(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、実施例1及び実施例2を基に
図1〜
図14を参照して説明する。
【0011】
(実施例1)
まず、実施例1のシートセパレータ51について、
図1〜
図10を参照して説明する。
図1及び
図2において、シートセパレータ51は、直棒状のベースフレーム1と、ベースフレーム1の一端側から概ね直交方向に延出する基腕部2と、ベースフレーム1の他端側から基腕部2と対向するように延出する支持腕部3と、を有している。すなわち、基腕部2と支持腕部3とは、所定の間隔で対向配置されている。
ベースフレーム1は、例えば金属(アルミニウム等)の押出材により角管状に形成される。
基腕部2は、例えば、金属(アルミニウム等)の押出材により角柱状に形成される。
支持腕部3は、略弓状を呈し、先端側が基腕部2に対して離接する方向(
図1の矢印DR1方向)に可撓性を有して形成されている。材質は、高強度で可撓性を有する材料(例えば、繊維強化樹脂)で形成されている。
【0012】
基腕部2の先端側には、支持腕部3に向かって延出する平板状のガイド部2aが形成されている。
また、ガイド部2aのベースフレーム1側の上面2a1に近接してペグ2bが設けられている。ペグ2bは、
図1の紙面表裏方向を軸とする円柱状に形成されている。
支持腕部3の先端部における基腕部2とは反対側の面3bに、切り込み部3aが形成されている。
【0013】
ペグ2bと、切り込み部3aとの間には、線状部材として輪状の糸5が掛け渡されている。
輪状の糸5は、掛け渡された状態の正面視で、
図1に示されるように、ペグ2bの周面2b1からガイド部2aの上面2a1に沿って切り込み部3aとの間を繋ぐ基準糸5a(第2の線状部材)と、ペグ2bの周面2b1におけるベースフレーム1側の部位から切り込み部3aとの間を繋ぐ分離糸5b(第1の線状部材)と、の2本に分かれている。すなわち、基準糸5aと分離糸5bとは、
図1の上下方向(第1の方向)に離隔して張架されている。
この掛け渡しでは、支持腕部3の弾性反発力により、基準糸5a及び分離糸5bが弛むことない所定の張力で、基腕部2と支持腕部3との間に張架されている。
【0014】
線状部材である糸5は、以下の各特性を備えるものが好ましい。
・高強度であること(高い張力を付与できる)
・高剛性であること(伸び難い)
・物性劣化し難いこと(弱くなり難い、錆びない)
・耐切断性を有する(できるだけ切れない)
・ワーク(板材)を傷つけない(断面形状が鋭利でない)
・極細線が入手可能である(例えば直径0.6mm以下)
・入手容易性(低コスト、流通性に優れる)
線状部材(糸5)は、特に耐切断性を有する糸(いわゆる耐切断糸)であるとよく、上記各特性を考慮して、例えば、次のような化学繊維が好適である。
・パラ系アラミド繊維 例:ケブラー(登録商標)
・超高分子量ポリエチレン繊維 例:ダイニーマ(登録商標)
・ポリアリレート繊維 例:ベクトラン(登録商標)
・PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維 例:ザイロン(登録商標)
・炭素繊維 例:トレカ(登録商標)
また、化学繊維以外であってもよく、例えばステンレスワイヤを使用できる。
【0015】
糸5の線径は限定されない。線径は小さい方が好ましい。例えば、直径0.3mm〜0.6mmであるとよい。0.3mm未満であるとよりよい。
【0016】
基腕部2の支持腕部3とは反対側の面に、エアシリンダ6が取り付けられている。
エアシリンダ6は、外部(例えば制御部CT:
図9参照)からの指示でロッド6aを
図1の上下方向に出入りさせるよう動作する。
図1は、ロッド6aを押し出した状態が示され、
図2は、ロッド6aを引き込んだ状態が示されている。
【0017】
基腕部2は、
図1の紙面に直交する揺動軸線CL1まわりに揺動するようクランパ7を軸支している。
クランパ7の一端側(
図1の左方側)は、ロッド6aに連結されている。クランパ7の他端側には、ガイド部2a側にL字状に屈曲してなる爪部7aが形成されている。
