(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148985
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】ニトロカテコールの投与計画
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20170607BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20170607BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20170607BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20170607BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20170607BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20170607BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20170607BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P25/00
A61P25/02
A61K31/198
A61P1/04
A61P7/10
A61P9/12
A61P25/16
【請求項の数】54
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-553014(P2013-553014)
(86)(22)【出願日】2011年10月21日
(65)【公表番号】特表2014-505096(P2014-505096A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】GB2011052056
(87)【国際公開番号】WO2012107708
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2014年10月21日
(31)【優先権主張番号】61/441,988
(32)【優先日】2011年2月11日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513203369
【氏名又は名称】ノヴィファーマ、エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】ソアレス ダ シルヴァ、パトリシオ マヌエル ヴィエイラ アラウジョ
(72)【発明者】
【氏名】ヌネス、テレサ ルシア シルヴァ ペレイラ
(72)【発明者】
【氏名】ライト、リンドン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】パルマ、ペドロ ヌノ リアル
(72)【発明者】
【氏名】リアマンス、デイヴィッド アレクサンダー
【審査官】
井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/094053(WO,A1)
【文献】
特表2001−511126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4439
A61K 31/198
A61P 1/04
A61P 7/10
A61P 9/12
A61P 25/00
A61P 25/02
A61P 25/16
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
[式中、R
1およびR
2は同一または異なって、水素、生理学的条件下に加水分解可能な基、または置換されていてもよいアルカノイルまたはアロイルを示し;Xはメチレン基を示し;YはO、SまたはNHを示し;nは0、1、2または3を示し;mは0または1を示し;R
3は、無標の結合で示されるように結合された式A、BまたはCのピリジンN−オキシド基を示す。
【化2】
式中、R
4、R
5、R
6およびR
7は同一または異なって、水素、アルキル、チオアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、チオアリール、アルカノイル、アロイル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロゲン、ハロアルキル、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロまたはヘテロアリールを示し、あるいはR
4、R
5、R
6およびR
7の2個以上が一緒になって、脂肪族またはヘテロ脂肪族環、または芳香環またはヘテロ芳香環を形成することを示す;「アルコキシ」、「アルカノイル」、「アルキル」、「チオアルキル」、「アルキルアミノ」、「ジアルキルアミノ」、「アルキルスルホニル」および「ハロアルキル」から選ばれる、「アルキル」の変形も含む「アルキル」の語は、1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の炭素鎖を意味する。「アリール」の語は、フェニルまたはナフチル基を意味する;「ヘテロシクロアルキル」の語は、酸素、硫黄または窒素の少なくとも1個の原子を含む4員〜8員環を表す;「ヘテロアリール」の語は、硫黄、酸素または窒素の少なくとも1個の原子を含む5員または6員環を表す;「ハロゲン」の語はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す;R
4、R
5、R
6およびR
7がアルキルまたはアリールを表す場合、それらは1個以上のヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲン基により置換されていてもよい
]または
その薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステル
もしくはリン酸エステル
を含む医薬組成物であって、
睡
眠前、就寝前または就寝時に投与され
る、中枢または末梢神経系障害の予防または治療に使用するための医薬組成物。
【請求項2】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルが、5−[3−(2,5−ジクロロ−4,6−ジメチル−1−オキシ−ピリジン−3−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−3−ニトロベンゼン−1,2−ジオール、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
1日に1回投与される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルの1日の有効投与量が、25〜300mg/日である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルの具体的な1日投与量が、1mg、3mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、50mg、100mg、200mg、400mg、800mgまたは1200mgである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
食物摂取の0.25〜12時間後に投与される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
食物摂取の0.25〜2時間前に投与される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
直近の食物摂取の少なくとも1時間後で、次の食物摂取の少なくとも1時間前に投与される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
睡眠の1時間未満前に、または就寝の1時間未満前に投与される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
就寝時に投与される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
カテコールアミン薬と併用するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
カテコールアミン薬がレボドパである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
カテコールアミン薬と連続して投与される、請求項11または12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
カテコールアミン薬の1日の最後の投与の30〜150分前または後に投与される、請求項11または12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
カテコールアミン薬の1日の最後の投与の少なくとも1時間前または後に投与される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
カテコールアミン薬の次の投与が、医薬組成物の投与の少なくとも2時間後である、請求項11〜15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
カテコールアミン薬がAADCiと連続してまたは同時に投与される、請求項11〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
AADCiがカルビドーパまたはベンセラジドである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
中枢および末梢神経系障害が、気分障害、胃腸障害、浮腫形成状態、高血圧または運動障害である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
運動障害がパーキンソン病である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
運動障害が運動変動を伴うパーキンソン病である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
式(I)の化合物
【化3】
[式中、R
1およびR
2は同一または異なって、水素、生理学的条件下に加水分解可能な基、または置換されていてもよいアルカノイルまたはアロイルを示し;Xはメチレン基を示し;YはO、SまたはNHを示し;nは0、1、2または3を示し;mは0または1を示し;R
3は、無標の結合で示されるように結合された式A、BまたはCのピリジンN−オキシド基を示す。
【化4】
式中、R
4、R
5、R
6およびR
7は同一または異なって、水素、アルキル、チオアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、チオアリール、アルカノイル、アロイル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロゲン、ハロアルキル、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロまたはヘテロアリールを示し、あるいはR
4、R
5、R
6およびR
