(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)プラノプロフェン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)オロパタジン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有する、水性組成物。
さらに、テルペノイド、エデト酸及びその塩、並びに、ジブチルヒドロキシトルエンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の水性組成物。
ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、及びポリイミドのいずれか1種、これらの共重合体、または2種以上の混合体から構成される容器に収容される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性組成物。
プラノプロフェン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する水性組成物に、オロパタジン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、プラノプロフェン含有水性組成物の光安定化方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において配合割合の単位「%」は「w/v%」を意味し、「g/100mL」と同義である。
【0023】
本明細書中、特に記載の無い限り、略号「POE」はポリオキシエチレンを、略号「POP」はポリオキシプロピレンを、それぞれ意味する。
【0024】
本実施形態に係る水性組成物は、(A)プラノプロフェン及び/又はその塩(以下、単に「(A)成分」と表記することもある。)を含有する。
【0025】
プラノプロフェンは、α−メチル−5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−b]ピリジン−7−酢酸とも称される公知化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0026】
また、プラノプロフェンの塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような塩として、具体的には、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩]や、有機塩基との塩[例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩]等が挙げられる。
【0027】
プラノプロフェン及び/又はその塩には、水和物の形態のものも含まれる。
【0028】
本実施形態に係る水性組成物に用いられる(A)成分として、プラノプロフェン及びその塩の中から、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。これらの中でも、(A)成分として、プラノプロフェンが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る水性組成物において、(A)成分の含有量は特に限定されず、(A)成分の種類、該水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(A)成分の含有量として、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準に、(A)成分の総含有量が、0.001〜0.5w/v%であることが好ましく、0.002〜0.2w/v%であることがより好ましく、0.005〜0.1w/v%であることがさらに好ましく、0.01〜0.1w/v%であることが特に好ましい。
【0030】
本実施形態に係る水性組成物は、(B)オロパタジン及び/又はその塩(以下、単に「(B)成分」と表記することもある。)を含有する。
【0031】
オロパタジンは、化学名が(Z)−11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]−オキセピン−2−酢酸である公知化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0032】
オロパタジンの塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような塩として具体的には、無機酸との塩[例えば、塩酸塩、臭素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ナトリウム−オルトリン酸塩、カリウム水素硫酸塩等]や、有機酸との塩[例えば、酢酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、ピルビン酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、フェニル酢酸塩、桂皮酸塩、サリチル酸塩、2−フェノキシ安息香酸塩等]が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係る水性組成物に用いられる(B)成分として、オロパタジン及びその塩の中から1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。プラノプロフェンの光安定性を改善するという観点から、(B)成分として、なかでも無機酸との塩が好ましく、塩酸塩が特に好ましい。
【0034】
本実施形態に係る水性組成物において、(B)成分の含有量は特に限定されず、(B)成分の種類、併用する(A)成分の種類及び含有量、該水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(B)成分の含有量として、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準に、(B)成分の総含有量が、0.002〜1w/v%であることが好ましく、0.005〜0.5w/v%であることがより好ましく、0.01〜0.2w/v%であることがさらに好ましく、0.05〜0.2w/v%であることが特に好ましい。上記(B)成分の含有量は、プラノプロフェン含有水性組成物において、プラノプロフェンの光安定性を改善するという効果の観点から好適である。
