特許第6149079号(P6149079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6149079ガスケットおよびこれを用いた排気管接続構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149079
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】ガスケットおよびこれを用いた排気管接続構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/12 20060101AFI20170607BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20170607BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   F16J15/12 D
   F01N13/08 E
   B60K13/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-171040(P2015-171040)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-48824(P2017-48824A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】591043994
【氏名又は名称】旭プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100107180
【弁理士】
【氏名又は名称】玄番 佐奈恵
(72)【発明者】
【氏名】久野 博
(72)【発明者】
【氏名】久野 好浩
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−127757(JP,U)
【文献】 特開2001−208203(JP,A)
【文献】 特開平10−002420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/12
F01N 13/08
B60K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材をメタルジャケット蓋部材およびメタルジャケット本体部材で包み込んでなる、全被覆形のメタルジャケット型ガスケットであって、
略中央に設けられた開口部と、ボルト穴とを有し、
メタルジャケット本体部材の折り返しにより、開口部を囲むグロメットAが形成されており、
前記グロメットAが、別の金属薄板により形成されたグロメットBにより覆われており、
別の金属薄板により、ボルト穴を囲むグロメットCが形成されており
前記グロメットAを形成する前記メタルジャケット本体部材の折り返し部分が、前記メタルジャケット蓋部材と重なっており、
前記グロメットCを形成する前記別の金属薄板が、前記メタルジャケット本体部材および前記メタルジャケット蓋部材と重なっており、
ガスケットの外縁部にて、前記メタルジャケット本体部材が折り返されて前記メタルジャケット蓋部材と重なっている、
メタルジャケット型ガスケット。
【請求項2】
グロメットBがメタルジャケット型ガスケットの一方の面にて1〜20mmの幅dを有し、他方の面にて0.5〜5mmの幅d’を有する、請求項1に記載のメタルジャケット型ガスケット。
【請求項3】
より高い温度の排気が通過する一または複数の高温排気管Aと、より低い温度の排気が通過する一または複数の低温排気管Bとを、フランジおよびガスケットを介して一つの排気管Cに接続する排気管接続構造であって、
フランジは、そのフランジ面が重力が作用する方向と平行な面との間で0°〜75°の角度αをなすように配置されており、
ガスケットが、請求項1または2に記載のメタルジャケット型ガスケットであり、
フランジ面を重力が作用する方向と平行となるように角度αだけ傾けたときに、フランジ面において、重力が作用する方向を下向き、および重力が作用する方向と直交する方向を左右方向としたときに、
少なくとも一つの高温排気管Aが少なくとも前記一つの排気管Cへの出口部分にて、フランジ面に対して垂直な線に対して、下向きに0°より大きく60°以下の角度で、および/または左向きもしくは右向きに、0°より大きく30°以下の角度で傾斜しており、ならびに/あるいは
少なくとも一つの低温排気管Bが少なくとも前記一つの排気管Cへの出口部分にて、フランジ面に対して垂直な線に対して、上向きに0°より大きく60°以下の角度で、および/または左向きもしくは右向きに、0°より大きく30°以下の角度で傾斜している、
排気管接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一に高熱に曝される場合でも劣化が生じにくい、高耐熱性のメタルジャケット型ガスケットおよびこれを用いた排気管接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャー等を使用する内燃機関等、高い温度の流体を通過させる管を、別の管に接続する部分で用いるガスケットに対しては、高い耐熱性が求められる。そこで、出願人は、900℃以上の高温での使用に耐えうるメタルジャケット型ガスケットを既に提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5031659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタルジャケット型ガスケット(以下、単に「ガスケット」とも呼び、本明細書において特に断りのない限り、「ガスケット」はメタルジャケット型ガスケットを指す)は、芯材が薄い金属板で覆われた構成を有する。