(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する金属溶湯用部材、金属溶湯用部材の製造方法および金属溶湯保持炉の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
<1.金属溶湯保持炉の構成>
図1は、第1の実施形態に係る金属溶湯用部材を備えた金属溶湯保持炉の構成例を示す模式断面図である。
図1に示すように、金属溶湯保持炉1は、保持槽10と、ヒータ20と、金属溶湯用部材30とを備え、保持槽10で保持された金属溶湯40を加熱・保温する装置である。
【0011】
具体的に説明すると、保持槽10は、内部に空間11を有する形状に形成される。保持槽10は、上記した空間11部分に金属溶湯40が供給され、所定量の金属溶湯40を保持する。なお、保持槽10の形状は、
図1に示されるものに限られず、要は金属溶湯40を保持できればどのような形状であってもよい。
【0012】
また、金属溶湯40は、溶解されたアルミニウム合金であるが、これに限定されるものではなく、たとえば亜鉛、マグネシウム合金などその他の金属を溶解したものであってもよい。保持槽10で保持された金属溶湯40は、図示しない鋳型に供給され、金属溶湯40が供給された鋳型を冷却することで、鋳物が製作される。
【0013】
ヒータ20は、発熱部21と、支持部22とを備える。なお、ヒータ20としては、たとえば電気ヒータを用いることができる。
【0014】
発熱部21は、長尺状に形成され、その内部に金属ヒータなどの発熱体が収容される。また、支持部22は、発熱部21に接続され、発熱部21が適宜な位置となるように支持する。なお、発熱部21の位置については、後に説明する。
【0015】
ヒータ20は、図示しない制御装置に接続され、制御装置によって所定の条件下の場合(たとえば、金属溶湯40の温度が所定温度以下になった場合)に通電されて、発熱部21が発熱する。そして、ヒータ20から発せられる熱によって、金属溶湯40が加熱・保温される。
【0016】
ヒータ20の温度は、金属溶湯40の種類によって変わるが、たとえばアルミニウム合金の場合、1000℃以上まで昇温するように設定される。
【0017】
上記したヒータ20は、金属溶湯用部材30に収容されて保護される。すなわち、金属溶湯用部材30は、具体的にヒータチューブである。以下、金属溶湯用部材30を「ヒータチューブ30」と称することがある。
【0018】
ヒータ20が収容されたヒータチューブ30は、保持槽10の鉛直方向において上部にある天井部10aに取り付けられる。
【0019】
なお、上記では、金属溶湯用部材たるヒータチューブ30が保持槽10の天井部10aに取り付けられるように構成したが、取り付け位置はこれに限定されるものではない。すなわち、ヒータチューブ30は、金属溶湯40と直接触れるように設置されていればよい。具体的にたとえば、ヒータチューブ30は、保持槽10の側壁10bや下部10cから内部の空間11へ差し込まれて取り付けられてもよく、または、天井部10aから空間11へ斜めに差し込まれて取り付けられてもよい。また、ヒータチューブ30が固定されない場合もある。
【0020】
ところで、ヒータチューブにおいては、ヒータからの熱を金属溶湯へ効率良く伝達することが求められるため、熱伝達性の向上が望まれていた。すなわち、たとえば、金属溶湯を所望する温度まで加温する場合に、ヒータチューブの熱伝達性が低いと、ヒータを比較的高い温度まで昇温させたとしても、金属溶湯へ伝わる熱伝達量が制限され、一定量以上の熱量を金属溶湯へ伝えることができない。そのため、ヒータチューブについては熱伝達性が高いものが望ましい。
【0021】
そこで、本実施形態に係るヒータチューブ30にあっては、金属溶湯40と接する部分などの表面積を増加させることで、熱伝達性を向上させ、狙い通りの熱量を金属溶湯40へ与えるようにした。以下、そのようなヒータチューブ30の構成について、
図2以降を参照して詳しく説明する。
【0022】
なお、詳しくは後述するが、金属溶湯用部材30は、ヒータチューブではなく、たとえば金属溶湯40の温度を検出する温度検出部50を保護する「保護管」として用いられてもよい(
