(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148968
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】LED照明用放熱装置
(51)【国際特許分類】
F21V 29/503 20150101AFI20170607BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20170607BHJP
F21V 29/51 20150101ALI20170607BHJP
F21V 29/77 20150101ALI20170607BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20170607BHJP
【FI】
F21V29/503 100
F28D15/02 L
F28D15/02 101N
F28D15/02 101H
F21V29/51
F21V29/77
F21Y115:10
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-228098(P2013-228098)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2014-194919(P2014-194919A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-35517(P2013-35517)
(32)【優先日】2013年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 広仲
(72)【発明者】
【氏名】多賀 和夫
【審査官】
田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3166701(JP,U)
【文献】
実開平4−30743(JP,U)
【文献】
特開平7−243782(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0157872(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0147522(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 29/503
F21V 29/51
F21V 29/77
F28D 15/02
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性材料からなり、かつ片面がLED照明が取り付けられる照明取付面となされるとともに他面が平坦な伝熱面となされたLED照明取付板と、LED照明取付板の伝熱面に設けられた複数の放熱フィンとを備えており、放熱フィンが、LED照明取付板の伝熱面に固定されかつ当該伝熱面から伝えられる熱を受ける受熱部、および受熱部に上方突出状に一体に設けられかつ受熱部から伝えられる熱を放熱する放熱部からなり、複数の放熱フィンが、放熱部どうしが互いに間隔をおくようにLED照明取付板に固定され、放熱フィンの放熱部にヒートパイプ部が設けられ、当該ヒートパイプ部が中空状作動液封入回路内に作動液が封入されることにより設けられているLED照明用放熱装置。
【請求項2】
放熱フィンの受熱部が、LED照明取付板側を向いた面が平坦面となった縦長方形であり、放熱部が受熱部の2つの長辺のうち少なくともいずれか一方に設けられ、放熱フィンが、受熱部を貫通した固定具によりLED照明取付板に固定されている請求項1記載のLED照明用放熱装置。
【請求項3】
放熱フィンの放熱部が受熱部の2つの長辺に設けられ、全体としてU字状となっている請求項2記載のLED照明用放熱装置。
【請求項4】
放熱フィンの2つの放熱部に互いに独立したヒートパイプ部が設けられている請求項3記載のLED照明用放熱装置。
【請求項5】
放熱フィンが、2枚の金属板を積層状に接合することによりつくられた基板をU字状に曲げることによって形成されており、放熱部のヒートパイプ部の作動液封入回路が、基板を形成する2枚の金属板のうちの少なくともいずれか一方の金属板が外側に膨出することにより設けられている請求項4記載のLED照明用放熱装置。