【0035】
また、本実施形態に係る水性組成物において、(A)成分に対する(B)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(B)成分の種類、該水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(B)成分の含有比率として、例えば、本実施形態に係る水性組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(B)成分の総含有量が、0.01〜200質量部であることが好ましく、0.1〜50質量部であることがより好ましく、0.5〜20質量部であることがさらに好ましく、1〜10質量部であることが特に好ましい。上記(A)成分に対する(B)成分の含有比率は、プラノプロフェン含有水性組成物において、プラノプロフェンの光安定性を改善するという効果の観点から好適である。
【0036】
本実施形態に係る水性組成物は、さらに、テルペノイド、エデト酸及びその塩、並びに、ジブチルヒドロキシトルエンからなる群より選択される少なくとも1種(以下、単に「(C)成分」と表記することもある。)を含有することが好ましい。(A)成分、(B)成分を含有する水性組成物に(C)成分を配合することによって、プラノプロフェンの光安定性をより一層向上させることができる。
【0037】
本実施形態に係る水性組成物に用いられるテルペノイドは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。本実施形態に係る水性組成物に用いられるテルペノイドとして、例えば、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、これらの誘導体等を用いることができる。これらの化合物はd体、l体及びdl体のいずれであってもよい。また、本実施形態に係る水性組成物において、テルペノイドとして、上記化合物を含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油等が挙げられる。
【0038】
本実施形態に係る水性組成物に用いられるテルペノイドとして、上記の化合物を1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。プラノプロフェンの光安定性を向上させるという観点から、テルペノイドとして、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、ハッカ油が好ましく、メントール、カンフル、ボルネオールが更に好ましく、l−メントール、dl−メントール等のメントールが特に好ましい。
【0039】
本実施形態に係る水性組成物における、テルペノイドの含有量は特に限定されず、併用する(A)成分、(B)成分の種類及び含有量、該水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。テルペノイドの含有量として、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準に、テルペノイドの総含有量が、0.00005〜0.3w/v%であることが好ましく、0.0002〜0.1w/v%であることがより好ましく、0.001〜0.08w/v%であることがさらに好ましく、0.005〜0.05w/v%であることが特に好ましい。なお、テルペノイドを含む精油を使用する場合は、水性組成物中に含有される精油中のテルペノイドが上記含有量を満たすように設定することができる。上記テルペノイドの含有量は、プラノプロフェンの光安定性を向上させるという観点から好適である。
【0040】
本実施形態に係る水性組成物に用いられるエデト酸(エチレンジアミン四酢酸、EDTA)又はその塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。本実施形態に係る水性組成物に用いられるエデト酸の塩として、例えば、上記エデト酸と無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩]が挙げられる。エデト酸又はその塩には、水和物の形態のもの、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物等、も含まれる。
【0041】
本実施形態に係る水性組成物に用いられるエデト酸又はその塩として、上記の化合物を1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。プラノプロフェンの光安定性を向上させるという観点から、本実施形態に係る水性組成物に用いられるエデト酸又はその塩として、なかでもエチレンジアミン四酢酸又はその塩が好ましく、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム又はその水和物が更に好ましく、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(以下、エデト酸ナトリウムともいう。)が特に好ましい。
【0042】
本実施形態に係る水性組成物における、エデト酸又はその塩の含有量は特に限定されず、併用する(A)成分、(B)成分の種類及び含有量、該水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。エデト酸又はその塩の含有量として、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準に、エデト酸又はその塩の総含有量が、0.0001〜1w/v%であることが好ましく、0.0005〜0.5w/v%であることがより好ましく、0.001〜0.3w/v%であることがさらに好ましく、0.005〜0.1w/v%であることが特に好ましい。上記エデト酸又はその塩の含有量は、プラノプロフェンの光安定性をより一層向上させるという観点から好適である。
【0043】
