特許第6149148号(P6149148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6149148かつら用粘着剤、及びかつら用粘着剤の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6149148
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】かつら用粘着剤、及びかつら用粘着剤の使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20170607BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20170607BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20170607BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170607BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20170607BHJP
   A41G 3/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   C09J201/00
   C09J133/04
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J11/08
   A41G3/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-237339(P2016-237339)
(22)【出願日】2016年12月7日
【審査請求日】2017年1月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000126218
【氏名又は名称】株式会社アートネイチャー
(73)【特許権者】
【識別番号】593084627
【氏名又は名称】日本フイリン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 祥剛
(72)【発明者】
【氏名】金子 昭二
(72)【発明者】
【氏名】西條 悟史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良彦
(72)【発明者】
【氏名】根本 学
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−167787(JP,A)
【文献】 特開2001−107007(JP,A)
【文献】 特開2000−169817(JP,A)
【文献】 特開2001−131503(JP,A)
【文献】 特表2005−535765(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/089094(WO,A1)
【文献】 特開2009−221445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
A41G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭皮に塗布して使用するかつら用粘着剤であって、
粘着剤のベース樹脂と、タッキファイヤーと、増粘剤と、フィラーとを混合してなり、前記フィラーとして、シリカ、アルギン酸カルシウム、及びナイロンパウダーからなる群から選択された一又は二以上を有効成分として含み、
前記フィラーが、前記ベース樹脂に対して、1.0重量%〜28.0重量%含有された
ことを特徴とするかつら用粘着剤。
【請求項2】
前記タッキファイヤーが、テルペンフェノール樹脂及び/又はロジンエステル樹脂であることを特徴とする請求項1記載のかつら用粘着剤。
【請求項3】
前記増粘剤が、ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーであることを特徴とする請求項1又は2記載のかつら用粘着剤。
【請求項4】
前記ベース樹脂が、アクリル酸エステル系共重合体樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のかつら用粘着剤。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のかつら用粘着剤を、頭皮に塗布し、ネット地からなるかつらベースを備えたかつらにおけるかつらベースを、前記頭皮に接着させることを特徴とするかつら用粘着剤の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつら用粘着剤に関し、特に、ネット地からなるかつらベースを備えたかつらを装着するために使用される、かつら用粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
