(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の軸受試験装置は、次の(1)〜(3)に大別される。
(1)試験軸受以外の軸受が軸保持のために存在する軸受試験装置で、試験軸受に直接荷重をかけ、軸側で摩擦測定するもの
(2)試験軸受以外の軸受が軸保持のために存在し、試験軸受に荷重をかけるための低摩擦の軸受荷重負荷部が存在する軸受試験装置で、軸受側で摩擦測定するもの
(3)試験軸受だけで軸を保持し、自重や遠心力を利用して試験軸受に荷重を負荷し、軸受側で摩擦測定する軸受試験装置
【0006】
これら従来の軸受試験装置には、それぞれ次のような課題がある。
(1)の装置は、大きな荷重を負荷して試験軸受の摩擦測定を行うために用いられる。試験軸受以外の軸受には比較的摩擦の小さい転がり軸受が用いられるが、たとえ摩擦が小さくても前記転がり軸受で発生する摩擦は無視できず、特にトルク計を用いた軸側での摩擦測定精度に影響する。
(2)の装置では、軸受の回転力(力のつりあいを利用)で摩擦測定するので、軸受荷重負荷部に発生する摩擦が試験軸受の摩擦測定精度に影響を及ぼす。
(3)の装置では、試験軸受に対して大きな荷重をかけることができない。また、遠心力に対する釣り合い機構が必要となる。
【0007】
また、従来の軸受試験装置では、剛性の高い試験用軸受ハウジングに試験軸受を固定して試験する方式が主流であり、実際の機械が備える軸受ハウジングが使用されることがない。このため、軸受ハウジングの荷重による弾性変形が生じる機械において実際に発生する摩擦と、試験装置で測定される摩擦とが相違する。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、試験対象の軸受以外の影響を小さく抑えることができ、しかも、大きな荷重をかけても、試験対象の軸受の摩擦や摩耗などを精度良く測定できる軸受試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る軸受試験装置は、
a)4個の軸受に回転可能に支持される1本の主軸と、
b)前記4個の軸受のうち外側に位置する2個の軸受にそれぞれロッドを介して繋がれた2個の第1保持部と、
c)前記第1保持部と前記主軸を挟んで反対側に配置された、前記
4個の軸受のうち内側に位置する2個の軸受にそれぞれロッドを介して繋がれた2個の第2保持部と、
d)前記第1保持部と前記第2保持部の離間距離を変更することにより、前記軸受に荷重を付与する荷重付与手段と、
e)前記主軸に回転トルクを付与する駆動機構と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、前記荷重付与手段と前記第1保持部及び前記第2保持部を連結する連結伝達機構を備え、前記荷重付与手段が
、前記連結伝達機構や軸受と保持部間のロッドの弾性を利用して前記軸受に荷重を付与するように、構成することができる。
前記連結伝達機構としては、保持部をつかむ機構や、荷重付与手段と保持部を連結するリンク機構等、数多く考えられるが、最も簡単で有効な連結伝達機構は、保持部の穴に挿通される軸である。
【0011】
例えば、前記連結伝達機構を、前記2個の第1保持部に挿通される1本の第1保持軸と、前記2個の第2保持部に挿通される1本の第2保持軸とから構成した場合は、荷重付与手段は、これら第1保持軸と第2保持軸を利用して軸受に荷重を付与する構成とすることができる。
また、前記連結伝達機構としては、前記第1保持軸及び前記第2保持軸に加えて、これらの保持軸を保持する軸保持部や保持板を用いても良い。
【0012】
本発明に係る軸受試験装置の試験対象の代表的なものとして、コネクティングロッド(コンロッド)と呼ばれるエンジン等に多く用いられる部品が挙げられる。
図14にコンロッドの一例を示す。コンロッド201(実施例における符号「30」に対応)は、ロッド(連結棒)41で連結された大端軸受203と小端軸受204を有しており、大端軸受203の試験を行う場合は小端軸受204(
図3の符号「42」、「45」のいずれかに対応)を保持部とし、小端軸受204の試験を行う場合は大端軸受203を保持部とする。
図17の(a)及び(b)は、前記コンロッド201の大端軸受203を試験対象の軸受とし、小端軸受204を保持部とした場合の、4個のコンロッド201と主軸22、第1保持軸211、及び第2保持軸212(
図13の符号「132」、その他の実施例の符号「32」に対応)の位置関係を説明するための図である。
【0013】
図17(a)及び(b)に示すように、1本の主軸22が4個のコンロッド201の大端軸受203に回転可能に保持されている。このとき、内側に位置する2本のコンロッド201の小端軸受204はいずれも主軸22の図示右側に位置し、外側に位置する2本のコンロッド201の小端軸受204は主軸22の図示左側に位置する。そして、
図17(a)では、右側に位置する2個の小端軸受204に1本の第1保持軸211が挿通されており、左側に位置する小端軸受204に1本の第2保持軸212が挿通されている。一方、
図17(b)では、右側に位置する2個の小端軸受204にそれぞれ別の第1保持軸211が挿通されている。これら第1保持軸211は、右側保持板213に固定された軸保持部
214に取り付けられている。また、左側に位置する2個の小端軸受204にはそれぞれ別の第2保持軸212が挿通されている。これら第2保持軸212は、左側保持板215に固定された軸保持部216(
