特許第6149182号(P6149182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6149182自吸ポンプシステム、揚水される液体に含まれる汚染物質の除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149182
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】自吸ポンプシステム、揚水される液体に含まれる汚染物質の除去方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 9/02 20060101AFI20170612BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20170612BHJP
   F04D 15/00 20060101ALI20170612BHJP
   F04D 13/16 20060101ALI20170612BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20170612BHJP
   F04B 23/02 20060101ALI20170612BHJP
   C02F 1/40 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   F04D9/02 101Z
   C02F1/00 X
   F04D15/00 J
   F04D15/00 L
   F04D13/16 W
   F04B49/06 311
   F04B23/02 E
   C02F1/40 B
   C02F1/00 S
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-222188(P2012-222188)
(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公開番号】特開2014-74362(P2014-74362A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】512188719
【氏名又は名称】有限会社エムエスエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】508376166
【氏名又は名称】株式会社エンバイロ・ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 通明
(72)【発明者】
【氏名】桐山 忠紀
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−071965(JP,U)
【文献】 実開平01−127983(JP,U)
【文献】 特公昭39−010783(JP,B1)
【文献】 実開昭49−095503(JP,U)
【文献】 実開昭58−092494(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 23/00−23/14
F04B 49/00−53/22
F04D 1/00−19/02
F04D 21/00−25/16
F04D 29/00−35/00
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身より低い位置に貯められた液体を吸い上げる揚水ポンプと、
この揚水ポンプによって吸い上げられる液体が通過する揚水管と、
この揚水管に接続されるとともに、前記揚水ポンプの吸水口に接続され、前記揚水管から流入した液体を気液分離し、気液分離した液体を前記揚水ポンプへ送る自吸タンクと、
この自吸タンクから独立して設けられて前記揚水ポンプの吐出口に接続され、この吐出口から吐出された液体が流入する自吸補助タンクと、
前記自吸タンク内の圧力をモニタリングし、所定値以になると前記揚水ポンプの駆動を停止させる圧力スイッチ手段と、
前記揚水ポンプの駆動が停止したことを起因として時を刻み始めるタイマーと、を備え、
