特許第6149206号(P6149206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149206
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】可変容量圧縮機用制御弁
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/18 20060101AFI20170612BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   F04B27/18 A
   F04B27/18 B
   F16K31/06 385Z
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-140645(P2013-140645)
(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公開番号】特開2015-14232(P2015-14232A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(74)【代理人】
【識別番号】100120536
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 真司
(72)【発明者】
【氏名】利根川 正明
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−240580(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/065789(WO,A1)
【文献】 特開昭64−041680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入室に導入される冷媒を圧縮して吐出室から吐出する可変容量圧縮機の吐出容量を、前記吐出室からクランク室に導入する冷媒の流量を調整することにより変化させる可変容量圧縮機用制御弁であって、
前記吐出室に連通する吐出室連通ポートと、前記クランク室に連通するクランク室連通ポートと、前記吸入室に連通する吸入室連通ポートと、前記吐出室連通ポートと前記クランク室連通ポートとを連通させる主通路と、前記クランク室連通ポートと前記吸入室連通ポートとを連通させる副通路とが形成されたボディと、
前記主通路に設けられた主弁座と、
前記主弁座に着脱して主弁を開閉し、前記主通路を開放または遮断する主弁体と、
所定の被感知圧力を感知して前記主弁の開閉方向に変位する感圧部材を含み、その感圧部材の変位に応じて前記主弁体に開弁方向の駆動力を付与可能なパワーエレメントと、
通電により前記パワーエレメントの駆動力に対抗する力を発生可能なソレノイドと、
前記ソレノイドに連結され、前記ソレノイドの力を前記パワーエレメントに伝達するための作動ロッドと、
前記副通路に設けられた副弁座と、
前記副弁座に着脱して副弁を開閉し、前記副通路を開放または遮断する副弁体と、
前記主弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記付勢部材の荷重調整により、前記主弁体が前記主弁座に着座した後に前記副弁体が前記副弁座から離脱するまでに前記主弁と前記副弁とが同時に閉弁状態となる前記被感知圧力の範囲が不感帯として設定され、
前記ソレノイドへの供給電流値の設定により、前記主弁を閉弁させる前記被感知圧力の値と、前記主弁の閉弁後に前記副弁を開弁させる前記被感知圧力の値と、前記不感帯となる圧力値とが可変であり、
前記不感帯の幅が0.05MPa以上となるように設定されていることを特徴とする可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項2】
前記作動ロッドと前記主弁体とが別体にて構成され、
前記付勢部材が、前記主弁の開弁時に前記主弁体が前記作動ロッドおよび前記感圧部材の動作に追従可能となるよう前記主弁体を付勢し、
前記主弁の閉弁時には、前記主弁体と前記作動ロッドとを相対変位させることにより前記副弁が開弁可能となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項3】
吸入室に導入される冷媒を圧縮して吐出室から吐出する可変容量圧縮機の吐出容量を、前記吐出室からクランク室に導入する冷媒の流量を調整することにより変化させる可変容量圧縮機用制御弁であって、
前記吐出室に連通する吐出室連通ポートと、前記クランク室に連通するクランク室連通ポートと、前記吸入室に連通する吸入室連通ポートと、前記吐出室連通ポートと前記クランク室連通ポートとを連通させる主通路と、前記クランク室連通ポートと前記吸入室連通ポートとを連通させる副通路とが形成されたボディと、
前記主通路に設けられた主弁座と、
前記主弁座に着脱して主弁を開閉し、前記主通路を開放または遮断する主弁体と、
所定の被感知圧力を感知して前記主弁の開閉方向に変位する感圧部材を含み、その感圧部材の変位に応じて前記主弁体に開弁方向の駆動力を付与可能なパワーエレメントと、
通電により前記パワーエレメントの駆動力に対抗する力を発生可能なソレノイドと、
前記ソレノイドに連結され、前記ソレノイドの力を前記パワーエレメントに伝達するための作動ロッドと
前記副通路に設けられた副弁座と、
前記副弁座に着脱して副弁を開閉し、前記副通路を開放または遮断する副弁体と、
前記主弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記付勢部材の荷重調整により、前記主弁体が前記主弁座に着座した後に前記副弁体が前記副弁座から離脱するまでに前記主弁と前記副弁とが同時に閉弁状態となる前記被感知圧力の範囲が不感帯として設定され、
前記ソレノイドへの供給電流値の設定により、前記主弁を閉弁させる前記被感知圧力の値と、前記主弁の閉弁後に前記副弁を開弁させる前記被感知圧力の値と、前記不感帯となる圧力値とが可変であり、
前記副弁の開度が前記被感知圧力が高くなるにしたがって大きくなり、予め定める全開圧力を境に急峻に全開状態へ変化する開弁特性を有することを特徴とする可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項4】
前記作動ロッドと前記主弁体とが別体にて構成され、
前記付勢部材が、前記主弁の開弁時に前記主弁体が前記作動ロッドおよび前記感圧部材の動作に追従可能となるよう前記主弁体を付勢し、
前記主弁の閉弁時には、前記主弁体と前記作動ロッドとを相対変位させることにより前記副弁が開弁可能となるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項5】
前記被感知圧力に応じて変化する前記ソレノイドの磁気ギャップに対する特性として、前記ソレノイドの吸引力特性の傾きを、前記全開圧力を境に前記パワーエレメントの駆動力特性の傾きよりも大きく設定することにより、前記開弁特性が実現されていることを特徴とする請求項3または4に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量圧縮機の吐出容量を制御するのに好適な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、その冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する圧縮機、そのガス冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された液冷媒を断熱膨張させることで低温・低圧の冷媒にする膨張装置、その冷媒を蒸発させることにより車室内空気との熱交換を行う蒸発器等を備えている。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻され、冷凍サイクルを循環する。
