特許第6149002号(P6149002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149002
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】電気調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/06 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
   F24C7/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-105279(P2014-105279)
(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2015-218999(P2015-218999A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森山 忠道
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 旭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐也
(72)【発明者】
【氏名】前田 達也
(72)【発明者】
【氏名】川野 隼人
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−019465(JP,A)
【文献】 実開昭54−089394(JP,U)
【文献】 実公昭61−34709(JP,Y2)
【文献】 特開昭64−046524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/06
F24C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を上側に乗せるための焼網と、前記焼網の上方に配置された上側加熱手段と、前記焼網の下方に配置された下側加熱手段と、を備えた電気調理器であって、
前記上側加熱手段は、単数又は複数備えられ、
前記下側加熱手段は、前記上側加熱手段の数よりも多い数だけ備えられ、
全ての前記下側加熱手段に出力させることができる最大総出力は、全ての前記上側加熱手段に出力させることができる最大総出力よりも大きく、
前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の一方、又は前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の双方のそれぞれは、少なくとも三つ以上備えられ、水平方向に間隔を空け順番に配置されると共に、両端に配置された二つの両端加熱手段の間に配置された単数又は複数の加熱手段である中間加熱手段の最大出力は、前記両端加熱手段のいずれの最大出力よりも小さい電気調理器。
【請求項2】
被調理物を上側に乗せるための焼網と、前記焼網の上方に配置された上側加熱手段と、前記焼網の下方に配置された下側加熱手段と、を備えた電気調理器であって、
前記上側加熱手段は、単数又は複数備えられ、
前記下側加熱手段は、前記上側加熱手段の数よりも多い数だけ備えられ、
全ての前記下側加熱手段に出力させることができる最大総出力は、全ての前記上側加熱手段に出力させることができる最大総出力よりも大きく、
前記被調理物がスライスした食パンであるとして、当該スライスパンを前記焼網に乗せる枚数を設定する枚数設定部を更に備え、
前記枚数設定部により設定された前記スライスパンの枚数に応じて、前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の一方又は双方からなる複数の加熱手段において、加熱させる加熱手段を変化させ、
前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の一方、又は前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の双方のそれぞれは、少なくとも三つ以上備えられ、水平方向に間隔を空け順番に配置されると共に、両端に配置された二つの両端加熱手段の間に配置された単数又は複数の加熱手段である中間加熱手段を有し、
前記中間加熱手段を制御対象加熱手段とし、前記枚数設定部により設定された前記スライスパンの枚数が、前記スライスパンを、加熱手段を順番に配置した配置方向における前記焼網の中心部に寄せて配置する場合に、少なくとも一枚の前記スライスパンの中心部が前記制御対象加熱手段の上方又は下方に配置される枚数である場合は、前記制御対象加熱手段を加熱させ、前記スライスパンの枚数が、前記スライスパンの中心部が一枚も前記制御対象加熱手段の上方又は下方に配置されない枚数である場合は、前記制御対象加熱手段を加熱させない電気調理器。
【請求項3】
被調理物を上側に乗せるための焼網と、前記焼網の上方に配置された上側加熱手段と、前記焼網の下方に配置された下側加熱手段と、を備えた電気調理器であって、
前記上側加熱手段は、単数又は複数備えられ、
前記下側加熱手段は、前記上側加熱手段の数よりも多い数だけ備えられ、
全ての前記下側加熱手段に出力させることができる最大総出力は、全ての前記上側加熱手段に出力させることができる最大総出力よりも大きく、
前記被調理物がスライスした食パンであるとして、当該スライスパンを前記焼網に乗せる枚数を設定する枚数設定部を更に備え、
前記枚数設定部により設定された前記スライスパンの枚数に応じて、前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の一方又は双方からなる複数の加熱手段において、加熱させる加熱手段を変化させ、
前記枚数設定部により設定された前記スライスパンの枚数が多くなるに従い、連続的又は段階的に、前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の一方又は双方からなる複数の加熱手段において、加熱させる加熱手段の数を少なくする電気調理器。
【請求項4】
被調理物を上側に乗せるための焼網と、前記焼網の上方に配置された上側加熱手段と、前記焼網の下方に配置された下側加熱手段と、を備えた電気調理器であって、
