(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の第二脚部は、前記パイプが前記コネクタ本体の軸方向の正規位置に挿入された状態、且つ、前記リテーナが前記確認位置に位置する状態において、前記環状突部に軸方向に係止して前記パイプを抜け止めする本抜止部を備える、請求項1に記載のクイックコネクタ。
前記第一押込規制突起と前記本抜止部とは、軸方向に同一位置に位置し、且つ、前記パイプが前記正規位置に位置する状態において、前記環状突部より軸方向前側に位置する、請求項2に記載のクイックコネクタ。
前記一対の第一脚部は、前記リテーナが前記初期位置に位置する状態において、前記環状突部との当接に伴って前記一対の第一脚部を拡開変形させることにより前記環状突部の奥側への通過を許容し、前記パイプが前記正規位置に到達したときに前記一対の第一脚部の拡開変形量を減少させることで前記環状突部に軸方向に係止して前記パイプを抜け止めする仮抜止部を備える、請求項1−4の何れか一項に記載のクイックコネクタ。
前記仮抜止部の軸方向前側の面は、前記コネクタ本体に当接し、且つ、外側から内側に向かうに従って軸方向前側に位置するように傾斜形成される、請求項5に記載のクイックコネクタ。
前記仮抜止部の軸方向奥側の面は、前記環状突部に当接し、外側から内側に向かうに従って軸方向奥側に位置するように傾斜形成される、請求項5又は6に記載のクイックコネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1.クイックコネクタ1の概要)
クイックコネクタ1の概要について、
図1及び
図7Eを参照して説明する。クイックコネクタ1は、例えば自動車の燃料配管の一部を構成し、燃料を流通させるための流路を形成する。クイックコネクタ1の一端側には、樹脂チューブ4の端部が外装され、クイックコネクタ1の他端側には、パイプ3の端部が挿入される。このようにして、クイックコネクタ1は、樹脂チューブ4とパイプ3とを連結する。
【0018】
ここで、パイプ3は、
図1に示すように、例えば金属製の筒状に形成される。パイプ3は、先端から軸方向に距離を隔てた位置に径方向外側に突出形成された環状突部3a(フランジ部、ビードとも称する)、環状突部3aより先端側の小径部位である先端部3b、及び、環状突部3aより反先端側の小径部位である中間部3cを備える。
【0019】
また、以下の説明において、軸方向とは、クイックコネクタ1にパイプ3が挿入された状態におけるパイプ3の軸方向である。コネクタ本体10においてパイプ3が挿入される側を、軸方向前側(パイプ挿入側に相当)とし、その反対側を軸方向奥側(パイプ反挿入側に相当)とする。下方向とは、パイプ3の軸方向から見た場合に、リテーナ30の押し込み方向であり、上方向とは、リテーナ30の引き抜き方向(反押し込み方向)である。左右方向とは、パイプ3の軸方向から見た場合に、上下方向に直交する方向である。
【0020】
クイックコネクタ1は、コネクタ本体10と、リテーナ30と、シールユニット70(
図7Eに示す)とを備える。
コネクタ本体10は、例えばガラス繊維強化ポリアミド製であって、貫通した流路を有する。コネクタ本体10は、L字状に貫通形成される形状を示すが、この他に、直線状に貫通形成されるようにしてもよい。また、コネクタ本体10は、一体成形される場合に限られず、複数の部品を結合することにより形成してもよい。
【0021】
図1に示すように、コネクタ本体10は、チューブ接続部11とパイプ挿入部12とを備える。チューブ接続部11は、コネクタ本体10の一端側(
図1の奥下側)に設けられ、チューブ接続部11には樹脂チューブ4が外装される。チューブ接続部11の外周面は、樹脂チューブを嵌め込んだ状態で抜け防止力を有するために、流路に沿った方向に段状に形成される。
【0022】
パイプ挿入部12は、コネクタ本体10の他端側(
図1の上側)に設けられ、パイプ3の先端部3b及び環状突部3aの部位を挿入可能である。パイプ挿入部12の内周側には、
図7Eに示すように、シールユニット70が配置される。シールユニット70は、例えば、フッ素ゴム製の環状シール部材71,72と、環状シール部材71,72の軸方向の間に挟まれるようにして樹脂製のカラー73と、環状シール部材71,72およびカラー73をコネクタ本体10に位置決めする樹脂製のブッシュ74とから構成される。シールユニット70の内周側には、パイプ3の先端部3bが挿入される。ブッシュ74は、パイプ3の先端部3bの通過を許容するが、環状突部3aの通過を許容しない。つまり、ブッシュ74は、パイプ3の環状突部3aが軸方向奥側への移動を規制する機能を有する。