【請求項6】
放熱フィンの2つの放熱部にヒートパイプ部が設けられ、両放熱部のヒートパイプ部の作動液封入回路内どうしが、受熱部に設けられた中空連通部を介して通じさせられている請求項3記載のLED照明用放熱装置。
【請求項7】
放熱フィンが、2枚の金属板を積層状に接合することによりつくられた基板をU字状に曲げることによって形成されており、放熱部のヒートパイプ部の作動液封入回路が、基板を形成する2枚の金属板のうちの少なくともいずれか一方の金属板が外側に膨出することにより設けられ、受熱部の中空連通部が、基板を形成する一方の金属板のみがLED照明取付板と反対側に膨出することにより設けられている請求項6記載のLED照明用放熱装置。
【請求項8】
放熱フィンの両放熱部間の間隔が7mm以上である請求項3〜7のうちのいずれかに記載のLED照明用放熱装置。
【請求項9】
放熱フィンの受熱部の長辺の長さが200mm以上であるとともに放熱部が受熱部の長辺の全長にわたって設けられており、受熱部から放熱部の先端までの直線距離が50mm以上である請求項2〜8のうちのいずれかに記載のLED照明用放熱装置。
【請求項10】
LED照明取付板における放熱フィンの受熱部の長手方向と直交する方向の寸法が200mm以上である請求項9記載のLED照明用放熱装置。
【請求項11】
請求項1〜10のうちのいずれかに記載のLED照明用放熱装置と、LED照明用放熱装置のLED照明取付板の照明取付面に取り付けられ、かつ発光源として複数のLEDを有するLED照明とを備えた照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植物栽培工場用育成照明装置や、工事現場用サーチライトなどの照明装置に使用されるLED照明において、発光源として用いられるLEDや電源から発生する熱を放熱する放熱装置に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、
図1および
図2の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0003】
LEDを有する発光源を備えたLED照明は、従来の白熱電球などと比べて、発光効率が高く、低消費電力で明るいという優れた特徴があるが、現在の技術では、消費電力の約80%が熱になり、また、LEDを取り巻く樹脂材料が熱によって劣化し、発光効率が低下するとともに、寿命が短くなる。特に、消費電力が100W以上の高消費電力型LED照明おいて、上述した問題が顕著である。
【0004】
一般的な放熱装置として、熱伝導性材料からなり、かつ片面が発熱体が取り付けられる発熱体取付面となされるとともに他面が平坦な伝熱面となされた発熱体取付板と、発熱体取付板の伝熱面に、互いに間隔をおいて並列状に一体に設けられた複数の放熱フィンとを備えたもの(以下、周知放熱装置というものとする)が広く知られている。
【0005】
ところで、LED照明は、下方を照らすように設けられることが多く、この場合、上述した周知放熱装置の発熱体取付板が水平な姿勢となり、発熱体取付板の下面にLED照明が取り付けられる。しかしながら、このような状態で使用すると、自然対流によっては放熱フィンの長手方向の中央部には低温の空気が流れにくくなるので、放熱フィンの長手方向の中央部付近の温度が他の部分に比べて高くなる。したがって、放熱フィンの長手方向の中央部付近からの放熱性能が低下し、発熱体取付板の伝熱面に配置されたLED照明全体から発せられる熱を効果的に放熱することができない。
【0006】
