(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】HER3への1A5および3D4抗体の特異的結合を示す。
図1Aおよび1Bは、ELISAアッセイにより判断される、1A5(
図1A)および3D4(
図1B)の結合特異性を実証するグラフを示す。ELISAプレートを、1μg/mLの組み換え可溶性EGFR、HER2、またはHER3(細胞外ドメイン)で被覆し、表示濃度の1A5または3D4でインキュベートした後、HRP−ヤギ抗マウスIgGでインキュベートした。3通りの平均OD値が提示される。egFRの値を、HER2の値に重ねる。
図1Cおよび1Dは、1A5(
図1C)および3D4(
図1D)の結合特異性を実証するフローサイトメトリーの結果を示す。EGFR、HER2、またはHER3でトランスフェクトしたSP2/0細胞を、1μg/mLの精製抗体で染色した後、PE−ヤギ抗マウスIgGで染色した。
【
図1B】HER3への1A5および3D4抗体の特異的結合を示す。
図1Aおよび1Bは、ELISAアッセイにより判断される、1A5(
図1A)および3D4(
図1B)の結合特異性を実証するグラフを示す。ELISAプレートを、1μg/mLの組み換え可溶性EGFR、HER2、またはHER3(細胞外ドメイン)で被覆し、表示濃度の1A5または3D4でインキュベートした後、HRP−ヤギ抗マウスIgGでインキュベートした。3通りの平均OD値が提示される。egFRの値を、HER2の値に重ねる。
図1Cおよび1Dは、1A5(
図1C)および3D4(
図1D)の結合特異性を実証するフローサイトメトリーの結果を示す。EGFR、HER2、またはHER3でトランスフェクトしたSP2/0細胞を、1μg/mLの精製抗体で染色した後、PE−ヤギ抗マウスIgGで染色した。
【
図1C】HER3への1A5および3D4抗体の特異的結合を示す。
図1Aおよび1Bは、ELISAアッセイにより判断される、1A5(
図1A)および3D4(
図1B)の結合特異性を実証するグラフを示す。ELISAプレートを、1μg/mLの組み換え可溶性EGFR、HER2、またはHER3(細胞外ドメイン)で被覆し、表示濃度の1A5または3D4でインキュベートした後、HRP−ヤギ抗マウスIgGでインキュベートした。3通りの平均OD値が提示される。egFRの値を、HER2の値に重ねる。
図1Cおよび1Dは、1A5(
図1C)および3D4(
図1D)の結合特異性を実証するフローサイトメトリーの結果を示す。EGFR、HER2、またはHER3でトランスフェクトしたSP2/0細胞を、1μg/mLの精製抗体で染色した後、PE−ヤギ抗マウスIgGで染色した。
【
図1D】HER3への1A5および3D4抗体の特異的結合を示す。
図1Aおよび1Bは、ELISAアッセイにより判断される、1A5(
図1A)および3D4(
図1B)の結合特異性を実証するグラフを示す。ELISAプレートを、1μg/mLの組み換え可溶性EGFR、HER2、またはHER3(細胞外ドメイン)で被覆し、表示濃度の1A5または3D4でインキュベートした後、HRP−ヤギ抗マウスIgGでインキュベートした。3通りの平均OD値が提示される。egFRの値を、HER2の値に重ねる。
図1Cおよび1Dは、1A5(
図1C)および3D4(
図1D)の結合特異性を実証するフローサイトメトリーの結果を示す。EGFR、HER2、またはHER3でトランスフェクトしたSP2/0細胞を、1μg/mLの精製抗体で染色した後、PE−ヤギ抗マウスIgGで染色した。
【
図2A】HER3へのリガンド結合に対する1A5および3D4抗体の効果を示す。
図2Aは、ELISAアッセイにより判断されるように、1A5抗体が、HER3へのリガンド結合を阻止しないが、3D4抗体は、HER3へのリガンド結合を阻止することを実証するグラフを示す。ELISAプレートを、1μg/mLの組み換え可溶性HER3で被覆した後、表示濃度の1A5および3D4抗体の非存在または存在下で、100ng/mLのビオチン共役組み換えNRG1でインキュベートした。HER3へのNRG1の結合(垂直軸)を、HRP−ストレプトアビジンにより検出した。
図2Bは、フローサイトメトリーにより判断されるように、1A5抗体は、HER3へのリガンド結合を阻止しないが、3D4抗体は、HER2へのリガンド結合を阻止することを実証するグラフを示す。HER3でトランスフェクトしたSP2/0細胞を、表示濃度の1A5および3D4抗体の非存在または存在下で、100ng/mLのビオチン共役NRG1を用いてインキュベートした。NRG1結合を、PE−ストレプトアビジンにより検出した。結合されたNRG1の平均蛍光強度(MFI)が提示される。
【
図2B】HER3へのリガンド結合に対する1A5および3D4抗体の効果を示す。
図2Aは、ELISAアッセイにより判断されるように、1A5抗体が、HER3へのリガンド結合を阻止しないが、3D4抗体は、HER3へのリガンド結合を阻止することを実証するグラフを示す。ELISAプレートを、1μg/mLの組み換え可溶性HER3で被覆した後、表示濃度の1A5および3D4抗体の非存在または存在下で、100ng/mLのビオチン共役組み換えNRG1でインキュベートした。HER3へのNRG1の結合(垂直軸)を、HRP−ストレプトアビジンにより検出した。
図2Bは、フローサイトメトリーにより判断されるように、1A5抗体は、HER3へのリガンド結合を阻止しないが、3D4抗体は、HER2へのリガンド結合を阻止することを実証するグラフを示す。HER3でトランスフェクトしたSP2/0細胞を、表示濃度の1A5および3D4抗体の非存在または存在下で、100ng/mLのビオチン共役NRG1を用いてインキュベートした。NRG1結合を、PE−ストレプトアビジンにより検出した。結合されたNRG1の平均蛍光強度(MFI)が提示される。
【
図3】1A5および3D4抗体が、HER3上の異なるエピトープを認識することを実証するグラフを示す。ELISAプレートを、2μg/mLの精製1A5で被覆した後、200ng/mLのHRP共役3D4の存在下で、表示濃度の組み換え可溶性HER3を用いてインキュベートした。HER3への3D4の結合を、化学発光基質により検出した。3通りの1秒当たりの平均カウントが提示される。
【
図4A】1A5抗体によるHER3のリガンド非依存的活性(自己リン酸化)の生体外での用量依存的阻害を示す。ヒト胃癌N87細胞(
図4A)、乳癌BT474細胞(
図4B)、乳癌ZR75−30細胞(
図4C)、および膵癌Panc2.03細胞(
図4D)を、表示濃度の1A5または3D4抗体で24時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベル(pHER3、
図4A〜4Dの左グラフ)を、2mg/mLの総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5および3D4とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した(総HER3、
図4A〜4Dの右グラフ)。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出した。総HER3を、HRP共役1E8抗HER3抗体により検出した。次いで、チロシンリン酸化HER3および総HER3レベルを、化学発光により測定した。
【
図4B】1A5抗体によるHER3のリガンド非依存的活性(自己リン酸化)の生体外での用量依存的阻害を示す。ヒト胃癌N87細胞(
図4A)、乳癌BT474細胞(
図4B)、乳癌ZR75−30細胞(
図4C)、および膵癌Panc2.03細胞(
図4D)を、表示濃度の1A5または3D4抗体で24時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベル(pHER3、
図4A〜4Dの左グラフ)を、2mg/mLの総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5および3D4とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した(総HER3、
図4A〜4Dの右グラフ)。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出した。総HER3を、HRP共役1E8抗HER3抗体により検出した。次いで、チロシンリン酸化HER3および総HER3レベルを、化学発光により測定した。
【
図4C】1A5抗体によるHER3のリガンド非依存的活性(自己リン酸化)の生体外での用量依存的阻害を示す。ヒト胃癌N87細胞(
図4A)、乳癌BT474細胞(
図4B)、乳癌ZR75−30細胞(
図4C)、および膵癌Panc2.03細胞(
図4D)を、表示濃度の1A5または3D4抗体で24時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベル(pHER3、
図4A〜4Dの左グラフ)を、2mg/mLの総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5および3D4とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した(総HER3、
図4A〜4Dの右グラフ)。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出した。総HER3を、HRP共役1E8抗HER3抗体により検出した。次いで、チロシンリン酸化HER3および総HER3レベルを、化学発光により測定した。
【
図4D】1A5抗体によるHER3のリガンド非依存的活性(自己リン酸化)の生体外での用量依存的阻害を示す。ヒト胃癌N87細胞(
図4A)、乳癌BT474細胞(
図4B)、乳癌ZR75−30細胞(
図4C)、および膵癌Panc2.03細胞(
図4D)を、表示濃度の1A5または3D4抗体で24時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベル(pHER3、
図4A〜4Dの左グラフ)を、2mg/mLの総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5および3D4とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した(総HER3、
図4A〜4Dの右グラフ)。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出した。総HER3を、HRP共役1E8抗HER3抗体により検出した。次いで、チロシンリン酸化HER3および総HER3レベルを、化学発光により測定した。
【
図5】一団のヒト癌細胞の自己リン酸化に対する1A5の効果を示す。癌細胞を、20μg/mLの1A5抗体で24時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。
【
図6A】HER3のリガンド依存的活性の用量依存的阻害を示す。ヒト胃癌N87細胞(
図6A)、乳癌BT474細胞(
図6B)、乳癌ZR75−30細胞(
図6C)、および膵癌Panc2.03細胞(
図6D)を、表示濃度の1A5または3D4抗体で24時間処置し、次いで、100pg/mLの組み換えNRG1で1時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベルを、25μLの2mg/mL総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5および3D4とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。
【
図6B】HER3のリガンド依存的活性の用量依存的阻害を示す。ヒト胃癌N87細胞(
図6A)、乳癌BT474細胞(
図6B)、乳癌ZR75−30細胞(
図6C)、および膵癌Panc2.03細胞(
図6D)を、表示濃度の1A5または3D4抗体で24時間処置し、次いで、100pg/mLの組み換えNRG1で1時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベルを、25μLの2mg/mL総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5および3D4とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。
【
図6C】HER3のリガンド依存的活性の用量依存的阻害を示す。ヒト胃癌N87細胞(
図6A)、乳癌BT474細胞(
図6B)、乳癌ZR75−30細胞(
図6C)、および膵癌Panc2.03細胞(
図6D)を、表示濃度の1A5または3D4抗体で24時間処置し、次いで、100pg/mLの組み換えNRG1で1時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベルを、25μLの2mg/mL総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5および3D4とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。
【
図6D】HER3のリガンド依存的活性の用量依存的阻害を示す。ヒト胃癌N87細胞(
図6A)、乳癌BT474細胞(
図6B)、乳癌ZR75−30細胞(
図6C)、および膵癌Panc2.03細胞(
図6D)を、表示濃度の1A5または3D4抗体で24時間処置し、次いで、100pg/mLの組み換えNRG1で1時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベルを、25μLの2mg/mL総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5および3D4とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。
【
図7A】1A5および3D4抗体の併用療法によるHER3の完全不活性化を示す。ヒト胃癌N87細胞(
図7A)、乳癌BT474細胞(
図7B)、乳癌ZR75−30細胞(
図7C)、および膵癌Panc2.03細胞(
図7D)を、表示濃度の1A5もしくは3D4、または両方の抗体で24時間処置し、次いで、100pg/mLの組み換えNRG1で1時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5および3D4とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、次いで、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。
【
図7B】1A5および3D4抗体の併用療法によるHER3の完全不活性化を示す。ヒト胃癌N87細胞(
図7A)、乳癌BT474細胞(
図7B)、乳癌ZR75−30細胞(
図7C)、および膵癌Panc2.03細胞(
図7D)を、表示濃度の1A5もしくは3D4、または両方の抗体で24時間処置し、次いで、100pg/mLの組み換えNRG1で1時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5および3D4とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、次いで、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。
【
図7C】1A5および3D4抗体の併用療法によるHER3の完全不活性化を示す。ヒト胃癌N87細胞(
図7A)、乳癌BT474細胞(
図7B)、乳癌ZR75−30細胞(
図7C)、および膵癌Panc2.03細胞(