7の2個以上が一緒になって、脂肪族またはヘテロ脂肪族環、または芳香環またはヘテロ芳香環を形成することを示す;「アルコキシ」、「アルカノイル」、「アルキル」、「チオアルキル」、「アルキルアミノ」、「ジアルキルアミノ」、「アルキルスルホニル」および「ハロアルキル」から選ばれる、「アルキル」の変形も含む「アルキル」の語は、1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の炭素鎖を意味する。「アリール」の語は、フェニルまたはナフチル基を意味する;「ヘテロシクロアルキル」の語は、酸素、硫黄または窒素の少なくとも1個の原子を含む4員〜8員環を表す;「ヘテロアリール」の語は、硫黄、酸素または窒素の少なくとも1個の原子を含む5員または6員環を表す;「ハロゲン」の語はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す;R
4、R
5、R
6およびR
7がアルキルまたはアリールを表す場合、それらは1個以上のヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲン基により置換されていてもよい
]またはその
薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステル
もしくはリン酸エステルを含む医薬組成物であって、
カテコールアミン薬の1日の最後の投与の少なくとも1時間後で、睡眠前、就寝前または就寝時に、1日に1回投与される
、中枢および
末梢神経系障害の予防または治療において、カテコールアミン薬と併用して用いるための医薬組成物。
【請求項23】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルが、5−[3−(2,5−ジクロロ−4,6−ジメチル−1−オキシ−ピリジン−3−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−3−ニトロベンゼン−1,2−ジオール、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルである、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
カテコールアミン薬が、レボドパである、請求項22または23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
中枢および末梢神経系障害が、パーキンソン病である、請求項22〜24の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
食物とともにではなく、および/または最も直近の食物摂取の少なくとも1時間後に、そして次の食物摂取の少なくとも1時間前に投与される、請求項22〜25の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
5−[3−(2,5−ジクロロ−4,6−ジメチル−1−オキシ−ピリジン−3−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−3−ニトロベンゼン−1,2−ジオール、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルを含む医薬組成物であって、レボドパの1日の最後の投与の少なくとも1時間後で、就寝時、且つ最も直近の食物摂取の少なくとも1時間後に、そして次の食物摂取の少なくとも1時間前に1日に1回投与される、パーキンソン病の予防または治療において、レボドパと併用して用いるための医薬組成物。
【請求項28】
中枢および末梢神経系障害の予防または治療のための医薬の製造のための式(I)の化合物
【化5】
[式中、R
1およびR
2は同一または異なって、水素、生理学的条件下に加水分解可能な基、または置換されていてもよいアルカノイルまたはアロイルを示し;Xはメチレン基を示し;YはO、SまたはNHを示し;nは0、1、2または3を示し;mは0または1を示し;R
3は、無標の結合で示されるように結合された式A、BまたはCのピリジンN−オキシド基を示す。
【化6】
式中、R
4、R
5、R
6およびR
7は同一または異なって、水素、アルキル、チオアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、チオアリール、アルカノイル、アロイル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロゲン、ハロアルキル、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロまたはヘテロアリールを示し、あるいはR
4、R
5、R
6およびR
7の2個以上が一緒になって、脂肪族またはヘテロ脂肪族環、または芳香環またはヘテロ芳香環を形成することを示す;「アルコキシ」、「アルカノイル」、「アルキル」、「チオアルキル」、「アルキルアミノ」、「ジアルキルアミノ」、「アルキルスルホニル」および「ハロアルキル」から選ばれる、「アルキル」の変形も含む「アルキル」の語は、1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の炭素鎖を意味する。「アリール」の語は、フェニルまたはナフチル基を意味する;「ヘテロシクロアルキル」の語は、酸素、硫黄または窒素の少なくとも1個の原子を含む4員〜8員環を表す;「ヘテロアリール」の語は、硫黄、酸素または窒素の少なくとも1個の原子を含む5員または6員環を表す;「ハロゲン」の語はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す;R
4、R
5、R
6およびR
7がアルキルまたはアリールを表す場合、それらは1個以上のヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲン基により置換されていてもよい
]または
その薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステル
もしくはリン酸エステ
ルの使用であって、
医薬が
、睡眠前、就寝前または就寝時に投与される、使用。
【請求項29】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルが、5−[3−(2,5−ジクロロ−4,6−ジメチル−1−オキシ−ピリジン−3−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−3−ニトロベンゼン−1,2−ジオール、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
医薬が1日に1回投与される、請求項28または29に記載の使用。
【請求項31】
医薬中の式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルの1日の有効投与量が、25〜300mg/日である、請求項28〜30のいずれか1項に記載の使用。
【請求項32】
医薬中の式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルの具体的な1日投与量が、1mg、3mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、50mg、100mg、200mg、400mg、800mgまたは1200mgである、請求項28〜31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項33】
医薬が、食物摂取の0.25〜12時間後に投与される、請求項28〜32のいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
医薬が、食物摂取の0.25〜2時間前に投与される、請求項28〜33のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
医薬が、直近の食物摂取の少なくとも1時間後で、次の食物摂取の少なくとも1時間前に投与される、請求項28〜32のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
医薬が、睡眠の1時間未満前に、または就寝の1時間未満前に投与される、請求項28〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
医薬が、就寝時に投与される、請求項28〜36のいずれか1項に記載の使用。
【請求項38】
医薬が、カテコールアミン薬と併用される、請求項28〜37のいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
カテコールアミン薬がレボドパである、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
医薬がカテコールアミン薬と連続して投与される、請求項38または39に記載の使用。
【請求項41】
医薬が、カテコールアミン薬の1日の最後の投与の30〜150分前または後に投与される、請求項38〜40の何れか1項に記載の使用。
【請求項42】
医薬が、カテコールアミン薬の1日の最後の投与の少なくとも1時間前または後に投与される、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
カテコールアミン薬の次の投与が、医薬の投与の少なくとも2時間後である、請求項38〜42のいずれか1項に記載の使用。
【請求項44】
カテコールアミン薬がAADCiと連続してまたは同時に投与される、請求項38〜43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項45】
AADCiがカルビドーパまたはベンセラジドである、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
中枢および末梢神経系障害が、気分障害、胃腸障害、浮腫形成状態、高血圧または運動障害である、請求項38〜45のいずれか1項に記載の使用。
【請求項47】
運動障害がパーキンソン病である、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
運動障害が運動変動を伴うパーキンソン病である、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
カテコールアミン薬と併用する、中枢および
末梢神経系障害の予防または治療のための医薬の製造のための
、式(I)の化合物
【化7】
[式中、R
1およびR
2は同一または異なって、水素、生理学的条件下に加水分解可能な基、または置換されていてもよいアルカノイルまたはアロイルを示し;Xはメチレン基を示し;YはO、SまたはNHを示し;nは0、1、2または3を示し;mは0または1を示し;R
3は、無標の結合で示されるように結合された式A、BまたはCのピリジンN−オキシド基を示す。
【化8】
式中、R
4、R
5、R
6およびR
7は同一または異なって、水素、アルキル、チオアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、チオアリール、アルカノイル、アロイル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロゲン、ハロアルキル、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロまたはヘテロアリールを示し、あるいはR
4、R
5、R
6およびR