前記揚水管へ前記貯められた液体の表水部分とともに気相が吸い込まれ、この気相によって前記自吸タンク内の圧力が所定値以になると、前記圧力スイッチ手段によって前記揚水ポンプの駆動が停止させられ、前記揚水ポンプの駆動の停止に伴って前記自吸補助タンク内の液体が前記揚水ポンプを介して前記自吸タンクへ逆流し、逆流した液体によって前記自吸タンク内の水位が回復し、前記貯められた液体が、気相が前記揚水管に混入しない水位まで回復する時間経過後に前記揚水ポンプが再駆動可能となる、
ことを特徴とする自吸ポンプシステム。
【請求項2】
前記自吸補助タンクが、水平方向を長手とした形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載の自吸ポンプシステム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の自吸ポンプシステムを用い、前記揚水ポンプの駆動によって前記揚水管へ前記貯められた液体の表水部分とともに気相を吸い込み、この気相によって前記自吸タンク内の圧力を所定値以にし、前記圧力スイッチ手段によって前記揚水ポンプの駆動を停止し、前記揚水ポンプの駆動の停止に伴って前記自吸補助タンク内の液体を前記揚水ポンプを介して前記自吸タンクへ逆流させ、逆流した液体によって前記自吸タンク内の水位を回復させ、前記貯められた液体が、気相が前記揚水管に混入しない水位まで回復する時間経過後に前記揚水ポンプを再稼働可能にし、前記貯められた液体の揚水を繰り返し可能とするとともに、前記自吸タンクにおいて前記液体の表水部分に含まれる汚染物質を除去可能とする、
ことを特徴とする揚水される液体に含まれる汚染物質の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身より低い位置にある液体を吸い上げる揚水ポンプに自吸タンクが備えられて構築され、液体の揚水を繰り返し行っても、揚水ポンプの空転駆動による焼損が防止されるとともに、自吸タンクにおいて液体の液面に浮かんでいる浮上性汚染物質を除去可能とした自吸ポンプシステム及び、これを用いた揚水される液体に含まれる汚染物質の除去方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1や下記特許文献2で提案されるように、ポンプ自身より低い位置にある液体を吸い上げる自吸式ポンプに自吸タンクが備えられて構築される自吸ポンプシステムが知られている。そして、従来の自吸ポンプシステム100は、図3に示すように、自身より低い位置にある液体Lを吸い上げる揚水ポンプ10と、液体L中に高さを異ならせて投入された第1電極A及び第2電極Bと、揚水ポンプ10によって吸い上げられる液体Lが通過する揚水管20と、揚水管20及び揚水ポンプ10に接続され、揚水された液体Lを揚水ポンプ10へ送る自吸タンク30と、から構成されている。
【0003】
上記構成の自吸ポンプシステム100は、液体Lを中に高さを異ならせて投入された第1電極A及び第2電極Bの高さの差(水位差)を利用して液体Lを揚水している。すなわち、図3(a)に示すように、液体Lの水位が第1電極A付近にある状態で、自吸タンク30を満水にして揚水ポンプ10を駆動し始める。続いて、図3(b)に示すように、第2電極B付近まで液体Lの水位が低下した時点で、第2電極Bによって揚水ポンプ10の駆動を停止する。そして、図3(c)に示すように、液体Lの水位回復を待って、揚水ポンプ10を再駆動する仕組みにより揚水している。
【0004】
しかし、従来の自吸ポンプシステム100では、図4に示すように、第2電極Bが何らかの原因により故障して作動不良になると、第2電極Bよりも液体Lの水位が低下しても揚水ポンプ10の駆動が停止されず、気相が揚水管20を通じて自吸タンク30に入り込み、揚水ポンプ10にも入り込む。したがって、気相が入り込んでも駆動する揚水ポンプ10は空運転となって、焼損等のトラブルが発生するという問題がある。また、液面に油分、スカム等の浮上性汚染物質が浮かぶ液体に対し、このような自吸ポンプシステムを適用しようとすれば、浮上性汚染物質の付着によって第2電極Bの作動不良の頻度が増すという問題がある。浮上性汚染物質の付着によって第1電極Aの作動不良の頻度が増す恐れもある。
【0005】
このような問題に対し、例えば、下記特許文献3では、焼損等のトラブルを防止しようとする自吸式ポンプに係る発明が、下記特許文献4では、ポンプ内水位を自吸可能な水位以上に保持する手段を備えた横軸ポンプに係る発明がそれぞれ提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−23999号公報
