【文献】
Zhi-xiang ZHU, et al.,Phase structure of epitaxial Pb(Zr,Ti)O3 thin films on Nb-doped SrTiO3 substrates,Applied Physics Letters,2007年,Vol.91,P.222910-1〜3
【文献】
S.H.HU,et al.,Preparation and optical waveguide property of metal alkoxide solution-derived Pb(Zr0.5Ti0.5)O3 thick films,Applied Physics Letters,2004年,Vol.84,No.18,P.3609-3611
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一態様は、ゾルゲル法を用いて作製しても単一配向性または優先配向性が高い強誘電体膜の製造装置及び強誘電体膜の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に、本発明の種々の態様について説明する。
(1)処理室と、
前記処理室内に配置され、ゾルゲル法により形成された強誘電体材料を含むアモルファス膜を有する基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記アモルファス膜に種結晶部材を接触させる機構と、
前記処理室内に酸素ガスを導入するガス導入機構と、
前記処理室内のガスを排気するガス排気機構と、
前記処理室内を加熱する加熱機構と、
を具備し、
前記アモルファス膜に前記種結晶部材を接触させながら酸素雰囲気で加熱することにより、前記アモルファス膜を酸化して結晶化することで強誘電体膜を製造することを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
【0012】
(2)上記(1)において、
前記強誘電体膜は、前記種結晶部材の配向と同一の配向を有することを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
【0013】
(3)上記(1)または(2)において、
前記種結晶部材は、スパッタリング法またはCVD法によりエピタキシャル成長させた種結晶膜、或いはブリッジマン法により作製した単結晶バルクであることを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
【0014】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか一項において、
前記強誘電体膜は、
ABO
3あるいは(Bi
2O
2)
2+(A
m−1B
mO
3m+1)
2−(式中、AはLi、Na、K、Rb、Pb、Ca、Sr、Ba、Bi、La及びHfからなる群から選択される少なくとも1種、BはRu、Fe、Ti、Zr、Nb、Ta、V、W及びMoからなる群から選択される少なくとも1種、mは5以下の自然数である。)で表されるペロブスカイトまたはビスマス層状構造酸化物、
LanBa
2Cu
3O
7、Trm
2Ba
2Ca
n−1Cu
nO
2n+4又はTrmBa
2Ca
n−1Cu
nO
2n+3(式中、LanはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種、TrmはBi、Tl及びHgからなる群から選択される少なくとも1種、nは5以下の自然数である。)で表される超伝導酸化物、
A
0.5BO
3(正方ブロンズ構造)又はA
0.3BO
3(六方ブロンズ構造)(式中、AはLi、Na、K、Rb、Cs、Pb、Ca、Sr、Ba、Bi及びLaからなる群から選択される少なくとも1種、BはRu、Fe、Ti、Zr、Nb、Ta、V、W及びMoからなる群から選択される少なくとも1種である。)で表されるタングステンブロンズ構造酸化物、
CaO、BaO、PbO、ZnO、MgO、B
2O
3、Al
2O
3、Y
2O
3、La
2O
3、Cr
2O
3、Bi
2O
3、Ga
2O
3、ZrO
2、TiO
2、HfO
2、NbO
2、MoO
3、WO
3及びV
2O
5からなる群から選択される少なくとも1種の材料、
前記少なくとも1種の材料にSiO
2を含む材料、及び、
前記少なくとも1種の材料にSiO
2及びGeO
2を含む材料の少なくとも1つからなることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
【0015】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれか一項において、
前記ガス導入機構は、前記処理室内に加圧された前記酸素ガスを導入する機構であることを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
(6)上記(1)乃至(5)のいずれか一項において、
前記ガス導入機構は、前記処理室内に前記酸素ガスを導入することで、前記処理室内を4atm以上に加圧する機構であることを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
(7)上記(1)乃至(6)のいずれか一項において、
前記アモルファス膜に種結晶部材を接触させる機構は、前記アモルファス膜に前記種結晶部材を一定の圧力で加圧して接触させる機構であることを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
【0016】
(8)上記(1)乃至(7)のいずれか一項において、
前記種結晶部材は、Zr/Ti比が下記式(1)を満たすPb(Zr,Ti)O
3膜または(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜であり、
Aは、Li、Na、K、Rb、Ca、Sr、Ba、Bi及びLaからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
60/40≦Zr/Ti≦40/60 ・・・(1)
【0017】
(9)上記(8)において、
前記Pb(Zr,Ti)O