メタルジャケット型ガスケットの一例を図11に示す。図11に示すガスケットは、全面座管フランジ用の全面型ガスケット100であり、接続される管との連通を確保する開口部102を有し、フランジおよび管と締結するためのボルト穴104を四隅に有する。図11のガスケットは全被覆形のものであり、その断面は図12に示すとおりのものである。図12は、図11の線分α−α’に沿って切断した部分断面図である。芯材120は、メタルジャケットの本体部材106と、メタルジャケットの蓋部材108によって包まれている。本体部材106は、開口部および外縁部にて折り返されている。ボルト穴104は打ち抜きにより形成されている。
【0005】
ガスケットの耐熱性は芯材および金属薄板の耐熱性によって決定される。そのため、高温耐性が必要とされるガスケットは、耐熱性の高い芯材を、耐熱性の高い金属板(例えば、SUS316、またはインコネル)で被覆して構成される。しかしながら、金属板それ自体が1100℃程度の高温に耐えるものであっても、ガスケットの使用環境によっては、芯材の分解が生じて粉末状となる。粉末状となった芯材がボルト穴から漏れ出すと、その分だけ芯材が減少することとなり、芯材が減少した部分では芯材が及ぼす面圧が低下する。その結果、当該部分ではガスケットに加わる圧力が減少して流体の漏れが生じ、フランジが高温の流体の作用で変形する。そのような状態を招来するガスケットは、もはやガスケットとしての機能を果たし得ないものである。
【0006】
特に、ガスケットが、ターボチャージャー等から排出される低温排気(例えば、200〜300℃程度であり、場合によっては最大で数百気圧という高圧である気体)と高温排気(例えば、800〜1000℃程度であり、場合によっては最大で数百気圧という高圧である気体)に交互に曝される、すなわち、高温環境と低温環境に繰り返し曝されると、芯材の分解がより進行する傾向にある。また、用途によっては、偏熱により、ガスケットの一部のみが、より高い温度に曝されることがある。その場合にも、一部の芯材の劣化がより進行して、やはりシール性が低下する。
【0007】
本発明は、高い温度に間欠的に曝される、および/または一部のみが高い温度に曝される場合でも、長期間にわたって芯材の劣化が生じにくく、よって長期間にわたって使用可能な、メタルジャケット型ガスケットを提供することを目的とする。さらに、本発明は、そのようなメタルジャケット型ガスケットを用いて、高温排気と低温排気に同時に曝される接続部において、高温排気および低温排気がそれぞれ偏った流れを形成することを抑制し得る、排気管接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、芯材をメタルジャケットで包み込んでなる、全被覆形のメタルジャケット型ガスケットであって、
略中央に設けられた開口部と、ボルト穴とを有し、
メタルジャケットの折り返しにより、開口部を囲むグロメットAが形成されており、
前記グロメットが、別の金属薄板により形成されたグロメットBにより覆われており、
別の金属薄板により、ボルト穴を囲むグロメットCが形成されている、
メタルジャケット型ガスケットを提供する。
【0009】
本発明はまた別の要旨において、
より高い温度の排気が通過する一または複数の高温排気管Aと、より低い温度の排気が通過する一または複数の低温排気管Bとを、フランジおよびガスケットを介して一つの排気管Cに接続する排気管接続構造であって、
フランジは、そのフランジ面が重力が作用する方向と平行な面との間で0°〜75°の角度αをなすように配置されており、
ガスケットが、前記メタルジャケット型ガスケットであり、
フランジ面を重力が作用する方向と平行となるように角度αだけ傾けたときに、フランジ面において、重力が作用する方向を下向き、および重力が作用する方向と直交する方向を左右方向としたときに、
少なくとも一つの高温排気管Aが少なくとも出口部分にて、フランジ面に対して垂直な線に対して、下向きに0°より大きく60°以下の角度で、および/または左向きもしくは右向きに、0°より大きく30°以下の角度で傾斜しており、ならびに/あるいは
少なくとも一つの低温排気管Bが少なくとも出口部分にて、フランジ面に対して垂直な線に対して、上向きに0°より大きく60°以下の角度で、および/または左向きもしくは右向きに、0°より大きく30°以下の角度で傾斜している、
排気管接続構造を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガスケットは、略中央に設けられた開口部にて二重にグロメットが形成されているため、高温の流体(特に気体)に対して高いシール性を示す。また、本発明のガスケットにおいては、ボルト穴にもグロメットが形成されているため、ボルト穴から高温の流体が侵入することが抑制されて、芯材の劣化が有効に防止される。さらに、グロメットの形成により、ガスケットの略中央から外周部に向かって、ガスケットの厚さに勾配が形成されるため、ガスケットの開口部付近で高い締付圧が加わっても、フランジの変形が緩和され、フランジの変形に起因する流体の漏れを抑制できる。
【0011】