7の2個以上が一緒になって、脂肪族またはヘテロ脂肪族環、または芳香環またはヘテロ芳香環を形成することを示す;「アルコキシ」、「アルカノイル」、「アルキル」、「チオアルキル」、「アルキルアミノ」、「ジアルキルアミノ」、「アルキルスルホニル」および「ハロアルキル」から選ばれる、「アルキル」の変形も含む「アルキル」の語は、1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の炭素鎖を意味する。「アリール」の語は、フェニルまたはナフチル基を意味する;「ヘテロシクロアルキル」の語は、酸素、硫黄または窒素の少なくとも1個の原子を含む4員〜8員環を表す;「ヘテロアリール」の語は、硫黄、酸素または窒素の少なくとも1個の原子を含む5員または6員環を表す;「ハロゲン」の語はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す;R
4、R
5、R
6およびR
7がアルキルまたはアリールを表す場合、それらは1個以上のヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲン基により置換されていてもよい
]またはその
薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステル
もしくはリン酸エステルの使用であって、
医薬が、カテコールアミン薬の1日の最後の投与の少なくとも1時間前または後で、睡眠前、就寝前または就寝時に、1日に1回投与される、使用。
【請求項50】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルが、5−[3−(2,5−ジクロロ−4,6−ジメチル−1−オキシ−ピリジン−3−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−3−ニトロベンゼン−1,2−ジオール、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルである、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
カテコールアミン薬が、レボドパである、請求項49または50に記載の使用。
【請求項52】
中枢および末梢神経系障害が、パーキンソン病である、請求項49〜51の何れか1項に記載の使用。
【請求項53】
医薬が、食物とともにではなく、および/または最も直近の食物摂取の少なくとも1時間後に、そして次の食物摂取の少なくとも1時間前に投与される、請求項49〜52の何れか1項に記載の使用。
【請求項54】
レボドパと併用する、パーキンソン病の予防または治療のための医薬の製造のための、5−[3−(2,5−ジクロロ−4,6−ジメチル−1−オキシ−ピリジン−3−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−3−ニトロベンゼン−1,2−ジオール、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルもしくはリン酸エステルの使用であって、医薬が、レボドパの1日の最後の投与の少なくとも1時間後で、就寝時で、最も直近の食物摂取の少なくとも1時間後、そして次の食物摂取の少なくとも1時間前に1日に1回投与される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中枢および末梢神経系障害の治療における、式(I)の置換されたニトロカテコールの特定の投与計画に従った使用に関する。
【背景技術】
【0002】
COMT阻害剤のレボドパ/芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害剤(AADCi)療法の補助療法としての使用の論理的根拠は、レボドパを3−O−メチル−レボドパ(3−OMD)とする代謝性O−メチル化に対する低減能に基く。3−OMDの長い半減期と対照的に、レボドパの生体内半減期が短い結果として、レボドパに誘導される臨床的改善の持続時間は短い。さらに、3−OMDは、脳−血液関門(BBB)内外の輸送に際し、レボドパと競合する。このことは、経口投与されたレボドパの非常に限られた量のみが、作用部位、すなわち脳に実際に到達することを意味する。一般的に、通常の投与計画でレボドパ療法を開始してわずか数年のうちに、レボドパに誘導される臨床的改善は、各投与周期の終点において減少し、運動変動のいわゆる「ウエアリング・オフ」パターンが増加する。「ウエアリング・オフ」現象と3−OMDの蓄積との間の密接な相関が示された(Tohgi, H., et al., Neurosci. Letters, 132:19-22, 1992)。これは、BBB内外の輸送系における3−OMDとの競合によるレボドパの脳浸透障害によると推測され(Reches, A. et al., Neurology, 32:887-888, 1982)、またより単純に、脳に到達し得るレボドパがより少ないと推測されている(Nutt, J.G., Fellman, J.H., Clin. Neuropharmacol., 7:35-49, 1984)。事実上、COMTの阻害は、末梢、特に腸内でO−メチル化の代謝分解からレボドパを保護し、それゆえ、レボドパの繰り返し投与で、レボドパの血漿平均濃度は上昇する。脳への輸送における競合の減少に加えて、有意に高い割合の経口投与されたレボドパが作用部位に到達し得る。COMTの阻害は、レボドパの生物学的利用率を増加させ、レボドパの単回投与で抗パーキンソン作用時間が延長される(Nutt, J.G., Lancet, 351:1221-1222, 1998)。
【0003】
報告された最も強力なCOMT阻害剤は、3,4−ジヒドロキシ−4’−メチル−5−ニトロベンゾフェノン(トルカポン、オーストラリア特許:AU−B−69764/87)および(E)−2−シアノ−N,N−ジエチル−3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)アクリルアミド(エンタカポン、ドイツ特許:DE 3740383 A1)である。
【0004】
基本的に同じ活性基を共有するにもかかわらず、トルカポンは中枢神経系(CNS)に容易に入り、
末梢のCOMTと同様に脳のCOMTを抑制することができる点で、エンタカポンと異なる。発売からまもなく、致命的な劇症肝炎による3例の不幸な死を含む数例の肝毒性が報告された後、トルカポンは市場から回収された。今日、トルカポンは、他の治療に反応しないパーキンソン病患者にのみ、肝機能の定期的モニタリングとともにのみ用いることができ、患者にとって高価で不便である。トルカポンに関する肝毒性の実際の機序的原因は完全には解明されていないが、インビトロの研究は、トルカポンが代謝されて減少して反応性中間体となり得ることを示し、これらが肝タンパク質と共有結合性の付加物を形成して肝細胞傷害を起こすと推測されている(Smith, K.S. et al, Chem. Res. Toxicol., 16:123-128, 2003)。
【0005】
一方、エンタカポンは、トルカポンと同じニトロカテコール活性基を有するが、肝毒性とは関連付けられず、一般的に安全な薬物であると考えられている。しかしながら、不運なことに、エンタカポンは、トルカポンより有意に効果の低いCOMT阻害剤であり、生体内半減期も非常に短い。これは、エンタカポンの効果持続時間が非常に限られており、その結果、非常に高用量で、レボドパが患者に服用されるごとに投与されなければならないことを意味する。それゆえ、エンタカポンの臨床効果は疑問視され、最近の研究(Parashos, S.A. et al., Clin. Neuropharmacol., 27(3): 119-123, 2004)は、パーキンソン病患者におけるエンタカポン治療の非継続の基本的な理由が、効果不足と認識されたためであることを明らかにした。
【0006】
さらに、生体内半減期の比較的短い既知のCOMT阻害剤は、通常1日に数回の投与を含む継続的な治療計画を要し、患者の負担となる可能性がある。たとえば、トルカポンは1日に3回投与されるべきである。この因子は、それゆえ患者のコンプライアンスと生活の質を阻害し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、依然として、生物学的活性、生物学的利用率および安全性の調和された特性を示すCOMT阻害剤の必要性がある。特に、長い生体内半減期と、それゆえ、COMTに対し長期の作用を有し、より少ない用量で所望の治療効果を得ることのできるCOMT阻害剤の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
出願人は、以前に、比較的半減期は短いものの、非常に強いCOMT阻害剤であり、従来のCOMT阻害剤に比べて格別に長時間の作用を付与する化合物を発見した(WO2007/013830参照)。
【0009】
これらの化合物は、下記において一般式(I)の化合物として示すが、レボドパの生物学的利用率を顕著に増強し、レボドパの脳への到達を増加させる。該化合物は、脳内ドーパミン量を長期にわたり、有意に増加させる。
【0010】
さらに驚くべきことに、レボドパ量の増加は、長期間にわたり、定常的に維持される。一般式(I)の化合物投与後のCOMT活性およびレボドパの生物学的利用率に対するかかる維持効果は、かなり長時間の作用を有することが知られた唯一のCOMT阻害剤であるトルカポンにより観察される効果と比べて、顕著に大きい。(トルカポンは約2時間の終末相半減期を有し、1日に約3回投与されなければならない。)さらに、一般式(I)の化合物は、トルカポンによりレボドパの脳到達の顕著な変動が誘導される傾向が観察されるのとは対照的に、長期間にわたり、レボドパの脳への到達を定常的に増加させる。それゆえ、一般式(I)の化合物は、レボドパ量の持続的かつ一定の上昇により、より治療上の利点を有する可能性がある。一方、トルカポンの使用は、レボドパ量の急激な増加及び減少により、運動障害のような望ましくない副作用を誘導する可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、式(I)の化合物のCOMT阻害効果を最大化する投与のための、驚くほど有利な投与計画に基く。
【0012】
従って、第一の側面において、本発明は、中枢または末梢神経系障害の予防または治療に使用するための式(I)の化合物に関し、
【0014】
式中、R
1およびR
2は同一または異なって、水素、生理学的条件下に加水分解可能な基、または置換されていてもよいアルカノイルまたはアロイルを示し;Xはメチレン基を示し;YはO、SまたはNHを示し;nは0、1、2または3を示し;mは0または1を示し;R
3は、無標の結合で示されるように結合された式A、BまたはCのピリジンN−オキシド基を示す。
【0016】
式中、R
4、R
5、R
6およびR
7は同一または異なって、水素、アルキル、チオアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、チオアリール、アルカノイル、アロイル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロゲン、ハロアルキル、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロまたはヘテロアリールを示し、あるいはR
4、R
5、R
6およびR
