(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜
図7は、本発明の製造方法の一実施形態によって製造された光アイソレータ10を有する光アイソレータユニット11を示す図である。
図1および
図2に示すように、光アイソレータユニット11は、光アイソレータ10に押圧機構12を付加したものである。
光アイソレータ10は、ファイバレーザ等の光源13からの順方向の光L1が導入されるアイソレータコア1と、アイソレータコア1に磁界を印加する磁性構造体2(磁界印加手段)と、これらを収容する外装体3とを備えている。
【0011】
以下、
図1〜
図7に示すXYZ直交座標系を参照しつつ構造説明を行うことがある。X方向はアイソレータコア1の長さ方向である。Y方向は底板部21および基台部28(
図2等を参照)に平行な面内でX方向に直交する方向であって、底板部21の幅方向である。Z方向はX方向およびY方向と直交する高さ方向である。
【0012】
図3に示すように、アイソレータコア1は、光源13からの順方向の光L1が透過する順に、検光子4と、ファラデー回転子5と、旋光子6と、偏光子7とを備え、これらはホルダ8に保持されている。
光源13からの光が入射する側のアイソレータコア1の端部を入射端1aといい、前記光が出射する側のアイソレータコア1の端部を出射端1bという。
光源13からアイソレータコア1に向かう光の方向を順方向といい、その逆の方向を逆方向という。
【0013】
アイソレータコア1は、偏波無依存型の構造を採用してもよいし、偏波依存型の構造を採用してもよい。
偏波無依存型の構造を採用する場合には、検光子4および偏光子7として、例えば複屈折結晶型の偏光子などの透過型偏光子を使用できる。偏波依存型の構造を採用する場合には、検光子4および偏光子7として、いわゆる吸収型偏光子を使用できる。
検光子4および偏光子7としては、ファイバレーザ等のハイパワー用途を考慮し、耐パワー性に優れた透過型偏光子が好適である。
【0014】
ファラデー回転子5には、テルビウム・ガリウム・ガーネット(TGG)、テルビウム・スカンジウム・ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(TSLAG)、イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット(TAG)、テルビウムガラスなどの、常磁性体である磁気光学材料(ファラデー結晶)が使用でき、特にTGGの使用が好ましい。
ファラデー回転子5は、ファラデー効果により入射光L1の偏光面を回転させる。ファラデー回転子5の長さは、入射光に対して出射光の偏光面が約45度異なるように設定することができる。
旋光子6としては、例えば水晶からなる1/2波長板、水晶旋光子等が使用できる。
【0015】
検光子4と、ファラデー回転子5と、旋光子6と、偏光子7との断面形状(YZ平面における形状)はいずれも矩形とすることができる。これらを矩形とすることで、アイソレータコア1の体積を小さくできるため、コスト抑制が可能である。
【0016】
ホルダ8は、2つの断面L字形のホルダ部材8a、8bを、向い合せて組み合わせることによって矩形筒状に形成されている。
ホルダ8には、検光子4、ファラデー回転子5、旋光子6、および偏光子7が収容される。検光子4、ファラデー回転子5、旋光子6、および偏光子7は、ホルダ部材8a、8bの一方のみに接着固定してもよい。
【0017】
なお、アイソレータコア1は、少なくとも、検光子4と、ファラデー回転子5と、偏光子7とを備えた構造としてもよい。
【0018】
図2、
図4〜
図7に示すように、磁性構造体2は、スリーブ状に形成されており、構造体本体15と、構造体本体15を囲む保持体16と、を有する。
【0019】
図7に示すように、構造体本体15は、一対の環状の端部磁性体17、18と、これらの間に設けられた環状の中間磁性体19とを備えている。
第1の端部磁性体17は、ブロック状の4つの磁性体17a〜17dを組み合わせて構成されている。磁性体17a〜17dは、それぞれ直方体状であり、全体として、中央に矩形の挿通口17eを有する矩形の環状となるように組み合わされている。
第2の端部磁性体18は、ブロック状の4つの磁性体18a〜18dを組み合わせて構成されている。磁性体18a〜18dは、それぞれ直方体状であり、全体として、中央に矩形の挿通口18eを有する矩形の環状となるように組み合わされている。
4つの磁性体17a〜17dと、4つの磁性体18a〜18dの並び方は、互いに同じである。すなわち、
図7(b)において、磁性体17aの位置は、その背後にある磁性体18aの位置に一致している。同様に、磁性体17b〜17dの位置は、その背後にある磁性体18b〜18dの位置にそれぞれ一致している。
