既存の電車を改造する場合、蓄電池3及び開閉器7が新たに電車2に搭載される。開閉器7は、切が定位であり、通常、開閉器7が開路しているので、主回路5は、蓄電池3に接続されていない。
【0023】
主回路5の主回路断路器MDSと開閉器7とを同時に閉路することは禁止されており、主回路5は、集電装置6及び蓄電池3に同時に接続されない。蓄電池3を主回路に接続する機会が実際には極めて少ないので、本実施形態では、電車2の電気回路を複雑化しないために、開閉器7の操作ルールとして、集電装置6の使用時には開閉器7を入操作しないようにしている。なお、継電器等を用いたシーケンス制御や機械的なロック機構によって、主回路5が集電装置6及び蓄電池3に同時に接続されないように構成してもよい。
【0024】
本実施形態では、蓄電池3は、リチウムイオン電池である。リチウムイオン電池は、蓄えるエネルギー密度が高いので、電車2を駆動する電力を供給することに適している。また、リチウムイオン電池は、経時的な劣化であるカレンダー劣化が少なく、メモリ効果が無いという利点を有する。
【0025】
リチウムイオン電池には、安全に使用するための制御が必要とされている。主回路の制御方式としてインバータ制御を用いると、主回路を流れる電流の制御が容易である。このため、リチウムイオン電池は、通常、インバータ制御を用いた主回路を有する電車に搭載される。
【0026】
電車駆動システム1では、電車2の主回路5における制御方式は、インバータ制御等に限定されない。本実施形態では、主回路5に流れる電流を直並列制御及び抵抗制御によって制御する。直並列制御及び抵抗制御は、インバータ制御が登場する以前から広く用いられてきた制御方式であり、既存の多くの電車で用いられている。
【0027】
主回路5は、電動機51として、複数の主電動機と(図1では4台)、抵抗器MRとを有する。各々の主電動機は、主電動機電機子と、主電動機界磁コイルとを有する。主回路断路器MDSが閉路されているとき、集電装置6が集電した電流は、遮断器L2、L3、及び高速度減流器L1を介して、主電動機電機子M1〜M4及び主電動機界磁コイルMF1〜MF4に流れる。高速度減流器L1は、過電流を遮断するための機器である。遮断器L2、L3は、常用電流を遮断するための機器である。
【0028】
主回路5は、上記の機器の他に、全回路過電流継電器MOCR、直流変流器DCCT、直流変圧器DCPT、組合せ単位スイッチK1、及びカム接触器K2、K3等を有する。
【0029】
主回路5において、組合せ単位として、主電動機電機子M1、M2と、主電動機界磁コイルMF1、MF2と、抵抗器MRとが直列接続されている。同様に、別の組合せ単位として、主電動機電機子M3、M4と、主電動機界磁コイルMF3、MF4と、別の抵抗器MRとが直列接続されている。
【0030】
主回路5における直並列制御について説明する。電動機51の起動時、組合せ単位スイッチK1が閉路するとともに、カム接触器K2、K3が開路する。このため、全ての主電動機電機子M1〜M4及び抵抗器MRが直列接続され、電動機51の電機子電流が制限される。電動機51は、電機子の回転が速くなると、逆起電力によって電機子電流が減少する。乗務員のノッチ操作等によって、組合せ単位スイッチK1が開路するとともに、カム接触器K2、K3が閉路する。このため、主電動機電機子M1、M2を有する組合せ単位と、主電動機電機子M3、M4を有する組合せ単位との相互接続が並列接続に変更され、電動機51の電機子電流が増加する。
【0031】
主回路5における抵抗制御では、抵抗器MRの抵抗値を変えることによって電機子電流を制御する。
【0032】
インバータ制御を用いない既存の電車を電車駆動システム1における電車2に改造する場合、主回路5をインバータ制御に変更する必要がない。本実施形態のように、主回路5に直並列制御及び抵抗制御を用いた電車に、電車を駆動する電力を供給するための蓄電池3を搭載する場合、主回路5の制御方式を変更せずに蓄電池3を搭載することができ、インバータ制御に変更するよりも低コストとなる。
【0033】