【0003】
この圧縮機としては、エンジンの回転数によらず一定の冷房能力が維持されるように、冷媒の吐出容量を可変できる可変容量圧縮機(単に「圧縮機」ともいう)が用いられている。この圧縮機は、エンジンによって回転駆動される回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結され、揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより冷媒の吐出量を調整する。揺動板の角度は、密閉されたクランク室内に吐出冷媒の一部を導入し、ピストンの両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることで連続的に変えられる。このクランク室内の圧力(以下「クランク圧力」という)Pcは、圧縮機の吐出室とクランク室との間に設けられた可変容量圧縮機用制御弁(単に「制御弁」ともいう)により制御される。
【0004】
このような制御弁として、例えば吸入圧力Psに応じてクランク室への冷媒の導入量を調整することにより、クランク圧力Pcを制御するものがある。この制御弁は、吸入圧力Psを感知して変位する感圧部と、感圧部の駆動力を受けて吐出室からクランク室へ通じる通路を開閉制御する弁部と、感圧部による駆動力の設定値を外部電流によって可変できるソレノイドとを備える。このような制御弁は、吸入圧力Psが外部電流により設定された設定圧力に保持されるように弁部を開閉する。一般に、吸入圧力Psは蒸発器出口の冷媒温度に比例するため、その設定圧力を所定値以上に保持することにより、蒸発器の凍結等を防止できる。また、車両のエンジン負荷が大きいときにはソレノイドをオフにすることで弁部を全開状態とし、クランク圧力Pcを高くして揺動板を回転軸に対してほぼ直角にすることで、圧縮機を最小容量で運転させることができる。
【0005】
そして近年では、このような制御弁として、吐出室とクランク室とを連通させる主通路に主弁を設ける一方、クランク室と吸入室とを連通させる副通路に副弁を設け、それらの弁を単一のソレノイドにより駆動するものも提案されている(例えば特許文献1参照)。この制御弁によれば、空調装置の定常運転時には副弁を閉じた状態で主弁の開度が調整される。それにより、上述のようにクランク圧力Pcを制御し、圧縮機の吐出容量を制御することができる。一方、空調装置の起動時には主弁を閉じた状態で副弁が開かれ、それによりクランク圧力Pcを速やかに低下させることで、圧縮機を比較的速やかに最大容量運転状態へ移行させるいわゆるブリード機能を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−240580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に具体的に開示された制御弁は、主弁を構成する主弁体と副弁を構成する副弁体とが直列に配置され、その直列体の一端側にソレノイド、他端側に感圧部を配置して構成される。感圧部は、吸入圧力Psを実質的に感知してソレノイドに対抗する駆動力を発生する。主弁の制御時には主弁体と副弁体とが一体となり、ソレノイドと感圧部の駆動力のバランスに応じて主弁の開度が調整される。副弁は、主弁が閉じた後、副弁体が主弁体から離間することにより開かれる。しかしながら、この主弁や副弁の開閉作動が吸入圧力Psの高さに左右されるため、主弁と副弁とが同時に閉状態となる全閉ポイント付近で吸入圧力Psが変化すると、主弁と副弁が交互に開閉するなどして弁部に耳障りな打音を発生させる。また、ブリード機能等の制御性が損なわれる可能性がある点で改善の余地があった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ブリード機能をより安定かつ効果的に発揮することができる可変容量圧縮機用制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の可変容量圧縮機用制御弁は、吸入室に導入される冷媒を圧縮して吐出室から吐出する可変容量圧縮機の吐出容量を、吐出室からクランク室に導入する冷媒の流量を調整することにより変化させる可変容量圧縮機用制御弁であって、吐出室に連通する吐出室連通ポートと、クランク室に連通するクランク室連通ポートと、吸入室に連通する吸入室連通ポートと、吐出室連通ポートとクランク室連通ポートとを連通させる主通路と、クランク室連通ポートと吸入室連通ポートとを連通させる副通路とが形成されたボディと、主通路に設けられた主弁座と、主弁座に着脱して主弁を開閉する主弁体と、所定の被感知圧力を感知して主弁の開閉方向に変位する感圧部材を含み、その感圧部材の変位に応じて主弁体に開弁方向の駆動力を付与可能なパワーエレメントと、通電によりパワーエレメントの駆動力に対抗する力を発生可能なソレノイドと、ソレノイドに連結され、ソレノイドの力をパワーエレメントに伝達するための作動ロッドと、副通路に設けられた副弁座と、副弁座に着脱して副弁を開閉する副弁体と、主弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材と、を備える。
【0010】
そして、付勢部材の荷重調整により、主弁体が主弁座に着座した後に副弁体が副弁座から離脱するまでに主弁と副弁とが同時に閉弁状態となる被感知圧力の範囲が不感帯として設定され、ソレノイドへの供給電流値の設定により、主弁を閉弁させる被感知圧力の値と、主弁の閉弁後に副弁を開弁させる被感知圧力の値と、不感帯となる圧力値とが可変となるように構成されている。
【0011】
この態様によると、付勢部材の荷重調整により、被感知圧力が変化しても主弁と副弁とが共に閉弁状態となる不感帯を設定することができる。すなわち、主弁の閉弁後に副弁を開弁させるまでの被感知圧力の値に幅をもたせることができるため、被感知圧力の変化により主弁が容易に開弁しない圧力値にて副弁を開弁させるように設定することができる。同様に、被感知圧力の変化により副弁が容易に開弁しない圧力値にて主弁を開弁させるように設定することができる。それにより、主弁と副弁が交互に開閉するような状況を回避することができ、ブリード機能をより安定に発揮させることができる。また、ソレノイドへの供給電流値に応じて、主弁の閉弁ポイントとなる被感知圧力および副弁の開弁ポイントとなる被感知圧力が可変となる。すなわち、主弁や副弁を開弁させるべき被感知圧力の値が、ソレノイドへの供給電流値を変化させることにより適宜変化する。このため、パワーエレメントが感知する圧力が特定の圧力値(固定値)を超える場合に限らず副弁を開くことができ、ブリード機能を空調状態に応じて適切に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブリード機能をより安定かつ効果的に発揮することができる可変容量圧縮機用制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
図2図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。
