特許第6149075号(P6149075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6149075電子写真機器用クリーニングブレード用組成物および電子写真機器用クリーニングブレード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149075
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】電子写真機器用クリーニングブレード用組成物および電子写真機器用クリーニングブレード
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20170607BHJP
   C08L 75/06 20060101ALI20170607BHJP
   C08L 83/12 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   G03G21/00 318
   C08L75/06
   C08L83/12
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-150265(P2015-150265)
(22)【出願日】2015年7月30日
(65)【公開番号】特開2017-32670(P2017-32670A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2017年4月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 新平
(72)【発明者】
【氏名】荒田 利彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 政典
(72)【発明者】
【氏名】竹山 可大
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−201277(JP,A)
【文献】 特開平09−218624(JP,A)
【文献】 特開平08−292694(JP,A)
【文献】 特開2001−075451(JP,A)
【文献】 特開2003−140519(JP,A)
【文献】 特開2004−279591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエステルポリオール、(b)ポリイソシアネート、(c)変性シリコーンオイル、を含有し、
前記(c)変性シリコーンオイルが、ポリシロキサンブロックと、アルキレンオキサイドブロックと、を含み、前記アルキレンオキサイドブロックの水酸基が保護基で保護されており、水酸基を含まない変性シリコーンオイルであることを特徴とする電子写真機器用クリーニングブレード用組成物。
【請求項2】
前記保護基が、アシル系保護基またはエーテル系保護基であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用クリーニングブレード用組成物。
【請求項3】
前記(c)変性シリコーンオイルの含有量が、組成物全体の0.01〜50質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用クリーニングブレード用組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のウレタン組成物の成形体からなり、ポリウレタンエラストマーおよび前記(c)変性シリコーンオイルを含有することを特徴とする電子写真機器用クリーニングブレード。
【請求項5】
表面側部分におけるイソシアヌレート結合の量が、前記表面側部分よりも内部の内部側部分におけるイソシアヌレート結合の量よりも多くなっていることを特徴とする請求項4に記載の電子写真機器用クリーニングブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用クリーニングブレード用組成物および電子写真機器用クリーニングブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において、感光ドラムの外周面上に残留するトナーを除去するためのクリーニングブレードが設けられている。
【0003】
クリーニングブレードは、感光ドラムの外周面に接触するブレード部分がポリウレタン組成物で形成されている。ブレード部分の先端部は、回転する感光ドラムの外周面上を摺動し、これにより感光ドラムの外周面上に残留するトナーを除去する。
【0004】