本発明の排気管接続構造は、高温排気管Aおよび低温排気管Bから排出される気体の経路が、フランジ面に対して垂直な線から傾くようにしたものであり、それにより高温排気と低温排気との混合を促進して、高温排気および低温排気がそれぞれ排気管C内の上部および下部に集中することを緩和している。したがって、本発明の排気管接続構造によれば、本発明のガスケットを使用することと相俟って、高温でかつ場合により高圧である気体に連続的に又は間欠的に曝されることに起因するガスケットの劣化を抑制して、ガスケットを長期間にわたって使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るガスケットを示す平面図である。
図2図1に示すガスケットを線分α−α’に沿って切断した部分断面図である。
図3図1に示すガスケットの一変形例を示す部分断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る排気管接続構造の立断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る排気管接続構造を左右方向に切断した断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る排気管接続構造の高温排気管Aおよび低温排気管Bの出口部分の配置を示す模式図である。
図7】(a)および(b)はそれぞれ、本発明の一実施形態に係る排気管接続構造の高温排気管Aおよび低温排気管Bの配置を示す模式図である。
図8】本発明の一実施形態に係る排気管接続構造の高温排気管Aおよび低温排気管Bの配置を示す模式図である。
図9】(a)および(b)はそれぞれ、本発明の一実施形態に係る排気管接続構造の高温排気管Aおよび低温排気管Bの配置を示す模式図である。
図10】本発明の一実施形態に係る排気管接続構造の立断面図である。
図11】従来のガスケットを示す平面図である。
図12図11に示すガスケットを線分α−α’に沿って切断した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面はいずれも模式図であって、理解の容易のため、各構成要素は必ずしも同一縮尺で表示されていない。また、複数の図面において、同じ符号で示された要素は、同じ機能を奏する要素である。
【0014】
(実施形態1:ガスケット)
図1および図2はそれぞれ、本実施形態のガスケットの平面図および断面図である。図2図1のガスケットを線分α−α’に沿って切断した部分断面図である。
図1に示すガスケットは、全面座管フランジ用の全面型ガスケット10であり、接続される管との連通を確保する、略中央に設けられた開口部2、および締結用のボルト穴4を有する。芯材20は、メタルジャケットの本体部材16と、メタルジャケットの蓋部材18によって包まれている。本体部材16は、開口部2および外縁部6にて折り返されており、開口部2で折り返された本体部材16は、開口部2にてグロメットA22を形成している。本実施形態のガスケットにおいては、開口部2にて、グロメットA22に加えて、グロメットB24が形成され、ボルト穴4にグロメットC26が形成されている。
【0015】
図示したガスケット10は、例えば、一辺の長さが15〜20cm程度の正方形であり、直径5〜10cm程度の開口部2、および直径2〜5cm程度のボルト穴が四隅に設けられた構成のものであってよい。図1に示すガスケット10は一例であり、開口部2の形状、寸法および位置;ボルト穴4の形状、寸法、位置および数;ならびにガスケット10の外周形状および寸法は図示したものに限定されない。
例えば、開口部2は円形以外に、六角形、四角形もしくは三角形等の多角形、または楕円形等であってよい。ボルト穴4の形状も同様である。また、ボルト穴4の位置および数(図では4個)も図示したものに限られず、より多い又はより少ない数のボルト穴を設けてよい。
ガスケット10の外周形状も図示した正方形に限定されず、長方形もしくは他の多角形、円形、または楕円形等であってよい。ガスケットの外周形状に応じて、ボルト穴の形状、寸法、位置および数を適宜変更してよいことはいうまでもない。
【0016】
以下、本実施形態のガスケットを構成する各要素について説明する。
【0017】
[芯材20]
芯材20は、特に限定されず、メタルジャケット型ガスケットで用いられているものから、用途等に応じて任意に選択される。例えば、芯材20として、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴムなどの等のゴム材料、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維、ケブラー繊維、フッ素樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などの耐熱性樹脂繊維、膨張黒鉛、ガラスファイバー、ロックウール、セラミックファイバー、アルミナシリカファイバー、アルミナファイバー、カーボンファイバー、炭酸カルシウムファイバー、セビオライト、SiC、TiC及びTaC等の炭化物からなる粉体またはファイバー、SiN、TiNおよびTaN等の窒化物からなる粉体またはファイバー、アタパルジャイト、ワラストナイト及びクレイなどの無機繊維が挙げられる。これらは単独で又は組み合わせて使用できる。前記フッ素ゴムには、フッ化ビニリデン系ゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレン系ゴム、テトラフルオロエチレン-パープルオロビニルエーテル系ゴム等が含まれる。
【0018】
あるいは、高耐熱性無機長繊維に高耐熱性無機短繊維を添加すると共に、無機微粉末を添加し、これらをバインダで結合させてシート状に成形してなる非アスベスト系無機繊維シートを、芯材20として用いてよい。あるいはまた、芯材20として、市販の膨張黒鉛シートやジョイントシートを使用してよい。
【0019】