ただし、主回路5に抵抗制御を用いると、抵抗器MRでエネルギー損失が生じる。災害等を想定した対策として、電車線の停電時の自力走行を可能にするために電車駆動システム1を導入する場合、インバータ制御を用いない既存の電車については、インバータ制御に変更して省エネルギー化を図るよりも、既設の制御方式を利用して導入を容易にし、より多くの電車に電車駆動システム1を導入することのほうが重要である。なお、電車2の主回路5における制御方式は、直並列制御及び抵抗制御、並びにインバータ制御に限定されず、例えば、永久直列制御やチョッパ制御等であってもよい。
【0034】
上記のように構成された電車駆動システム1の使用について説明する。通常、電車2が列車として運転されているとき、電車線8はき電されている。主回路5は、集電装置6に接続され、電車2は、電車線8から集電して走行する(集電走行)。このとき、蓄電池3は、主回路5に接続されていないので、充放電しない。
【0035】
災害等の非常時において、列車運転中に電車線8が停電することがある。電車線8が停電すると、電車2は、集電走行ができない。このような非常時に、乗務員は、主回路断路器MDSの切を確認した後、開閉器7を入操作して閉路する。主回路5は、開閉器7の入操作によって蓄電池3に接続される。蓄電池3が主回路5に接続されると、蓄電池3の放電電流が主回路5に流れるので、電車2は、蓄電池3に蓄積されたエネルギーによって自力走行する。
【0036】
なお、開閉器7は、主回路断路器MDSの両側の電路のうち、集電装置6から遠い側の電路に接続されており、蓄電池3が主回路5に接続されるとき、主回路断路器MDSが開路しているので、電車線8は、電車2の蓄電池3によって逆加圧されない。また、電車2の蓄電池3は、電車線8によって充電状態にならない。
【0037】
このように、電車駆動システム1では、電車線8がき電されている通常時の運転において蓄電池3を充放電せず、蓄電池3の使用を電車線の停電時における放電に限定している。電車2に搭載された蓄電池3の用途を放電に限定することは、本願発明の発明者が鉄道における豊富な経験に基づいて考え出したことである。これにより、電車駆動システム1は、簡素なシステムとなり、導入が容易になる。
【0038】
電車線の停電時に電車2が橋梁上又はトンネル内で停止した場合、電車2は、蓄電池3に蓄積されたエネルギーによって自力走行し、橋梁上やトンネル内から脱出する。また、電車線停電時に電車2が駅間に停止した場合、電車2は、最寄り駅まで自力走行する。停止した場所から最寄り駅まで遠く、蓄電池3に蓄積されたエネルギーによって最寄り駅まで到達できない場合であっても、自力走行によって最寄り駅までの距離を縮める。
【0039】
電車線8がき電されている通常時の運転において蓄電池3を充放電しないので、電車2は、集電走行中に蓄電池3を充電する必要がない。このため、電車2は、蓄電池3を充電する装置や電力回生のための装置を搭載する必要が無いので、低コスト化される。また、蓄電池3は、通常時の運転において充放電しないので、充放電に伴う劣化が進行し難い。また、経時劣化して頻繁に充放電する用途には適さなくなった中古の充電池であっても、少なくとも1回の放電ができるものであれば、電車駆動システム1における蓄電池3として有効活用することができる。
【0040】
蓄電池3の充電について説明する。図2に示されるように、充電装置4は、商用電源から受電し、蓄電池3を充電する装置であり、車上側ではなく、地上側、例えば、車両基地に設けられる。電車2に搭載された蓄電池3は、電車2が停止している時、例えば、電車2の定期検査時に充電状態がチェックされ、必要であれば充電される。このような電車2の定期検査は、例えば、交番検査である。充電装置4は、電車2における蓄電池3の付近、又は、蓄電池3と主回路5との間の電気的な接続箇所の付近に配置される。
【0041】
充電装置4は、地上側に設けられるので、各々の電車に充電装置を搭載する場合と比べて、台数を少なくすることができ、低コストとなる。また、充電装置4を電車2に搭載するスペースが不要となるとともに、電車2が軽量化される。蓄電池3が複数の蓄電池ユニットを直列接続したものである場合、各蓄電池ユニットを別々に充電すると、充電装置4の出力電圧が低くて済み、充電装置4が低コストとなる。
【0042】