【0020】
中間磁性体19は、端部磁性体17、18の挿通口17e、18eに連通する断面矩形の挿通口19eを有する矩形角筒状に形成されている。
端部磁性体17、18の挿通口17e、18eと、中間磁性体19の挿通口19eとは、アイソレータコア1が挿通する内側空間20を形成している。内側空間20は、磁性構造体2の軸方向に沿って磁性構造体2を貫通する断面矩形の孔部である。
【0021】
端部磁性体17、18および中間磁性体19は、十分な磁気特性が得られれば、その材料は特に限定されない。例えば、ネオジム系磁石が使用できる。
【0022】
図7(b)に示すように、端部磁性体17、18を構成する磁性体17a〜17d、18a〜18dは、それぞれ、構造体本体15の軸方向(X方向)に対して垂直な方向に磁化されている。
磁性体17aと磁性体18aとは互いに逆の方向に磁化されている。同様に、磁性体17bと磁性体18b、磁性体17cと磁性体18c、磁性体17dと磁性体18dについても、互いに逆の方向に磁化されている。
図7(a)、
図7(c)に示すように、中間磁性体19は、構造体本体15の軸方向(X方向)に磁化されている。
【0023】
磁性体17a〜17dと磁性体18a〜18dとの磁化方向が互いに逆であり、これらの磁化方向は中間磁性体19の磁化方向に対して垂直であるから、端部磁性体17、18および中間磁性体19はハルバッハ配列されているといえる。磁性構造体2は、この配列の採用により、アイソレータコア1に作用する磁界を強くすることができる。
【0024】
図6および
図7に示すように、保持体16は、底板部21と、底板部21の両側縁に立設された一対の側板部22と、一対の側板部22の上端間に架け渡された上板部23と、底板部21の長さ方向に間隔をおいて立設された一対の端板部24とを有する。保持体16には、ステンレス板などを用いてよい。
【0025】
底板部21は、X方向に延在する長方形の本体部21aと、本体部21aの長さ方向の一端から外方に延出する一方延出板21bと、本体部21aの長さ方向の他端から外方に延出する他方延出板21cとを有する。
一方延出板21bには、幅方向(Y方向)に間隔をおいて、一対の開口部21dが形成されている。開口部21dは、底板部21の長さ方向(X方向)に延在する長円形である。
他方延出板21cの先端縁21eには、幅方向(Y方向)に間隔をおいて、一対の凹部21fが形成されている。凹部21fは、底板部21の長さ方向(X方向)に延在する形状である。
【0026】
図4および
図5に示すように、一方延出板21bは、固定具40により基台部28に固定できる。
固定具40は、ヘッド部40aとこれから延出する軸部40bとを備えている。開口部21dに挿通する軸部40bが基台部28にネジ止め等により固定されることによって、ヘッド部40aが一方延出板21bを基台部28に押さえつけて位置決めできる。
【0027】
他方延出板21cは固定具40により基台部28に固定できる。
固定具40は、凹部21fに挿通する軸部40bが基台部28にネジ止め等により固定されることによって、ヘッド部40aが一方延出板21bを基台部28に押さえつけて位置決めできる。
【0028】
開口部21dおよび凹部21fは、底板部21の長さ方向(X方向)に延在する形状であり、その長さ寸法は固定具40の軸部40bの外径より大きい。このため、固定具40のネジ止めを緩めれば、軸部40bが開口部21dおよび凹部21fに挿通したままで固定が解除され、底板部21は、(幅方向(Y方向)の移動が規制されつつ)長さ方向(X方向)に移動可能となる。
【0029】
一対の端板部24には、それぞれアイソレータコア1が挿通する略矩形の挿通口24aが形成されている。挿通口24aは、平面視位置が端部磁性体17、18の挿通口17e、18eにほぼ一致する。
【0030】
図1および
図2に示すように、外装体3は、本体部26と、本体部26の上部開口26aを開閉自在に閉止する蓋部27とを備えている。
本体部26は、X方向に延在する長方形の基台部28と、基台部28の両側縁に立設された一対の側板部29と、基台部28の両端縁に立設された一対の端板部30とを有する。
外装体3は、本体部26の側板部29、29間に確保された内部空間26bに磁性構造体2を収容できる。
側板部29、29間の離間距離は、磁性構造体2の幅寸法(Y方向の寸法)に近い値に設定すると、磁性構造体2の幅方向移動を規制できるため、後述の工程で磁性構造体2が移動する際に、磁性構造体2が傾斜姿勢となるのを防ぐことができる。
【0031】