【0023】
リテーナ30は、例えばガラス繊維強化ポリアミド製である。リテーナ30は、作業者による径方向(コネクタ本体10におけるパイプ挿入軸方向に交差する方向:上下方向)への押し込み操作及び引き抜き操作によって、コネクタ本体10に移動可能に設けられる。
【0024】
後述するが、パイプ3がコネクタ本体10の軸方向の正規位置に挿入された状態において、リテーナ30は、初期位置から確認位置へ移動可能となる。一方、パイプ3がコネクタ本体10に挿入されていない状態、及び、パイプ3がコネクタ本体10の正規位置より軸方向前側に位置する途中位置までしか挿入されていない状態においては、リテーナ30が初期位置から確認位置へ移動することが規制される。従って、作業者は、リテーナ30を押し込み操作できる場合には、パイプ3が正規位置に挿入されたことを確認できる。
【0025】
さらに、リテーナ30が確認位置へ押し込み操作された状態において、リテーナ30は、パイプ3の環状突部3aに軸方向に係止して、リテーナ30はパイプ3を抜け止めする。つまり、作業者は、リテーナ30を押し込み操作することによって、パイプ3が正規位置に挿入され、且つ、パイプ3がリテーナ30によって抜止されていることを、確認することができる。
【0026】
(2.コネクタ本体10のパイプ挿入部12の詳細構成)
パイプ挿入部12の詳細構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。パイプ挿入部12は、筒部21、開口端座部材22と、上部連結部材23と、下部連結部材24と、一対の引抜被係止部25,25と、一対の押込被係止部26,26とを備える。
【0027】
筒部21は、パイプ挿入部12の奥側に位置し、筒部21の端部には、チューブ接続部11が連結される。筒部21には、シールユニット70が配置され、パイプ3の先端部3bが挿入される。筒部21の前端面における開口の左右には、上下方向に直線状に延びる一対のガイド部21a,21aが形成される。
【0028】
開口端座部材22は、筒部21から軸方向前側に距離を隔てて同軸上に配置される。開口端座部材22には、円形の開口孔22aが形成されている。開口孔22aは、パイプ3の環状突部3aを通過可能な大きさに形成される。さらに、開口端座部材22のうち奥側面における開口孔22aの左右には、上下方向に直線状に延びる一対のレール溝22b,22bが形成される。一対のレール溝22b,22bの溝底及び外側肩部22c,22cは、筒部21の一対のガイド部21a,21aに軸方向に対向する。
【0029】
なお、後述するが、一対のガイド部21a,21a及び一対の外側肩部22c,22cは、リテーナ30の第一脚部本体41を上下方向にガイドする。つまり、筒部21のガイド部21aの前面と外側肩部22cの奥面とが、後述するリテーナ30の第一脚部本体41の軸方向の両方向への移動を規制する対向規制面として機能する。また、一対のレール溝22b,22bは、第二脚部本体51及び挿入ガイド53を上下方向にガイドする。
【0030】
上部連結部材23は、筒部21の上部と開口端座部材22の上部とを軸方向に連結する。下部連結部材24は、筒部21の下部と開口端座部材22の下部とを軸方向に連結する。ここで、上部連結部材23及び下部連結部材24は、パイプ3の環状突部3aに対して軸方向に干渉しない位置に設けられている。また、上部連結部材23と下部連結部材24との間は、左右共に開口している。
【0031】
一対の引抜被係止部25,25は、上部連結部材23の左右端から下方向に向かってそれぞれ遠ざかるようにほぼ円弧状に延びている。一対の引抜被係止部25,25は、上部連結部材23のうち軸方向中央より筒部21側に設けられている。つまり、一対の引抜被係止部25,25と開口端座部材22との軸方向間には、隙間が形成されている。
【0032】
一対の押込被係止部26,26は、下部連結部材24の左右端から上方向に向かってそれぞれ遠ざかるようにほぼ円弧状に延出されている。一対の押込被係止部26,26は、下部連結部材24のうち軸方向中央より開口端座部材22側に設けられている。つまり、一対の押込被係止部26,26と筒部21との軸方向間には、隙間が形成されている。
【0033】
(3.リテーナ30の詳細構成)
次に、リテーナ30の詳細構成について、
図3A−
図3B及び
図4A−