図14参照)。保護管である場合は、表面積の増加によって熱伝達性が比較的高くなることから、熱伝達量が増加し、温度検出にかかる時間を短縮することができ、結果としてより緻密な金属溶湯40の温度管理が可能となる。
【0023】
<2.ヒータチューブ(金属溶湯用部材)の構成>
図2は、
図1に示すヒータチューブ30を金属溶湯保持炉1から取り出して示す側面図である。また、
図3は、
図2に示すヒータチューブ30の縦断面図であり、
図4は、
図2のA−A線断面図である。なお、
図2などにおいては、ヒータチューブ30が金属溶湯保持炉1に取り付けられた状態にある場合の、金属溶湯40の液面40aを想像線で示している。
【0024】
図2〜
図4に示すように、ヒータチューブ30は、浸漬部31と、外周側溝部32aと、内周側溝部32bとを備える。なお、以下においては、外周側溝部32aおよび内周側溝部32bを、溝部32と総称する場合がある。また、
図1においては、図示の簡略化のため、溝部32の図示を省略している。
【0025】
図2,3によく示すように、浸漬部31は、長尺状に形成されるとともに、底部33を有する有底円筒状に形成される。また、浸漬部31は、内部に空間34が設けられ、空間34には上記したヒータ20が収容される(
図1参照)。
【0026】
底部33は、略半球状に形成される。また、浸漬部31において、底部33を一端側とした場合の他端側は、フランジ部35が形成されるとともに、外部空間に開放されている。
【0027】
フランジ部35は、
図1に示すように、保持槽10の天井部10aに係止され、これによってヒータチューブ30が保持槽10に固定される。なお、浸漬部31の長手方向(
図2,3紙面において上下方向)の長さは適宜設定されるが、ここでは、たとえば1000mmとされる。
【0028】
上記のように構成された浸漬部31は、
図1に示すように、保持槽10に固定された状態にあるとき、金属溶湯40に浸漬される、詳しくは金属溶湯40に部分的に浸漬される。
図1などでは、浸漬部31において金属溶湯40に浸漬している部位を、符号Sで示し、以下「浸漬部位S」と称する。
【0029】
外周側溝部32aは、浸漬部31の外周面31aに部分的に形成される。具体的にたとえば、外周側溝部32aは、浸漬部31の外周面31aのうち、浸漬部位Sに形成される。また、外周側溝部32aは、
図2に示すように、螺旋状に形成される。
【0030】
なお、上記では、外周側溝部32aが螺旋状に形成されるようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、外周側溝部32aは、たとえば浸漬部31の周方向に沿って形成され(換言すれば浸漬部31の長手方向に対して直交する方向に沿って形成され)、いわゆる横溝とされていてもよい。
【0031】
図5は、
図2に示す外周側溝部32aを拡大して示す拡大縦断面図である。
図5から分かるように、外周側溝部32aの横断面形状は、方形状とされる。具体的にたとえば、外周側溝部32aは、幅w1が1〜5mmの間、好ましくは2.5mmに設定され、ピッチp1は2〜10mmの間、好ましくは5mmに設定される。詳しくは、幅w1が1mm未満の場合やピッチp1が2mm未満の場合、外周側溝部32aが過度に細く、金属溶湯40が外周側溝部32aに侵入し難いため、すなわち、金属溶湯40とヒータチューブ30とが接触し難くなるため、かえって熱伝達性を悪化させるおそれがある。一方、幅w1が5mmより大きい場合やピッチp1が10mmより大きい場合、外周面31aの表面積をあまり増加させることができず、熱伝達性を向上させる効果が小さくなるおそれがある。
【0032】
また、外周側溝部32aの深さd1は1〜5mmの間、好ましくは3mmに設定される。詳しくは、深さd1が1mm未満の場合、外周面31aの表面積をあまり増加させることができず、ヒータチューブ30の熱伝達性を向上させる効果が小さくなるおそれがある。一方、深さd1が5mmより大きい場合、外周側溝部32aの切込みが深くなり、ヒータチューブ30の強度が低下するおそれがある。強度の低下を防ぐためにヒータチューブ30の肉厚を厚くすることが考えられるが、その場合はヒータチューブ30全体の肉厚が厚くなるので、コストの増加を招くこととなる。
【0033】