前記上側加熱手段は、単数又は複数備えられ、
前記下側加熱手段は、前記上側加熱手段の数よりも多い数だけ備えられ、
全ての前記下側加熱手段に出力させることができる最大総出力は、全ての前記上側加熱手段に出力させることができる最大総出力よりも大きく、
前記被調理物がスライスした食パンであるとして、当該スライスパンを前記焼網に乗せる枚数を設定する枚数設定部を更に備え、
前記枚数設定部により設定された前記スライスパンの枚数に応じて、前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の一方又は双方からなる複数の加熱手段において、加熱させる加熱手段を変化させ、
前記焼網、前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段を内側に備える調理室と、前記調理室の前部に設けられた、前記調理室内に前記被調理物を出し入れする開口部と、を更に備え、
水平方向に沿って、前記開口部に近い側を前とし、前記開口部に遠い側を後とし、
前記上側加熱手段は二つ備えられ、第一及び第二の前記上側加熱手段が、前後方向に間隔を空け順番に配置され、
前記下側加熱手段は三つ備えられ、第一、第二及び第三の前記下側加熱手段が、前後方向に間隔を空け順番に配置され、
前記枚数設定部により設定された前記スライスパンの枚数が、予め定めた切替枚数以下である場合に、前記第一及び第二の前記上側加熱手段を加熱させると共に前記第一、第二及び第三の前記下側加熱手段を加熱させ、前記スライスパンの枚数が、前記切替枚数より多い場合に、前記第一及び第二の前記上側加熱手段を加熱させると共に前記第一及び第三の前記下側加熱手段を加熱させ、前記第二の前記下側加熱手段を加熱させない電気調理器。
【請求項5】
被調理物を上側に乗せるための焼網と、前記焼網の上方に配置された上側加熱手段と、前記焼網の下方に配置された下側加熱手段と、を備えた電気調理器であって、
前記上側加熱手段は、単数又は複数備えられ、
前記下側加熱手段は、前記上側加熱手段の数よりも多い数だけ備えられ、
全ての前記下側加熱手段に出力させることができる最大総出力は、全ての前記上側加熱手段に出力させることができる最大総出力よりも大きく、
前記上側加熱手段の下方及び前記下側加熱手段の上方の一方又は双方に、加熱手段に隣接配置された、加熱手段からの熱を拡散させる拡散部を更に備え、
前記拡散部のそれぞれの形状を、少なくとも二つ以上の異なる形状とし、
前記拡散部が隣接配置された、前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の一方、又は前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の双方のそれぞれは、少なくとも三つ以上備えられ、水平方向に間隔を空け順番に配置されると共に、両端に配置された二つの両端加熱手段の間に配置された単数又は複数の中間加熱手段に隣接配置された前記拡散部の断面幅は、前記両端加熱手段に隣接配置された前記拡散部の断面幅よりも広くされている電気調理器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被調理物を上側に乗せるための焼網と、焼網の上方に配置された上側加熱手段と、焼網の下方に配置された下側加熱手段と、を備えた電気調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような電気調理器として、例えば、下記の特許文献1に記載された電気調理器が既に知られている。特許文献1の技術では、回転載置台の上方に二つの加熱手段が備えられ、回転載置台の下方に一つの加熱手段が備えられている。また、特許文献1の技術では、上側加熱手段の最大総出力は350W+650Wの1000Wとされ、下側加熱手段の最大総出力は400Wとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−60914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
下側加熱手段の輻射熱は、焼網により一部遮られるため、被調理物の下面に到達する輻射熱が減少する。しかしながら、特許文献1の技術では、下側加熱手段の数が、上側加熱手段の数より少なく、また、下側加熱手段の最大総出力が、上側加熱手段の最大総出力より小さくされている。よって、特許文献1の技術では、被調理物の下面に伝達される熱量が、被調理物の上面に伝達される熱量よりも少なくなり、被調理物の上面と下面との間で、焼きムラが生じる虞があった。また、特許文献1の技術では、被調理物の下面において水平方向に焼きムラが生じる虞があった。そこで、被調理物の上面と下面との間、及び被調理物の下面における水平方向に焼きムラが生じることを抑制できる電気調理器の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る、被調理物を上側に乗せるための焼網と、前記焼網の上方に配置された上側加熱手段と、前記焼網の下方に配置された下側加熱手段と、を備えた電気調理器の特徴構成は、前記上側加熱手段は、単数又は複数備えられ、前記下側加熱手段は、前記上側加熱手段の数よりも多い数だけ備えられ、全ての前記下側加熱手段に出力させることができる最大総出力は、全ての前記上側加熱手段に出力させることができる最大総出力よりも大きい点にある。この特徴構成によれば、下側加熱手段の最大総出力が、上側加熱手段の最大総出力よりも大きくされているので、焼網に遮られる輻射熱を補償して、被調理物の上面及び下面に伝達される熱量の上下均一化を図ることができる。しかし、上記の特徴構成とは異なり、下側加熱手段の数が上側加熱手段の数と同じ状態で、各下側加熱手段の最大出力を増加させると、熱の集中が生じ易くなり、被調理物の下面の焼きムラが生じ易くなる。上記の特徴構成では、下側加熱手段の数は、上側加熱手段の数よりも多くされているので、下側加熱手段の最大総出力を増加させても、各下側加熱手段の最大出力が大きくなることを抑制でき、輻射熱の発生源を分散させて熱の集中が生じることを抑制できる。よって、被調理物の下面に加える熱の均一化を図ることができる。従って、被調理物の上面と下面との間、及び被調理物の下面における水平方向に焼きムラが生じることを抑制できる。