そこで、熱輸送性能が優れたヒートパイプを利用した放熱装置が考えられている。たとえばヒートパイプを利用したLED照明用放熱装置として、上面に複数のLED照明が取り付けられる水平帯板部および水平帯板部の1つの長辺に全長にわたって下方突出状に一体に形成された鉛直帯板部からなるヒートスプレッダと、ヒートスプレッダの鉛直帯板部の外面と間隔をおいて設けられた鉛直状放熱板と、ヒートスプレッダの鉛直帯板部と鉛直状放熱板とを熱的に接続する放熱体と、ヒートスプレッダの水平帯板部と鉛直帯板部とで挟まれた部分に、両帯板部に熱的に接触した状態で固定され、かつ長手方向が両帯板部の長手方向を向いた第1ヒートパイプとを備えており、放熱体が、ヒートスプレッダの長手方向に間隔をおいて配置されかつ下部がヒートスプレッダの鉛直帯板部と鉛直状放熱板とに挟着された鉛直直線状の第2ヒートパイプと、隣り合う第2ヒートパイプ間に配置されかつ下部がヒートスプレッダの鉛直帯板部と鉛直状放熱板とに挟着された略U字状の第3ヒートパイプと、両端の第2ヒートパイプの外側に配置されかつ下部がヒートスプレッダの鉛直帯板部と鉛直状放熱板とに挟着された略L字状の第4ヒートパイプとからなり、第2〜第4ヒートパイプのコンテナが扁平状となっているものが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1記載の放熱装置によれば、LED照明から発せられる熱が、第1ヒートパイプに伝わり、ヒートスプレッダの温度が長手方向に均一化される。そして、ヒートスプレッダに伝えられた熱が、鉛直帯板部から第2〜第4ヒートパイプを経て放熱板の全体に伝わり、放熱板から放熱される。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の放熱装置によれば、ヒートスプレッダと放熱板以外に第1〜第4のヒートパイプを必要とし、かつヒートスプレッダと第1〜第4ヒートパイプを固定するとともに放熱板と第2〜第4ヒートパイプを固定する必要があり、部品点数が多くなるとともに組立作業が面倒になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−4126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、上記問題を解決し、十分な放熱性能が得られ、かつ特許文献1記載の放熱装置に比較して部品点数が少なくなるとともに組立作業が簡単であるLED照明用放熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0012】
1)熱伝導性材料からなり、かつ片面がLED照明が取り付けられる照明取付面となされるとともに他面が平坦な伝熱面となされたLED照明取付板と、LED照明取付板の伝熱面に設けられた複数の放熱フィンとを備えており、放熱フィンが、LED照明取付板の伝熱面に固定されかつ当該伝熱面から伝えられる熱を受ける受熱部、および受熱部に上方突出状に一体に設けられかつ受熱部から伝えられる熱を放熱する放熱部からなり、複数の放熱フィンが、放熱部どうしが互いに間隔をおくようにLED照明取付板に固定され、放熱フィンの放熱部にヒートパイプ部が設けられ、当該ヒートパイプ部が中空状作動液封入回路内に作動液が封入されることにより設けられているLED照明用放熱装置。
【0013】
2)放熱フィンの受熱部が、LED照明取付板側を向いた面が平坦面となった縦長方形であり、放熱部が受熱部の2つの長辺のうち少なくともいずれか一方に設けられ、放熱フィンが、受熱部を貫通した固定具によりLED照明取付板に固定されている上記1)記載のLED照明用放熱装置。
【0014】
3)放熱フィンの放熱部が受熱部の2つの長辺に設けられ、全体としてU字状となっている上記2)記載のLED照明用放熱装置。
【0015】
4)放熱フィンの2つの放熱部に互いに独立したヒートパイプ部が設けられている上記3)記載のLED照明用放熱装置。
【0016】
5)放熱フィンが、2枚の金属板を積層状に接合することによりつくられた基板をU字状に曲げることによって形成されており、放熱部のヒートパイプ部の作動液封入回路が、基板を形成する2枚の金属板のうちの少なくともいずれか一方の金属板が外側に膨出することにより設けられている上記4)記載のLED照明用放熱装置。
【0017】
6)放熱フィンの2つの放熱部にヒートパイプ部が設けられ、両放熱部のヒートパイプ部の作動液封入回路内どうしが、受熱部に設けられた中空連通部を介して通じさせられている上記3)記載のLED照明用放熱装置。
【0018】