図4Fを参照して説明する。リテーナ30は、逆U字状に形成される。リテーナ30は、基部31と、一対の第一脚部32,32、一対の第二脚部33,33、一対のリリース用操作部34,34とを備える。
【0034】
基部31は、逆U字状の頂部に位置し、僅かに湾曲した板状に形成される。基部31の軸方向奥側の下面には、
図3Bに示すように、切欠31aが形成される。切欠31aは、リテーナ30が確認位置に位置する状態において、コネクタ本体10と基部31との間に隙間を形成する。例えば、切欠31aは、作業者がマイナスドライバーなどの治具を挿入して、リテーナ30を引き抜くために用いられる。
【0035】
一対の第一脚部32,32は、基部31の左右両端に拡開可能に設けられ、大きな拡開量を許容する。つまり、一対の第一脚部32,32は、拡開変形することによって、パイプ3の環状突部3aの奥側への通過を許容する。それぞれの第一脚部32は、第一脚部本体41と、仮抜止部42と、ガイド突起43と、第一押込規制突起44とを備える。
【0036】
第一脚部本体41は、基部31の左右両側から下方に延びるL字形状に形成される。第一脚部本体41は、下部の前面が上部の前面より前側に位置するL字形状に形成される。第一脚部本体41のL字下部は、L字上部より左右外側に張り出しており、第一脚部本体41のL字下部の軸方向幅が、コネクタ本体10の筒部21のガイド部21aと開口端座部材22の外側肩部22c(レール溝22bの左右外側部位)との軸方向間と同程度である。
【0037】
仮抜止部42は、それぞれの第一脚部本体41の軸方向前部、且つ、第一脚部本体41の先端部から、内側(第一脚部本体41,41の対向側)に張り出すように設けられる。
図4Fに示すように、仮抜止部42は、軸方向前側且つ上側には切欠42aを有する。切欠42aは、リテーナ30が確認位置に位置する状態において、コネクタ本体10の押込被係止部26を収容する領域である。そして、切欠42aの存在により、仮抜止部42の軸方向前側の面42bは、軸方向奥側の面42cより小さくなる。
【0038】
図4Fに示すように、仮抜止部42の軸方向前側の面42bのうち外側範囲は、外側から内側に向かうに従って軸方向前側に位置するように傾斜形成されている。この外側範囲は、リテーナ30が初期位置に位置する状態において、コネクタ本体10の開口端座部材22の奥面に対向し、当該奥面に当接し得る範囲である。
【0039】
一方、仮抜止部42の軸方向前側の面42bのうち内側範囲は、内側から外側に向かうに従って軸方向前側に位置するように傾斜形成されている。この内側範囲は、リテーナ30が初期位置に位置する状態において、パイプ3の環状突部3aが当接する範囲である。
【0040】
図4Fに示すように、仮抜止部42の軸方向奥側の面42cは、外側から内側に向かうに従って軸方向奥側に位置するように傾斜形成される。軸方向奥側の面42cは、パイプ3が正規位置に位置する状態において、パイプ3の環状突部3aに当接する範囲である。つまり、軸方向奥側の面42cは、パイプ3の環状突部3aに対して軸方向に係止可能である。
【0041】
ガイド突起43は、それぞれの第一脚部本体41の軸方向中央部、且つ、第一脚部本体41の先端部から、内側(第一脚部本体41,41の対向側)に張り出すように設けられる。ガイド突起43は、上側ほど内側に張り出す形状に形成される。ガイド突起43の下面は、環状突部3aの外周面に対応する円弧凹状に形成される。
【0042】
一方、ガイド突起43の上面は、リテーナ30が確認位置に位置する状態において、環状突部3aの外周面に対応する円弧凹状に形成される。ただし、ガイド突起43の上面のうち内端は、コネクタ本体10の引抜被係止部25に対して上下方向に係止される。また、ガイド突起43の軸方向奥面は、筒部21の軸方向前面に対して非常に僅かな隙間に介して対向する面である。つまり、仮抜止部42とガイド突起43とは、筒部21の軸方向前面と開口端座部材22の軸方向奥面との間にほぼ同程度である。
【0043】
第一押込規制突起44は、仮抜止部42の下面に設けられる。第一脚部32が拡開していない状態において、第一押込規制突起44は、コネクタ本体10の押込被係止部26に対して上下方向に係止される。ただし、第一脚部32が拡開した状態であれば、第一押込規制突起44は、押込被係止部26に対して係止されない。
【0044】