図3】制御弁の動作を表す図である。
図4】制御弁の動作を表す図である。
図5】制御弁の開弁特性を表す図である。
図6】制御弁の開弁特性を表す図である。
図7】吸入圧力Psに応じた開弁特性をより詳細に表す図である。
図8図7の開弁特性を発揮させるための方法を表す図である。
図9】吸入圧力Psに応じたソレノイドへの供給電流値と開弁特性との関係を表す図である。
図10図9に示した0.6(MPaG)の場合の開弁特性が得られる理由を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
図1は、実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
【0015】
制御弁1は、自動車用空調装置の冷凍サイクルに設置される図示しない可変容量圧縮機(単に「圧縮機」という)の吐出容量を制御する電磁弁として構成されている。この圧縮機は、冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する。そのガス冷媒は凝縮器(外部熱交換器)にて凝縮され、さらに膨張装置により断熱膨張されて低温・低圧の霧状の冷媒となる。この低温・低圧の冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内空気を冷却する。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻されて冷凍サイクルを循環する。圧縮機は、自動車のエンジンによって回転駆動される回転軸を有し、その回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結されている。その揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより、冷媒の吐出量が調整される。制御弁1は、その圧縮機の吐出室からクランク室へ導入する冷媒流量を制御することで揺動板の角度、ひいてはその圧縮機の吐出容量を変化させる。
【0016】
制御弁1は、圧縮機の吸入圧力Ps(「被感知圧力」に該当する)を設定圧力に保つように、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。制御弁1は、弁本体2とソレノイド3とを一体に組み付けて構成される。弁本体2は、圧縮機の運転時に吐出冷媒の一部をクランク室へ導入するための冷媒通路を開閉する主弁と、圧縮機の起動時にクランク室の冷媒を吸入室へ逃がすいわゆるブリード弁として機能する副弁とを含む。ソレノイド3は、主弁を開閉方向に駆動してその開度を調整し、クランク室へ導入する冷媒流量を制御する。弁本体2は、段付円筒状のボディ5、ボディ5の内部に設けられた主弁および副弁、主弁の開度を調整するためにソレノイド力に対抗する力を発生するパワーエレメント6等を備えている。パワーエレメント6は、「感圧部」として機能する。
【0017】
ボディ5には、その上端側からポート12,14,16が設けられている。ポート12は「吸入室連通ポート」として機能し、圧縮機の吸入室に連通する。ポート14は「クランク室連通ポート」として機能し、圧縮機のクランク室に連通する。ポート16は「吐出室連通ポート」として機能し、圧縮機の吐出室に連通する。ボディ5の上端開口部を閉じるように端部材13が固定されている。ボディ5の下端部はソレノイド3の上端部に連結されている。
【0018】
ボディ5内には、ポート16とポート14とを連通させる主通路と、ポート14とポート12とを連通させる副通路とが形成されている。主通路には主弁が設けられ、副通路には副弁が設けられる。すなわち、制御弁1は、一端側からパワーエレメント6、副弁、主弁、ソレノイド3が順に配置される構成を有する。主通路には主弁孔20と主弁座22が設けられる。副通路には副弁孔32と副弁座34が設けられる。
【0019】
ポート12は、ボディ5の上部に区画された作動室23と吸入室とを連通させる。パワーエレメント6は、作動室23に配置されている。ポート16は、吐出室から吐出圧力Pdの冷媒を導入する。ポート16と主弁孔20との間には主弁室24が設けられ、主弁が配置されている。ポート14は、圧縮機の定常動作時に主弁を経由してクランク圧力Pcとなった冷媒をクランク室へ向けて導出する一方、圧縮機の起動時にはクランク室から排出されたクランク圧力Pcの冷媒を導入する。ポート14と主弁孔20との間には副弁室26が設けられ、副弁が配置されている。ポート12は、圧縮機の定常動作時に吸入圧力Psの冷媒を導入する一方、圧縮機の起動時には副弁を経由して吸入圧力Psとなった冷媒を吸入室へ向けて導出する。ポート14,16には、環状のストレーナ15,17がそれぞれ取り付けられている。ストレーナ15,17は、ボディ5の内部への異物の侵入を抑制するためのフィルタを含む。
【0020】
主弁室24と副弁室26との間に主弁孔20が設けられ、その下端開口端部に主弁座22が形成されている。ポート14と作動室23との間にはガイド孔25(「第2ガイド孔」として機能する)が設けられている。ボディ5の下部(主弁室24の主弁孔20とは反対側)にはガイド孔27(「第1ガイド孔」として機能する)が設けられている。ガイド孔27には、円筒状の主弁体30が摺動可能に挿通されている。
【0021】
主弁体30の上半部がやや縮径し、主弁孔20を貫通しつつ内外を区画する区画部33となっている。主弁体30の中間部に形成された段部が、主弁座22に着脱して主弁を開閉する弁形成部35となっている。主弁体30が主弁室24側から主弁座22に着脱することにより主弁を開閉し、吐出室からクランク室へ流れる冷媒流量を調整する。区画部33の上端面により副弁座34が構成されている。副弁座34は、主弁体30と共に変位する可動弁座として機能する。
【0022】
一方、ガイド孔25には、段付円筒状の副弁体36が摺動可能に挿通されている。副弁体36の内部通路が副弁孔32となっている。この内部通路は、副弁の開弁により副弁室26と作動室23とを連通させる。副弁体36と副弁座34とは、軸線方向に対向配置されている。副弁体36が副弁室26にて副弁座34に着脱することにより副弁を開閉する。
【0023】
また、ボディ5の軸線に沿って長尺状の作動ロッド38が設けられている。作動ロッド38の上端部は、副弁体36を介してパワーエレメント6と作動連結可能に接続される。作動ロッド38の下端部は、ソレノイド3の後述するプランジャ50に作動連結可能に接続されている。作動ロッド38の上半部は主弁体30を貫通し、その上端部にて副弁体36を下方から支持する。
【0024】
主弁体30とソレノイド3との間には、主弁体30を主弁の閉弁方向に付勢するスプリング42(「付勢部材」として機能する)が介装されている。一方、パワーエレメント6と副弁体36との間には、副弁体36を副弁の閉弁方向に付勢するとともに、主弁体30を主弁の開弁方向に付勢可能なスプリング44(「付勢部材」として機能する)が介装されている。本実施形態では、スプリング44の荷重がスプリング42の荷重よりも大きくなるように設定されている。
【0025】
パワーエレメント6は、吸入圧力Psを感知して変位するベローズ45を含み、そのベローズ45の変位によりソレノイド力に対抗する力を発生させる。この対抗力は、副弁体36を介して主弁体30にも伝達される。副弁体36が副弁座34に着座して副弁を閉じることにより、クランク室から吸入室への冷媒のリリーフが遮断される。また、副弁体36が副弁座34から離間して副弁を開くことにより、クランク室から吸入室への冷媒のリリーフが許容される。