7の2個以上が一緒になって、脂肪族またはヘテロ脂肪族環、または芳香環またはヘテロ芳香環を形成することを示す;「アルキル」の語は、「アルコキシ」、「アルカノイル」等の「alk-」の変形も含めて、1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の炭素鎖を意味する。「アリール」の語は、フェニルまたはナフチル基を意味する;「ヘテロシクロアルキル」の語は、酸素、イオウまたは窒素の少なくとも1個の原子を含む4員〜8員環を表す;「ヘテロアリール」の語は、イオウ、酸素または窒素の少なくとも1個の原子を含む5員または6員環を表す;「ハロゲン」の語はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す;R
4、R
5、R
6およびR
7がアルキルまたはアリールを表す場合、それらは1個以上のヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲン基により置換されていてもよい;またはそれらの薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルまたはリン酸エステルである;
式(I)の化合物は、睡眠の前、就寝前または就寝時に投与される。
【0017】
第二の側面において、本発明は、中枢または末梢神経系障害の予防または治療に使用するための式(I)の化合物に関し、
【0019】
式中、R
1およびR
2は同一または異なって、水素、生理学的条件下に加水分解可能な基、または置換されていてもよいアルカノイルまたはアロイルを示し;Xはメチレン基を示し;YはO、SまたはNHを示し;nは0、1、2または3を示し;mは0または1を示し;R
3は無標の結合で示されるように結合された式A、BまたはCのピリジンN−オキシド基を示す。
【0021】
式中、R
4、R
5、R
6およびR
7は同一または異なって、水素、アルキル、チオアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、チオアリール、アルカノイル、アロイル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロゲン、ハロアルキル、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロまたはヘテロアリールを示し、あるいはR
4、R
5、R
6およびR
7の2個以上が一緒になって、脂肪族またはヘテロ脂肪族環、または芳香環またはヘテロ芳香環を形成することを示す;「アルキル」の語は、「アルコキシ」、「アルカノイル」等の「alk-」の変形も含めて、1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の炭素鎖を意味する。「アリール」の語は、フェニルまたはナフチル基を意味する;「ヘテロシクロアルキル」の語は、酸素、イオウまたは窒素の少なくとも1個の原子を含む4員〜8員環を表す;「ヘテロアリール」の語は、イオウ、酸素または窒素の少なくとも1個の原子を含む5員または6員環を表す;「ハロゲン」の語はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す;R
4、R
5、R
6およびR
7がアルキルまたはアリールを表す場合、それらは1個以上のヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲン基により置換されていてもよい;またはそれらの薬学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルまたはリン酸エステルである;
式(I)の化合物は、食物とともにではなく、および/または食物摂取の間に投与される。
【0022】
第三の側面において、本発明は、中枢および末梢神経系障害の予防または治療用医薬の製造のための式(I)の化合物の使用を提供する。前記化合物は、食物とともにではなく、食物摂取の間、睡眠前、就寝前および/または就寝時に投与される。
【0023】
第四の側面において、本発明は、中枢および末梢神経系障害を患う患者に、食物とともにではなく、食物摂取の間、睡眠前、就寝前および/または就寝時に、治療に有効な量の式(I)の化合物を投与することを含む、中枢および末梢神経系障害の予防または治療方法を提供する。
【0024】
驚くべきことに、出願人は、式(I)の化合物が、消化器系にできるだけ食物がない患者に有利に投与されることを見出した。それゆえ、式(I)の化合物は、好ましくは食物とともにではなく、および/または食物摂取の間、たとえば食間、睡眠前、就寝前または就寝時に、患者に投与される。該化合物をこのように投与することにより、式(I)の化合物はより良好な活性、たとえばより長時間持続し増強されたCOMTの阻害活性を有する。
【0025】
さらに、前述のように、式(I)のCOMT阻害剤はカテコールアミン療法の補助剤として使用され、カテコールアミン薬のCOMTによる代謝が減少する。出願人は、驚くべきことに、式(I)の化合物が、すでにレボドパ(L−DOPA)のようなカテコールアミンを服用している患者に投与されたとき、式(I)の化合物がカテコールアミンと連続して投与されると、式(I)の化合物の効果が向上することをも見出した。特に、驚くべきことに、式(I)の化合物がレボドパの生物学的利用率に悪影響を及ぼし、レボドパが式(I)の化合物の生物学的利用率に悪影響を及ぼすことが発見された。その結果として、本発明によれば、式(I)の化合物は、睡眠前、就寝前または就寝時に、1日用量の最後の投与分のレボドパが患者に投与される前または後で、翌日投与分のレボドパが投与される前に投与される。従って、式(I)の化合物およびカテコールアミン薬は、同時に患者の消化器系内には存在せず、および/または実質的に同時に吸収されない。
【0026】
本発明の目的には、1日用量の最後の投与分(last daily dose)、1日の最後の投与分(last dose of the day)、1日の投与の最後(last daily administration)および1日の最後の投与(last administration of the day)は同じ意味を有し、交互に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、絶食および摂食後の5−[3−(2,5−ジクロロ−4,6−ジメチル−1−オキシ−ピリジン−3−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−3−ニトロベンゼン−1,2−ジオール(化合物A)の平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【
図2】
図2は、単独で投与、化合物A50mgと1時間あけて投与、および化合物A50mgと同時に投与されるシネメット(Sinemet(登録商標))(レボドパ/カルビドーパ)100/25mgの単回経口投与後のレボドパの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【
図3】
図3は、単独で投与、化合物A50mgと1時間あけて投与、化合物A50mgと同時に投与されるシネメット(Sinemet(登録商標))100/25の単回経口投与後、および化合物Aを単独で投与したときの平均S−COMT活性(生成したメタネフリン、pmol/mgタンパク質/h)のベースライン(投与前)からのプロファイルを示す。
【0029】
前述のように、式(I)の化合物は非常に強力であるため、1日単回投与で投与され得る可能性がある。
【0030】
式(I)の化合物は、好ましくは睡眠前、就寝前または就寝時に投与される。「睡眠前」の語は、式(I)の化合物が、患者が眠りにつくすぐ前に、たとえば睡眠の90分未満前、特に睡眠の1時間未満前、睡眠の30分未満前、または睡眠の直前に投与されることを意味する。
就寝前(すなわち就寝する前)の語は、特に就寝する90分未満前、特に就寝する60分未満前または就寝する30分未満前を意味する。就寝時の語は、就寝の5分未満前、たとえば就寝するときを意味する。
言い換えると、式(I)の化合物は、患者が就寝する前(すなわち就寝前または就寝時)に、たとえば就寝の90分未満前、特に就寝の60分未満前、就寝の30分未満前または就寝の5分未満前に、患者に服用される。
本発明において明らかなように、「睡眠前」または「就寝前」の語は、睡眠または就寝する前の日中のいずれかの時を意味するものではなく、特に、たとえば、睡眠または就寝する前の12時間前を含むものではない。むしろ、この語は、薬物が患者の就寝の直前の時間において、おそらくは患者の就寝の決められた行動の一部として、服用されることを意味する。
【0031】
一実施形態において、式(I)の化合物は、カテコールアミン薬との併用療法において投与される。好ましくは、カテコールアミン薬はレボドパである。
【0032】
それで、式(I)の化合物およびカテコールアミン薬の投与計画は異なり得る:それぞれ同時に、または別々に投与され得る。それゆえ、当然のことながら、併用化合物は、同じ製剤処方(すなわち一緒に)において、または異なる製剤処方(すなわち別に)において、連続して(たとえば前にまたは後に)または同時に投与され得る。同時に、同一処方は単一処方としてであり、異なる製剤処方は同時に非単一処方である。併用療法における2以上の化合物の各投与計画は、投与経路に関しても異なる。
【0033】
出願人は、驚くべきことに、式(I)の化合物とカテコールアミン薬が、それぞれ他方の生物学的利用率に悪影響を及ぼすことを発見した。
【0034】
特に、式(I)の化合物は、睡眠前、就寝前または就寝時に、カテコールアミン薬の1日の最後の投与の前または後に、およびカテコールアミン薬の翌日の最初の投与の前に投与される。これは、各薬物が他方の生物学的利用率に悪影響を及ぼすのを避ける。好ましくは、式Iの化合物のCOMT阻害活性は、カテコールアミン薬の投与前に機能しているべきである。
【0035】
一実施形態において、式(I)の化合物は、カテコールアミン薬の1日の最後の投与の30〜150分前または後に投与される。たとえば、式(I)の化合物は、カテコールアミン薬の1日の最後の投与の少なくとも30〜50分、好ましくは少なくとも1時間前または後に投与される。
【0036】
別の実施形態において、式(I)の化合物は、カテコールアミン薬の1日の最後の投与がなされた少なくとも1時間前または後に投与され、好ましくは、式(I)の化合物は、カテコールアミン薬の1日の最後の投与の少なくとも1時間前または後に、1日に1回投与される。本発明の実施態様においては、カテコールアミン薬と式(I)の化合物の投与間隔は、少なくとも2、3、4、5または6時間である。
【0037】
好ましくは、次のカテコールアミンの投与は、式(I)の化合物の投与の少なくとも2時間後になされ、さらに好ましくは少なくとも3時間後、最も好ましくは少なくとも6時間後になされる。適切には、次のカテコールアミンの投与は、式(I)の化合物の投与の12時間または23時間後になされる。好ましくは、次のカテコールアミン薬の投与は、翌日のカテコールアミン薬の1日用量の最初の投与分である。
【0038】
さらに、本発明による投与計画は、患者の消化器系に食物がないときにおける式(I)の化合物の投与を含む。出願人は、式(I)の化合物は、患者が消化器系に食物を有しないときに患者に投与されると、生物学的利用率が向上することを発見した。特に、式(I)の化合物は、睡眠前、就寝前または就寝時に、患者が1日の最後の食事を摂った後食物とともにではなく患者に投与されるべきである。
「消化器系に食物がない」とは、式(I)の化合物のほとんどの吸収がなされる消化器系の一部、たとえば胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)に食物がないことを意味する。
【0039】
本発明の一実施形態において、式(I)の化合物は、直近の食物摂取の少なくとも1時間後で、次の食物摂取の少なくとも1時間前に投与される。