図7D)を、表示濃度の1A5もしくは3D4、または両方の抗体で24時間処置し、次いで、100pg/mLの組み換えNRG1で1時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5および3D4とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、次いで、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。
【
図7D】1A5および3D4抗体の併用療法によるHER3の完全不活性化を示す。ヒト胃癌N87細胞(
図7A)、乳癌BT474細胞(
図7B)、乳癌ZR75−30細胞(
図7C)、および膵癌Panc2.03細胞(
図7D)を、表示濃度の1A5もしくは3D4、または両方の抗体で24時間処置し、次いで、100pg/mLの組み換えNRG1で1時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中でELISAにより判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体(1A5および3D4とは異なるエピトープを認識する)で被覆し、総HER3を捕捉した。チロシンリン酸化HER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、次いで、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。
【
図8A】1A5および3D4抗体によるHER3活性化の完全遮断が、N87胃癌細胞内のラパチニブの抗増殖効果を敏感にすることを示す。ヒト胃癌N87細胞を、20μg/mLの1A5もしくは3D4、または両方で、100nMのラパチニブを用いるか、または用いずに24時間処置した。EGFR(
図8A)、HER2(
図8B)、およびHER3(
図8C)のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中で化学発光ELISAにより判断した。ELISAプレートを、抗EGFR(クローン:1E1、
図8A)、抗HER2(クローン:5G12、
図8B)、または抗HER3(クローン:3F8、
図8C)で被覆した。チロシンリン酸化EGFR、HER2、およびGER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。細胞をEdUで標識し、EdU+増殖細胞を、フローサイトメトリーにより検査した(
図8D)。
【
図8B】1A5および3D4抗体によるHER3活性化の完全遮断が、N87胃癌細胞内のラパチニブの抗増殖効果を敏感にすることを示す。ヒト胃癌N87細胞を、20μg/mLの1A5もしくは3D4、または両方で、100nMのラパチニブを用いるか、または用いずに24時間処置した。EGFR(
図8A)、HER2(
図8B)、およびHER3(
図8C)のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中で化学発光ELISAにより判断した。ELISAプレートを、抗EGFR(クローン:1E1、
図8A)、抗HER2(クローン:5G12、
図8B)、または抗HER3(クローン:3F8、
図8C)で被覆した。チロシンリン酸化EGFR、HER2、およびGER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。細胞をEdUで標識し、EdU+増殖細胞を、フローサイトメトリーにより検査した(
図8D)。
【
図8C】1A5および3D4抗体によるHER3活性化の完全遮断が、N87胃癌細胞内のラパチニブの抗増殖効果を敏感にすることを示す。ヒト胃癌N87細胞を、20μg/mLの1A5もしくは3D4、または両方で、100nMのラパチニブを用いるか、または用いずに24時間処置した。EGFR(
図8A)、HER2(
図8B)、およびHER3(
図8C)のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中で化学発光ELISAにより判断した。ELISAプレートを、抗EGFR(クローン:1E1、
図8A)、抗HER2(クローン:5G12、
図8B)、または抗HER3(クローン:3F8、
図8C)で被覆した。チロシンリン酸化EGFR、HER2、およびGER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。細胞をEdUで標識し、EdU+増殖細胞を、フローサイトメトリーにより検査した(
図8D)。
【
図8D】1A5および3D4抗体によるHER3活性化の完全遮断が、N87胃癌細胞内のラパチニブの抗増殖効果を敏感にすることを示す。ヒト胃癌N87細胞を、20μg/mLの1A5もしくは3D4、または両方で、100nMのラパチニブを用いるか、または用いずに24時間処置した。EGFR(
図8A)、HER2(
図8B)、およびHER3(
図8C)のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中で化学発光ELISAにより判断した。ELISAプレートを、抗EGFR(クローン:1E1、
図8A)、抗HER2(クローン:5G12、
図8B)、または抗HER3(クローン:3F8、
図8C)で被覆した。チロシンリン酸化EGFR、HER2、およびGER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。細胞をEdUで標識し、EdU+増殖細胞を、フローサイトメトリーにより検査した(
図8D)。
【
図9A】1A5および3D4抗体によるHER3活性化の完全遮断が、A549肺癌細胞内のエルロチニブの抗増殖効果を敏感にすることを示す。ヒト肺癌A549細胞を、20μg/mLの1A5もしくは3D4、または両方で、100nMのエルロチニブを用いるか、または用いずに24時間処置した。EGFR(
図9A)およびHER3(
図9B)のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中で化学発光ELISAにより判断した。ELISAプレートを、抗EGFR(クローン:1E1、
図9A)または抗HER3(クローン:3F8、
図9B)で被覆した。チロシンリン酸化EGFRおよびHER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。細胞をEdUで標識し、EdU+増殖細胞を、フローサイトメトリーにより検査した(
図9C)。
【
図9B】1A5および3D4抗体によるHER3活性化の完全遮断が、A549肺癌細胞内のエルロチニブの抗増殖効果を敏感にすることを示す。ヒト肺癌A549細胞を、20μg/mLの1A5もしくは3D4、または両方で、100nMのエルロチニブを用いるか、または用いずに24時間処置した。EGFR(
図9A)およびHER3(
図9B)のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中で化学発光ELISAにより判断した。ELISAプレートを、抗EGFR(クローン:1E1、
図9A)または抗HER3(クローン:3F8、
図9B)で被覆した。チロシンリン酸化EGFRおよびHER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。細胞をEdUで標識し、EdU+増殖細胞を、フローサイトメトリーにより検査した(
図9C)。
【
図9C】1A5および3D4抗体によるHER3活性化の完全遮断が、A549肺癌細胞内のエルロチニブの抗増殖効果を敏感にすることを示す。ヒト肺癌A549細胞を、20μg/mLの1A5もしくは3D4、または両方で、100nMのエルロチニブを用いるか、または用いずに24時間処置した。EGFR(
図9A)およびHER3(
図9B)のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中で化学発光ELISAにより判断した。ELISAプレートを、抗EGFR(クローン:1E1、
図9A)または抗HER3(クローン:3F8、
図9B)で被覆した。チロシンリン酸化EGFRおよびHER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。細胞をEdUで標識し、EdU+増殖細胞を、フローサイトメトリーにより検査した(
図9C)。
【
図10A】1A5および3D4抗体によるHER3活性化の完全遮断が、ZR75−30乳癌細胞内のラパチニブの抗増殖効果を敏感にすることを示す。ヒト乳癌ZR75−30細胞を、20μg/mLの1A5もしくは3D4、または両方で、100nMのラパチニブを用いるか、または用いずに24時間処置した。HER2(
図10A)およびHER3(
図10B)のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中で化学発光ELISAにより判断した。ELISAプレートを、抗HER2(クローン:5G12)または抗HER3(クローン:3F8)で被覆した。チロシンリン酸化HER2およびHER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。細胞をEdUで標識し、EdU+増殖細胞を、フローサイトメトリーにより検査した(
図10C)。
【
図10B】1A5および3D4抗体によるHER3活性化の完全遮断が、ZR75−30乳癌細胞内のラパチニブの抗増殖効果を敏感にすることを示す。ヒト乳癌ZR75−30細胞を、20μg/mLの1A5もしくは3D4、または両方で、100nMのラパチニブを用いるか、または用いずに24時間処置した。HER2(
図10A)およびHER3(
図10B)のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中で化学発光ELISAにより判断した。ELISAプレートを、抗HER2(クローン:5G12)または抗HER3(クローン:3F8)で被覆した。チロシンリン酸化HER2およびHER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。細胞をEdUで標識し、EdU+増殖細胞を、フローサイトメトリーにより検査した(
図10C)。
【
図10C】1A5および3D4抗体によるHER3活性化の完全遮断が、ZR75−30乳癌細胞内のラパチニブの抗増殖効果を敏感にすることを示す。ヒト乳癌ZR75−30細胞を、20μg/mLの1A5もしくは3D4、または両方で、100nMのラパチニブを用いるか、または用いずに24時間処置した。HER2(
図10A)およびHER3(
図10B)のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中で化学発光ELISAにより判断した。ELISAプレートを、抗HER2(クローン:5G12)または抗HER3(クローン:3F8)で被覆した。チロシンリン酸化HER2およびHER3を、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出し、リン酸化のレベルを化学発光により測定した。細胞をEdUで標識し、EdU+増殖細胞を、フローサイトメトリーにより検査した(
図10C)。
【
図11】1A5および3D4抗体によるHER3活性化の遮断が、A549ヒト肺癌異種移植モデル内の腫瘍体積を低減することを実証するグラフを示す。
【
図12】アービタックス(Erbitux)との組み合わせで1A5および3D4抗体によるHER3活性化の遮断が、A549ヒト肺癌異種移植モデル内の腫瘍体積を相乗的に低減することを実証するグラフを示す。
【
図13】ラパチニブとの組み合わせで1A5抗体によるHER3活性化の遮断が、N87ヒト胃癌モデル内の腫瘍体積を相乗的に低減することを実証するグラフを示す。
【
図14】ラパチニブとの組み合わせで1A5抗体によるHER3活性化の遮断が、MKN28ヒト胃癌モデル内の腫瘍体積を相乗的に低減することを実証するグラフを示す。
【
図15】1A5抗体によるHER3活性化の遮断が、HT29ヒト結腸癌モデル内の腫瘍体積を低減することを実証するグラフを示す。
【
図16】ラパチニブとの組み合わせで1A5抗体によるHER3活性化の遮断が、HT29ヒト結腸癌モデル内の腫瘍体積を相乗的に低減することを実証するグラフを示す。
【
図17A】膵癌細胞株内のERBBファミリータンパク質の発現および機能を示す。
図17Aは、全ての細胞株が、高レベルのEGFRを発現し、8つの細胞株のうち5つおよび7つが、それぞれ可変レベルのHER2およびHER3を発現したことを示す。
図17B〜17Dは、TGF−αが、EGFR発現レベルに非依存的な差異的リン酸化反応を誘導したが、HER2およびHER3を活性化しなかったことを示す。NRG1は、EGFR活性化を誘導しなかったが、HER2およびHER3の両方をHER依存的様式で活性化することができた。全てのHER3陽性細胞株は、異なるレベルのHER3自己リン酸化(リガンド非依存的活性化)を有した。
【
図17B】膵癌細胞株内のERBBファミリータンパク質の発現および機能を示す。
図17Aは、全ての細胞株が、高レベルのEGFRを発現し、8つの細胞株のうち5つおよび7つが、それぞれ可変レベルのHER2およびHER3を発現したことを示す。
図17B〜17Dは、TGF−αが、EGFR発現レベルに非依存的な差異的リン酸化反応を誘導したが、HER2およびHER3を活性化しなかったことを示す。NRG1は、EGFR活性化を誘導しなかったが、HER2およびHER3の両方をHER依存的様式で活性化することができた。全てのHER3陽性細胞株は、異なるレベルのHER3自己リン酸化(リガンド非依存的活性化)を有した。
【
図17C】膵癌細胞株内のERBBファミリータンパク質の発現および機能を示す。
図17Aは、全ての細胞株が、高レベルのEGFRを発現し、8つの細胞株のうち5つおよび7つが、それぞれ可変レベルのHER2およびHER3を発現したことを示す。
図17B〜17Dは、TGF−αが、EGFR発現レベルに非依存的な差異的リン酸化反応を誘導したが、HER2およびHER3を活性化しなかったことを示す。NRG1は、EGFR活性化を誘導しなかったが、HER2およびHER3の両方をHER依存的様式で活性化することができた。全てのHER3陽性細胞株は、異なるレベルのHER3自己リン酸化(リガンド非依存的活性化)を有した。
【
図17D】膵癌細胞株内のERBBファミリータンパク質の発現および機能を示す。
図17Aは、全ての細胞株が、高レベルのEGFRを発現し、8つの細胞株のうち5つおよび7つが、それぞれ可変レベルのHER2およびHER3を発現したことを示す。
図17B〜17Dは、TGF−αが、EGFR発現レベルに非依存的な差異的リン酸化反応を誘導したが、HER2およびHER3を活性化しなかったことを示す。NRG1は、EGFR活性化を誘導しなかったが、HER2およびHER3の両方をHER依存的様式で活性化することができた。全てのHER3陽性細胞株は、異なるレベルのHER3自己リン酸化(リガンド非依存的活性化)を有した。
【
図18A】ERBBファミリータンパク質のリガンド非依存的活性化に対する1A5抗体、エルロチニブ、およびラパチニブの効果を示す。
図18Aは、エルロチニブおよびラパチニブではなく、1A5抗体が、Panc.1を除く全てのHER3陽性細胞株内のHER3の自己リン酸化を阻害したことを示す。
図18Bは、エルロチニブが、全ての膵細胞株内の自己リン酸化を阻害したが、1A5抗体は単独で、EGFR自己リン酸化をHER3依存的様式で部分的に阻害したことを示す。1A5抗体は、エルロチニブの阻害活性を強化することができた。
図18Cは、ラパチニブが単独で、EGFRの自己リン酸化を阻止したが、1A5抗体は、ラパチニブの活性を強化することができなかったことを示す。
図18Dは、1A5およびラパチニブの組み合わせが、1A5抗体またはラパチニブ単独よりも大幅にHER2自己リン酸化のレベルを低減したことを示す。