前記耐熱性無機長繊維としては、例えば、ロックウール(生体内溶解性ロックウールを含む。)、アルミナシリカ繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、炭素繊維、およびカーボンファイバーなどが挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて使用できる。無機繊維は、その繊維長が長いほど無機繊維シートの製造過程での取扱い性やシート強度を向上させ得る。例えば、無機長繊維は、平均繊維長が1mm以上のものであってよく、特に、平均繊維長が2mm〜40mmのものであってよい。無機長繊維は0.2〜500μm、好ましくは0.2〜7μmの繊維径を有する。無機長繊維は、非晶質であっても、結晶質であってもよい。
【0020】
前記無機短繊維は、芯材20のコスト低減化を図ると同時に、製品の均一性を保証し、無機繊維シートを所定形状に打ち抜く際のトムソン刃の損耗を防止するために添加される。無機短繊維の添加量は、例えば5〜35質量%、好ましくは10〜20%質量である。添加量が5質量%未満では十分な効果が得られないことがあり、35質量%を越えると、取扱い性やシート強度の低下をもたらすことがある。
【0021】
無機短繊維としては、例えば、アルミナシリカ短繊維、アルミナ短繊維、ボロン繊維、または炭素繊維等の短繊維が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて使用してよい。経済的な観点からは、粘土鉱物(マグネシウムケイ酸塩鉱石)の微細繊維、例えば、セピオライト(含水マグネシウムシリケート)等の無機短繊維を用いるのが好ましい。無機短繊維は平均繊維長が1mm未満のものである。無機短繊維として、例えば、30μm以下のものを用いてよい。無機短繊維の繊維径は、先に無機長繊維に関して説明したとおりである。
【0022】
無機微粉末は、その弾力性を利用して無機繊維シートの密度を均一化すると共に、無機長繊維に加わる荷重を分散させて、高温でのシール性を均質化するために用いられる。無機微粉末の添加量は、例えば10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%である。無機微粉末の添加量が10質量%未満では十分な効果が得られないことがあり、60質量%を越えると、シート強度の低下をもたらすことがある。
【0023】
無機微粉末は、無機長繊維や無機短繊維間の間隙を埋めて無機長繊維に加わる荷重を分散させることにより、無機長繊維が折れたり砕けたりするのを防止する役割をする。無機微粉末の平均粒径は、例えば0.1〜10μm、好ましくは0.2〜6μmである。
【0024】
無機微粉末としては、例えば、粘土、タルク等の岩石微粉末、アルミナ、酸化チタン、シリカ、ムライト、コージェライト、フェライト、酸化マグネシウム等の酸化物微粉末;窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、窒化モリブデンなどの窒化物微粉末;炭化珪素、炭化チタン、炭化タングステン、炭化モリブデンなどの炭化物微粉末などが挙げられる。
【0025】
無機繊維シートは、無機長繊維、無機短繊維および無機微粉末に、5質量%以下のバインダを添加してシート状に成形し、成形したシートを積層することにより形成してよい。必要に応じて、有機繊維を2〜10質量%添加しても良い。有機繊維としては、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維、アラミド繊維、ポリアミド系合成繊維、アクリル繊維その他の人造繊維、パルプ、マニラ麻その他の天然繊維を使用できる。
【0026】
バインダとしては、有機バインダ及び無機バインダのいずれを使用しても良く、有機バインダには澱粉糊を代表とする天然系バインダ及び合成バインダが含まれる。無機系バインダとしては、アルミナやシリカを主成分とする耐熱性無機接着剤のほか、シラン化合物系無機バインダや繊維状のセピオライトなどを使用できる。
【0027】
[メタルジャケット16、18]
全被覆形のメタルジャケット型ガスケットにおいて、メタルジャケットは、メタルジャケット本体部材(「本体部材」とも略す)16と、メタルジャケット蓋部材(「蓋部材」とも略す)18とからなる。本体部材16および蓋部材18とも薄い金属板であり、その材料および寸法(特に厚さ)は特に限定されず、用途等に応じてメタルジャケットを構成するものとして公知の金属板から任意に選択される。
【0028】
具体的には、メタルジャケットの材料としては、冷間圧延鋼板(SPCC)やステンレス鋼板(例えば、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L等)が挙げられる。あるいは、耐熱耐食性ステンレス鋼、ニッケル基耐熱合金、またはコバルト系合金からなる薄い板(またはシート)を用いてよい。前記耐熱耐食性ステンレス鋼としては、例えば、高クロム高ニッケル低カーボンステンレス鋼があり、市販品では、SUS310、SUS309S、SUS321、SUS347、インコロイ(登録商標)800等が挙げられる。また、ニッケル基耐熱合金としては、Cr15〜30%、Ni10〜80%、C0.4%以下、Mo10%以下を含んでなるニッケル基耐熱合金がある。ニッケル基耐熱合金は、インコネル(登録商標)600、同601、同625、同718、同X750等として市販されている。これらの材料からなる、厚さ0.1〜1.0mmの板(またはシート)を、本体部材16および蓋部材18として使用してよい。
【0029】
[グロメットB24、グロメットC26]