【0018】
クランパ7は、エアシリンダ6の動作でロッド6aが引き込まれると、爪部7aがガイド部2aの上方側に離隔した分離姿勢から時計回り方向(矢印DR2)に回動し、爪部7aがガイド部2aに対し基準糸5a及び分離糸5bを押しつけるクランプ姿勢となる。
すなわち、クランパ7は、分離姿勢(
図1に示される姿勢)とクランプ姿勢(
図2に示される姿勢)との間で姿勢転換可能とされている。
クランパ7は、分離姿勢において、基準糸5aと分離糸5bとの離隔を許容する。
クランパ7は、クランプ姿勢において、クランパ7の爪部7aの先端部7a1が、ガイド部2aの上面2a1に対して基準糸5a及び分離糸5bを押しつける。
【0019】
詳しくは、クランパ7は、分離姿勢からクランプ姿勢への回動において、爪部7aの先端部7a1が分離糸5bを上方から押し付ける。そして、クランプ姿勢において、分離糸5bと基準糸5aとを、クランパ7の先端部7a1とガイド部2aの上面2a1との間に挟持する。
【0020】
図3(a)は、分離姿勢のクランパ7とガイド部2aとを、基準糸5a及び分離糸5bと共に、支持腕部3側から見た図である。
図3(b)は、クランプ姿勢のクランパ7とガイド部2aとを、基準糸5a及び分離糸5bと共に、支持腕部3側から見た図である。
これらの図に示されるように、分離姿勢において
図3の上下方向(第1の方向)に離隔していた基準糸5aと分離糸5bとは、クランプ姿勢において、クランパ7とガイド部2aとの間に、左右方向(第2の方向)に並列状態で挟持される。
すなわち、クランプ姿勢において、基準糸5a及び分離糸5bは、
図2に示される正面視で、見かけ上、1本の糸となる。
図3(b)において、基準糸5aと分離糸5bとの左右位置は逆となる場合もあり得る。
基準糸5aと分離糸5bとが並列される方向は、離隔方向に対して交わる方向であればよい。この例では、直交する方向となっている。
【0021】
クランパ7が分離姿勢からクランプ姿勢に姿勢転換すると、分離糸5bは、爪部7aにより基準糸5a側に押し込まれる。そのため、糸5の全体の張力が高くなり、可撓性を有する支持腕部3は、分離姿勢のときよりも基腕部2側に撓んだ状態となる(矢印DR3参照)。
【0022】
次に、上述の構成を有するシートセパレータ51を用いて、端面が揃っていない不揃いの積重体Wtから最上位の一枚である板材W1を分離する作業の一例を、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4及び
図5において、積重体Wtは、最上位の板材W1及び上から二枚目の板材W2のみが示されている。
【0023】
シートセパレータ51は、例えばロボットハンドや搬入装置に取り付けられて、制御装置の制御により、例えば以下の分離作業を行う。
この場合、エアシリンダ6の動作は、入力部J(例えばスイッチやボタン等)を介した作業者Hからの指示に基づき、制御部CTの制御の下、実行される(
図9参照)。シートセパレータ51自体の姿勢や位置を変更させる駆動部Mの動作も、入力部Jを介した指示により、制御部CTの制御の下、実行される(
図9参照)。
また、シートセパレータ51が、作業者が手に持って扱えるハンディサイズで構成されている場合は、分離作業を作業者の手動作業としてもよい。
【0024】
<分離作業>
最上位の板材W1の分離作業に際し、まず、エアシリンダ6を動作させてロッド6aを引き込み、クランパ7を
図2に示されるクランプ姿勢とする。
これにより、糸5は、基準糸5aと分離糸5bとが
図2の上下方向において実質的に一体化され、一本の糸として振る舞う。
図2の紙面前後方向では、最大で支持腕部3の厚み分だけ分離しているが、ここでは便宜的に、このクランプ姿勢で上下方向に実質一体化された基準糸5a及び分離糸5bとを、一体糸5Mと称する。
【0025】
図4に示されるように、シートセパレータ51を、一体糸5Mが板材W1,W2の角部W1a,W2aの手前の位置P1に位置するよう移動する。このとき、一体糸5Mと角部W2aとの距離が、一体糸5Mと角部W1aとの距離よりも近くなるように、ベースフレーム1の向きを調節する。この調節においては、一体糸5Mにおける基準糸5aと分離糸5bとの並列方向(第2の方向)が、板材W1の延在方向と平行になるようにする。