【
図18B】ERBBファミリータンパク質のリガンド非依存的活性化に対する1A5抗体、エルロチニブ、およびラパチニブの効果を示す。
図18Aは、エルロチニブおよびラパチニブではなく、1A5抗体が、Panc.1を除く全てのHER3陽性細胞株内のHER3の自己リン酸化を阻害したことを示す。
図18Bは、エルロチニブが、全ての膵細胞株内の自己リン酸化を阻害したが、1A5抗体は単独で、EGFR自己リン酸化をHER3依存的様式で部分的に阻害したことを示す。1A5抗体は、エルロチニブの阻害活性を強化することができた。
図18Cは、ラパチニブが単独で、EGFRの自己リン酸化を阻止したが、1A5抗体は、ラパチニブの活性を強化することができなかったことを示す。
図18Dは、1A5およびラパチニブの組み合わせが、1A5抗体またはラパチニブ単独よりも大幅にHER2自己リン酸化のレベルを低減したことを示す。
【
図18C】ERBBファミリータンパク質のリガンド非依存的活性化に対する1A5抗体、エルロチニブ、およびラパチニブの効果を示す。
図18Aは、エルロチニブおよびラパチニブではなく、1A5抗体が、Panc.1を除く全てのHER3陽性細胞株内のHER3の自己リン酸化を阻害したことを示す。
図18Bは、エルロチニブが、全ての膵細胞株内の自己リン酸化を阻害したが、1A5抗体は単独で、EGFR自己リン酸化をHER3依存的様式で部分的に阻害したことを示す。1A5抗体は、エルロチニブの阻害活性を強化することができた。
図18Cは、ラパチニブが単独で、EGFRの自己リン酸化を阻止したが、1A5抗体は、ラパチニブの活性を強化することができなかったことを示す。
図18Dは、1A5およびラパチニブの組み合わせが、1A5抗体またはラパチニブ単独よりも大幅にHER2自己リン酸化のレベルを低減したことを示す。
【
図18D】ERBBファミリータンパク質のリガンド非依存的活性化に対する1A5抗体、エルロチニブ、およびラパチニブの効果を示す。
図18Aは、エルロチニブおよびラパチニブではなく、1A5抗体が、Panc.1を除く全てのHER3陽性細胞株内のHER3の自己リン酸化を阻害したことを示す。
図18Bは、エルロチニブが、全ての膵細胞株内の自己リン酸化を阻害したが、1A5抗体は単独で、EGFR自己リン酸化をHER3依存的様式で部分的に阻害したことを示す。1A5抗体は、エルロチニブの阻害活性を強化することができた。
図18Cは、ラパチニブが単独で、EGFRの自己リン酸化を阻止したが、1A5抗体は、ラパチニブの活性を強化することができなかったことを示す。
図18Dは、1A5およびラパチニブの組み合わせが、1A5抗体またはラパチニブ単独よりも大幅にHER2自己リン酸化のレベルを低減したことを示す。
【
図19A】ERBBファミリータンパク質のリガンド依存的活性化に対する3D4抗体、エルロチニブ、およびラパチニブの効果を示す。
図19Aは、3D4抗体が、HER3のNRG−1誘導のリン酸化を阻害し、ラパチニブが、NRG−1誘導のリン酸化を部分的に低減したことを示す。
図19Bは、エルロチニブではなく、3D4抗体およびラパチニブの両方が、HER2のNRG−1誘導のリン酸化を阻害したことを示す。
【
図19B】ERBBファミリータンパク質のリガンド依存的活性化に対する3D4抗体、エルロチニブ、およびラパチニブの効果を示す。
図19Aは、3D4抗体が、HER3のNRG−1誘導のリン酸化を阻害し、ラパチニブが、NRG−1誘導のリン酸化を部分的に低減したことを示す。
図19Bは、エルロチニブではなく、3D4抗体およびラパチニブの両方が、HER2のNRG−1誘導のリン酸化を阻害したことを示す。
【
図20A】抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Aは、MIAcapa(左)およびBXPC3(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Bは、Panc1(左)およびPanc2.03(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Cは、S2013(左)およびS2Vp10(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Dは、S2LM−7AA(左)およびSuit2(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
【
図20B】抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Aは、MIAcapa(左)およびBXPC3(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Bは、Panc1(左)およびPanc2.03(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Cは、S2013(左)およびS2Vp10(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Dは、S2LM−7AA(左)およびSuit2(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
【
図20C】抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Aは、MIAcapa(左)およびBXPC3(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Bは、Panc1(左)およびPanc2.03(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Cは、S2013(左)およびS2Vp10(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Dは、S2LM−7AA(左)およびSuit2(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
【
図20D】抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Aは、MIAcapa(左)およびBXPC3(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Bは、Panc1(左)およびPanc2.03(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Cは、S2013(左)およびS2Vp10(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
図20Dは、S2LM−7AA(左)およびSuit2(右)細胞株における抗HER3抗体およびエルロチニブまたはラパチニブを用いた併用療法の抗増殖活性を示す。
【
図21】無胸腺ヌードマウスにおける同所性基底A異種移植片に対するHER3抗体単独およびアブラキサンとの組み合わせでの生体内有効性を示す。HCC1187細胞を、乳房脂肪体内に埋め込み、10日後の腫瘍が良好に確立した時に処置を開始した。矢印は、処置を行った期間を示す(n=10マウス/群)。処置は、週2回3週間付与され、28日目に終了する200μgの1A5および3D4 HER3抗体、11、15、18、および22日目の20mg/kgアブラキサン、HER3プラスアブラキサン、または処置なしで構成された。
【
図22】無胸腺ヌードマウスにおける同所性基底A異種移植片に対するHER3抗体単独およびラパチニブとの組み合わせでの生体内有効性を示す。MDA−MB−468細胞を、乳房脂肪体内に埋め込み、7日後の腫瘍が良好に確立した時に処置を開始した。矢印は、処置を行った期間を示す(n=10マウス/群)。処置は、週2回3週間付与され、24日目に終了する200μgの1A5および3D4 HER3抗体、週5日3週間付与される100mg/kgラパチニブ、HER3プラスラパチニブ、または処置なしで構成された。
【
図23】無胸腺ヌードマウスにおける同所性膵癌異種移植片に対するHER3抗体単独およびゲムシタビンとの組み合わせでの生体内有効性を示す。MIA PaCa−2細胞を、膵臓内に埋め込み、27日後の腫瘍が良好に確立した時に処置を開始した。矢印は、処置を行った期間を示す(n=10マウス/群)。処置は、週2回6週間付与され、65日目に終了する200μgの1A5および3D4 HER3抗体、28、34、56、および63日目の120mg/kgゲムシタビン、HER3プラスゲムシタビン、または処置なしで構成された。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、HER3に特異的な抗体またはその断片が提供される。これらの抗体は、HER3のリン酸化を阻止する。阻止されるリン酸化は、自己リン酸化またはリガンド誘導のリン酸化であり得る。任意選択により、HER3抗体は、HER3リガンド結合を阻止しない。本明細書で使用する際、HER3リガンド結合を阻止しない抗体または断片は、自己リン酸化が阻止されるため、リガンド非依存的アンタゴニスト抗体またはその断片と称される。任意選択により、HER3抗体は、HER3リガンド結合を阻止する。本明細書で使用する際、HER3リガンド結合を阻止する抗体または断片は、リガンド誘導のリン酸化が阻止されるため、リガンド依存的アンタゴニスト抗体またはその断片と称される。HER3特異的抗体は、HER3のリン酸化を阻止し、任意選択により、HER3のリン酸化は、HER3リガンド結合に非依存的である。抗体は、例えば、HER2およびEGFRのリガンド誘導のリン酸化を阻止する薬剤により、HER2およびEGFRのリン酸化の遮断を敏感にすることができる。
【0009】
任意選択により、HER3特異的抗体または断片は、生体外かつ低用量で、HER3を発現する癌細胞内のHER3のリン酸化をを阻止することができる。任意選択により、リガンド非依存的およびリガンド依存的HER3特異的抗体または断片は、生体外かつ低用量で、HER3を発現する癌細胞に組み合わせで投与されることができる。HER3特異的抗体の投与量は、例えば、0.1μg/mL、0.5μg/mL、1μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、20μg/mL、50μg/mL、またはそれらの間の任意の用量であることができる。癌細胞は、例えば、胃癌細胞、乳癌細胞、膵癌細胞、前立腺癌細胞、卵巣癌細胞、神経癌細胞、肝癌細胞、腎癌細胞、皮膚癌細胞、結腸直腸癌細胞、および肺癌細胞からなる群から選択されることができる。
【0010】
リガンド非依存的HER3特異的抗体または断片は、例えば、配列番号3、配列番号4、および配列番号5を含むポリペプチド配列(相補性決定領域またはCDRS)を持つ軽鎖と、配列番号6、配列番号7、および配列番号8を含むポリペプチド配列(CDRS)を持つ重鎖とを含む、抗体または断片と同一のエピトープ特異性を有することができる。任意選択により、この抗体または断片は、配列番号1を含む
重鎖を含む。任意選択により、この抗体または断片は、配列番号2を含む
軽鎖を含む。軽鎖は、例えば、配列番号3、配列番号4、および配列番号5を含むポリペプチド配列(CDRS)を含むことができる。重鎖は、例えば、配列番号6、配列番号7、および配列番号8を含むポリペプチド配列(CDRS)を含むことができる。
【0011】
リガンド依存的HER3特異的抗体または断片は、例えば、配列番号11、配列番号12、および配列番号13を含むポリペプチド配列(CDRS)を持つ軽鎖と、配列番号14、配列番号15、および配列番号16を含むポリペプチド配列(CDRS)を持つ重鎖とを含む、抗体または断片と同一のエピトープ特異性を有することができる。任意選択により、この抗体または断片は、配列番号9を含む軽鎖を含む。任意選択により、この抗体または断片は、配列番号10を含む重鎖を含む。軽鎖は、例えば、配列番号11、配列番号12、および配列番号13を含むポリペプチド配列(CDRS)を含むことができる。重鎖は、例えば、配列番号14、配列番号15、および配列番号16を含むポリペプチド配列(CDRS)を含むことができる。
【0012】
本明細書で使用する際、抗体という用語は、いかなる種類の全免疫グロブリン(すなわち、完全抗体)も包含するが、これに限定されない。天然の抗体は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖からなる、ヘテロ四量体糖タンパク質である。典型的に、各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合するが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプ間で変動する。各重鎖および軽鎖は、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(V(H))を有し、その後に多数の定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V(L))を有し、その他端に定常ドメインを有し、この軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列され、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列される。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の界面を形成すると考えられる。任意の脊椎動物種からの抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに別個の種類のうちの1つに割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なる種類に割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主な種類:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3、およびIgG−4;IgA−1、およびIgA−2にさらに分割され得る。異なる種類の免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、エプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。
【0013】
可変という用語は、本明細書において、抗体間で配列の異なる抗体ドメインのある部分を説明するために用いられ、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性において用いられる。しかしながら、可変性は通常、抗体の可変ドメインを通して均等に分布されない。典型的に、相補性決定領域(CDR)または軽鎖および重鎖可変ドメインの両方における超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中する。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFR領域を含み、主にβシート構成を採用し、3つのCDRにより接続され、これらは、βシート構造を接続して場合によってはβシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖内のCDRは、FR領域により極めて近接して一緒に保持され、他の鎖からのCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。定常ドメインは、抗体を抗原に結合することに直接関与しないが、抗体依存的細胞毒性における抗体の参加等の様々なエフェクター機能を呈する。
【0014】