かつらの装着方法として、かつらを頭皮に粘着剤により接着する方法がある。このような粘着剤は、皮膚に塗布するものであること、及び外観を自然に見せることが重要なかつらに適用するものであることから、特有の種々の要件を満たす必要がある。
【0003】
すなわち、このような粘着剤には、かつらが意図せずに外れたり、ずれたりすることがないように、かつらを頭皮に強力に接着できることが求められる。また、テカリなどが生じて不自然な外観にならないように、特有の色調が求められ、頭皮に一定の厚みで塗布できるような塗りやすさも求められる。さらに、通気性やブラッシングの妨げとなるべたつきが少ないことが必要であり、装着作業性の観点からは早く乾燥することが求められる。さらにまた、汗や皮脂を吸収できるように吸水、吸油性を有するものであることが望ましく、長期間の保存が可能なように安定性に優れたものであることが望ましい。
【0004】
このように、かつら用粘着剤は、かつらを頭皮に接着するのに適したものとするために特有の多くの優れた性能や機能を備えたものとすることが重要となっている。
【0005】
ここで、粘着剤に関連する技術としては、特許文献1に記載の水性粘着剤、特許文献2に記載のかつら用固定剤を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−317164号公報
【特許文献2】特開2005−336680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の水性粘着剤は、かつらを頭皮にしっかり固定でき、かつ外し易いものとすることを目的として発明されたものである。この粘着剤は、優れた粘着力を備えているが、アクリルと酢酸ビニル樹脂との共重合エマルジョンを主成分とするものであるため、臭みがあるという課題があり、改善の余地があった。
また、特許文献2に記載のかつら用固定剤は、感温性粘着剤を用いることで、かつらを頭皮に高い固定力で固定できると共に、取外しも簡単にでき、また耐水性や耐汗性にも優れたものとされている。かつらを頭皮に接着するのにより適したものとするためには、上述の通り、さらに多くの優れた性能や機能を備えたものとすることが望ましい。
【0008】
すなわち、かつら用粘着剤は、装着した後にかつらが外れたりずれたりすることがないように、強い接着力を有すると同時に、自然な色調を有すること、なめらかに塗布できること、べたつかないこと、乾燥性に優れること、吸水及び吸油性に優れること、及び安定性に優れること等の特有の性能や機能を備えたものとすることが望ましい。
【0009】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、接着力、色調、塗りやすさ、べたつき、乾燥性等に優れたかつら用粘着剤、及びかつら用粘着剤の使用方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明のかつら用粘着剤は、粘着剤のベース樹脂と、タッキファイヤー(粘着付与剤)と、増粘剤と、フィラー(充填材)とを混合してなり、前記フィラーとして、シリカ、アルギン酸カルシウム、及びナイロンパウダーからなる群から選択された一又は二以上を有効成分として含む構成としてある。
また、本発明のかつら用粘着剤の使用方法は、上記のかつら用粘着剤を、頭皮に塗布し、ネット地からなるかつらベースを備えたかつらにおけるかつらベースを、前記頭皮に接着させる方法としてある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接着力、色調、塗りやすさ、べたつき、乾燥性等に優れたかつら用粘着剤及びその使用方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るかつら用粘着剤の性能の評価結果(実施例1−18)を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るかつら用粘着剤の性能の評価結果(実施例19−36)を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るかつら用粘着剤の性能の評価結果(実施例37−45)を示す図である。
図4】比較例のかつら用粘着剤の性能の評価結果(比較例1−13)を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るかつら用粘着剤の性能の評価結果(実施例46−63)を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るかつら用粘着剤の性能の評価結果(実施例64−81)を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るかつら用粘着剤の性能の評価結果(実施例82−90)を示す図である。
図8】比較例のかつら用粘着剤の性能の評価結果(比較例14−26)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るかつら用粘着剤、及びかつら用粘着剤の使用方法について、詳細に説明する。