一対の第二脚部33,33は、基部31の左右両端に設けられ、一対の第一脚部32,32とは独立して設けられる。一対の第二脚部33,33は、一対の第一脚部32,32の拡開量に比べて、小さな拡開量のみを許容する。ただし、一対の第二脚部33,33は、拡開不能に設けられるようにしてもよい。つまり、一対の第二脚部33,33は、拡開変形したとしても、パイプ3の環状突部3aの通過は不能である。本実施形態においては、一対の第二脚部33,33は、一対の第一脚部32,32に比べて、基部31との結合面積を大きくすることにより、大きく拡開することを規制している。
【0045】
それぞれの第二脚部33は、第二脚部本体51と、本抜止部52と、挿入ガイド53と、第二押込規制突起54とを備える。
第二脚部本体51は、基部31の左右両側から下方に延びる。第二脚部本体51は、第一脚部本体41の前側に、第一脚部本体41との軸方向間に隙間を介して設けられる。第二脚部本体51の前側部分は、コネクタ本体10の開口端座部材22のレール溝22bに挿入される。つまり、第二脚部本体51は、コネクタ本体10に対するリテーナ30の姿勢を規制する。特に、第二脚部本体51とレール溝22bとの係合によって、第二脚部33が大きく拡開することが規制される。
【0046】
本抜止部52は、それぞれの第二脚部本体51の基部31寄りの位置から、内側(第二脚部本体51の対向側)に張り出すように設けられる。本抜止部52は、第一脚部32の仮抜止部42と同一軸方向位置に位置する。つまり、本抜止部52は、仮抜止部42の上方に位置する。本抜止部52の内側面は、パイプ3の中間部3cに対応する円弧凹状に形成される。そして、本抜止部52のそれぞれの下端同士の左右幅は、パイプ3の中間部3cの外径より僅かに小さい。
【0047】
挿入ガイド53は、第二脚部本体51の前下端から下方にさらに延びる。挿入ガイド53は、第二脚部本体51がレール溝22bに挿入される前の状態において、レール溝22bに挿入されるガイドとして機能する。そして、挿入ガイド53は、レール溝22bに挿入された状態においては、第二脚部本体51と同様に、第二脚部33の拡開規制効果を発揮する。
【0048】
第二押込規制突起54は、本抜止部52の下端に、下方に突出する。第二押込規制突起54は、パイプ3の環状突部3aが第二押込規制突起54の下方に位置する状態において、環状突部3aに当接することにより、リテーナ30が初期位置から確認位置への移動を規制する。第二押込規制突起54の前面は、傾斜面を形成しており、環状突部3aとの当接による芯合わせ機能を有する。
【0049】
一対のリリース用操作部34,34は、基部31の両外面から、外側に張り出すように設けられる。一対のリリース用操作部34,34は、作業者が指を引っかけて引き抜くことができるように形成される。
【0050】
(4.組み付け時の動作説明)
次に、クイックコネクタ1にパイプ3を挿入し、リテーナ30による完全な係止状態までの動作について説明する。以下に、パイプ挿入前状態、パイプ挿入未完状態、パイプ挿入完了状態、確認状態、及び、リリース状態のそれぞれについて説明する。
【0051】
(4−1.パイプ挿入前状態)
パイプ挿入前状態について、
図5A−
図5Dを参照して説明する。パイプ挿入前状態とは、リテーナ30がコネクタ本体10に対して初期位置に位置し、且つ、パイプ3がコネクタ本体10に挿入される前の状態である。
【0052】
リテーナ30は、コネクタ本体10の筒部21と開口端座部材22との軸方向間の上方から装着される。つまり、一対の第一脚部32,32及び一対の第二脚部33,33が、上部連結部材23を跨ぐように挿入される。
【0053】
第一脚部本体41が、筒部21のガイド部21aとレール溝22bの外側肩部22cとの軸方向間に挿入される。従って、コネクタ本体10に対するリテーナ30の軸方向の位置決めがされる。さらに、第二脚部本体51及び挿入ガイド53が、レール溝22bに挿入される。従って、コネクタ本体10に対するリテーナ30の左右方向の位置決めがされる。同時に、第二脚部33の拡開量が僅かな範囲に規制される。
【0054】
さらに、
図5Bに示すように、リテーナ30のガイド突起43が、引抜被係止部25の下方に位置する。従って、リテーナ30に加えられる引き抜き荷重が小さい場合には、ガイド突起43の上面が引抜被係止部25に対して引き抜き方向に係止されることで、リテーナ30が初期位置から引き抜かれることが規制される。
【0055】
リテーナ30に大きな引き抜き荷重が加えられた場合には、ガイド突起43の上面が湾曲しているため、ガイド突起43と引抜被係止部25との当接によって、一対の第一脚部32,32が拡開変形する。ただし、ガイド突起43の上面の内端が、引抜被係止部25に対して左右外側に係止されるため、一対の第一脚部32,32の拡開は所定量で規制される。つまり、リテーナ30に引き抜き荷重が加えられたとしても、リテーナ30が初期位置から引き抜かれることは防止される。