図13の符号「136」に対応)に取り付けられている。例えば軸保持部214,216(
図13の符号「134」,「136」に対応)は
図18に示すように、保持軸211,212が挿通される孔を有するU字状の支持部材218と、この支持部材218を保持板213,215に固定する軸部材221から構成することができる。
本発明の軸受試験装置は、
図17の(a)及び(b)のいずれの態様も含まれる。
【0014】
また、コンロッドのような2個の軸受をロッドで繋いでなる部品の他、1個の軸受のみからなる部品であっても本発明に係る軸受試験装置の試験対象とすることができる。この場合は、軸受に、ロッドを介して保持部を繋いだ上で試験に供することになる。試験対象となる軸受を2個、ロッドで連結して一方を保持部としても良く、試験対象となる軸受に、該軸受とは異なる形態の軸受を保持部としてロッドで連結しても良い。
【0015】
上記軸受試験装置においては、各軸受に発生する摩擦や摩耗を正確に測定するためには、4個の軸受に掛かる荷重の大きさを等しくする必要がある。4個の軸受が前記主軸上の所定点の両側に2個ずつ対称配置されていれば、4個の軸受に掛かる力を釣り合わせることにより、比較的容易に4個の軸受に掛かる荷重を等しくすることができる。そこで、4個の軸受を主軸上の所定点の両側に2個ずつ対称配置させる位置決め手段を設けることが好ましい。
【0016】
上記軸受試験装置においては、第1保持部と第2保持部を近づけることにより軸受に圧縮荷重が付与される。このように軸受に圧縮荷重を掛ける場合、軸受の、当該軸受と保持部の間のロッドと前記主軸に垂直な方向の移動を規制する拘束手段を備えることが必要である。ただし、本発明では、内側に位置する2個の軸受と、外側に位置する2個の軸受は、主軸を挟んで反対方向に保持部が向いているため、圧縮荷重の付与方向が逆になる。
図14に示すように、保持部に荷重がかかると主軸と軸受の間に潤滑油による油膜圧力が発生する。このような現象は流体潤滑理論に基づく。また、主軸の軸中心は軸受の中心に対して偏心し、荷重方向によりこの偏心位置は逆になる。
【0017】
図15は2つの軸受に、反対方向の荷重を付与したときの説明をする図である。
図15において符号30は軸受を示している。なお、
図15では、軸受中心に対する主軸の中心の偏心が分かるように回転する主軸と軸受の間の隙間を大きく誇張して示している。
図15(a)は引張荷重を2つの軸受30(軸受ハウジング)に掛けた状態、(b)は引張荷重を2つの軸受30に掛け、且つ、2つの軸受30を、ロッド41と主軸22に垂直方向に拘束した状態、(c)は圧縮荷重を掛けた状態、(d)は圧縮荷重を掛け、且つ、2つの軸受30をロッド41と主軸22に垂直方向に拘束した状態を示している。
図15(a)と(c)に示すように、2つの軸受30を拘束せずに荷重を加えると、主軸22の軸中心は軸受中心に対し偏心し2つの軸受30の位置がずれる。
図15(b)と(d)はロッド41と主軸22に垂直方向に軸受30(または、軸受ハウジング)を拘束したときに発生する拘束力を示している。このように、2つの軸受30(または軸受ハウジング)に拘束力が発生すると、測定対象以外の力が発生し、これが軸受荷重の見積もりや摩擦に影響を与えるので好ましくない。4個すべての軸受の主軸の垂直な方向への移動を規制すると、内側の軸受と外側の軸受が反対方向に移動し、主軸に荷重以外の力が発生する。
【0018】
そこで、上記軸受試験装置においては、
図16の(a)及び(b)に示すように、4個の軸受のうち内側の2個の軸受(大端軸受203)のみ、或いは外側の2個の軸受(大端軸受203)のみの前記主軸22に垂直な方向への移動を規制する拘束手段220を備えると良い。拘束手段220は、後述する「上下位置拘束板53」に相当する(
図3参照)。なお、
図16は、上記した
図17(a)の態様において、主軸22が挿通された軸受(大端軸受
203)を拘束手段220で拘束する例を示しているが、
図17(b)に示す態様でも同様に拘束手段で拘束することができる。このような構成によれば、より正確に軸受の摩擦、摩耗等を測定することができる。
【0019】
第1保持軸及び第2保持軸を一対の荷重軸間にそれぞれ掛け渡すように取り付け、第1保持軸及び第2保持軸の取り付け位置を変更することにより両保持軸間の離間距離を変更することができる。この場合、荷重軸(これは、後述する「荷重軸34」(
図2,
図9〜
図11参照)、または「両
ねじ荷重軸171」(
図12参照)に相当する。)に対して保持軸をねじ及びナット等の締結部材を用いて取り付けるようにすれば、前記荷重軸と前記締結部材が荷重付与手段となる。また、前記締結部材に加えて、前記荷重付与手段が、前記第1保持軸と前記第2保持軸の離間距離を変更するガス圧または油圧ピストンを備えることも好ましい構成である。
【0020】
さらにまた、前記荷重付与手段が、前記第1保持軸と前記第2保持軸が近接する方向或いは離間する方向に付勢する付勢手段を備えるようにすると良い。
【0021】