3膜の各元素数比が下記式(2)を満たし、前記(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜の各元素数比が下記式(3)を満たすことを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
Pb/(Zr+Ti)<1.03 ・・・(2)
(Pb+A)/(Zr+Ti)≦1.35 ・・・(3)
【0018】
(10)上記(8)または(9)において、
前記種結晶部材は(001)に配向され、
前記強誘電体膜は(001)に配向されることを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
【0019】
(11)上記(8)または(9)において、
前記種結晶部材は(111)に配向され、
前記強誘電体膜は(111)に配向されることを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
【0020】
(12)上記(1)乃至(11)のいずれか一項において、
前記強誘電体膜は、Zr/Ti比が下記式(4)を満たすPb(Zr,Ti)O
3膜または(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜であり、
Aは、Li、Na、K、Rb、Ca、Sr、Ba、Bi及びLaからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
60/40≦Zr/Ti≦40/60 ・・・(4)
【0021】
(13)上記(10)において、
前記種結晶膜は、Zr/Ti比が下記式(5)を満たすことを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
52/48<Zr/Ti≦40/60 ・・・(5)
【0022】
(14)上記(11)において、
前記種結晶膜は、Zr/Ti比が下記式(6)を満たすことを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
60/40≦Zr/Ti<52/48 ・・・(6)
【0023】
(15)上記(1)乃至(14)のいずれか一項において、
前記加熱機構は、前記処理室内にランプヒータによってランプ光を照射する機構であることを特徴とする強誘電体膜の製造装置。
【0024】
(16)基板上に強誘電体材料を含むアモルファス膜をゾルゲル法により形成し、
前記アモルファス膜に種結晶部材を接触させながら酸素雰囲気で加熱することにより、前記アモルファス膜を酸化して結晶化することで強誘電体膜を形成し、
前記種結晶部材を前記強誘電体膜から離すことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
【0025】
(17)上記(16)において、
前記強誘電体膜は、前記種結晶部材の配向と同一の配向を有することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
【0026】
(18)上記(16)または(17)において、
前記種結晶部材は、スパッタリング法またはCVD法によりエピタキシャル成長させた種結晶膜、或いはブリッジマン法により作製した単結晶バルクであることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
【0027】
(19)上記(16)乃至(18)のいずれか一項において、
前記強誘電体膜は、
ABO
3あるいは(Bi
2O
2)
2+(A
m−1B
mO
3m+1)
2−(式中、AはLi、Na、K、Rb、Pb、Ca、Sr、Ba、Bi、La及びHfからなる群から選択される少なくとも1種、BはRu、Fe、Ti、Zr、Nb、Ta、V、W及びMoからなる群から選択される少なくとも1種、mは5以下の自然数である。)で表されるペロブスカイトまたはビスマス層状構造酸化物、
LanBa
2Cu
3O
7、Trm
2Ba
2Ca
n−1Cu
nO
2n+4又はTrmBa
2Ca
n−1Cu
nO
2n+3(式中、LanはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種、TrmはBi、Tl及びHgからなる群から選択される少なくとも1種、nは5以下の自然数である。)で表される超伝導酸化物、
A
0.5BO
3(正方ブロンズ構造)又はA
0.3BO
3(六方ブロンズ構造)(式中、AはLi、Na、K、Rb、Cs、Pb、Ca、Sr、Ba、Bi及びLaからなる群から選択される少なくとも1種、BはRu、Fe、Ti、Zr、Nb、Ta、V、W及びMoからなる群から選択される少なくとも1種である。)で表されるタングステンブロンズ構造酸化物、
CaO、BaO、PbO、ZnO、MgO、B
2O
3、Al
2O
3、Y
2O
3、La
2O
3、Cr
2O
3、Bi
2O
3、Ga
2O
3、ZrO
2、TiO
2、HfO
2、NbO
2、MoO
3、WO
3及びV
2O
5からなる群から選択される少なくとも1種の材料、
前記少なくとも1種の材料にSiO
2を含む材料、及び、
前記少なくとも1種の材料にSiO
2及びGeO
2を含む材料の少なくとも1つからなることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
【0028】
(20)上記(16)乃至(19)のいずれか一項において、
前記酸素雰囲気で加熱する際は、加圧酸素雰囲気であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(21)上記(16)乃至(20)のいずれか一項において、
前記酸素雰囲気で加熱する際は、4atm以上の加圧酸素雰囲気であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(22)上記(16)乃至(21)のいずれか一項において、
前記アモルファス膜に種結晶部材を接触させる際は、前記アモルファス膜に前記種結晶部材を一定の圧力で加圧して接触させることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