蓄電池3の充放電時における保護について説明する。図3及び図4に示されるように、蓄電池3は、1つ又は複数の蓄電池モジュール31と、複数の電池セルが接続された電池セル群32と、蓄電池モジュール31の温度を検知する温度センサ33とを有する。蓄電池3を保護するための主な監視項目は、蓄電池電流、セル電圧、モジュール温度である。蓄電池電流は、蓄電池3の充放電電流の大きさである。セル電圧は、電池セルの端子電圧である。モジュール温度は、温度センサ33によって検知される蓄電池モジュール31の温度である。
【0043】
一般的に、蓄電池電流の監視に対応する保護機能として、充放電時の過電流防止がある。セル電圧の監視に対応する保護機能として、放電時の過放電防止と、充電時の過充電防止がある。モジュール温度の監視に対応する保護機能として、充放電時の異常発熱防止と低温使用防止とがある。
【0044】
電車駆動システム1では、蓄電池3は、地上側に設けられた充電装置4によって充電されるので、電車2の走行中は、充電時の保護は行わない。また、蓄電池3の放電時の保護については、主に、主回路5が元々有している保護機能によって提供し、一部の保護を省略している。
【0045】
蓄電池3の放電時の過電流防止は、主回路5が元々有している過電流検知機能によって提供される。主回路5は、過電流検知機能によって、その回路に流れる電流が所定の電流上限値を超えないように制御される。本実施形態では、主回路5の過電流は、全回路過電流継電器MOCRで検知され、高速度減流器L1等によって遮断される。また、前述のように、直並列制御及び抵抗制御によって主回路5に流れる通常の電流が制御される。蓄電池3は、放電電流の許容最大値が主回路5の電流上限値以上である。このような特性を有する蓄電池3が電車2に搭載される。この電流上限値は、主回路5が集電装置6に接続されているか蓄電池3に接続されているかにかかわらず同じ値とされる。
【0046】
したがって、蓄電池3から主回路5に流れる電流は、放電電流の許容最大値を超えないので、蓄電池3の放電時の過電流が防止される。電流上限値は、主回路5が集電装置6に接続されているか蓄電池3に接続されているかにかかわらず同じ値とされるので、設定を変更する必要が無く、主回路5における電流の制御が容易である。既存の電車を改造して蓄電池3を搭載する際、主回路の制御を変更する必要が無い。また、蓄電池3は、放電電流が許容最大値を超えないので、蓄電池3の発熱が抑制され、放電時の異常発熱が防止される。電車駆動システム1は、導入の際、蓄電池3の放電時の過電流防止及び異常発熱防止のための装置を追加する必要が無く、低コストとなる。
【0047】
蓄電池3の放電時の過放電防止については、保護機能が省略される。主回路5は、低電圧検知機能として、入力電圧が所定の電圧下限値以下に低下したときに入力電流を遮断する機能を有する。主回路5の入力電圧は、直流変圧器DCPTによって検知される。入力電圧が電圧下限値以下に低下すると、主回路5の低電圧検知機能によって、入力電流が遮断される。このような低電圧検知機能は、主に、電車線電圧の急変動、特に、電圧低下後の急上昇によって主回路5の機器がダメージを受けることを防止するために設けられる。本実施形態では、主回路5が蓄電池3に接続されるときには、この低電圧検知機能が無効にされる。すなわち、主回路5は、集電装置6に接続されているとき、入力電圧が所定の電圧下限値以下に低下したときに入力電流を遮断するように構成されており、蓄電池3に接続されているとき、入力電圧がこの電圧下限値以下に低下しても入力電流を遮断しないように設定される。この設定のために、例えば、主回路5に設定スイッチが設けられる。開閉器7の入切に連動して低電圧検知機能の有無を自動的に設定するように主回路5を構成してもよい。
【0048】
蓄電池3は、放電時の過放電防止のための保護機能を省略しても安全上の問題が無い。本願発明の発明者が行った確認試験によれば、蓄電池3は、過放電中も放電が維持され、過放電中において、発煙・発火等のおそれが無い。ただし、蓄電池3は、過放電後に著しく性能が劣化し、取替が必要になる。しかし、蓄電池3の放電による走行は、電車線停電で自力走行が必要となる非常時のみであり、蓄電池3が過放電となるような使用頻度は極めて稀である。また、乗客の安全確保の観点から、電車駆動システム1において、災害等によって電車線が停電したときに電車2を自力走行できるようにすることが、蓄電池3の取替コスト削減よりも重要である。
【0049】