また、前記荷重付与手段が、前記第1保持軸及び前記第2保持軸を連結する一対の両ねじ軸と、該両ねじ軸を正逆方向に回転操作する操作手段とを備え、該操作手段によって前記両ねじ軸を正逆方向に回転することにより前記第1保持軸及び前記第2保持軸が近接或いは離間するようにすると良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、4個の軸受が有する保持部に第1及び第2保持軸を挿通することにより4個の軸受を固定したため、第1保持軸と第2保持軸を近づけることにより4個の軸受に対して圧縮荷重が付与され、第1保持軸と第2保持軸を離間させることにより4個の軸受に対して引張荷重が付与される。付与された荷重は4個の軸受によって分担されるが、2個ずつ対称配置しているため1個あたりの荷重の2倍の力で4個の軸受に均等に大きな荷重をかけるように調節することができる。
【0023】
また、本発明では、試験対象として同一の軸受を4個用いるので、該軸受に発生する摩擦トルクは4倍に拡大される。そのため、摩擦トルクの大きさや変化が明確になり、摩擦トルクを精度良く測定することができる。
さらに、本発明では、4個の軸受が有する保持部から、ロッドを介して荷重を負荷するため、荷重負荷機構に合わせた試験用軸受ハウジングが不要となる。従って、軸受が実際に備える軸受ハウジングをそのまま使用することができる。
【0024】
加えて、コンロッドのように2個の軸受(大端軸受、小端軸受)をロッドで連結してなる部品の一方の軸受を試験対象とする場合は、他方の軸受を保持部とすることができる。このため、実際の部品の全体を、本発明に係る軸受試験装置にセットして軸受試験を行うことができる。この場合、試験対象軸受に付与する荷重や主軸に付与する回転トルクの大きさ等の条件を試験対象軸受が実装される機械と同等の条件にすれば、試験対象軸受の使用時に発生する摩擦や摩耗等を正確に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る軸受試験装置は、ロッドにより連結された保持部を有する軸受を4個用い、これら4個の軸受で主軸を回転可能に支持し、荷重付与試験を行う装置である。4個の軸受は、内側の2個の軸受と外側の2個の軸受が主軸を挟んで反対側に位置するように配置する。
【0027】
図14に基づくと、同じ形状の2個の軸受に対して同一方向に主軸が回転され、同一方向の等しい荷重が付与されれば、流体潤滑理論により主軸と2個の軸受の中心位置は同じとなる。同じ形状の2個の軸受に対して同一方向に主軸が回転され、同一荷重が逆方向に付与されれば、2個の軸受の中心位置はずれる。本発明に係る軸受試験装置では、内側の2個の軸受あるいは外側の2個の軸受に対して、同一方向に主軸が回転され、同一方向の等しい荷重が付与されるが、内側の2個の軸受と外側の2個の軸受は取り付け方向が逆であるため、内側の2個の軸受と外側の2個の軸受に対する荷重付与方向は逆になる。このため、内側の軸受と外側の軸受の軸心位置がずれる(
図15(a)、(c)参照)。このとき、4個の軸受を全て主軸に垂直な面(主軸の軸心をZ軸としたときのXY面)上の同じ位置に拘束すると、主軸と軸受の間にロッドの軸方向以外の荷重が発生し(
図15(b)、(d)参照)、摩擦が非常に大きくなる。これに対して、本発明では、内側の2個の軸受(軸受ハウジング)、あるいは外側の2個の軸受(軸受ハウジング)の位置を荷重方向と垂直な方向に拘束し、他の2個の軸受(軸受ハウジング)を非拘束とするようにしたため、単純にロッドの軸方向の圧縮荷重または引張荷重となり、摩擦の増大を抑えた摩擦測定をすることができる。
【0028】
次に、本発明に係る軸受試験装置の具体的な実施形態について
図1に示す軸受試験装置を参照しながら説明する。
図1に示す軸受試験装置は、上述した従来の試験装置のうち(3)の試験装置を改良したものである。以下の説明では、
図1の左右方向及び上下方向を軸受試験装置の左右方向及び上下方向とする。また、
図1の紙面手前側及び奥側をそれぞれ軸受試験装置の前側及び後側とする。
軸受試験装置1は、基礎台2上に載置された駆動部10及び軸受試験部20と、駆動部10と軸受試験部20を連結状態、非連結状態に切り変えるクラッチ60とを備えている。クラッチ60には例えばオルダム形継ぎ手が用いられる。
駆動部10はスライド機構11の上に載置されており、駆動軸12と、この駆動軸12を変速機構13を介して回転駆動するモータ14とからなる。
【0029】
軸受試験部20は、基礎台2上に固定されたフレーム21と、該フレーム21に回転可能に支持された主軸22と、主軸22の回転角を検出する回転角検出部23と、主軸22に取り付けられた第1円板24及び第2円板25と、位置決め板26とを備えている。主軸22は前記クラッチ60により駆動軸12と連結される。
第1円板24及び第2円板25は、主軸22のうちフレーム21の左右両側に突出する部分に、それぞれ一対のとめ具27によって固定されている。
【0030】
回転角検出部23は、主軸22の左端部に取り付けられたスリット円板28と、該スリット円板28の回転角度位置を検出する回転角センサ29とから成る。
主軸22の左側の先端は円錐状或いは球面状等に加工されており(
図4参照)、位置決め板26に対して点接触するようになっている。位置決め板26に主軸22の先端が点接触することにより、回転角検出部23内の回転角センサ29に対してスリット円板28が位置決めされる。なお、クラッチ切り離し時に駆動部10はスライド機構11により移動し、クラッチ溝の摩擦により主軸22に軸方向力が発生する。回転角センサ29とスリット円板28の接触を防ぐため、主軸22の先端は位置決め板26と離れないようにすることが必要で、わずかではあるが主軸22は位置決め板26側を低く、クラッチ側を高くして、重力により主軸22の左端を位置決め板26に押し付けるようになっている。