このように、浸漬部31の外周面31aに外周側溝部32aが形成されることから、外周面31aにおける表面積を、外周側溝部32aが無い場合と比べて増加させることができる。なお、外周側溝部32aによる外周面31aの表面積の増加率は、たとえば10%以上であり、好ましくは40%以上とされる。
【0034】
これにより、ヒータチューブ30においては、金属溶湯40と接触する面積が増加することとなるため、ヒータ20から受けた熱を金属溶湯40へ効率良く伝達でき、ヒータチューブ30の熱伝導性を向上させることができる。
【0035】
内周側溝部32bは、浸漬部31の内周面31bに部分的に形成される。具体的にたとえば、内周側溝部32bは、浸漬部31の内周面31bのうち、浸漬部位Sに対応する部位に形成される。また、内周側溝部32bは、
図3に示すように、浸漬部31の長手方向(
図3紙面の上下方向)に沿って形成され、いわゆる縦溝とされる。
【0036】
なお、上記では、内周側溝部32bが、浸漬部31の長手方向に略平行に延伸する縦溝となるようにしたが、これに限定されるものではなく、たとえば浸漬部31の長手方向に対して傾斜させた溝とされていてもよい。
【0037】
図4に示すように、内周側溝部32bの横断面形状は、方形状とされる。具体的にたとえば、内周側溝部32bは、幅w2が1〜20mmの間、好ましくは10mmに設定され、ピッチp2は2〜40mmの間、好ましくは20mmに設定される。詳しくは、幅w2が1mm未満の場合やピッチp2が2mm未満の場合、内周側溝部32bが過度に細く、たとえば後述する成形器から抜き出し難くなって、製作容易性が低下するおそれがある。一方、幅w2が20mmより大きい場合やピッチp2が40mmより大きい場合、内周面31bの表面積をあまり増加させることができず、熱伝達性を向上させる効果が小さくなるおそれがある。
【0038】
また、内周側溝部32bの深さd2は1〜5mmの間、好ましくは3mmに設定される。詳しくは、深さd2が1mm未満の場合、上記と同様、成形器から抜き出し難くなって、製作容易性が低下するおそれがある。一方、深さd2が5mmより大きい場合、内周面31bにおいて内周側溝部32bが形成されない部位の肉厚が厚くなり、コストの増加を招くおそれがある。
【0039】
このように、浸漬部31の内周面31bに内周側溝部32bが形成されることから、内周面31bにおける表面積を、内周側溝部32bが無い場合と比べて増加させることができる。なお、内周側溝部32bによる内周面31bの表面積の増加率は、たとえば10%以上であり、好ましくは40%以上とされる。
【0040】
これにより、ヒータチューブ30は、内周面31bにおいて、ヒータ20によって昇温させられた空気と接触する面積が増加することとなるため、ヒータ20の熱を効率良く吸収して金属溶湯40へ伝達でき、よってヒータチューブ30の熱伝導性を向上させることができる。
【0041】
さらに、上記した熱伝導性の向上により、ヒータ20の消費エネルギーを低減させることが可能となり、それによってヒータ20およびヒータチューブ30を小型のものにすることができる。また、ヒータ20等の小型化に伴って、金属溶湯保持炉1全体の小型化を図ることもできる。
【0042】
また、上記した溝部32が浸漬部31の浸漬部位Sに形成されることから、浸漬部31において浸漬部位Sとそれ以外の部位T(
図1参照。以下「非浸漬部位T」という)とで、熱伝達性を相違させることができる。すなわち、浸漬部31の熱伝達性は、浸漬部位Sが高く、非浸漬部位Tが低くなる。
【0043】
これにより、ヒータ20の熱を浸漬部31の浸漬部位Sから金属溶湯40へ効率良く伝達できる一方、非浸漬部位Tからの放熱によるエネルギーロスを抑制することができる。
【0044】
なお、上記では、浸漬部31の浸漬部位Sのほぼ全域にわたって溝部32が形成されるようにしたが、これは例示であって限定されるものではない。すなわち、溝部32が、浸漬部位Sに加え、非浸漬部位Tにも形成されるようにしてもよい。また、溝部32が、浸漬部位Sの一部分に形成されるようにしてもよい。したがって、溝部32は、少なくとも、浸漬部31の浸漬部位Sを含むように形成されていればよい。
【0045】
ヒータチューブ30の材質としては、炭化珪素系セラミックス、窒化珪素系セラミックス等を用いることができる。
【0046】