開口部2に形成されるグロメットB24、およびボルト穴4に形成されるグロメットC26はともに、薄い金属板で構成される。使用できる金属は、メタルジャケット16、18に関連して説明したとおりであり、ここではそれらを再度列挙しない。あるいは、グロメットB24およびグロメットC26は、アルミニウム、鉄または銅の板で形成されてよい。あるいはまた、耐熱性または耐食性を考慮して、Mn、Ni、Cr、MoおよびWから選択される金属を単独で、これらから選択される2以上の金属を組み合わせてなる合金を、グロメットの材料として用いてよい。あるいはまた、アルミニウム、鉄または銅に、Mn、Ni、Cr、MoおよびWから選択される1または複数の金属を添加してなる合金を、グロメットの材料として用いてよい。特に、グロメットC24は、比較的小さいボルト穴4に形成されるため、展延性の良好な銅で形成することが好ましい。
グロメットB24、グロメットC26を構成する金属板の厚さも特に限定されず、例えば、0.1〜1.0mmとしてよい。
【0030】
グロメットB24、グロメットC26は同じ材料から成っていてよく、あるいは互いに異なる材料からなっていてよい。また、グロメットB24およびグロメットC26の一方または両方が、メタルジャケット16、18と同じ材料から成っていてよい。あるいは、グロメットB24およびグロメットC26と、メタルジャケット16、18との材料は互いに異なる材料からなっていてよい。その場合には、材料の熱膨張率の違い等の理由によって、グロメットB24とメタルジャケット16、18との間、およびグロメットC26とメタルジャケット16、18との間に隙間が生じて空気層が形成されることがある。この空気層が断熱材の役割をすると、ガスケット10(特に芯材20)の劣化抑制においてより有利となり得る。
【0031】
[ガスケット10の全体構成]
ガスケット10は、上記の構成要素を組み立てて構成される。具体的には、略中央に開口部を設けたメタルジャケット本体部材16に、略中央に開口部を設けた芯材20を配置し、その上に略中央に開口を設けたメタルジャケット蓋部材18を載せ、開口部2および外縁部6にて、メタルジャケット本体部材16を折り返して「かしめる」。本体部材16は折り返し可能なように、開口部の直径が折り返し分だけ、蓋部材18および芯材20の開口部の直径よりも小さく、全体の寸法(外縁によって規定される寸法)が、蓋部材18の寸法よりも大きく形成されている。
【0032】
本体部材16が折り返されて蓋部材18と重なる部分の幅は、開口部2では、例えば、1〜6mmとしてよく、好ましくは2〜3.5mmとし、外縁部6では、例えば、0.5〜6mmとしてよく、好ましくは2〜3.5mmとしてよい。開口部2の折り返し部分は、上記のとおり、グロメットA22を形成し、当該部分の締付圧力を高くして、ガスケット10のシール性を高める役割をする。
【0033】
本実施形態のガスケットは、開口部2にて、グロメットA22に加えて、グロメットB24を形成する。グロメットB24は、薄い金属板からなる管状体をコの字またはU字状に折り曲げることにより形成される。グロメットB24のグロメットA22(本体部材16が折り返されて蓋部材18と重なる部分)と重なる側の幅dは、例えば、1mm以上としてよい。dは、例えば、グロメットB24の外縁が、グロメットA22の外縁とボルト穴4に形成されるグロメットC26の外縁との間の距離Mの1/2まで延びるような寸法を有してよい。dは、例えば、グロメットB24の外縁が、距離Mの1/3〜2/3まで延びるような寸法を有してよい。グロメットB24が距離Mのおおよそ半分程度まで延びていると、ガスケットに加わる締付圧力が過大とならず好ましい。ここで、距離Mは、開口部2の中心とボルト穴4の中心と結ぶ線分上で測定される。あるいは、dは、グロメットB24の外縁が、グロメットC26の外縁と接触しない限りにおいて、グロメットC26の直前まで延びるほどの寸法を有していてよい。あるいはまた、dの上限は20mmとしてよい。あるいはまた、dは、ガスケット10の寸法および開口部2の寸法等に応じて、ここで例示した上限および下限外としてよい。
【0034】
グロメットB24の幅dは、本体部材16の折り返し部分の幅(蓋部材18と重なる幅)と同じであってよく、あるいは異なっていてよい。グロメットB24のdは好ましくは、本体部材16の折り返し部分の幅よりも大きい。また、グロメットB24の幅dは一定でなくてもよく、一つのグロメットにおいて変化していてよい。
グロメットB24の蓋部材18が配置された側とは反対の側の幅d’は例えば0.5〜5mmとしてよく、好ましくは1.5〜3.5mmとしてよい。
なお、グロメットB24の幅および後述するグロメットC26の幅は、グロメット同士が干渉しないように選択すべきであることはいうまでもない。
【0035】
グロメットB24が形成された部分では、図2に示すとおり、芯材20の上下に位置する金属薄板の数が合わせて5つとなる。そのため、グロメットB24が形成された部分は、ガスケットの厚さが大きくなって、当該部分では締付面圧が高くなり、流体(特に高温の気体)に対して良好なシール性を示す。
【0036】
本実施形態の一変形例において、グロメットB24は、別の金属板がグロメットA22とグロメットB24との間に位置するように、当該別の金属板を抱き込むように形成してもよい。具体的には、図3に示すように、リング状の板30をフランジA22の上に配置した状態で、グロメットB24を形成してよい。リング状の板30の幅は、グロメットC26の外縁と接触しない限りにおいて、リング状の板30がグロメットC26の直前まで延びるほどのものであってよい。リング状の板30を有する変形例において、グロメットA24の幅dは、リング状の板30の幅よりも小さくてよく、あるいは図3に示すように長くてよい。