本明細書で使用する際、エピトープという用語は、提供される抗体との特定の相互作用が可能な任意の決定基を含むことを意味する。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面分類からなり、通常、特定の3次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。抗体が認識するエピトープの識別は、以下のように行われる。最初に、モノクローナル抗体が認識する標的分子の様々な部分構造を調製する。部分構造は、分子の部分ペプチドを調製することにより調製する。このようなペプチドは、例えば、既知のオリゴペプチド合成技法によるか、または所望の部分ポリペプチドをコードするDNAを、適した発現プラスミドに組み込むことにより調製する。発現プラスミドは、大腸菌等の適した宿主に送達され、ペプチドを生成する。例えば、標的分子のC末端またはN末端から作業して、適切に低減された長さを有する一連のポリペプチドは、確立された遺伝子工学技法により調製することができる。どの断片が抗体と反応するかを確立することにより、エピトープ領域が識別される。エピトープは、確立されたオリゴペプチド合成技法を用いて、多様なより小さなペプチド、またはペプチドの変異体を合成することによりさらに厳密に識別される。より小さなペプチドは、例えば、競合阻害アッセイにおいて用いられ、特定のペプチドが、標的分子への抗体の結合を干渉するか否かを判断する。干渉する場合、ペプチドは、抗体が結合するエピトープである。SPOTsキット(Genosys Biotechnologies,Inc.,The Woodlands,TX)、およびマルチピン合成法に基づく一連のマルチピンペプチド合成キット(Chiron Corporation,Emeryvile,CA)等の市販のキットを用いて、多種多様のオリゴペプチドを入手してもよい。
【0015】
また、抗体またはその断片という用語は、2重もしくは複数の抗原またはエピトープ特異性、ならびにハイブリッド断片を含むF(ab’)2、Fab’、Fab、およびその同等物等の断片を有する、キメラ抗体およびハイブリッド抗体も包含することができる。したがって、抗体の断片であって、その特異的抗原に結合する能力を保持する抗体の断片が提供される。例えば、HER3結合活性を維持する抗体の断片は、抗体またはその断片という用語の意味内に含まれる。このような抗体および断片は、当該技術分野において周知の技法により製造することができ、抗体を生成し、特異性および活性について抗体をスクリーニングするための一般的な方法に従って、特異性および活性についてスクリーニングすることができる(Harlow and Lane.Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New York(1988)参照)。
【0016】
例えば、参照することによりその内容全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,704,692号に記載される、抗体断片および抗原結合タンパク質の共役体(一本鎖抗体)も抗体またはその断片の意味に含まれる。
【0017】
任意選択により、抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体という用語は、本明細書で使用する際、抗体の実質的に均質の集団からの抗体を指し、すなわち、個体群を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な自然発生の変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)またはHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New York (1988)に記載される方法等のハイブリドーマ法を使用して調製され得る。ハイブリドーマ法において、マウスまたは他の適切な宿主動物は、典型的に、免疫剤で免疫付与され、免疫剤に特異的に結合する抗体を生成するか、または生成することができるリンパ球を引き出す。代替として、リンパ球は生体外で免疫付与され得る。免疫剤は、HER3またはその免疫原性断片であり得る。
【0018】
一般に、ヒト起源の細胞が所望される場合は、モノクローナル抗体を生成する方法において、末梢血リンパ球(PBL)が用いられるか、または非ヒト哺乳類起源が所望される場合は、脾細胞もしくはリンパ節細胞が用いられるかのいずれかである。次いで、ポリエチレングリコール等の適した融剤を用いてリンパ球を不死化細胞株と融合し、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,pp.59−103(1986))。不死化細胞株は通常、齧歯類、ウシ、ウマ、およびヒト起源の骨髄腫細胞を含む、形質転換哺乳類細胞である。通常、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、非融合の不死化細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を含む、適した培養培地中で培養され得る。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的に、HGPRT欠乏細胞の成長を防ぐ、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(「HAT培地」)物質を含む。
【0019】
ここで有用な不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞により安定した高レベルの抗体発現を支持し、HAT培地等の培地に敏感なものである。不死化細胞株として、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center;San Diego, Calif.およびAmerican Type Culture Collection;Rockville,Md.から入手できるマウス骨髄腫株が挙げられる。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、ヒトモノクローナル抗体の生成についても説明されている(Kozbor,J. Immunol.,133:3001 (1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York(1987) pp.51−63)。
【0020】
次いで、ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、HER3または選択されたそのエピトープに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。ハイブリドーマ細胞により生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によるか、または放射免疫測定(RIA)もしくは酵素免疫吸着測定(ELISA)等の生体外結合アッセイにより判断することができる。このような技法およびアッセイは、当該技術分野において周知であり、Harlow and Lane Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New York(1988)においてさらに説明されている。
【0021】
所望のハイブリドーマ細胞が識別された後、クローンは限界希釈またはFACS分類手順によりサブクローン化され得、標準方法により生育され得る。この目的に適した培養培地としては、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地およびRPMI−1640培地が挙げられる。代替として、ハイブリドーマ細胞は、哺乳類における腹水として生体内で生育され得る。
【0022】
サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィー等により従来の免疫グロブリン精製手順により培養培地または腹水流体から単離または精製され得る。
【0023】
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されるもの等の組み換えDNA法により製造されてもよい。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)容易に単離および配列決定することができる。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好適な供給源として役割を果たすことができる。一旦単離されると、DNAは、発現ベクターの中に置かれ、次いで、さもなければ免疫グロブリンタンパク質を生成しない、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、形質細胞腫細胞、または骨髄腫細胞等の宿主細胞に形質導入され、組み換え宿主細胞内のモノクローナル抗体の合成を得ることができる。DNAは、例えば、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を、相同性マウス配列の代わりに用いることによるか(米国特許第4,816,567号)、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てもしくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することにより修飾されてもよい。このような非免疫グロブリンポリペプチドを、本明細書に提供される抗体の定常ドメインに置き換えるか、または抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置き換えて、HER3に対する特異性を有する1つの抗原結合部位、および異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を形成することができる。
【0024】
生体外方法も、一価抗体を調製するために適している。その断片、特にFab断片を生成するための抗体の消化は、当該技術分野において周知のルーチン技法を用いて達成されることができる。例えば、消化は、パパインを用いて行われることができる。パパイン消化の例は、国際公開第94/29348号、米国特許第4,342,566号、およびHarlow and Lane Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New York(1988)において説明されている。抗体のパパイン消化は、典型的に、それぞれが単一の抗原結合部位を持つFab断片、および残基Fc断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片を生成する。ペプシン処置は、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋結合することができる、F(ab’)2断片と呼ばれる断片を産生する。
【0025】
抗体消化において生成されるFab断片は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメインを含むこともできる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域から1つ以上のシステインを含む重鎖ドメインのカルボキシ末端においていくつかの残基の付加によりFab断片とは異なる。F(ab’)2断片は、ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により結合される2つのFab’断片を含む二価断片である。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が、遊離チオール基を担持するFab’の本明細書における呼称である。
【0026】
提供される抗体または断片を含むタンパク質を生成する1つの方法は、タンパク質化学技法により2つ以上のペプチドまたはポリペプチドを一緒にリンクすることである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、Fmoc(9−フルオレニルメチル−オキシカルボニル)またはBoc(tert−ブチルオキシカルボニル)化学(Applied Biosystems,Inc.;Foster City,CA)を用いて、現在使用可能な実験室設備を用いて化学的に合成することができる。当業者であれば、本明細書に提供される抗体に対応するペプチドまたはポリペプチドが、例えば、標準化学反応により合成され得ることを容易に理解する。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、合成できるがその合成樹脂から切断することはできないのに対して、抗体のもう一方の断片は合成して、後次に樹脂から切断することができ、それによりもう一方の断片上で機能的に遮断される末端基を暴露させる。ペプチド縮合反応により、これら2つの断片は、それぞれそれらのカルボキシル末端およびアミノ末端においてペプチド結合を介して共有結合され、抗体またはその断片を形成することができる(Grant GA(1992)Synthetic Peptides:A User Guide.W.H.Freeman and Co.,N.Y.(1992)、Bodansky M and Trost B.,Ed.(1993)Principles of Peptide Synthesis.Springer Verlag Inc.,NY)。代替として、ペプチドまたはポリペプチドは、生体内で非依存的に合成されることができる。一旦単離されると、これらの非依存的ペプチドまたはポリペプチドはリンクされ、同様のペプチド縮合反応を介して抗体またはその断片を形成し得る。
【0027】
例えば、クローン化または合成ペプチドセグメントの酵素結紮は、比較的短いペプチド断片が結合されて、より大きなペプチド断片、ポリペプチド、または全タンパク質ドメインを生成するのを可能にし得る(Abrahmsen et al.,Biochemistry,30:4151(1991))。代替として、合成ペプチドの天然の化学的結紮を利用して、より短いペプチド断片から大きなペプチドまたはポリペプチドを合成的に構成することができる。この方法は、2段階化学反応で構成される(Dawson et al.Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation.Science,266:776 779(1994))。第1段階は、チオエステル結合した中間物を初期共役産物として生じる、非保護合成ペプチドのチオエステルと、アミノ末端Cys残基を含む別の非保護ペプチドセグメントとの化学選択的反応である。反応条件を変えずに、この中間物は、同時の急速な分子内反応を受けて、結紮部位において天然のペプチド結合を形成する。タンパク質分子の全合成に対するこの天然の化学的結紮法の適用は、ヒトインターロイキン8(IL−8)の調製により例証される(Baggiolini et al.,FEBS Lett.307:97−101(1992)、Clark et al.,J.Biol.Chem.269:16075 (1994)、Clark et al.,Biochemistry 30:3128(1991)、Rajarathnam et al.,Biochemistry33:6623−30(1994))。
【0028】
代替として、非保護ペプチドセグメントを化学的にリンクされることができ、化学的結紮の結果としてこのペプチドセグメント間で形成される結合は、非天然(非ペプチド)結合である(Schnolzer et al.,Science 256:221 (1992))。この技法は、タンパク質ドメインの類似体、ならびに完全生理活性を持つ大量の比較的純粋なタンパク質を合成するために用いられている(deLisle et al.,Techniques in Protein Chemistry IV.Academic Press,New York,pp.257−267(1992))。