【0026】
一方、ソレノイド3は、段付円筒状のコア46と、コア46の下端開口部を封止するように組み付けられた有底円筒状のスリーブ48と、スリーブ48に収容されてコア46と軸線方向に対向配置された段付円筒状のプランジャ50と、コア46およびスリーブ48に外挿された円筒状のボビン52と、ボビン52に巻回され、通電により磁気回路を生成する電磁コイル54と、電磁コイル54を外方から覆うように設けられ、ヨークとしても機能する円筒状のケース56と、ケース56の下端開口部を封止するように設けられた端部材58とを備える。なお、本実施形態においては、ボディ5、コア46、ケース56および端部材58が制御弁1全体のボディを形成している。
【0027】
弁本体2とソレノイド3とは、ボディ5の下端部がコア46の上端開口部に圧入されることにより固定されている。コア46と主弁体30との間に圧力室28が形成されている。一方、コア46の中央を軸線方向に貫通するように、作動ロッド38が挿通されている。圧力室28に導入される吸入圧力Psは、作動ロッド38とコア46との間隙により形成される連通路62を通ってスリーブ48の内部にも導かれる。
【0028】
スプリング44は、コア46とプランジャ50とを両者を互いに離間させる方向に付勢するオフばねとしても機能する。作動ロッド38は、副弁体36およびプランジャ50のそれぞれに対して同軸状に接続されているものの、固定されてはいない。すなわち、作動ロッド38は、その上端部が副弁体36に遊嵌され、下端部がプランジャ50に遊嵌されている。副弁体36とパワーエレメント6との間にスプリング44(オフばね)を設けているため、作動ロッド38を副弁体36およびプランジャ50のそれぞれに対して圧入等により固定しなくても問題ないからである。むしろ、そのような圧入固定をなくすことにより、副弁体36、作動ロッド38およびプランジャ50の各部品加工性およびそれらの組立性を向上させることができる。なお、変形例においては、作動ロッド38を副弁体36およびプランジャ50の少なくとも一方に対して圧入固定してもよい。
【0029】
作動ロッド38は、プランジャ50により下方から支持され、主弁体30、副弁体36およびパワーエレメント6と作動連結可能に構成されている。作動ロッド38は、コア46とプランジャ50との吸引力であるソレノイド力を、主弁体30および副弁体36に適宜伝達する。一方、作動ロッド38には、パワーエレメント6の伸縮作動による駆動力(「感圧駆動力」ともいう)がソレノイド力と対抗するように負荷される。すなわち、主弁の制御状態においては、ソレノイド力と感圧駆動力とにより調整された力が主弁体30に作用し、主弁の開度を適切に制御する。圧縮機の起動時には、ソレノイド力の大きさに応じて作動ロッド38がスプリング44の付勢力に抗してボディ5に対して相対変位し、主弁を閉じた後に副弁体36を押し上げて副弁を開弁させる。また、主弁の制御中であっても、吸入圧力Psが相当高まると、作動ロッド38がベローズ45の付勢力に抗してボディ5に対して相対変位し、主弁を閉じた後に副弁体36を押し上げて副弁を開弁させる。それによりブリード機能を発揮させる。
【0030】
スリーブ48は非磁性材料からなる。プランジャ50の側面には軸線に平行な複数の連通溝66が設けられ、プランジャ50の下部には内外を連通する連通孔68が設けられている。このような構成により、図示のようにプランジャ50が下死点に位置しても、吸入圧力Psがプランジャ50とスリーブ48との間隙を通って背圧室70に導かれる。
【0031】
ボビン52からは電磁コイル54につながる一対の接続端子72が延出し、それぞれ端部材58を貫通して外部に引き出されている。同図には説明の便宜上、その一対の片方のみが表示されている。端部材58は、ケース56に内包されるソレノイド3内の構造物全体を下方から封止するように取り付けられている。端部材58は、耐食性を有する樹脂材のモールド成形(射出成形)により形成され、その樹脂材がケース56と電磁コイル54との間隙にも満たされている。このように樹脂材がケース56と電磁コイル54との間隙に樹脂材を満たすことで、電磁コイル54で発生した熱をケース56に伝達しやすくし、その放熱性能を高めている。端部材58からは接続端子72の先端部が引き出されており、図示しない外部電源に接続される。
【0032】
図2は、図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。
主弁体30のガイド孔27との摺動面には、冷媒の流通を抑制するための複数の環状溝からなるラビリンスシール74が設けられている。主弁体30の軸線方向中間部には隔壁76が設けられている。隔壁76は、その下面にて作動ロッド38と適宜係合連結可能な「被係合部」として機能する。作動ロッド38は、その上部が縮径し、隔壁76の中央に設けられた挿通孔を貫通する。作動ロッド38には、その縮径部の段差により係合部78が構成される。隔壁76の挿通孔の周囲には、冷媒を通過させるための複数の貫通孔80が形成されている。
【0033】
スプリング42は、隔壁76とコア46との間に介装されている。このような構成により、スプリング42と主弁体30との当接ポイントが、ガイド孔27における摺動部の中央よりも主弁室24側に位置するため、主弁体30がいわゆるやじろべいのような態様でスプリング42に安定に支持される。その結果、主弁体30が開閉駆動されるときのぐらつきによるヒステリシスの発生を防止又は抑制することができる。
【0034】
副弁体36には、主弁体30の内部通路37と作動室23とを連通させるための複数の内部通路39が形成されている。副弁体36の上部側面の複数箇所と下面に内部通路39の開口部が設けられている。なお、作動ロッド38は、副弁体36が副弁座34に着座した状態においては、係合部78が隔壁76から少なくとも所定間隔Lをあけて離間するように段差の位置が設定されている。所定間隔Lは、いわゆる「遊び」として機能する。
【0035】
ソレノイド力を大きくすると、作動ロッド38を主弁体30に対して相対変位させて副弁体36を押し上げることもできる。それにより、副弁体36と副弁座34とを離間させて副弁を開くことができる。また、係合部78と隔壁76とを係合(当接)させた状態でソレノイド力を主弁体30に直接伝達することができ、主弁体30を主弁の閉弁方向に大きな力で押圧することができる。この構成は、主弁体30とガイド孔27との摺動部への異物の噛み込みにより主弁体30がロックした場合に、それを解除するロック解除機構として機能する。
【0036】
主弁室24は、ボディ5と同軸状に設けられ、主弁孔20よりも大径の圧力室として構成される。このため、主弁とポート16との間には比較的大きな空間が形成され、主弁を開弁させたときに主通路を流れる冷媒の流量を十分に確保することができる。同様に、副弁室26もボディ5と同軸状に設けられ、主弁孔20よりも大径の圧力室として構成される。このため、副弁とポート14との間にも比較的大きな空間が形成される。そして図示のように、主弁体30の上端と副弁体36の下端との着脱部が、副弁室26の中央部に位置するように設定されている。つまり、副弁座34が常に副弁室26に位置するよう主弁体30の可動範囲が設定され、副弁室26にて副弁が開閉されるようになる。このため、副弁を開弁させたときに副通路を流れる冷媒の流量を十分に確保することができる。つまり、ブリード機能を効果的に発揮することができる。
【0037】