【0037】
グロメットC26もまた、薄い金属板からなる管状体をコの字またはU字状に折り曲げて形成する。グロメットC26の蓋部材18が配置された側の幅dは、例えば、0.5〜20mmとしてよく、好ましくは0.5〜4mmとしてよく、より好ましくは0.5〜3mmとしてよい。dはガスケット10の寸法およびボルト穴4の寸法等に応じて、これらの範囲外としてよい。グロメットC26の蓋部材18が配置された側とは反対側の幅d’は、例えば0.5〜5mmとしてよく、好ましくは1.5〜3.5mmとしてよい。
【0038】
グロメットC26が形成された部分では、図2に示すとおり、芯材20の上下に位置する金属薄板の数が合わせて4つとなる。グロメットC26は、高温の流体(特に気体)がフランジとガスケットの間から漏れて、ボルト穴4に達したときでも、高温の流体が芯材20に侵入するのを抑制して、芯材20の劣化を有効に抑制する。
【0039】
また、本実施形態のガスケット10においては、グロメットB24およびC26の形成により、開口部2から外縁部6に至るまでに、ガスケット10の厚さを漸減させた構造が得られる。この構造それ自体によってもシール性が向上し、高温の流体をシールする場合でもガスケットを長期間使用することが可能になると考えられる。すなわち、ガスケットB24が形成された部分では、上記のとおりガスケットの厚さが相当に大きくなり、接続部分で良好なシール性を確保できるものの、締結によってフランジに相当に大きな力が加わり、フランジに変形または曲がりが生じやすくなる。その結果、流体の漏れが生じやすくなり、漏れた流体がボルト穴6にまで達することがある。
【0040】
しかしながら、本実施形態においては、グロメットB24が設けられた開口部2(金属薄板が5枚存在する)と外縁部6(金属薄板が3枚存在する)との間に、グロメットC26が設けられているところ、この部分では金属薄板が4枚存在する。そのため、グロメットC26の形成により、開口部2から外周部6に至るまでのガスケットの厚さに勾配が形成され、それによりフランジの変形等が有効に抑制される。その結果、フランジローディングによる流体の漏れが抑制され、ひいては漏れた流体がボルト穴6から内部に侵入することが抑制されるので、高温の流体をシールする場合には、グロメットC26の形成と相俟って、芯材20の劣化が有効に抑制される。
【0041】
(実施形態2:排気管接続構造)
続いて、上記において説明した実施形態1のガスケットを用いるのに適した排気管接続構造を説明する。[発明が解決しようとする課題]の欄で説明したとおり、より高い温度であり、かつ場合により高圧である排気(以下、単に「高温排気」と呼ぶ)が通過する高温排気管Aからの排気と、より低い温度であり、かつ場合により高圧である排気(以下、単に「低温排気」と呼ぶ)が通過する低温排気管Bからの排気とを、一つの排気管Cに供給して、当該一つの排気管から排気をまとめて排出することがある。そのような場合には、高温排気管Aおよび低温排気管Bの出口を、排気管Cに接続する必要があり、その接続部分で用いられるフランジおよびガスケットは、高温排気と低温排気に曝されることとなる。重力が作用する方向を下方向としたときに、排気管Cを上下方向に対して垂直に配置して、排気管C内に高温排気と低温排気とを供給すると、高温排気は一般に上側を通過しようとし、低温排気は下側を通過しようとして、排気管C内で二つの排気の層流が形成される。そのため、フランジおよびガスケットはその上部が専ら高温に曝されることとなり、それらの上部において劣化がより進行する傾向にある。
【0042】
フランジおよびガスケットの上部だけが劣化しないようにするには、高温排気と低温排気が層流を形成せず、高温排気と低温排気が混合して中間の温度の排気を形成することが好ましい。そこで、実施形態2においては、高温排気と低温排気が排気管C内で層流を形成しにくいように、あるいは高温排気と低温排気が層流を形成しても層流の混合が促進される又はこれらの層流が排気管Cに与える影響をより少なくし得るように、高温排気および低温排気の方向を適宜設定することにより、加えて/あるいは高温排気および低温排気の混合により、排気管Cの上下における熱の影響を平均化することが可能となるように、高温排気管Aおよび低温排気管Bを配置して、高温排気および低温排気の流れをコントロールした排気管接続構造を説明する。
【0043】
図4は、本実施形態に係る排気管接続構造の一例を説明する立断面図である。図示した排気管接続構造40は、高温排気管A42と低温排気管B44とが、排気管C50に接続されたものであり、高温排気管A42がフランジ46およびガスケット48を通過して、その出口が排気管C50内に開いており、低温排気管B44がフランジ46およびガスケット48を通過して、その出口が排気管C50内に開いている。フランジ46は高温排気管A42および低温排気管B44を通過させる開口部を有しており、各排気管と開口部との間は例えば溶接等によりシールされる。ガスケット48は、実施形態1のガスケットである。図示した接続構造において、フランジ46/ガスケット48/排気管C50は、ボルト52およびナット54によって一体に接続されている。
【0044】
図4において、排気管C50はバタフライ弁であり、バタフライ弁は別の排気管(図示せず)に接続されているが、排気管C50は必ずしもバタフライ弁に限定されない。バタフライ弁は、その弁体50aが高温排気管42の出口部分42aおよび低温排気管44の出口部分44aと干渉しないように選択される。弁体50aの回転方向は矢印で示すとおりである。バタフライ弁は、流量調節または流路の開閉のために用いられる。