【0029】
提供される断片または抗体ポリペプチドは、細菌、アデノウイルス、またはバキュロウイルス発現系等のそのポリペプチド断片を生成することができる発現系においてポリペプチドをコードする核酸をクローン化することにより得られる、組み換えタンパク質であることができる。例えば、抗体とHER3との相互作用と関連付けられる生物学的効果を生じ得る、特定のハイブリドーマからの抗体の活性ドメインを判断することができる。例えば、抗体の活性または結合特異性もしくは親和性のいずれかに寄与しないことが判明したアミノ酸は、それぞれの活性を喪失することなく欠失され得る。
【0030】
提供される断片は、断片の活性が、非修飾抗体またはエピトープと比較して著しく変化または障害されていない限り、他の配列に付着されるか否かに関わらず、特定の領域または特定のアミノ酸残基の挿入、欠失、置換、または他の選択される修飾を含むこともできる。これらの修飾は、いくつかの追加の特性、例えば、ジスルフィド結合可能なアミノ酸を除去または付加すること、その生物寿命を増加させること、その分泌特性を変えること等を提供することができる。いずれにしても、断片は、結合活性、結合ドメインにおける結合の調節等の生物活性特性を有することができる。機能的領域または活性領域は、タンパク質の特定領域の突然変異誘発、続いて発現および発現したポリペプチドの検査により識別され得る。このような方法は、当該技術分野における熟練実践者には容易に明らかであり、抗原をコードする核酸の部位特異的突然変異誘発を含むことができる(Zoller et al., Nucl.Acids Res.10:6487−500 (1982))。
【0031】
本明細書において、抗体のヒト化またはヒトバージョンがさらに提供される。任意選択により、この抗体は、HER3分子の活性化を阻害することにより、HER3分子の活性を調整する。任意選択により、ヒト化またはヒト抗体は、開示されるハイブリドーマ細胞株により産生される抗体と同一のエピトープ特異性を有する抗体の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。例えば、この抗体は、ハイブリドーマ細胞株により生成される抗体と同一のエピトープ特異性を有する抗体の全てのCDRを含み得る。
【0032】
任意選択により、ヒト化またはヒト抗体は、開示されるハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体のフレームワーク領域の少なくとも1つの残基を含むことができる。ヒト化およびヒト抗体は、熟練者に周知の方法を用いて製造することができ、例えば、ヒト抗体は、生殖細胞株突然変異動物を用いて、またはファージディスプレイライブラリを使用して産生されることができる。
【0033】
抗体は、他の種内で生成され、ヒトに投与するためにヒト化されることもできる。代替として、完全ヒト抗体は、完全ヒト抗体(例えば、ヒト抗体を産生するために遺伝子修飾されたマウス)を製造し、HER3に結合するクローンをスクリーニングすることができる、マウスまたは他の種を免疫付与することにより製造することもできる。完全ヒト抗体を産生する方法については、例えば、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、Lonberg and Huszar, Int.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を参照されたい。本明細書で使用する際、抗体に関連するヒト化およびヒトという用語は、ヒト対象において治療上容認できる弱い免疫原性応答を引き出すことが予想される任意の抗体に関する。したがって、これらの用語は、完全ヒト化または完全ヒト、ならびに部分的ヒト化または部分的ヒトを含む。
【0034】
非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、キメラ免疫グロブリン、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む、免疫グロブリン鎖またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合部分列)である。ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(受容体抗体)を含み、受容体のCDRからの残基は、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基により置き換えられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。ヒト化抗体は、受容体抗体内でも移入されたCDRまたはフレームワーク配列内でも見出されない残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、実質的に全てまたは少なくとも1つ、および典型的に2つの可変ドメインを含み、CDR領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のそれらである。ヒト化抗体は、任意選択により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にヒト免疫グロブリンのそれも含む(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature,332:323−327 (1988)、およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol., 2:593−596(1992))。
【0035】
一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである起源からそれに導入される1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的に移入可変ドメインから得られる移入残基と称される場合が多い。ヒト化は、Jones et al., Nature 321:522−525(1986)、Riechmann et al., Nature 332:323−327 (1988)、またはVerhoeyen et al., Science 239:1534−1536 (1988)に記載される方法に従って、齧歯類CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりにすることにより本質的に行うことができる。したがって、このようなヒト化抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、実質的に完全ヒト可変ドメイン未満が、非ヒト種からの対応する配列により置換されている。実際に、ヒト化抗体は、典型的にヒト抗体であり、いくつかのCDR残基および恐らくいくつかのFR残基は、齧歯類抗体における類似部位からの残基により置換される。
【0036】
提供される抗体をコードするヌクレオチド配列は、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)容易に単離および配列決定されることができる。これらのヌクレオチド配列は、相同マウス配列の代わりに、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を用いることにより、修飾またはヒト化することもできる(例えば、米国特許第4,816,567号参照)。提供される抗体のいずれかをコードするヌクレオチド配列は、適切な宿主細胞内で発現されることができる。これらは、原核宿主細胞を含み、大腸菌、枯草菌、サルモネラチフィムリウム(Salmonella typhimurium)等の他の腸内細菌科、またはセラチアマルセセンス(Serratia marcesans)、および様々なスードモナス種が挙げられるが、これらに限定されない。真核宿主細胞を用いることもできる。これらには、酵母細胞(例えば、サッカロミセスセレビシア(Saccharomyces cerevisiae)およびピキアパストリス(Pichia pastoris))、および哺乳類細胞、例えば、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、W138細胞、BHK細胞、COS−7細胞、293T細胞、およびMDCK細胞が挙げられるが、これらに限定されない。これらの細胞により産生される抗体は、培養培地から精製されることができ、本明細書に記載される方法および当該技術分野における標準を用いることにより、モノクローナル抗体の結合、活性、特異性、または任意の他の特性についてアッセイされることができる。
【0037】
免疫付与時に、内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を用いることができる。例えば、キメラおよび生殖細胞株突然変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(J(H))遺伝子のホモ接合欠失が、内因性抗体生成の完全阻害をもたらすことが説明されている。このような生殖細胞株突然変異マウスにおけるヒト生殖細胞株免疫グロブリン遺伝子配列の転移は、抗原攻撃時のヒト抗体の産生をもたらす(例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:2551−5(1993)、Jakobovits et al.,Nature 362:255−8(1993)、Bruggemann et al.,Year in Immuno.7:33(1993)参照)。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ内で産生することもできる(Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581 (1991))。ColeらおよびBoernerらの技法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に使用可能である(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R.Liss,et.,p.77(1985)、Boerner et al.,J. Immunol.,147(1):86−95 (1991))。
【0038】
提供される抗体または断片は標識されるか、または別のポリぺプチドまたはその断片と融合されることができる。例えば、提供される抗体またはその断片は、治療薬と融合されることができる。したがって、HER3に結合する抗体またはその断片は、治療薬にリンクされ得る。この結合は、共有結合性または非共有結合性(例えば、イオン性)であり得る。治療薬は、毒素を含むがこれに限定されず、植物および細菌毒素、小分子、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。Fv領域を含む抗体またはその断片をコードする遺伝子を、毒素を標的細胞に送達するために毒素をコードする遺伝子に融合され得る、遺伝子組み換え融合タンパク質も提供される。本明細書で使用する際、1つまたは複数の標的細胞は、HER3陽性細胞である。
【0039】
治療薬の他の例として、化学療法薬(小分子を含む)、放射線治療薬、および免疫療法薬、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。このように、対象に送達される抗体複合体は、HER3に結合することにより1つの治療効果を引き出し、補足治療薬を送達することにより第2の治療効果を引き出すという点において多機能性であることができる。
【0040】
治療薬は、例えば、免疫応答を開始するか、もしくは影響を及ぼすことにより細胞外に作用することができるか、または例えば、細胞膜を通じて移行させることにより直接、もしくは膜貫通細胞シグナル伝達に影響を及ぼすことにより間接的に細胞内に作用することができる。治療薬は、任意選択により、抗体または断片から切断可能である。切断は、自己分解性であることができ、タンパク質分解によるか、または細胞を切断剤と接触させることにより達成される。
【0041】
毒素または毒素部分の例としては、ジフテリア、リシン、ストレプトアビジン、およびそれらの修飾が挙げられる。抗体または抗体断片は、細胞毒、治療薬、または放射活性金属イオン等の治療部分に共役され得る。細胞毒または細胞毒性薬として、細胞に有害な任意の薬剤が挙げられる。例としては、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭素エチジウム、エメチン、エトポシド、テノポシド、コルチシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピュロマイシン、およびそれらの類似体または相同体が挙げられる。治療薬として、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロランブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン)、アントラシクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
このような治療部分を抗体に共役するための技法は良く知られており、例えば、Arnon et al.,Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al.(eds.),pp.243−56(1985)、Hellstrom et al.,Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623−53 (1987)、Thorpe,Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications, Pinchera et al.(eds.),pp.475−506 (1985)、″Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy″in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),pp.303−16 (1985)、およびThorpe et al.,Immunol.Rev.62:119−58(1982)を参照されたい。代替として、抗体は、米国特許第4,676,980号に記載されるように、第2の抗体に共役されて抗体ヘテロ共役体を形成することができる。
【0043】
本明細書において、HER3抗体、ヒト化HER3抗体、HER3抗体の重鎖および軽鎖免疫グロブリン、HER3抗体のCDR、および完全長抗体または免疫グロブリンの機能を行うこれらの抗体または免疫グロブリンのある切断または断片が提供される。例えば、HER3抗体をコードする核酸配列が改変され得る。このように、ポリペプチド配列、変異型、およびそれらの断片をコードする核酸が開示される。これらの配列は、特定のタンパク質配列に関連する全ての縮重配列、すなわち、1つの特定のタンパク質配列をコード化する配列を有する全ての核酸と、タンパク質配列の開示された変異体および誘導体をコード化する縮重核酸を含む全ての核酸とを含む。したがって、各特定の核酸配列を本明細書に書き出すことはできないが、あらゆる配列が実際は開示され、開示されたタンパク質配列によって本明細書に説明されることを理解されたい。
【0044】
全てのペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質に関し、その断片を含めて、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の性質または機能を改変しないHER3抗体のアミノ酸配列における追加の修飾が発生し得ることを理解されたい。このような修飾として、保存アミノ酸置換が挙げられ、以下により詳細に論じられる。