クリーニングブレードのブレード部分を形成するポリウレタン組成物としては、オルガノポリシロキサンを含有するポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネートとから得られるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−186366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クリーニングブレードでは、回転する感光ドラムの外周面上を摺動するブレード部分の先端部において、摩耗、欠け、めくれなどの不具合が発生しないことが求められる。また、感光ドラムの外周面に接触するブレード部分の成分が感光ドラムを汚染しないことが求められる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、摩耗、欠け、めくれ、汚染が抑えられる電子写真機器用クリーニングブレード用組成物および電子写真機器用クリーニングブレードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係る電子写真機器用クリーニングブレード用組成物は、(a)ポリエステルポリオール、(b)ポリイソシアネート、(c)変性シリコーンオイル、を含有し、前記(c)変性シリコーンオイルが、ポリシロキサンブロックと、アルキレンオキサイドブロックと、を含み、前記アルキレンオキサイドブロックの水酸基が保護基で保護されており、水酸基を含まない変性シリコーンオイルであることを要旨とするものである。
【0009】
前記保護基は、アシル系保護基またはエーテル系保護基であることが好ましい。前記(c)変性シリコーンオイルの含有量は、組成物全体の0.01〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0010】
本発明に係る電子写真機器用クリーニングブレードは、上記本発明に係るウレタン組成物の成形体からなり、ポリウレタンエラストマーおよび前記(c)変性シリコーンオイルを含有することを要旨とするものである。
【0011】
本発明に係る電子写真機器用クリーニングブレードにおいては、表面側部分におけるイソシアヌレート結合の量が、前記表面側部分よりも内部の内部側部分におけるイソシアヌレート結合の量よりも多くなっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電子写真機器用クリーニングブレード用組成物および電子写真機器用クリーニングブレードによれば、摩耗、欠け、めくれ、汚染が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用クリーニングブレードの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用クリーニングブレードが回転する感光ドラムの外周面上を摺動する様子を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
本発明に係る電子写真機器用クリーニングブレード用組成物(以下、本組成物ということがある)は、(a)ポリエステルポリオール、(b)ポリイソシアネート、(c)変性シリコーンオイル、を含有するウレタン組成物からなる。(a)ポリエステルポリオールおよび(b)ポリイソシアネートから、ポリウレタンエラストマーが形成される。
【0016】
(a)ポリエステルポリオールは、多塩基性有機酸とポリオールとから得られ、水酸基を末端基とするものを好適なものとして挙げることができる。ポリウレタンエラストマーを形成するためのポリオールとしてポリエステルポリオールを用いることで、耐久に必要な耐摩耗性を確保することができる。多塩基性有機酸は、特に限定されるものではないが、シュウ酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,スベリン酸,アゼライン酸,セバシン酸,イソセバシン酸等の飽和脂肪酸、マレイン酸,フマル酸等の不飽和脂肪酸、フタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸等の芳香族酸等のジカルボン酸、無水マレイン酸,無水フタル酸等の酸無水物、テレフタル酸ジメチル等のジアルキルエステル、不飽和脂肪酸の二量化によって得られるダイマー酸等が挙げられる。多塩基性有機酸とともに用いられるポリオールとしては、特に限定するものではなく、例えば、エチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,ブチレングリコール,ネオペンチルグリコール,1,6−ヘキシレングリコール等のジオール、トリメチロールエタン,トリメチロールプロパン,ヘキサントリオール,グリセリン等のトリオール、ソルビトール等のヘキサオール等が挙げられる。
【0017】
(a)ポリエステルポリオールとしては、具体的には、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキシレンアジペート(PHA)、エチレンアジペートとブチレンアジペートとの共重合体(PEA/BA)などをより好適なものとして挙げることができる。これらは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、耐摩耗性の向上、耐久性の向上などの観点から、ポリブチレンアジペート(PBA)が特に好ましい。
【0018】
(a)ポリエステルポリオールは、数平均分子量1000〜3000のものが好ましい。ポリウレタンエラストマーの粘弾性の指標となるtanδピーク温度、tanδピーク値を調整して、物性確保、成形性の向上が得られやすい。この観点から、その数平均分子量はより好ましくは1500〜2500の範囲内である。
