(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149074
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】ナットのロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 17/00 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
E05B17/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-147890(P2015-147890)
(22)【出願日】2015年7月27日
(65)【公開番号】特開2017-25661(P2017-25661A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】福田 学
【審査官】
多田 春奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−163142(JP,A)
【文献】
米国特許第02240860(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第03428664(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0158791(US,A1)
【文献】
特許第5623581(JP,B2)
【文献】
米国特許第06257542(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B1/00−85/28
F16B23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結部材を締め付けるボルトとナットとの間に装着され、ナットの操作を不能とするためのロック装置であって、
前記被締結部材と前記ナットとの間に位置して前記ボルトに外挿されるスペーサリングと、ナットを包囲するようにスペーサリングを挟持し南京錠を掛け止め可能な抱持体とを具備し、
前記スペーサリングは、小径部と、前記被締結部材上に所要間隔を置いた位置において小径部の外側へ広がるフランジ部とを具備し、
前記抱持体は、装着時に前記ボルトと平行となる枢軸により互いに枢支され前記スペーサリングを挟持する閉鎖位置とこれを解放する開放位置との間で開閉自在の第1及び第2の挟持部材を具備し、
前記第1及び第2の挟持部材は、前記ボルトの軸線直交面に対して対称同一形状の一対の部材からなり、一端側において前記枢軸の軸方向に重ね合わされてそれぞれ前記枢軸を受ける軸受け部と、閉鎖位置において前記スペーサリングを挟持しかつ前記ナットを包囲するカバー部と、閉鎖位置において互いに合致して南京錠の掛け金をかけ止め可能な錠掛け孔を有する錠掛け部とを具備し、
前記第1及び第2の挟持部材の前記カバー部は、閉鎖位置において前記スペーサリングの小径部を軸周り相対回転自在に挟持する挟持部と、閉鎖位置において形成される収容空間に前記ナットを軸周り相対回転自在に受け入れ当該ナットを包囲する抱持部とを具備し、
前記抱持部は、前記第1及び第2の挟持部材が閉鎖位置にあるときに互いに接合し、前記スペーサリングの小径部に半周ずつ軸周り相対回転自在に嵌合する内周半円弧状の第1の内側フランジ部と、第1の内側フランジ部と同形状で閉鎖位置において前記ナットの上面周縁部を半周ずつ覆う内周半円弧状の第2の内側フランジ部と、両内側フランジ部の外縁間を結合する側壁部とを具備し、
前記ナットを包囲する前記収容空間は、前記第1及び第2の内側フランジ部と前記側壁部との間に形成され、
取り付け方向の180°変更に応じて、前記第1又は第2の内側フランジ部のいずれか一方が前記スペーサリングの小径部を挟持し、他方が前記ナットの上面を覆うように構成されることを特徴とするナットのロック装置。
【請求項2】
車体に固定されバッテリーを載せ受けるトレーと、このトレー上のバッテリーの上面に係止される保持部材と、一端側がトレー又は車体に係止され他端側が保持金具を貫通してねじ部が上方へ突出する締め付けロッドと、この締め付けロッドのねじ部に螺合されトレーと保持部材との間にバッテリーを締め付けるナットとを具備する車両用バッテリーの支持構造に装着されナットの操作を不能とするナットのロック装置であって、
前記ロック装置は、前記保持部材と前記ナットとの間に位置して前記締め付けロッドに外挿されるスペーサリングと、ナットを包囲するようにスペーサリングを挟持し南京錠を掛け止め可能な抱持体とを具備し、
前記スペーサリングは、小径部と、前記保持部材上に所要間隔を置いた位置において小径部の外側へ広がるフランジ部とを具備し、