【特許文献2】特開2007−51600号公報
【特許文献3】特開2000−27784号公報
【特許文献4】特開平8−284865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、液面に油分、スカム等の浮上性汚染物質が浮かぶ液体(例えば、家庭排水、産業排水)に対し、従来の自吸ポンプシステムでは、揚水ポンプの焼損等のトラブルが頻発する恐れがあり、電極の作動不良の頻度も高まるという問題がある。上記特許文献3や上記特許文献4に提案された発明により、揚水ポンプの改良がなされたとしても、従来の自吸ポンプシステムが電極を使用する限り、内在する問題の根本的な解決にはならない。したがって、浮上性汚染物質が浮かぶ液体に対し、新たな仕組みによる自吸ポンプシステムが構築されることが求められる。特に、その創作の際には、浮上性汚染物質を併せて除去可能なシステムを構築することが期待されている。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑み提案され、液面に油分、スカム等の浮上性汚染物質が浮かぶ液体に対して好適な自吸ポンプシステム、特に、液体の揚水を繰り返し行っても、揚水ポンプの空運転による焼損が防止されるとともに、自吸タンクにおいて液体の浮上性汚染物質を除去可能とした自吸ポンプシステムと、これを用いた揚水される液体に含まれる汚染物質の除去方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る自吸ポンプシステムは、自身より低い位置に貯められた液体を吸い上げる揚水ポンプと、この揚水ポンプによって吸い上げられる液体が通過する揚水管と、この揚水管に接続されるとともに、前記揚水ポンプの吸水口に接続され、前記揚水管から流入した液体を気液分離し、気液分離した液体を前記揚水ポンプへ送る自吸タンクと、この自吸タンクから独立して設けられて前記揚水ポンプの吐出口に接続され、この吐出口から吐出された液体が流入する自吸補助タンクと、前記自吸タンク内の圧力をモニタリングし、所定値以になると前記揚水ポンプの駆動を停止させる圧力スイッチ手段と、前記揚水ポンプの駆動が停止したことを起因として時を刻み始めるタイマーと、を備え、前記揚水管へ前記貯められた液体の表水部分とともに気相が吸い込まれ、この気相によって前記自吸タンク内の圧力が所定値以になると、前記圧力スイッチ手段によって前記揚水ポンプの駆動が停止させられ、前記揚水ポンプの駆動の停止に伴って前記自吸補助タンク内の液体が前記揚水ポンプを介して前記自吸タンクへ逆流し、逆流した液体によって前記自吸タンク内の水位が回復し、前記貯められた液体が、気相が前記揚水管に混入しない水位まで回復する時間経過後に前記揚水ポンプが再駆動可能となることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記構成の自吸ポンプシステムにおいて、上記自吸補助タンクが水平方向を長手とした形状であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る揚水される液体に含まれる汚染物質の除去方法は、上記構成の自吸ポンプシステムを用い、前記揚水ポンプの駆動によって前記揚水管へ前記貯められた液体の表水部分とともに気相を吸い込み、この気相によって前記自吸タンク内の圧力を所定値以にし、前記圧力スイッチ手段によって前記揚水ポンプの駆動を停止し、前記揚水ポンプの駆動の停止に伴って前記自吸補助タンク内の液体を前記揚水ポンプを介して前記自吸タンクへ逆流させ、逆流した液体によって前記自吸タンク内の水位を回復させ、前記貯められた液体が、気相が前記揚水管に混入しない水位まで回復する時間経過後に前記揚水ポンプを再稼働可能にし、前記貯められた液体の揚水を繰り返し可能とするとともに、前記自吸タンクにおいて前記液体の表水部分に含まれる汚染物質を除去可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る自吸ポンプシステムでは、揚水管へ貯められた液体の表水部分とともに気相が吸い込まれ、この気相によって自吸タンク内の圧力が所定値以になると、圧力スイッチ手段によって揚水ポンプの駆動が停止するため、揚水ポンプが空運転することがなくなって焼損等のトラブルを防止することができる。また、揚水ポンプの駆動停止に伴って自吸補助タンク内の液体が自吸タンクに逆流し、逆流した液体によって自吸タンク内の水位が回復することで揚水ポンプが再駆動可能となるので、揚水ポンプの繰り返し運転が可能となって、貯められた液体の効率的な揚水を進めることができる。従来のように電極を使ったシステムではないので、電極の作動不良に伴う問題も解決されている。
