特許第6149118号(P6149118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149118
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】電気化学装置および腐食を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20170607BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20170607BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   H01M8/02 E
   H01M8/02 R
   H01M8/10
   H01M4/86 M
【請求項の数】15
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-541749(P2015-541749)
(86)(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公表番号】特表2015-534253(P2015-534253A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】US2012064328
(87)【国際公開番号】WO2014074107
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2015年7月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ダーリング,ロバート メイソン
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,マイケル エル.
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−040267(JP,A)
【文献】 特表2011−527509(JP,A)
【文献】 特開昭61−127883(JP,A)
【文献】 特表2013−518362(JP,A)
【文献】 特開2006−134802(JP,A)
【文献】 特開2006−120351(JP,A)
【文献】 特開昭57−094581(JP,A)
【文献】 特表2013−541810(JP,A)
【文献】 特開平04−357676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/0297
H01M 8/08 − 8/2495
H01M 4/86 − 4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気化学的に活性な領域を画成する複数の電極アッセンブリと、
イオン伝導性流体を輸送するように共通マニホールド通路を備える非導電性マニホールドと、
複数の電気化学的に活性な領域と共通マニホールド通路との間にそれぞれ延在する複数の支流通路であって、複数の支流通路のそれぞれが、表面積の異なる第1の区域と第2の区域とを備える、複数の支流通路と、
を備え
第1の区域および第2の区域は、壁面の表面粗さが異なることを特徴とする電気化学装置。
【請求項2】
複数の電極アッセンブリのそれぞれが、第1の多孔質電極と、第2の多孔質電極と、第1の多孔質電極と第2の多孔質電極との間にあるセパレータ層とを備え、第1の多孔質電極および第2の多孔質電極はそれぞれ、セパレータ層より大きな領域に及んでいることを特徴とする請求項1記載の電気化学装置。
【請求項3】
第1の多孔質電極および第2の多孔質電極は、セパレータ層の側部を越えて延在するそれぞれの張り出し部分を備え、張り出し部分のそれぞれは、複数の支流通路のうちの各支流通路の第2の区域を画定するが、第1の区域は画定しないことを特徴とする請求項2記載の電気化学装置。
【請求項4】
第2の区域は、複数の電気化学的に活性な領域の外部にある導電性表面によって部分的に画定されることを特徴とする請求項1記載の電気化学装置。
【請求項5】
第1の区域は、非導電性ポリマー壁によって画定されることを特徴とする請求項記載の電気化学装置。
【請求項6】
電気化学装置は、複数の支流通路と流体的に接続された複数の流路を備える二極性プレートをさらに備え、複数の流路は、複数の電気化学的に活性な領域内にあることを特徴とする請求項1記載の電気化学装置。
【請求項7】
複数の流路は、流路壁の間を走り、流路壁のそれぞれは、テーパ付きの端部を備えることを特徴とする請求項記載の電気化学装置。
【請求項8】
テーパ付きの端部は、尖端までテーパが付けられることを特徴とする請求項記載の電気化学装置。