【0026】
次に、一体糸5Mが、上から二枚目の板材W2の角部W2a近傍領域の上面W2a1に接触するように位置P2まで移動する。
【0027】
次に、一体糸5Mを上面W2a1に対し摺接させつつ、最上位の板材W1の下側に位置するように板材W1と板材W2との間に滑り込ませる。これにより、一体糸5Mが
図4の実線で示される位置に移動する。
【0028】
一体糸5Mを上面W2a1に接触させてからの摺動において、
図4に示されるように、角部W1aが角部W2aよりも基腕部2側にある場合は、一体糸5Mの基腕部2側の位置を支持腕部3側よりも下げるとよい(矢印DR4)。これにより、一体糸5Mが板材W1の角部W1aよりも下側に位置して、板材W1と板材W2との間への進入がより容易になる。
すなわち、一体糸5Mを、板材W2上において摺動させる際に、角部W2aに対して板材W1の角部W1aのある側を下げるとよい。これにより、板材W1と板材W2との間に一体糸5Mをより良好に進入させることができる。
【0029】
一体糸5Mが板材W1と板材W2との間に滑り込んで進入したら、エアシリンダ6を動作させてロッド6aを延ばす。
これにより、
図5に示されるように、クランパ7が回動し(矢印DR5)、爪部7aが分離糸5bから離れて分離糸5bを開放する。
この開放で、分離糸5bは、張力によって待機姿勢の位置に復帰する。
この復帰に伴い、板材W1は持ち上げられ(矢印DR6)、板材W2から分離する。分離した板材W1は、吸着装置や手などにより容易に移動できる。
【0030】
上述の分離作業例において、一体糸5Mが板材W1と板材W2との間に進入した状態で、エアシリンダ6を動作させず、最上位の板材W1を吸着装置で吸着し、持ち上げでもよい。
この方法では、二枚目の板材W2は、一体糸5Mに押さえられて上方への移動が規制される。そのため、板材W2は最上位の板材W1に追従できず、板材W1が板材W2から分離して吸い上げられる。
【0031】
次に、積重体Wtが不揃いではなく整列して積み重ねられている場合の分離方法例について、
図6を参照して説明する。
【0032】
まず、
図6(a)において、積重体Wtにおける最上位の板材W1と上から二枚目の板材W2との境界となる高さ位置に、クランプ姿勢での一体糸5Mを位置させる。このとき、一体糸5Mの姿勢を、板材W1と板材W2との境界面と平行にすることが望ましい。換言するならば、一体糸5Mにおける基準糸5aと分離糸5bとの並列方向(第2の方向)が、板材W1の延在方向と平行になるようにする。
次いで、板材W1と板材W2との境界部位の角部P3に向け移動させる。
【0033】
図6(b)に示されるように、一体糸5Mが角部P3に当接したら、さらに一体糸5Mを押し込む。一体糸5Mは、基準糸5aと分離糸5bとからなるが、上述のように、この二本は、押し込み方向に並列しているため、上下方向の厚さは一本の線径分しかない。
線径は、上述のように、好ましくは0.3〜0.5mm、或いは0.3mm以下の極小径がより好ましいとされているので、これにより、一体糸5Mは、
図6(c)に示されるように、板材W1と板材W2との間に分け入って進入する。
【0034】
一体糸5Mをある程度進入させたら、クランパ7をクランプ姿勢から分離姿勢に転換させる。この姿勢転換で、分離糸5bに対する爪部7aによる押さえが外れる。
これにより、
図6(d)に示されるように、基準糸5aの位置は変わらないまま分離糸5bのみが張力により上方に持ち上がる。
板材W2は基準糸5aにより上方移動が規制されるので、板材W1のみが分離糸5bの上方移動に伴い上方に持ち上げられる。
従って、板材W1のみを板材W2から分離できる。
【0035】
このように、シートセパレータ51は、積重体が、整列して積み重ねられたものであっても、また、不揃いに積重されたものであっても、良好に最上位の一枚を二枚目から分離することができる。
シートセパレータ51は、最上位の一枚の分離に磁力を利用しないので、板材が非磁性体であっても使用可能である。