【0031】
試験に供される軸受(以下、「供試軸受」と呼ぶ)30は、主軸22に取り付けられるようになっている。本発明の軸受試験装置1の主な特徴は軸受試験部20の構造にある。軸受試験部20では主軸22と供試軸受30との間に荷重を掛けるが、これは主軸22の回転中でなければならない。これは、すべり軸受では、主軸22の回転時において、主軸22と供試軸受30との隙間に発生する油膜圧力によって、主軸22と供試軸受30との直接接触を防止し、主軸表面と軸受表面の損傷を防止しているからである。また、転がり軸受では、主軸22の回転時において、ころの周りや内外輪間に発生する油膜圧力によって、ころや内外輪の永久変形を防止するためである。そこで、本試験装置では荷重0の無負荷で運転を開始し、1000rpmで回転中に目標の荷重に調節するようにしている。以下、軸受試験部20の具体的な実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0032】
図2は 実施例1に係る軸受試験部20の構成を示している。
図2の(a)、(b)、(c)はそれぞれ軸受試験部20の平面図、正面図、側面図である。
図2に示すように、前側の2本のフレーム21と後ろ側の2本のフレーム21の間には、主軸22と垂直な荷重軸34が2本ずつ固定されている。荷重軸34は本発明の荷重付与手段に相当する。4本の荷重軸34のうち2本は主軸22よりも高い位置にあり、残り2本は主軸22よりも低い位置にある。また、左側の2本の荷重軸34及び右側の2本の荷重軸34にはそれぞれ荷重板51が取り付けられている。これら荷重板51の間、及び前側の2本のフレーム21の間には、それぞれ主軸と平行な軸受保持軸32が1本ずつ固定されている。2本の軸受保持軸32は主軸22の前側と後側にあり、いずれも主軸22と同じ高さに位置している。
【0033】
荷重板51には軸受保持軸32の取り付け方向と垂直な2個の貫通孔が形成されており、これら2個の貫通孔にそれぞれ荷重軸34が挿通されている。荷重軸34の両端はそれぞれフレーム21に固定されている。荷重軸34の外周にはねじ(図示せず。台形ねじを使用。)が切られて雄ねじを形成しており、ナット52によって荷重軸34に対する荷重板51の取り付け位置を移動させることができる。荷重板51及びフレーム21は本発明の締結手段に相当する。
【0034】
主軸22は、4個の供試軸受30により回転可能に支持されている。
図3に示すように、供試軸受30はロッド41で連結された保持部45を有している。供試軸受30は軸受ハウジング42と、該軸受ハウジング42に保持された軸受メタル43から成る。主軸22は各供試軸受30の軸受メタル43に支持されている。保持部45はブッシュ44を有している。本実施例では、エンジンのコネクティングロッド(以下、「コンロッド」と略称する)の大端軸受を供試軸受30としており、小端軸受を保持部45としている。
【0035】
図2(a)〜(c)に示すように、4個の供試軸受30は主軸22の所定位置を挟んで両側に対称に配置されている。そのうち内側の2個の供試軸受30が有する保持部45のブッシュ44には2本の軸受保持軸32のうちの一方の軸受保持軸32(
図2中、前側の軸受保持軸32)が挿通されており、外側の供試軸受30が有する保持部45のブッシュ44には残りの軸受保持軸32(
図2中、後側の軸受保持軸32)が挿通されている。このような構成により、供試軸受30は、保持部45に挿通された軸受保持軸32によって支えられることになる。
【0036】
なお、
図2(a)及び(d)に示すように、前側の軸受保持軸32のうち2個の保持部45の間及び該保持部45とフレーム21の間にはそれぞれスペーサ321が挿通されている。また、後側の軸受保持軸32のうち2個の保持部45の間及び該保持部45とフレーム21の間にはそれぞれスペーサ322が挿通されている。これらスペーサ321、322は、前側の2個の保持部45、及び後側の2個の保持部45をそれぞれ、軸受保持軸32の所定位置(本実施例では、フレーム21間に位置する軸受保持軸32の中点)を挟んで対称な位置に配置するためのものである。これにより、本実施例では、4個の供試軸受30を主軸22上の所定点の両側に2個ずつ対称配置させている。従って、スペーサ321、322が本発明の位置決め手段として機能する。
【0037】
図2及び
図3に示すように、4個の供試軸受30のうち内側の2個の供試軸受30の上下には、上下位置拘束板53が配置されている。2枚の上下位置拘束板53はボルト(図示せず)で結合されている。上下位置拘束板53は、内側の2個の供試軸受30が有する軸受ハウジング42の上下に配置されている。軸受ハウジング42の外面と上下位置拘束板53の前記軸受ハウジング42との対向面は滑らかな研磨面になっており、これらの面に注油することにより、供試軸受30はロッド41の軸方向には滑り、ロッド41と垂直方向には拘束される。このことにより、荷重を負荷できる。なお、本第1実施例では、軸受ハウジング42をロッド方向に可動にしたが、後述する第2実施例では、荷重板51を主軸22を中心に前後対称に4個配置しているのでロッド方向にも固定した。また、第3実施例では第1実施例と同様、軸受ハウジング42をロッド方向に可動にしている。
【0038】