パワーエレメント6は、ベース部材84とベローズ45(「感圧部材」として機能する)を含んで構成される。ベース部材84は、金属材をプレス成形して有底円筒状に構成されており、その下端開口部に半径方向外向きに延出するフランジ部86を有する。ベローズ45は、蛇腹状の本体の上端部が閉止され、下端開口部がフランジ部86の上面に気密に溶接されている。ベローズ45の内部は密閉された基準圧力室Sとなっており、ベローズ45とフランジ部86との間に、ベローズ45を伸長方向に付勢するスプリング88が介装されている。基準圧力室Sは、本実施形態では真空状態とされている。ベローズ45は、ベース部材84の本体を軸芯として伸縮する。ベローズ45は、フランジ部86とは反対側端部が端部材13に当接して支持されている。
【0038】
すなわち、端部材13がパワーエレメント6の固定端となっている。端部材13のボディ5への圧入量を調整することにより、パワーエレメント6の設定荷重(スプリング88の設定荷重)を調整できるようにされている。なお、ベース部材84の本体は、ベローズ45の内方をその底部近傍まで延在し、その上底部がベローズ45の底部に近接配置される。副弁体36は、その上端面中央に上方に突出する嵌合部89が設けられ、その嵌合部89がベース部材84の本体に嵌合している。ベローズ45は、作動室23の吸入圧力Psと基準圧力室Sの基準圧力との差圧に応じて軸線方向(主弁および副弁の開閉方向)に伸長または収縮する。ベローズ45の変位に応じて主弁体30に開弁方向の駆動力が付与される。ただし、その差圧が大きくなってもベローズ45が所定量収縮すると、ベース部材84の本体が当接して係止されるため、その収縮は規制される。
【0039】
本実施形態においては、ベローズ45の有効受圧径Aと、主弁体30の主弁における有効受圧径B(シール部径)と、主弁体30の摺動部径C(シール部径)と、副弁体36の摺動部径D(シール部径)とが等しく設定されている。このため、主弁体30とパワーエレメント6とが作動連結した状態においては、主弁体30と副弁体36との結合体に作用する吐出圧力Pd,クランク圧力Pcおよび吸入圧力Psの影響がキャンセルされる。その結果、主弁の制御状態において、主弁体30は、パワーエレメント6が作動室23にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁1は、いわゆるPs感知弁として機能する。
【0040】
なお、変形例においては、径B,C,Dを等しくする一方、有効受圧径Aをこれらと異ならせてもよい。すなわち、本実施形態では上述のように、径B,C,Dを等しくするとともに、弁体(主弁体30および副弁体36)の内部通路を上下に貫通させることで、弁体に作用する圧力(Pd,Pc,Ps)の影響をキャンセルすることができる。つまり、副弁体36,主弁体30,作動ロッド38およびプランジャ50の結合体の前後(図では上下)の圧力を同じ圧力(吸入圧力Ps)とすることができ、それにより圧力キャンセルが実現される。これにより、ベローズ45の径に依存することなく各弁体の径を設定することができる。例えば、ベローズ45を小さくしても、弁径を大きくしたまま構成できる。言い換えれば、主弁を大きくでき、また副弁を大きくすることができる。その結果、ブリード弁の流量を大きくすることができる。逆に、ベローズ45の有効受圧径Aを径B,C,Dより大きくしてもよい。このため、ベローズ45,主弁体30,副弁体36の設計自由度が高い。
【0041】
次に、制御弁の動作について説明する。
図3および図4は、制御弁の動作を表す図であり、図2に対応する。既に説明した図2は、制御弁の最小容量運転状態を示している。図3は、制御弁の起動時等にブリード機能を動作させたときの状態を示している。図4は、比較的安定した制御状態を示している。以下では図1に基づき、適宜図2図4を参照しつつ説明する。
【0042】
制御弁1においてソレノイド3が非通電のとき、つまり自動車用空調装置が動作していないときには、コア46とプランジャ50との間に吸引力が作用しない。一方、通常の環境下では吸入圧力Psは比較的高い状態にある。このため、図2に示すように、ベローズ45が縮小した状態でスプリング44の付勢力が副弁体36を介して主弁体30に伝達される。その結果、主弁体30が主弁座22から離間して主弁が全開状態となる。このとき、パワーエレメント6は実質的に機能せず、副弁体36には開弁方向の力が作用しない。このため、副弁は閉弁状態を維持する。
【0043】
一方、自動車用空調装置の起動時にソレノイド3の電磁コイル54に起動電流が供給されると、吸入圧力Psがその供給電流値により定まる開弁圧力(「副弁開弁圧力」ともいう)よりも高ければ、副弁が開弁する。すなわち、ソレノイド力がスプリング44の付勢力に打ち勝ち、副弁体36が一体的に押し上げられる。その結果、副弁体36が副弁座34から離間して副弁が開かれ、ブリード機能が有効に発揮される。この動作過程で主弁体30がスプリング42の付勢力により押し上げられ、主弁座22に着座する。その結果、主弁は閉弁状態となる。すなわち、主弁が閉じてクランク室への吐出冷媒の導入を規制した後、副弁が開いてクランク室内の冷媒を吸入室に速やかにリリーフさせる。その結果、圧縮機を速やかに起動させることができる。
【0044】
また、例えば車両が低温環境下におかれた場合のように、吸入圧力Psが低く、ベローズ45が伸長した状態であっても、吸入圧力Psがその供給電流値により定まる副弁開弁圧力よりも高ければ、副弁が開弁する。すなわち、図3に示すように、ソレノイド力がベローズ45の付勢力に打ち勝ち、パワーエレメント6および副弁体36が一体的に押し上げられる。その結果、副弁体36が副弁座34から離間して副弁が開かれ、ブリード機能が有効に発揮される。なお、「副弁開弁圧力」については、車両がおかれる環境下に応じて後述する設定圧力Psetが変化されると、それに応じて変化する。
【0045】
ソレノイド3に供給される電流値が主弁の制御電流値範囲にあるときには、吸入圧力Psが供給電流値により設定された設定圧力Psetとなるよう主弁の開度が自律的に調整される。スプリング44の荷重が十分に大きいため、この主弁の制御状態においては図4に示すように、副弁体36が副弁座34に着座し、副弁は閉弁状態を維持する。一方、吸入圧力Psが比較的低いためにベローズ45が伸長し、主弁体30が動作して主弁の開度を調整する。このとき、主弁体30は、スプリング44による開弁方向の力と、スプリング42による閉弁方向の力と、閉弁方向のソレノイド力と、吸入圧力Psに応じたパワーエレメント6による開弁方向の力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。
【0046】
そして、例えば冷凍負荷が大きくなり吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも高くなると、ベローズ45が縮小するため、主弁体30が相対的に上方(閉弁方向)へ変位する。その結果、主弁の弁開度が小さくなり、圧縮機は吐出容量を増やすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが低下する方向に変化する。逆に、冷凍負荷が小さくなって吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも低くなると、ベローズ45が伸長する。その結果、パワーエレメント6が主弁体30を開弁方向に付勢して主弁の弁開度が大きくなり、圧縮機は吐出容量を減らすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが設定圧力Psetに維持される。なお、吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも相当高くなると、その吸入圧力Psの高さによっては主弁が閉弁し、副弁が開くことも想定される。ただし、主弁が閉じた後に副弁が開くまでに後述する「不感帯」があるため、主弁と副弁が不安定に開閉する等の事態は防止される。