【0013】
特に、本発明に係る自吸ポンプシステムでは、油分、スカム等の浮上性汚染物質が含まれる貯められた液体の表水部分が自吸タンクに流入して溜まるため、揚水ポンプが駆動を停止する間等に、自吸タンクから浮上性汚染物質を除く等の作業を行え、システムの連続的な運転に支障をきたすことなく、浮上性汚染物質を併せて除去可能にすることができる。もちろん、揚水ポンプが駆動を停止している定期点検等の間に自吸タンクから浮上性汚染物質を除く等の作業を行うことができ、貯水タンクや貯水池等から浮上性汚染物質を除くよりも簡単に、その作業を済ませることができる。そして、本発明に係る自吸ポンプシステムは、自吸タンクにおいて油分、スカム等の浮上性汚染物質を除去可能とすることにより、浮上性汚染物質を原因とした配管や揚水ポンプ等に関するトラブル発生を未然に防ぐことができる。
【0014】
また、本発明では、圧力スイッチ手段が揚水ポンプの駆動を停止させる圧力値を調整、制御することで、水平方向を長手とした形状の自吸補助タンクにより上記システムを構成することができる。すなわち、例えば、揚水ポンプの吐出口に接続する配管に太径のものを採用し、この太径の配管に、自吸補助タンクの機能を担わせることが可能となる。そうすると、自吸補助タンクそのものを新たに構成する必要がなくなるので、汎用な手段により本発明を構築することが可能となる。
【0015】
本発明に係る液体に含まれる汚染物質の除去方法では、上記自吸ポンプシステムを用いることにより、貯水タンクや貯水池等に貯められた液体の揚水ポンプによる揚水を繰り返し可能とするとともに、自吸タンクにおいて液体の表水部分に含まれる油分、スカム等の浮上性汚染物質を容易に除去することができる。揚水ポンプが焼損する等のトラブルも回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る自吸ポンプシステムの制御プロセスを示し、(a)は揚水ポンプの駆動開始時の制御状態を示す模式図、(b)は揚水ポンプの駆動開始から連続駆動されていく制御状態を示す模式図、(c)は揚水ポンプの連続駆動から駆動を停止する時の制御状態を示す模式図、(d)は揚水ポンプの駆動停止時から再駆動に至るまでの制御状態を示す模式図である。
図2】本発明に係る自吸ポンプシステムの別の例を示す模式図である。
図3】従来の自吸ポンプシステムの制御プロセスの流れを示し、(a)は揚水ポンプの駆動開始時の制御状態を示す模式図、(b)は揚水ポンプの駆動停止時の制御状態を示す模式図、(c)は揚水ポンプの再稼働時の制御状態を示す模式図である。
図4】従来の自吸ポンプシステムの制御プロセスでの問題点を説明する模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に関する一実施形態を詳細に説明する。この一実施形態は、本発明の構成を具現化した例示に過ぎず、特許請求の範囲に記載した事項を逸脱することがなければ種々の設計変更を行うことができる。
【0018】
本発明に係る自吸ポンプシステム1は、図1に示すように、揚水ポンプ11を利用し、貯水タンクや貯水池等に貯められた液体としての汚水W1を繰り返し揚水しつつ、併せて、汚水W1の特に表水部分Sに含まれる油分、スカム等の浮上性汚染物質Xを除去可能とするシステムとして構築されている。具体的には、自身より低い位置にある貯水タンクや貯水池等に貯められた汚水W1を吸い上げるための揚水ポンプ11と、この揚水ポンプ11によって吸い上げられた汚水W2が通過する揚水管12と、この揚水管12及び揚水ポンプ11の吸水口に接続され、揚水管12から流入した汚水W3を気液分離し、気液分離した汚水W4のみを揚水ポンプ11へ送る自吸タンク13と、揚水ポンプ11の吐出口に接続され、揚水ポンプ11から吐出された汚水W5が流入する自吸補助タンク14とを備えて構成されている。
【0019】