【0045】
本明細書に提供されるHER3抗体または断片は、所望の機能を有する。このHER3抗体または断片は、HER3タンパク質の特定のエピトープに結合する。エピトープの結合は、例えば、HER3のリン酸化(自己リン酸化またはリガンド誘導のリン酸化のいずれか)を阻害することができる。
【0046】
本明細書に記載されるHER3抗体または断片は、所望の機能が維持される限り、さらに修飾および変異されることができる。本明細書に開示される核酸配列およびタンパク質の任意の既知の修飾および誘導体または発生し得るものを規定する1つの方式が、特異的な既知の配列との同一性に関して修飾および誘導体を規定することによるものであることを理解されたい。具体的には、本明細書に提供されるHER3抗体または断片のポリペプチドに対して少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99パーセントの同一性を有するポリペプチドが開示される。当業者は、2つのポリペプチドの同一性の判断法を容易に理解する。例えば、同一性がその最高レベルになるように、2つの配列をアラインメントした後に同一性を計算することができる。
【0047】
同一性を計算する別の方式は、公開されているアルゴリズムによって実行され得る。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math 2:482(1981)の局所的同一性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の同一性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性方法の検索によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装によって(Wisconsin Genetics Software Package内のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group, 575 Science Dr.,Madison,WI)、または検査によって、行われてもよい。
【0048】
同じ種類の同一性は、例えば、少なくとも核酸アラインメントに関連する内容について参照することにより本明細書に組み込まれる、Zuker,Science 244:48−52(1989)、Jaeger et al., Proc. Natl.Acad.Sci.USA 86:7706−7710(1989)、Jaeger et al.,Methods Enzymol.183:281−306(1989)に開示されたアルゴリズムによって、核酸について入手されることができる。方法のいずれかが、典型的には、使用可能であること、ならびに一定の事例では、これらの種々の方法の結果が異なり得るが、当業者は、これらの方法のうちの少なくとも1つで同一性を発見すると、配列が、記述の同一性を有し、かつ本明細書に開示されると言われ得ることを理解する。
【0049】
タンパク質修飾は、アミノ酸配列修飾を含む。アミノ酸配列における修飾は、対立遺伝子変異として(例えば、遺伝的多型に起因して)自然に発生し得るか、環境の影響に起因して(例えば、紫外線に対する暴露によって)発生し得るか、または誘起された点突然変異体、欠失変異体、挿入変異体および置換変異体等のヒトの介入によって(例えば、クローンDNA配列の突然変異によって)産生され得る。これらの修飾は、結果的に、アミノ酸配列における変化をもたらすか、サイレント変異を提供するか、制限部位を修飾するか、または他の特異的突然変異を提供することができる。アミノ酸配列修飾は、典型的には、置換修飾、挿入修飾、または欠失修飾の3つの種類のうちの1つ以上に当てはまる。挿入は、アミノ融合および/または末端融合と、単一または複数のアミノ残基の配列内挿入とを含む。挿入は、通常、例えば、約1〜4個の残基のアミノ末端融合またはカルボキシル末端融合の挿入よりも小さい挿入である。欠失は、タンパク質配列からの1つ以上のアミノ酸残基の除去を特徴とする。典型的には、約2〜6個以下の残基が、タンパク質分子内の任意の一部位で欠失される。アミノ酸置換は、典型的には、単一の残基に関するが、一度に多数の異なる位置で発生することができ、挿入は、通常、約1〜10個のアミノ酸残基であり、欠失は、約1〜30個の残基の範囲である。欠失または挿入は、好ましくは、隣接する対、すなわち、2個の残基の欠失または2個の残基の挿入で行われる。置換、欠失、挿入、または任意のそれらの組み合わせを組み合わせて、最終構築物に到達してもよい。突然変異は、リーディングフレーム外に配列を配置してはならず、好ましくは、二次的mRNA構造を産生し得る相補領域を生成しない。置換修飾は、少なくとも1つの残基が除去され、異なる残基がその場所に挿入されることである。このような置換は、概して、以下の表1に従って行われ、保存的置換と呼ばれる。
【0051】
特異的アミノ酸置換を含む修飾は、既知の方法によって行われる。例として、修飾は、タンパク質をコード化するDNAにおけるヌクレオチドの部位特異的突然変異によって行われ、これによって、修飾をコード化するDNAが産生され、その後、組み換え細胞培養においてDNAが発現される。既知の配列を有するDNAの所定の部位において置換変異を行う技法は、周知であり、例えばM13プライマー突然変異およびPCR突然変異が挙げられる。
【0052】
本明細書では、有効な量のリガンド非依存的HER3特異的抗体もしくは断片、リガンド依存的HER3特異的抗体もしくは断片、または両方の組み合わせを対象に投与することを含む、対象における癌を治療する方法も提供される。任意選択により、対象は、最初にHER3発現癌を有するとして選択される。この方法は、第1の非依存的またはリガンド依存的HER3特異的抗体または断片を対象に投与すること含み得、任意選択により、それとともに、またはそれに続いて、第1の抗体もしくは断片がリガンド非依存的HER3特異的抗体もしくは断片である事象では、第2のリガンド依存的HER3特異的抗体または断片、または第1の抗体もしくは断片がリガンド依存的HER3特異的抗体もしくは断片である事象では、リガンド非依存的HER3特異的抗体もしくは断片を対象に投与することを含むことができる。任意選択により、この方法は、HER2および/またはEGFRへのリン酸化を阻止する抗体もしくは断片を対象に投与することをさらに含むことができる。
【0053】
この方法は、例えば、1つ以上のチロシンキナーゼ阻害剤を対象に投与することをさらに含むことができる。1つ以上のチロシンキナーゼ阻害剤は、エルロチニブ、ラパチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、ダサチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、およびバンデタニブから選択され得る。
【0054】
抗体の組み合わせまたは抗体とチロシンキナーゼ阻害剤の組み合せが投与されるとき、薬剤は、任意の順序で(例えば、同一組成物中で同時に、異なる組成物または異なる投与経路により同時に、または連続的に)提供されることができる。
【0055】
本明細書では、チロシンキナーゼ阻害剤に対する敏感性を促進するか、または対象におけるチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性を防止または低減する方法がさらに提供される。この方法は、本明細書に開示される有効な量のリガンド非依存的HER3特異的抗体または断片を対象に投与することを含み、任意選択により、本明細書に開示される有効な量のリガンド依存的HER3特異的抗体または断片と組み合わせて投与することを含む。この方法は、チロシンキナーゼ阻害剤を対象に投与することをさらに含む。チロシンキナーゼ阻害剤は、抗体もしくは断片または複数の抗体もしくは複数の断片の非存在下より低い投与量で投与されることができる。
【0056】
この方法は、例えば、1つ以上の抗癌化合物または化学療法薬をを対象に投与することをさらに含み得る。化学療法薬は、腫瘍の成長を阻害することができる化合物である。このような薬剤として、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アルクニン(AcrQnine);アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン(Ambomycin);酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ(Azetepa);アゾトマイシン(Azotomycin);バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィドジメシレート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カーベタイマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン(Cirolemycin);シスプラチン;クラドリビン;クリスナトールメシレート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン(Duazomycin);エダトレキサート;塩酸エフロミチン;エルサミトルシン(Elsamitrucin);エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;エピルビシン;塩酸エピプロピジン;エルブロゾール(Erbulozole);塩酸エソルビシン(Esorubicin Hydrochloride);エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド化油I 131;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン(Etoprine);塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;5−フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;金Au 198;ヒドロキシウレア;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモルフォジン(Ilmofosine);インターフェロンα−2a;インターフェロンα−2b;インターフェロンα−n1;インターフェロンα−n3;インターフェロンβ−Ia;インターフェロンγ−Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアゾロール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;マイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲステロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;マイトカルシン(Mitocarcin);マイトクロミン(Mitocromin);マイトジリン;マイトマルシン(Mitomalcin);マイトマイシンC;マイトスパー(Mitosper);ミトタン;ミトキサントロン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペグアスパラガーゼ;ペリオマイシン(Peliomycin);ペンタムスチン(Pentamustine);硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン(Porfiromycin);プレドニムスチン(Prednimustine);塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン(Pyrazofurin);リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;塩酸ストロンチウムSr 89;スロフェヌル;タリソマイシン(Talisomycin);タキサン;タキソイド;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン(Terokirone);テストラクトン;チアミプリン(Thiamiprine);チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;塩酸トポテカン;クエン酸トレミファン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バブレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビンピジン(Vinepidine Sulfate);硫酸ビングリシネート(Vinglycinate Sulfate);硫酸ビンロウロシン(Vinleurosin Sulfate);酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン(Vinrosidine Sulfate);硫酸ビンゾリジン(Vinzolidine Sulfate);ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;および塩酸ゾルビシン等の抗腫瘍薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
抗体の組み合わせ、または抗体と化学療法薬の組み合わせが投与されるとき、薬剤は、任意の順序で(例えば、同一組成物中で同時に、異なる組成物または異なる投与経路により同時に、または連続的に)提供されることができる。
【0058】
本明細書では、化学療法薬に対する敏感性を促進するか、または対象における化学療法薬に対する耐性を防止または低減する方法がさらに提供される。この方法は、本明細書に開示される有効な量のリガンド非依存的HER3特異的抗体または断片を対象に投与することを含み、任意選択により、本明細書に開示される有効な量のリガンド依存的HER3特異的抗体または断片と組み合わせて投与することを含む。この方法は、化学療法薬を対象に投与することをさらに含む。化学療法薬は、抗体もしくは断片または複数の抗体もしくは断片の非存在下より低い投与量で投与され得る。
【0059】
本明細書では、HER3のリガンド非依存的リン酸化を阻止する薬剤をスクリーニングする方法も提供される。この方法は、検査される薬剤をHER3発現細胞に投与することと、HER3リン酸化のレベルを検出することと、を含む。未処置のHER3発現細胞または対照と比較して、HER3自己リン酸化のレベルの減少は、HER3のリガンド非依存的リン酸化を阻止する薬剤を示す。この方法は、HER3リガンドをHER3発現細胞に投与することと、リガンド依存的リン酸化のレベルを検出することと、さらに(例えば、リン酸化がリガンド依存的であるか、またはリガンド非依存的であるかを判断する)それをリガンド非依存的リン酸化のレベルと比較することと、をさらに含む。任意選択により、HER3リガンドは、検査される薬剤を投与する前に投与される。本明細書では、本明細書に提供されるスクリーニングする方法により識別される薬剤がさらに提供される。
【0060】