シートセパレータ51は、最上位の一枚の分離に磁力を利用しないので、板材を磁化するおそれがない。従って、製品の帯磁が不良とされる場合にも使用可能である。
このように、シートセパレータ51は、より広い条件下での使用が可能である。
【0036】
次に、シートセパレータ51が別の装置に搭載された例を説明する。
ここでは、別の装置に搭載された例として、シートセパレータ51をロボットハンド装置RHに搭載した例を、
図7を参照して説明する。
図7は、ロボットハンド装置RHの先端部を示す斜視図である。
【0037】
ロボットハンド装置RHは、図示しない本体部と本体部から直列的に連結された複数の腕部を有する。
図7では、先端側の腕部11と、腕部11の先端側に設けられた関節12と、関節12を介して腕部11のさらに先端側となる最先端に連結された腕部13と、が示されている。
腕部13には吸着装置(吸着部)14が取り付けられており、吸着装置14にはシートセパレータ51Aが取り付けられている。
吸着装置14は、複数の吸盤部14cを備え、その吸盤部14cによって板材を吸着して保持することができる装置である。
【0038】
吸着装置14は、腕部13に連結するための座板14aと、座板14aが固定された二つの桟14b1及び矩形の枠である外枠14b2を有する横格子状のフレーム14bと、を備えている。
フレーム14bの桟14b1及び外枠14b2には、それぞれバキューム式の吸盤部14cが複数取り付けられている。
吸盤部14cは、
図7の下方側に位置した板材を吸着して保持すると共に、フレーム14bに対して、腕部13の軸方向に所定ストロークで昇降するようになっている。すなわち、フレーム14bを移動させることなく吸着した板材を持ち上げることができるようになっている。
【0039】
シートセパレータ51Aは、上述のシートセパレータ51のベースフレーム1を、吸着装置14のフレーム14bの外枠14b2に置き換えたものと実質的に同じである。
すなわち、外枠14b2の一つの枠部14b2aに、基腕部2及びエアシリンダ6が取り付けられ、枠部14b2aに対向する枠部14b2bに、支持腕部3が取り付けられている。
【0040】
ロボットハンド装置RHは、そのブロック図である
図10に示されるように、作業者H又は外部の主制御部CTMからの入力部JAを介した指示入力に基づいて、制御部CTAにより、エアシリンダ6,駆動部MA,及び吸盤部14cの動作が制御される。駆動部MAは、ロボットハンド装置RH全体の動作を実行する。
すなわち、制御部CTAは、ロボットハンド装置RHを動作させる駆動部MAを制御し、
図4及び
図5を参照して説明した上述の分離作業と同様にして、シートセパレータ51Aの一体糸5Mを、板材W1と板材W2との間に進入させる。
【0041】
この進入作業においては、ロボットハンド装置RHによる吸着装置14の姿勢制御において、外枠14b2の一体糸5Mのある側を下げた姿勢、すなわち、一体糸5Mとは反対側の位置を高く傾斜させた状態で行うとよい。この場合、一体糸5Mの進入後、外枠14b2を水平姿勢にする。
【0042】
その後、吸盤部14cを駆動させ、最上位の板材W1を吸着して保持する。
その保持状態で、複数の吸盤部14cを上昇させて板材W1を板材W2から離れるように移動させる。
板材W2は、その上昇が一体糸5により押さえられた阻止されるので、板材W1は板材W2から分離して上昇する。
【0043】
吸盤部14cの上昇の際に、クランパ7をクランプ姿勢から分離姿勢に姿勢転換して、分離糸5bにより板材W1を持ち上げるよう付勢してもよい。
【0044】
吸着装置14は、
図8に示されるように、先端部14c1の高さ位置HT1と、シートセパレータ51Aのガイド部2aの上面2a1の高さ位置とが、概ね一致している。すなわち、吸盤部14cで吸着した板材W1の被吸着面とほぼ同じ高さに、一体糸5Mの少なくとも基準糸5aが位置するようになっている。すなわち、基準糸5aは板材W1の表面(被吸着面)と略平行に張架されている。
