(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149169
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】表面の粗いダイヤモンドの合成方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/26 20170101AFI20170607BHJP
C30B 29/04 20060101ALI20170607BHJP
B01J 3/06 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
C01B32/26
C30B29/04 U
B01J3/06 Q
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-552655(P2016-552655)
(86)(22)【出願日】2014年10月11日
(65)【公表番号】特表2016-539072(P2016-539072A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】CN2014088337
(87)【国際公開番号】WO2016054815
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】515321005
【氏名又は名称】ヘナン フェイマス ダイヤモンド インダストリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン ゼン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジアンリン
(72)【発明者】
【氏名】リ シュウユイン
(72)【発明者】
【氏名】リ リ
【審査官】
廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−500667(JP,A)
【文献】
特開2014−159568(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/099130(WO,A1)
【文献】
特開2012−131707(JP,A)
【文献】
特表2010−520146(JP,A)
【文献】
特表2012−515079(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/092996(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00−32/991
B01J 3/06
C30B 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の粗いダイヤモンドの合成方法において、
1)黒鉛とHPHTプロセス(高温高圧処理)用触媒粉末を混合してから柱体状にプレスし、その孔隙率を35%より小さくするステップと、
2)HPHTプロセス(高温高圧処理)を採用してダイヤモンドを合成するステップと、
3)ダイヤモンドの成長が完了し、且つ、相対圧力が低下してゼロに近づくがトップハンマーと合成ブロックとの良い接触を保持し、温度を800〜1250℃に制御して、60〜180min保持し、或いは、ダイヤモンドの成長が完了した後、HPHTプロセス(高温高圧処理)による合成柱状物を取り出して真空オーブン中に入れ、800〜1200℃に加熱して、60〜180min保持するステップと、
4)合成柱状物を取り出して、残った黒鉛及び触媒を除き、清水による洗浄を行い及び分級乾燥又は乾燥を行ってから篩い分けを行うことにより、ダイヤモンド粒子を異なる粒度又は目数によって分類し、粒度が異なる表面の粗いダイヤモンドを得るステップと、
を含むことを特徴とする表面の粗いダイヤモンドの合成方法。
【請求項2】
HPHTプロセス(高温高圧処理)用触媒と黒鉛との重量比が0.75:1〜1.5:1であることを特徴とする請求項1に記載の表面の粗いダイヤモンドの合成方法。
【請求項3】
ステップ3)において温度を1100℃に制御することが適切であることを特徴とする請求項1に記載の表面の粗いダイヤモンドの合成方法。
【請求項4】