【0029】
(23)上記(19)乃至(22)のいずれか一項において、
前記種結晶膜は、Zr/Ti比が下記式(1)を満たすPb(Zr,Ti)O
3膜または(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜であり、
Aは、Li、Na、K、Rb、Ca、Sr、Ba、Bi及びLaからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
60/40≦Zr/Ti≦40/60 ・・・(1)
【0030】
(24)上記(23)において、
前記Pb(Zr,Ti)O
3膜の各元素数比が下記式(2)を満たし、前記(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜の各元素数比が下記式(3)を満たすことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
Pb/(Zr+Ti)<1.03 ・・・(2)
(Pb+A)/(Zr+Ti)≦1.35 ・・・(3)
【0031】
(25)上記(23)または(24)において、
前記種結晶膜は(001)に配向され、
前記強誘電体膜は(001)に配向されることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
【0032】
(26)上記(23)または(24)において、
前記種結晶膜は(111)に配向され、
前記強誘電体膜は(111)に配向されることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
【0033】
(27)上記(19)乃至(26)のいずれか一項において、
前記強誘電体膜は、Zr/Ti比が下記式(4)を満たすPb(Zr,Ti)O
3膜または(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜であり、
Aは、Li、Na、K、Rb、Ca、Sr、Ba、Bi及びLaからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
60/40≦Zr/Ti≦40/60 ・・・(4)
【0034】
(28)上記(25)において、
前記種結晶膜は、Zr/Ti比が下記式(5)を満たすことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
52/48<Zr/Ti≦40/60 ・・・(5)
【0035】
(29)上記(26)において、
前記種結晶膜は、Zr/Ti比が下記式(6)を満たすことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
60/40≦Zr/Ti<52/48 ・・・(6)
(30)結晶化された強誘電体膜であって、
前記強誘電体膜は、(001)に単一配向したPb(Zr,Ti)O
3膜または(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜であり、
Aは、Li、Na、K、Rb、Ca、Sr、Ba、Bi及びLaからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする強誘電体膜。
【発明の効果】
【0036】
本発明の一態様によれば、ゾルゲル法を用いて作製しても単一配向性または優先配向性が高い強誘電体膜の製造装置及び強誘電体膜の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0039】
[実施の形態1]
<強誘電体膜の製造方法>
図1は、本発明の一態様に係る強誘電体膜の製造方法を説明するための断面図である。
【0040】
まず、種結晶部材13を有する接触用基板20を用意する。接触用基板20は、例えばシリコンウエハ11上に(001)配向したSrRuO
3膜(図示せず)が形成され、SrRuO
3膜上に(001)配向したPt膜12が形成され、Pt膜12上に種結晶部材13が形成されたものを用いるとよい。
【0041】
本実施の形態では、種結晶部材13に配向した種結晶膜を用いるとよい。種結晶膜には、スパッタリング法またはCVD法によりエピタキシャル成長させた膜を用いることができる。なお、種結晶膜以外の例としては、接触用基板20としてブリッジマン法により作製した単結晶バルクを用いてもよいし、一般に基板として市販されているLiNbO
3、LiTaO
3単結晶等でも良い。
【0042】
上記の種結晶膜の具体例としては、例えばZr/Ti比が下記式(1)を満たすPb(Zr,Ti)O
3膜または(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜を用いるとよい。Aは、Li、Na、K、Rb、Ca、Sr、Ba、Bi及びLaからなる群から選択される少なくとも1種からなるとよい。
60/40≦Zr/Ti≦40/60 ・・・(1)
【0043】
Pb(Zr,Ti)O
3膜の各元素数比は、下記式(2)を満たし、好ましくは下記式(2')を満たす。
Pb/(Zr+Ti)<1.03 ・・・(2)
1≦Pb/(Zr+Ti)<1.03 ・・・(2')
【0044】
(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜の各元素数比は、下記式(3)を満たし、好ましくは下記式(3')満たす。
(Pb+A)/(Zr+Ti)≦1.35 ・・・(3)
1≦(Pb+A)/(Zr+Ti)≦1.35 ・・・(3')
【0045】
上記のエピタキシャル成長によるPb(Zr,Ti)O
3膜または(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜を用いることにより、(001)または(111)のいずれかに単一配向または優先配向し、かつ非常に良好な結晶性を有する種結晶膜を形成することができる。
【0046】
次に、強誘電体材料を含むアモルファス膜16を有する被処理基板22を用意する。
詳細には、例えばシリコンウエハ14上に(001)配向したSrRuO
3膜(図示せず)を形成し、SrRuO