【請求項9】
テーパ付きの端部は、丸みを付けた端部へとテーパが付けられることを特徴とする請求項記載の電気化学装置。
【請求項10】
複数の流路は、交互嵌合流路であることを特徴とする請求項記載の電気化学装置。
【請求項11】
イオン伝導性流体は、結果として異なる酸化状態になる酸化還元反応を容易に受けてエネルギーの貯蔵を可能とする1つまたは複数の反応物を含有することを特徴とする請求項1記載の電気化学装置。
【請求項12】
電気化学装置内の腐食を制御する方法であって、電気化学装置が、
複数の電気化学的に活性な領域を画成する複数の電極アッセンブリと、
イオン伝導性流体を輸送するように共通マニホールド通路を備える非導電性マニホールドと、
複数の電気化学的に活性な領域と共通マニホールド通路との間にそれぞれ延在する複数の支流通路であって、複数の支流通路のそれぞれが、表面積の異なる第1の区域と第2の区域とを備える、複数の支流通路と、
を備え、
第1の区域および第2の区域は、壁面の表面粗さが異なり、該方法は、
反応物流体の自己反応と電気化学装置の構成要素の腐食反応とによって維持され得る分流電流を生成する反応物流体の流れを、共通マニホールド通路と複数の電極アッセンブリとの間に供給し、
構成要素の腐食を制限するように、腐食反応に優先して自己反応によって分流電流を維持する傾向を確立する、
ことを含むことを特徴とする、電気化学装置内の腐食を制御する方法。
【請求項13】
前記の確立することは、共通マニホールド通路と複数の電極アッセンブリの複数の電気化学的に活性な領域との間に複数の支流流路を提供することを含み、複数の支流通路のそれぞれは、表面積の異なる第1の区域と第2の区域とを備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記の確立することは、流路壁の間を走る複数の流路を備える二極性プレートを提供することを含み、流路壁のそれぞれは、テーパ付きの端部を備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記の確立することは、
共通マニホールド通路と複数の電極アッセンブリの複数の電気化学的に活性な領域との間に複数の支流流路を提供し、
流路壁の間を走る複数の流路を備える二極性プレートを提供する、
ことを含み、複数の支流通路のそれぞれは、表面積の異なる第1の区域と第2の区域とを備え、流路壁のそれぞれは、テーパ付きの端部を備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内部腐食に対する抵抗が向上した電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、フローバッテリ、および他の電気化学装置は一般に、電流を生成するので知られており、使用されている。電気化学装置は一般に、反応物の間の既知の電気化学反応で電流を生成するために、アノード電極と、カソード電極と、アノード電極とカソード電極の間にあるセパレータとを備える。典型的には、イオン伝導性反応物を用いる場合、電気化学装置内の異なる位置における電位差によって、分流電流としても知られる漏れ電流が生じ、これによってエネルギー効率が低下する。さらに、分流電流は、電気化学装置の構成要素の腐食を促進し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
電気化学装置は、複数の電気化学的に活性な領域を画成する複数の電極アッセンブリを備える。非導電性マニホールドが、共通マニホールド通路と、複数の電気化学的に活性な領域と共通マニホールド通路との間にそれぞれ延在する複数の支流通路と、を備える。各支流通路は、表面積の異なる第1の区域と第2の区域とを備える。
【0004】
電気化学装置内の腐食を制御する方法も開示される。方法は、共通マニホールド通路と複数の電極アッセンブリとの間に反応物流体の流れを供給することを含む。反応物流体は、反応物流体の自己反応と電気化学装置の構成要素の腐食反応とによって維持され得る分流電流を生成する。腐食反応は、腐食反応ではなくて自己反応によって分流電流を維持する傾向を確立することによって制限される。
【0005】
本開示のさまざまな特徴および利点は、当業者には以下の詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明に付随する図面は、以下のように簡単に説明可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施例の電気化学装置を示す図。
図2図1の電気化学装置の代表的な支流通路を示す図。
図3】別の実施例の電気化学装置を示す図。
図4図3の電気化学装置に使用される電極アッセンブリおよびフレームを示す図。