【0040】
本発明の一実施形態において、式(I)の化合物は、食物摂取の0.25〜12時間、好ましくは0.5〜6時間、より好ましくは0.75〜4時間後に投与される。本発明の一実施形態においては、式(I)の化合物は、0.25〜10時間の夜間絶食後に投与される。
本発明の一実勢形態では、式(I)の化合物は、食物摂取の0.25〜2時間、好ましくは0.5〜1.5時間前に投与される。
【0041】
好ましくは、式(I)の化合物は、睡眠前に、より好ましくは睡眠の1時間未満前に投与される。
【0042】
より好ましくは、式(I)の化合物とカテコールアミン薬との相互作用を避けるために、そして、患者が消化器系に食物を有しないときに式(I)の化合物を投与するためにも、式(I)の化合物は、睡眠前、就寝前または就寝時に、1日に1回投与される。
【0043】
ここで用いられる「1日の有効投与量」なる語は、投薬周期に従って投与される際に、投与される化合物の有効な1日の量である。
【0044】
本発明において、一般式(I)の化合物の1日の有効投与量は、約1〜約1200mg/日であり、好ましくは約1〜約900mg/日であり、より好ましくは約5〜約400mg/日であり、さらに好ましくは約25〜約300mg/日であり、具体的な1日投与量としては、1mg、3mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、50mg、100mg、200mg、400mg、800mgまたは1200mgである。
【0045】
ここで用いられる「用量単位」なる語は、各投薬周期において投与される化合物の量をいう。
【0046】
一般式(I)の化合物の個々の用量単位は、約1〜2400mgであることが好ましく、より好ましくは約1〜約1200mgであり、さらにより好ましくは、約1〜800mgであり、たとえば、1mg、3mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、50mg、100mg、200mg、400mg、800mgまたは1200mgである。
【0047】
上記の通り、COMT阻害剤は、代謝性のO−メチル化を減少させることから、しばしばカテコールアミン化合物の補助剤として使用される。特に、COMT阻害剤は、レボドパの3−O−メチル−レボドパ(3−OMD)への代謝性O−メチル化を減少させることから、レボドパ/芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害剤(AADCi)療法の補助剤として、しばしば用いられる。
【0048】
従って、好ましくは、該化合物により治療される病理学的状態は、COMT阻害剤の投与が有効なヒトの中枢および
末梢神経系−関連疾患である。
【0049】
式(I)の化合物がカテコールアミン薬と併用して投与される場合、カテコールアミン薬は、AADCi、特にカル
ビドーパまたはベンセラジドと連続してまたはともに投与されることができる。
【0050】
一般式(I)の化合物、カテコールアミン薬およびAADCiは、別個にまたはいずれの組み合わせでも投与され得る。それらは併用して(たとえば、同時に)または連続して、同一のまたは異なる投与周期で投与され得る。たとえば、一般式(I)の化合物は、カテコールアミン薬と併用してまたは連続して投与され得る。
【0051】
本発明による該化合物の使用は、中枢および
末梢神経系障害の予防または治療のためのものである。中枢および
末梢神経系障害は、たとえば、気分障害、胃腸障害、浮腫形成状態、高血圧または運動障害である。好ましくは、該障害は、パーキンソン症候群、パーキンソン病およびむずむず脚症候群に関する障害を含む運動障害である。最も好ましい中枢および
末梢神経系障害は、パーキンソン病である。
【0052】
ここで用いられる治療なる語、および「治療する」、「治療すること」といったその変化形は、ヒトまたはヒトでない動物に有効な治療法をいう。さらに、式(I)の化合物は、予防(予防的治療)に使用され得る。治療は、中枢および
末梢神経系−関連疾患に関する一以上の症状についての治癒、緩和または低減効果のような効果を含み得る。
【0053】
述べ得る本発明の特別な一実施形態は、中枢および
末梢神経系障害、特にパーキンソン病のような運動障害の予防または治療のために、カテコールアミン薬、特にレボドパと併用して用いるための式(I)の化合物、特に5−[3−(2,5−ジクロロ−4,6−ジメチル−1−オキシ−ピリジン−3−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−3−ニトロベンゼン−1,2−ジオールおよびその薬理学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルおよびリン酸エステルであり、式(I)の化合物は、カテコールアミン薬の1日の最後の投与の少なくとも1時間前または後で、睡眠前、就寝前または就寝時に、および/または食物とともにではなく、および/または食物摂取の間におよび/または直近の食物摂取の少なくとも1時間後で、次の食物摂取の少なくとも1時間前に、1日に1回経口投与される。
【0054】
本発明の別の側面により、食物とともにではなく、および/または食物摂取の間に、および/または睡眠の前および/または就寝前および/または就寝時に、および/またはカテコールアミン薬投与の前または後に、薬理学的に有効な量の一般式(I)の化合物を上記で規定するように患者に投与することを含む、治療の必要な患者の少なくとも一つの病理学的状態を治療する方法が提供される。
【0055】
本発明の別の側面により、食物とともにではなく、および/または食物摂取の間に、および/または睡眠の前および/または就寝前および/または就寝時に、および/またはカテコールアミン薬投与の前または後に、有効な量の一般式(I)の化合物を上記で規定するように対象者に投与することを含む、対象者におけるCOMTの阻害方法が提供される。
【0056】
本発明の別の側面により、食物とともにではなく、および/または食物摂取の間に、および/または睡眠の前および/または就寝前および/または就寝時に、および/またはカテコールアミン薬投与の前または後に、有効な量の一般式(I)の化合物を上記で規定するように対象者に投与することを含む、レボドパで治療される対象者の脳内レボドパ量の増加方法が提供される。
【0057】
本発明の別の側面により、食物とともにではなく、および/または食物摂取の間に、および/または睡眠の前および/または就寝前および/または就寝時に、および/またはカテコールアミン薬投与の前または後に、有効な量の一般式(I)の化合物を上記で規定するように対象者に投与することを含む、レボドパで治療される対象者の血漿中レボドパ量の増加方法が提供される。
【0058】
本発明の別の側面により、食物とともにではなく、および/または食物摂取の間に、および/または睡眠の前および/または就寝前および/または就寝時に、および/またはカテコールアミン薬投与の前または後に、有効な量の一般式(I)の化合物を上記で規定するように対象者に投与することを含む、レボドパで治療される対象者の脳内の3−O−メチル−レボドパ(3−OMD)量を減少させる方法が提供される。
【0059】
本発明の別の側面により、食物とともにではなく、および/または食物摂取の間に、および/または睡眠の前および/または就寝前および/または就寝時に、および/またはカテコールアミン薬投与の前または後に、有効な量の一般式(I)の化合物を上記で規定するように対象者に投与することを含む、レボドパで治療される対象者の血漿中の3−O−メチル−レボドパ(3−OMD)量を減少させる方法が提供される。
【0060】
本発明の別の側面により、食物とともにではなく、および/または食物摂取の間に、および/または睡眠の前および/または就寝前および/または就寝時に、および/またはカテコールアミン薬投与の前または後に、有効な量の一般式(I)の化合物を上記で規定するように対象者に投与することを含む、レボドパで治療される対象者の脳内におけるレボドパの生物学的利用率を増加させる方法が提供される。
【0061】
本発明の別の側面により、食物とともにではなく、および/または食物摂取の間に、および/または睡眠の前および/または就寝前および/または就寝時に、および/またはカテコールアミン薬投与の前または後に、有効な量の一般式(I)の化合物を上記で規定するように対象者に投与することを含む、レボドパで治療される対象者の血漿におけるレボドパの生物学的利用率を増加させる方法が提供される。
【0062】
本発明はまた、一般式(I)の化合物の医薬組成物と、該製剤を食物とともにではなく、および/または食物摂取の間に、および/または睡眠の前および/または就寝前および/または就寝時に、および/またはカテコールアミン薬投与の前または後に投与することの指示とともに含むパッケージに関する。
【0063】
式(I)の化合物については、以下の定義が好ましい。
【0064】
生理学的条件下で加水分解可能な基は、生体内で、生理学的条件のpHおよび温度で開裂する基を表す。「Foye’s Principles of Medicinal Chemistry」第6版、2006、Wolter Kluwer編の第1354ページには、組織液のpH値が示されている。−OH官能基の生理学的条件下に加水分解可能な基の例は、エステル、カルバミン酸エステルおよびリン酸エステルである。−OH官能基の生理学的条件下に加水分解可能な基のさらなる例は、当業者に周知であり、たとえば、Korolkovas in Essentials of Medicinal Chemistry 第2版、1988、John Wiley & Sons編の第101〜103ページ、およびTextbook of Drug Design and Discovery 第3版、2002、Taylor & Francis編におけるKrogsgaard-larsenらの第426ページに見出すことができる。
【0065】
好ましくは、R
4、R
5、R
6およびR
7は互いに独立して、水素、C
1−C
6アルキル、C
6−C
12アリール、C
1−C
6チオアルキル、C
1−C
6アルコキシ、C
6−C
10アリールオキシ、C
6−C
10チオアリール、C
1−C
6アルカノイル、C
7−C
11アロイル、アミノ、C
1−C
6アルキルアミノ、ジ−C
1−C
6アルキルアミノ、C
3−C
12シクロアルキルアミノ、C
4−C
8ヘテロシクロアルキルアミノ、C
1−C
6アルキルスルホニル、C
6−C
10アリールスルホニル、ハロゲン、C
1−C
6ハロアルキル、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロまたはヘテロアリールである。
【0066】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
1−C
6アルキル基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチルまたはヘキシルである。
【0067】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
6−C
12アリール基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はフェニルまたはナフチルである。
【0068】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
1−C
6チオアルキル基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はチオメチル、チオエチル、チオ−n−プロピル、チオ−イソプロピル、チオ−n−ブチル、チオ−n−ペンチルまたはチオ−n−ヘキシルである。