本実施形態のかつら用粘着剤は、粘着剤のベース樹脂と、タッキファイヤーと、増粘剤と、フィラーとを混合してなり、フィラーとして、シリカ、アルギン酸カルシウム、及びナイロンパウダーからなる群から選択された一又は二以上を有効成分として含むことを特徴とする。
【0014】
本実施形態のかつら用粘着剤における粘着剤のベース樹脂としては、水溶性エマルジョンであることが好ましく、アクリル系樹脂を好適に用いることができ、特に、アクリル酸エステル系共重合体樹脂を好適に用いることができる。
アクリル酸エステル系共重合体樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、特に限定されず、種々のものを用いることができる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート等が挙げられ、炭素数4〜12、特には4〜10、更には4〜8のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的にはn−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が好ましく用いられ、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましく用いられる。これらの2種類以上を混合して用いても良い。
【0015】
本実施形態のかつら用粘着剤におけるタッキファイヤー(粘着付与剤)としては、粘着剤において一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、テルペン系樹脂(α−ピネン、β−ピネン等の重合体又は共重合体)、ロジン誘導体(ロジン、重合ロジン、水添ロジン、及びそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等とのエステルなど)、石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が挙げられる。これらの2種類以上を混合して用いても良い。
【0016】
本実施形態のかつら用粘着剤は、タッキファイヤーが、ベース樹脂に対して、5.0重量%〜12.0重量%含有されたものとすることが好ましく、6.0重量%〜11.0重量%含有されたものとすることがより好ましく、7.0重量%〜10.0重量%含有されたものとすることがさらに好ましく、8.0重量%〜9.0重量%含有されたものとすることが特に好ましい。
【0017】
本実施形態のかつら用粘着剤における増粘剤としては、粘着剤において一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、ウレタン系増粘剤、セルロース系増粘剤、天然高分子系増粘剤等が挙げられる。具体的には、ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ジェランガム、グアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの2種類以上を混合して用いても良い。
【0018】
本実施形態のかつら用粘着剤は、増粘剤が、ベース樹脂に対して、0.2重量%〜7.0重量%含有されたものとすることが好ましく、0.5重量%〜5.0重量%含有されたものとすることがより好ましく、1.0重量%〜3.0重量%含有されたものとすることがさらに好ましく、1.5重量%〜2.0重量%含有されたものとすることが特に好ましい。
【0019】
本実施形態のかつら用粘着剤におけるフィラー(充填剤)としては、シリカ、アルギン酸カルシウム、及びナイロンパウダーからなる群から選択された一又は二以上を有効成分として用いることが好ましい。
ここで、フィラーは、一般に粉体の原料であり、粘着剤や接着剤に補助的に添加することにより、嵩増し、増粘、凝集力の向上を図るためのものである。本実施形態のかつら用粘着剤では、このフィラーの材質の選択と、その添加量を調整することによって、かつら用粘着剤の接着力、色調、塗りやすさ、べたつき、乾燥性、吸水及び吸油性、並びに安定性等のバランスを最適化している。
【0020】
なお、本実施形態のかつら用粘着剤の性能や機能の評価指標としての接着力、色調、塗りやすさ、べたつき、乾燥性のうち、塗りやすさ、乾燥性は主として装着作業性に関連し、接着力、色調、べたつきは、主として外観と装着感に影響する。
【0021】
かつら用粘着剤の接着力は、粘着剤に粉体状のフィラーを添加することで、向上させることができる。フィラーの添加量を増加すると、一定量までは接着強度は増加するが、これを超えると接着強度は低下する。
本実施形態のかつら用粘着剤では、上記のフィラーを適量添加することで、接着力を高めつつ、その他の性質や機能を合せて向上させることが可能となっている。
【0022】
かつら用粘着剤の色調としては、粘着剤被膜のつや消し効果があることが求められる。すなわち、頭皮に塗布されたかつら用粘着剤の表面の状態は、かつらベースのメッシュの隙間から目視できる。このため、不自然な光沢や色調が生じないようにする必要がある。