7)放熱フィンが、2枚の金属板を積層状に接合することによりつくられた基板をU字状に曲げることによって形成されており、放熱部のヒートパイプ部の作動液封入回路が、基板を形成する2枚の金属板のうちの少なくともいずれか一方の金属板が外側に膨出することにより設けられ、受熱部の中空連通部が、基板を形成する一方の金属板のみがLED照明取付板と反対側に膨出することにより設けられている上記6)記載のLED照明用放熱装置。
【0019】
8)放熱フィンの両放熱部間の間隔が7mm以上である上記3)〜7)のうちのいずれかに記載のLED照明用放熱装置。
【0020】
9)放熱フィンの受熱部の長辺の長さが200mm以上であるとともに放熱部が受熱部の長辺の全長にわたって設けられており、受熱部から放熱部の先端までの直線距離が50mm以上である上記2)〜8)のうちのいずれかに記載のLED照明用放熱装置。
【0021】
10)LED照明取付板における放熱フィンの受熱部の長手方向と直交する方向の寸法が200mm以上である上記9)記載のLED照明用放熱装置。
【0022】
11)上記1)〜10)のうちのいずれかに記載のLED照明用放熱装置と、LED照明装置のLED照明取付板の照明取付面に取り付けられ、かつ発光源として複数のLEDを有するLED照明とを備えた照明装置。
【発明の効果】
【0023】
上記1)〜10)のLED照明用放熱装置によれば、熱伝導性材料からなり、かつ片面がLED照明が取り付けられる照明取付面となされるとともに他面が平坦な伝熱面となされたLED照明取付板と、LED照明取付板の伝熱面に設けられた複数の放熱フィンとを備えており、放熱フィンが、LED照明取付板の伝熱面に固定されかつ当該伝熱面から伝えられる熱を受ける受熱部、および受熱部に上方突出状に一体に設けられかつ受熱部から伝えられる熱を放熱する放熱部からなり、複数の放熱フィンが、放熱部どうしが互いに間隔をおくようにLED照明取付板に固定され、放熱フィンの放熱部にヒートパイプ部が設けられ、当該ヒートパイプ部が中空状作動液封入回路内に作動液が封入されることにより設けられているので、以下に述べるようにLED照明取付板の伝熱面に取り付けられたLED照明の全体を効率良く冷却することが可能になる。
【0024】
すなわち、LED照明から発せられた熱は、LED照明取付板の照明取付面に伝わり、伝熱面を経て放熱フィンの受熱部伝わる。放熱フィンの受熱部に伝わった熱は、放熱部のヒートパイプ部における作動液封入回路内の下部に溜まっている作動液に伝って作動液が蒸発して気相となる。その結果、作動液封入回路内の下部の圧力が上昇し、気相作動液が作動液封入回路内の全体に行き渡る。気相作動液が作動液封入回路内の全体に行き渡る間に、気相作動液の有する熱が放熱部に伝わるとともに、放熱部から外部に放熱され、熱を奪われた気相作動液が凝縮する。その結果、放熱フィンの放熱部の全体が均一な温度となり、放熱部の全体から均一に放熱される。一方、再凝縮した液相作動液は重力により下方に流れるので、ヒートパイプ部において、気相作動液の流れと液相作動液の流れとが発生し、作動液の循環が起きる。したがって、LED照明取付板の全体から伝わった熱が均等に放熱され、LED照明取付板の照明取付面に配置されたLED照明の全体が効率良く冷却される。
【0025】
しかも、放熱フィンの放熱部に設けられたヒートパイプ部が、放熱部に設けられた中空状作動液封入回路内に作動液が封入されることにより形成されているので、特許文献1記載の放熱装置に比べて部品点数が少なくなるとともに、製造作業が容易になる。
【0026】
上記4)〜7)のLED照明用放熱装置によれば、放熱部にヒートパイプ部が設けられた放熱フィンを比較的簡単につくることができる。
【0027】
上記8)〜10)のLED照明用放熱装置のような寸法を有する場合、周知放熱装置のような構造であると、LED照明取付板のLED照明取付面に取り付けられたLED照明から発せられる熱を効果的に放熱することは困難であるが、この場合であっても、上記1)のLED照明用放熱装置のように構成されていると、LED照明取付板のLED照明取付面に取り付けられたLED照明の全体を効率良く冷却することができる。
【0028】