【0069】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
1−C
6アルコキシ基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシまたはtert−ブトキシである。
【0070】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
6−C
10アリールオキシ基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はフェノキシまたはナフトキシである。
【0071】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
6−C
10チオアリール基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はチオフェニルまたはチオナフチルである。
【0072】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
1−C
6アルカノイル基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はメタノイル、エタノイル、プロパノイルまたはブタノイルである。
【0073】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
7−C
11アロイル基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はベンゾイルまたはナフトイルである。
【0074】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
1−C
6アルキルアミノ基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はメチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノまたはn−ブチルアミノである。
【0075】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がジ−C
1−C
6アルキルアミノ基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、ジ−n−ブチルアミノ、ジ−イソプロピルアミノ、メチルエチルアミノ、メチルプロピルアミノまたはエチルプロピルアミノである。
【0076】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
3−C
12シクロアルキルアミノ基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はピロリジノ、ピペリジノ、シクロヘキシルアミノまたはジシクロヘキシルアミノである。
【0077】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
4−C
8ヘテロシクロアルキルアミノ基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はモルホリノ、2,6−ジメチルモルホリノ、3,5−ジメチルモルホリノ、ピペラジノ、N−メチルピペラジノまたはN−エチルピペラジノである。
【0078】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
1−C
6アルキルスルホニル基またはC
6−C
10アリールスルホニル基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はメチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニルまたはトリルスルホニルである。
【0079】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がハロゲン基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はクロロ、ブロモ、ヨードまたはフルオロである。
【0080】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がC
1−C
6ハロアルキル基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はクロロメチル、フルオロメチル、ジクロロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチルまたはトリフルオロメチルである。
【0081】
R
4、R
5、R
6および/またはR
7がヘテロアリール基を表す場合、好ましくは、R
4、R
5、R
6および/またはR
7はピリジル、ピリミジル、イソキサゾリル、オキサゾリル、イソキサジアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリルまたはテトラゾリルである。
【0082】
R
4、R
5、R
6およびR
7の2以上の基がいっしょになって脂肪族またはヘテロ脂肪族環または芳香族またはヘテロ芳香族環を表す場合、2以上の基は、好ましくは脂肪族またはヘテロ脂肪族環または芳香族またはヘテロ芳香族環を示す。好ましい結合された基は、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、ナフチリジニル、イソキノリルまたはキノリルである。
【0083】
前記基がアリールまたはアルキルを表す場合、上記R
4、R
5、R
6およびR
7の置換基は、1個以上のヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲン基により置換されていてもよい。
【0084】
本発明の一般式(I)の化合物を含む医薬組成物の、本明細書における医学的適応、治療および投与計画において、一般式(I)の化合物の最も好ましい例は、5−[3−(2,5−ジクロロ−4,6−ジメチル−1−オキシ−ピリジン−3−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−3−ニトロベンゼン−1,2−ジオール、これ以降は化合物A とする、ならびにその薬理学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルおよびリン酸エステルである。化合物Aの半減期は、その作用の長期持続を考えると、比較的短い。
【0085】
次の医学的適応、治療および投与計画に用いる上記一般式(I)の他の好ましい化合物は、3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−1−オキシド、 2−クロロ−3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−4,6−ジメチルピリジン−1−オキシド、3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−2−メチル−6−(トリフルオロメチル)ピリジン−1−オキシド、 5−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−2−(トリフルオロメチル)ピリジン−1−オキシド、5−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−2−メチル−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−1−オキシド、3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−2,6−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−1−オキシド、3,5−ジクロロ−4−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)ピリジン−1−オキシド、3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−6−メチル−2−フェニル−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−1−オキシド、2−ブロモ−3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−4,5,6−トリメチルピリジン−1−オキシド、2−クロロ−3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−4,5,6−トリメチルピリジン−1−オキシド、3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−2−(トリフルオロメチル)ピリジン−1−オキシド、2,5−ジクロロ−3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−4,6−ジメチルピリジン−1−オキシド、3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−5−(トリフルオロ-メチル)ピリジン−1−オキシド、3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−2−フルオロピリジン−1−オキシド、4−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−2−フルオロピリジン−1−オキシド、2−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−6−フルオロピリジン−1−オキシド、2−クロロ−3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−6−メチルピリジン 1−オキシド、2−ブロモ−3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−6−メチルピリジン−1−オキシド、および2−ブロモ−5−クロロ−3−(3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−4,6−ジメチルピリジン−1−オキシド ならびにそれらの薬理学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルまたはリン酸エステルを含む。
【0086】
一般式(I)の化合物の調製の詳細は、WO2007/013830A1に見出される。
【0087】
一般式(I)の化合物は、薬理学的に許容可能な塩、エステル、カルバミン酸エステルまたはリン酸エステルの形態でも存在し得る。好ましい薬学的に許容可能な対イオンは周知である。
【0088】
活性化合物の治療プロフィールを変えるために、一般式(I)の化合物のプロドラッグを使用することもできる。
【0089】
式(I)の化合物は、医薬組成物として投与される。一般式Iの化合物の医薬組成物の調製には、不活性の薬学的に許容可能な担体が活性化合物と混合される。薬学的に許容可能な担体は、固体または液体であり得る。固形の製剤には、粉末剤、錠剤、分散性顆粒およびカプセルが含まれる。固形担体は、希釈剤、香味剤、溶解剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、流動促進剤または崩壊剤としても作用し得る一以上の物質であり得る;また、カプセル材であってもよい。