一対の端板部30のうち、光源13に近い側の端板部30(30A)は、光源13からアイソレータコア1に向かう順方向の光L1が通過する通過口30aを有する。他方の端板部30Bは、アイソレータコア1を透過した出射光L2が通過する通過口30bを有する(
図4、
図5参照)。
【0032】
図1、
図4および
図5に示すように、押圧機構12は、基体31と、基体31に設けられたネジ式押圧具32と、基体31に回動自在に取り付けられた回動押圧体33と、を備えている。
ネジ式押圧具32は、回転ヘッド34と、本体筒部35と、回転ヘッド34の回転操作によりネジ送りされるスピンドル36とを備えている。本体筒部35は、基体31に固定されている。
ネジ式押圧具32は、回転ヘッド34を軸回り方向に回転操作することによって、本体筒部35からのスピンドル36の突出寸法を調節できる。
【0033】
図5に示すように、回動押圧体33は、側面視で直角二等辺三角形のブロック状に形成され、磁性構造体2の幅方向(Y方向)に延在する回動軸37において回動自在に基体31に取り付けられている。回動軸37は、直角である第1角部33aに近い位置に設けられている。
回動押圧体33は、回動軸37を中心として、下端である第2角部33bが磁性構造体2に接近および離間するように回動することができる。
【0034】
回動押圧体33は、第3角部33cに近い位置がスピンドル36により下方に押圧されることによって(
図5の右回りに)回動し、第2角部33bを含む下部33dが、磁性構造体2の端板部24に設けられた突起部39を、磁性構造体2の軸方向(X方向)に押圧し、磁性構造体2をこの方向(
図5の左方。アイソレータコア1の入射端1a方向)に移動させることができる。
押圧機構12は、光アイソレータ10に対して着脱可能である。
【0035】
光アイソレータユニット11には、磁性構造体2をアイソレータコア1の出射端1b方向(
図5の右方)に付勢する付勢手段(コイルスプリング等。図示略)を設けてもよい。付勢手段は、例えば端板部30(30A)の内面に反力をとって同方向に付勢する構成としてよい。
また、光アイソレータユニット11は、押圧機構12と同じ構成の第2の押圧機構を設けてもよい。第2の押圧機構は、磁性構造体2をアイソレータコア1の出射端1b方向(
図5の右方)に移動させることができる構成としてよい。
なお、この例の押圧機構12は、スピンドル36が回動押圧体33を介して間接的に磁性構造体2を押圧するが、押圧機構は、スピンドルが直接に磁性構造体2を押圧し移動させる構成であってもよい。
【0036】
図3および
図4に示すように、偏波無依存型の構造を採用する場合には、光源13からの順方向の入射光L1は、端板部30(30A)の通過口30aを通って入射端1aからアイソレータコア1に入射し、検光子4で互いに直交する2つの偏光成分(常光と異常光)に分離する。この光は、ファラデー回転子5および旋光子6でそれぞれ偏光面が光軸回りに回転し、偏光子7によって1つの光線に合成され、出射光L2として出射する。
【0037】
逆方向の戻り光L3は、出射端1bからアイソレータコア1に入射し、偏光子7で互いに直交する2つの偏光成分(常光と異常光)に分離し、旋光子6およびファラデー回転子5でそれぞれ偏光面が光軸回りに回転し、検光子4に達する。
ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)である場合には、前記光は、常光と異常光の関係が逆転して検光子4を透過することにより光路が大きくずれて透過光L4として出射し、大部分が端板部30(30A)に遮られる。
一方、ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)を外れる場合には、前記光は、検光子4を透過する際に、常光と異常光からそれぞれ逆の成分の光が分離される。このため、透過光L4の一部は通過口30aを通過する。
【0038】
偏波依存型の構造を採用する場合には、光源13からの順方向の入射光L1は検光子4に入射し、検光子4と同じ偏光面を有する光のみが検光子4を通過する。この光は、ファラデー回転子5および旋光子6でそれぞれ偏光面が光軸回りに回転し、偏光子7を通過して、出射光L2として出射する。
逆方向の戻り光L3は、偏光子7と同じ偏光面を有する光のみが偏光子7を通過し、旋光子6およびファラデー回転子5でそれぞれ偏光面が光軸回りに回転し、検光子4に達する。
ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)である場合には、前記光は、検光子4の偏光面に対し略直交する偏光面を有することにより、大部分が検光子4で遮断される。