【0019】
(b)ポリイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、カルボジイミド変性MDI、ポリメチレンフェニルイソシアネート(PAPI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、リジンジイソシアネートメチルエステル(LDI)、ジメチルジイソシアネート(DDI)などを挙げることができる。これらは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、耐摩耗性の向上、取扱いやすさ、入手容易、コストなどの観点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が特に好ましい。
【0020】
(b)ポリイソシアネートは、上記するMDIなどのポリイソシアネートと(a)ポリエステルポリオールのポリエステルポリオールとを反応させて得られるNCO末端のウレタンプレポリマーを用いてもよい。(b)ポリイソシアネートとして用いられるウレタンプレポリマーは、NCO末端とするため、NCO%が5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。NCO%は、下記の式で算出される。
【数1】
【0021】
(b)ポリイソシアネートの配合量は、耐摩耗性の向上を図りやすい、強度を確保しやすい、ヘタリにくいなどの観点から、NCOインデックス(イソシアネートインデックス)が110以上となるように設定することが好ましい。NCOインデックスは、より好ましくは115以上、さらに好ましくは120以上、125以上、130以上である。一方、硬くなりすぎない、低温下でクリーニング性を満足する、成形しやすいなどの観点から、NCOインデックスが160以下となるように設定することが好ましい。NCOインデックスは、より好ましくは155以下、さらに好ましくは150以下、145以下である。NCOインデックスは、イソシアネート基と反応する活性水素基(水酸基、アミノ基など)の合計当量100に対するイソシアネート基の当量として算出する。
【0022】
(c)変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンブロックと、アルキレンオキサイドブロックと、を含み、アルキレンオキサイドブロックの水酸基が保護基で保護されており、水酸基を含まない変性シリコーンオイルである。アルキレンオキサイドブロックによる変性は、シリコーンオイルのポリシロキサン鎖の末端が変性された末端型(ポリシロキサン鎖の末端にアルキレンオキサイドブロックを有する変性)であってもよいし、ポリシロキサン鎖に対する側鎖が変性された側鎖型(ポリシロキサン鎖に対する側鎖にアルキレンオキサイドブロックを有する変性)であってもよい。また、ポリシロキサン鎖の末端およびポリシロキサン鎖に対する側鎖の両方が変性された側鎖末端型であってもよい。末端型においては、ポリシロキサン鎖の片末端が変性された片末端型、両末端が変性された両末端型のいずれであってもよい。
【0023】
ポリシロキサンは、有機基を有する(オルガノポリシロキサンである)。有機基は、1価の置換または非置換の炭化水素基である。非置換の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、β−フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基などのアラルキル基などが挙げられる。置換の炭化水素基としては、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などが挙げられる。ポリシロキサンとしては、有機基としてメチル基を有するものが、合成のしやすさ等から好ましい。具体的には、ジメチルシロキサンを繰り返し単位とするポリジメチルシロキサンが好ましい。ポリシロキサンは、直鎖状のものが好ましいが、分岐状もしくは環状のものであっても良い。
【0024】
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。(c)変性シリコーンオイルに含まれるアルキレンオキサイドブロック中のアルキレンオキサイドの繰り返し単位数は、1であってもよいし、2以上であってもよい。ポリウレタンエラストマーとの相溶性などの観点から、アルキレンオキサイドの繰り返し単位数は、2以上が好ましい。より好ましくは3以上である。
【0025】
アルキレンオキサイドブロックの水酸基の保護基としては、エーテル系保護基、アシル系保護基、アセタール系保護基、シリルエーテル系保護基などが挙げられる。これらのうちでは、ポリウレタンエラストマーとの相溶性の向上などの観点から、エーテル系保護基、アシル系保護基が好ましい。
【0026】