これにより、ヒータチューブ30においては、熱伝達性をより一層向上させることができるとともに、ヒータチューブ30の強度や熱衝撃性なども向上させることができる。
【0047】
ここで、ヒータ20の発熱部21の位置について、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、発熱部21は、ヒータチューブ30の内部の空間34において、浸漬部31の浸漬部位Sと対応する位置に配置される。具体的には、長尺状の発熱部21は、基端部21aから先端部21bまでが、内部の空間34の、浸漬部位Sと対応する空間34内に位置するように配置される。
【0048】
これにより、浸漬部31において溝部32が形成される位置に、ヒータ20の発熱部21が位置することとなり、よって発熱部21からの熱を溝部32を介して金属溶湯40へより一層効率良く伝達させることができる。
【0049】
<3.ヒータチューブ(金属溶湯用部材)の製造方法>
次に、ヒータチューブ(金属溶湯用部材)30の製造方法について説明する。
図6は、本実施形態に係るヒータチューブ(金属溶湯用部材)30の製造工程を示すフローチャートである。
【0050】
図6に示すように、先ず主原料粉末と焼結助剤と溶媒とを湿式混合し、スプレードライ処理により顆粒化する。そして、得られた顆粒を成形器へ投入する(ステップS1)。主原料粉末としては、窒化珪素粉末を用いることができる。また、焼結助剤としては、イットリウム(Y)を含むものを用いることができるが、これは例示であって限定されるものではない。すなわち、焼結助剤は、たとえばイッテルビウム(Yb)やルテチウム(Lu)など、その他の元素を含むものであってもよい。また、溶媒としては、蒸留水を用いることができるが、これに限らず、水やアルコール系であってもよい。
【0051】
成形器は、冷間静水圧プレス(CIP)用の成形器である。図示は省略するが、成形器は、有底円筒状のゴム型の中に、金属製で棒状の中芯が立設されるように構成される。また、ゴム型と中芯との間には隙間が形成される。ステップS1の処理では、かかる隙間に顆粒が充填されるようにする。なお、中芯には、上記した内周側溝部32bを形成するための凸部が設けられている。
【0052】
次いで、成形処理を行って、浸漬部31および内周側溝部32bが形成された成形品を作製する(ステップS2)。具体的には、ゴム型を外部から加圧することで、顆粒が圧縮成形し、成形品となる。このとき、成形品には、浸漬部31やフランジ部35が形成されるとともに、中芯の凸部によって内周側溝部32bも形成されている。
【0053】
次いで、成形品を成形器から抜き出し(脱型)、加工処理を行う(ステップS3)。具体的には、浸漬部31の外周面31aを図示しない切削機などで削って外周側溝部32aを形成する。このように、外周側溝部32aの形成は、成形品を加工する、いわゆる後加工の工程で行われることから、浸漬部31の外周面31aに外周側溝部32aを容易に設けることができる。
【0054】
続いて、外周側溝部32aや内周側溝部32b等が形成された成形品を焼結炉に入れて焼結させ(ステップS4)、
図2に示すようなヒータチューブ30が完成する。
【0055】
なお、上記したヒータチューブ30の製造工程では、内周側溝部32bを成形処理で形成し、外周側溝部32aを加工処理で形成するようにしたが、これは例示であって限定されるものではない。
【0056】
すなわち、外周側溝部32aおよび内周側溝部32bを、成形処理で形成しても、加工処理で形成してもよく、さらには、焼結処理の後の焼結体を削ることで形成するようにしてもよい。
【0057】
上述してきたように、本実施形態に係る金属溶湯用部材30は、浸漬部31と、溝部32とを備える。浸漬部31は、金属溶湯40に浸漬される。溝部32は、浸漬部31に形成される。これにより、金属溶湯用部材30において、熱伝達性を向上させることができる。
【0058】
図7A、
図7Bおよび
図7Cは、変形例に係る溝部32の横断面図である。なお、
図7A〜
図7Cにおいて図示する溝部32は、外周側溝部32aであっても、内周側溝部32bであってもよい。
【0059】
上記では、外周側溝部32aも内周側溝部32bも、その横断面形状は方形状とされるが、これに限定されるものではない。すなわち、たとえば、溝部32の横断面形状を、