例えば、粘着剤が乾燥した後の状態に光沢が生じたり、あるいは白化したり、その他の色調が生じることによって、かつらの自然さが阻害される場合がある。
そこで、本実施形態のかつら用粘着剤においては、上記のフィラーを適量添加することで、フィラーによって生じた粘着剤表面の凹凸が光を乱反射させ、つやを抑えることを可能にしている。ただし、フィラーの種類や添加量によっては、フィラー自体が光ったり、過度に白くなったりするなど、外観が不自然となることから、適切な種類の選定と適性量の添加が重要である。
【0023】
かつら用粘着剤は、高粘度でありながら、クリーム状のなめらかな塗布感が求められる。すなわち、頭皮に塗布して乾燥させた状態において十分な被膜強度を得るためには、ある程度の塗布厚(160μm以上)を確保する必要がある。そのためには水のように粘度が低いと、一定の膜厚を確保することが難しくなる一方、粘度が高くなるにつれて塗布面を均一に仕上げることが困難となる。
そこで、本実施形態のかつら用粘着剤においては、上記のフィラーを適量添加することで、塗布厚を確保するために十分な粘度が得られ、かつ塗布しやすいクリーム状のなめらかな液性を実現している。
【0024】
かつら用粘着剤は、べたつきを抑えたものとする必要がある。すなわち、かつら用粘着剤にべたつきが生じて、かつら用粘着剤がかつらベースのメッシュを透過して毛髪の根本に浸出すると、かつらのブラッシングが困難となる。また、かつら用粘着剤が枕などに転移したり、汗と混じることで垂れが生じる場合があるなど、かつら用粘着剤のべたつきは、かつらの使用において深刻な問題となる。
そこで、本実施形態のかつら用粘着剤においては、上記のフィラーを適量添加することで、このようなべたつきの問題を改善することを可能としている。
【0025】
かつら用粘着剤は、早く乾燥するものであることが好ましい。かつら用粘着剤が早く乾燥すれば、かつらを頭部に装着するための施術時間を短くすることができるためである。
本実施形態のかつら用粘着剤は、上記のフィラーを適量添加することで、乾燥性に優れたものとなっている。
【0026】
かつら用粘着剤は、吸水及び吸油性に優れたものであることが好ましい。これにより、頭皮表面の汗や皮脂の状態をある程度調整することができ、肌の状態に左右されにくい接着力と快適な装着感を得ることが可能となる。
本実施形態のかつら用粘着剤は、上記のフィラーを適量添加することで、吸水及び吸油性に優れたものとなっている。
【0027】
水性エマルションタイプの粘着剤に共通する問題点として、安定性が挙げられる。すなわち、このような粘着剤を長期間保管すると、離水して品質が劣化しやすいという問題がある。
本実施形態のかつら用粘着剤における上記のフィラーは分散性が良好であり、沈降が少なく、吸水性(保水性)を有するため、水性エマルションタイプの粘着剤に特有の離水現象を改善することが可能となっている。
【0028】
以上のような観点から、本実施形態のかつら用粘着剤は、フィラーが、ベース樹脂に対して、1.0重量%〜28.0重量%含有されたものとすることが好ましく、1.5重量%〜26.0重量%含有されたものとすることがより好ましく、3.0重量%〜23.0重量%含有されたものとすることがさらに好ましく、6.0重量%〜20.0重量%含有されたものとすることが一層好ましく、10.0重量%〜19.0重量%含有されたものとすることが特に好ましい。
【0029】
本実施形態のかつら用粘着剤において、さらに他の成分を含有させることもできる。
例えば、抗炎症剤、殺菌剤、及び防腐剤等を含有させることができる。このとき、これらの成分としては、かつら用粘着剤の粘着力や頭皮への悪影響が認められないものを選択することが重要である。
抗炎症剤、殺菌剤としては、レゾルシン及び/又は塩化セチルピリジニウムを好適に配合させることができる。
また、防腐剤としては、フェノキシエタノールを好適に配合させることが可能である。かつら用粘着剤に当該防腐剤を使用した場合に、粘着力が安定的に保たれること、及び経時安定性が保たれることが確認されている。
【0030】
本実施形態のかつら用粘着剤は、ベース樹脂組成物と、タッキファイヤーと、増粘剤と、フィラーとを混合して攪拌することによって製造することができる。例えば、真空乳化釜などを使用して、常温で、ベース樹脂組成物、タッキファイヤー、フィラー、増粘剤の順で混合し、十分に乳化するまで攪拌することによって得ることができる。
【0031】
本実施形態のかつら用粘着剤の使用方法は、上記のかつら用粘着剤を、頭皮に塗布し、ネット地からなるかつらベースを備えたかつらにおけるかつらベースを、頭皮に接着させる方法とすることが好ましい。
具体的には、かつら用粘着剤を塗布部材に少量取り出して、これを頭皮に軽くパッティングすることで塗布し、さらにこれを引き延ばす。このとき、かつらベースの周縁に対応する頭皮上に円周状に塗布し、その円内において格子状に塗布することが好ましい。そして、1回目の塗布を完了すると、所定の時間(5分間から10分間程度)、自然乾燥させた後、2回目の塗布を行うことが好ましい。これにより、乾燥させた状態において十分な被膜強度を得るために必要な塗布厚を確保することができる。