ジブチルヒドロキシトルエン(以下、「BHT」ともいう。)は化学名2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールである公知化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0044】
本実施形態に係る水性組成物における、ジブチルヒドロキシトルエンの含有量は特に限定されず、併用する(A)成分、(B)成分の種類及び含有量、該水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。ジブチルヒドロキシトルエンの含有量として、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準に、ジブチルヒドロキシトルエンの総含有量が、0.00005〜0.05w/v%であることが好ましく、0.0001〜0.03w/v%であることがより好ましく、0.0005〜0.01w/v%であることがさらに好ましく、0.001〜0.005w/v%であることが特に好ましい。上記ジブチルヒドロキシトルエンの含有量は、プラノプロフェンの光安定性をより一層向上させるという観点から好適である。
【0045】
本実施形態に係る水性組成物において、(A)成分に対する(C)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(C)成分の種類、該水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(C)成分の含有比率として、例えば、本実施形態に係る水性組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(C)成分の総含有量が、0.005〜1000質量部であることが好ましく、0.02〜200質量部であることがより好ましく、0.1〜50質量部であることがさらに好ましく、0.5〜10質量部であることが特に好ましい。
【0046】
(A)成分に対する(C)成分中のテルペノイドの含有比率として、例えば、本実施形態に係る水性組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、テルペノイドの総含有量が、0.0002〜50質量部であることが好ましく、0.001〜10質量部であることがより好ましく、0.01〜5質量部であることがさらに好ましく、0.05〜2質量部であることが特に好ましい。
【0047】
(A)成分に対する(C)成分中のエデト酸又はその塩の含有比率として、例えば、本実施形態に係る水性組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、エデト酸又はその塩の総含有量が、0.001〜100質量部であることが好ましく、0.005〜20質量部であることがより好ましく、0.02〜5質量部であることがさらに好ましく、0.1〜2質量部であることが特に好ましい。
【0048】
(A)成分に対する(C)成分中のジブチルヒドロキシトルエンの含有比率として、例えば、本実施形態に係る水性組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、ジブチルヒドロキシトルエンの総含有量が、0.0001〜20質量部であることが好ましく、0.0005〜5質量部であることがより好ましく、0.002〜1質量部であることがさらに好ましく、0.01〜0.2質量部であることが特に好ましい。
【0049】
上記(A)成分に対する(C)成分の含有比率は、プラノプロフェン含有水性組成物において、プラノプロフェンの光安定性を改善するという効果の観点から好適である。
【0050】
本実施形態に係る水性組成物は、さらに界面活性剤を含有することができる。界面活性剤は、本実施形態に係る水性組成物の使用目的に応じて、後述する種々の薬理活性成分、生理活性成分及び添加剤等を配合する際に、それらの溶解性を向上させる溶解補助剤として有効である。
【0051】
本実施形態に係る水性組成物に配合することができる界面活性剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されず、非イオン性界面活性剤、イオン性(両性、陰性、陽性)界面活性剤のいずれであってもよい。
【0052】
本実施形態に係る水性組成物に配合することができる非イオン性界面活性剤として、具体的には、モノウラリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル;POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)、POE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)等のPOEヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE−POPアルキルエーテル;POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、上記で例示する化合物において、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0053】
本実施形態に係る水性組成物に配合することができる両性界面活性剤として、具体的には、アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩(例えば、塩酸塩等)等が例示できる。
また、本実施形態に係る水性組成物に配合することができる陰イオン性界面活性剤として、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル、α−オレフィンスルホン酸等が例示できる。
そして、本実施形態に係る水性組成物に配合することができる陽イオン性界面活性剤として、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が例示される。
【0054】