なお、供試軸受30に負荷される荷重は、ナット52で荷重板51を荷重軸34に沿って移動させることにより発生する。具体的には、荷重板51の前側のナット52を締めると共に後側のナット52を緩めて荷重板51を後側に移動させると引張荷重となり、荷重板51の後側のナット52を締めると共に前側のナット52を緩めて荷重板51を前側に移動させると圧縮荷重となる。つまり、本実施例では、荷重板51、ナット52、荷重軸34が荷重付与手段として機能する。供試軸受30に荷重が負荷されると該供試軸受30の軸心位置が変化し、該供試軸受30が弾性変形するため、供試軸受30の軸受ハウジング42がロッド方向にわずかに動く。また、軸受ハウジング42、ロッド41、軸受メタル43、保持部45、ブッシュ44すべてが弾性変形する。そこで、本実施例では、供試軸受30のロッド41上にひずみゲージを貼り、荷重に対するひずみゲージ測定器の検定を行ない、ひずみゲージ測定器の信号から供試軸受30に掛かる荷重を求めるようにしている。
【0039】
本実施例では、荷重軸34の両端部は雄ねじとなっており、ナット18によりフレーム21に固定されている。そのため、ナット18の締め方で荷重軸34を軸方向に動かすことができる。従って、本実施例では、荷重軸34、ナット18及びフレーム21も荷重付与手段として機能する。実験時(主軸22の回転時)にナット52による荷重調整を行うことが困難な場合は、4個のナット52を締めて荷重板51を荷重軸34に固定すると共に、ナット18の締め方で荷重軸34を軸方向に動かすことにより荷重調整する。このように、本実施例では、荷重軸34に対する荷重板51の取り付け位置、及びフレーム21に対する荷重軸34の取り付け位置の両方を変更できる設計としたため、荷重調整の自由度が高くなる。
【0040】
なお、拘束する2個の供試軸受30の軸受メタル取付け面を同一円筒上の面とするため、軸受ハウジング42の上下面は、軸受メタル43の取り付け面または軸受メタル43の内周面を基準に主軸22と軸受メタル43のすき間に対して十分に高い精度で加工し、主軸22の表面と軸受メタル43の表面の平行度に影響しないよう配慮している。これにより、拘束する2個の供試軸受30の軸受メタル43の内周面に対して傾きがない状態で主軸22を配置することができる。
【0041】
実験は、供試軸受30の軸受メタル43と主軸22の間に十分注油した状態で行う。また、軸受メタル43と主軸22との間のクリアランスは、該供試軸受30の適用機械に応じて設定する。なお、本明細書では、軸受とは軸受ハウジングに軸受メタルを挿入したもの、または軸受ハウジングにブッシュを挿入したものを指し、軸受メタル43やブッシュ44の無い軸受では軸受ハウジング42や保持部45の内面が軸受に相当する。
なお、2ストロークサイクルエンジンでは、コンロッドに転がり軸受を用いることがある。この場合も、滑り軸受を用いたコンロッドと同様に軸受試験を行うことが出来る。この場合は、内輪、ころ、外輪からなる、転がり軸受が軸受メタル43に対応する。
【0042】
図4は主軸22の拡大図である。前述したように、主軸22の先端は円錐状に加工されており、軸中心とがり先端となっている。主軸22の先端が位置決め板26と接触することにより主軸22が位置決めされるが、主軸22の先端をとがり先端としたことにより、スラスト荷重を受け持つようにすると、主軸22のとがり先端と位置決め板26間に発生する摩擦による力のモーメント(軸トルク)がほぼゼロとなり、この部分に発生する摩擦の影響を極めて小さくすることができる。
【0043】
なお、主軸22のとがり先端と位置決め板26との接触は点接触が望ましいが、スラスト荷重が大きい場合は円錐台として、主軸22のとがり先端と位置決め板26を面接触としても良い。このとき、とがり先端の位置決め板26との接触面は主軸22の直径の10%以下であることが好ましい。また、主軸22のとがり先端の形状は
図4の(a)に示すような円錐状の他、(b)に示すように円錐状の頂部を球面状にしたり、(c)に示すように円錐状の頂部を該頂部よりも大きい円錐角の円錐状にしたりしても良い。このようにすることにより、主軸22のとがり先端の強度を向上することができる。主軸22のとがり先端と該主軸
22との同心度を高めるためには、主軸22の端部を直接加工することが好ましいが、主軸22とは別に形成した球面状や円錐状等の部材を主軸22の端部に取り付けても良い。
【0044】
供試軸受30に掛かる荷重が動荷重の場合は主軸22の軸中心位置が動くため、主軸22の先端を球面状にする場合は、長軸が主軸22の半径方向に長い楕球面状にする。また主軸22の先端を円錐状にする場合は、円錐角を120°〜170°にする。このようにすることにより、主軸22の先端に油をつけたときに主軸22の動きによる油膜の発生を容易にして、摩擦測定への軸の動きの影響を小さくすることができる。また、主軸22の先端形状部分((b)、(c)の円筒部)の直径は、摩擦の低減と強度確保のため、目的に合わせて主軸22の径の10〜30%程度に調節することが望ましい。
【0045】
図5の(a)は各供試軸受30が有する保持部45の横断面図を示している。本実施例では、保持部45に保持されたブッシュ44の内面が該ブッシュ44内の中心に向かって先細となるテーパ状になっており、その先端において軸受保持軸32と接するように構成されている。なお、ブッシュ44の内面をテーパ状にする加工は、4個の供試軸受30全てについて行っても良いが、内側の2個のみ、或いは外側の2個のみに行っても良い。
【0046】