本明細書では、本明細書に記載される1つ以上のHER3抗体または断片を含み、任意選択により、1つ以上のHER2、EGFR抗体もしくはその断片、または1つ以上のチロシンキナーゼ阻害剤をさらに含む、組成物が提供される。本明細書に提供される組成物は、生体外または生体内で投与するのに適している。任意選択により、1つ以上のHER3抗体または断片を含む組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。薬学的に許容される担体とは、生物学的に望ましくないか、または他の理由で望ましくないことはない材料を意味し、すなわち、この材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすか、またはそれが含まれる薬学的組成物の他の成分と有害な方法で相互作用することなく、対象に投与される。担体は、活性成分の縮重を最小化し、対象における副作用を最小限にするように選択される。
【0061】
適した担体およびそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21
stEdition,David B.Troy,ed., Lippicott Williams & Wilkins (2005)に記載されている。典型的には、適切な量の薬学的に許容される塩を製剤に用いて、製剤を等張性にする。薬学的に許容される担体の例として、滅菌水、生理食塩水、リンガー溶液のような緩衝溶液、およびデキストロース溶液が挙げられるが、これらに限定されない。溶液のpHは、一般に、約5〜約8または約7〜7.5である。他の担体は、免疫原性ポリペプチドを含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクス等の徐放性調製物を含む。マトリクスは、例えば、フィルム、リポソーム、または微粒子等の成形物品の形態である。ある担体は、例えば、投与経路および投与される組成物の濃度に応じてより好適になり得る。担体は、例えば、本明細書に記載されるポリペプチドおよびヒトまたは他の対象に対する抗原をコードするアデノウイルス等の組成物の投与に適したものである。
【0062】
組成物は、局所処置が所望されるか、または全身処置が所望されるかに応じて、および処置される領域に応じて多数の方法で投与される。組成物は、局所、経口、非経口、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、肝内、頭蓋内、噴霧/吸入を含むか、または気管支鏡検査を介した設置による、いくつかの投与経路を介して投与される。
【0063】
非経口投与の調製物は、滅菌水性または非水性溶液、懸濁液、および乳液を含む。非水性溶液の例は、グリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、およびオレイン酸エチル等の注入可能な有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール/水性溶液、乳液または懸濁液が挙げられ、生理食塩水および緩衝媒体を含む。非経口媒体としては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンガー液または固定油が挙げられる。静脈内媒体としては、液体および栄養補充薬、電解質補充薬(例えば、リンガーデキストロースに基づくもの)等が挙げられる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガス等の保存剤および他の添加剤が、任意選択により存在する。
【0064】
局所投与のための製剤としては、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体、および粉末が挙げられる。従来の薬学的担体、水性、粉末、または油性基質、増粘剤等は、任意選択により必須であるか、または望ましい。
【0065】
経口投与のための組成物として、粉末もしくは顆粒、水もしくは非水性媒体中の懸濁液もしくは溶液、カプセル、小袋、または錠剤が挙げられる。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤、または結合剤は、任意選択により望ましい。
【0066】
任意選択により、HER3特異的抗体または断片をコードする核酸分子は、核酸分子を含むベクターにより投与される。生体外または生体内のいずれかで、例えば、発現ベクターを介して、核酸分子および/またはポリペプチドを細胞に送達するために用いることができる、多数の組成物および方法がある。これらの方法および組成物は、2つの種類:ウイルスベースの送達系および非ウイルスベースの送達系に大きく分類され得る。このような方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書に記載される組成物および方法と共に用いるために容易に適合可能である。
【0067】
本明細書で使用する際、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質という用語は、ペプチド結合によりリンクされる2つ以上のアミノ酸を意味するように広く用いられる。タンパク質、ペプチド、およびポリペプチドも、本明細書において、アミノ酸配列を指すように同義的に用いられる。ポリペプチドという用語は、粒径または分子を含むアミノ酸の数を示唆するために、本明細書において用いられないこと、および本発明のペプチドは、最大いくつかのアミノ酸残基またはそれ以上を含むことができることを認識されたい。
【0068】
全体で使用する際、対象は、脊椎動物、より具体的には哺乳類(例えば、ヒト、ウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ウサギ、ラット、およびモルモット)、鳥類、爬虫類、爬虫類、魚類、および任意の他の動物であることができる。この用語は、特定の年齢または性別を示さない。したがって、成人および新生児対象は、男性か女性かに関わらず、網羅されるものとする。本明細書で使用する際、患者または対象は同義的に用いられてよく、疾患または障害(例えば、癌)を持つ対象を指すことができる。患者または対象という用語は、ヒトおよび動物対象を含む。
【0069】
本明細書で使用する際、増殖性疾患という用語は、細胞が正常な組織成長より急速に増殖する任意の細胞障害を指す。増殖性疾患として、例えば、HER3発現癌、膵癌、乳癌、脳癌(例えば、膠芽細胞腫)、肺癌、前立腺癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、腎癌、皮膚癌、副腎癌、胃癌、または肝癌等の癌が挙げられる。
【0070】
疾患もしくは障害を発症する危険性のある対象は、その疾患もしくは障害にかかる遺伝的な傾向があり得、例えば、家族病歴を有するか、またはその疾患もしくは障害を引き起こす突然変異を遺伝子内に有するか、またはその疾患もしくは障害の早期兆候もしくは症状を示す。現在疾患または障害を持つ対象は、その疾患または障害の1つ以上の症状を有し、その疾患または障害と診断されていてもよい。
【0071】
本明細書に記載される方法および薬剤は、予防的処置および治療的処置の両方に有用である。予防的使用の場合、本明細書に記載される治療上有効な量の薬剤は、発症前(例えば、癌の明らかな兆候前)または早期発症中(例えば、癌の初期兆候および症状時)に対象に投与される。予防的投与は、癌の症状の出現前に数日から数年間行うことができる。予防的投与は、例えば、癌に対する遺伝的傾向があると診断された対象の予防的治療において用いることができる。治療的処置は、癌の診断または発症後に、治療上有効な量の本明細書に記載される薬剤を対象に投与することを伴う。
【0072】
本明細書に教示される方法に従って、対象は、有効な量のHER3抗体またはその断片を投与される。有効な量および有効な投与量という用語は、同義的に用いられる。有効な量という用語は、所望の生理反応(例えば、腫瘍体積の低減)を生じるために必要な任意の量として規定される。薬剤を投与するために有効な量およびスケジュールは、経験的に判断されてよく、このような判断を行うことは、当該技術分野の範囲内である。投与のための投与量範囲は、疾患または障害の1つ以上の症状が影響を受ける(例えば、低減または遅延する)所望の効果をもたらすために十分に多いものである。投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応等の実質的な副作用を引き起こすほど大量であってはならない。一般的に、投与量は、年齢、状態、性別、疾患の種類、疾患もしくは障害の程度、投与経路、または他の薬物が計画に含まれるか否かにより変動する。投与量は、任意の禁忌事象において個々の医師により調整されることができる。投与量は変動し得、毎日1回以上の用量投与において、1日または数日間投与され得る。ガイダンスは、所与の種類の医薬製品に適切な投与量についての文献において見出されることができる。
【0073】
本明細書で使用する際、処置、処置する、または処置することという用語は、疾患もしくは状態の影響、またはその疾患もしくは状態の症状を低減する方法を指す。したがって、開示される方法において、処置は、確立された疾患もしくは状態の重篤度、またはその疾患もしくは状態の症状の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%低減を指すことができる。例えば、疾患を処置するための方法は、対照と比較して、対象における疾患の1つ以上の症状が10%低減する場合に処置であると見なされる。したがって、この低減は、天然レベルまたは対照レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または10%〜100%の間の任意の低減率であり得る。処置は、必ずしも疾患、状態、またはその疾患もしくは状態の症状の治癒もしくは完全切除を指す必要はないことを理解されたい。
【0074】
本明細書で使用する際、疾患もしくは障害を予防する、予防すること、および予防という用語は、対象が疾患もしくは障害の1つ以上の症状を示し始める前、またはそれとほぼ同時に起こる、例えば、治療薬の投与等の動作を指し、疾患もしくは障害の1つ以上の症状の発症または増悪を阻害または遅延させる。本明細書で使用する際、減少、低減、または阻害に関する言及は、対照レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上の変化を含む。このような用語は、完全な排除を含み得るが、必ずしもそれを含むとは限らない。
【0075】
開示される方法および組成物に用いられ得る、それらと併せて用いられ得る、それらの調製において用いられ得る、またはそれらの産物である、材料、組成物、および成分が開示される。これらおよび他の材料は、本明細書において開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群等が開示されるとき、これらの化合物の様々な個々および集約的組み合わせおよび順列のそれぞれに関する特異的な言及は明らかに開示されないかもしれないが、それぞれが特異的に企図され、本明細書に記載されることを理解されたい。例えば、方法が開示および議論され、この方法を含む多数の分子に対して行われ得る多数の修飾が論じられる場合、この方法のそれぞれおよび全ての組み合わせおよび順列、ならびに可能な修飾は、それとは反対のことが特異的に示されない限り、特異的に企図される。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも特異的に企図および開示される。この概念は、限定されないが、開示される組成物を用いる方法における工程を含む、本開示の全態様に適用する。したがって、行われ得る多様な追加の工程がある場合、これらの追加工程のそれぞれは、開示される方法の任意の特定の方法工程または方法工程の組み合わせにより行われ得ること、およびそのような組み合わせまたは組み合わせのサブセットのそれぞれが、特異的に企図され、開示されると見なされるべきである。
【0076】
本明細書に引用される出版物およびそれらが引用される資料は、参照によりそれら全体が具体的に本明細書に組み込まれる。
実施例
【実施例1】
【0077】
リガンド非依存的(1A5)およびリガンド依存的(3D4)HER3抗体の識別
DR5−アポトーシス耐性ヒト乳癌ZR75−1細胞株に対して行われるハイブリドーマライブラリの機能的スクリーニングにおいて、1A5抗体が識別された。1A5抗体およびTRA−8またはCTB006から選択される作動性DR5抗体の存在下で、DR5耐性ZR75−1細胞のアポトーシスが観測された。1A5抗体の標的は、1A5抗体による免疫沈降および後次の質量分析によりHER3であると識別された。
【0078】
別のHER3抗体が、ヒトHER3を発現するSP2/0細胞でマウスを免疫付与することにより生成された。この抗体は、機能的スクリーニングにおいて、ヒト癌細胞株内のリガンド誘導性HER3活性を阻害する能力により識別された。したがって、3D4抗体は、リガンド依存的抗体である。
【実施例2】
【0079】
リガンド非依存的(1A5)およびリガンド依存的(3D4)HER3抗体の特徴解析
1A5および3D4抗体の結合特異性を実証するために、ELISAアッセイを行った。ELISAプレートを、1μg/mLの組み換え可溶性EGFR、HER2、またはHER3の細胞外ドメインで被覆した。ELISAプレートを、漸増濃度の1A5または3D4でインキュベートした後、二次HRP−ヤギ抗マウスIgGを用いてインキュベートし、1A5および3D4抗体結合を検出した。1A5および3D4抗体の両方がHER3に特異的に結合することが判断された(
図1Aおよび1B)。確認として、1A5および3D4抗体の結合特異性は、フローサイトメトリーによっても検査した。EGFR、HER2、またはHER3でトランスフェクトしたSP2/0細胞を、1μg/mLの精製1A5または3D4抗体で染色した後、PE−ヤギ抗マウスIgGで染色し、1A5および3D4抗体結合を検出した。フローサイトメトリーを用いて、1A5および3D4抗体がHER3に特異的に結合することが確認された(
図1Cおよび1D)。
【0080】
1A5および3D4抗体がHER3へのリガンド結合(例えば、NRG1)を阻止することができるか否かを判断するために、ELISAアッセイを行った。ELISAプレートを、1μg/mLの組み換え可溶性HER3で被覆した後、漸増濃度の1A5または3D4抗体の非存在または存在下で、100ng/mLのビオチン共役組み換えNRG1を用いてインキュベートした。HER3へのNRG1の結合を、HRP−ストレプトアビジンにより検出した。漸増濃度の1A5抗体は、HER3へのNRG1結合の阻止に失敗し(
図2A)、リガンドの結合を阻止することなく1A5抗体がHER3に結合することを示す。したがって、1A5抗体は、本明細書においてリガンド非依存的抗体と称される。漸増濃度の3D4抗体は、HER3へのNRG1の結合を阻害し(
図2A)、3D4抗体がHER3に結合し、リガンド結合を阻止することを示す。したがって、3D4抗体は、本明細書においてリガンド依存的抗体と称される。フローサイトメトリーを用いてこれらの結果を確認した。つまり、HER3でトランスフェクトしたSP2/0細胞を、漸増濃度の1A5または3D4抗体の非存在または存在下で、100ng/mLのビオチン共役NRG1を用いてインキュベートした。NRG1結合を、PE−ストレプトアビジンにより検出した。漸増濃度の1A5抗体は、HER3へのNRG1結合の阻止に失敗したが、漸増濃度の3D4抗体は、HER3へのNRG1結合を阻止し(
図2B)、したがってELISAアッセイの結果を確認した。
【0081】
1A5および3D4抗体がHER3の異なるエピトープに結合するか否かを判断するために、ELISAアッセイを行った。ELISAプレートを、2μg/mLの精製1A5で被覆した後、200ng/mLのHRP共役3D4の存在下で、漸増濃度のHER3を用いてインキュベートした。HER3への3D4の結合は、化学発光により検出した。1A5および3D4抗体がHER3の異なるエピトープに結合することを判断した(
図3)。
【0082】
抗体をさらに特徴解析するために、1A5および3D4抗体の両方を配列決定した。1A5抗体の配列決定は、以下の配列を生成した:1A5