【0006】
本発明に係る電気調理器の更なる特徴構成は、前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の一方、又は前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の双方のそれぞれは、少なくとも三つ以上備えられ、水平方向に間隔を空け順番に配置されると共に、両端に配置された二つの両端加熱手段の間に配置された単数又は複数の加熱手段である中間加熱手段の最大出力は、前記両端加熱手段のいずれの最大出力よりも小さい点にある。焼網の上方又は下方に三つ以上の加熱手段を並べて配置すると、中間加熱手段の上方又は下方に配置された被調理物の部分には、中間加熱手段からの輻射熱だけでなく、中間加熱手段の両側に配置された両端加熱手段や隣の中間加熱手段からの輻射熱も加わる。一方、両端加熱手段の上方又は下方に配置された被調理物の部分には、両端加熱手段からの輻射熱に加えて、両端加熱手段の一方側に配置された中間加熱手段からの輻射熱が加わる。そのため、中間加熱手段の最大出力を、両端加熱手段の最大出力と同等とすると、中間加熱手段に対応する部分の加熱量が多くなり焼きムラが生じる虞がある。上記の構成によれば、中間加熱手段の最大出力は、両端加熱手段のいずれの最大出力よりも小さくされるので、中間加熱手段に対応する部分の加熱量が多くなることを抑制し、焼きムラが生じることを抑制できる。
【0007】
本発明に係る電気調理器の更なる特徴構成は、前記被調理物がスライスした食パンであるとして、当該スライスパンを前記焼網に乗せる枚数を設定する枚数設定部を更に備え、前記枚数設定部により設定された前記スライスパンの枚数に応じて、前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の一方又は双方からなる複数の加熱手段において、加熱させる加熱手段を変化させる点にある。スライスパンの枚数に応じて、焼網におけるスライスパンの配置が変化し、各スライスパンと各加熱手段との配置関係が変化する。上記の構成のように、スライスパンの枚数に応じて、加熱する加熱手段を変化させることにより、スライスパンの枚数に応じて変化するスライスパンの配置に合わせて、加熱させる加熱手段を変化させ、スライスパンの焼きムラを少なくすることができる。
【0008】
本発明に係る電気調理器の更なる特徴構成は、前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の一方、又は前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の双方のそれぞれは、少なくとも三つ以上備えられ、水平方向に間隔を空け順番に配置されると共に、両端に配置された二つの両端加熱手段の間に配置された単数又は複数の加熱手段である中間加熱手段を有し、前記中間加熱手段を制御対象加熱手段とし、前記枚数設定部により設定された前記スライスパンの枚数が、前記スライスパンを、加熱手段を順番に配置した配置方向における前記焼網の中心部に寄せて配置する場合に、少なくとも一枚の前記スライスパンの中心部が前記制御対象加熱手段の上方又は下方に配置される枚数である場合は、前記制御対象加熱手段を加熱させ、前記スライスパンの枚数が、前記スライスパンの中心部が一枚も前記制御対象加熱手段の上方又は下方に配置されない枚数である場合は、前記制御対象加熱手段を加熱させない点にある。上記の構成によれば、水分が比較的多いスライスパンの中心部を適切に焼き、水分が比較的少なく焼けやすいスライスパンの縁部が焼け過ぎないようにし、各スライスパンの焼きムラが生じることを抑制できる。
【0009】
本発明に係る電気調理器の更なる特徴構成は、前記枚数設定部により設定された前記スライスパンの枚数が多くなるに従い、連続的又は段階的に、前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の一方又は双方からなる複数の加熱手段において、加熱させる加熱手段の数を少なくする点にある。焼網のスペースは限られているため、多くの枚数のスライスパンを配置しようとすると、スライスパンの配置が最適でなくなり、スライスパンの縁部の上側又は下側に加熱手段が配置されやすくなる。上記の構成によれば、スライスパンの枚数が多くなるに従い、加熱させる加熱手段の数を少なくすることで、スライスパンの縁部に伝達される熱量を少なくし、各スライスパンの焼きムラが生じることを抑制できる。
【0010】
本発明に係る電気調理器の更なる特徴構成は、前記焼網、前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段を内側に備える調理室と、前記調理室の前部に設けられた、前記調理室内に前記被調理物を出し入れする開口部と、を更に備え、水平方向に沿って、前記開口部に近い側を前とし、前記開口部に遠い側を後とし、前記上側加熱手段は二つ備えられ、第一及び第二の前記上側加熱手段が、前後方向に間隔を空け順番に配置され、前記下側加熱手段は三つ備えられ、第一、第二及び第三の前記下側加熱手段が、前後方向に間隔を空け順番に配置され、前記枚数設定部により設定された前記スライスパンの枚数が、予め定めた切替枚数以下である場合に、前記第一及び第二の前記上側加熱手段を加熱させると共に前記第一、第二及び第三の前記下側加熱手段を加熱させ、前記スライスパンの枚数が、前記切替枚数より多い場合に、前記第一及び第二の前記上側加熱手段を加熱させると共に前記第一及び第三の前記下側加熱手段を加熱させ、前記第二の前記下側加熱手段を加熱させない点にある。上記のような加熱手段の配置構成によれば、スライスパンの枚数が、所定の切替枚数以下である場合には、第二下側加熱手段の上方にスライスパンの中心部が配置されやすくなるため、第二下側加熱手段及び他の加熱手段を加熱させ、スライスパンの焼きムラが生じることを抑制できる。また、スライスパンの枚数が、所定の切替枚数より多い場合には、第二下側加熱手段の上方にスライスパンの中心部が配置されずに、スライスパンの縁部が配置されやすくなるため、第二下側加熱手段を加熱させずに、他の加熱手段を加熱させ、スライスパンの焼きムラが生じることを抑制できる。
【0011】