【0045】
図示した形態において、排気管C50は重力が作用する方向を下向きとする上下方向に対して、垂直な方向に延びている。また、フランジ46のフランジ面46aは、上下方向と平行な面であり、かつ排気管C50の長手方向に対して垂直な面である。フランジ面46aは、例えばガスケット48の長寿命化を図るために、重量が作用する方向と平行な面(以下、「面S」とも呼ぶ)との間で75°以下、特に70°以下、より特には60°以下の角度αをなすように、傾けて配置されていてよい。その場合、排気管C50等が延びる方向も傾くこととなる。フランジ面と面Sとの間に形成される角度は鋭角で規定するものとする。また、フランジ面46a(より厳密には、ガスケット48と接している側の面)は、それが下を向くように傾いていてよく、あるいは上を向くように傾いていてよい。高温排気管A42は、低温排気管B44よりも下側に配置され、低温排気管B44は高温排気管A42よりも上側に配置されている。これは、高温排気が低温排気よりも上側に移動しやすいことを考慮して、上側に移動するまでに低温排気と衝突させて、その温度を低下させようとするものである。
【0046】
高温排気管A42および低温排気管B44はともに、フランジ44に至る直前までは排気管C50と平行な方向に延びているが、その出口部分42aおよび42bがともに屈曲して、フランジ面46aに対して垂直な線Lに対して傾斜している。具体的には、高温排気管A42の出口部分42aは、線Lに対して下向きに0°よりも大きく、60°以下の角度θ1で傾斜し、低温排気管B44の出口部分44aは、線Lに対して上向きに0°よりも大きく、60°以下の角度θ2で傾斜している。θ1およびθ2は好ましくは30°以下であり、10°以下であってもよく、5°以下であってもよい。出口部分42a(高温排気管)が下向きに傾斜していることによって、高温排気の上側への移動がより抑制され、出口部分42b(低温排気管)が上向きに傾斜していることによって、低温排気の上側の移動がより抑制され、これにより高温排気と低温排気の層流が、フランジ46およびガスケット48近傍でただちに形成されるのを有効に抑制できる。その結果、フランジ46およびガスケット48の上部における、偏熱による劣化をより抑制でき、あるいは排気管C50または排気管C50に接続される他の部材の偏熱による部分的な劣化をより抑制できる。一つの変形例において、出口部分42aおよび44bのいずれか一方のみが上下方向に傾斜し、他方は上下方向に傾斜していなくてよい。そのような場合でも、高温排気および低温排気の層流の形成をある程度抑制できる。
【0047】
加えて/あるいは、出口部分42aおよび42bは、フランジ面46aに対して垂直な線Lに対して左右方向に30°以下の角度で傾いていてよい。図5に、出口部分42aおよび出口部分44bが左右方向に傾いた状態を、接続構造を左右方向に切断した断面図にて示す。図5に示す排気管接続構造においては、左右方向に高温排気管A42および低温排気管B44が配置され、右側に低温排気管B44が、左側に高温排気管A42が配置されている。高温排気管A42の出口部分42aは、線Lに対して右側に0°よりも大きく30°以下の角度θ3で傾き、低温排気管B44の出口部分44aは、線Lに対して左側に0°よりも大きく30°以下の角度θ4で傾いている。このように出口部分42a、44aを左右方向に傾けることによっても、高温排気および低温排気が層流を形成しにくくなり、二つの排気の混合が促進され、あるいは層流が形成されるとしても層流間の温度差を小さくすることができる。一つの変形例において、出口部分42aは、線Lに対して左側に傾き、出口部分42bは、線Lに対して右側に傾いていてよい。
図5に示す接続構造においても、排気管C50はバタフライ弁であり、図示した形態において弁体50aは矢印の方向に回転する。
【0048】
出口部分42a、44aを左右方向に傾ける場合、それらは互いに反対の方向に傾いていることが好ましいが、同じ方向に傾いていてよい。あるいは、一方の出口部分のみが左右いずれかの方向に傾いていてよい。少なくとも一つの出口部分を線Lに対して左右いずれかの方向に傾けることによって、排気の流れが変化し、層流の形成をある程度抑制することが可能となる。
【0049】
θ1、θ2、θ3およびθ4は、高温排気管A42および低温排気管B44の寸法、およびそれらを流れる気体の温度、ならびに排気管C50の寸法等に応じて、層流の形成を抑制するのに適した値となるように、決定する。θ1等の決定に際しては、金属ベローズを用いることができる。具体的には、図4等に示された高温排気管A42および低温排気管B44に代えて、金属ベローズを接続し、金属ベローズを適宜折り曲げることによって、金属ベローズを通過する気体の方向を適宜変化させて、層流形成の抑制および/または偏熱防止に効果的な角度(θ1等)を決定するとよい。それから、決定した角度で出口部分42a、44bが傾くように、高温排気管42aおよび低温排気管44bを設計して作製するか、あるいは後述するように、高温排気管42aおよび低温排気管44bを傾けて設置する。
【0050】
出口部分42aおよび出口部分44aは、線Lに対して上下方向および左右方向の両方で傾斜していてよい。例えば、図4に示すように、上下方向に高温排気管A42(下側)および低温排気管B44(上側)が配置された接続構造において、出口部分42aが、線Lに対して下方向に傾斜するとともに、右方向に傾斜している場合、図6に示すとおり、フランジ46手前まで延びる高温排気管A42の位置(図において破線で示す)に対して、出口42bが斜め方向にずれることとなる。同様に、出口部分44aが、線Lに対して上方向に傾斜するとともに、左方向に傾斜している場合、図6に示すとおり、フランジ46手前まで延びる低温排気管B44の位置(図において破線で示す)に対して、出口44bが斜め方向にずれることとなる。