3膜上に(001)配向したPt膜15を形成し、Pt膜15上に強誘電体材料を含むアモルファス膜16をゾルゲル法により形成する。このようにして被処理基板22を用意する。
【0047】
なお、本実施の形態では、シリコンウエハ14上にSrRuO
3膜及びPt膜15を介してアモルファス膜16を形成しているが、シリコンウエハ14上に他の導電膜または絶縁膜を介してアモルファス膜16を形成してもよい。
【0048】
次に、
図1に示す矢印のように、被処理基板22上に接触用基板20を重ねて置き、アモルファス膜16に種結晶部材13を接触させながら、種結晶部材13及びアモルファス膜16を酸素雰囲気で加熱する。これにより、アモルファス膜16を酸化して結晶化することで強誘電体膜を形成することができる。
また、種結晶部材13及びアモルファス膜16を加圧酸素雰囲気で加熱することが好ましく、より好ましくは4atm以上の加圧酸素雰囲気で加熱することである。これにより、より単一配向性が強い強誘電体膜を得ることができる。
【0049】
また、上記のアモルファス膜16と種結晶部材13との接触は、分子レベルで面接触している必要はなく(完全に密着している必要はなく)、むしろ点接触の集合体のほうがよい。その理由は、点接触しているところにおける種結晶部材13の単一配向性の強い結晶が、単一配向性の弱い結晶よりも優先的にアモルファス膜16に転写され、それによってアモルファス膜16に単一配向性が強い結晶が形成され、その単一配向性が強い結晶がアモルファス膜16の表面と平行方向及び垂直方向にも広がっていくことで、種結晶部材13より単一配向性が強い強誘電体膜が被処理基板22の全面に生成されるものと考えられるからである。これに対し、アモルファス膜16と種結晶部材13との接触が分子レベルで十分に面接触している場合、種結晶部材13の単一配向性の強い結晶と弱い結晶の両方が転写されるため、種結晶部材13と同程度の単一配向性の強誘電体膜が生成されるものと考えられる。従って、上記の接触が点接触の集合体であることによって、種結晶部材13における単一配向性の強い結晶がアモルファス膜16に転写され、種結晶部材13における単一配向性の弱い結晶がアモルファス膜16に転写されないといった、単一配向性を強化するフィルターのような役割を果たし、その結果、種結晶部材13より単一配向性が強い強誘電体膜が生成されるものと考えられる。
【0050】
また、アモルファス膜16に種結晶部材13を部分的に接触させた場合でも同様の効果が得られると考えられる。従って、種結晶部材13の表面がアモルファス膜16の表面より小さくてもよく、その場合、アモルファス膜16に単一配向性が強い結晶が形成され、その単一配向性が強い結晶がアモルファス膜16の表面と平行方向にも広がっていくことで、アモルファス膜16の全体を単一配向性が強い結晶とすることができる。
また、アモルファス膜16に種結晶部材13を接触させる際は、アモルファス膜16に種結晶部材13を一定の圧力で加圧して接触させることが好ましい。このように一定の圧力とすることにより品質が安定した強誘電体膜を得ることができる。
【0051】
上記の強誘電体膜は、種結晶部材13の配向と同一の配向を有している。例えば、種結晶部材13が(001)に配向されている場合は、強誘電体膜も(001)に配向されることになり、種結晶部材13が(111)に配向されている場合は、強誘電体膜も(111)に配向されることになる。
【0052】
また、前述したように、種結晶部材13に、Pb(Zr,Ti)O
3膜または(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜を用いた場合、Zr/Ti比が下記式(5)を満たすことで、種結晶部材13が(001)に配向され易くすることができる。
52/48<Zr/Ti≦40/60 ・・・(5)
【0053】
また、前述したように、種結晶部材13に、Pb(Zr,Ti)O
3膜または(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜を用いた場合、Zr/Ti比が下記式(6)を満たすことで、種結晶部材13が(111)に配向され易くすることができる。
60/40≦Zr/Ti<52/48 ・・・(6)
【0054】
この後、種結晶部材13を強誘電体膜から離す。種結晶部材13はアモルファス膜16に接触させているだけであるため、種結晶部材13は強誘電体膜から容易に剥がすことができる。
【0055】
種結晶部材13は、アモルファス膜16を結晶化する際の初期核としての役割を果たすものであるため、複数のアモルファス膜16に対して使用することができる。つまり、1枚の接触用基板20を用意すれば、複数枚の被処理基板22に対して使用することができ、経済的である。このため、強誘電体膜の製造コストを低減することができる。また、1枚の接触用基板20の種結晶部材13に対して複数枚の被処理基板22の強誘電体膜を製造できるため、強誘電体膜のばらつきを小さくでき、強誘電体膜の再現性を向上させることができる。従って、製造する強誘電体膜の品質管理も容易となる。
【0056】
強誘電体膜は、下記の(1)〜(6)の少なくとも一つからなる膜であるとよい。
(1)ABO
3あるいは(Bi
2O
2)
2+(A
m−1B
mO
3m+1)
2−(式中、AはLi、Na、K、Rb、Pb、Ca、Sr、Ba、Bi、La及びHfからなる群から選択される少なくとも1種、BはRu、Fe、Ti、Zr、Nb、Ta、V、W及びMoからなる群から選択される少なくとも1種、mは5以下の自然数である。)で表されるペロブスカイト及びビスマス層状構造酸化物
(2)LanBa
2Cu
3O
7、Trm
2Ba
2Ca
n−1Cu
nO
2n+4又はTrmBa
2Ca
n−1Cu
nO
2n+3(式中、LanはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種、TrmはBi、Tl及びHgからなる群から選択される少なくとも1種、nは5以下の自然数である。)で表される超伝導酸化物
(3)A
0.5BO
3(正方ブロンズ構造)又はA
0.3BO
3(六方ブロンズ構造)(式中、AはLi、Na、K、Rb、Cs、Pb、Ca、Sr、Ba、Bi及びLaからなる群から選択される少なくとも1種、BはRu、Fe、Ti、Zr、Nb、Ta、V、W及びMoからなる群から選択される少なくとも1種である。)で表されるタングステンブロンズ構造酸化物