エーテル系保護基は、水酸基をエーテル化する保護基であり、メチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、tert−ブチル基などが挙げられる。アシル系保護基は、水酸基をアシル化する保護基であり、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基などが挙げられる。アセタール系保護基は、水酸基をアセタール化する保護基であり、メトキシメチル基、2−テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基などが挙げられる。シリルエーテル系保護基は、シリルエーテル化する保護基であり、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
【0027】
(c)変性シリコーンオイルは、ウレタン組成物において、シリコーンオイル成分として含まれる。(a)ポリエステルポリオールの構造中にシリコーン構造が組み込まれたものや、(b)ポリイソシアネートとしてのNCO末端のウレタンプレポリマーの構造中にシリコーン構造が組み込まれたもの(例えばウレタンプレポリマーを形成するポリオールとしてOH基含有シリコーンオイルが用いられたもの)などは除かれる。
【0028】
(c)変性シリコーンオイルの構造式の好適な一例を以下に示す。式(1)は、ポリシロキサンブロックが直鎖状であり、ポリシロキサン鎖の片末端が変性された片末端型である。式(2)は、ポリシロキサンブロックが直鎖状であり、ポリシロキサン鎖に対する側鎖が変性された側鎖型である。
【化1】
【化2】
【0029】
式(1)(2)において、n,m,a,b,cはそれぞれ繰り返し単位数を表し、n,mおよびaは1以上の整数であり、bおよびcは0または1以上の整数である。R1〜R7は、上記ポリシロキサンの有機基であり、1価の置換または非置換の炭化水素基である。R1〜R7は、全てが同じ有機基であってもよいし、互いに異なるあるいは一部が異なる有機基であってもよい。A,B,Cは、アルキレン基であり、全てが同じアルキレン基であってもよいし、互いに異なるあるいは一部が異なるアルキレン基であってもよい。Xは、アルキレンオキサイドブロックの水酸基の保護基であり、エーテル系保護基、アシル系保護基、アセタール系保護基、シリルエーテル系保護基などであり、アルキル基、アシル基などが挙げられる。
【0030】
(c)変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンブロックを含むことで、クリーニングブレードの摩擦係数を小さくし、摺動時の摩擦力を小さくしてクリーニングブレードの摩耗を抑える効果を発揮する。また、アルキレンオキサイドブロックを含むことで、クリーニングブレードのポリウレタンマトリックスとの相溶性が良くなり、ブリードによる汚染を抑える効果を発揮する。また、アルキレンオキサイドブロックの水酸基が保護基で保護されており、水酸基を含まないことで、クリーニングブレードのポリウレタンマトリックスと反応しないため、クリーニングブレードの内部に取り込まれないで、所望の機能を十分に発揮する。
【0031】
(c)変性シリコーンオイルは、数平均分子量が1000〜8000であることが好ましい。より好ましくは2000〜4000である。数平均分子量が1000以上であると、分子量が小さすぎず、ブリードによる汚染が抑えられやすい。数平均分子量が8000以下であると、分子量が大きすぎず、クリーニングブレードのポリウレタンマトリックスとの相溶性が良く、ブリードによる汚染が抑えられやすい。
【0032】
(c)変性シリコーンオイルの含有量は、クリーニングブレードの摩擦係数を小さくするという添加効果を十分に発揮できるなどの観点から、組成物全体の0.01質量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。また、ブリードによる汚染を抑えやすいなどの観点から、組成物全体の50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0033】
本組成物には、上記の(a)〜(c)成分に加えて、鎖延長剤、架橋剤、触媒、発泡剤、界面活性剤、難燃剤、着色剤、充填剤、可塑剤、安定剤、離型剤等を含有させてもよい。
【0034】
鎖延長剤は、ポリウレタンと反応可能な、ジオールやジアミンなどの2官能の化合物である。数平均分子量300以下のものが好ましい。鎖延長剤としては、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、エチレングリコール(EG)、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、トリエチレングリコールなどのジオールや、2,2‘,3,3’−テトラクロロ−4,4‘−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4‘−ジフェニルメタン、トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、4,4’−ジアミノ−3,3‘−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、ポリウレタンエラストマーの国際ゴム硬さ、ポリウレタンエラストマーの粘弾性の指標となるtanδピーク温度、tanδピーク値を調整して、物性確保、成形性の向上が得られやすいなどの観点から、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、エチレングリコール(EG)、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)などが好適である。