上記11)の照明装置によれば、LED照明取付板の伝熱面に取り付けられたLED照明の全体を効率良く冷却することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】この発明のLED照明用放熱装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】この発明のLED照明用放熱装置の一部分を拡大して示す放熱フィンの長手方向一端側から見た図である。
【
図3】
図1および
図2のLED照明用放熱装置に用いられる放熱フィンを示す斜視図である。
【
図4】
図2および
図3の放熱フィンをつくる金属基板を示す正面図である。
【
図5】
図1のLED照明用放熱装置を備えた照明装置の使用態様を示す斜視図である。
【
図6】
図1および
図2のLED照明用放熱装置に用いられる放熱フィンの変形例を示す
図2相当の図である。
【
図7】
図1および
図2のLED照明用放熱装置に用いられる放熱フィンの変形例を示す斜視図である。
【
図8】
図6および
図7の放熱フィンをつくる金属板を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0032】
また、以下の説明において、
図2の左右を左右というものとし、放熱フィンの長さ方向(
図2の紙面表裏方向)を前後方向というものとする。
【0033】
なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付す。
【0034】
図1はこの発明のLED照明用放熱装置の全体構成を示し、
図2および
図3はその要部の構成を示す。また、
図4は
図1および
図2のLED照明用放熱装置に用いられる放熱フィンをつくる金属基板を示す。さらに、
図5はこの発明のLED照明用放熱装置を備えた照明装置の使用態様を示す。
【0035】
図1および
図2おいて、LED照明用放熱装置(1)は、たとえばアルミニウム、銅(銅合金を含む。以下、同じ)などの熱伝導性材料からなり、かつ片面(ここでは下面)がLED照明が取り付けられる照明取付面(3)となされるとともに他面(ここでは上面)が平坦な伝熱面(4)となされたLED照明取付板(2)と、たとえばアルミニウム、銅(銅合金を含む)などの熱伝導性材料からなり、かつLED照明取付板(2)の伝熱面(4)に固定された複数の放熱フィン(5)とを備えている。
【0036】
LED照明取付板(2)は左右方向に長い方形であり、照明取付面(3)に、たとえば回路基板(6a)、回路基板(6a)に配置されかつ青色LEDが実装された複数の青色LEDパッケージ(6b)、同じく回路基板(6a)に配置されかつ赤色LEDが実装された複数の赤色LEDパッケージ(6c)、および各LEDパッケージ(6b)(6c)用の2つのスイッチング電源(図示略)を有するLED照明(6)が取り付けられ、LED照明用放熱装置(1)と、LED照明(6)とによって、植物栽培工場用育成照明装置として用いられる照明装置(16)が構成されている。
【0037】
図2および
図3に示すように、放熱フィン(5)はLED照明取付板(2)の伝熱面(4)に面接触した状態で固定され、かつ伝熱面(4)から伝えられる熱を受ける前後方向に長い方形の水平平板状受熱部(7)、および受熱部(7)の2つの長辺である左右両側縁部に上方突出状に一体に設けられ、かつ受熱部(7)から伝えられる熱を放熱する前後方向に長い方形の鉛直平板状放熱部(8)からなる。放熱部(8)は受熱部(7)の全長にわたって設けられており、放熱フィン(5)は全体として横断面U字状となっている。複数の放熱フィン(5)は、放熱部(8)どうしが左右方向に互いに間隔をおくように配置された状態で、受熱部(7)を貫通したねじ、リベットなどの固定具(9)を利用してLED照明取付板(2)に固定されている。
【0038】
放熱フィン(5)の各放熱部(8)には、ほぼ全体にわたるヒートパイプ部(11)が設けられている。各放熱部(8)のヒートパイプ部(11)は、放熱部(8)の両面側に膨出した1つの中空無端状作動液封入回路(12)内に作動液が封入されたものである。作動液封入回路(12)は、放熱部(8)のほぼ全体にわたって形成された前後方向に長い長方形の格子状である。なお、