一方、ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)を外れる場合には、前記光の偏光面が検光子4の偏光面に対し略直交からずれることにより、検光子4を透過して通過口30aを通過する透過光L4は多くなる。
【0039】
光源13からアイソレータコア1に入射される光の波長は、例えば、900nm〜1100nm(好ましくは1000nm〜1100nm)としてよい。
【0040】
次に、本発明の光アイソレータの製造方法の一実施形態を説明する。
アイソレータコア1で得られるファラデー回転角は、例えば、ファラデー回転子5の長さをL、ベルデ定数をV、アイソレータコア1に印加される磁界をHとすると、「V×L×H」となる。
アイソレータコア1に印加される磁界「H」は、磁性構造体2とアイソレータコア1の相対位置に応じて変動することから、この相対位置が変化すると、ファラデー回転子5でのファラデー回転角も変動する。
【0041】
図8は、磁性構造体2の内側空間20における、光の透過方向(X方向)の磁束密度分布を示す図である。横軸はX方向位置であり、縦軸は磁束密度である。
この図より、磁性構造体2の内側空間20の中央付近では磁束蜜度が高く、中央付近から外れた位置では当該中央付近からの距離に応じて磁束密度が低くなることがわかる。
【0042】
図9は、磁性構造体2の内側空間20の平均磁束密度を示す図である。横軸はX方向位置であり、縦軸は平均磁束密度である。平均磁束密度とは、アイソレータコア1のファラデー回転子5の長さ方向の平均値である。
この図より、磁性構造体2の内側空間20においてアイソレータコア1の位置が変動すると、ファラデー回転子5に印加される磁界が変動することがわかる。
【0043】
図5に示すように、光アイソレータユニット11を用意する。アイソレータコア1には、出射端1bに試験光用の光源41を接続するとともに、入射端1aに光パワーメータ42を接続する。磁性構造体2は、X方向に移動可能としておく。
光源41からの試験光L5を、出射端1b側からアイソレータコア1に導入する。
試験光L5の波長は、例えば、900nm〜1100nm(好ましくは1000nm〜1100nm)としてよい。試験光L5は、光源13(
図1参照)が発する光と同じ波長の光であってよい。
【0044】
偏波無依存型の構造を採用する場合には、試験光L5は、偏光子7で互いに直交する2つの偏光成分(常光と異常光)に分離し、旋光子6およびファラデー回転子5でそれぞれ偏光面が光軸回りに回転し、検光子4に達する。
ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)である場合には、前記光は、常光と異常光の関係が逆転して検光子4を透過することにより光路が大きくずれて出射し、大部分が端板部30(30A)に遮られる。このため、光パワーメータ42で検出される透過光L6の光パワーは小さくなる。
一方、ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)を外れる場合には、前記光は、検光子4を透過する際に、常光と異常光からそれぞれ逆の成分の光が分離される。このため、透過光の一部は通過口30aを通過し、光パワーメータ42で検出される透過光L6の光パワーは大きくなる。
【0045】
偏波依存型の構造では、吸収型偏光子を用いた場合、試験光L5は、偏光子7と同じ偏光面を有する成分のみが偏光子7を透過して、旋光子6およびファラデー回転子5で偏光面が光軸回りに回転し、検光子4に達する。
ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)である場合には、前記光は、検光子4の偏光面に対し略直交する偏光面を有することにより、大部分が検光子4で遮断される。このため、光パワーメータ42で検出される透過光L6の光パワーは小さくなる。
一方、ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)を外れる場合には、前記光の偏光面が検光子4の偏光面に対し略直交からずれることにより、検光子4を透過する光は多くなり、通過口30aを通過する透過光L6の光パワーは大きくなる。
【0046】
複屈折結晶等の透過型の偏光子を用いた場合、試験光L5は、偏光子7で常光と異常光に分離される。この光は、旋光子6で偏光面が光軸回りに回転し、ファラデー回転子5で偏光面が光軸回りに例えば約45°回転して検光子4に達する。
この光は、検光子4では常光と異常光の関係が逆転し検光子4を透過することにより光路が大きくずれて端板部30で外部に光が漏れないように遮断され、光パワーメータ42で検出される透過光L6の光パワーは小さくなる。