このように、主回路5は、蓄電池3に接続されているとき、入力電圧が低下しても入力電流を遮断しないように設定することにより、蓄電池3の公称電圧について、幅広い選択が可能になる。例えば、電車線の標準電圧が1500Vで、電車線電圧が900Vの電圧下限値以下に低下したときに主回路5の低電圧検知機能が動作する場合、蓄電池3に接続されているときに低電圧検知機能を無効にすることにより、公称電圧が電圧下限値以下の蓄電池(例えば600V)を使用することができる。また、主回路5の低電圧検知機能を無効にすることにより、蓄電池3は、蓄えられている電気量を使い切ることになるので、搭載する蓄電池3の電池容量を小さくすることができ、蓄電池3が低コストとなるとともに、充電時における充電時間が短くなる。
【0050】
蓄電池3の放電時の低温使用防止については、保護機能が省略される。蓄電池3は、放電時の温度が低いとき、性能が低下することがある。しかし、乗客の安全確保の観点から、電車駆動システム1では、災害等によって電車線が停電したとき、蓄電池3の性能が低下しても、蓄電池3を放電し、電車2を自力走行させる。
【0051】
蓄電池3の充電時において蓄電池3を保護する装置が、充電装置4に設けられる。充電装置4は、蓄電池3を保護する装置として、蓄電池3を監視する監視基板41と、保護装置42とを有する。充電装置4は、このほかに、電源回路を有する(図示せず)。充電装置4は、地上側に設けられるので、電車2が走行するとき、蓄電池3に接続されない(図3参照)。充電装置4は、電車2が停止しているときに蓄電池3に接続される。蓄電池3の充電中に監視基板41が異常を検知すると、保護装置42を動作させ、電源回路の出力を遮断する(図4参照)。
【0052】
このように、蓄電池3の充電時において蓄電池3を保護する装置(監視基板41及び保護装置42)が、地上側の充電装置4に設けられるので、蓄電池3を安全に充電することができるとともに、電車2が低コストとなる。
【0053】
以上、本実施形態に係る電車駆動システム1によれば、電車2は、蓄電池3を搭載するので、電車線停電時に蓄電池3に蓄積されたエネルギーによって自力走行することができる。蓄電池3を充電するための充電装置4が地上側に設けられるので、電車2ごとに設ける必要が無く、車両側に設けるよりも台数を少なくすることができ、低コストとなる。
【0054】
蓄電池3の充電時において蓄電池3を保護する装置が地上側の充電装置4に設けられるので、蓄電池3を安全に充電することができるとともに、電車2が低コストとなる。
【0055】
主回路5は、その回路に流れる電流が所定の電流上限値を超えないように制御され、蓄電池3は、放電電流の許容最大値が主回路5の電流上限値以上であるので、蓄電池3の放電時の過電流が防止される。電流上限値は、主回路5が集電装置6に接続されているか蓄電池3に接続されているかにかかわらず同じ値とされるので、設定を変更する必要が無い。
【0056】
蓄電池3は、リチウムイオン電池であるので、蓄えるエネルギー密度が高く、電車2を駆動する電力を供給することに適している。
【0057】
主回路5に直並列制御及び抵抗制御を用いた電車に、電車を駆動する電力を供給するための蓄電池3を搭載する場合、主回路5の制御方式を変更せずに蓄電池3を搭載することができ、インバータ制御に変更するよりも低コストとなる。
【0058】
主回路5が蓄電池3に接続されているとき、入力電圧が低下しても入力電流を遮断しないように設定することにより、蓄電池3の公称電圧について、幅広い選択が可能になる。また、蓄電池3は、蓄えられている電気量を使い切ることになるので、搭載する蓄電池3の電池容量を小さくすることができ、蓄電池3が低コストとなる。
【0059】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、本発明において、電車2は、直流電化区間用の直流電車に限定されず、交流電化区間用の交流電車であってもよい。交流電車の場合、蓄電池3は、電車線から集電した交流を降圧して直流に整流した後の主回路に開閉器7を介して接続される。
【符号の説明】
【0060】
1 電車駆動システム
2 電車
3 蓄電池
4 充電装置
5 主回路
51 電動機
6 集電装置
7 開閉器
8 電車線
図1
図2
図3
図4
図5