図5図3の電気化学装置に使用される二極性プレートおよびフレームを示す図。
図6】テーパ付きの端部を有する二極性プレート流路壁を示す図。
図7】テーパ付きの端部を有する、別の実施例の二極性プレート流路壁を示す図。
図8】テーパ付きの端部を有する、別の実施例の二極性プレート流路壁を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、実施例の電気化学装置20を概略的に示す。理解されるように、電気化学装置20は、燃料電池、フローバッテリ、または1つまたは複数のイオン伝導性反応物を利用する他の種類の電気化学装置とすることができる。より詳細に説明するように、電気化学装置20は、炭素または金属を含有する構成要素などの電気化学装置20内の内部構成要素の腐食を制御または制限する特徴を備える。
【0008】
この実施例では、電気化学装置20は、スタック内に配置された複数の電極アッセンブリ22を備える。電極アッセンブリ22は、複数の電気化学的に活性な領域24を画成する。電気化学的に活性な領域24は、反応物が電流を生成するように酸化/還元反応にあずかる帯域である。この実施例では、反応物は、非導電性マニホールド26を通して供給される。例えば、非導電性マニホールド26は、非導電性ポリマー材料である。実施例の電気化学装置20は、反応物流れ(flow)Fを電極アッセンブリ22に供給し、電極アッセンブリ22から排出するのに役立つ、そのような2つの非導電性マニホールド26を備えている。非導電性マニホールド26は、少なくとも本願で説明する特徴に関して類似または同一とすることができる。
【0009】
非導電性マニホールド26は、共通マニホールド通路28を備えており、共通マニホールド通路28を通して、反応物は、電気化学的に活性な領域24のそれぞれに分配される。複数の支流通路30が、電気化学的に活性な領域24の外部または部分的に外部にあり、電気化学的に活性な領域24と共通マニホールド通路28との間に延在する。
【0010】
図2は、代表的な1つの支流通路30を示す。図示のように、支流通路30は、第1の区域32および第2の区域34のハッチングの違いによって示されるように、表面積の異なる第1の区域32と第2の区域34とを備える。一実施例では、表面積の違いは、支流通路30の壁面の相対的な粗さに起因する。すなわち、第1の区域32の壁面は、比較的滑らかであり、一方、第2の区域34の壁面は、比較的粗い。
【0011】
燃料電池、フローバッテリ、および他の電気化学装置、特にイオン伝導性反応物を利用する電気化学装置は、分流電流に起因する非効率を被り得る。いくつかの場合、分流電流は、構成要素、特に炭素または金属を含有する構成要素を腐食し、最終的に電気化学装置の寿命を低減する腐食反応によって維持される。電気化学装置内の分流電流に対処する方法の1つは、イオン伝導性反応のための経路のイオン抵抗を増大させるために支流通路の長さを増大させまたは横方向の大きさを低減することである。しかしながら、長さを増大させまたは横方向の大きさを低減することによって、反応物流れが低下しまたは反応物圧力降下が増大し、それによって、電池またはシステムの性能に不利な影響を及ぼし得る。本願で開示される電気化学装置20および方法は、異なる取り組み方をする。抵抗を制限するのではなくて、本願の電気化学装置20および方法は、腐食反応に優先する反応物の自己反応によって、そのような分流電流を維持する傾向を確立する。言い換えると、反応物の自己反応および腐食反応は、競合反応であり、自己反応への傾向が大きいほど、腐食反応を制限する。例えば、自己反応は、反応物の酸化状態の変化である。バナジウム液体電解質反応物では、自己反応は、正の反応物流体中でのV4+からV5+への、または負の反応物流体中でのV2+からV3+への変化である。同様の自己反応が、臭素、鉄、クロム、亜鉛、セリウム、鉛、またはこれらの組み合わせに基づく反応物種などの他の反応物種について予想される。
【0012】
電気化学的に活性な領域の外部では、反応物が存在する状態で、電流密度が比較的高く、表面積が比較的小さい場合、表面積が小さいことで、反応物の自己反応に触媒作用を及ぼすために利用できる部位が比較的少量になる。従って、競合腐食反応が、より生じそうになる。しかしながら、同じ電流密度がより大きな表面積で与えられた場合、自己反応に触媒作用を及ぼすために利用できる表面部位がより大量になり、傾向は主に自己反応に有利な方へと移動する。この結果、これらの固体表面の腐食が少量になる。
【0013】
従って、電気化学装置20において、表面積が異なる支流流路30の第1の区域32および第2の区域34は、腐食反応に優先して反応物の自己反応を維持する傾向を促進または確立する。
【0014】