【0056】
また、
図5Dに示すように、リテーナ30の第一押込規制突起44が、押込被係止部26の上方に位置する。一対の第一脚部32,32が拡開していない状態であれば、第一押込規制突起44が押込被係止部26に押し込み方向及び左右外側に係止される。従って、一対の第一脚部32,32の拡開が規制されると共に、リテーナ30が初期位置から確認位置へ押し込まれることが規制される。
【0057】
この状態において、
図5Bに示すように、一対の第一脚部32,32の仮抜止部42,42の前面における内側範囲が、パイプ3の環状突部3aの進入位置に位置する。つまり、仮抜止部42,42は、パイプ3の環状突部3aに対して当接可能な位置に位置する。
【0058】
(4−2.パイプ挿入未完状態)
パイプ挿入未完状態について、
図6A−
図6Dを参照して説明する。パイプ挿入未完状態とは、リテーナ30がコネクタ本体10に対して初期位置に位置し、且つ、パイプが正規位置より軸方向前側に位置する途中位置に位置する状態である。
【0059】
図5A−
図5Dに示すパイプ挿入前状態から、コネクタ本体10にパイプ3が挿入されると、パイプ3の先端部3bがリテーナ30の一対の第一脚部32,32及び一対の第二脚部33,33の間を通過する。
【0060】
続いて、パイプ3の環状突部3aが、第一脚部32,32の仮抜止部42の前面における内側範囲に当接すると同時に、第二押込規制突起54の前面に当接する。
図6Bに示すように、環状突部3aが第二押込規制突起54の前面に当接して、リテーナ30が僅かに上方へ移動することで、仮抜止部42と環状突部3aとの芯合わせが行われる。
【0061】
パイプ3がさらに軸方向奥側へ挿入されることで、環状突部3aが仮抜止部42の前面を奥側に押し付ける。この押し付けに伴って、
図6Bに示すように、一対の第一脚部32,32が拡開変形する。このとき、ガイド突起43の上面の内端が、引抜被係止部25に対して左右外側に係止される。そのため、一対の第一脚部32,32の拡開が所定量で規制され、リテーナ30がコネクタ本体10に保持された状態が維持される。
【0062】
ここで、環状突部3aによる仮抜止部42への押し付けによって、一対の第一脚部32,32が拡開変形するため、第一押込規制突起44は押込被係止部26との係止が解除される。従って、この状態においては、第一押込規制突起44による押込規制効果は、発揮されない。
【0063】
しかし、この状態において、第二押込規制突起54は、仮抜止部42と軸方向同一位置に位置する。そのため、第二押込規制突起54が、環状突部3aの径方向外方に位置する。さらに、一対の第二脚部33,33は、環状突部3aの最大外径部を通過できるほどに拡開しない。従って、第二押込規制突起54は、環状突部3aにリテーナ30の押し込み方向に当接することにより、リテーナ30の初期位置から確認位置への押し込まれることが規制される。
【0064】
(4−3.パイプ挿入完了状態)
パイプ挿入完了状態について、
図7A−
図7Eを参照して説明する。パイプ挿入完了状態とは、リテーナ30がコネクタ本体10に対して初期位置に位置し、且つ、パイプが正規位置に位置する状態である。
【0065】
図6A−
図6Dに示すパイプ挿入未完状態から、パイプ3がさらに奥側に挿入されると、
図7A−
図7Eに示すように、環状突部3aが仮抜止部42を通過して、環状突部3aがガイド突起43が存在する位置に到達する。環状突部3aがガイド突起43の位置に位置する状態におけるパイプ3の位置が正規位置である。
【0066】
パイプ3が正規位置に到達して、環状突部3aがガイド突起43の下方に位置することで、仮抜止部42と環状突部3aとの係合が解消されて、一対の第一脚部32,32の拡開変形量が一気に減少する。一対の第一脚部32,32の拡開変形量が減少する間、リテーナ30は、パイプ3及びコネクタ本体10によって何ら規制されていない。そのため、パイプ3が正規位置に到達した時に、一対の第一脚部32,32の拡開変形の復帰に伴う音が発生する。特に、リテーナ30が何ら規制されていないため、リテーナ30の振動によって、高周波の音が発生する。この音によって、作業者は、パイプ3が正規位置に到達したことを確認できる。
【0067】
パイプ3が正規位置に位置する状態において、ガイド突起43が、環状突部3aと一対の引抜被係止部25,25との上下方向間に位置する。ガイド突起43の下面と環状突部3aの外周面形状との関係、及び、ガイド突起43の上面と引抜被係止部25の下面との関係によって、リテーナ30の上下方向位置がある程度決められている。