本発明に係る電気調理器の更なる特徴構成は、前記上側加熱手段の下方及び前記下側加熱手段の上方の一方又は双方に、加熱手段に隣接配置された、加熱手段からの熱を拡散させる拡散部を更に備え、前記拡散部のそれぞれの形状を、少なくとも二つ以上の異なる形状とした点にある。上記の構成によれば、加熱手段の輻射熱を適切に拡散し、被調理物に伝達される輻射熱の均一化を図ることができる。
【0012】
本発明に係る電気調理器の更なる特徴構成は、前記拡散部が隣接配置された、前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の一方、又は前記上側加熱手段及び前記下側加熱手段の双方のそれぞれは、少なくとも三つ以上備えられ、水平方向に間隔を空け順番に配置されると共に、両端に配置された二つの両端加熱手段の間に配置された単数又は複数の中間加熱手段に隣接配置された前記拡散部の断面幅は、前記両端加熱手段に隣接配置された前記拡散部の断面幅よりも広くされている点にある。上記の構成によれば、断面幅が広い拡散部により、中間加熱手段の輻射熱の拡散を向上させることができ、加熱量が多くなりやすい中間加熱手段に対応する被調理部の部分に対する加熱を抑制し、焼きムラが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電気調理器の扉を閉じた状態の斜視図
図2】電気調理器の扉を開いた状態の斜視図
図3】横方向に直交する平面で切断した電気調理器の縦断面図
図4】上方から下方に見た電気調理器の水平断面図
図5】下方から上方に見た電気調理器の水平断面図
図6】スライスパンの枚数に応じた加熱する加熱手段の変化を説明する平面図
図7】その他の実施形態に係る加熱する加熱手段の変化を説明する平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る電気調理器1の実施形態について、図面を参照して説明する。
電気調理器1は、被調理物2を上側に乗せるための焼網3と、焼網3の上方に配置された加熱手段8である上側加熱手段8Uと、焼網3の下方に配置された加熱手段8である下側加熱手段8Dと、を備えている。このような電気調理器1は、例えば、いわゆるオーブントースタとされる。なお、電気調理器1は、ホームベーカリーやオーブン等とされてもよい。本願において、「上」、「下」、又は「水平」は、電気調理器1が水平な平面上に置かれた場合における鉛直方向の「上」、「下」、又は「水平」を意味し、「上下方向H」は、鉛直方向に平行であるものとする。まず、電気調理器1の概略構成について説明する。電気調理器1は、外郭を形成する本体7と、本体7内において被調理物2を収容する調理室4と、調理室4内に設けられた加熱手段8及び焼網3と、を備えている。本実施形態では、電気調理器1は、調理室4の前部に設けられた、調理室4内に被調理物2を出し入れするための開口部50と、開口部50を覆う扉5と、を備えている。ここで、電気調理器1(調理室4)において、水平方向に沿って、開口部50に近い側を「前」、開口部50に遠い側を「後」と定義し、「前後方向D」は、「上下方向H」に直交するものとする。また、電気調理器1において、前後方向D及び上下方向Hに直交する方向を「横方向W」と定義する。また、電気調理器1の「右」又は「左」は、電気調理器1を開口部50が設けられた前側から見た状態での「右」又は「左」と定義する。本実施形態では、本体7は、枠組み部材と、電気調理器1の外壁を形成するケース6と、を備えている。電気調理器1は、外形が直方体状に形成されており、直方体状の各辺は、上下方向H、前後方向D、及び横方向Wのいずれかに平行にされている。ケース6は、上面、下面、左右両面を形成している。なお、電気調理器1の前面は、扉5及び操作パネル60により形成されている。扉5の右側に設けられた操作パネル60には、加熱時間や加熱強度などの加熱条件を設定するつまみ61、62や切替スイッチ63(枚数設定部12の一例)などの操作スイッチが設けられている。
【0015】
調理室4は、本体7内に形成されている。本実施形態では、調理室4の内面は、本体7に固定された反射板30などにより形成されている。反射板30には、加熱手段8から輻射された赤外線を効率的に反射するように、表面の反射率が高いもの、例えば、表面にアルミニウム・亜鉛合金のめっき処理がされたガルバリウム鋼板が用いられる。本実施形態では、開口部50を除く調理室4の内面は、反射板30により構成されている。また、調理室4は、電気調理器1の外形に合わせて、概略的に直方体状に形成されており、直方体状の各辺は、上下方向H、前後方向D、及び横方向Wのいずれかに平行にされている。調理室4の前部には、開口部50が設けられており、開口部50は、扉5により覆われている。調理室4の内面における上前、上後、下前、及び下後の隅には、調理室4の中心付近を向いて傾斜している反射板30の部分である傾斜反射板部41が備えられており、傾斜反射板部41は横方向Wに延びている。また、調理室4の下面は、被調理物2から生じる屑を受ける屑受け皿42の内側面により構成されている。扉5は、矩形枠状の扉枠65と、扉枠65に装着するガラス板66とを備えている。扉5は、開閉可能に構成されている。扉5は、図1及び図2に示すように、上側が開くように構成されている。なお、加熱中は、扉5は基本的に閉じられた状態とされる。被調理物2は、加熱手段8により加熱調理可能な食品とされており、例えば、スライスした食パン、ロールパン、クロワッサン、ホットドックなどのパン類や、ピザや、グラタンや、揚げ物や、アルミホイルで包んだホイル焼き等とされる。
【0016】
電気調理器1は、被調理物2を上側に乗せるための焼網3を調理室4内に備えている。焼網3は、被調理物2を上側に乗せられるように、調理室4内において、少なくとも水平方向に延在している。本実施形態では、焼網3は、水平方向に平行にされており、調理室4内の形状に合わせて矩形状にされている。焼網3の各辺は、前後方向D及び横方向Wのいずれかに平行にされている。焼網3は、調理室4の上面及び下面との間に間隔を空けて配置されている。焼網3の上側には被調理物2の種類に応じてユーザにより金属製のトレーなどを載置可能に構成されている。電気調理器1は、焼網3の上方に配置された加熱手段8である上側加熱手段8Uと、焼網3の下方に配置された加熱手段8である下側加熱手段8Dと、を備えている。加熱手段8には、通電することにより赤外線を輻射する棒状の赤外線ヒータが用いられる。本実施形態では、加熱手段8には、抵抗発熱するニクロム線などの電熱線をコイル状に巻いて、それを石英管などの熱線透過性の円筒状の透明ガラス製パイプ内に挿通させると共に、このパイプの両端部に絶縁碍子67が取り付けられた石英管ヒータなどの赤外線ヒータが使用される。ここでいう赤外線には、遠赤外線、中赤外線、及び近赤外線が含まれる。