【0035】
架橋剤は、ポリウレタンと反応可能な、トリオールやトリアミンなどの3官能以上の化合物である。数平均分子量300以下のものが好ましい。架橋剤としては、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、ポリウレタンエラストマーの国際ゴム硬さ、ポリウレタンエラストマーの粘弾性の指標となるtanδピーク温度、tanδピーク値を調整して、物性確保、成形性の向上が得られやすいなどの観点から、トリメチロールプロパン(TMP)などが好適である。
【0036】
触媒としては、特に限定はなく、例えば、第三級アミン等のアミン系化合物、有機錫化合物等の有機金属化合物等があげられる。第三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン等のテトラアルキルジアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミノアルコール、エトキシル化アミン,エトキシル化ジアミン,ビス(ジエチルエタノールアミン)アジペート等のエステルアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等のシクロヘキシルアミン誘導体、N−メチルモルホリン,N−(2−ヒドロキシプロピル)−ジメチルモルホリン等のモルホリン誘導体、N,N′−ジエチル−2−メチルピペラジン,N,N′−ビス−(2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルピペラジン等のピペラジン誘導体等が挙げられる。また、有機錫化合物としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキソエート)等のジアルキル錫化合物や、2−エチルカプロン酸第1錫、オレイン酸第1錫等が挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、加水分解しにくい、ブリードによる汚染が少ないなどの観点から、トリエチレンジアミン(TEDA)が好適に用いられる。
【0037】
以上の構成の本組成物を所定の形状に成形することで、本発明に係る電子写真機器用クリーニングブレード(以下、本ブレードということがある)が得られる。本発明の一実施形態に係る電子写真機器用クリーニングブレード10は、図1に示すように、ブレード部12を備える。ブレード部12には、ブレード部12を保持する保持部14が取り付けられている。ブレード部12は、本組成物を所定の形状に成形して形成される。ブレード部12は、平板状の形状をしている。保持部14は、断面L字状の金属金具などからなる。図2に示すように、ブレード部12は、その先端部12aで感光ドラム20の外周面20aに接触し、回転する感光ドラム20の外周面20a上を摺動する。これにより、感光ドラム20の外周面20a上に残留するトナーを除去する。
【0038】
本組成物は、(c)変性シリコーンオイルを含むことで、本ブレードの摩擦係数を小さくし、摺動時の摩擦力を小さくして本ブレードの摩耗を抑える効果を発揮する。このため、ポリウレタンエラストマーを硬くして摩耗を抑える必要がない。したがって、柔軟性を維持しつつ本ブレードの摩擦係数を小さくすることができる。また、ポリウレタンエラストマーを硬くしなくてよいため、脆くなることによる欠けが抑えられる。一方、ポリウレタンエラストマーが柔軟であると、本ブレードの接触面積が大きくなり、また柔らかいため、感光ドラムの外周面上で摺動するときに接触部分でめくれが生じやすい。しかし、本組成物が(c)変性シリコーンオイルを含むことで、本ブレードの摩擦係数を小さくしているため、柔軟であってもめくれが抑えられる。そして、(c)変性シリコーンオイルは、アルキレンオキサイドブロックによってポリウレタンエラストマーとの相溶性に優れるため、ブリードによる汚染も抑えられる。また、(c)変性シリコーンオイルは、アルキレンオキサイドブロックの水酸基が保護基で保護されており、(c)変性シリコーンオイルは水酸基を含まない変性シリコーンオイルであり、本ブレードのポリウレタンマトリックスと反応しないため、本ブレードの内部に取り込まれないで、所望の機能を十分に発揮する。
【0039】
本ブレードは、摩耗、めくれを抑えるなどの観点から、動摩擦係数が0.90未満であることが好ましい。より好ましくは0.89以下、さらに好ましくは0.85以下である。また、摩耗、めくれを抑えるなどの観点から、硬度は60以上であることが好ましい。より好ましくは65以上、さらに好ましくは70以上である。一方、本ブレードの欠けを抑えるなどの観点から、硬度は90以下であることが好ましい。より好ましくは85以下、さらに好ましくは80以下である。動摩擦係数μkは、表面に厚み150μmのPETシートが配置された金属製の板部材に、クリーニングブレードを押し当て(押し当て角度θ:60°、押し当て力:1N/cm)、クリーニングブレードを2.5mm/秒の速度で移動させて測定する。硬度は、JIS K 6253に準拠し、ウォーレス(H.W.WALLACE)社製のウォーレス測微硬度計を用いて、25℃、50%RHの測定条件下、国際ゴム硬さ試験法M法にて、国際ゴム硬さを測定する。動摩擦係数は、(c)変性シリコーンオイルの種類、配合量、ポリウレタンエラストマーの種類、硬度などで所望の値に調整することができる。硬度は、ポリウレタンエラストマーの種類、組成などで所望の値に調整することができる。