【0068】
この状態において、環状突部3aは、仮抜止部42とブッシュ74との軸方向間に挟まれる。つまり、仮抜止部42が、環状突部3aに対して軸方向に係止することで、仮抜止部42が、パイプ3を抜け止めする。
【0069】
ここで、パイプ3に引き抜き荷重が加えられた場合には、環状突部3aが仮抜止部42の軸方向奥側の面42cを前側に押し付け、さらに仮抜止部42の軸方向前側の面42bの外側範囲がコネクタ本体10の開口端座部材22を前側に押し付ける。
【0070】
仮抜止部42の軸方向前側の面42bの外側範囲は、外側から内側に向かうに従って軸方向前側に位置するように傾斜形成されている。そのため、仮抜止部42による開口端座部材22への押し付けによって、一対の第一脚部32,32には、拡開しない方向に変形する力が作用する。
【0071】
さらに加えて、仮抜止部42の軸方向奥側の面42cは、外側から内側に向かうに従って軸方向奥側に位置するように傾斜形成されている。そのため、環状突部3aによる仮抜止部42への押し付けによって、一対の第一脚部32,32には、拡開しない方向に変形する力が作用する。つまり、仮抜止部42の軸方向前側の面42b及び奥側の面42cの傾斜形成によって、仮抜止部42によるパイプ3の抜け止め力が高まる。
【0072】
(4−4.確認状態)
確認状態について、
図8A−
図8Dを参照して説明する。確認状態とは、パイプ3が正規位置に位置し、且つ、リテーナ30が確認位置に位置する状態である。
【0073】
図7A−
図7Eに示すパイプ挿入完了状態においては、ガイド突起43が環状突部3aの外周面のうち上方部位に接触し得る位置に位置する。この状態から、リテーナ30にコネクタ本体10への押し込み荷重が加えられると、ガイド突起43の下面が環状突部3aの外周面にガイドされることで、一対の第一脚部32,32は、下方へ移動しながら拡開変形する。同時に、一対の第一脚部32,32の拡開変形によって、リテーナ30の第一押込規制突起44と押込被係止部26との係止が解除される。従って、リテーナ30の初期位置から確認位置への移動規制が解除される。
【0074】
リテーナ30に押し付け荷重が加え続けられることにより、リテーナ30は、
図8A−
図8Dに示すように、第二脚部本体51及び挿入ガイド53がレール溝22bにガイドされながら、確認位置へ移動する。このとき、ガイド突起43は、環状突部3aの外周面によるガイドの開放により、一対の第一脚部32,32の拡開変形が復帰する。そのため、環状突部3aは、ガイド突起43の上面の上方に位置する。従って、ガイド突起43は、環状突部3aに対してリテーナ30の引き抜き方向に係止する。つまり、ガイド突起43がリテーナ30の引き抜き方向の移動を規制する。その結果、確認状態において、リテーナ30が容易に引き抜かれることが防止される。
【0075】
ここで、第二脚部33の本抜止部52のそれぞれの下端同士の左右幅は、パイプ3の中間部3cの外径より僅かに小さい。そのため、リテーナ30が初期位置から確認位置へ押し込まれる際に、本抜止部52がパイプ3の中間部3cにガイドされることによって、一対の第二脚部33は、僅かに拡開変形する。ただし、第二脚部本体51がレール溝22bに規制されることによって、一対の第二脚部33,33の拡開量は、一対の第一脚部32,32の拡開量に比べると非常に僅かである。その後、本抜止部52の内側面の円弧凹状部分に、パイプ3の中間部3cが位置すると、一対の第二脚部33の拡開変形が復帰される。
【0076】
なお、本実施形態においては、一対の第二脚部33,33が僅かではあるが、拡開変形することとしたが、一対の第二脚部33,33は、全く拡開変形しないようにすることもできる。この場合は、本抜止部52のそれぞれの下端同士の左右幅を、パイプ3の中間部3cの外径と同等以上にすればよい。
【0077】
さらに、確認状態において、環状突部3aは、本抜止部52の軸方向奥側の面に対向する。本抜止部52は、大きな拡開を規制されている一対の第二脚部33,33に形成される。そのため、リテーナ30が確認位置に位置する限り、本抜止部52は、環状突部3aに対して軸方向に強固な力で係止する。従って、パイプ3が確実に抜け止めされる。
【0078】
また、確認状態において、押込被係止部26は、
図8Dに示すように、仮抜止部42の切欠42aの領域に位置する。さらに、押込被係止部26は、本抜止部52及び第二押込規制突起54の下方に位置する。
【0079】