一方、ファラデー回転子5で偏光面が例えば約45°回転しない場合、検光子4に達した光は、常光と異常光の関係が逆転し検光子4を透過するが、常光と異常光からそれぞれ逆の成分の光が分離され、その分離された光が端板部30から漏れ、光パワーメータ42で検出される透過光L6の光パワーは大きくなる。
【0047】
次いで、透過光L6のパワーを測定しつつ、押圧機構12を用いて、アイソレータコア1に対する磁性構造体2をX方向に移動させる。
例えば、回転ヘッド34の回転操作により、回動押圧体33の第3角部33cに近い位置がスピンドル36により押圧されることによって(
図5の右回りに)回動押圧体33が回動すると、第2角部33bを含む下部33dが磁性構造体2に向かって移動する。
これによって、磁性構造体2の突起部39を、磁性構造体2の軸方向(X方向)に押圧し、磁性構造体2をこの方向(
図5の左方。アイソレータコア1の入射端1a方向)に移動させることができる。
【0048】
図10は、磁性構造体2の移動距離と透過光L6の光パワーとの関係の一例を示す図である。横軸はX方向位置であり、縦軸は透過光L6の光パワーである。
この図では、磁性構造体2の移動距離1mmの点が透過光L6の光パワーの極小値であるから、この位置において優れた遮断特性が得られたことがわかる。この位置は、45度に近いファラデー回転角が得られる位置であると認められる。
図5に示すように、この位置において、磁性構造体2を固定具40により基台部28に固定し位置決めできる。
【0049】
なお、磁性構造体2は、透過光L6の光パワーを指標として、必要に応じて、逆方向(
図5の右方。アイソレータコア1の出射端1b方向)に移動させてもよい。この方向の移動については、操作者が手指で磁性構造体2を同方向に移動させてもよいし、前述の付勢手段(コイルスプリング等)や第2の押圧機構を用いてもよい。
また、作業終了後は、押圧機構12を光アイソレータ10から取り外すことができる。
【0050】
本実施形態の製造方法では、アイソレータコア1に試験光L5を導入し、光パワーメータ42で透過光L6の光パワーを測定しつつ、押圧機構12等を用いて磁性構造体2をX方向に移動させ、透過光L6の光パワーが極小となるように磁性構造体2の位置を調整する。
このため、磁性構造体2に対するアイソレータコア1の位置を、高い遮断特性を有するように定めることができる。
従って、発生磁界にばらつき等が生じた場合でも、容易な操作で、確実に戻り光を遮断できるように調整できる。戻り光を遮断できるため、光源13(ファイバレーザ等)への影響を防ぎ、そのレーザ発振を安定させ、発光特性を良好にすることができる。また、ファイバーレーザ等の戻り光による破損を防止できる。
また、新たな部材の追加や特殊部品の使用などにより光アイソレータ10の構造が複雑化することがないため、コストを抑制できるという利点もある。
【0051】
前記製造方法では、検光子4を光軸回り方向に回転させる必要はないため、検光子4の断面形状は円形以外の形状、例えば矩形とすることができる。このため、磁性構造体2の内側空間20の断面形状を、磁性構造体2の外形(矩形)に合わせて矩形とすることができる。
よって、磁性構造体2の構造を簡略化するとともに小型化を図ることができ、コスト面で有利になる。また、磁性構造体2の内面とアイソレータコア1との隙間を小さくできるため、アイソレータコア1に対する磁気的作用の点で好ましい。
【0052】
以下、本発明の実施例について図面を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
図5等に示す光アイソレータユニット11を作製した。
アイソレータコア1のファラデー回転子5には、テルビウム・スカンジウム・ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(TSLAG)を使用した。ファラデー回転子5の長さは20mmとした。
アイソレータコア1に試験光L5(波長1080nm)を導入し、光パワーメータ42で透過光L6の光パワーを測定しつつ、押圧機構12を用いて磁性構造体2をX方向に移動させた。
透過光L6の光パワーの測定結果を表1に示す。表1中、「位置」は基準位置からの磁性構造体2の位置(X方向の位置)である。
【0054】
表1より、磁性構造体2の位置が1mmであるときに、ファラデー回転角は、最適値である約45度となることがわかる。
【0055】
本発明の光アイソレータの製造方法は、光アイソレータを調整する方法(光アイソレータの調整方法)として位置付けることもできる。
また、前記製造方法では、押圧機構12を用いて磁性構造体2を押圧し移動させたが、操作者が磁性構造体2を同方向に移動させてもよい。この場合には、押圧機構12を用いずに光アイソレータ10の製造が可能である。