本実施形態に係る水性組成物において、界面活性剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本実施形態に係る水性組成物に配合することができる界面活性剤の中で、プラノプロフェンの光安定性を向上させるという観点から、非イオン性界面活性剤が好適である。非イオン性界面活性剤として、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、POE・POPブロックコポリマー、モノステアリン酸ポリエチレングリコールが好ましく、ポリソルベート80、POE硬化ヒマシ油60、POE硬化ヒマシ油40、POEヒマシ油10、POEヒマシ油35、ポロクサマー407、ステアリン酸ポリオキシル40がより好ましい。
【0055】
本実施形態に係る水性組成物に界面活性剤を配合する場合、その含有量は、該界面活性剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。界面活性剤の含有量として、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準に、界面活性剤の総含有量が、0.001〜3w/v%であることが好ましく、0.005〜2w/v%であることがより好ましく、0.01〜1w/v%であることがさらに好ましく、0.05〜1w/v%であることが特に好ましい。
【0056】
本実施形態に係る水性組成物は、さらに緩衝剤を含有することができる。これにより、本実施形態に係る水性組成物のpHを調整できる。
【0057】
本実施形態に係る水性組成物に配合することができる緩衝剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、イプシロン−アミノカプロン酸等が挙げられる。
【0058】
ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸、又はホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤として、リン酸、又はリン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。炭酸緩衝剤として、炭酸、又は炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等の炭酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤として、クエン酸、又はクエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等);トリス緩衝剤として、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はその塩(塩酸塩、酢酸塩、スルホン酸塩等);アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等)等が例示できる。これらの緩衝剤は水和物の形態で用いても良い。
【0059】
本実施形態に係る水性組成物に配合する緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。これらの緩衝剤の中でも、プラノプロフェンの光安定性を向上させるという観点から、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤を好適に用いることができる。ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸とホウ砂の組み合わせが好ましい。また、リン酸緩衝剤として、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムの組み合わせが好ましい。
【0060】
本実施形態に係る水性組成物に緩衝剤を配合する場合、その含有量は、該緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。緩衝剤の含有量として、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準に、該緩衝剤の総含有量が、0.01〜15w/v%であることが好ましく、0.05〜10w/v%であることがより好ましく、0.1〜7.5w/v%であることがさらに好ましく、0.5〜5w/v%であることが特に好ましい。
【0061】
本実施形態に係る水性組成物のpHは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本実施形態に係る水性組成物のpHの一例として、4.0〜9.5であることが好ましく、光安定性を向上させるという観点から、5.0〜9.0であることがより好ましく、5.5〜8.5であることがさらに好ましく、6.5〜8.0であることが特に好ましい。
【0062】
本実施形態に係る水性組成物は、さらに粘稠剤を含有することができる。これにより、本実施形態に係る水性組成物の粘度を調整できる。
【0063】
粘稠剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30、K90など)、カルボキシビニルポリマー、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(BASF Wyandotte Coproration、プルロニック、テトロニックなど)、セルロース誘導体[メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208、2906、2910など)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩など]、ポリエチレングリコール(マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000など)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガント、デキストラン(40、70など)、ブドウ糖、ソルビトールなどが例示でき、好ましくはポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30、K90)、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208、2906、2910)、カルボキシメチルセルロース又はその塩など)、ポリエチレングリコール(マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール4000、マクロゴール6000)、デキストラン(70)であり、更に好ましくはポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、コリドン(R)K30、コリドン(R)K90)、カルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208、2906、2910)、カルボキシメチルセルロース又はその塩、ポリエチレングリコール(マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール4000、マクロゴール6000)、デキストラン(70)である。