【0017】
次に、電気調理器1の加熱機構について説明する。上側加熱手段8Uは、単数又は複数備えられ、下側加熱手段8Dは、上側加熱手段8Uの数よりも多い数だけ備えられている。そして、全ての下側加熱手段8Dに出力させることができる最大総出力は、全ての上側加熱手段8Uに出力させることができる最大総出力よりも大きくされている。この構成によれば、焼網3に遮られる輻射熱を補償して、被調理物2の上面及び下面に伝達する熱量の上下均一化を図りつつ、下側加熱手段8Dの最大総出力の増加による被調理物2の下面の焼きムラが生じることを抑制できる。本実施形態では、上側加熱手段8Uは、第一上側加熱手段8U1及び第二上側加熱手段8U2の二つ備えられ、下側加熱手段8Dは、第一下側加熱手段8D1、第二下側加熱手段8D2、及び第三下側加熱手段8D3の三つ備えられている。次に示すように、下側加熱手段8Dの最大総出力は740Wであり、上側加熱手段8Uの最大総出力の560Wよりも大きくされている。ここで、上側加熱手段8U又は下側加熱手段8Dの最大総出力は、各加熱手段8に定格電圧(本例では、100V)を印加した時の上側加熱手段8Uにおける全ての加熱手段8、又は下側加熱手段8Dにおける全ての加熱手段8の最大の出力(最大の電力)の総和である。また、各加熱手段8の最大出力は、各加熱手段8に定格電圧を印加した時の各加熱手段8の最大の出力(最大の電力)である。下側加熱手段8Dの最大総出力は、例えば、焼網3の遮蔽度合などにもよるが、上側加熱手段8Uの最大総出力よりも20%から40%程度の範囲内(本例では、約32%)で増加される。
第一上側加熱手段8U1の最大出力:280W
第二上側加熱手段8U2の最大出力:280W
上側加熱手段8Uの最大総出力:560W
第一下側加熱手段8D1の最大出力:280W
第二下側加熱手段8D2の最大出力:180W
第三下側加熱手段8D3の最大出力:280W
下側加熱手段8Dの最大総出力:740W
【0018】
三つ以上備えられた、上側加熱手段8U及び下側加熱手段8Dの一方、又は上側加熱手段8U及び下側加熱手段8Dの双方のそれぞれは、水平方向(配置方向A)に間隔を空け順番に配置される。そして、配置方向Aの両端に配置された二つの加熱手段8である両端加熱手段Eの間に配置された単数又は複数の加熱手段8である中間加熱手段Iの最大出力は、両端加熱手段Eのいずれの最大出力よりも小さくされる。本実施形態では、上記のように、下側加熱手段8Dが三つ以上備えられているが、上側加熱手段8Uは三つ以上備えられていない。三つの下側加熱手段8D1、8D2、8D3は、図3及び図4に示すように、前後方向D(配置方向AD、本例では、前から後に向かう方向)に間隔を空け順番に配置されており、第一下側加熱手段8D1及び第三下側加熱手段8D3が両端加熱手段Eであり、第二下側加熱手段8D2が中間加熱手段Iである。なお、二つの上側加熱手段8U1、8U2は、図3及び図5に示すように、前後方向D(配置方向AU、本例では、前から後に向かう方向)に間隔を空け順番に配置されている。第一及び第二上側加熱手段8U1、8U2は、両端加熱手段Eに相当し、最大出力は、それぞれ280Wであり同等とされている。なお、各加熱手段8は、横方向Wに延び、横方向Wに平行に配置されている。また、各加熱手段8は、調理室4の横方向Wの左右両端に亘って延びており、焼網3の横幅よりも長くされている。
【0019】
中間加熱手段Iである第二下側加熱手段8D2の上方に配置された被調理物2の部分には、第二下側加熱手段8D2からの輻射熱だけでなく、両側に配置された第一及び第三下側加熱手段8D1、8D3からの輻射熱も加わる。一方、両端加熱手段Eである第一又は第三下側加熱手段8D1、8D3の上方に配置された被調理物2の部分には、第一又は第三下側加熱手段8D1、8D3からの輻射熱に加えて、一方側に配置された第二下側加熱手段8D2からの輻射熱が加わる。上記のように、中間加熱手段Iである第二下側加熱手段8D2の最大出力は180Wとされており、両端加熱手段Eである第一及び第三下側加熱手段8D1、8D3の最大出力280Wよりも小さくされている。よって、第二下側加熱手段8D2に対応する部分の加熱量が多くなること抑制し、焼きムラが生じることを抑制できる。中間加熱手段Iの最大出力は、加熱手段8の配置などにもよるが、例えば、両端加熱手段Eの最大出力よりも20%から45%程度の範囲内(本例では、約35%)で減少される。電気調理器1は、上記のように、被調理物2としてスライスパン9を加熱可能にされている。スライスパン9は、焼きムラが少ないほうが望ましい。食パンは、直方体状の焼き型に入れて焼いたパンである。焼き型に蓋をしたものは四角形になり、角型食パンなどと呼ばれる、焼き型に蓋をしないものは、上部が盛り上がった山型となり、山型食パンなどと呼ばれる。食パンは、約1cmから2cmにスライスされて、スライスパン9とされる。スライスパン9は、通常、約10cmから13cm四方の矩形状とされる。電気調理器1は、被調理物2がスライスした食パン9であるとして、当該スライスパン9を焼網3に乗せる枚数を設定する枚数設定部12を備えている。電気調理器1は、枚数設定部12により設定されたスライスパン9の枚数に応じて、上側加熱手段8U及び下側加熱手段8Dの一方又は双方からなる複数の加熱手段8において、加熱させる加熱手段8を変化させるように構成されている。
【0020】