これにより、最上位の板材W1と二枚目の板材W2との間に一体糸5Mを進入させた際に、吸盤部14cの先端部14c1が板材W1に自然に当接するようになるので、吸盤部14cにより無理なく板材W1を吸着することができる。
また、吸盤部14cは、一体糸5Mを板材W1と板材W2との間に進入させる際に、少なくとも板材の厚さ分以上、上方に退避していてもよい。
【0045】
(実施例2)
次に、実施例2のシートセパレータ52について、
図11〜
図14を参照して説明する。
シートセパレータ52は、糸繰り出し部53(第1の線状部材支持体)と糸張設部54(第2の線状部材支持体)との組で構成され、例えば加工に供される板材Wが載置される略直方体の置き台31の脇に設置される。
詳しくは、
図11に示されるように、糸繰り出し部53及び糸張設部54は、置き台31における隣接する二つの側面である側面31a及び側面31bに、それぞれ配設されている。
【0046】
糸繰り出し部53は、側面31aに沿って設けられたガイドレール53aと、ガイドレール53a上を駆動部MB1の駆動により移動する移動部53b(第1の移動部)と、移動部53bに立設されて上方に延びるガイド支柱53cと、ガイド支柱53cに駆動部MB2の駆動により上下移動可能に支持された糸中継部53d(第1の張架部)と、を有している。
移動部53bの移動方向は、通常水平方向とされる。
駆動部MB1及び駆動部MB2の動作は、制御部CTB(
図14参照)により制御される。
【0047】
図12に詳しく示されるように、移動部53bは、線状部材としての糸55を繰り出す糸供給部53b1を有している。糸供給部53b1にはガイドリング53b2が取り付けられており、糸55は、糸供給部53b1からガイドリング53b2内を通して糸中継部53dに向け繰り出されるようになっている。
【0048】
線状部材としての糸55は、実施例1における糸5と同様に耐切断糸とされる。適用可能な材質は糸5と同じである。適用可能な線径も糸5と同じである。
【0049】
糸中継部53dは、上下方向を軸線とする円筒状のペグ53d1と、ペグ53d1に対して糸供給部53b1側に配置されたガイドリング53d2と、を有している。
ペグ53d1は、その軸線に直交し、置き台31に対して離接する方向に開けられた貫通孔53d3を有している。
糸供給部53b1からガイドリング53b2内を通して繰り出された糸55は、ガイドリング53d2を通して貫通孔53d3のガイド支柱53c側の開口から入り置き台31側の開口から引き出される。
糸供給部53b1は、張力付与部であり、糸55に対し引き込む方向に適切な張力を付与するようになっている。この張力付与は、例えばアクチュエータACにより制御部CTBの制御の下、実行される。
【0050】
糸張設部54は、側面31bに沿うガイドレール54aと、ガイドレール上を駆動部MB3の駆動により移動する移動部54b(第2の移動部)と、移動部54bに立設されて上方に延びるガイド支柱54cと、ガイド支柱54cに駆動部MB4の駆動により上下移動可能に支持された糸支持部54d(第2の張架部)と、を有している。移動部54bの移動方向は、通常水平方向とされる。
糸支持部54dは、上下方向を軸線とする円筒状のペグ54d1を有している。
駆動部MB3及び駆動部MB4の動作は、制御部CTB(
図14参照)により制御される。
【0051】
図12に詳しく示されるように、ペグ54d1は、その軸線に直交し置き台31に対して離接する方向に開けられた貫通孔54d3を有している。
糸中継部53dの貫通孔53d3から引き出された糸55は、糸支持部54dの貫通孔54d3に挿通され結わえられて固定されている。
上述のように、糸供給部53b1が糸55に対し張力を付与するため、糸支持部54dを一端側として糸中継部53dを介して張架された糸55は、常に弛みなく所定の張力で張られた状態となる。
すなわち、糸繰り出し部53の貫通孔53d3の置き台31側の出口を一方の張架部P4とし、糸張設部54の貫通孔54d3の置き台31側の出口を他方の張架部P5としたときに、張架部P4と張架部P5との間に糸55が張架される。
【0052】