これらの粘稠剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0064】
本実施形態に係る水性組成物に粘稠剤を配合する場合、その含有量は、該粘稠剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。粘稠剤の含有量として、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準に、該粘稠剤の総含有量が、0.01〜10w/v%であることが好ましく、0.01〜5w/v%であることがより好ましく、0.05〜3w/v%であることがさらに好ましい。
【0065】
また、本実施形態に係る水性組成物は、更に等張化剤を含有することができる。等張化剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような等張化剤の具体例として、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの等張化剤の中でも、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブドウ糖、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムが好ましく、塩化ナトリウム、塩化カリウム又はプロピレングリコールがさらに好ましく、塩化ナトリウムが特に好ましい。これらの等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本実施形態に係る点眼剤が等張化剤を含有する場合、その含有量は、等張化剤の種類、他の含有成分の種類及び含有量等に応じて適宜設定される。等張化剤の含有量としては、例えば、点眼剤の総量を基準として、等張化剤の総含有量が、0.01〜10w/v%であることが好ましく、0.05〜5w/v%であることがより好ましく、0.1〜3w/v%であることが更に好ましい。
【0066】
また、本実施形態に係る水性組成物の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。本実施形態に係る水性組成物の浸透圧比の一例として、0.5〜5.0であることが好ましく、0.6〜3.0であることがより好ましく、0.7〜2.0であることがさらに好ましく、0.8〜1.55であることが特に好ましい。浸透圧の調整は、無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0067】
本実施形態に係る水性組成物の粘度については、生体に許容される範囲内であれば特に制限されない。例えば、回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター:1°34’xR24)で測定した25℃における粘度が、0.1〜1000mPa・sであることが好ましく、1〜100mPa・sであることがより好ましく、1〜10mPa・sであることがさらに好ましい。
【0068】
また、本実施形態に係る水性組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に種々の薬理活性成分や生理活性成分を組み合わせて適当量含有していてもよい。成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造(輸入)承認基準2000年版(薬事審査研究会監修)に記載された各種医薬における有効成分が例示できる。例えば、眼科用薬において用いられる成分として、具体的には、次のような成分が挙げられる。
抗ヒスタミン剤又は抗アレルギー剤:例えば、フマル酸ケトチフェン、イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、ペミロラストカリウム、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト等。
充血除去剤:塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硫酸ナファゾリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピン等。
殺菌剤:例えば、アクリノール、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド等。
ビタミン類:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、酢酸トコフェロール等。
アミノ酸類:例えば、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等。
消炎剤:例えば、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アズレンスルホン酸、アラントイン、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、ベルベリン、リゾチーム、甘草等。
収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
その他:例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール又はこれらの塩等。
【0069】