前記抱持体は、装着時に前記締め付けロッドと平行となる枢軸により互いに枢支され前記スペーサリングを挟持する閉鎖位置とこれを解放する開放位置との間で開閉自在の第1及び第2の挟持部材を具備し、
前記第1及び第2の挟持部材は、それぞれ前記枢軸を受ける軸受け部と、閉鎖位置において前記スペーサリングを挟持しかつ前記ナットを包囲するカバー部と、閉鎖位置において互いに合致して南京錠の掛け金をかけ止め可能な錠掛け孔を有する錠掛け部とを具備し、
前記第1及び第2の挟持部材の前記カバー部は、閉鎖位置において前記スペーサリングの小径部を軸周り相対回転自在に挟持する挟持部と、閉鎖位置において形成される収容空間に前記ナットを軸周り相対回転自在に受け入れ当該ナットを包囲する抱持部とを具備することを特徴とする車両用バッテリーの支持構造におけるナットのロック装置。
【請求項3】
車体に固定され、バッテリーを載せ受けるトレーと、トレー上のバッテリーの上面に係止される保持部材と、一端側がトレー又は車体に係止され他端側が保持金具を貫通してねじ部が上方へ突出する締め付けロッドと、この締め付けロッドのねじ部に螺合されトレーと保持部材との間にバッテリーを締め付けるナットと、このナットとボルトとの間に装着されナットの操作を不能とするロック装置とを具備する車両用バッテリーの支持構造であって、
前記ロック装置は、前記保持部材と前記ナットとの間に位置して前記締め付けロッドのねじ部に外挿されるスペーサリングと、ナットを包囲するようにスペーサリングを挟持し南京錠を掛け止め可能な抱持体とを具備し、
前記スペーサリングは、小径部と、前記保持部材上に所要間隔を置いた位置において小径部の外側へ広がるフランジ部とを具備し、
前記抱持体は、装着時に前記締め付けロッドと平行となる枢軸により互いに枢支され前記スペーサリングを挟持する閉鎖位置とこれを解放する開放位置との間で開閉自在の第1及び第2の挟持部材を具備し、
前記第1及び第2の挟持部材は、それぞれ前記枢軸を受ける軸受け部と、閉鎖位置において前記スペーサリングを挟持しかつ前記ナットを包囲するカバー部と、閉鎖位置において互いに合致して南京錠の掛け金をかけ止め可能な錠掛け孔を有する錠掛け部とを具備し、
前記第1及び第2の挟持部材の前記カバー部は、閉鎖位置において前記スペーサリングの小径部を軸周り相対回転自在に挟持する挟持部と、閉鎖位置において形成される収容空間に前記ナットを軸周り相対回転自在に受け入れ当該ナットを包囲する抱持部とを具備することを特徴とする車両用バッテリーの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無権限者が被締め付け部材からボルト、ナットを取り外すことができないように鎖錠するナットのロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被締め付け部材へ取り付けられたボルト、ナットをいたずらに取り外すことができないようにするナットのロック装置が知られている(例えば特許文献1)。このロック装置は、被締結物とナットとの間に介設されるフランジリングと、ナットとフランジリングを挟持して施錠可能な抱持体とからなる。抱持体は、相互間を開閉自在に枢支される第1及び第2の挟持部材と、シリンダ錠と、デッドボルトとを具備する。シリンダ錠は、挟持部材に固着され、挟持部材を閉鎖位置で施錠する。挟持部材は、閉鎖位置において挟持凹部でナットとフランジリングを包囲する。デッドボルトは、挟持部材の閉鎖位置で、係合凹部に係合しロックする。デッドボルトは、キー操作でシリンダ錠を解錠すると、係合凹部から離脱し、ロックを解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−163142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のナットのロック装置は、シリンダ錠を組み込む構造であるため、部品点数が多く、また構造が複雑で、暴力的破壊に対して脆弱性を有する難点がある。
したがって、本発明は、無権限者によるボルト、ナットの取り外しを阻止するが、正当権限者による取り外し操作は容易であり、南京錠仕様で、構造が簡易かつ強固なナットのロック装置を提供することを目的としている。