図1においては、ヒートパイプ部(11)および作動液封入回路(12)の図示は省略されている。放熱フィン(5)は、アルミニウム、銅などからなる2枚の金属板を積層状に接合することによりつくられた基板(13)をU字状に曲げることによって形成されており、ヒートパイプ部(11)の作動液封入回路(12)は、基板(13)を形成する2枚の金属板のうちの少なくともいずれか一方、ここでは両方の金属板を外側に膨出させることにより設けられている。
【0039】
ここで、LED照明取付板(2)の左右方向(放熱フィン(5)の受熱部(7)の長手方向と直交する方向)の長さL1が200mm以上、放熱フィン(5)の受熱部(7)および放熱部(8)の長辺の前後方向の長さL2が200mm以上、受熱部(7)から放熱部(8)の先端までの直線距離L3が50mm以上、各放熱フィン(5)の両放熱部(8)間の間隔Sは7mm以上であることが好ましい。なお、各放熱フィン(5)の両放熱部(8)間の間隔Sの上限は20mm程度である。また、隣り合う放熱フィン(5)の近接する放熱部(8)間の間隔は、上記間隔Sと同等以上であることが好ましい。
【0040】
U字状に曲げられる前の基板(13)は、
図4に示すように、受熱部(7)を形成する縦長方形の第1部分(14)と、第1部分(14)の両長辺部に一体に設けられ、かつ放熱部(8)を形成する2つの縦長方形の第2部分(15)とよりなり、2つの第2部分(15)に互いに独立したヒートパイプ部(11)が設けられている。第2部分(15)のヒートパイプ部(11)は、基板(13)を形成する2枚の金属板のうちの少なくともいずれか一方、ここでは両方の金属板を外側に膨出させることにより設けられた1つの中空無端状作動液封入回路(12)内に作動液が封入されたものである。そして、基板(13)の両第2部分(15)を第1部分(14)に対して曲げることによって放熱フィン(5)が形成されている。
【0041】
U字状に曲げられる前の基板(13)は、たとえば2枚のアルミニウム板の合わせ面のうちの少なくともいずれか一方の面に圧着防止剤を所要パターンに印刷し、この状態で2枚のアルミニウム板を圧着して合わせ板をつくり、合わせ板の非圧着部に流体圧を導入する、所謂ロールボンド法によって合わせ板の両面側に膨出した2つの作動液封入回路(12)を形成し、ついで作動液封入回路(12)内に作動液を封入することによって製造される。合わせ板の非圧着部は、2つの作動液封入回路(22)に対応する形状の2つの作動液封入回路用非圧着部と、両作動液封入回路用非圧着部から合わせ板の周縁に至る1つの流体圧導入用非圧着部とからなる。流体圧導入用非圧着部から流体圧を導入すると、作動液封入回路用非圧着部が合わせ板の両面側に膨出した作動液封入回路(12)となり、流体圧導入用非圧着部は、合わせ板の両面側に膨出し、かつ一端が一方の作動液封入回路(12)に連なるとともに他端が合わせ板の周縁に開口した作動液注入部となる。そして、作動液注入部を通して作動液を作動液封入回路(12)内に注入した後、作動液注入部を封止することにより基板(13)がつくられる。封止された作動液注入部を
図4に鎖線Aで示す。
【0042】
なお、基板(13)は、作動液封入回路(12)および作動液注入部を形成するための外方膨出部を有する2枚のアルミニウム板を、たとえばろう付することにより形成されていてもよい。
【0043】
図5に示すように、照明装置(16)には、照明装置(16)の全体を覆うカバー(17)が取り付けられており、カバー(17)に設けられた吊り下げ部材(18)を用いて、たとえば植物栽培工場における栽培棚の上方に設けられた取付桟に吊り下げられて使用される。カバー(17)の下壁には、LED照明(6)のLEDパッケージ(6b)(6c)から発せられる光を下方に照射するための照射口(図示略)が形成され、同じく上壁には全放熱フィン(5)を外部に露出するための開口(17a)が形成されている。また、カバー(16)の全側壁のうち放熱フィン(5)の長手方向両側壁にはそれぞれ通気口(17b)が形成されており、一方の通気口(17b)を通ってカバー(17)内に流入した空気が、各放熱フィン(5)の両放熱部(8)間および隣り合う放熱フィン(5)の近接した放熱部(8)間を流れた後、他方の通気口(17b)を通ってカバー(17)外に流出するようになっている。