本実施形態では、枚数設定部12は、操作パネル60に設けられた操作スイッチ(本例では、切替スイッチ63)とされており、ユーザが操作スイッチを操作することにより、焼網3に乗せたスライスパン9の枚数を設定することができるように構成されている。例えば、切替スイッチ63は、操作パネル60に「1から2枚の食パン」、「3から4枚の食パン」等と書かれた、スライスパン9の枚数に対応した複数の設定位置を備えており、ユーザが切替スイッチ63を操作することにより、「1から2枚の食パン」又は「3から4枚の食パン」の設定位置に切り替え可能に構成されている。電気調理器1は、各加熱手段8への通電をオンオフ制御するオンオフ制御器を備えており、オンオフ制御器により、加熱する加熱手段8を変化させるように構成されている。なお、オンオフ制御器は、加熱する場合は、加熱手段8に最大電圧(本例では、定格電圧)を供給し、加熱しない場合は、加熱手段8に電圧を供給しないように構成されている。本実施形態では、枚数設定部12とされた、切替スイッチ63などの操作スイッチがオンオフ制御器の機能も備えており、操作スイッチの操作に連動して、機械的に、予め定めた加熱手段8の通電スイッチがオンオフするように構成されている。なお、オンオフ制御器は、演算処理装置等を有するコンピュータを備えており、コンピュータが、操作スイッチの操作に応じて、電気的手段により、加熱手段8への通電をオンオフするように構成されてもよい。
【0021】
本実施形態では、電気調理器1は、中間加熱手段Iを制御対象加熱手段とし、枚数設定部12により設定されたスライスパン9の枚数が、スライスパン9を、加熱手段8を順番に配置した配置方向Aにおける焼網3の中心部13に寄せて配置する場合に、少なくとも一枚のスライスパン9の中心部が制御対象加熱手段の上方又は下方に配置される枚数である場合は、制御対象加熱手段を加熱させ、スライスパン9の枚数が、スライスパン9の中心部が一枚も制御対象加熱手段の上方又は下方に配置されない枚数である場合は、制御対象加熱手段を加熱させないように構成されている。なお、制御対象加熱手段以外の加熱手段8は、スライスパン9の枚数にかかわらず加熱されるように構成されている。三つ以上備えられる上側加熱手段8U又は下側加熱手段8Dにおける加熱手段8の数は、焼網3に配置方向Aに並べて載せることができるスライスパン9の最大の枚数に2を乗算し、1を減算した数とされる。また、三つ以上備えられた上側加熱手段8U又は下側加熱手段8Dにおける加熱手段8のそれぞれは、焼網3を配置方向Aに規定分割数に等分した場合の、各等分線の上方又は下方に配置される。ここで、規定分割数は、三つ以上備えられた上側加熱手段8U又は下側加熱手段8Dの数に1を足した数(或いは、焼網3に配置方向Aに並べて載せることができるスライスパン9の最大枚数に2を乗算した数)とされる。
【0022】
図6に示すように、焼網3は、前後方向D(下側加熱手段8Dの配置方向AD)に、最大2枚のスライスパン9を並べて載せる幅を有し、横方向Wに最大2枚のスライスパン9を並べて載せる幅を有する。よって、焼網3は、最大4枚のスライスパン9を載せる大きさを有する。焼網3の載置面積は、例えば、スライスパン9同士の隙間などを考慮して、載置可能なスライスパン9の合計面積の100%から150%程度(本例では、約140%)の範囲内とされる。下側加熱手段8Dの数は、焼網3に配置方向AD(前後方向D)に載置可能なスライスパン9の最大の枚数である2に2を乗算した4から1を減算した3とされている。図4及び図6に示すように、三つ備えられた下側加熱手段8D1、8D2、8D3のそれぞれは、焼網3を配置方向AD(前後方向D)に、規定分割数である4に等分した場合の、各等分線の下方に配置されている。規定分割数は、下側加熱手段8Dの数である3に1を足した4である。具体的には、各下側加熱手段8D1、8D2、8D3は、焼網3の前後方向Dの幅における、前方から1/4の等分線、2/4の等分線(中心部13に対応)、及び3/4の等分線の下方に配置されている。本実施形態では、制御対象加熱手段は、中間加熱手段Iである第二下側加熱手段8D2のみとされている。第二下側加熱手段8D2は、下側加熱手段8Dの配置方向ADにおける焼網3の中心部13の下方に配置されている。制御対象加熱手段以外の第一及び第二の上側加熱手段8U1、8U2、並びに第一及び第三下側加熱手段8D1、8D3は、スライスパン9の枚数にかかわらず加熱される。図6(a)に示すように、2枚のスライスパン9を、焼網3の中心部13に寄せて載せると、2枚のスライスパン9は、焼網3の中心部13において横方向Wに2枚並んで配置される。そして、2枚のスライスパン9の中心部は、第二下側加熱手段8D2の上方に配置される。また、図示はしていないが、1枚のスライスパン9を、焼網3の中心部13に寄せて載せると、1枚のスライスパン9は、焼網3の中心部13に配置される。そして、1枚のスライスパン9の中心部は、2枚の場合と同様に、第二下側加熱手段8D2の上方に配置される。
【0023】
図6(b)に示すように、4枚のスライスパン9を、焼網3の中心部13に寄せて載せると、4枚のスライスパン9は、焼網3の前半分に2枚、後半分に2枚、それぞれ横方向Wに並んで配置される。前側の2枚のスライスパン9の中心部は、第一下側加熱手段8D1の上方に配置され、後側の2枚のスライスパン9の中心部は、第三下側加熱手段8D3の上方に配置される。しかし、第二下側加熱手段8D2の上方には、一枚もスライスパン9の中心部が配置されない。また、図示はしていないが、3枚のスライスパン9を、焼網3の中心部13に寄せて載せると、3枚のスライスパン9は、焼網3の前半分又は後半分に2枚横方向Wに並んで配置され、後半分又は前半分に1枚配置される。4枚の場合と同様に、前側の1枚又は2枚のスライスパン9の中心部は、第一下側加熱手段8D1の上方に配置され、後側の1枚又は2枚のスライスパン9の中心部は、第三下側加熱手段8D3の上方に配置される。しかし、第二下側加熱手段8D2の上方には、一枚もスライスパン9の中心部が配置されない。このように、スライスパン9の枚数が1枚又は2枚の場合は、制御対象加熱手段である第二下側加熱手段8D2の上方に、スライスパン9の中心部が配置される。一方、スライスパン9の枚数が3枚又は4枚の場合は、制御対象加熱手段である第二下側加熱手段8D2の上方に、スライスパン9の中心部が配置されない。よって、電気調理器1は、スライスパン9の枚数が1枚又は2枚の場合は、図6(a)に示すように、制御対象加熱手段である第二下側加熱手段8D2を加熱させ、スライスパン9の枚数が3枚又は4枚の場合は、図6(b)に示すように、第二下側加熱手段8D2を加熱させないように構成されている。