(4)CaO、BaO、PbO、ZnO、MgO、B
2O
3、Al
2O
3、Y
2O
3、La
2O
3、Cr
2O
3、Bi
2O
3、Ga
2O
3、ZrO
2、TiO
2、HfO
2、NbO
2、MoO
3、WO
3及びV
2O
5からなる群から選択される少なくとも1種の材料、
(5)前記少なくとも1種の材料にSiO
2を含む材料
(6)前記少なくとも1種の材料にSiO
2及びGeO
2を含む材料
【0057】
強誘電体膜の具体例としては、Zr/Ti比が下記式(4)を満たすPb(Zr,Ti)O
3膜または(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜がある。Aは、Li、Na、K、Rb、Ca、Sr、Ba、Bi及びLaからなる群から選択される少なくとも1種からなるとよい。
60/40≦Zr/Ti≦40/60 ・・・(4)
【0058】
本実施の形態によれば、ゾルゲル法を用いて作製した強誘電体膜であっても単一配向性または優先配向性を高くすることができる。詳細には、単一配向または優先配向し、かつ非常に良好な結晶性を有する種結晶部材13をアモルファス膜16に接触させて初期核として利用しながら酸素雰囲気で加熱して結晶化することにより、種結晶部材13の配向と同一の配向を有する強誘電体膜を形成することができる。
【0059】
言い換えると、非常に良好な結晶性を有する種結晶部材13の単一配向または優先配向を、ゾルゲル法を用いた強誘電体膜に忠実に転写することができる。その結果、単一配向または優先配向し、かつ結晶性の良い強誘電体膜を得ることができる。
【0060】
つまり、種結晶部材13に接触させて結晶化したゾルゲル法を用いた強誘電体膜15は、種結晶部材13と同じ結晶構造となる。また、強誘電体膜を結晶構造が決められた種結晶部材13と接触させることによって、強誘電体膜の結晶構造を制御できる。
【0061】
また、ゾルゲル法を用いる強誘電体膜の成膜速度は、例えばスパッタリング法によりエピタキシャル成長させる強誘電体膜の成膜速度に比べて非常に速い。このため、種結晶部材13上にゾルゲル法を用いて強誘電体膜を形成する本発明の一態様に係る強誘電体膜の製造方法は、量産に適した成膜速度を有するものになる。
【0062】
また、本実施の形態では、被処理基板22上に接触用基板20を重ねて置き、アモルファス膜16に種結晶部材13を接触させながら、種結晶部材13及びアモルファス膜16を酸素雰囲気で加熱して結晶化するが、アモルファス膜16に種結晶部材13を接触させ、且つアモルファス膜16と種結晶部材13とを密着させるために、表1に示す有機溶媒をアモルファス膜16と種結晶部材13との間に毛管現象で満たしながら、種結晶部材13及びアモルファス膜16を酸素雰囲気で加熱して結晶化するとよい。その結果、更に単一配向性が強い強誘電体膜を生成することができる。この場合の有機溶媒は、乾燥し難いアルコール類であることが好ましい。
【0064】
<強誘電体膜の製造装置>
図2及び
図3は、本発明の一態様に係る加圧式ランプアニール装置30を説明するための断面図である。
【0065】
加圧式ランプアニール装置30はAl製のチャンバー21を有している。このチャンバー21の内表面には表面処理が施されている。つまり、チャンバー21の内表面には反射膜が形成されている。具体的な表面処理としては、Auメッキ処理又はシュウ酸アルマイト処理を用いることが可能である。これにより、チャンバー21の内表面にはAuメッキ膜又はシュウ酸アルマイト膜が形成され、このAuメッキ膜又はシュウ酸アルマイト膜でランプ光を反射させることができる。その結果、昇温レートを上げることができる。また、消費電力を少なくすることができる。また、チャンバー21は図示せぬ冷却機構によって水冷されるように構成されている。
【0066】
チャンバー21内には
図1に示す被処理基板22を載置するステージ23が設けられている。ステージ23はランプ光が透過する材料、例えば石英で形成されている。ステージ23の上方には石英ガラス24が配置されている。この石英ガラス24は、チャンバー21内が加圧されるために厚く形成されている。
【0067】
石英ガラス24の上にはランプヒータ25が配置されており、このランプヒータ25は金属製の筐体の内部に配置されている。なお、本実施の形態では、ランプヒータを用いているが、他の加熱機構を用いてもよい。
【0068】
また、加圧式ランプアニール装置30は、ステージ23に載置された被処理基板22のアモルファス膜に種結晶部材を接触させる機構を有している。詳細には、軸27を上下に移動させる移動機構26を有しており、この軸27の先端には
図1に示す接触用基板20が取り付けられる。この移動機構26は、アモルファス膜に種結晶部材を一定の圧力で加圧して接触させる機構であることが好ましい。このように一定の圧力とすることにより品質が安定した強誘電体膜を得ることができる。
【0069】
チャンバー21内に形成される処理室55は狭い方が好ましい。その理由は、所定の圧力まで加圧するのに必要な時間を短くすることができるからである。また、処理室55内の高さは低い方が好ましい。その理由は、処理室55内に配置された被処理基板22とランプヒータ25との間の距離を短くでき、それによって昇温レートを上げることができるからである。
【0070】
チャンバー21内の処理室55は加圧ライン(ガス導入機構)29に接続されている。加圧ライン29は、アルゴンガスによる加圧ライン、酸素ガスによる加圧ライン及び窒素ガスによる加圧ラインを有している。
【0071】
アルゴンガスによる加圧ライン、酸素ガスによる加圧ライン及び窒素ガスによる加圧ラインそれぞれは、加熱ユニットを有しており、加熱ユニットは、プロセスを安定させるためにガス温度を一定(例えば40〜50℃程度)にするものである。
【0072】
また、チャンバー21内の処理室55は圧力調整ライン(ガス排気機構)28に接続されている。この圧力調整ライン28及び加圧ライン29によってチャンバー21内の処理室55を所定の圧力(例えば1MPa未満)に加圧できるようになっている。
【0073】