(4−5.リリース状態)
リリース状態について、
図6B−
図6D、
図7A−
図7E及び
図8A−
図8Dを参照して説明する。保守などにおいてコネクタ本体10からパイプ3を引き抜く場合が生じる。リリース状態とは、パイプ3が正規位置に位置する状態において、パイプ3がコネクタ本体10から引き抜くことができる状態である。
【0080】
リテーナ30を、
図8A−
図8Dに示す確認位置に位置する状態から、
図7A−
図7Dに示す初期位置へ移動させる。そのためには、作業者が、リテーナ30の一対のリリース用操作部34,34に指を引っかけて、リテーナ30に引き抜き荷重を加える。そうすると、ガイド突起43が環状突部3aの外周面にガイドされながら、リテーナ30が確認位置から初期位置へ移動する。
【0081】
なお、作業者は、一対のリリース用操作部34,34への引っかけに変えて、又は、引っかけに加えて、マイナスドライバーなどの治具を基部31の切欠31a(
図4に示す)に挿入して、リテーナ30を確認位置から初期位置へ移動させることもできる。
【0082】
リテーナ30が初期位置に移動したとしても、
図7A−
図7Eに示すように、仮抜止部42が環状突部3aに軸方向に係止する。そこで、リテーナ30が初期位置に位置する状態において、作業者は、一対のリリース用操作部34,34に指を引っかけて、リテーナ30にさらなる引き抜き荷重を加える。そうすると、リテーナ30は、
図6B−
図6Dに示す位置へ移動する。つまり、一対の第一脚部32,32のガイド突起43の上面が、一対の引抜被係止部25にガイドされて、一対の第一脚部32,32が拡開変形する。
【0083】
一対の第一脚部32,32の拡開変形によって、仮抜止部42と環状突部3aとの係止が解除される。この状態で、作業者は、パイプ3をコネクタ本体10から引き抜くことができる。
【0084】
(5.本実施形態の効果)
上述したように、クイックコネクタ1は、コネクタ本体10と、リテーナ30とを備える。コネクタ本体10は、環状突部3aを有するパイプ3を挿入可能である。リテーナ30は、パイプ3がコネクタ本体10の軸方向の正規位置(
図7Aに示す位置)に挿入された状態において、コネクタ本体10の軸方向に交差する方向への押し込み操作によりコネクタ本体10に対して初期位置(
図7Aに示す位置)から確認位置(
図8Aに示す位置)へ移動する。そして、リテーナ30は、確認位置にて環状突部3aに軸方向に係止することでパイプ3を抜け止めする。
【0085】
リテーナ30は、基部31と、基部31の両端に設けられ、拡開可能な一対の第一脚部32,32と、基部31の両端に設けられ、一対の第一脚部32,32とは独立して設けられ、一対の第一脚部32,32より拡開量の小さな一対の第二脚部33,33とを備える。
【0086】
ここで、一対の第一脚部32,32は、一対の第一脚部32,32の先端側に設けられ、リテーナ30の初期位置から確認位置への移動を規制する第一押込規制突起44を備える。一対の第二脚部33,33は、一対の第二脚部33,33の先端側に設けられ、リテーナ30の初期位置から確認位置への移動を規制する第二押込規制突起54を備える。
【0087】
第一押込規制突起44は、
図5Dに示すように、リテーナ30が初期位置に位置し、且つ、パイプ3がコネクタ本体10に挿入されていない状態において、コネクタ本体10に係止されることにより、リテーナ30の初期位置から確認位置への移動を規制する。
【0088】
さらに、第一押込規制突起44は、
図6Dに示すように、リテーナ30が初期位置に位置し、且つ、パイプ3が正規位置より軸方向前側に位置する途中位置に位置する状態において、一対の第一脚部32,32が環状突部3aとの当接に伴って拡開することにより、コネクタ本体10との係止を解除する。
【0089】
第二押込規制突起54は、
図6Dに示すように、リテーナ30が初期位置に位置し、且つ、パイプ3が途中位置に位置する状態において、パイプ3の環状突部3aにリテーナ30の押し込み方向に当接することにより、リテーナ30の初期位置から確認位置への移動を規制する。
【0090】
つまり、一対の第一脚部32,32と一対の第二脚部33,33とのそれぞれが、押込規制突起(44,54)を備える。従って、第一押込規制突起44及び第二押込規制突起54により、2つの状態において、リテーナ30の押し込み規制が可能となる。詳細には、第一押込規制突起44は、パイプ3が挿入されていない状態において機能する。第二押込規制突起54は、パイプ3が途中位置に位置する状態において機能する。従って、パイプ3が途中位置に位置する状態であっても、リテーナ30が押込み移動されることがなくなる。