なお、図6(a)(b)において、実線で描かれている加熱手段8は、加熱されている状態を示し、破線で描かれている加熱手段8は、加熱されていない状態を示している。以上のように、本実施形態では、電気調理器1は、枚数設定部12により設定されたスライスパン9の枚数が、予め定めた切替枚数(本例では2)以下である場合に、第一及び第二の上側加熱手段8U1、8U2を加熱させると共に第一、第二及び第三の下側加熱手段8D1、8D2、8D3を加熱させ、スライスパン9の枚数が、切替枚数より多い場合に、第一及び第二の上側加熱手段8U1、8U2を加熱させると共に第一及び第三の下側加熱手段8D1、8D3を加熱させ、第二の下側加熱手段8D2を加熱させないように構成されている。切替枚数は、上記のように、制御対象加熱手段である第二下側加熱手段8D2の上方にスライスパン9の中心部が配置される最大の枚数(本例では2)に設定される。理論上は、切替枚数は、焼網3に配置方向ADに並べて載せることができるスライスパン9の最大枚数から1を減算した数に、焼網3に配置方向ADに直交する方向に並べて載せることができるスライスパン9の最大枚数を乗算した数となる。
【0024】
図6(b)に示すように、スライスパン9の枚数が4枚の場合では、前側のスライスパン9の後端部及び後側のスライスパン9の前端部が第二下側加熱手段8D2の上方に配置されている。この状態で、本実施形態とは異なり、第二下側加熱手段8D2を加熱させると、前側のスライスパン9の後端部及び後側のスライスパン9の前端部の加熱量が多くなり焼けすぎるおそれがある。特に、スライスパン9の縁部は、スライスパン9の中心部に比べて水分が少なく、焼けやすい。一方、本実施形態によれば、第二下側加熱手段8D2を加熱させないので、スライスパン9の前端部及び後端部の加熱量が多くなることを抑制でき、焼きムラが生じることを抑制できる。なお、第二下側加熱手段8D2を加熱させなくても、加熱される第一下側加熱手段8D1の上方には、前側のスライスパン9の中心部が配置され、加熱される第三下側加熱手段8D3の上方には、後側のスライスパン9の中心部が配置されるため、水分が多いスライスパン9の中心部を適切に焼いて、各スライスパン9に焼きムラが生じることを抑制できる。なお、第二下側加熱手段8D2を加熱させないと、下側加熱手段8Dの総出力が、上側加熱手段8Uの総出力と同等となり、スライスパン9の下面に伝達される輻射熱は、焼網3に遮られる輻射熱の分だけ、スライスパン9の上面に伝達される輻射熱よりも少なくなり得るが、上記のようにスライスパン9の前端部及び後端部が焼けすぎるよりも好まれる。
【0025】
図6(a)に示すように、スライスパン9の枚数が2枚の場合では、制御対象加熱手段である第二下側加熱手段8D2の上方にスライスパン9の中心部が配置されている。この状態で、第二下側加熱手段8D2が加熱されるので、水分が多く焼けにくいスライスパン9の中心部を適切に焼くことができる。なお、スライスパン9の前端部及び後端部の下方には、第一及び第三の下側加熱手段8D1、8D3が配置され加熱されるが、スライスパン9の前端部の焼け具合と後端部の焼け具合とに差が生じることを抑制でき、焼きムラを抑制できる。また、この状態で、焼きムラを抑制できるように、各下側加熱手段8Dの最大出力や反射板30の配置構成(特に、下前及び下後の傾斜反射板部41の大きさ、傾斜角度)や拡散部14の配置構成などが調整されている。
【0026】
以上で説明したように、焼網3の面積は限られているため、多くの枚数のスライスパン9を配置しようとすると、スライスパン9の配置が最適でなくなり、スライスパン9の縁部の上側又は下側に中間加熱手段I等の加熱手段が配置されやすくなる。よって、電気調理器1は、枚数設定部12により設定されたスライスパン9の枚数が多くなるに従い、連続的又は段階的(本例では、段階的)に、上側加熱手段8U及び下側加熱手段8Dの一方又は双方における複数の加熱手段8において、加熱させる加熱手段8の数を少なくするように構成されている。なお、段階的に加熱手段8の数が少なくなるとは、本実施形態における1枚から2枚、又は3枚から4枚のように、スライスパン9の枚数が多くなっても、加熱させる加熱手段8の数が変化しない枚数の区間を有するように構成されていること意味する。一方、連続的に加熱手段8の数が少なくなるとは、段階的の場合のように、スライスパン9の枚数が多くなっても、加熱させる加熱手段8の数が変化しない枚数の区間を有さず、スライスパン9の枚数が多くなると、必ず、加熱させる加熱手段8の数が少なくなるように構成されていることを意味する。
【0027】
電気調理器1は、上側加熱手段8Uの下方及び下側加熱手段8Dの上方の一方又は双方に、加熱手段8に隣接配置された、加熱手段8からの熱を拡散させる拡散部14を設けている。拡散部14のそれぞれの形状は、少なくとも二つ以上の異なる形状とされている。この構成によれば、加熱手段8の輻射熱を適切に拡散し、被調理物2に伝達される輻射熱の均一化を図ることができる。拡散部14が隣接配置された、上側加熱手段8U及び下側加熱手段8Dの一方、又は上側加熱手段8U及び下側加熱手段8Dの双方のそれぞれは、少なくとも三つ以上備えられる。そして、拡散部14が隣接配置され、三つ以上備えられた上側加熱手段8U又は下側加熱手段8Dについて、中間加熱手段Iに隣接配置された拡散部14の断面幅は、両端加熱手段Eに隣接配置された拡散部14の断面幅よりも広くされている。中間加熱手段Iの周囲には、調理室4の上面又は下面が配置され、両端加熱手段Eの周囲には、調理室4の上面又は下面に加えて、調理室4の後面又は前面や傾斜面が配置される。そのため、両端加熱手段Eの輻射熱は、これら調理室4の内面で拡散され易いが、中間加熱手段Iの輻射熱は、両端加熱手段Eに比べて拡散され難い。上記の構成によれば、断面幅が広い拡散部14により、中間加熱手段Iの輻射熱の拡散を向上させることができ、中間加熱手段Iの輻射熱による焼きムラを抑制できる。本実施形態では、図3に示すように、拡散部14は、三つ以上備えられた下側加熱手段8Dの上方に備えられている。各拡散部14は、図4に示すように、各加熱手段8の横幅に対応して、調理室4の横方向Wの左右両端に亘って延びている。図3に示すように、第一、第二及び第三下側加熱手段8D1、8D2、8D3の上方のそれぞれに、第一拡散部14a、第二拡散部14b及び第三拡散部14cが備えられている。第一下側加熱手段8D1の前方には下前の傾斜反射板部41が配置され、第三下側加熱手段8D3の後方には下後の傾斜反射板部41が配置されており、これらの輻射熱が拡散し易くなっている。第一及び第三拡散部14a、14cの断面形状は円形状とされている。第二拡散部14bの断面形状は、上に突出した円弧状とされ、前後方向Dに延びている。第二拡散部14bの前後方向Dの断面幅は、第一及び第三拡散部14a、14cの断面幅(直径)よりも広くされており、より輻射熱が拡散するように構成されている。