【0040】
本ブレードは、本組成物を用い、プレポリマー法、セミワンショット法、ワンショット法等の常法に準じて製造することができる。例えば次のようにして製造することができる。まず、(a)ポリエステルポリオールおよび(b)ポリイソシアネートを準備し、両者を所定の割合(NCO%)で配合し、所定の反応条件で反応させてウレタンプレポリマー(主剤液)を調製する。一方、(a)ポリエステルポリオール、(c)変性シリコーンオイルおよび必要に応じて鎖延長剤、触媒等を準備し、これらを所定の割合で配合し、所定の条件で混合して硬化剤液を調製する。次に、主剤液および硬化剤液が所定のNCOインデックスとなるよう所定の割合で配合し混合してなるウレタン組成物を、保持具が装着されたクリーニングブレード成形用金型内に注入して反応硬化させる。得られたウレタン組成物の硬化体をクリーニングブレード成形用金型から取り出し、所定の形状に加工する。このようにして、図1に示すような、保持部と一体成形されたウレタン組成物の硬化体からなるブレード部を備えた本ブレードが得られる。
【0041】
本ブレードにおいては、本組成物のNCOインデックスを100よりも高めに設定することで、ポリウレタンエラストマー中のイソシアヌレート結合を多くし、これによって耐摩耗性を向上させることができる。この際、本ブレード全体にわたって均一にイソシアヌレート結合を多くすると、全体的に硬くなりすぎて、脆くなることによる欠けの問題が生じやすくなる。そこで、本ブレードにおいては、表面側部分におけるイソシアヌレート結合の量が、表面側部分よりも内部の内部側部分におけるイソシアヌレート結合の量よりも多くなっていることが好ましい。例えば、クリーニングブレード成形用金型の内面(型面)に上記触媒を塗布し、この金型にポリウレタン組成物を注入することで、表面側部分のイソシアヌレート化を内部側部分よりも多く進行させ、表面側部分におけるイソシアヌレート結合の量を、内部側部分におけるイソシアヌレート結合の量よりも多くすることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0043】
使用した材料の詳細を以下に示す。
<ポリオール>
・PBA(ポリブチレンアジペート):日本ポリウレタン工業製「ニッポラン4010」、数平均分子量Mn=2000
・PEA/BA(エチレンアジペート/ブチレンアジペート共重合体):日本ポリウレタン工業製「ニッポラン4042」、数平均分子量Mn=2000
・PEA(ポリエチレンアジペート):日本ポリウレタン工業製「ニッポラン4040」、数平均分子量Mn=2000
・PHA(ポリヘキシレンアジペート):日本ポリウレタン工業製「ニッポラン4073」、数平均分子量Mn=2000
・PTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール):三菱化学製「PTMG2000」、数平均分子量Mn=2000
<ポリイソシアネート>
・MDI(4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート):日本ポリウレタン工業製「ミリオネートMT」
<鎖延長剤>
・1,4BD(1,4−ブタンジオール):三菱化学製
・EG(エチレングリコール):三菱化学製
・1,6HD(1,6−ヘキサンジオール):関東化学製
<架橋剤>
・TMP(トリメチロールプロパン):三菱ガス化学製
<触媒>
・TEDA(トリエチレンジアミン):東ソー製
<低摩擦化剤>
・SH8400:東レ・ダウ製、ポリエーテル変性シリコーンオイル、側鎖型、アシル基末端
・FZ−2110:東レ・ダウ製、ポリエーテル変性シリコーンオイル、側鎖型、アルコキシ基末端
・ジメチルプロピレンジグリコール(DMPDG):日本乳化剤製
・SF8416:東レ・ダウ製、アルキル変性シリコーンオイル、アルキル基末端
・SH3773M:東レ・ダウ製、メチルポリシロキサン/ポリオキシエチレン共重合体(ポリエーテル変性シリコーンオイル)、OH基末端
・X−22−176DX:信越化学工業製、片末端反応性シリコーンオイル、OH基末端
【0044】
(実施例1〜13、比較例1〜5)
<主剤(ウレタンプレポリマー)の調製>
表1、2に示す配合割合(質量部)、NCO%となるように、ポリオールとポリイソシアネートとを混合し、Nパージ下で80℃で180分間反応させることにより、主剤(NCO末端ウレタンプレポリマー)を調製した。
【0045】
<硬化剤の調製>
表1、2に示す配合割合(質量部)、OH価となるように、ポリオール、鎖延長剤、架橋剤、触媒、低摩擦化剤を混合することにより、硬化剤を調製した。
【0046】
<ウレタン組成物の調製>