圧力調整ライン28は、安全ラインを有しており、この安全ラインは、処理室55内が異常に加圧され過ぎてある一定の圧力以上になった時に処理室内を大気圧まで下げるためのものである。
【0074】
また、圧力調整ライン28は、大気開放ラインを有しており、この大気開放ラインは、正常に加圧された処理室55内を大気圧に戻すものである。
【0075】
また、圧力調整ライン28は、処理室55内を減圧状態から大気圧に戻すラインを有しており、このラインは、処理室55内が減圧状態(真空状態)となっている場合に、減圧状態から大気圧に戻すものである。
【0076】
チャンバー21の一方側にはゲートバルブ(図示せず)が配置されており、ゲートバルブを開いた状態で、チャンバー21内の処理室55に被処理基板22を搬入、搬出するようになっている。
【0077】
図4は、本発明の一態様に係る強誘電体膜の製造装置の全体構成を示す模式図であり、この製造装置は、
図2及び
図3に示す加圧式ランプアニール装置30を有している。
【0078】
この強誘電体膜の製造装置は搬送室を有しており、この搬送室内には、スピンコータ45、150℃〜300℃の温度で乾燥させるアニール装置46、窒素雰囲気または不活性ガス雰囲気で例えば300〜600℃の温度、常圧で仮焼成を行うアニール装置47、
図2に示す加圧式ランプアニール装置(RTA)30、冷却処理を行う冷却装置43、アライメント処理を行うアライナー42、ロード・アンロードを行うカセットステージ41、及び被処理基板を搬送する搬送ロボット44が配置されている。
【0079】
搬送ロボット44は、スピンコータ45、カセットステージ
41、アライナー42、冷却装置43、アニール装置46,47、及び加圧式ランプアニール装置30それぞれに被処理基板を搬送するための機構である。
【0080】
この製造装置には、搬送室内の空気中の塵の量を調整する空調機構が設けられている。この空調機構によって搬送室内の空気中の塵の量を外気に比べて少なくすることができる。なお、この空調機構は、搬送室内の温度または湿度を制御することも可能である。
【0081】
カセットステージ41は、複数の被処理基板を有している。
アライナー42は、被処理基板22の表面の中心位置を検出する処理を行うものである。
【0082】
アニール装置46は、スピンコータ45によって被処理基板22上に塗布されたアモルファス膜に乾燥処理を行う装置である。この乾燥処理は、例えばアモルファス膜中のアルコール、水分などを除去する処理である。
【0083】
アニール装置46内には、被処理基板22を保持して加熱するためのホットプレート(図示せず)が配置されている。このホットプレー
トは、被処理基板22を所望の温度(例えば200℃)に加熱することができる。
【0084】
アニール装置47は、被処理基板22上に塗布されたアモルファス膜に窒素雰囲気中で所望の温度(例えば300℃〜600℃)の仮焼成を行うための装置である。アニール装置47内には、被処理基板22を保持して加熱するためのランプヒータ(図示せず)が配置されている。このランプヒータは、被処理基板22を所望の温度に加熱することができる。また、アニール装置47は、処理室内を所定の雰囲気にするためのガス導入機構と、処理室内を排気する排気系(真空ポンプ等)を有している。ガス導入機構は、例えば窒素を導入するものである。
【0085】
RTA30は、
図2及び
図3に示す加圧式ランプアニール装置であって、被処理基板22上に塗布されたアモルファス膜に例えば500〜1000℃の温度でランプアニール処理を行うための装置である。このランプアニール処理は加圧及び常圧のいずれの状態でも行うことが可能である。
【0086】
冷却装置43は、乾燥処理または仮焼成処理またはランプアニール処理などが行われた被処理基板22を冷却するための装置である。
【0087】
次に、上記の強誘電体膜の製造装置を用いて被処理基板を処理することで被処理基板に強誘電体膜を製造する方法について
図2〜
図4を参照しつつ説明する。この強誘電体膜は、例えばPZT膜である。
【0088】
まず、
図4に示すように、カセットステージ41内の被処理基板を、搬送ロボット44によってアライナー
42のアライメント処理室に搬送し、この被処理基板をアライメント処理室の保持機構によって保持する。この際、搬送室内は、空調機構によって空気中の塵の量が調整されており、アライメント処理室内は、空調機構によって空気中の塵の量が調整されている。
【0089】
次いで、アライナー
42のアライメント処理室内で被処理基板の表面の中心位置を検出する処理を行う。この処理を行うのは、基板表面の中心位置を検出しておき、スピンコート処理を行う際に基板表面の中心位置と基板の回転中心を一致させるためである。
【0090】
この後、スピンコータ45のスピンコート処理室のゲートバルブ(図示せず)を開け、搬送ロボット44によってアライナー42のアライメント処理室内の被処理基板をスピンコート処理室内に搬送し、この被処理基板をスピンコート処理室内の保持機構によって保持し、ゲートバルブを閉じる。この際、スピンコート処理室内は、空調機構によって空気中の塵の量が調整されている。
【0091】
この後、スピンコータ45のスピンコート処理室内で被処理基板上にスピンコートにより膜を塗布する工程を行う。
【0092】
この工程を以下に詳細に説明する。
洗浄ノズルによって被処理基板上に洗浄液を供給しつつ被処理基板を回転させる。これにより、被処理基板の表面が洗浄される。次に、洗浄液の供給を停止し、被処理基板を回転させることで、被処理基板上の洗浄液を除去する。
次に、滴下ノズルによって被処理基板上にケミカル材料を滴下しつつ被処理基板を回転させる。これとともに、エッヂリンスノズルによって基板表面の端部に洗浄液を滴下する。これにより、被処理基板上にはケミカル材料膜が塗布される。基板表面の端部に洗浄液を滴下する理由は、被処理基板上にスピンコートにより膜を塗布すると被処理基板の端部の膜厚が被処理基板の中央より厚く形成されるので、被処理基板の端部の膜を洗浄液で除去しながら塗布するためである。従って、エッヂリンスノズルを被処理基板の端部から中央側に少しずつ移動させることで、洗浄液を滴下する位置を被処理基板の端部から中央側に少しずつ移動させることが好ましい。