また本発明は、作業車両やトラックなど、バッテリーが露出した状態で車体に固定される取り付け構造に適用するのに好適なナットのロック装置と、これを用いたバッテリーの支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明のナットのロック装置1は、被締結部材23を締め付けるボルト24とナット25との間に装着され、ナット25の操作を不能とするロック装置1であって、スペーサリング2と、南京錠4で錠止可能な抱持体3とを具備する。スペーサリング2は、被締結部材23とナット25との間に位置してボルト24に外挿される。抱持体3は、ナット25を包囲するようにスペーサリング2を挟持し、南京錠4で錠止可能である。スペーサリング2は、小径部2aと、被締結部材23上に所要間隔を置いた位置において小径部2aの外側へ広がるフランジ部2bとを具備する。抱持体3は、装着時にボルト24と平行となる枢軸5により互いに枢支され、スペーサリング2を挟持する閉鎖位置と、これを解放する開放位置との間で開閉自在の第1及び第2の挟持部材6を具備する。第1及び第2の挟持部材6は、それぞれ枢軸5を受ける軸受け部7と、閉鎖位置においてスペーサリング2を挟持し、かつナット25を包囲するカバー部8と、閉鎖位置において互いに合致して南京錠4の掛け金をかけ止め可能な錠掛け孔9aを有する錠掛け部9とを具備する。第1及び第2の挟持部材6のカバー部8は、閉鎖位置においてスペーサリング2の小径部2aを軸周り相対回転自在に挟持する挟持部8aと、閉鎖位置において形成される収容空間8bにナット25を軸周り相対回転自在に受け入れ当該ナット25を包囲する抱持部8cとを具備する。
本発明の車両用バッテリーの支持構造におけるナットのロック装置1は、車体21に固定されバッテリーBを載せ受けるトレー22と、このトレー22上のバッテリーBの上面に係止される被締結部材である保持部材23と、一端側がトレー22又は車体21に係止され他端側が保持金具23を貫通してねじ部24aが上方へ突出する締め付けロッド24と、この締め付けロッド24のねじ部24aに螺合されトレー22と保持部材23との間にバッテリーBを締め付けるナット25とを具備する車両用バッテリーの支持構造に装着され、ナット25の操作を不能とするものである。このロック装置1は、保持部材23とナット25との間に位置して締め付けロッド24に外挿されるスペーサリング2と、ナット25を包囲するようにスペーサリング2を挟持し、南京錠4を掛け止め可能な抱持体3とを具備する。スペーサリング2は、小径部2aと、保持部材23上に所要間隔を置いた位置において小径部2aの外側へ広がるフランジ部2bとを具備する。抱持体3は、装着時に締め付けロッド24と平行となる枢軸5により互いに枢支されスペーサリング2を挟持する閉鎖位置と、これを解放する開放位置との間で開閉自在の第1及び第2の挟持部材6を具備する。第1及び第2の挟持部材6は、それぞれ枢軸5を受ける軸受け部7と、閉鎖位置においてスペーサリング2を挟持し、かつナット25を包囲するカバー部8と、閉鎖位置において互いに合致し南京錠4の掛け金を挿通可能な錠掛け孔9aを有する錠掛け部9とを具備する。カバー部8は、閉鎖位置においてスペーサリング2の小径部2aを軸周り相対回転自在に挟持する挟持部8aと、閉鎖位置において形成される収容空間8bにナット25を軸周り相対回転自在に受け入れ当該ナット25を包囲する抱持部8cとを具備する。錠掛け部9に南京錠4を掛けて挟持部材6を閉鎖位置に施錠可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のナットのロック装置は、無権限者によるナットの取り外しを阻止するが、正当権限者による取り外し操作は容易であり、南京錠仕様で、構造が簡易かつ強固であり、安価に製作できる。本発明の、車両用バッテリーの支持構造に適用されるナットのロック装置は、広汎な車種に適用可能な汎用性があり、既製車両のバッテリーの支持部に後付けで装着でき、バッテリーの盗難防止に大きな効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るナットのロック装置を車両用バッテリーの支持構造に適用した状態の正面図である。
【
図2】
図1のナットのロック装置の分解斜視図である。
【
図3】
図1のナットのロック装置のアンロック状態の平面図である。
【
図4】
図1のナットのロック装置のロック状態の平面図である。
【
図6】
図1のナットのロック装置における抱持体の正面図である。
【
図7】
図1のナットのロック装置における抱持体の平面図である。
【
図8】
図1のナットのロック装置における抱持体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のナットのロック装置を車両用バッテリーの支持構造に適用した実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0009】