ステップ3)において温度を1050℃に制御することが最適であることを特徴とする請求項1に記載の表面の粗いダイヤモンドの合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面の粗いダイヤモンドの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンド微粉は高い硬度及び高い耐研磨性、優れた耐腐食性を有し、それは、これら優れた特性により誕生の始めから研磨とポリシングの領域における寵児となる。天然ダイヤモンドはダイヤモンドと俗称され、数世紀からずっと最も高価な宝石であり、高貴、綺麗、聖潔、永遠の象徴とされるが、美しいダイヤモンドが発する煌びやかな色には研磨とポリシングが欠かせないものである。最初、人々は他の材料でダイヤモンドのポリシングを実現して見たが、ダイヤモンドが硬く耐腐食であるので、槍刀不入といわれ、この時、ダイヤモンド微粉が時運に応じて生まれてきた。産業時代に入った後、ダイヤモンド微粉はダイヤモンドのポリシングに用いられるだけではなく、経済の各分野に広く応用されている。例えば、石材業界において、ダイヤモンド微粉から柔らかい研磨シート、精密仕上げ用研磨シートを製造して、石材の表面のポリシングに利用され、木材業界において、ダイヤモンド微粉から製造された精密研削盤が大工の刃物類の修理に利用され、自動車業界において、ダイヤモンド微粉から製造された研磨ストリップがシリンダーボア、クランク孔、コンロッド孔及びその他部品の孔の加工に利用され、光学分野において、ダイヤモンド微粉から製造された精密仕上げ用研磨シート、超精密仕上げ用研磨シートが光学レンズの加工に利用され、石油採掘及び地質調査において、ダイヤモンド微粉から製造されたダイヤモンド複合フィルムがドリルの歯となり、工作機械加工において、ダイヤモンド微粉から製造されたダイヤモンド複合フィルムが伝統的な硬質合金の代わりに刀刃となり、金属加工において、ダイヤモンド微粉が金属表面の精密ポリシングに優れた材料となる。そのため、ダイヤモンド微粉は複数の分野に広く応用されている。しかし、科学の進歩に従って、研磨とポリシングの加工に対する要求は益々高くなり、主な二つの要求は高効率及び高精度である。伝統的なダイヤモンド微粉は単結晶の構造であり、粒子の表面が比較的平滑であり、切削刃の数量が少なく、切削力が弱いし、一つの粒子の切削刃が大きく固いし、引っ掻き傷がひどいと同時に、外力衝撃を受けた際、劈開面に沿って割れ、粒度がすぐに小さくなり、研磨寿命が短い。IT業界において、ハードディスク及び磁気ヘッドには非常に高い表面粗度と平滑度が必要であり、光通信において、ポリシングされた光ファイバコネクタの端面の粗さRa値がナノメートル級であり、LED業界において、サファイアウェハーの研磨とポリシングは、強い切削力だけではなく、ウェハーの表面の傷レスも要求されるため、伝統的な単結晶のダイヤモンド微粉ではこれらの要求を実現できなくなる。
【0003】
現在、表面の粗いダイヤモンド粒は通常ダイヤモンドを処理して得たものであり、例えば、出願日2009年9月16日の米国特許第12560899号明細書には、不規則な表面であり、粒子的表面粗さが約0.95未満の砥粒が開示されている。砥粒が改良された生産方法であって、複数の砥粒を提供し、上記粒子に反応的な被覆層を有し、上記被覆された粒子を加熱し、且つ、砥粒を修正する。しかし、その製造プロセスが複雑で、産業生産効率が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第12560899号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、HPHTによるダイヤモンド合成のプロセスを基礎として、表面の粗いダイヤモンドを直接合成する表面の粗いダイヤモンドの合成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術案は下記の通りである。
表面の粗いダイヤモンドの合成方法において、
1)黒鉛と標準的なHPHTプロセス用触媒粉末を混合してから円筒内に圧入し、その孔隙率を35%より小さくするステップと、
2)標準的なHPHTプロセスを採用してダイヤモンドを合成するステップと、
3)ダイヤモンドの成長が完了し、且つ、相対圧力が低下してゼロに近づくがトップハンマーと合成ブロックとの良い接触を保持し、温度を800〜1250℃に制御して、60〜180min保持し、或いは、ダイヤモンドの成長が完了した後、HPHTによる合成柱状物を取り出して真空オーブン中に入れ、800〜1250℃に加熱して、60〜180min保持するステップと、
4)合成柱状物を取り出して、残った黒鉛及び触媒を除き、清水による洗浄を行い及び分級乾燥又は乾燥を行ってから篩い分けを行うことにより、ダイヤモンド粒子を異なる粒度又は目数によって分類し、粒度が異なる表面の粗いダイヤモンドを得るステップとを含む。
【0007】
更に、標準的なHPHTプロセス用触媒と黒鉛との重量比が0.75:1〜1.5:1、例えば、1:1である。
【0008】
好ましい技術案として、ステップ3)において温度を1100℃に制御することが適切である。
【0009】
他の好ましい技術案として、ステップ3)において温度を1050℃に制御することが最適である。
【0010】
従来技術と比較すれば、本発明はHPHTによるダイヤモンド合成のプロセスを基礎として、表面の粗いダイヤモンドを直接合成し、プロセスが簡単で、産業上の生産効率が高く、得た表面の粗いダイヤモンドが単結晶系でも多結晶系でも良く、その粒子の粒径範囲が0.5μm〜900μmであり、ダイヤモンドの表面が目立つ腐食窪みを有し、高温高圧下で一次成長されたダイヤモンド或いは粉砕を経た一次成長されたダイヤモンドの表面に比べて目立つ相違がある。