【0047】
このような定常制御が行われている間にエンジンの負荷が大きくなり、空調装置への負荷を低減させたい場合、制御弁1においてソレノイド3がオンからオフに切り替えられる。そうすると、コア46とプランジャ50との間に吸引力が作用しなくなるため、スプリング44の付勢力により主弁体30が主弁座22から離間し、主弁が全開状態となる。このとき、副弁体36は副弁座34に着座しているため、副弁は閉弁状態となる。それにより、圧縮機の吐出室からポート16に導入された吐出圧力Pdの冷媒は、全開状態の主弁を通過し、ポート14からクランク室へと流れることになる。したがって、クランク圧力Pcが高くなり、圧縮機は最小容量運転を行うようになる。
【0048】
次に、本実施形態の制御弁の開弁特性について詳細に説明する。
図5および図6は、制御弁の開弁特性を表す図である。図5は作動ロッドの変位に応じた主弁および副弁の開閉状態を表している。同図の横軸は作動ロッド38の変位に応じた主弁体30の磁気ギャップ(コア46とプランジャ50との距離)を示し、縦軸は主弁および副弁の弁ストローク(弁体の弁座からのリフト量)を示している。図中の実線が主弁を示し、一点鎖線が副弁を示している。
【0049】
図2に示したようにソレノイド3がオフされて作動ロッド38が下死点にあるときに、主弁ストロークが最大となり、図3に示したようにソレノイド3がオフからオンにされて作動ロッド38が上死点にあるときに副弁ストロークが最大となる。図5に示すように、磁気ギャップが最小のときに副弁が全開状態となり、磁気ギャップが最大のときに主弁が全開状態となる。磁気ギャップの中間点(作動ロッド38の変位の中間点)には、主弁体30と副弁体36のリフト量がともにゼロ、つまり主弁と副弁が同時に閉弁状態となる全閉ポイントが存在する。作動ロッド38がその全閉ポイントから下方へ変位すると、副弁が閉じられたまま主弁の開度が徐々に大きくなる。逆に、作動ロッド38がその全閉ポイントから上方へ変位すると、主弁が閉じられたまま副弁の開度が徐々に大きくなる。
【0050】
本実施形態では、副弁体36の副弁におけるシール部径を、主弁体30の主弁におけるシール部径とほぼ等しくしたため、弁体リフト量−弁開度(開口面積)の弁開度特性の傾きが、主弁と副弁とでほぼ等しくなる。なお、変形例においては、副弁体36の副弁におけるシール部径を、主弁体30の主弁におけるシール部径よりも大きくしてもよい。このようにすれば、副弁体36のリフト量に対して副弁の開口面積を大きく変化させることができるため、副弁開時に大きな流量を得ることができる。あるいは、副弁体36の副弁におけるシール部径を、主弁体30の主弁におけるシール部径よりも小さくしてもよい。
【0051】
図6は、ソレノイド3への供給電流値に対する吸入圧力Psに応じた開弁特性を表している。供給電流値の設定として、(A)は0.68(A)とした場合を示し、(B)は0.52(A)とした場合を示し、(C)は0.26(A)とした場合を示す。各図の横軸は吸入圧力Psを示し、縦軸は主弁および副弁の弁ストロークを示している。図中の実線が主弁を示し、一点鎖線が副弁を示している。
【0052】
これらの図に示すように、供給電流値が一定であれば、吸入圧力Psに対して主弁の閉弁ポイントと副弁の開弁ポイントがそれぞれ定まり、また、主弁と副弁とがともに閉弁状態となる圧力範囲(「不感帯」という)が定まる。すなわち、主弁の閉弁ポイントは、供給電流値に応じたソレノイド3による閉弁方向の荷重、スプリング42による閉弁方向の荷重、スプリング44による開弁方向の荷重、パワーエレメント6による開弁方向の荷重によって定まる。また、副弁の開弁ポイントは、その主弁の閉弁ポイントを基準にすると、スプリング42による開弁方向の荷重によって定まる。すなわち、主弁の閉弁ポイントにおいて副弁に作用するスプリング42の荷重分だけパワーエレメント6による閉弁方向の荷重が小さくなるポイント、つまりそのパワーエレメント6の荷重減少分だけ吸入圧力Psが高くなるポイントで副弁が開き始める。したがって、スプリング42の荷重調整により、主弁の閉弁ポイントと副弁の開弁ポイントを設定することができる。そして、ソレノイド3への供給電流値の調整により、その主弁の閉弁ポイントから副弁の開弁ポイントまでの圧力値、つまり不感帯となる吸入圧力Psの圧力値を、高圧となる方向又は低圧となる方向にシフトさせることができる。
【0053】
具体的には、図6(A)に示すように、供給電流値を0.68(A)とすることにより、吸入圧力Psが0.13〜0.25(MPaG)となる圧力値が不感帯とされ、吸入圧力Psが0.25(MPaG)よりも高くなると副弁が開くようになる。図6(B)に示すように、供給電流値を0.52(A)とすることにより、吸入圧力Psが0.23〜0.35(MPaG)となる圧力値が不感帯とされ、吸入圧力Psが0.35(MPaG)よりも高くなると副弁が開くようになる。図6(C)に示すように、供給電流値を0.26(A)とすることにより、吸入圧力Psが0.36〜0.48(MPaG)となる圧力値が不感帯とされ、吸入圧力Psが0.48(MPaG)よりも高くなると副弁が開くようになる。本実施形態によれば、吸入圧力Psが低い場合であっても、供給電流値を高くすることにより副弁を開けるようになる。
【0054】
また、本実施形態では図示のように、不感帯の幅が0.12(MPa)となるように設定されているが、主弁と副弁とが交互に開閉するような不安定な状態を防止するためには、0.05(MPa)以上となるように設定するのが好ましい。すなわち、不感帯の幅が小さいと、全閉ポイント付近で吸入圧力Psが変動したときに主弁と副弁が交互に開閉するなどして弁部に耳障りな打音を発生させる可能性があり、また、主弁および副弁の制御が不安定な状態となり易い。そこで、不感帯の幅を0.05(MPa)以上、好ましくは0.1(MPa)以上としてこれを防止している。
【0055】
図7は、吸入圧力Psに応じた開弁特性をより詳細に表す図である。(A)は図6(A)と同様に供給電流値を0.68(A)とした場合を示し、(B)は図6(B)と同様に供給電流値を0.52(A)とした場合を示す。図8は、図7の開弁特性を発揮させるための方法を表す図である。同図の横軸は磁気ギャップを示し、縦軸はソレノイド3の吸引力特性又はパワーエレメント6の駆動力特性を示す。なお、供給電流値を一定としてみた場合、吸入圧力Psが低くなるほど磁気ギャップは大きくなり、吸入圧力Psが高くなるほど磁気ギャップは小さくなる。
【0056】
図7(A)および(B)に示すように、各供給電流値を設定した場合について、吸入圧力Psがある値(開弁ポイント)を超えると副弁が開き始める。そして、副弁の開度が吸入圧力Psが高くなるにしたがって大きくなり、予め定める全開圧力を境に急峻に全開状態へ変化する開弁特性を有する。図7(A)に示すように供給電流値を0.68(A)とした場合、副弁の開弁とほぼ同時に全開状態となる。一方、図7(B)に示すように供給電流値を0.52(A)とした場合には、吸入圧力Psが開弁ポイントよりもやや高くなってから一気に全開状態となる。このため、供給電流値を0.52(A)とするよりも0.68(A)としたほうが副弁の開弁時の応答性をより高くすることが可能となる。