表1、2に示すNCOインデックスとなるように、真空雰囲気下、主剤(ウレタンプレポリマー)と硬化剤とを60℃で1分間混合し、十分に脱泡した。これにより、ウレタン組成物を調製した。
【0047】
<クリーニングブレードの作製>
クリーニングブレード用成形型内に板状保持具を配置し、ウレタン組成物を成形型内に注入し、成形型を130℃に加熱してウレタン組成物を硬化させ、脱型することによりクリーニングブレードを作製した。
【0048】
作製した各クリーニングブレードについて、硬度、動摩擦係数を測定し、ブリード、めくれ、欠けについての評価を行った。配合組成ととともに測定・評価の結果を表1,2に示す。
【0049】
(硬度)
JIS K 6253に準拠し、ウォーレス(H.W.WALLACE)社製のウォーレス測微硬度計を用いて、25℃、50%RHの測定条件下、国際ゴム硬さ試験法M法にて、国際ゴム硬さを測定した。
【0050】
(動摩擦係数)
表面に厚み150μmのPETシートが配置された金属製の板部材に、クリーニングブレードを押し当て(押し当て角度θ:60°、押し当て力:1N/cm)、クリーニングブレードを2.5mm/秒の速度で移動させて、動摩擦係数μkを測定した。
【0051】
(ブリード)
作製したクリーニングブレードを50℃95%RH環境に7日投入した後、表面を拡大観察し、投入前と後でのブリード物の有無を判定した。投入前後で差が無いのを「A」とし、差があるものを「C」とした。
【0052】
(めくれ)
トナーを抜き取った市販のレーザープリンタ(日本ヒューレット・パッカード社製、「Laser Jet P3015dn」)のカートリッジに各クリーニングブレードを組み込み、32℃×85%RHの環境下で30秒間、感光ドラムを回転させた。カートリッジ内のトナーは、通常であれば潤滑機能を果たし、初期(30秒間)のめくれは発生しにくい。トナーを抜き取った状態では、初期のめくれが発生しやすい。めくれが発生しやすい状況において、30秒間クリーニングブレードのめくれが発生しなかった場合を特に良好「A」、15秒以上クリーニングブレードのめくれが発生しなかった場合を良好「B」、15秒以内でクリーニングブレードのめくれが発生した場合を不良「C」とした。
【0053】
(欠け)
市販のレーザープリンタ(日本ヒューレット・パッカード社製、「Laser Jet P3015dn」)のカートリッジに各クリーニングブレードを組み込み、23℃×50%RHの環境下で、A4サイズで12000枚の画像出力(画像:2%濃度の横線画像)を行った。12000枚印刷後に、黒、ハーフトーン、白の画像を印刷し、画像を確認した。12000枚印刷後の画像に、「欠け」に起因して発生するスジ・汚れの欠陥がなかった場合を特に良好「A」、スジがわずかに見られたが許容範囲内であった場合を良好「B」、スジ・汚れの欠陥があり、許容範囲外であった場合を不良「C」とした。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
比較例1では、シリコーンオイルを配合していない。比較例1では、クリーニングブレードの動摩擦係数が大きく、めくれが抑えられない。また、動摩擦係数が大きいことにより欠けも発生し、画像が悪化している。比較例2では、シリコーンオイルを配合しているが、アルキレンオキサイドブロックを含んでいないシリコーンオイルであるため、マトリックスポリマーであるポリウレタンエラストマーとの相溶性が悪く、ブリードが発生している。また、初期はめくれないが、シリコーンオイルが一度に出てしまい、末期ではめくれが抑えられない。比較例3では、シリコーンオイルを配合し、アルキレンオキサイドブロックを含むシリコーンオイルであるが、末端に反応性の水酸基を含むシリコーンオイルであるため、反応によってポリウレタンエラストマーの構造中にシリコーン構造が組みこまれている。このため、クリーニングブレードの動摩擦係数が大きく、めくれが抑えられない。比較例4では、シリコーンオイルを配合し、アルキレンオキサイドブロックを含まないシリコーンオイルであるが、末端に反応性の水酸基を含むシリコーンオイルであるため、反応によってポリウレタンエラストマーの構造中にシリコーン構造が組みこまれている。このため、クリーニングブレードの動摩擦係数が大きく、めくれが抑えられない。比較例5では、ポリオールがポリエステルポリオールではなくポリエーテルポリオールであるため、耐久性に劣り、摩耗、欠けが発生している。また、クリーニングブレードの動摩擦係数も大きい。
【0057】
これに対し、実施例では、配合されるシリコーンオイルが、ポリシロキサンブロックと、アルキレンオキサイドブロックと、を含み、アルキレンオキサイドブロックの水酸基が保護基で保護されており、水酸基を含まない変性シリコーンオイルである。これにより、ポリウレタンエラストマーを硬くしなくてもクリーニングブレードの動摩擦係数が小さく抑えられている。また、配合されるシリコーンオイルが、ポリウレタンエラストマーとの相溶性に優れる。よって、摩耗、欠け、めくれ、ブリードによる汚染が抑えられている。
【0058】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 クリーニングブレード
12 ブレード部
14 保持部
図1
図2