【0011】
更に、この発明の表面の粗いダイヤモンドの合成方法によれば、黒色の導電性を持つ多結晶ダイヤモンドを合成でき、且つ、その表面が粗く、依然として導電の特性を有し、その黒色の特徴を保持し、異なる産業界のニーズを満足できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】標準的なHPHTプロセスで合成された一つの種類のダイヤモンド粒子である。
【
図2】標準的なHPHTプロセスで合成されたもう一つの種類のダイヤモンド粒子である。
【
図3】本発明により合成された一つの種類の表面の粗いダイヤモンド粒子である。
【
図4】本発明により合成されたもう一つの種類の表面の粗いダイヤモンド粒子である。
【
図5】本発明に係る圧力と温度と時間のプロセス曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて具体的な実施例により本発明を更に説明する。
【実施例】
【0014】
<実施例1>
表面の粗いダイヤモンドの合成方法において、
1)黒鉛と標準的なHPHTプロセス用触媒粉末を混合してから柱体状にプレスし、その孔隙率を35%より小さくし、標準的なHPHTプロセス用触媒と黒鉛との重量比が1.5:1であるステップと、
2)標準的なHPHTプロセスを採用してダイヤモンドを合成し、目標合成ダイヤモンド粒度が1μm〜50μmの粒度であるステップと、
3)ダイヤモンドの成長が完了し、且つ、相対圧力が低下してゼロに近づくがトップハンマーと合成ブロックとの良い接触を保持し、温度を1000℃に制御して、120min保持するステップと、
4)合成柱状物を取り出して、残った黒鉛及び触媒を除き、清水による洗浄を行い及び分級乾燥を行って、主な粒度(>60%)が1μm〜50μmである表面の粗い多結晶ダイヤモンドを得るステップと、を含む。
【0015】
<実施例2>
表面の粗いダイヤモンドの合成方法において、
1)黒鉛と標準的なHPHTプロセス用触媒粉末を混合してから柱体状にプレスし、その孔隙率を35%より小さくし、標準的なHPHTプロセス用触媒と黒鉛との重量比が1:1であるステップと、
2)標準的なHPHTプロセスを採用してダイヤモンドを合成し、目標粒度が50μm〜250μmの粒度であるステップと、
3)ダイヤモンドの成長が完了した後、合成柱状物を取り出して真空オーブン中に入れ、1200℃に加熱して、180min保持するステップと、
4)合成柱状物を取り出して、残った黒鉛及び触媒を除き、清水による洗浄を行い及び乾燥を行ってから篩い分けを行うことにより、ダイヤモンド粒子を異なる粒度又は目数によって分類し、主な粒度(>70%)が50μm〜250μmである表面の粗い単結晶ダイヤモンドを得るステップと、を含む。
【0016】
<実施例3>
表面の粗いダイヤモンドの合成方法において、
1)黒鉛と標準的なHPHTプロセス用触媒粉末を混合してから柱体状にプレスし、その孔隙率を35%より小さくし、標準的なHPHTプロセス用触媒と黒鉛との重量比が1:1であるステップと、
2)標準的なHPHTプロセスを採用して黒色の導電性を持つ多結晶ダイヤモンドを合成し、目標粒度が50μm〜250μmの粒度であるステップと、
3)ダイヤモンドの成長が完了した後、HPHTによる合成柱状物を取り出して真空オーブン中に入れ1200℃に加熱して、150min保持するステップと、
4)合成柱状物を取り出して、残った黒鉛及び触媒を除き、清水による洗浄を行い及び乾燥を行ってから篩い分けを行うことにより、ダイヤモンド粒子を異なる粒度又は目数によって分類し、主な粒度(>70%)が50μm〜250μmである表面の粗い黒色の多結晶ダイヤモンドを得るステップと、を含む。
【0017】
<実施例4>
表面の粗いダイヤモンドの合成方法において、
1)黒鉛と標準的なHPHTプロセス用触媒粉末を混合してから柱体状にプレスし、その孔隙率を35%より小さくし、標準的なHPHTプロセス用触媒と黒鉛との重量比が0.75:1であるステップと、
2)標準的なHPHTプロセスを採用してダイヤモンドを合成し、単結晶ダイヤモンドの目標粒度が100μm〜500μm的粒度であるステップと、
3)ダイヤモンドの成長が完了した後、HPHTによる合成柱状物を取り出して真空オーブン中に入れ、1250℃に加熱して、180min保持するステップと、
4)合成柱状物を取り出して、残った黒鉛及び触媒を除き、清水による洗浄を行い及び乾燥を行ってから篩い分けを行うことにより、ダイヤモンド粒子を異なる粒度又は目数によって分類し、主な粒度(>70%)が100μm〜500μmである表面の粗い単結晶ダイヤモンドを得るステップと、を含む。
【0018】
標準的なHPHTプロセスで合成されたダイヤモンド粒子は
図1と
図2に示す通り、実施例1〜4によって合成されたダイヤモンド粒子は
図2と3に示す通りである。