そして、2回目の塗布の完了後に、さらに所定の時間(5分間から10分間程度)、自然乾燥させ、かつらにおけるかつらベースを、かつら用粘着剤が塗布された頭皮に載せて接着させる。
【0032】
このようにして、本実施形態のかつら用粘着剤を使用して装着されたかつらは、接着力に優れると共に、その接着部分が自然な色調であり、べたつかず、使用者に快適な装着感を与えるものとなる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施形態に係るかつら用粘着剤、及びかつら用粘着剤の使用方法の効果を確認するために行った試験について、具体的に説明する。
【0034】
(実施例1〜90)
本発明の実施形態に係るかつら用粘着剤を以下のように製造した。
真空乳化釜を使用して、常温で、ベース樹脂組成物、タッキファイヤー、フィラー、増粘剤の順で混合し、十分に乳化するまで攪拌して、本実施形態に係るかつら用粘着剤を得た。配合成分の割合は、図1〜3、及び図5〜7に示す通りである。
具体的には、ベース樹脂組成物としては、日本カーバイド工業株式会社のニカゾールTS620(2-エチルヘキシルアクリレート(58%)、ポリ=ノニルフェニルエーテル(2.2%)、水(39.8%))(ベース樹脂組成物a)と、日本カーバイド工業株式会社のニカゾールMH-6010(2-エチルヘキシルアクリレート(58%)、ポリオキシエチレン=ラウリルエーテル(2.0%)、水(40%))(ベース樹脂組成物b)の2種類のうちの一方を、100g配合した。
【0035】
また、タッキファイヤーとしては、荒川化学工業株式会社のタマノルE-300NT(テルペンフェノール樹脂、アニオン系、ノニオン系乳化剤(53%)、水(47%))(タッキファイヤーa)と、荒川化学工業株式会社のスーパーエステルE-730-55(安定化ロジンエステル樹脂、アニオン系乳化剤(55%)、水(45%))(タッキファイヤーb)の2種類のうちの一方を、5g配合した。
【0036】
また、増粘剤としては、株式会社ADEKAのアデカノールUH-450VF(ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマー(30%)、ポリオキシアルキレンエーテル(25%)、水(45%))(増粘剤a)と、株式会社ADEKAのアデカノールUH-756VF(非イオン活性剤(32%)、水(68%))(増粘剤b)の2種類のうちの一方を、1g配合した。
【0037】
また、フィラーとしては、シリカ(AGCエスアイテック株式会社 サンスフェア H-122)(フィラーa)と、アルギン酸カルシウム(日清紡ケミカル株式会社 フラビカファインN)(フィラーb)と、ナイロンパウダー(株式会社トーア紡コーポレーション POMP605)(フィラーc)から選択した1種類、2種類、又は3種類を、合計で1g〜15g配合した。
【0038】
(比較例1〜26)
比較例のかつら用粘着剤を以下のように製造した。
真空乳化釜を使用して、常温で、ベース樹脂組成物、タッキファイヤー、増粘剤の順で混合し、十分に乳化するまで攪拌して、比較例のかつら用粘着剤を得た。配合成分の割合は、図4、8に示す通りである。
具体的には、ベース樹脂組成物としては、上記のベース樹脂組成物aとベース樹脂組成物bの一方を100g配合した。また、タッキファイヤーとしては、上記のタッキファイヤーaとタッキファイヤーbの一方を5g又は25g配合した。また、増粘剤としては、上記の増粘剤aと増粘剤bの一方を、1g又は7g配合した。また、フィラーは、配合しなかった。
【0039】
(かつら用粘着剤の性能の評価)
(1)粘着力
かつら用粘着剤の粘着力は、引っ張り試験機による測定と、指による粘着力の官能評価とを総合して評価した。具体的には、引っ張り試験機による測定の評価結果と官能評価結果の平均値(小数点以下は四捨五入)を粘着力の評価結果とした。
【0040】
引っ張り試験機による測定では、かつら用粘着剤を2回塗布して得られた粘着シート(縦200mm、横25mm)を、試験板(SUS304鋼板)に張り付けて、引っ張り試験機(株式会社エー・アンド・デイ、テンシロン、RTF1250)を用いて、180°の剥離試験を実施した。試験結果の実測値の小数点以下は、測定時の誤差とみなして切り捨てた。
【0041】
引っ張り試験機による測定結果の評価基準は、以下の通りである。
・29Nより大きい 5
・25〜29N 4
・20〜24N 3
・15〜19N 2
・15N未満 1
【0042】
粘着力の官能評価(指での官能評価)では、かつら用粘着剤を、人差し指と親指へ両指併せて約0.1g取って乾燥させ、その後、人差し指と親指を付けて接着し、30秒後に両指を離したときの力の強さを官能的に評価した。官能評価は、3名の評価者により行った。
官能評価の結果は、3名の評価結果の平均値の小数点以下を四捨五入して得た。以下の官能評価についても同様である。