このようにブッシュ44の内面をテーパ状に加工することにより、ブッシュ44内にほぼ遊びが無い状態で軸受保持軸32を挿通しても、両者の接触面積を小さくすることができる。このため、軸受保持軸32とブッシュ44内面の間の軸の傾きに自由度ができ、軸受ハウジング42と軸受メタル43は主軸22の表面にならい、ミスアライメントがなくなる。荷重が付与されることにより主軸が移動しても、4個の軸受間にミスアライメントの影響が出ないようにすることができる。また、ブッシュ44と軸受保持軸32の間に発生する摩擦を小さくすることもできる。
【0047】
なお、ブッシュ44の内面をテーパ状に加工する場合、
図5の(b)に示すように、テーパ状部の中央に若干の平行部を残しても良い。また、ブッシュ44の内面をテーパ状にする代わりに、断面が円弧状などの曲面(
図5の(c))にしても良い。さらに、軸受保持軸32の外面をテーパ状(
図5の(d))にしたり、テーパ状部の中央に若干の平行部を残したり(
図5の(e))、或いは断面が円弧状(
図5の(f))にしたりしても同様の効果が得られる。ここで、
図5(a)、(b)、(d)、(e)に示すテーパ角度は実際より大きく描いている。実際のテーパ角度はブッシュ44の幅、ブッシュ44と軸受保持軸32の間のすき間、供試軸受30の長さ、主軸22と軸受保持軸32の軸間の平行度などで幾何学的に決められる。例えば、本実施例に係る軸受試験装置1で用いたブッシュ44の内面の角度は3°前後の小さなものが好ましい。また、
図5(c)、(f)に示すようにブッシュ44の内面を断面円弧状にした場合においても、曲面であるかが視覚的に認識できないほど、幾何学的に決められる曲率半径を大きくする。
また、コンロッドなどにはブッシュ44の無いものも存在する。この場合は、上記したようなブッシュ44の内面に行った加工を保持部45の内面に行うことになる。
【0048】
次に、軸受試験部20に荷重測定センサ(ひずみゲージ)を取り付けるための荷重計算式について説明する。以下の式中、F1、F2、F3、F4は、各供試軸受30に掛かる荷重に対応する力を示す(
図6参照)。
下記の「数1」に示す2式は力のつり合いと力のモーメントのつり合いを示す式で、F1、F2、F3、F4の関係を表している。「数1」から分かるように、F1、F2、F3、F4のうちの任意の二つが決まると、他の二つが従属して決まる。また、4個の供試軸受30の配置から、F1、F2、F3、F4のうちどれか2つが等しいと、F1=F2=F3=F4となる。
【0049】
本軸受試験装置は規格の等しい4個の軸受を用いて、同じ条件で摩擦を測定して軸受1個当りの潤滑状況を調べるので、4個の軸受の荷重が異なると試験装置として成立しない。従って、試験装置として成立させるためには、4個の供試軸受のうち任意の2個の荷重が等しくなるように測定しながら荷重板51の位置を調整すればよい。
【0050】
ただし、2個の荷重板51の位置を同じように調整してもそのときの荷重の変化の仕方が異なる。そこでF1、F2、F3、F4の関係から、4個の供試軸受のうちのどの軸受で荷重測定を行いながら荷重調整をすると良いかを試算する。「数1」に基づき、「数2」の2式はF1、F4をF2、F3で表したもの、「数3」の2式はF2、F3をF1、F4で表したものである。同様に「数4」の2式はF1、F4の誤差をF2、F3の誤差で表したもの、「数5」の2式はF2、F3の誤差をF1、F4の誤差で表したものである。
【0051】
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0052】
上記式より、供試軸受30のうち内側の軸受の荷重を示すF2とF3の変化が外側の軸受の荷重を示すF1とF4の変化よりも大きく、F2とF3を測定して荷重を設定すると最も誤差が少ないことが分かる。そこで、本実施例では、内側の2個の供試軸受30のロッド41に荷重測定センサとしてのひずみゲージを貼り、軸受荷重に対する出力の測定を行った。
【0053】
また、内側の供試軸受30を支える軸受保持軸32には、外側の供試軸受30を支える軸受保持軸32よりも大きな曲げモーメントが発生し、応力も大きい。従って、内側の供試軸受30を支える軸受保持軸32の材料は、外側の供試軸受30を支える軸受保持軸32よりも剛性の高いものを用いると良い。ここでは、軸用構造用炭素鋼の中で硬い材料として知られているS50Cを焼入れしたものを用いている。
【0054】
図7は、本実施例に係るクラッチ60を示す。このクラッチ60は、いわゆるオルダム型軸継ぎ手から成り、駆動軸12の端部に固定された第1溝円板61、主軸22の端部に固定された第2溝円板62、これら溝円板61、62の間に挟持されるフローティングカム63を備える。第1溝円板61及び第2溝円板62のフローティングカム63との対向面には、それぞれ駆動軸12、主軸22の軸心を通る溝611、621が形成されている。一方、フローティングカム63の第1溝円板61及び第2溝円板62との対向面には、それぞれ溝611、621に対応する突条部631が形成されている。
このような構成により、荷重によって4個の供試軸受30の位置がずれて、主軸22と駆動軸12の軸心位置が異なっても、主軸22と駆動軸12の連結状態を保持することができる。
【0055】
また、フローティングカム63にはガイド長孔64が形成されており、該ガイド長孔64に頭部の広いボルト(雄ねじ)65が挿入されている。第1溝円板61には、ねじ穴(雌ねじ)61aが形成されており、該ねじ穴61aにボルト(雄ねじ)65をねじ込むことにより、フローティングカム63は第1溝円板61にボルト65で離れないように取り付けられている。ガイド長孔64がボルト65に沿って移動可能なため、フローティングカム63の運動が妨げられることはない。スライド機構11により駆動部10が軸受試験部20から離間する方向に移動されると、クラッチが切れ、主軸22と駆動軸12の連結状態が解除される。なお、