【0057】
このような開弁特性は、図8に示すソレノイド3の吸引力特性とパワーエレメント6の駆動力特性(荷重特性:「PE特性」と表記)との関係により定まる。すなわち、吸入圧力Psに応じて変化するソレノイド3の磁気ギャップに対する特性として、ソレノイド3の吸引力特性の傾きを、全開圧力を境にパワーエレメント6の駆動力特性の傾きよりも大きく設定することにより、上記開弁特性が実現される。例えば、供給電流値を0.68(A)とした場合については副弁開領域のほぼ全域にわたり、ソレノイド3の吸引力特性の傾き(実線)が、パワーエレメント6の駆動力特性の傾き(二点鎖線)よりも大きくなる。その結果、図7(A)に示したように、吸入圧力Psが開弁ポイントよりも高くなるとほぼ同時に急峻に全開状態へ変化する。一方、例えば、供給電流値を0.52(A)とした場合については副弁開領域の中央値付近にて、ソレノイド3の吸引力特性の傾き(一点鎖線)が、パワーエレメント6の駆動力特性の傾き(二点鎖線)よりも大きくなる。その結果、図7(B)に示したように、吸入圧力Psが開弁ポイントよりもやや高くなってから急峻に全開状態へ変化する。
【0058】
図9は、吸入圧力Psに応じたソレノイドへの供給電流値と開弁特性との関係を表す図である。横軸は供給電流値を示し、縦軸は主弁および副弁の弁ストローク(弁開度)を示す。図中には吸入圧力Psが0.6(MPaG)の場合(実線)、0.5(MPaG)の場合(点線)、0.3(MPaG)の場合(一点鎖線)、0.2(MPaG)の場合(二点鎖線)、0.1(MPaG)の場合(破線)について、それぞれ開弁特性が示されている。
【0059】
同図によれば、例えば吸入圧力Psが0.6,0.5(MPaG)の場合、副弁の開弁ポイント(閉弁状態から開弁状態へ変化する境界となる電流値)は0.25(A)となる。吸入圧力Psが0.3(MPaG)の場合には、副弁の開弁ポイントは0.57(A)となる。吸入圧力Psが0.2(MPaG)の場合には、副弁の開弁ポイントは0.76(A)となる。吸入圧力Psが0.1(MPaG)の場合には、副弁の開弁ポイントは0.93(A)となる。したがって、吸入圧力Psに応じた開弁ポイントを超える電流(「開弁電流」ともいう)が供給されると、副弁が開弁する。言い換えれば、吸入圧力Psを設定圧力Psetにするための供給電流値が設定された状態において、その供給電流値が現在の吸入圧力Psに対応する開弁電流となっていれば副弁は開き、開弁電流となっていなければ副弁は閉じた状態を保つようになる。
【0060】
本実施形態では、例えば設定圧力Psetを0.1(MPaG)とするために供給電流値として0.68(A)を設定した場合、仮に圧縮機の起動時の吸入圧力Psが0.6,0.5(MPaG)の高負荷状態となっていれば副弁が直ちに全開状態となり、圧縮機を最大容量運転へ移行させる。その結果、吸入圧力Psが低下して速やかに0.1(MPaG)に近づくようになる。吸入圧力Psが0.3(MPaG)程度であれば、副弁を全開には到らない所定開度に開き、最大容量運転への移行を促進する。その結果、吸入圧力Psが比較的速やかに低下して0.1(MPaG)に近づくようになる。吸入圧力Psが0.2(MPaG)程度であれば、副弁はあえて開弁されずに起動される。ただし、主弁の閉弁状態にて起動が開始されるため、吸入圧力Psは低下して0.1(MPaG)に近づくようになる。吸入圧力Psが0.1(MPaG)程度であれば、それを保つように副弁を閉じたまま主弁の開度が制御される。
【0061】
設定圧力Psetを0.2(MPaG)とするために供給電流値として0.52(A)を設定した場合、仮に圧縮機の起動時の吸入圧力Psが0.6,0.5(MPaG)の高負荷状態となっていれば副弁が直ちに全開状態となり、圧縮機を最大容量運転へ移行させる。その結果、吸入圧力Psが低下して速やかに0.2(MPaG)に近づくようになる。吸入圧力Psが0.3(MPaG)程度であれば、副弁はあえて開弁されずに起動される。ただし、主弁の閉弁状態にて起動が開始されるため、吸入圧力Psは低下して0.2(MPaG)に近づくようになる。吸入圧力Psが0.2(MPaG)程度であれば、それを保つように副弁を閉じたまま主弁の開度が制御される。吸入圧力Psが0.1(MPaG)程度の低負荷状態となっていれば副弁は閉じたまま主弁が直ちに全開状態となり、圧縮機を最小容量運転へ移行させる。その結果、吸入圧力Psが上昇して速やかに0.2(MPaG)に近づくようになる。
【0062】
このように、本実施形態によれば、設定圧力Psetに対応する供給電流値の設定に応じて、吸入圧力Psをその設定圧力Psetに速やかに近づけるよう、副弁の開弁特性が適度に調整されるようになる。なお、吸入圧力Psごとにみた場合、主弁と副弁とが同時に閉弁状態となる供給電流値の範囲が不感帯として存在する。同図によれば、吸入圧力Psが0.6,0.5(MPaG)であれば0.18〜0.25(A)が不感帯となり、吸入圧力Psが0.3(MPaG)であれば0.42〜0.57(A)が不感帯となり、吸入圧力Psが0.2(MPaG)であれば0.62〜0.76(A)が不感帯となり、吸入圧力Psが0.1(MPaG)であれば0.80〜0.93(A)が不感帯となっている。本実施形態では、ソレノイド3への通電制御を400Hz程度のPWM(Pulse Width Modulation)によるデューティ制御にて行っているところ、設定圧力Psetを設定するための供給電流値をこのような不感帯の中間値(中央値付近)に設定することで、主弁と副弁の同時閉の状態(全閉ポイント)を安定に保持することができる。また、主弁と副弁とが交互に開閉して耳障りな衝突音を発生させるような事態を回避することもできる。
【0063】
ここで、図2の状態から図3の状態に変化するケースについて図9に基づいて追加説明しておく。例えば、吸入圧力Psが0.6(MPaG)程度と比較的高い場合、図2の状態から図3の状態に変化する。すなわち、吸入圧力Psが0.6(MPaG)程度になるとベローズ45が最小となって機能しなくなるため、副弁体36は、スプリングの付勢力に対抗したソレノイド力のみに依存して作動する。つまり、その作動は吸入圧力Psには依存せず、供給電流値に依存する。このとき、供給電流値を高めていくと、スプリング42,44の荷重差に対して打ち勝つ電流値となったところ(例えば0.18(A))で主弁が閉じ、主弁および副弁共に閉弁状態となる。この状態でさらに供給電流値を高めてスプリング42の荷重が全て主弁座22にかかったところ(例えば0.25(A))で副弁体36が副弁座34から離れ始める。なお、同図においては供給電流値をパラメータとした不感帯の設定が示されているが、これは図6に示した吸入圧力Psをパラメータとした不感帯の設定と同義であることは言うまでもない。つまり、図6に示した圧力ベースの特性を電流ベースに置き換えると図9に示すようになる。
【0064】
なお、0.6(MPaG)の場合は図示のように、主弁および副弁の各開閉時に供給電流値に対する弁ストロークの傾きが垂直になっている。すなわち、供給電流値をゼロから高めていった場合、0.18(A)になったところで主弁の全開状態(弁ストローク:0.3mm)から主弁および副弁の閉弁状態(全閉状態)に一気に変化し、0.25(A)になったところで副弁が閉弁状態から全開状態(弁ストローク:0.25mm)に一気に変化する。また、0.6(MPaG)の場合の不感帯の幅は、0.3(MPaG)の場合等よりも小さくなっている。この点につき、以下に説明する。