さらに、自吸ポンプシステム1は、揚水ポンプ11の駆動開始又は駆動停止を制御する制御盤2を備え、この制御盤2に自吸タンク13内の圧力をモニタリングし、その圧力が所定値以になると、その旨を制御盤2に電送し、制御盤2により揚水ポンプ11を駆動停止させる圧力スイッチ手段としての圧力スイッチ21が接続されている。圧力スイッチ21の測定部は、圧力をモニタリングするために自吸タンク13内に挿入されている。また、制御盤2には、操作者によって揚水ポンプ11の駆動開始又は駆動停止を制御するための操作スイッチのほか、揚水ポンプ11が駆動を停止したことを起因として時を刻み始め、貯水タンクや貯水池等の汚水W1の水位が十分に回復する所定時間経過後に、その旨を制御盤2に電送し、制御盤2により揚水ポンプ11を駆動開始又は駆動停止させるタイマー22等を有して構成されることが好ましい。なお、圧力スイッチ21がモニタリングする圧力の所定値とは、絶対値である。
【0020】
本発明において、揚水ポンプ11、揚水管12、自吸タンク13及び自吸補助タンク14は、公知の揚水ポンプ、配管、タンク等の各種手段を採用することができる。揚水管12の一端が接続される自吸タンク13の接続口は、自吸タンク13の上部に設けられることが好ましく、揚水ポンプ11の吸水口が接続される自吸タンク13の接続口は、自吸タンク13の下部に設けられることが好ましい。また、揚水管12の他端は、揚水開始時において、貯水タンクや貯水池等に貯められた汚水W1の水中に潜るまで延設されている必要がある。
【0021】
ここで、自吸補助タンク14は、圧力スイッチ21が制御盤2に電送する際の基準値となる自吸タンク13内の圧力の「所定値」を調整する等により、水平方向を長手とした形状ものを採用することができる。したがって、例えば、図2に示すような揚水ポンプ11の吐出口に接続される太径の配管141を自吸補助タンクとして採用し得る。すなわち、本発明は、水平方向を長手とした形状である太径の配管に自吸補助タンクの機能を担わせた構成も、その範囲に含むものである。
【0022】
以下、図1(a)〜(d)に基づいて、本発明に係る自吸ポンプシステム1の制御プロセスを説明していく。これに併せて、本発明に係る自吸ポンプシステム1を用いた液体に含まれる汚染物質の除去方法について説明する。
【0023】
図1(a)は、自吸ポンプシステム1の運転を開始するにあたり、揚水ポンプ11を駆動する時の制御状態を示す。運転開始にあたって、揚水管12の他端は、貯水タンクや貯水池等に貯蔵された汚水W1の液面以下まで(すなわち、水中に潜るまで)延設されている。また、自吸タンク13は任意の水W0(例えば、汚水でも構わない。)により満水にされている。この状態で、制御盤2の制御により揚水ポンプ11を駆動し、自吸ポンプシステム1の運転を開始する。
【0024】
図1(b)は、自吸ポンプシステム1の運転が始まり、揚水ポンプ11が駆動開始から連続駆動されていく制御状態を示す。揚水ポンプ11が駆動すると、自吸タンク13内の水W0が揚水ポンプ11を介して自吸補助タンク14へと吐出され、自吸補助タンク14が満水になることを経て水W0が外部へ排出される。同時に、自吸タンク13内では、水W0の水位が下がって陰圧になるので、貯水タンクや貯水池等に貯蔵された汚水W1が、揚水管12の他端から吸い上げられて流入してくる。この状態は、貯水タンクや貯水池等における汚水W1の水位が低下し、揚水管12の他端の高さと同じレベルになるまで継続される。このため、自吸タンク13内では陰圧の状態が続き、汚水W3の気液分離が併せて進み、揚水ポンプ11へ気体を含まない汚水W4のみが送られる。
【0025】
図1(c)は、自吸ポンプシステム1において、揚水ポンプ11が連続駆動している時から駆動を停止する時までの制御状態を示す。揚水ポンプ11が連続駆動し、図1(b)に示す状態が更に進み、汚水W1の水位が低下して揚水管12の他端の高さよりも低いレベルになると、揚水管12の他端では、汚水W1の液面付近の表水部分Sが、これに含まれる油分やスカム等の浮上性汚染物質X及び、周りの空気等の気相とともに吸い上げられ、これらが自吸タンク13内に流入してくるようになる。このとき、気相が含まれるため自吸タンク13内の汚水W3の水位が低下するとともに、自吸タンク13内では陰圧から解放される。圧力スイッチ21は、測定部で自吸タンク13内の圧力をモニタリングしているので、その圧力が所定値以となった時点で、その旨を制御盤2に電送する。続いて、制御盤2は揚水ポンプ11の駆動を停止する。汚水W1の液面付近の表水部分Sに含まれる油分やスカム等の浮上性汚染物質Xは、自吸タンク13に溜まる。