【0044】
なお、照明装置(16)のLED照明装置用放熱装置(1)の照明取付面(3)に取り付けられたLED照明(6)の基板(6a)に配置された各LEDパッケージ(6b)(6c)には、0〜700mAの電流が流されるようになっており、たとえば500mAの電流が流される場合、基板(6a)の単位面積あたりのLED投入電力は6000W/m2程度となる。
【0045】
上述したLED照明用放熱装置(1)において、照明装置(16)のLED照明(6)から発せられた熱は、LED照明取付板(2)の照明取付面(3)に伝わり、伝熱面(4)を経て放熱フィン(5)の受熱部(7)に伝わる。放熱フィン(5)の受熱部(7)に伝わった熱は、放熱部(8)のヒートパイプ部(11)における作動液封入回路(12)内の下部に溜まっている作動液に伝って作動液が蒸発して気相となる。その結果、作動液封入回路(12)内の下部の圧力が上昇し、気相作動液が作動液封入回路(12)内の全体に行き渡る。気相作動液が作動液封入回路(12)内の全体に行き渡る間に、気相作動液の有する熱が放熱部(8)に伝わるとともに、放熱部(8)からカバー(17)内を流れる空気に放熱され、熱を奪われた気相作動液が凝縮する。その結果、放熱フィン(5)の放熱部(8)の全体が均一な温度となり、放熱部(8)の全体から均一に放熱される。
【0046】
一方、再凝縮した液相作動液は重力により下方に流れるので、ヒートパイプ部(11)において、気相作動液の流れと液相作動液の流れとが発生し、作動液の循環が起きる。したがって、LED照明取付板(2)の全体から伝わった熱が均等に放熱され、LED照明取付板(2)の照明取付面(4)に配置されたLED照明(6)の全体が効率良く冷却される。
【0047】
上述したLED照明用放熱装置(1)において、
図2および
図3に示す放熱フィン(5)の放熱部(8)に設けられているヒートパイプ部(11)の作動液封入回路(12)は、基板(13)の両方の金属板を外側に膨出させることにより形成されているが、これに代えて、基板(13)を構成する一方の金属板のみを外側に膨出させることにより形成されていてもよい。
【0048】
図6〜
図8はLED照明用放熱装置に用いられる放熱フィンの変形例を示す。
【0049】
図6および
図7において、放熱フィン(20)の各放熱部(8)に設けられ、かつ放熱部(8)のほぼ全体にわたるヒートパイプ部(21)は、放熱部(8)の両面側に膨出した1つの中空無端状作動液封入回路(22)内に作動液が封入されたものである。作動液封入回路(22)は、放熱部(8)のほぼ全体にわたって形成された前後方向に長い長方形の格子状である。両放熱部(8)に設けられたヒートパイプ部(21)の作動液封入回路(22)内は、受熱部(7)に設けられかつ受熱部(7)の上面側のみに膨出した中空状連通部(23)を介して相互に通じさせられている。受熱部(7)の下面は、平坦面となっている。放熱フィン(20)は、アルミニウム、銅などからなる2枚の金属板を積層状に接合することによりつくられた基板(25)をU字状に曲げることによって形成されており、ヒートパイプ部(21)の作動液封入回路(22)は、基板(25)を形成する2枚の金属板のうちの少なくともいずれか一方、ここでは両方の金属板を外側に膨出させることにより設けられ、中空連通部(23)は、基板(25)を形成する2枚の金属板のうちの一方(上側)の金属板のみを上側に膨出させることにより設けられている。放熱フィン(20)は、受熱部(7)における中空連通部(23)を避けた部分を貫通した固定具(9)を利用してLED照明取付板(2)に固定されている。
【0050】
U字状に曲げられる前の基板(25)は、