また、本実施形態に係る水性組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。これらはd体、l体及びdl体のいずれでもよい。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩化亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
安定化剤:トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン等。
【0070】
本実施形態に係る水性組成物とは、水の含有量が、該水性組成物の総量に対して、85w/v%以上の組成物を意味する。該水性組成物における水の含有量は、90w/v%以上であることが好ましく、92w/v%以上であることがより好ましく、94w/v%以上であることがさらに好ましく、96w/v%以上であることが特に好ましい。本実施形態に係る水性組成物に用いられる水としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される水を使用すればよく、このような水として、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される。また本実施形態に係る水性組成物の剤型については、特に制限されないが、液剤、半固形剤(軟膏等)等が挙げられ、液剤であることが好ましい。これらの定義は第十六改正日本薬局方に基づく。
【0071】
本実施形態に係る水性組成物は、所望量の上記(A)成分、(B)成分及び必要に応じて他の配合成分を所望の濃度となるように担体に添加することにより調製可能である。例えば、眼科用組成物の場合、精製水で前記成分を溶解又は懸濁させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。上記(A)成分、(B)成分、及びその他疎水性の高い成分の溶解に関しては、予め界面活性剤等の溶解補助作用のある成分とあわせて攪拌を行なってから、さらに精製水を加えて溶解又は懸濁させてもよい。
【0072】
本発明は、別の観点から、プラノプロフェン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する水性組成物に、オロパタジン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、プラノプロフェンの光安定化方法を提供するものである。
【0073】
本実施形態に係る水性組成物は、医薬品や医薬部外品などの製剤として使用でき、例えば、粘膜適用組成物(眼科用組成物、鼻腔用組成物等)、経口用組成物、点耳用組成物、皮下投与用組成物、皮膚外用組成物等の様々な用途で使用することができる。
【0074】
本実施形態に係る水性組成物は、角膜及び結膜等の眼粘膜、口腔粘膜、鼻腔粘膜、咽頭部粘膜などに適用される粘膜適用組成物として有用である。
【0075】
眼科用組成物には、例えば、点眼剤(点眼液又は点眼薬ともいう。また、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む。)、人工涙液、洗眼剤(洗眼液又は洗眼薬ともいう。また、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む。)、眼軟膏剤等の眼科用組成物;コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等]等が含まれる。なお、上記コンタクトレンズ用組成物は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用可能である。
鼻腔用組成物には、例えば、点鼻剤、鼻洗浄液等が含まれる。
経口用組成物には、例えば、口腔咽頭薬、含嗽薬(含嗽用剤)等が含まれる。
点耳用組成物には、例えば、点耳薬等が含まれる。
【0076】
(A)及び(B)成分の薬理作用に鑑みれば、本実施形態に係る水性組成物は、眼科用組成物であることが好ましく、点眼剤及び洗眼剤であることが更に好ましく、点眼剤であることが特に好ましい。
【0077】
また、本実施形態に係る水性組成物は、プラノプロフェン及び/又はその塩に基づく薬理作用のみならず、オロパタジン及び/又はその塩に基づく薬理作用をも発現できるため、抗炎症、抗アレルギー、並びに、目の痒み、目の充血、目やに、目のかすみ、なみだ目、目の異物感等の抑制及び改善の用途に有効であり、とりわけ、外眼部及び前眼部の炎症性疾患(眼瞼炎、結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、前眼部ブドウ膜炎、術後炎症)の対症療法やアレルギー性結膜炎及び春季カタルの治療等の用途で、医薬品や医薬部外品等の製剤として使用できる。
【0078】
特に、本実施形態に係る水性組成物は、角膜上皮バリア機能を向上させることができるため、アレルギー症状の予防用組成物として使用でき、具体的には、食物アレルギー、動物アレルギー、花粉症、ハウスダスト(室内塵)等、各種のアレルギー症状の予防に有効である。中でも、花粉やハウスダスト(室内塵)などによる目のアレルギー症状の予防に好適であり、そのようなアレルギー症状として具体的には、目の充血、目のかゆみ、目のかすみ、目やにの多いとき、なみだ目、異物感(コロコロする感じ)の予防に使用される。なかでも飛散開始時期が知られており、抗原への接触時期が特定できる点で、アレルギー症状としては花粉症、特にスギ花粉症に対して好適である。
【0079】
本実施形態に係る水性組成物は、医薬分野で一般的に使用されている容器に収容して医薬製品として提供できる。本実施形態に係る水性組成物を収容する容器として、材質は特に限定されず、例えば、ガラス製、プラスチック製等の容器を用いることができる。また、容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。なお、容器とは、水性組成物を直接収容する容器(一次容器)を意味するが、水性組成物を収容した一次容器をさらに収容する容器(二次容器)を含む。また、容器は、容器本体部と蓋部や抽出口部が付随していることもある。
【0080】