【0026】
図1(d)は、自吸ポンプシステム1において、揚水ポンプ11の駆動停止時から再駆動に至るまでの制御状態を示す。揚水ポンプ11が駆動を停止すると、その圧力差(揚水ポンプ11の駆動中の圧力と駆動停止中の圧力との差)に基づいて、満水状態の自吸補助タンク14から揚水ポンプ11を介して自吸タンク13へ汚水W5が逆流してくる。汚水W5が逆流することで自吸タンク13の水位が上昇し、所定時間経過すれば揚水ポンプ11が駆動を再開しても、揚水ポンプ11の吸水口へ気相が混入しない十分な水位まで回復する。また、揚水ポンプ11が駆動を停止したことを起因としてタイマー22が時を刻み始め、貯水タンクや貯水池等の汚水W1の水位が上昇し、気相が揚水管12に混入しない十分な水位まで回復する所定時間経過後に、その旨を制御盤2に電送する。続いて、制御盤2は揚水ポンプ11の駆動を再開し、図1(b)に示す状態から揚水が再開される。
【0027】
自吸タンク13には、汚水W1に浮かぶ油分やスカム等の浮上性汚染物質Xが混入するが、この浮上性汚染物質Xは、例えば、揚水ポンプ11の駆動停止中に取り除くことができる。また、揚水ポンプ11の定期点検など、自吸タンク13内の汚水W3を空にするときに纏めて除去することも可能である。また、上述のように自吸ポンプシステム1の運転中に揚水ポンプ11へ気相が混入することがなく、焼損等のトラブルが回避されている。
【0028】
したがって、本発明に係る自吸ポンプシステム1は、揚水管12へ気相を吸い込んでも、この気相によって自吸タンク13内の圧力が所定値以となることで、圧力スイッチ21によって揚水ポンプ11の駆動を停止することができ、揚水ポンプ11が空運転することがなくなって、揚水ポンプ11の焼損等のトラブルを防止することができる。さらに、揚水ポンプ11の駆動停止に伴って自吸補助タンク14内の汚水W5が自吸タンク13に逆流し、自吸タンク13内の水位が回復すること等により揚水ポンプ11が再駆動可能となるため、揚水ポンプ11の繰り返し運転が可能となって効率的な揚水を進めることができる。自吸タンク13に溜まった浮上性汚染物質Xは、定期的に自吸タンク13から除くことで、システムの連続的な運転に支障をきたすこともない。
【0029】
また、本発明に係る揚水される液体に含まれる汚染物質の除去方法では、上記構成の自吸ポンプシステム1を用いることにより、簡便に、揚水ポンプ11の空運転による焼損を防止して汚水W1の揚水を繰り返し行いつつ、自吸タンク13において油分やスカム等の浮上性汚染物質Xを除去することができる。
【0030】
以上、本発明の出願人が最良であると信じる一実施形態を詳述したが、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、上記実施形態に限定されることなく、種々の設計変更を行うことが可能である。例えば、本発明を構成する揚水ポンプ、揚水管、自吸タンク及び自吸補助タンクは上述のように、公知の手段を採用することができ、本発明の目的を達成する限りにおいて金属、合成樹脂等の材質に制限されることがない。揚水ポンプは、運転に呼び水が必要なポンプについても運転立上り後、自動的に給水することができる。揚水ポンプ、揚水管、自吸タンク及び自吸補助タンクを接続する配管と、その接続口についても、本発明の目的を達成する限り、任意の形状、態様により構成することができる。なお、本発明を構成する各部品は、揚水しようとする汚水に含まれる薬剤、汚染物質等と反応しない材質で構成されることが好ましいといえる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・・・自吸ポンプシステム
11・・・・揚水ポンプ
12・・・・揚水管
13・・・・自吸タンク
14・・・・自吸補助タンク
141・・・太径の配管(自吸補助タンク)
2・・・・・制御盤
21・・・・圧力スイッチ
22・・・・タイマー
W0・・・・水
W1〜W5・汚水
S・・・・・表水部分
X・・・・・浮上性汚染物質
100・・・自吸ポンプシステム(従来)
10・・・・揚水ポンプ(従来)
20・・・・揚水管(従来)
30・・・・自吸タンク(従来)
A・・・・・第1電極(従来)
B・・・・・第2電極(従来)
L・・・・・液体(従来)
図1
図2
図3
図4