【0043】
指での官能評価の評価基準は、以下の通りである。
・強い 5
・やや強い 4
・普通 3
・やや弱い 2
・弱い 1
【0044】
(2)色調
かつら用粘着剤の色調は、かつら用粘着剤をフィルムに塗布して乾燥させた状態を目視で観察することによる官能評価により評価した。
具体的には、易接着フィルム(東洋紡株式会社、コスモシャインA4100,A4300)上に、かつら用粘着剤を100μmの厚みで塗布して評価用のサンプルを作製した。そして、各サンプルにおけるかつら用粘着剤の透明度及び表面のツヤ等を考慮し、見た目の自然さについて総合的に評価した。
【0045】
色調の評価基準は、以下の通りである。
・極めて良好 5
・非常に良好 4
・良好 3
・やや不自然 2
・不自然 1
【0046】
(3)塗りやすさ
かつら用粘着剤の塗りやすさは、粘着剤の厚みを確保する上での塗りやすさであり、上記の色調を評価するためのサンプルを作製する際の塗布のし易さと塗布状態を目視で観察することによる官能評価により評価した。
【0047】
塗りやすさの評価基準は、以下の通りである。
・良好 5
・やや良好 4
・普通 3
・やや不良 2
・不良 1
【0048】
(4)べたつき
かつら用粘着剤のべたつきは、ボールタックテスター(株式会社安田精機製作所、ボールタックテスター183-BT)を用いて測定した。測定方法は以下の通りである。
かつら用粘着剤を2回塗布して得られた粘着シート(縦200mm、横150mm)を、30°の斜面上に長手方向に傾斜するように固定した。粘着シートの上側半分をカバーシートで覆い、測定用ボールの滑走をスタートさせる滑走基点から100mmの区間を助走距離とした。粘着シートの下側半分は粘着シートが露出した100mmの区間であり、これを滑走距離とした。
【0049】
測定用ボールとしては、サイズが32/32(直径2.5cm)から1/32(直径0.078cm)までの32種類の卵形のボールを使用した。そして、滑走させたボールが粘着シートに付着して停止した、最大のボールの大きさを、ボールタック実際値として得た。本測定において、サイズが21以上のボールは付着しなかった。
【0050】
なお、粘着剤業界においては、一般的にべたつきが強い(ボールタックの数値が大きい)方が、性能が高いと評価される傾向がある。しかしながら、かつら用粘着剤については、使用感の点からべたつきが少ないことが望ましく、数値が小さいほど評価が高くなる。
【0051】
べたつきの評価基準は、ボールのサイズの範囲ごとに、以下の通りである。
・1〜4 5
・5〜8 4
・9〜12 3
・13〜16 2
・17〜20 1
【0052】
(5)乾燥性
かつら用粘着剤の乾燥性は、かつら用粘着剤をフィルムに塗布して、その乾燥具合を目視で観察することによる官能評価により評価した。
【0053】
乾燥性の評価基準は、以下の通りである。
・早い 5
・やや早い 4
・普通 3
・やや遅い 2
・遅い 1
【0054】
上記のようにして得られた各指標の評価結果の合計値を算出して、総合評価の判定を行った。
総合評価の判定基準は、評価結果の合計値の範囲ごとに、以下の通りである。
・23〜25 極めて良い(☆)
・20〜22 非常に良い(◎)
・17〜19 良い(○)
・14〜16 やや悪い(△)
・0〜13 悪い(×)
【0055】
図1〜8に示されるように、実施例1〜90のかつら用粘着剤の総合評価は、いずれも極めて良いか、非常に良いか、又は良いものとなっている。
一方、比較例1〜26のフィラーを含まないかつら用粘着剤は、悪いものとなっている。
このように実施例1〜90のかつら用粘着剤は、接着力、色調、塗りやすさ、べたつき、及び乾燥性のバランスが優れたものとなっていることが分かる。
【0056】
なお、実施例においては、ベース樹脂aを配合した場合とベース樹脂bを配合した場合の評価が同一となった。これは、これらのベース樹脂の相違によるかつら用粘着剤の性質や機能への影響よりも、フィラーの添加によるそれらへの影響の方が大きいためであると考えられる。
【0057】
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。例えば、かつら用粘着剤の成分として、香料やその他の成分を追加で含有させるなど、適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ネット地からなるかつらベースを備えたかつらに好適に利用することが可能である。
【要約】
【課題】 接着力、色調、塗りやすさ、べたつき、乾燥性等に優れたかつら用粘着剤を提供する。
【解決手段】 ベースポリマーと、タッキファイヤーと、増粘剤と、フィラーとを混合してなり、フィラーとして、シリカ、アルギン酸カルシウム、及びナイロンパウダーからなる群から選択された一又は二以上を有効成分として含むかつら用粘着剤とする。
【選択図】 なし
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8