【0091】
また、一対の第二脚部33,33は、
図3A及び
図3Bに示すように、パイプ3がコネクタ本体10の軸方向の正規位置に挿入された状態、且つ、リテーナ30が確認位置に位置する状態において、環状突部3aに軸方向に係止してパイプ3を抜け止めする本抜止部52を備える。
【0092】
本抜止部52が、拡開量の小さな一対の第二脚部33,33に形成されることで、本抜止部52による抜け止め力が高くなる。つまり、本抜止部52により環状突部3aが移動規制される状態において、パイプ3がコネクタ本体10から引き抜かれることを確実に抑制できる。
【0093】
また、第一押込規制突起44と本抜止部52とは、軸方向に同一位置に位置し、且つ、パイプ3が正規位置に位置する状態において、環状突部3aより軸方向前側に位置する。パイプ3が正規位置に位置し、且つ、リテーナ30が確認位置に位置する状態において、リテーナ30は、環状突部3aの軸方向奥側の面に対向する部位が存在しない。本実施形態においては、環状突部3aの軸方向奥側の面には、ブッシュ74が近接した位置に位置する。第一押込規制突起44と本抜止部52を上記構成とすることにより、ブッシュ74を環状突部3aに近接した位置に配置することができる。結果として、パイプ3が正規位置に位置し、且つ、リテーナ30が確認位置に位置する状態において、環状突部3aがクイックコネクタ1に対して軸方向にがたつくことが抑制される。ひいては、パイプ3がクイックコネクタ1に対して軸方向にがたつくことが抑制される。
【0094】
また、コネクタ本体10は、さらに、相互に軸方向に対向する面からなり、コネクタ本体10に対するリテーナ30の軸方向の両方向への移動を規制する対向規制面(ガイド部21aの前面及び外側肩部22cの奥面)を有する。一対の第一脚部32,32の軸方向両端面のそれぞれは、対向規制面(21a,22c)のそれぞれに対向し、一対の第一脚部32,32は、対向規制面(21a,22c)により軸方向の両方向への移動を規制される。
【0095】
一対の第一脚部32,32自身が、コネクタ本体10の対向規制面(21a,22c)に挟まれることによって、リテーナ30の軸方向の両方向への移動が規制される。つまり、一対の第二脚部33,33は、リテーナ30の軸方向の移動に対する規制力を有する必要がない。つまり、一対の第一脚部32,32単独がコネクタ本体10の対向規制面(21a,22c)に挟まれることで、リテーナ30がコネクタ本体10に対して軸方向にがたつくことが抑制される。
【0096】
また、一対の第一脚部32,32は、仮抜止部42を備える。仮抜止部42は、リテーナ30が初期位置に位置する状態において、環状突部3aとの当接に伴って一対の第一脚部32,32を拡開変形させることにより環状突部3aの奥側への通過を許容する。さらに、仮抜止部42は、リテーナ30が初期位置に位置する状態において、パイプ3が正規位置に到達したときに一対の第一脚部32,32の拡開変形量を減少させることで、環状突部3aに軸方向に係止してパイプ3を抜け止めする。
【0097】
仮抜止部42が、一対の第一脚部32,32に設けられ、本抜止部52が、一対の第二脚部33,33に設けられる。このように、仮抜止部42と本抜止部52とを分離することにより、それぞれの機能を確実に且つ効果的に発揮できる。
【0098】
また、仮抜止部42の軸方向前側の面42bは、コネクタ本体10に当接し、且つ、外側から内側に向かうに従って軸方向前側に位置するように傾斜形成される。リテーナ30が初期位置に位置する状態であり、且つ、パイプ3に正規位置から引き抜き力が作用する場合に、仮抜止部42が環状突部3aから引き抜き力を受ける。そうすると、仮抜止部42はコネクタ本体10に当接する。このとき、上記のように、仮抜止部42の軸方向前側の面42bの傾斜形成によって、一対の第一脚部32,32には、拡開しない方向に変形する力が作用する。従って、仮抜止部42の軸方向前側の面42bの傾斜形成によって、仮抜止部42によるパイプ3の抜け止め力が高まる。
【0099】
また、仮抜止部42の軸方向奥側の面42cは、環状突部3aに当接し、外側から内側に向かうに従って軸方向奥側に位置するように傾斜形成される。そのため、環状突部3aによる仮抜止部42への押し付けによって、一対の第一脚部32,32には、拡開しない方向に変形する力が作用する。つまり、仮抜止部42の軸方向奥側の面42cの傾斜形成によって、仮抜止部42によるパイプ3の抜け止め力が高まる。