【0051】
図4においては、高温排気管A42および低温排気管B44がそれぞれ一つずつ、上下方向に設けられている。これをフランジ面46aで見ると、図7(a)に示すような配置となる。別の実施形態において、高温排気管A42および低温排気管B44は、図5および図7(b)に示すように、左右方向にそれぞれ一つずつ設けられてよい。
なお、図7ないし図9はいずれも、フランジ面46aで見た、高温排気管A42および低温排気管B44の配置を示す模式図である。
【0052】
あるいは、さらに別の実施形態において、高温排気管A42および低温排気管B44は、それぞれ複数設けられてよい。例えば、図8に示すように、高温排気管A42および低温排気管B44は、二つずつ設けてよい。高温排気管A42および低温排気管B44をそれぞれ複数設ける場合には、図9(a)に示すように、高温排気管A42の群を下側に配置し、低温排気管B44の群を上側に配置してよく、あるいは、図9(b)に示すように、高温排気管A42の群を左右一方の側に、低温排気管B44の群を左右の他方の側に配置してよい。高温排気管A42と低温排気管B44をそれぞれ複数設ける場合には、少なくとも一つの高温排気管A42の出口部分42aと少なくとも一つの低温排気管B44の出口部分44aを上下左右のいずれかの方向に傾斜させる。
【0053】
本実施形態において、高温排気管Aおよび低温排気管Bの出口部分はいずれも、フランジまでフランジ面に対して垂直に延びる管から、フランジ付近で屈曲させている。出口部分は、出口から出ていく排気が、フランジ面に対して垂直とならず、フランジ面に対して垂直な線から傾斜した方向に流れる限りにおいて、いずれの部位で屈曲していてよい。したがって、別の形態において、出口部分は、フランジより前で屈曲し、傾斜した出口部分がフランジの開口部を通過してよい。高温排気管Aおよび低温排気管Bの出口部分は別部材であってよく、フランジ面に対して垂直に延びる管部材と例えば螺合により一体化させてよい。あるいは、高温排気管Aおよび低温排気管Bの出口部分は屈曲していなくてよく、例えば、図10に示すとおり、直線状の高温排気管A42および低温排気管B44を、その出口部分がフランジ面46aに垂直な線に対して所定のように傾斜するように、全体を傾けた状態にてフランジ46に通してよい。それにより、出口からの排気が所定の方向に流れるようになる。
【0054】
高温排気管A42と低温排気管B44とを排気管C50に接続する構造は、例えば、ターボチャージャーを使用する内燃機関において用いることができる。そのような内燃機関においては、高温排気管A42はターボチャージャーからの排気(これは上記のとおり高圧となることもある)を通過させるものであり、低温排気管B44は通常の排気(高圧となることもあるエンジン排気)を通過させるものである。ターボチャージャーからの排気の温度は例えば600℃以上であり、通常の排気の温度は例えば50〜200℃である。ターボチャージャーからの排気の温度は局部的に900℃程度となることもあり、通常の排気の温度も場合により200〜300℃となることもある。また、ターボチャージャーからは常に排気が生じているわけではなく間欠的に排気が生じるので、そのような内燃機関では、フランジおよびガスケットは低温環境と高温環境に交互に曝されることとなり、劣化しやすい。同様に、二酸化炭素削減のために用いられるターボチャージャーを用いる難燃機関でも、フランジおよびガスケットは低温環境と高温環境に交互に曝されることとなり、劣化しやすい。本実施形態によれば、高温排気と低温排気の層流の形成が抑制されて、または層流の温度差が小さくなって、フランジおよびガスケットの一部のみ、または排気管C50およびこれに接続される他の部材の一部のみが高温に曝されることを抑制できる。したがって、本実施形態の排気管接続構造は、ターボチャージャーを使用する内燃機関で使用するのに特に適している。
あるいは、本実施形態の排気管接続構造は発電所で用いるのに適している。
【0055】
本実施形態では、実施形態1のガスケットを用いているが、ガスケットは必ずしも実施形態1のものに限られない。本実施形態の排気管接続構造によれば、高温排気と低温排気の層流形成が抑制されるため、実施形態1のガスケットほど高温耐性が無いガスケット(メタルジャケット型だけでなく、他のタイプのガスケットを含む)であっても、長期間の使用が可能となり得る。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のメタルジャケット型ガスケットは、高温耐性に優れ、またフランジの変形による流体の漏れを軽減させる構造となっているから、高温の流体(特に気体)をシールするのに適しており、例えば、ターボチャージャーを使用する内燃機関で使用できる。
【符号の説明】
【0057】
10、100 ガスケット
2、102 開口部
4、104 ボルト穴
16、106 メタルジャケット本体部材
18、108 メタルジャケット蓋部材
20、120 芯材
22 グロメットA
24 グロメットB
26 グロメットC
30 リング状の板
40 排気管接続構造
42 高温排気管A
42a 高温排気管Aの出口部分
42b 出口
44 低温排気管B
44a 低温排気管Bの出口部分
44b 低温排気管Bの出口
46 フランジ
46a フランジ面
48 ガスケット
50 排気管C
52 ボルト
54 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12