糸繰り出し部53において、移動部53bは、駆動部MB1によりガイドレール53a上を水平移動し、糸中継部53dがガイド支柱53c上を駆動部MB2により上下移動する。
また、糸張設部54において、移動部54bは、駆動部MB3によりガイドレール54a上を水平移動し、糸支持部54dがガイド支柱54c上を駆動部MB4により上下移動する。
【0053】
これにより、
図13に示されるように、張架部P4の取り得る範囲は、平面SF4で示される矩形範囲となり、張架部P5の取り得る範囲は、平面SF5で示される矩形範囲となる。
従って、糸55は、平面SF4上の任意の点P4mと、平面SF5上の任意の点P5mとを結んだ線分に相当する姿勢で張架され得る。
すなわち、糸55が存在し得る空間領域AR1は、平面SF4及び平面SF5を直交する斜面とする一点鎖線で囲まれた台形柱の内部領域となる。
【0054】
図11及び
図12において、置き台31には、複数の板材Wが、不揃いに積み重ねられて積重体WtBを形成している。
図11では、糸55が積重体WtBの上方にあるように、移動部53b及び移動部54bが、それぞれガイド支柱53c及びガイド支柱54c上に位置している。
図12では、糸55が、最上位の板材W1と、二枚目の板材W2との間に進入した状態とされている。
【0055】
上述のように、シートセパレータ52では、糸55の張架姿勢を、空間領域AR1内で任意に与えることができる。
そこで、移動部53b,移動部54b,糸中継部53d,及び糸支持部54dを適宜移動させ、糸55の張架方向を、積重体Wtの板材の延在方向と平行にする。そして、積重体Wtにおける最上位の板材W1と二枚目の板材W2との境界と同じ高さに位置させた後、板材W1と板材W2間に進入させる。この状態が
図12に示される。
【0056】
糸55が板材W1と板材W2との間の奥方に十分に進入させた状態で、例えば、
図7で説明した吸着装置14などにより板材W1を吸着して持ち上げる。
板材W2は、糸55により上方移動が規制されるので、板材W1のみを分離させることができる。
また、糸55が板材W1と板材W2との間の奥方に十分に進入させたら、移動部53b及び移動部54bを上方に移動させることで、糸中継部53dと糸支持部54dを上方に移動させてもよい。
これにより、板材W1が持ち上げられ、板材W2と分離するので、吸着装置14や手作業により板材W2を搬送することができる。
【0057】
駆動部MB1〜MB4の動作は、作業者Hや外部の主制御部CTMによる入力部JBを介した指示に基づいて、制御部CTBが制御する。
実施例2における糸55の扱い、すなわち、最上位の板材W1と二枚目の板材W2との間に糸55を進入させる作業は、実施例1と同様に実行することができる。
【0058】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0059】
糸5,55の断面形状は、円形に限定されない。例えば、楕円等の扁平状であってもよい。この場合、上下方向が小さく(薄く)なる姿勢で張架する。
これにより、各板材間への進入性を確保しつつ、より高強度とすることができる。
【0060】
シートセパレータ51,51A,52を用いた分離作業で分離する板材は、積重体の最上位の一枚に限定されない。
一体糸5Mを、積重体の上からN(Nは2以上の整数)枚目の板材と、上から(N+1)枚目の板材との間に進入させて、N枚の板材を、(N+1)枚目の板材から分離するようにしてもよい。
シートセパレータ51,51Aにおける糸5は、輪状でなくてもよい。
基準糸5aと分離糸5bとが、別体の糸として、ペグ2bの上下端と支持腕部3とに張架されていてもよい。
基腕部2と支持腕部3とが対向配置されている所定の間隔は、上述のように、一体糸5Mが、上下に重ねられた一対の板材の間に十分進入できる程度である。例えば、矩形板材の短辺の長さの半分以上あるとよりよい。
また、短辺の長さ以上あれば、一体糸5Mを、上下に重ねられた一対の板材の間をその板材のほぼ全領域に進入移動させたり、或いは一度通過させることができる。これにより、一対の板材同士の密着度合いが低減するので、分離作業がより容易になる。