図7のように第1溝円板61と駆動軸12、第2溝円板62と主軸22の組み合わせが、クラッチ切断後の軸受摩擦測定試験中にフローティングカム63が主軸22から離れ、駆動軸12側になり、好ましい。フローティングカム63の振動が無視できれば、第1溝円板61と主軸22、第2溝円板62と駆動軸12の結合としても良い。
【0056】
図8は上記構成の軸受試験装置1を用いた測定結果の一例を示す。この結果は、供試軸受30に引張荷重、圧縮荷重をかけたときの、供試軸受1個当たりの摩擦係数μとゾンマーフェルト数Sの関係を示す。実験条件は、軸受当り3000[N]の荷重で、軸受直径40[mm]、幅13.5[mm] 油の粘度0.0582[Pas]で、1500[rpm]からの減速である。
【実施例2】
【0057】
図9は本発明の実施例2に係る軸受試験部20の一部(軸受試験ユニット)の構成を示している。この実施例では、内側の2個の供試軸受30が有する保持部45は後側の軸受保持軸32に、外側の2個の供試軸受30が有する保持部45は前側の軸受保持軸32に取り付けられている。なお、
図9には図示しないが、実施例1と同様、本実施例でも内側の2個の保持部45及び外側の2個の保持部
45は、スペーサによって所定位置を挟んで対称な位置に位置決めされている。
また、本実施例では、ねじによる圧縮荷重と油圧ピストンによる引張荷重を組み合わせて供試軸受30に付与する。油圧ピストンを制御することにより荷重を変動させることができる。本実施例では、荷重軸用ばね71がナット52で荷重軸34に取り付けられている。
【0058】
4個の荷重板51の貫通孔に挿通された4本の荷重軸34は、荷重板51との間に荷重軸用ばね71をはさんでナット52で該荷重板51に固定される。また、荷重板51には油圧シリンダ73が荷重軸34と対に組みつけられている。4本の油圧シリンダ73は並列につながれている。
【0059】
図10は、
図9に示す軸受試験ユニットの一部を軸受試験部20に組み込んだ状態を示す。軸受試験ユニットは4本の荷重軸34によりフレーム21に組み付けられている。
4本の荷重軸34はフレーム21の4個の貫通孔にはめ込まれており、軸方向に可動な状態にある。供試軸受30のうち内側の2個の供試軸受は上下位置拘束板53により拘束されている。本実施例では、内側の2個の供試軸受30は、ロッド41と平行な方向及び垂直な方向の両方に拘束されている。上下位置拘束板53は脚
78により基礎台2に固定されている。
本実施例では、ナット52を締めることにより圧縮荷重をかけることができる。これが最大圧縮荷重となる。次に4個の油圧シリンダ73に同一油圧をかけて引張荷重をかける。引張荷重は油圧荷重からナット52を締めたことによる圧縮荷重を引いたものである。油圧を動的にかけると、4個の供試軸受30に等しい変動荷重が発生する。
【実施例3】
【0060】
図11は基本構造が実施例1の軸受試験部20と同じであるが、変動荷重を目標として改造したものである。この実施例では、実施例2の油圧シリンダに代えて、ばね81とカム82により圧縮荷重を発生させている。内側または外側の対となる2個の左右の供試軸受30の荷重を均等化させるために、ばね81と2個の荷重板51の連結に、荷重板51と接合板85と2本のアーム842を3本のピン841で結合したトラス機構84を用いる。ピン841の結合によるトラス
機構84を用いたのは、回転拘束が無く、支持部に力のモーメントが発生しないピン結合により、2個の荷重板51に均等に荷重を分配すると共に、同一の軸受保持軸32に保持部45が取り付けられた軸受のうちの一方の軸受に荷重が偏らないよう配慮したためである。この軸受試験部20の荷重軸34に荷重軸用ばね71をつけてナット52で締めて軸受に引張荷重をかける。ここで、ナット52は引張荷重側の4個のみで、実施例1に示したような圧縮荷重側の4個はない。
【0061】
カム82はカム軸83に1体に接合され、カム軸83を中心に回転自在にフレーム21に取り付けられている。荷重板51は接合板85と2本のアーム842を3本のピン841で結合したトラス
機構84を介してばね81の一端に取り付けられており、このばね81の他端がカム82に接している。このような構成により、カム軸83を介してカム82を回転させればばね81を通して荷重板51に掛かる圧縮荷重を変動させることができる。圧縮荷重はばね81の縮み荷重からナット52で閉めた引張荷重を引いた値である。カム82の回転には大きなトルクが必要である。モータでカム82を回転させる構造にしても良い。また、カム82に代えて油圧ピストン等の方式でばね81に変位を与えてもよい。
【0062】
また、荷重軸34の荷重軸用ばね71とナット52、カム軸83、カム82およびトラス機構84を荷重板51に対し左右逆に配置して、荷重軸用ばね71とナット52で圧縮荷重をかけ、カム軸83、カム82およびトラス機構84で引張荷重をかけることも可能である。しかし、この場合は、軸受の取り付け位置より、高い位置か低い位置に引張荷重発生機構を移さざるを得ず、構成が複雑となる。
【0063】