【0065】
図10は、図9に示した0.6(MPaG)の場合の開弁特性が得られる理由を表す図である。横軸は主弁および副弁の弁ストローク(弁開度)と磁気ギャップを示し、縦軸は供給電流値に応じたソレノイド3の吸引力特性とスプリングの荷重特性を示す。図中実線および破線がソレノイド3の吸引力特性を示し、一点鎖線および二点鎖線がスプリングの荷重特性を示している。
【0066】
図示のように、主弁の全開状態(主弁ストローク:0.3mm)から供給電流値を上げていくと、0.18(A)となったときにソレノイド3の吸引力がスプリング42,44の荷重(合力)を上回るため、主弁体30が主弁の閉弁方向に変位し始める。このとき、ソレノイド3の吸引力特性の傾きがスプリング42,44の荷重特性の傾きよりも大きいため、電流値をそれ以上上げなくとも主弁の開度が小さくなるにしたがってソレノイド力とスプリング荷重との差は大きくなる。このため、電流値が0.18(A)に保たれたまま主弁体30が一気に全閉ポイントに向けて変位する。その結果、図9に示したように、主弁の弁ストロークの傾きがほぼ垂直となる。
【0067】
一方、主弁体30が主弁座22に着座した直後は、スプリング42の荷重が主弁体30と副弁体36の双方にかかった状態となっている。この状態で副弁体36に配分されていたスプリング42の荷重Fは、供給電流値の増加によりソレノイド力が大きくなるにつれて主弁座22へ徐々に移される。そして、スプリング42の荷重の全てが主弁座22へ移されたときに副弁が開き始める。この荷重Fが不感帯を生じさせる。
【0068】
供給電流値が0.25(A)になると、スプリング42の荷重の全てが主弁座22へ移されるが、ソレノイド3の吸引力がスプリング44の荷重を上回るため、副弁体36が副弁の開弁方向に変位し始める。このとき、ソレノイド3の吸引力特性の傾きがスプリング44の荷重特性の傾きよりも大きいため、電流値を変えなくとも副弁の開度が大きくなるにしたがってソレノイド力とスプリング荷重との差は大きくなる。このため、電流値が0.25(A)に保たれたまま副弁体36が一気に開弁ポイントに向けて変位する。その結果、図9に示したように、副弁の弁ストロークの傾きがほぼ垂直となる。
【0069】
また、図示の吸入圧力Psが0.6(MPaG)の場合には、主弁の弁ストローク全域にわたってソレノイド3の吸引力特性の傾きがスプリング42,44の荷重特性の傾きよりも大きいため、0.18(A)にて主弁が閉じ始めると、その主弁の開度が小さくなることでソレノイド3の吸引力が増加する。すなわち、供給電流値を増加させなくともソレノイド力が増加し、これがスプリング42,44の荷重(合力)の一部である荷重F2を打ち消す方向に作用する。この荷重F2が結果的に不感帯の一部を打ち消すため、不感帯の幅が小さくなっている。すなわち、仮に供給電流値が0.18(A)のときのスプリングの荷重特性の傾きが吸引力特性の傾きよりも大きければ、図中の荷重F1が不感帯を生成するところ、吸引力特性の傾きがスプリングの荷重特性の傾きよりも大きいため、荷重F2の分だけ不感帯が小さくなっている。なお、このように吸入圧力Psが0.6(MPaG)の場合には不感帯の幅が小さいとは言えども、供給電流値をこのような不感帯の中間値(中央値付近)に設定することで、主弁と副弁の同時閉の状態(全閉ポイント)を安定に保持することができる。また、主弁と副弁とが交互に開閉して耳障りな衝突音を発生させるような事態を回避することもできる。すなわち、不感帯としてこのような作用効果を得るには十分な幅をもっていると言える。これは、吸入圧力Psが0.5(MPaG)の場合も同様である。
【0070】
以上に説明したように、本実施形態では、スプリング42,44およびパワーエレメント6の荷重調整により主弁の開弁ポイントが設定され、スプリング44およびパワーエレメント6の荷重調整により副弁の開弁ポイントが設定される。そして、ソレノイド3への供給電流値の設定により、主弁を閉弁させる吸入圧力Psの値と、主弁の閉弁後に副弁を開弁させる吸入圧力Psの値と、不感帯としての吸入圧力Psの圧力値とが設定されている。主弁の閉弁後に副弁を開弁させる吸入圧力Psの値に適度な幅をもたせることができるため、主弁と副弁が交互に開閉するような状況を回避することができ、ブリード機能をより安定に発揮させることができる。また、副弁が開弁作動する吸入圧力Psの値が、ソレノイド3への供給電流値を変化させることにより適宜変化する。このため、例えば車両が高温環境下におかれる場合と低温環境下におかれる場合とで供給電流値を変化させて設定圧力Psetを変更することで副弁開弁圧力も変化し、いずれの環境下においてもブリード機能を速やかに発揮させることが可能となる。すなわち、パワーエレメント6が感知する圧力が特定の圧力値(固定値)を超える場合に限らず副弁を開くことができ、ブリード機能を空調状態に応じて適切に発揮させることができる。さらに、副弁が配置される副弁室26を主弁孔20よりも大径にて構成したため、副弁開時に副通路を流れる冷媒流量を十分に確保することができ、ブリード機能をより効果的に発揮させることが可能となる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0072】
上記実施形態では、制御弁として、吸入圧力Psが満たされる作動室23にパワーエレメント6を配置し、吸入圧力Psを直接感知して動作するいわゆるPs感知弁を例示した。変形例においては、クランク圧力Pcが満たされる容量室にパワーエレメントを配置する一方、クランク圧力Pcをキャンセルする構造を採用することで、実質的に吸入圧力Psを感知して動作するPs感知弁として構成してもよい。
【0073】
上記実施形態では、パワーエレメント6を構成する感圧部材としてベローズ45を採用する例を示したが、ダイヤフラムを採用してもよい。その場合、その感圧部材として必要な動作ストロークを確保するために、複数のダイヤフラムを軸線方向に連結する構成としてもよい。
【0074】
上記実施形態では、スプリング42,44,88等に関し、付勢部材としてスプリング(コイルスプリング)を例示したが、ゴムや樹脂等の弾性材料、あるいは板ばね等の弾性機構を採用してもよいことは言うまでもない。
【0075】
上記実施形態では、ベローズ45の内部の基準圧力室Sを真空状態としたが、大気を満たしたり、基準となる所定のガスを満たすなどしてもよい。あるいは、吐出圧力Pd、クランク圧力Pc、および吸入圧力Psのいずれかを満たすようにしてもよい。そして、パワーエレメントが適宜ベローズの内外の圧力差を感知して作動する構成としてもよい。また、上記実施形態では、主弁体が直接受ける圧力Pd,Pc,Psをキャンセルする構成としたが、これらの少なくともいずれかの圧力をキャンセルしない構成としてもよい。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 制御弁、 2 弁本体、 3 ソレノイド、 5 ボディ、 6 パワーエレメント、 12,14 ポート、 15,17 ストレーナ、 16 ポート、 20 主弁孔、 22 主弁座、 23 作動室、 24 主弁室、 25 ガイド孔、 26 副弁室、 27 ガイド孔、 28 圧力室、 30 主弁体、 32 副弁孔、 33 区画部、 34 副弁座、 36 副弁体、 37 内部通路、 38 作動ロッド、 39 内部通路、 42,44 スプリング、 45 ベローズ。
図1
図2
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図10