図8に示すように、受熱部(7)を形成する縦長方形の第1部分(26)と、第1部分(26)の両長辺部に一体に設けられ、かつ放熱部(8)を形成する2つの縦長方形の第2部分(27)とよりなり、2つの第2部分(27)にヒートパイプ部(21)が設けられるとともに、第1部分(26)に中空連通部(23)が設けられている。第2部分(27)のヒートパイプ部(21)は、基板(25)を構成する2枚の金属板のうちの少なくともいずれか一方、ここでは両方の金属板を外側に膨出させることにより形成された1つの中空無端状作動液封入回路(22)内に作動液が封入されたものである。第1部分(26)の中空連通部(23)は、基板(25)を構成する2枚の金属板を外側に膨出させた後、一方の金属板を平坦になるように圧潰することにより形成されている。第2部分(27)の作動液封入回路(22)は、第2部分(27)の長手方向に長い長方形の格子状であるとともに第2部分(27)のほぼ全体にわたって形成され、第1部分(26)の中空連通部(23)は第1部分(26)の長手方向に間隔をおいて複数形成されている。そして、基板(25)の両第2部分(27)を第1部分(26)に対して曲げることによって放熱フィン(5)が形成されている。
【0051】
U字状に曲げられる前の基板(25)は、たとえば2枚のアルミニウム板の合わせ面のうちの少なくともいずれか一方の面に圧着防止剤を所要パターンに印刷し、この状態で2枚のアルミニウム板を圧着して合わせ板をつくり、合わせ板の非圧着部に流体圧を導入する、所謂ロールボンド法によって合わせ板の両面側に膨出した2つの作動液封入回路(22)、および合わせ板の両面側に膨出した中空連通部(23)を形成し、ついで作動液封入回路(22)内に作動液を封入した後、中空連通部(23)の部分で一方の金属板を平坦に圧潰することによって製造される。合わせ板の非圧着部は、2つの作動液封入回路(22)に対応する形状の2つの作動液封入回路用非圧着部と、両作動液封入回路用非圧着部を連結する複数の連通部形成用非圧着部と、一方の作動液封入回路用非圧着部から合わせ板の周縁に至る1つの流体圧導入用非圧着部とからなる。流体圧導入用非圧着部から流体圧を導入すると、作動液封入回路用非圧着部が合わせ板の両面側に膨出した作動液封入回路(22)となるとともに、連通部形成用非圧着部が合わせ板の両面側に膨出した中空連通部(23)となり、流体圧導入用非圧着部は、合わせ板の両面側に膨出し、かつ一端が一方の作動液封入回路(22)に連なるとともに他端が合わせ板の周縁に開口した作動液注入部となる。そして、作動液注入部を通して作動液を作動液封入回路(22)内に注入した後、作動液注入部を封止するとともに、合わせ板の一方の金属板を平坦に圧潰して合わせ板の片面側のみに膨出した中空連通部(23)を形成することによって、基板(25)がつくられる。封止された作動液注入部を
図8に鎖線Bで示す。
【0052】
なお、基板(25)は、作動液封入回路(22)、中空連通部(23)および作動液注入部を形成するための外方膨出部を有する1枚のアルミニウム板と、作動液封入回路(22)および作動液注入部を形成するための外方膨出部を有する1枚のアルミニウム板とを、たとえばろう付することにより形成されていてもよい。
【0053】
図6〜
図8に示す放熱フィン(20)において、放熱部(8)のヒートパイプ部(21)の作動液封入回路(22)が放熱部(8)における互いに対向する面側のみに膨出し、中空連通部(23)が受熱部(7)の上面側に膨出したものであってもよい。この場合、上述したロールボンド法により合わせ板をつくる際に、一方の金属板のみを外側に膨出させるようにすればよい。
【0054】
なお、この発明のLED照明用放熱装置(1)とLED照明とによって工事現場用サーチライトとして用いられる照明装置が構成されることもあるが、この場合、LED照明からは、白色や、電球色の光が照射される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明によるLED照明用放熱装置は、高消費電力型のLED照明において、LEDから発せられる熱を効率良く放熱するのに用いられる。
【符号の説明】
【0056】
(1):LED照明用放熱装置
(2):LED照明取付板
(3):照明取付面
(4):伝熱面
(5)(20):放熱フィン
(6):LED照明
(7):受熱部
(8):放熱部
(9):固定具
(11)(21):ヒートパイプ部
(12)(22):作動液封入回路
(13)(25):基板
(16):照明装置
(23):中空連通部