【0090】
好ましくは、医薬組成物はたとえばパッケージ化された製剤等の単位投与量の剤形であり、パッケージには、個別の量の製剤、たとえばパッケージされた錠剤、カプセルおよびびんまたはアンプルに入れられた粉末が含まれる。
【0091】
通常、式(I)の化合物は経口投与される。
式(I)の化合物は、通常は1日に1回から週に約1回投与される。
1日に1回より少ない周期で(たとえば週に1回)、いつ式(I)の化合物が投与されるのかという疑問を避けるため、睡眠前、就寝前または就寝時で、式(I)の化合物が投与されるべき週の投与されるべき日の、レボドパの1日の最後の投与の前または後に投与され、レボドパのように毎日ではないと理解される。たとえば、週に1回の投与計画では、化合物(I)が1週の最初の日に投与されるならば、睡眠前、就寝前または就寝時で、その日のレボドパの1日の最後の投与の前または後に投与されるであろう。次の投与は2週の最初の日に、睡眠前、就寝前または就寝時で、その日のレボドパの1日の最後の投与の前または後になされるであろう。この間、レボドパは毎日(数回)投与される。
【0092】
上記方法に従い、式(I)の化合物は、通常1日に1回から週に約1回投与される。
【0093】
本発明の他の側面は、クレームに規定される通りである。
【実施例】
【0094】
実施例1:化合物Aの調製
(5−[3−(2,5−ジクロロ−4,6−ジメチル−1−オキシ−ピリジン−3−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−3−ニトロベンゼン−1,2−ジオール)
【0095】
a)3,4−ジベンジルオキシ−5−ニトロ安息香酸のジメチルホルムアミド(5 mL)溶液(0.50 g、1.319 mmol)を撹拌しながら、室温にて、1,1−カルボニルジイミダゾール(0.24 g、1.45 mmol)を一度に加えた。90分撹拌後、2,5−ジクロロ−N’−ヒドロキシ−4,6−ジメチルニコチンアミド(0.40 g、1.45 mmol)を一度に加えた。得られた混合物を135℃で5時間撹拌し、次いで室温で一晩撹拌した。反応混合物を氷冷した2N HCl(100 mL)に注ぎ、生じた沈殿をろ過して水で洗浄し、風乾した。イソプロパノールから再結晶し、淡黄色固体を得た(0.55 g、72 %)。
【0096】
b)上記で得た固体のジクロロメタン(20 mL)溶液(0.50 g、0.866 mmol)を撹拌し、尿素−過酸化水素付加複合体(0.41 g、4.33 mmol)を一度に加えた。混合物を氷水浴にて冷却し、無水トリフルオロ酢酸(0.73 g、3.46 mmol)を滴下した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、不溶物をろ過した。ろ液を水および塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。残渣をイソプロパノールより再結晶し、淡黄色固体を得た(0.35 g、68 %)。
【0097】
c)上記で得た固体のジクロロメタン(10 mL)溶液(0.30 g、0.5 mmol)をアルゴン存在下−78℃で撹拌し、三臭化ホウ素(0.38 g、1.5 mmol)を滴下した。得られた紫色の懸濁液を室温で1時間撹拌し、次いで−78℃に冷却し、水を注意深く添加して急冷した。室温で1時間撹拌した後、沈殿をろ過して水で洗浄し、50℃で真空下に乾燥して、所望の化合物を融点が237〜240℃の黄色結晶として得た(0.18 g、87 %)。
【0098】
実施例2:製剤処方
製剤処方は以下の通り調製される:
【0099】
カプセル:
化合物A 15.0%
乳糖一水和物 43.0%
微結晶セルロース 30.0%
ポビドン 4.0%
クロスカルメロースナトリウム 5.0%
タルク 2.0%
ステアリン酸マグネシウム 1.0%
【0100】
カプセル:
化合物A 15.0%
微結晶セルロース 72.5%
エチルセルロース 5.0%
デンプングリコール酸ナトリウム 6.0%
コロイド状二酸化ケイ素 0.5%
ステアリン酸マグネシウム 1.0%
【0101】
錠剤:
化合物A 20.0%
微結晶セルロース 25.0%
リン酸二カルシウム二水和物 40.0%
ポビドン 6.0%
クロスカルメロースナトリウム 6.0%
タルク 2.0%
ステアリン酸マグネシウム 1.0%
【0102】
実施例3−投与計画
実施例3a:食物の影響
本試験は、化合物Aおよびその代謝物の薬物動態(PK)プロファイルにおける食物の影響を評価する目的で、12名の健康な男性被験者における、非盲検、無作為、単回投与、2期間、2連続の交差試験であった。化合物A50mg(25mgカプセル×2)が、絶食および摂食条件下で1回投与された。
【0103】
化合物A投与の前および0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、10、12、16および24時間後に血液試料が採取された。
【0104】
薬物動態学的結果:
50mg(25mgカプセル×2)の単回経口投与後において、化合物Aの生物学的利用率は、絶食および摂食条件下で同等ではなく、化合物Aの薬物動態に対する食物の影響の存在が示唆された(
図1)。
【0105】
絶食後および摂食条件での化合物Aの薬物動態パラメーターを、表1「絶食後および摂食条件での化合物AのPKの主な結果のまとめ」に示した。
【0106】
【表1】
【0107】
食物摂取は、化合物Aの吸収を減少させ、遅延させた;高脂肪、高カロリー食摂取直後の化合物Aの投与は、絶食条件下で投与した場合に比べて、吸収の速度および量を有意に減少させた。C
maxおよびAUCパラメーターは、絶食状態に比べて、摂食状態において有意に低かった(摂食:絶食比は、C
maxについて31.73%、AUC
Tについて47.11%、およびAUC
∞について49.43%)。T
maxは、食物の存在により有意に増加した(絶食状態において1.50時間であるのに対し、摂食状態において4.00時間)。
【0108】
結論
以上の結果は、食物摂取後の化合物Aの投与は、その生物学的利用率を減少させることを示した。食物の存在は、化合物Aの吸収の速度および量を減少させ、絶食条件下の薬物投与に比べて、血漿値の遅延したピークが見られた。
【0109】
実施例3b:レボドパおよび化合物Aの同時および1時間あけた投与
本試験は、標準作用型の25/100mgカルビドーパ/レボドパが50mgの化合物A投与と同時または1時間後に投与された場合のPK−PD相互作用を評価するため、4回の連続した単回投与治療期間でなされた単一施設における、非盲検、無作為、男女の数を釣り合わせた交差試験であった。18名の被験者が2回の治療期間を終え、17名の被験者が3回の治療期間を終え、16名の被験者が4回の全治療期間を終えた。全18名[男性10名(55.6%)]および[女性8名(44.4%)]が本試験に参加した。
【0110】
治療は、4回の単一投与期間から構成された。化合物A50mgの単一投与は、25mgカプセル2個により構成された。短時間作用型/標準作用型の25mgカルビドーパ/100mgレボドパの単一投与は、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25 1錠により構成された。治療順序を無作為にするため、被験者は、ある期間では、化合物Aおよびシネメット(Sinemet(登録商標))100/25を同時に投与され、別の期間では、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25は化合物A投与の1時間後に投与され、また別の期間では、化合物Aが単独で投与され、残りの期間では、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が単独で投与された。投与間の洗い出し期間は、少なくとも3週間であった。ある治療期間では、化合物Aおよびシネメット(Sinemet(登録商標))100/25が同時に投与され、別の治療期間では、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25は化合物A投与の1時間後に投与され、別の治療期間では、化合物Aが単独で投与され、残りの治療期間では、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が単独で投与された。
【0111】
レボドパC
maxの平均値は、投与後0.5〜1.0時間後に得られた。その後、血漿レボドパ濃度は、1.94時間(シネメット(Sinemet)(登録商標)100/25単独) から2.51時間(シネメット(Sinemet)(登録商標)100/25+化合物A50mg同時)の平均排出半減期(t1/2)で減少した。
【0112】
化合物Aの後に投与することにより、レボドパ C
maxは上昇し、その上昇は、化合物Aが同時に投与された場合より高く、化合物Aとシネメット(Sinemet(登録商標))100/25とのある程度の相互作用が吸収相において生じ、レボドパ 取り込み速度の上昇と、レボドパ量のよりなだらかでない上昇が導かれることが示唆された。
【0113】
単独投与、化合物A50mgと1時間あけて投与、化合物A50mgと同時に投与されるシネメット(Sinemet(登録商標))100/25の単一経口投与後の平均レボドパ血漿濃度−時間プロファイルを
図2に示した(同時投与についてn=16、シネメット(Sinemet(登録商標))単独についてn=17、1時間あけて投与についてn=18):
【0114】
シネメット(Sinemet(登録商標))100/25と化合物A50mgの同時投与(試験L1)および1時間あけて投与(試験L2)後のレボドパの平均薬物動態パラメーターの推定値および90%信頼区間を表2に示した(シネメット(Sinemet(登録商標))100/25単独を対照とした):
【0115】
【表2】
【0116】
シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgの1時間後に投与された場合、レボドパに対する曝露量(AUCにより評価される)の大幅な増加が見られた。
【0117】
レボドパAUC
0−tの増加は、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgと同時に投与されたときの4.23%(比=104.23[96.88;112.14]; 平均および90%CIs)から、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgの1時間後に投与されたときの14.56%(比=114.56[106.65;123.05])まで変化した。レボドパAUC
0−∞の増加は、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgと同時に投与されたときの3.13%(比=103.13[94.02;113.12])から、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgの1時間後に投与されたときの9.85%(比=109.85[100.22;120.41])まで変化した。
【0118】
レボドパ C
max の増加は、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgの1時間後に投与されたときの2.96%(比= 102.96[89.36;118.62])から、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgと同時に投与されたときの12.10%(比= 112.10[96.94;129.64])まで変化し、 シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物Aの1時間後に投与されて、レボドパ量が好ましくより安定に増加することが示された。