図3は、断面が示される別の実施例の電気化学装置120を示す。この開示では、同様の参照符号は同様の構成要素を示し、適切な場合は、100を追加またはそれを複合した参照符号が、対応する構成要素の同じ特徴および利益を組み込むと理解される修正された構成要素を示す。電極アッセンブリ122は、第1の多孔質電極122aと、第2の多孔質電極122bと、これらの間にあるセパレータ層122cとを備える。セパレータ層は、例えばイオン交換膜などのポリマー膜とすることができる。
【0015】
電極アッセンブリ122は、二極性プレート140の間に配置される。二極性プレート140のそれぞれは、反応物を非導電性マニホールド126の各共通マニホールド通路128a/128bにまたは各共通マニホールド通路128a/128bから運ぶように流路142を有する。
【0016】
図3の参照を続けながら、図4図5も参照すると、電極アッセンブリ122は、非導電性マニホールド126および共通マニホールド通路128a/128bの一部を形成する複数の開口部を有する非導電性フレーム144内に取り付けられる。開示の実施例は、図4図5の各部に6つのマニホールド孔を有するとはいえ、4つなど(入口、出口用に各端部に1つの+と1つの−)、より少数のものを代替として使用することができる。反応物の漏れを制限するように、シール146を電極アッセンブリ122の周囲に設ける。シール146は、電極とセパレータアッセンブリ、例えば膜−電極アッセンブリ(membrane−electrode assembly)(MEA)を一体化する手段としても機能することができる。同様に、導電性二極性プレート140のそれぞれは、非導電性マニホールド126および共通マニホールド通路128a/128bの一部を形成する複数の開口部を有する非導電性フレーム148内に取り付けられる。
【0017】
第1の多孔質電極122aおよび第2の多孔質電極122bのそれぞれは、電気化学的に活性な領域24の外部にある張り出し部分150によって示されるように、セパレータ層122cより大きな領域に及んでいる。第1の多孔質電極122aおよび第2の多孔質電極122bの各領域はまた、二極性プレート140よりも大きい。支流通路130は、非導電性フレーム148およびシール146によって画定される第1の区域132を備える。支流通路130は、二極性プレート140の流路142への入口または二極性プレート140の流路142からの出口として作用し得る。非導電性フレーム148および非導電性シール146の表面は、比較的滑らかである。第2の領域134は、非導電性フレーム148と、導電性である第1または第2の多孔質電極122a/122bとによって画定される。従って、第1および第2の多孔質電極122a/122bは、非導電性フレーム148およびシール146の滑らかな壁面より比較的より大きな表面積を提供する。従って、張り出し部分150は、分流電流用のソースまたはシンクとして機能して、そこでこれらの分留電流が腐食反応ではなく自己反応で維持され得るように、電気化学的に活性な領域24の外部にある高表面積の領域を提供する。
【0018】
図6に示すさらなる実施例では、二極性プレート140の流路142は、流路壁142aの間に延在する。流路壁142aのそれぞれは、テーパ付きの端部160を有する。この実施例では、テーパ付きの端部160は、尖端(point)Pまでテーパが付けられている。代替として、テーパ付きの端部160は、図7に示すように丸みを付けることができる。図8に示す別の代替物では、流路242は、開端部262と閉端部264とを交互に有する、交互嵌合である。テーパ付きの端部160/260はさらに、腐食反応に優先して反応物の自己反応への傾向を確立するのを促進する。反応物の自己反応は、輸送制限的である。流路壁142aのテーパ付きの端部160/260は、反応物が流路142の入口で継続的に移動するのを可能とし、それによって、腐食反応よりも反応物の自己反応を疎んじる。
【0019】
図示の実施例に特徴の組み合わせを示したとはいえ、これらの全てを、本開示のさまざまな実施例の利益を実現するために組み合わせる必要はない。言い換えると、本開示の実施例に従って設計されるシステムは、図面のいずれか1つに示された特徴の全て、または図面に概略示された部分の全てを必ずしも含まない。さらに、例示した1つの実施例の選択された特徴は、他の例示した実施例の選択された特徴と組み合わせることができる。
【0020】
上記の説明は、本質的に限定ではなく例示である。本開示の本質から必ずしも逸脱しない開示の実施例に対する変更および修正が、当業者には明らかとなり得る。本開示に与えられる法的保護範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8