重鎖の可変領域MEWIWIFLFIFSGTAGVHSQVQLQQSGAELARPGASVKLSCKASGYTFTDNYINWMKQRPGQGLEWIGEIYPGSGNTYYNEKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEESAVYFCARSPNLRLYYFDYWGQGTTLTVSS(配列番号1)および1A5
軽鎖の可変領域MVSTSQLLGLLLFWTSASRCDIVMTQSPATLSVTPGDRVSLSCRASQSINDYLYWYQQKLHESPRLLIKFASHSISGIPSRFSGSGSGSDFTLSINSVEPEDVGVYYCQNGHSFPLTFGAGTKLELK(配列番号2)。1A5軽鎖の可変領域のさらなる分析は、MVSTSQLLGLLLFWTSASRC(配列番号17)からなるリーダーペプチド、フレームワーク領域1(FR1)のDIVMTQSPATLSVTPGDRVSLSC(配列番号18)、FR2のWYQQKLHESPRLLIK(配列番号19)、FR3のGIPSRFSGSGSGSDFTLSINSVEPEDVGVYYC(配列番号20)、FR4のFGAGTKLELK(配列番号21)、相補性決定領域1(CDR1)のRASQSINDYLY(配列番号3)、CDR2のFASHSIS(配列番号4)、およびCDR3のQNGHSFPLT(配列番号5)を示した。1A5重鎖の可変領域のさらなる分析は、MEWIWIFLFIFSGTAGVHS(配列番号22)からなるリーダーペプチド、フレームワーク領域1(FR1)のQVQLQQSGAELARPGASVKLSCKASGYTFT(配列番号23)、FR2のWMKQRPGQGLEWIG(配列番号24)、FR3のKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEESAVYFCAR(配列番号25)、FR4のWGQGTTLTVSS(配列番号26)、相補性決定領域1(CDR1)のDNYIN(配列番号6)、CDR2のEIYPGSGNTYYNEKFKG(配列番号7)、およびCDR3のSPNLRLYYFDY(配列番号8)を示した。
【0083】
3D4抗体の配列決定は、以下の配列を生成した:3D4軽鎖の可変領域METDTLLLWVLLLWVPGSTGDIVLTQSPASLAVSLG
QRATISCRASESVDSYGNSFMNWYQQKPGQPPKVLIYRASNLESGIPARFSGSGSRTDFTLTITPVEADDVATYYCQQSYEDPPTFGGGTKLEIK(配列番号9)および3D4重鎖の可変領域MGWSRIFLFLLSIIAGVHCQVQLQQSGPELV
KPGASVRISCKASGYTFTNYFLHWMKQRPGQGLEWIGWIYPGNVNTKYSEKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYFCARSTYYSMDYWGQGTSVTVSS(配列番号10)。3D4軽鎖の可変領域のさらなる分析は、METDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号27)からなるリーダーペプチド、フレームワーク領域1(FR1)のDIVLTQSPASLAVSLGQRATISC(配列番号28)、FR2のWYQQKPGQPPKVLIY(配列番号29)、FR3のGIPARFSGSGSRTDFTLTIT
PVEADDVATYYC(配列番号30)、FR4のFGGGTKLEIK(配列番号31)、相補性決定領域1(CDR1)のRASESVDSYGNSFMN(配列番号11)、CDR2のRASNLES(配列番号12)、およびCDR3のQQSYEDPPT(配列番号13)を示した。3D5重鎖の可変領域のさらなる分析は、MGWSRIFLFLLSIIAGVHC(配列番号32)からなるリーダーペプチド、フレームワーク領域1(FR1)のQVQLQQSGPELVKPGASVRISCKASGYTFT(配列番号33)、FR2のWMKQRPGQGLEWIG(配列番号34)、FR3のKATLTADKSSSTAYMQLSSL
TSEDSAVYFCAR(配列番号35)、FR4のWGQGTSVTVSS(配列番号36)、相補性決定領域1(CDR1)のNYFLH(配列番号14)、CDR2のWIYPGNVNTKYSEKFKG(配列番号15)、およびCDR3のSTYYSMDY(配列番号16)を示した。
【実施例3】
【0084】
1A5および3D4抗体の生体外生物学的機能
1A5抗体がHER3のリガンド非依存的活性(自己リン酸化)を阻害することができるか否かを判断するために、1A5または3D4抗体を、いくつかの癌細胞株に投与し、HER3の自己リン酸化レベルを判断した。ヒト胃癌N87細胞、乳癌BT474細胞およびZR75−30細胞、および膵癌Panc2.03細胞を、漸増濃度の1A5または3D4抗体で24時間処置した。HER3のチロシンリン酸化レベルを、2mg/mLの総細胞溶解物中でELISAアッセイを用いて判断した。ELISAプレートを、1A5および3D4抗体とは異なるエピトープを認識する3F8抗HER3抗体で被覆し、総HER3(tHER3)を捕捉した。チロシンリン酸化レベルを、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体を用いて化学発光により検出した。その1A5抗体の漸増濃度は、リガンド依存的3D4抗体より大幅にHER3の自己リン酸化を阻害することができることを判断した(
図4A〜4D)。
図5は、一団のヒト癌細胞内のHER3のリガンド非依存的活性化の阻害をさらに示す。チロシンリン酸化レベルは、2mg/mLの総細胞溶解物中でELISAアッセイにより判断し、チロシンリン酸化のレベルは、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により検出した。
【0085】
1A5抗体がHER3のリガンド依存的活性化を阻害することができるか否かを判断するために、1A5または3D4抗体を、組み換えNRG1と併せて投与し、HER3のチロシンリン酸化を判断した。ヒト胃癌N87細胞、乳癌BT474細胞およびZR75−30細胞、ならびに膵癌Panc2.03細胞を、漸増濃度の1A5または3D4抗体で24時間処置した後、100pg/mLの組み換えNRG1を1時間投与した。HER3のチロシンリン酸化レベルを、25μLの2mg/mLの総細胞溶解物中でELISAアッセイを用いて判断した。ELISAプレートを、3F8抗HER3抗体で被覆し、総HER3を捕捉した。チロシンリン酸化レベルを、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体を用いて化学発光により検出した。1A5抗体の漸増濃度は、リガンド依存的3D4抗体より少ない程度にHER3のリガンド依存的活性化を阻害することができることを判断した(
図6A〜6D)。
【0086】
1A5および3D4抗体の組み合わせでの投与が、HER3の活性化を阻害することに対して相乗効果を有するか否かを判断するために、上記のように、抗体を組み合わせで細胞株に投与し、HER3のチロシンリン酸化レベルを判断した。組み合わせで低濃度で投与されるとき、抗体が一緒に相乗的に作用して、HER3の活性化を阻害することを判断した(
図7A〜7D)。
【0087】
1A5および3D4抗体のラパタニブと組み合わせでの投与が、N87胃癌細胞株の増殖に影響を及ぼすか否かを判断するために、1A5および3D4抗体を単独および組み合わせで、ラパチニブと共に、またはラパチニブなしにN87細胞に投与し、HER3のチロシンリン酸化レベルを判断した。ヒト胃N87細胞を、20mg/mLの1A5もしくは3D4、または両方の抗体で、100nMラパチニブを用いるか、または用いずに24時間処置した。EGFR(
図8A)、HER2(
図8B)、およびHER3(
図8C)のチロシンリン酸化レベルを、化学発光により判断した。ELISAプレートを抗EGFR(クローン:1E1)、抗HER2(クローン:5G12)、および抗HER3(クローン:3F8)で被覆し、チロシンリン酸化レベルを、HRP共役4G10抗チロシンリン酸化抗体により判断した。1A5または3D4抗体単独または組み合わせでの処置は、EGFRまたはHER2のチロシンリン酸化のレベルに影響を及ぼさなかった(
図8Aおよび8B)。EGFRおよびHER2チロシンリン酸化レベルは、抗体と共にラパチニブの投与により低減した(
図8Aおよび8B)。1A5もしくは3D4、または両方の抗体の投与は、HER3のチロシンリン酸化を低減し(
図8C)、この効果は、ラパチニブの投与に伴って強化された(
図8C)。ラパチニブを用いるか、またはラパチニブを用いずに1A5もしくは3D4、または両方の抗体を投与した後の細胞増殖の影響を判断するために、細胞増殖アッセイを用いた。細胞をEdUで標識し、EdU+増殖細胞を、フローサイトメトリーにより検出した。両方の抗体をラパチニブと共に投与することが、細胞増殖を完全に阻害したことが観測された(
図8D)。
【0088】
これらの実験を、A549肺癌細胞で薬物のエルロチニブを用いて繰り返した。1A5もしくは3D4、または両方の抗体の投与が、EGFRのチロシンリン酸化レベルに影響を及ぼさなかったが(
図9A)、抗体をエルロチニブと共に投与することは、EGFRのチロシンリン酸化レベルを低減したことを示した(
図9A)。1A5もしくは3D4、または両方の抗体の投与は、HER3のチロシンリン酸化を低減し、この効果は、エルロチニブを抗体と併せて、単独および組み合わせで投与することにより強化された(
図9B)。フローサイトメトリーを用いて、両方の抗体をエルロチニブと共に投与することが、A549肺癌細胞の細胞増殖を完全に阻害したことが観測された(
図9C)。
【0089】
これらの実験を、ZR75−30乳癌細胞およびラパチニブを用いて繰り返した。1A5もしくは3D4、または両方の抗体の投与が、HER2のチロシンリン酸化レベルに影響を及ぼさなかったが(
図10A)、抗体単独または組み合わせでエルロチニブと共に投与することは、チロシンリン酸化レベルを低減した(
図10A)。1A5もしくは3D4、または両方の抗体の投与は、HER3のチロシンリン酸化を低減し、この効果は、ラパチニブを抗体と併せて、単独および組み合わせで投与することにより強化された(
図10B)。フローサイトメトリーを用いて、両方の抗体をラパチニブと共に投与することが、ZR75−30乳癌細胞の細胞増殖を完全に阻害したことが観測された(
図10C)。
【実施例4】
【0090】
1A5および3D4抗体の生体内抗腫瘍有効性
1A5抗体が、腫瘍成長を生体内で阻害することができるか否かを判断するために、異なる癌異種移植モデルを用いた。A549ヒト肺癌異種移植モデルを用いて、1A5または3D4抗体単独の投与が、腫瘍体積を低減させたことを示した(
図11)。さらに、1A5および3D4抗体を組み合わせで投与することは、抗体がA549ヒト肺癌異種移植モデル内の腫瘍体積を相乗的に低減し得ることを実証した。同一モデルを用いて、1A5または3D4抗体を単独および組み合わせで、アービタックスを投与することが、アービタックス単独の投与よりも多く腫瘍体積を低減させたことを実証した(
図12)。
【0091】
N87ヒト胃癌異種移植モデルを用いて、ラパチニブの投与が、1A5および3D4抗体(抗HER3)の組み合わせでの投与よりも多く腫瘍体積を低減したことを実証したが、両方の抗体と併せてのラパチニブの投与は、腫瘍体積の最大低減を示した(
図13)。
【0092】
MKN28ヒト胃癌異種移植モデルを用いて、1A5および3D4抗体(抗HER3)の組み合わせでの投与が、ラパチニブ単独の投与よりも優れた腫瘍体積低減効果を有することを実証した(
図14)。両方の抗体と併せてのラパチニブの投与は、腫瘍体積の最大低減を示した(
図14)。
【0093】
HT29ヒト結腸癌異種移植モデルを用いて、1A5抗体単独の投与が、3D4抗体の投与または1A5および3D4抗体の組み合わせでの投与より最も優れた腫瘍体積低減効果を有したことを実証した(
図15)。抗体をラパチニブと併せて、抗体を組み合わせて、およびラパチニブ単独での投与が、同一のHT29ヒト結腸癌異種移植モデルにおける腫瘍体積において同様の低減をもたらした(
図16)。
【実施例5】
【0094】
膵癌細胞株に対する1A5および3D4抗体の生体外生物学的機能
1A5および3D4抗体の効果を、いくつかの膵癌細胞株において調査した。細胞株を最初に検査して、ERBBファミリータンパク質の発現および機能を判断した。全ての細胞株が高レベルのEGFRを発現し、8つの細胞株のうち5つが可変レベルのHER2を発現し、8つの細胞株のうち7つが可変レベルのHER3を発現した(
図17A)。TGF−αは、EGFR発現レベルに非依存的な差異的リン酸化反応を誘導したが、HER2またはHER3を活性化しなかった(
図17B〜17D)。NRG1は、EGFR活性化を誘導しなかったが、HER3依存的様式で、HER2およびHER3の両方を活性化することができた。全てのHER3陽性細胞株は、異なるレベルのHER3自己リン酸化を有した(
図17B〜17D)。
【0095】
膵癌細胞株を用いて、EGFR、HER2、およびHER3の自己リン酸化に対する1A5抗体の影響を調査した。エルロチニブおよびラパチニブではなく、1A5抗体が、Panc1を除くすべてのHER3陽性細胞株内のHER3の自己リン酸化を阻害した(
図18A)。エルロチニブは、全ての膵細胞株内のEGFRの自己リン酸化を阻害したが、1A5抗体は単独で、HER3依存的様式でEGFR自己リン酸化を部分的に阻害した(
図18B)。1A5抗体は、EGFRの自己リン酸化を低減することにおけるエルロチニブの阻害活性を強化することができた(
図18B)。ラパチニブは単独で、EGFRの自己リン酸化を阻害したが、1A5抗体は、ラパチニブの活性を強化することができなかった(
図18C)。1A5抗体またはラパチニブ単独で、HER2の自己リン酸化を部分的に阻害したが、1A5抗体とラパチニブの組み合わせは、HER2自己リン酸化のレベルを著しく低減した。
【0096】
膵癌細胞株を用いて、HER3およびHER2のリガンド依存的活性化に対する3D4抗体の効果も調査した。3D4抗体は、HER3のNRG1誘導のリン酸化を阻害したが、ラパチニブ単独では、HER3のNRG1誘導のリン酸化を部分的に阻害したことが示された(
図19A)。エルロチニブではなく、3D4抗体およびラパチニブの両方が、HER2のNRG1誘導のリン酸化を阻害したことがさらに示された。
【0097】
膵癌細胞株を用いて、1A5抗体、3D4抗体、または1A5および3D4抗体のエルロチニブまたはラパチニブとの組み合わせでの抗増殖効果を調査した。Panc1細胞株を除いて、1A5および3D4抗体をエルロチニブおよびラパチニブと併せて、膵癌細胞株の増殖を著しく低減したことが示された(
図20A〜20D)。
【実施例6】
【0098】
乳癌および膵癌に対する1A5および3D4抗体の生体外生物学的機能
1A5および3D4抗体の効果を、乳癌および膵癌の生体内モデルにおいて調査した。これらの研究において、乳癌および膵癌同所性異種移植片を、1A5リガンド非依存的HER3抗体および3D4リガンド依存的HER3抗体の等しい混合物を単独または化学療法薬もしくはチロシンキナーゼ阻害剤(乳癌の場合アブラキサンもしくはラパチニブ、膵癌の場合ゲムシタビン)との組み合わせからなる治療周期で処置した。予想に反して、HER3抗体単独では、HCC1187基底A乳癌異種移植片の阻害を生じなかったが、アブラキサンは成長阻害を生じた。また驚くべきことに、HER3抗体とアブラキサン(
図21)またはラパチニブ(
図22)との組み合わせが、HCC1187およびMDA−MB−468基底A異種移植片の腫瘍成長阻害を長期化した。第3の予想外の発見は、HER3抗体単独またはゲムシタビンとの組み合わせで、ゲムシタビンもしくは無処置と比較して、MIA PaCa−2ヒト膵同所性腫瘍異種移植片を担持するマウスの生存を等しく強化したことであった(
図23)。