図7Aに示すような略三角形状、
図7Bに示すような略半円形状、
図7Cに示すような略U字形状など、その他の形状にするようにしてもよい。
【0060】
図8は、変形例に係る内周側溝部32bの横断面図である。上記では、内周側溝部32bの横断面形状は、
図4に示すような四隅に角部を有する方形状としたが、それに限定されるものではなく、たとえば
図8に示すような四隅に湾曲した角部を有する方形状であってもよい。なお、図示は省略するが、外周側溝部32aについても、同様に、横断面形状が四隅に湾曲した角部を有する方形状であってもよい。
【0061】
すなわち、溝部32の横断面形状は、一定の形状に限定されるものではなく、ヒータチューブ30の表面積を増加させるような形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0062】
また、上記では、内周側溝部32bの深さが浸漬部31の長手方向において一定であるようにしたが、これに限定されるものではない。
図9は、内周側溝部32bの変形例を示す、ヒータチューブ30の部分縦断面図である。
【0063】
図9に示すように、内周側溝部32bは、浸漬部31の底部33である一端側の深さd2aが浸漬部31の他端側の深さd2bよりも深いテーパ状に形成されるようにしてもよい(d2a>d2b)。
【0064】
このように構成すれば、内周側溝部32bのテーパ状部分が、たとえば、上記した成形処理後に成形体を成形器から抜き出す際の抜き勾配として機能することから、抜き出しがスムーズになり、ヒータチューブ30の製作容易性を向上させることができる。
【0065】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る金属溶湯用部材(ヒータチューブ)130を示す、
図2と同様な側面図である。また、
図11は、
図10のB−B線断面図である。なお、以下においては、第1の実施形態と共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図10,11に示すように、第2の実施形態に係るヒータチューブ130においては、第1の実施形態で螺旋状であった外周側溝部132aが、長手方向(
図10紙面の上下方向)に沿って形成され、いわゆる縦溝とされるようにした。すなわち、外周側溝部132aと内周側溝部32bとがともに、縦溝となるように形成される。
図10に示すように、外周側溝部132aの横断面形状は、方形状とされる。また、外周側溝部132aの幅、深さおよびピッチの各寸法は、上記した内周側溝部32bの各寸法と略同じに設定されるが、それに限定されるものではなく、互いに相違させるようにしてもよい。
【0067】
そして、
図11に示すように、このときの内周側溝部32bと外周側溝部132aとは、浸漬部131において周方向に沿って互い違いに形成される。これにより、ヒータチューブ130において、熱伝達性の低下や強度の低下を招くこともない。
【0068】
すなわち、たとえば仮に、内周側溝部および外周側溝部が、浸漬部において周方向に沿って同じ位置に形成されると、浸漬部においては、溝部が形成される部位の肉厚が薄くなる一方、溝部が形成されない部位の肉厚が厚くなってしまう。このため、浸漬部においては、周方向において肉厚にむらができるため、肉厚が薄い部分の強度が低下し、サーマルショック等の影響を受け易くなるおそれがある。
【0069】
これに対し、第2の実施形態に係るヒータチューブ130にあっては、内周側溝部32bと外周側溝部132aとが、上記のように配列されることから、周方向において肉厚にむらが生じ難く、結果として熱伝達性や強度の低下を招くこともない。なお、残余の構成および効果は第1の実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0070】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態に係る金属溶湯用部材(ヒータチューブ)230を示す、
図2と同様な側面図であり、
図13は、
図12のC−C線断面図である。
【0071】
図12,13に示すように、第3の実施形態に係るヒータチューブ230においては、第1の実施形態の外周側溝部32aを除去するようにした。すなわち、