従来、プラノプロフェン及び/又はその塩の光不安定化には、340〜365nmの波長の光が関与していると考えられ、340〜365nmの波長の光を遮断できる容器に収容することによってプラノプロフェン及び/又はその塩の光不安定化を更に抑制できる。そのため、本実施形態に係る水性組成物は、340〜365nmの波長の光を遮断し、340〜365nmの平均吸光度が0.05以上、好ましくは0.1以上の容器に収容される。
なお、340〜365nmの平均吸光度とは、340nm〜365nmの間を5nm毎に区切り、340nm、345nm、350nm、355nm、360nm、365nmの各波長における光透過率(%)を基に、平均光透過率[(340nm〜365nm間の5nm毎の光透過率の総和)/6]を導き、平均吸光度=−log
10(平均光透過率/100)の式から算出される値をいう。光透過率(%)は、プラスチックの光学的特性試験方法(JIS7105)に従い、市販の測定装置を用いて測定することができる。
【0081】
本実施形態に係る水性組成物を収容するプラスチック製容器の構成材質として、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、及びポリイミドのいずれか1種、これらの共重合体、または2種以上の混合体が挙げられる。また、上記共重合体としては、エチレン−2,6−ナフタレート単位、アリレート単位、エチレンテレフタレート単位、プロピレン単位、エチレン単位、及びイミド単位のいずれか1種を主体として、他のポリエステル単位、イミド単位を含む共重合体が挙げられる。
【0082】
プラノプロフェン含有水性組成物の容器として、薬局及びドラッグストアで販売されている一般用医薬品の容器(例えば、点眼剤の容器)として汎用されているという観点から、ポリエチレンテレフタレート製の容器を使用することが好ましい。このため、本実施形態に係る水性組成物には、保管、流通等の面で利便性が認められる。
【0083】
本明細書中、特に記載の無い限り、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器と記載する場合は、容器の構成材質としてポリエチレンテレフタレートを含んでいればよく、その割合は特に限定されない。例えば、容器の構成材質全体の質量に対し、ポリエチレンテレフタレートが10w/w%以上、好ましくは30w/w%以上、特に好ましくは50w/w%以上であるものを意味する。
【0084】
また、本実施形態に係る水性組成物を収容する容器は、紫外線遮断剤等の添加剤が添加又は塗布されていてもよく、例えば、ガラス又は合成樹脂等に紫外線遮断剤を添加した後に成型した容器、又は合成樹脂等をシート状に加工してから紫外線遮断剤をコーティングしその後に成型した容器、さらには、ガラス又は合成樹脂等を最終容器形状に成型した後に紫外線遮断剤をコーティングした容器等が挙げられる。また、紫外線遮断剤等の添加剤を添加又は塗布されたシート状合成樹脂を容器にシュリンク包装したものであってもよい。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
【0086】
[試験例1:光照射後の白濁に関する試験(1)]
下記表1に示す組成の水性組成物を常法により調製し、光安定性を評価した。エデト酸ナトリウムはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物を表す。次いで、調製した水性組成物を10mL容量透明ガラスバイアル(340〜365nmの平均吸光度0.043)、又は13mL容量PET(ポリエチレンテレフタレート:340〜365nmの平均吸光度0.218)製容器に5mLずつ充填した。光安定性試験装置(「Light−Tron LT−120 D3CJ型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、D65ランプを光源として、室温の下、5000lxの光を約3、6時間連続照射し、水性組成物に対して積算照射量1.5万lx・hr、3万lx・hrの光を曝光した。光照射前及び光照射後に、各組成物を200μLずつ96ウェルプレートに添加し、660nmにおける吸光度(abs660nm)を測定し、下記式(I)に従い、白濁度を算出した。算出の結果を表1に併せて示す。
式(I)
白濁度=(光照射後のabs660nm)−(光照射前のabs660nm)
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示す通り、プラノプロフェンを含有する水性組成物は、光照射後に顕著な白濁を生じた(比較例1)。これに対して、プラノプロフェンと共に、0.05w/v%塩酸オロパタジンを含有する水性組成物においては、白濁が顕著に抑制された(実施例1)。さらに、プラノプロフェン、塩酸オロパタジンと共に、エデト酸ナトリウムを含有する水性組成物(実施例2)、PET製容器に収容された水性組成物(実施例3)においては、白濁が一層顕著に抑制された。
【0089】
[試験例2:光照射後の白濁に関する試験(2)]
下記表2に示す組成の水性組成物を常法により調製し、光安定性を評価した。次いで、調製した水性組成物を10mL容量透明ガラスバイアルに5mLずつ充填した。試験例1と同じ方法で曝光し、上記式(I)に従い、白濁度を算出した。算出の結果を表2に併せて示す。
【0090】
【表2】
【0091】
表2に示す通り、プラノプロフェンを含有する水性組成物は、光照射後に顕著な白濁を生じた(比較例2)。これに対して、プラノプロフェンと共に、0.1w/v%塩酸オロパタジンを含有する水性組成物においては、白濁が顕著に抑制された(実施例4)。一方で、プラノプロフェンと共に、l−メントールを含有する水性組成物においては白濁度が増加し悪化したにも拘わらず(比較例3)、プラノプロフェン、塩酸オロパタジンと共に、l−メントールを含有する水性組成物においては、白濁が一層顕著に抑制された(実施例5)。
【0092】
[試験例3:光照射後の白濁に関する試験(3)]
下記表3に示す組成の水性組成物を常法により調製し、光安定性を評価した。次いで、調製した水性組成物を10mL容量透明ガラスバイアルに5mLずつ充填した。試験例1と同じ方法で曝光し、上記式(I)に従い、白濁度を算出した。算出の結果を表3に併せて示す。
【0093】
【表3】
【0094】