【0093】
この後、スピンコータ45のスピンコート処理室のゲートバルブを開け、搬送ロボット44によってスピンコート処理室内の被処理基板をアニール装置46の乾燥処理室内に搬送し、この被処理基板を乾燥処理室内の保持機構によって保持し、ゲートバルブを閉じる。
【0094】
この後、アニール装置46の乾燥処理室内で被処理基板上のケミカル材料膜に乾燥処理を施す工程を行う。
この工程を以下に詳細に説明する。
排気機構によって被処理基板上に塗布された膜の表面上の空気を排気しながら、ホットプレートによって被処理基板を例えば200〜250℃に加熱する。これにより、ケミカル材料膜中の水分等を除去する。
【0095】
この後、アニール装置47の仮焼成処理室のゲートバルブを開け、搬送ロボット44によって乾燥処理室内の基板を仮焼成処理室内に搬送し、この被処理基板を仮焼成処理室内の保持機構によって保持し、ゲートバルブを閉じる。
【0096】
この後、アニール装置47の仮焼成処理室内で被処理基板上のケミカル材料膜に仮焼成を施す工程を行う。
詳細には、排気系によって仮焼成処理室内を真空排気した後に、ガス導入機構によって仮焼成処理室内を真空雰囲気中または窒素雰囲気または不活性ガス雰囲気で常圧とし、ランプヒータによって被処理基板上のケミカル材料膜を所望の温度(例えば300℃〜600℃)に加熱することで仮焼成を行う。
【0097】
この後、ゲートバルブを開け、搬送ロボット44によってアニール装置47の仮焼成処理室内の被処理基板を冷却装置43の冷却処理室内に搬送し、この被処理基板を冷却処理室内の保持機構によって保持し、ゲートバルブを閉じる。この後、冷却処理室内で被処理基板を所定の温度まで冷却する。
【0098】
この後、搬送ロボット44によって冷却処理室内の基板をアライナー42のアライメント処理室内に搬送し、この被処理基板をアライメント処理室内で被処理基板の表面の中心位置を検出する処理を行う。
【0099】
この後、スピンコータ45のスピンコート処理室のゲートバルブを開け、搬送ロボット44によってアライメント処理室内の被処理基板をスピンコート処理室内に搬送し、この被処理基板をスピンコート処理室内の保持機構によって保持し、ゲートバルブを閉じる。
【0100】
この後、上述した方法と同様にスピンコート処理、乾燥処理、仮焼成処理の工程を複数回(例えば30回)繰り返すことにより、基板上に複数のケミカル材料膜を積層して形成する。このように繰り返す回数が多いほど基板上に厚い膜(例えば膜厚が1μm以上)を形成することができる。この場合に前述した強誘電体膜の製造装置を用いることにより生産性を向上させることができる。詳細には、強誘電体膜の製造装置を制御部(図示せず)によって上述したように動作せることにより、スピンコート処理、乾燥処理、仮焼成処理を自動で行うことができる。このため、それぞれの処理を個別に行い、オペレータが手で基板を搬送すると手がしびれたり処理の順序を間違えたり搬送中に基板を落としたりすることも考えられるが、このようなことが起こらないという利点がある。従って、大量生産する際に生産性を向上させることができ、歩留りを高めることができる。
【0101】
この後、アニール装置47の仮焼成処理室のゲートバルブを開け、加圧式ランプアニール装置30のゲートバルブを開け、搬送ロボット44によって仮焼成処理室内の被処理基板をRTA30のアニール処理室内に搬送する。
図2に示す加圧式ランプアニール装置30において、被処理基板22をステージ23によって保持させ、ゲートバルブを閉じる。なお、仮焼成処理室内からアニール処理室55内に被処理基板22を搬送する搬送時間が10秒以下であることが好ましい。
【0102】
このように搬送時間を短くする理由は次のとおりである。搬送時間が長くなると強誘電体膜の特性に大きく影響を与える。詳細には、仮焼成後は、ケミカル材料膜の酸素活性が非常に高く酸素欠乏状態であるため、大気中の酸素と結合してしまい、膜の特性が劣化する。従って、搬送時間を短くすることが好ましい。
【0103】
この後、アニール処理室55内で被処理基板22上の複数層のケミカル材料膜にランプアニール処理を施す工程を行う。
【0104】
加圧式ランプアニール装置30を使用する方法について
図2及び
図3を参照しつつ詳細に説明する。
図2に示す状態で被処理基板22をステージ23上に保持させた後に、
図3に示すように、軸27の先端に取り付けられた接触用基板20を移動機構26によって下方に移動させることで被処理基板22上に接触用基板20を重ねて置き、アモルファス膜16に種結晶部材13を接触させる。この際、接触用基板20を被処理基板22に押し付ける力を加えてもよい。このように接触用基板20を被処理基板22に接触させながら、種結晶部材13及びアモルファス膜16を酸素雰囲気で加熱する。これにより、アモルファス膜16を酸化して結晶化することで強誘電体膜を形成することができる。なお、種結晶部材13及びアモルファス膜16を加圧酸素雰囲気で加熱してもよく、好ましくは4atm以上の加圧酸素雰囲気で加熱するとよい。
【0105】
この後、搬送ロボット44によってRTA30のアニール処理室内の被処理基板22をカセットステージ41内に搬送し、この被処理基板を収容する。
【0106】
なお、本実施の形態では、被処理基板22上に接触用基板20を置く構成としていが、被処理基板22と接触用基板20の上下は逆でもよいし、左右に配置してもよい。
【0107】
[実施の形態2]
<強誘電体膜の製造方法>
本実施の形態による強誘電体膜の製造方法は、実施の形態1による強誘電体膜の製造方法と同様であるので説明を省略する。
【0108】
<強誘電体膜の製造装置>
図5は、本発明の一態様に係る加圧式ランプアニール装置31を説明するための断面図であり、
図2及び
図3と同一部分には同一符号を付す。
【0109】
図5に示す加圧式ランプアニール装置31は、
図2及び
図3に示す加圧式ランプアニール装置30の移動機構26及び軸27を有しない点で、加圧式ランプアニール装置30と異なる。
【0110】
図6は、本発明の一態様に係る強誘電体膜の製造装置の全体構成を示す模式図であり、この製造装置は、
図5に示す加圧式ランプアニール装置31を有している。
【0111】
図6に示す強誘電体膜の製造装置は、単結晶基板ステージ48を