図13によく示すように、ヒータチューブ230にあっては、浸漬部231の外周面31aには、溝部が形成されず、内周面31bにのみ内周側溝部32bが形成されるようにした。
【0072】
このように、浸漬部231の外周面31aに溝部が形成されないことから、外周面31aに対して金属溶湯40が付着し難くなり、よってヒータチューブ230のメンテナンス性を向上させることができる。
【0073】
すなわち、たとえば、ヒータチューブ230を保持槽10から抜き出してメンテナンスを行うような場合、外周面31aに付着した金属溶湯40を取り除く作業を要することがある。しかしながら、本実施形態に係るヒータチューブ230にあっては、上記した如く、外周面31aに金属溶湯40が付着し難い構成としたことから、その取り除く作業の負担を軽減でき、メンテナンス性を向上させることができる。
【0074】
一方、浸漬部231の内周面31bには、内周側溝部32bが形成される。したがって、第3の実施形態に係るヒータチューブ230にあっては、内周面31bに形成された内周側溝部32bによって熱伝達性を向上させながら、メンテナンス性の向上をも図ることができる。なお、残余の構成および効果は従前の実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0075】
(第4の実施形態)
上記した第1〜第3の実施形態では、金属溶湯用部材が、ヒータチューブである場合を例にとって説明したが、金属溶湯用部材の用途はそれに限定されるものではない。
図14は、第4の実施形態に係る金属溶湯用部材330を備えた金属溶湯保持炉100の構成例を示す、
図1と同様な模式断面図である。
【0076】
第1実施形態との相違点に焦点をおいて説明すると、
図14に示す例では、金属溶湯用部材330が、金属溶湯40の温度を検出する温度検出部50を保護する保護管として用いられる。
【0077】
詳しくは、金属溶湯用部材330の浸漬部31には、第1の実施形態において収容されていたヒータ20に代えて、温度検出部50が収容される。温度検出部50としては、熱電対を用いることができるが、それに限定されるものではなく、たとえば測温抵抗体など他の種類の温度センサを用いてもよい。なお、残余の構成は第1の実施形態と同一である。
【0078】
したがって、金属溶湯用部材330においては、熱伝達性が比較的高いため、熱伝達量が増加し、金属溶湯40の熱は、金属溶湯用部材330の浸漬部31の内部の空間34へ伝わり易い。そのため、温度検出部50においては、金属溶湯40の温度変化に対する応答性が向上し、温度検出にかかる時間を短縮することができ、さらに検出精度も上げることができる。これにより、より緻密な金属溶湯40の温度管理が可能となる。
【0079】
なお、第4の実施形態の金属溶湯用部材330には、第1の実施形態で示した溝部32が形成されるが(
図14で図示省略)、第2または第3の実施形態で示した形状の溝部が形成されるようにしても、同様な効果を得ることができる。
【0080】
なお、上記した実施形態において、溝部32は、浸漬部31の外周面31aや内周面31bに対して切削等を行うことで形成されるようにしたが、外周面31a等の表面積を増加させるような形状にできれば、その形成手法はどのようなものであってもよい。すなわち、溝部32は、外周面31aや内周面31bを部分的に隆起させたり、凸状の部材を取り付けたりすることで、形成されるものであってもよい。
【0081】
また、第1の実施形態にあっては、外周側溝部32aが螺旋状に形成されるようにしたが、内周側溝部32bも螺旋状に形成されるようにしてもよい。また、第2、第3の実施形態にあっては、内周側溝部32bが長手方向に沿った縦溝とされるが、螺旋状に形成されるようにしてもよい。また、第3の実施形態にあっては、溝部32が内周面31bのみ形成されるようにしたが、これに限定されるものではなく、たとえば外周面31aにのみ形成されるようにしてもよい。
【0082】
また、上記では、溝部32が、螺旋状などに形成されるように構成したが、たとえば格子状、波状などその他の種類の形状に形成されるようにしてもよい。
【0083】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。