上記した実施例1〜3では供試軸受30のうち内側の供試軸受を上下位置拘束板53で拘束する例を示したが、外側の供試軸受を拘束しても同様の作用、効果が得られる。また、外側の2個の供試軸受30が有する保持部45、内側の2個の供試軸受30が有する保持部45の位置は、どちらか一方を前側の軸受保持軸32に、他方を後側の軸受保持軸32に取り付ければ良い。さらに、第1円板24及び第2円板25は対称に配置されていればどこでも良い。また、対称に配置されていれば、2つ以上の円板でも良く、中央に配置する場合は一つの円板でも良い。
また、クラッチ60が結合したまま行う試験、例えば耐久試験など、慣性モーメントを必要としない試験では第1円板24及び第2円板25は無くてもよい。
【実施例4】
【0064】
図12は本発明の実施例4を示す。この実施例は、主軸の位置ずれを抑えながら荷重を加えることを特徴とする。
【0065】
本実施例では、荷重軸34に代えて両ねじ荷重軸171が用いられており、該両ねじ荷重軸171の端部にハンドル174が取り付けられている。ハンドル174を右回りに回すと、両ねじ荷重軸171が右まわりに回転し、右ねじ荷重板191が外側(左方向)に移動する。これにより、内側の2個の供試軸受30が左方向に動く。また、これと同時に左ねじ荷重板192が右方向へ移動し、これにより外側の2個の供試軸受30が右方向に動く。この結果、4個の供試軸受30に引張荷重が与えられる。
【0066】
一方、ハンドル174を左回りに回すと、両ねじ荷重軸171が左まわりに回転し、右ねじ荷重板191が内側(右方向)に、左ねじ荷重板192が外側(左方向)に移動する。これにより内側の2個の供試軸受30が内側(右方向)に動き、外側の2個の供試軸受30が外側(左方向)に動く。この結果、4個の供試軸受30に圧縮荷重が与えられる。
【0067】
なお、両ねじ荷重軸171は、右ねじと左ねじをそれぞれ有していればよく、その位置は左側と右側のどちらにあっても良い。この場合、右ねじ荷重板191と左ねじ荷重板192の位置は両ねじ荷重軸171のねじの向きと一致していなければならない。
【0068】
ハンドル174の代わりに、モータを使用してもよい。モータには高いトルクが必要とされるが、減速モータや高い減速比のステッピングモータ、油圧揺動モータ等を使えば実現できる。精度の高いモータを使用した場合、動的な負荷を加えながら試験を行うこともできる。
【実施例5】
【0069】
本発明の実施例5に係る軸受試験部20を
図13に示す。
図13の(a)〜(c)は
図2の(a)〜(c)に対応しており、それぞれ軸受試験部20の上面図、正面図、側面図である。
実施例5の軸受試験部20は、実施例1の軸受試験部20(
図2参照)と基本構造は同じであるが、軸受保持軸(第1及び第2の保持軸)の構成が実施例1と異なる。すなわち、この実施例では、4個の供試軸受30の保持部45には、それぞれ別の軸受保持軸132が挿通されている。
【0070】
具体的には、前側の2本のフレーム21の間には、第1保持板133が掛け渡されており、この第1保持板133に2個のU字状の軸保持部134(
図18参照)が固定されている。これら2個の軸保持部134に、4個の供試軸受30のうち内側の2個の供試軸受30が有する保持部45のブッシュ44に挿通される軸受保持軸132がそれぞれ取り付けられている。
【0071】
また、左右側の荷重板51には第2保持板135が掛け渡されており、この第2保持板135に2個のU字状の軸保持部136(
図18参照)が固定されている。これら2個の軸保持部136に、4個の供試軸受30のうち外側の2個の供試軸受30が有する保持部45のブッシュ44に挿通される軸受保持軸132がそれぞれ取り付けられている。
【0072】
このような構成により、本実施例においても、荷重
板51の取付位置、及びフレームに対する荷重軸34の取付位置を調整することにより、供試軸受30にかかる荷重を調整することができる。
さらに、本実施例では、4個の供試軸受30の保持部45にそれぞれ別の軸受保持軸132を挿通したため、4個の供試軸受30のサイズが異なる場合でも、各供試軸受30に最適な大きさや形状の軸保持部及び軸受保持軸を用いて試験を行うことができる。また、本実施例の軸受試験装置では、軸保持部134,136に荷重測定センサ(ひずみゲージ)を貼る(なお、軸保持部134,136であればどこでも良いが、特に
図18に符号221で示す軸部材に貼り付けることが好ましい。)ことにより、各供試軸受30の荷重を測定することができる。軸受のロッド部に荷重測定センサ(ひずみゲージ)を貼ると、軸受を変えるたびに荷重測定センサからのひずみ信号の検定を荷重計で行わなければならないが、軸保持部に荷重測定センサを貼り付けた場合は、ひずみ信号の検定を荷重計で1回行えば、軸受を変更しても荷重を求めることができる。
【0073】
上記した各実施例では、コンロッドのうちの大端軸受を供試軸受とする場合を例に挙げて説明したが、小端軸受を供試軸受とすることもできる。また、1個の軸受のみを有する部品の場合は、該軸受にロッドを介して保持部を連結することにより、本発明に係る軸受試験装置に供することができる。
【0074】
さらに、上記実施例では、エンジンにおいて一般的に用いられるコンロッドを例に挙げて説明したが、本発明に係る軸受試験装置は、トライボロジー(摩擦、摩耗、潤滑)の分野全般で使用できる汎用試験装置である。従って、本発明の軸受試験装置は、パソコンの部品として用いられるような超小型軸受から、建設用構造体(可動橋)に用いられる大型軸受まで、種々の軸受の摩擦等の測定に用いることができる。