表3に示す通り、プラノプロフェンを含有する水性組成物は、pH8.0に調製した場合又はリン酸緩衝剤を用いた場合においても、光照射後に顕著な白濁を生じた(比較例4、5)。これに対して、プラノプロフェンと共に、0.1w/v%塩酸オロパタジンを含有する水性組成物においては、白濁が顕著に抑制された(実施例6、7)。
【0095】
[試験例4:光照射後の残存率に関する試験(1)]
下記表4に示す組成の水性組成物を常法により調製し、光安定性を評価した。次いで、調製した水性組成物を10mL容量透明ガラスバイアルに5mLずつ充填した。試験例1と同じ方法で、水性組成物に対して積算照射量1.5万lx・hrの光を曝光した。曝光後、HPLCを用いて水性組成物におけるプラノプロフェンの含有量を定量し、下記式(II)に従い、残存率を算出した。算出の結果を表4に併せて示す。
式(II)
残存率(%)=(光照射後のプラノプロフェン含有量)/(光照射前のプラノプロフェン含有量)×100
【0096】
【表4】
【0097】
表4に示す通り、プラノプロフェンを含有する水性組成物では、光照射後にプラノプロフェンの残存率が低下し、曝光によるプラノプロフェンの分解が認められた(比較例6)。これに対して、プラノプロフェンと共に、0.05w/v%塩酸オロパタジンを含有する水性組成物においては、プラノプロフェンの残存率が向上し、水性組成物における光安定性を改善できることが確認された(実施例8、11)。更に、プラノプロフェン、塩酸オロパタジンと共に、l−メントール(実施例9、12)、エデト酸ナトリウム(実施例10)を含有する水性組成物においては、残存率が一層顕著に向上した。
【0098】
[試験例5:光照射後の残存率に関する試験(2)]
下記表5に示す組成の水性組成物を常法により調製し、光安定性を評価した。BHTはジブチルヒドロキシトルエンを表す。次いで、調製した水性組成物を10mL容量透明ガラスバイアル、又は13mL容量PET製容器に5mLずつ充填した。試験例1と同じ方法で、水性組成物に対して積算照射量3.0万lx・hrの光を曝光した後、試験例4と同じ方法で、上記式(II)に従い、プラノプロフェンの残存率を算出した。算出の結果を表5に併せて示す。
【0099】
【表5】
【0100】
表5に示す通り、プラノプロフェンを含有する水性組成物では、光照射後にプラノプロフェンの残存率が低下し、曝光によるプラノプロフェンの分解が認められた(比較例7)。これに対して、プラノプロフェンと共に、0.05w/v%塩酸オロパタジンを含有する水性組成物においては、プラノプロフェンの残存率が向上し、水性組成物における光安定性を改善できることが確認された(実施例13)。更に、プラノプロフェン、塩酸オロパタジンと共に、エデト酸ナトリウム(実施例14)、ポリソルベート80(実施例15)、BHT(実施例16)、を含有する水性組成物、PET製容器に収容された水性組成物(実施例17)においては、残存率が一層顕著に向上した。
【0101】
[試験例6:光照射後の残存率に関する試験(3)]
下記表6に示す組成の水性組成物を常法により調製し、光安定性を評価した。次いで、調製した水性組成物を10mL容量透明ガラスバイアルに5mLずつ充填した。試験例1と同じ方法で曝光した後、試験例4と同じ方法で、上記式(II)に従い、プラノプロフェンの残存率を算出した。算出の結果を表6に併せて示す。
【0102】
【表6】
【0103】
表6に示す通り、プラノプロフェンを含有する水性組成物では、光照射後にプラノプロフェンの残存率が低下し、曝光によるプラノプロフェンの分解が認められた(比較例8)。これに対して、プラノプロフェンと共に、0.2w/v%塩酸オロパタジンを含有する水性組成物においては、プラノプロフェンの残存率が向上し、水性組成物における光安定性を改善できることが確認された(実施例18)。更に、プラノプロフェン、塩酸オロパタジンと共に、l−メントールを含有する水性組成物においては、残存率が一層顕著に向上した(実施例19)。
【0104】
[試験例7:光照射後の残存率に関する試験(4)]
下記表7に示す組成の水性組成物を常法により調製し、光安定性を評価した。次いで、調製した水性組成物を10mL容量透明ガラスバイアルに5mLずつ充填した。試験例1と同じ方法で曝光した後、試験例4と同じ方法で、上記式(II)に従い、プラノプロフェンの残存率を算出した。算出の結果を表7に併せて示す。
【0105】
【表7】
【0106】
表7に示す通り、プラノプロフェンを含有する水性組成物は、pH8.0に調製した場合又はリン酸緩衝剤を用いた場合においても、光照射後にプラノプロフェンの残存率が低下し、曝光によるプラノプロフェンの分解が認められた(比較例9、10)。これに対して、プラノプロフェンと共に、0.1w/v%塩酸オロパタジンを含有する水性組成物においては、プラノプロフェンの残存率が向上し、水性組成物における光安定性を改善できることが確認された(実施例20、21)。
【0107】
[試験例8:経角膜上皮電気抵抗値TERの測定試験]
下記表8の組成に従って培養培地中に各薬剤を調製し、各薬剤の角膜バリア機能を評価した。ヒト角膜上皮細胞株HCE−T(理化学研究所バイオリソースセンター、No.RCB2280)をTranswell(登録商標,24ウェル,コーニング社製)のインサート内に1.0×10
5細胞/ウェル(200μL)で播種した(n=3)。リザーバー側のウェルに各薬剤600μLを入れ、37℃、5%CO
2条件下で24時間培養した。培養後、MILLICELL(登録商標)−ERS(ミリポア社製)を用いて、経角膜上皮電気抵抗値(TER)を測定し、式(1)に基づいて、上昇率を算出した。TER上昇率が高いほど、角膜上皮細胞間のバリアが強固になり、バリア機能が亢進したことを意味する。なお、式(1)において、コントロールとは、塩酸オロパタジンもプラノプロフェンも含んでいない培養培地を指す。
(式1) TER上昇率(%)=[(各比較例又は実施例のTER値)/(コントロールのTER値)−1]×100
【0108】
【表8】
【0109】
表8に示す通り、プラノプロフェン単独ではTERの低下を示したが、塩酸オロパタジンとプラノプロフェンを組み合わせることで、塩酸オロパタジン単独のTER上昇率が増加しており、角膜上皮バリア機能が亢進していることが確認された。
【0110】
[製剤例]
表9及び表10に記載の処方で、点眼剤(製剤例1−7,9−11)、洗眼剤(製剤例8)が調製される。
【0111】
【表9】
【0112】
【表10】