【0119】
3−OMDのC
maxは、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgの1時間後に投与された場合、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgと同時に投与された場合に比べて低かった。シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgと同時に、および1時間後に投与された場合に、3−OMDに対する全身曝露の速度(C
maxにより評価)および量(AUCにより評価)の双方において、有意な減少が見られた。
【0120】
カルビドーパのC
maxおよびAUCは、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が単独で投与された場合、および化合物A50mgと1時間あけて投与された場合で同様であった。カルビドーパC
maxの増加は、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgの1時間後に投与された場合の5.33%から、 シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgと同時に投与されたときの5.86%まで変化した。カルビドーパのAUC
0−∞の増加は、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgの1時間後に投与された場合の5.42%から、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgと同時に投与されたときの9.20%まで変化した。
【0121】
化合物Aの平均C
max値は、投与後2.5〜4.0時間の間に得られた。その後、血漿の化合物A濃度は、1.14(化合物A単独)〜1.28(化合物Aおよびシネメット(Sinemet(登録商標))100/25)時間の平均排出半減期(t1/2)で減少した。化合物AのC
maxは、化合物Aがシネメット(Sinemet(登録商標))100/25の1時間前に投与された場合に、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25と同時に投与された場合より低く、化合物Aが単独で投与された場合に比べても低かった。シネメット(Sinemet(登録商標))100/25とともに投与された後、化合物AのC
maxが減少してt
maxは増加し、吸収相において、化合物Aとシネメット(Sinemet(登録商標))100/25との間にある程度の相互作用が生じ、化合物Aの取り込み速度の遅延が誘導されることが示唆された。化合物A50mgがシネメット(Sinemet(登録商標))100/25と同時に投与された場合と、化合物Aが単独で投与された場合との間で、t
maxに統計学的差異が見られた(p=0.0020)。化合物AのAUC
0−∞の増加は、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgと同時に投与された場合の4.18% から、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgの1時間後に投与された場合の4.74%まで変化した。シネメット(Sinemet(登録商標))100/25が化合物A50mgの1時間後に投与された場合、化合物AのC
maxが9.21%減少した。
【0122】
薬力学的結果
単独投与、化合物A50mgと1時間あけて投与、化合物A50mgと同時に投与されるシネメット(Sinemet(登録商標))100/25の単回経口投与後、および化合物Aが単独で投与された場合のS−COMTの平均活性(生成メタネフリン、pmol/mgタンパク質/h)の基準値(投与前)からのプロファイルは以下の通りである(
図3)(同時投与についてn=16、シネメット(Sinemet(登録商標))単独投与についてn=17、化合物A単独および1時間あけて投与についてn=18):
【0123】
化合物Aによる治療は、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25単独投与に対し、すべてS−COMT活性のピークおよび程度の双方を有意に抑制した。化合物Aの投与後、S−COMT阻害の最大値(E
max)が投与(tE
max)後3.42時間(化合物A単独)から4.58時間(化合物A50mgの1時間後にシネメット(Sinemet(登録商標))100/25投与)の間に見られ、それぞれ88.7%から91.1%であった:
【0124】
結論
上記結果は、すでに行った多数の分析とよく一致した。化合物Aによる治療は、シネメット(Sinemet(登録商標))100/25単独投与に対し、すべてS−COMT活性のピークおよび程度の双方を有意に抑制した。化合物Aのシネメット(Sinemet(登録商標))100/25との同時投与は、レボドパ および化合物Aの双方の吸収に効果を示した。後者においては、C
maxのわずかな減少と、化合物Aのt
maxの有意な増加が見られた。レボドパに関しては、化合物Aより投与を1時間遅らせることにより、C
maxの減少(同時投与において見られる増加と比較した場合)が見られ、吸収相において生じ得る化合物Aとシネメット(Sinemet(登録商標))100/25間の相互作用が、両者の投与を別にすることにより減少したことが示唆された。さらに、レボドパの投与を化合物Aより1時間遅らせることにより、レボドパの全身曝露の増加(AUCにより評価される)が観察された。これは、化合物Aの吸収速度と、結果としてCOMTの阻害によると考えられた。確かに、化合物Aによる治療およびシネメット(Sinemet(登録商標))100/25による治療の双方について、t
Emaxの化合物A単独投与に対する有意な増加が見られるにもかかわらず、1時間あけた投与は、同時投与で急激で遅延した吸収が観察されるのとは対照的に、化合物Aのより持続的な吸収速度を誘導した。これは、COMTの早期阻害と、その結果としてレボドパの全身曝露の増加をもたらし得る。
【0125】
実施例3c:L−ドパおよび化合物Aの同時投与後、さらにL−ドパを24時間後に投与した後における患者のレボドパ曝露に及ぼす化合物Aの影響
本試験は、3通りの用量(25、50および100mg)の化合物Aの単回投与が、レボドパ/ドーパ−デカルボキシラーゼ阻害剤で併用治療された10名のパーキンソン病患者において、レボドパの薬物動態、運動反応、および赤血球溶解性カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ活性に対する忍容性および影響を評価するための、3施設、二重盲検、無作為で、プラセボを対照とした交差試験であった。
【0126】
以下を示す被験者が適格とされた: 英国(UK)PDS Brain Bankの診断基準に従った診断結果;「好適な」レボドパ/AADCi治療にもかかわらず、1回の投与の終点における悪化を予測し得る兆候;無作為化前の少なくとも1週間以内に、標準作用型レボドパ/AADCi 100/25mgを1日に3〜8回の安定した計画で治療されている; オフ状態において、修正されたHoehn and Yahrのステージが5未満;および/または覚醒時間内のオフ状態の平均持続時間が1.5時間以上である。抗−パーキンソン病併用薬(アポモルヒネ、エンタカポンまたはトルタカポン以外)は、無作為化の少なくとも4週間前まで継続服用が認められた。
レボドパの投与量および回数の制御は、運動の複雑化発現に対する通常の治療手段である。これは、通常、レボドパ治療の最適化と表記される。「最適な」レボドパ/AADCi治療は、患者に最良の運動反応をもたらす、すなわち、1回投与の終点における悪化(ウェアリング−オフ)および/または運動の複雑化のない、または最小限まで減少させる、レボドパ/AADCiの投与量および投与計画である。
【0127】
試験は、4種の異なる治療法の選択肢(化合物A25mg、50mg、100mgまたは偽薬)に相当する4回の連続した治療期間からなる。4回の治療期間のそれぞれにおいて、被験者は化合物A/偽薬投与(Day 1)の2日前に研究施設に入院し、化合物A/偽薬投与を受けた48時間後まで入院したまま(「入院患者」)とした。 投与間の洗い出し期間は少なくとも10日とした。次の訪問は、最後の投薬治療または早期中止の約2週間後とされた。各期間中、Day 3に、化合物A/偽薬カプセルがレボドパ/カルビドーパ100/25mg (シネメット(Sinemet(登録商標))25/100 1錠)またはレボドパ/ベンセラジド100/25mg(マドパール(Madopar(登録商標))/レステックス(Restex(登録商標))125 1錠)の朝の投与分とともに投与された。
【0128】
全10名の被験者が本試験に登録された:10名の被験者が3回の治療期間を終了し、9名の被験者が全4回の治療期間を終了した。平均 (±SD) 年齢、身長および体重は、それぞれ58.40±10.24(幅:42−70)才、1.69±0.14(1.52−1.95)m、71.5±15.06(50−100)kgであった。
【0129】
本試験の結果を表3および4に示した。
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
実施例3d:パーキンソン病患者における臨床試験:睡眠前の投与量
本試験では、化合物Aが検討療法として、エンタカポンおよび偽薬を対照療法として検討される。化合物Aは、5mg、25mgおよび50mgのカプセルで使用可能である。エンタカポン200mg錠が用いられる。二重盲検(DB)期間中、盲目性を確保するため、化合物A カプセルおよびエンタカポン 錠は同様に被包される。偽薬カプセルは、同じカプセルに充填剤(バックフィリングとしても使用される)を充填して調製される。全偽薬カプセルは、エンタカポンの無害な副作用として見られる尿の変色を模倣するため、平均1mgのリボフラビンを含む。
【0133】
投与計画
DB期間中、被験者は昼間のレボドパ/AADCiの各投与(1日に3〜8回投与)と同時に、1個の治療カプセルを服用する。1日の最後の レボドパ/AADCi投与の少なくとも1時間後に、追加の治療薬(「就寝前」または「睡眠前」投与)が投与される。
【0134】
昼間の投与(すなわち、レボドパ/AADCiの各投与と同時に服用)用の、投薬治療は次の通りである:
・化合物A群:偽薬
・エンタカポン群:エンタカポン200mg
・偽薬群:偽薬
【0135】
就寝時(レボドパ/AADCiの1日の最後の投与の少なくとも1時間後) 投与用の、投薬治療は次の通りである:
・化合物A群:5、25または50mg
・エンタカポン群:偽薬
・偽薬群:偽薬
【0136】
実施例3e:パーキンソン病患者における臨床試験:睡眠前および食物摂取1時間後の投与量
二重盲検、偽薬対照試験において、レボドパ/AADCiが継続されているパーキンソン病患者が次の通り治療される。患者は夕方、レボドパ/AADCi治療薬の1日の最後の投与の少なくとも1時間後(就寝時投与)に、偽薬または化合物A(25mgまたは50mg)のいずれかを服用する。
【0137】
被験者は、治療を受ける1時間前および少なくとも1時間後に絶食することを要求される。
【0138】
化合物Aを服用した患者は、偽薬を服用した患者に比べて、改善された効果を示すと予測される。