【0028】
〔別実施形態〕(1)上記の実施形態においては、上側加熱手段8Uは二つ備えられ、下側加熱手段8Dは三つ備えられている場合を例に説明した。しかし、上側加熱手段8Uは、単数又は複数備えられ、下側加熱手段8Dは、上側加熱手段8Uの数よりも多い数だけ備えられていれば、どのような数の組み合わせであってもよい。例えば、上側加熱手段8Uは一つ備えられ、下側加熱手段8Dは三つ備えられていてもよい。
(2)上記の実施形態においては、下側加熱手段8Dのみが、少なくとも三つ以上備えられ、中間加熱手段I及び両端加熱手段Eが設定されている場合を例に説明した。しかし、上側加熱手段8Uも、少なくとも三つ以上備えられ、中間加熱手段I及び両端加熱手段Eが設定され、上記の実施形態のように最大出力の大小の設定や、スライスパン9の枚数に応じた加熱手段8の加熱の有無の設定や、拡散部14の設定などがされてもよい。
【0029】
(3)上記の実施形態においては、下側加熱手段8Dが三つ備えられ、中間加熱手段Iが一つとされている場合を例に説明した。しかし、下側加熱手段8Dが四つ以上備えられてもよい。例えば、図7に示すように、下側加熱手段8Dが五つ備えられ、中間加熱手段Iが第二、第三及び第四下側加熱手段8D2、8D3、8D4の三つとされていてもよい。この場合も、図7(a)(b)に示すように、中間加熱手段Iである第二、第三及び第四下側加熱手段8D2、8D3、8D4を制御対象加熱手段とし、スライスパン9の枚数が、スライスパン9を配置方向ADにおける焼網3の中心部13に寄せて配置する場合に、少なくとも一枚のスライスパン9の中心部が制御対象加熱手段の上方に配置される枚数である場合は、上方にスライスパン9の中心部が配置される制御対象加熱手段を加熱させ、スライスパン9の枚数が、スライスパン9の中心部が一枚も制御対象加熱手段の上方に配置されない枚数である場合は、上方にスライスパン9の中心部が配置されない制御対象加熱手段を加熱させないように構成されてもよい。なお、図7(a)(b)において、実線の加熱手段8は加熱されており、破線の加熱手段8は加熱されていない。具体的には、図7(a)に示すように、スライスパン9の枚数が6枚の場合は、制御対象加熱手段である第三下側加熱手段8D3の上方に、スライスパン9の中心部が配置され、制御対象加熱手段である第二及び第四下側加熱手段8D2、8D4の上方に、スライスパン9の中心部が配置されない。よって、電気調理器1は、第三下側加熱手段8D3を加熱させ、第二及び第四下側加熱手段8D2、8D4を加熱させない。図7(b)に示すように、スライスパン9の枚数が4枚の場合は、制御対象加熱手段である第二及び第四下側加熱手段8D2、8D4の上方に、スライスパン9の中心部が配置され、制御対象加熱手段である第三下側加熱手段8D3の上方に、スライスパン9の中心部が配置されない。よって、電気調理器1は、第二及び第四下側加熱手段8D2、8D4を加熱させ、第三下側加熱手段8D3を加熱させない。
【0030】
(4)上記の実施形態においては、焼網3は、前後方向Dに最大2枚のスライスパン9を載せる幅を有し、横方向Wに最大2枚のスライスパン9を並べて載せる幅を有する場合を例に説明した。しかし、焼網3は、前後方向Dに最大1枚又は3枚以上のスライスパン9を載せる幅を有してもよく、また、横方向Wに最大1枚又は3枚以上のスライスパン9を並べて載せる幅を有してもよい。
(5)上記の実施形態においては、上側加熱手段8Uの配置方向AU及び下側加熱手段8Dの配置方向ADは、前後方向Dに平行にされている場合を例に説明した。しかし、上側加熱手段8Uの配置方向AU及び下側加熱手段8Dの配置方向ADの一方又は双方は、前後方向D以外の方向(例えば、横方向W)に平行にされていてもよい。
【0031】
(6)上記の実施形態においては、枚数設定部12は、操作パネル60に設けられた操作スイッチとされている場合を例に説明した。しかし、枚数設定部12は、焼網3に載せられたスライスパン9の枚数を検出するセンサとされてもよい。
(7)上記の実施形態においては、下側加熱手段8Dの上方に拡散部14が備えられ、中間加熱手段Iに隣接配置された拡散部14の断面幅は、両端加熱手段Eに隣接配置された拡散部14の断面幅よりも広くされている場合を例に説明した。しかし、上側加熱手段8Uの下方に拡散部14が備られていてもよく、一部又は全部の下側加熱手段8Dの上方に拡散部14が備えられていなくてもよい。また、拡散部14の断面形状は、任意の形状とされてもよい。
(8)上記の実施形態においては、電源の定格電圧(100V)を、上側加熱手段8U及び下側加熱手段8Dにおける各加熱手段8に印加するように構成されており、上側加熱手段8U及び下側加熱手段8Dにおける各加熱手段8は、電源に対して並列に接続されている場合を例に説明した。しかし、上側加熱手段8U及び下側加熱手段8Dの一方又は双方における複数の加熱手段8が、電源に対して直列に接続されていてもよい。この直列接続においても、配置方向Aに間隔を空け順番に配置されている加熱手段8の部分の数を数えるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、被調理物を上側に乗せるための焼網と、焼網の上方に配置された上側加熱手段と、焼網の下方に配置された下側加熱手段と、を備えた電気調理器に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1:電気調理器、2:被調理物、3:焼網、8D:下側加熱手段、8U:上側加熱手段、9:スライスパン、12:枚数設定部、E:両端加熱手段、I:中間加熱手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7