図1において、車両用バッテリーの支持構造は、車体に固定されバッテリーBを載せ受けるトレー22と、このトレー22上のバッテリーBの上面に係止される被締結部材である保持部材23と、一端側がトレー22又は車体に係止され他端側が保持部材23を貫通してねじ部24aが上方へ突出する締め付けロッド(ボルト)24と、このボルト24のねじ部24aに螺合されトレー22と保持部材23との間にバッテリーBを締め付けるナット25とを具備する。
【0010】
ナット25のロック装置1は、ボルト24に装着され、ナット25の操作を不能とするもので、スペーサリング2と、抱持体3とを具備する。
スペーサリング2は、被締結部材である保持部材23とナット25との間に位置してボルト24に外挿される。スペーサリング2は、小径部2aと、保持部材23上に所要間隔を置いた位置において小径部2aの外側へ広がる上部フランジ部2bと、保持部材23に当接する下部フランジ部2cとを具備する。
【0011】
抱持体3は、ナット25を包囲するようにスペーサリング2を挟持して南京錠4で錠止可能である。抱持体3は、ボルト24への装着時に締め付けボルト24と平行となる枢軸5により互いに枢支される第1及び第2の挟持部材6を具備する。第1及び第2の挟持部材6は、ボルト24の軸線直交面に対して対称同一形状の一対の部材からなる。
【0012】
挟持部材6は、スペーサリング2を挟持する閉鎖位置と、これを解放する開放位置との間で開閉自在である。挟持部材6は、軸受け部7と、カバー部8と、錠掛け部9とを具備する。軸受け部7は、互いに重なって枢軸5を受ける。カバー部8は、閉鎖位置においてスペーサリング2を挟持し、かつナット25を包囲する。錠掛け部9は、閉鎖位置において互いに合致する錠掛け孔9aを有する。
【0013】
カバー部8は、閉鎖位置においてスペーサリング2の小径部2aを軸周り相対回転自在に挟持する挟持部8aと、閉鎖位置において形成される収容空間8bにナット25を軸周り相対回転自在に受け入れ、これを包囲する抱持部8cとを具備する。
【0014】
軸受け部7は、一端側において枢軸5の軸方向に重ね合わされて当該枢軸5を受ける。
【0015】
抱持部8cは、第1及び第2の挟持部材6が閉鎖位置にあるとき、互いに接合し、スペーサリング2の小径部2aに半周ずつ軸周り相対回転自在に嵌合し、挟持部8aを構成する内周半円弧状の第1の内側フランジ部8dと、これと同形状で閉鎖位置においてナット25の上面周縁部を半周ずつ覆う内周半円弧状の第2の内側フランジ部8eと、両内側フランジ部8d、8eの外縁間を結合する側壁部8fとを具備する。ナット25を包囲する収容空間8bは、内側フランジ部8d、8eと側壁部8fとの間に形成される。したがって、抱持体3の取り付け方向を180°変更すると、それに応じて、第1又は第2の内側フランジ部8d、8eのいずれか一方がスペーサリング2の小径部2aを挟持し、他方がナット25の上面を覆うように構成される。
【0016】
図5に示すように、保持部材23から突出したボルト24のねじ部24aに、スペーサリング2とワッシャ26を介在させて、ナット25を螺合する。抱持体3を装着するとき、
図3に示すように、挟持部材6を開き、間にスペーサリング22とナット25を配置し、
図4に示すように、両者間を閉鎖すると、内側フランジ部8dがスペーサリング2の小径部2aに嵌合し、フランジ部2b,ワッシャ26,ナット25が収容空間8b内に受け入れられ、外側から操作工具を掛けることができないように被覆される。この状態で、錠掛け部9の錠掛け孔9aに南京錠の掛け金を掛けて施錠する。南京錠4をキーの操作で解錠しない限り、ナット25を緩めることができない。
【0017】
このナットのロック装置1は、無権限者によるナット25の取り外しを有効に阻止する。南京錠仕様で、構造が簡易かつ強固であり、安価に製作できる。車両用バッテリーの支持構造に適用されるナットのロック装置1は、広汎な車種に適用可能な汎用性があり、既製車両のバッテリーの支持部に後付けで装着でき、バッテリーの盗難防止に大きな効果を発揮する。一対の挟持部材6は同一形状であるから製作容易である。
【0018】
なお、このロック装置1は、車両用バッテリーの支持構造への適用のほか、被締結部材をボルト、ナットで締め付ける他の一般の締結箇所に適用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 ロック装置
2 スペーサリング
2a 小径部
2b 上部フランジ部
2c 下部フランジ部
3 抱持体
4 南京錠
5 枢軸
6 挟持部材
7 軸受け部
8 カバー部
8a 挟持部
8b 収容空間
8c 抱持部
8d 第1のフランジ部(挟持部)
8e 第2の内側フランジ部
8f 側壁部
9 錠掛け部
9a 錠掛け孔
21 車体
22 トレー
23 保持部材
24 ボルト(締め付けロッド)
24a ねじ部
25 ナット
26 ワッシャ
B バッテリー