有する点で、
図4に示す強誘電体膜の製造装置と異なる。この単結晶基板ステージ48は、
図5に示す接触用基板20を収容するステージである。
【0112】
次に、上記の強誘電体膜の製造装置を用いて被処理基板を処理することで被処理基板に強誘電体膜を製造する方法について
図5及び
図6を参照しつつ説明するが、実施の形態1と同一部分の説明は省略する。
【0113】
図6に示すように、アニール装置47の仮焼成処理室のゲートバルブを開け、加圧式ランプアニール装置31のゲートバルブを開け、搬送ロボット44によって仮焼成処理室内の被処理基板をRTA30のアニール処理室内に搬送するまでの工程は、実施の形態1と同様である。
【0114】
次いで、
図5に示す加圧式ランプアニール装置31において、被処理基板22をステージ23によって保持させた後に、搬送ロボット44によって単結晶基板ステージ48から接触用基板20を取り出し、この接触用基板20を処理室55内に搬送し、被処理基板22上に接触用基板20を重ねて置き、アモルファス膜16に種結晶部材13を接触させる。そして、ゲートバルブを閉じる。
【0115】
この後、実施の形態1と同様の方法で、加圧式ランプアニール装置31によってアモルファス膜16を酸化して結晶化することにより強誘電体膜を形成することができる。
【実施例】
【0116】
以下、本実施例について説明する。
図5及び
図6に示す強誘電体膜の製造装置を用いて被処理基板22を作製した。以下に詳細に説明する。
【0117】
6インチSiウエハ14上に膜厚300nmの酸化シリコン膜を形成し、この酸化シリコン膜上に膜厚10nmのTiO
2膜を形成する。
【0118】
次に、TiO
2膜上に第1のPt膜をスパッタリング法により550〜650℃の温度で成膜する。アルゴンガス圧0.4Pa、DCパワー100Wの電源出力で25分の成膜時間で形成した。
【0119】
次に、第1のPt膜上に第2のPt膜を蒸着法により常温で成膜する。3.3×10
-3Torr、10kVの電源出力で4分の成膜時間で形成した。
【0120】
次に、RTAによりSiウエハ14に650〜750℃の温度で1〜5分間の熱処理を施す。このようにして表面に(001)配向させた膜厚150nmのPt膜15を形成した6インチSiウエハを用意する。
【0121】
次に、PZTゾルゲル溶液を用意する。PZTゾルゲル溶液は、濃度が25重量%のPZT(Zr/Ti=52/48)でPbが20%過剰な溶液である。
【0122】
次に、Pt膜15上にゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより、このPt膜15上に1層目の塗布膜が形成される。詳細には、500μLのゾルゲル溶液を塗布し、0〜1500rpmまで上昇させ、1500rpmで30sec保持した後、3000rpmで10sec回転後、停止させた。
【0123】
次いで、この塗布されたPZTゾルゲル溶液をホットプレート上で250℃に加熱しつつ30秒間保持して乾燥させ、水分を除去した後、さらに高温に保持したホットプレート上で450℃に加熱しつつ90秒間保持して仮焼成を行う。
【0124】
上記の回転塗布、乾燥、仮焼成を10回繰り返し、強誘電体材料を含む10層のPZTアモルファス膜を生成する。このPZTアモルファス膜の膜厚は3μmであった。
【0125】
次に、
図1に示す接触用基板20を用意する。この接触用基板20は表面に種結晶膜13を有しており、この種結晶膜13は、(001)に配向し、かつ非常に良好な結晶性を有するペロブスカイト構造のPZT膜である。
【0126】
そして、仮焼成を行った後のPZTアモルファス膜に接触用基板20の種結晶膜13を接触させながら加圧式ランプアニール装置(RTA: rapidly thermal anneal)を用いて酸素分圧10atm、5atm、1atmの酸素雰囲気で700℃の温度に20分間保持してアニール処理を行い、PZT結晶化を行う。このようにして3種類の酸素分圧による実施例のサンプルのPZT膜を作製した。
【0127】
比較例として、接触用基板20を接触させずに、酸素分圧を10atmとした以外は上記の実施例と同様の条件で、サンプルを作製した。
【0128】
図7は、酸素分圧10atmで作製した実施例のサンプルのPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
図8は、酸素分圧5atmで作製した実施例のサンプルのPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【0129】
図7及び
図8に示すように、ゾルゲル法によって形成したPZT膜であっても、(001)に配向し、単一配向性且つ結晶性が非常に高い(ピーク強度の強い)PZT膜を作製することができた。
つまり、
図7または
図8に示す強誘電体膜は、(001)に単一配向したPZT膜である。なお、本実施例では、PZT膜を示しているが、本発明の一態様を適用することにより、(001)に単一配向したPb(Zr,Ti)O
3膜または(Pb,A)(Zr,Ti)O
3膜であり、Aは、Li、Na、K、Rb、Ca、Sr、Ba、Bi及びLaからなる群から選択される少なくとも1種からなる強誘電体膜を実現することができる。
【0130】
図9は、酸素分圧1atmで作製した実施例のサンプルのPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
図9に示すように、ゾルゲル法によって形成したPZT膜であっても、(001)に優先配向したPZT膜を作製することができた。
【0131】
図10は、酸素分圧10atmで作製した比較例のサンプルのPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
図10に示すように、酸素分圧を10atmにしても全体に結晶性が非常に弱く(ピーク強度は非常に弱い)、且つ(110)に優先配向したPZT膜が得られた。
【0132】
本実施例によれば、ゾルゲル法を用いて作製しても単一配向性または優先配向性が高い強誘電体膜が得られることが確認できた。特に、接触用基板の種結晶膜のペロブスカイト構造は被処理基板のPZTを結晶化させ易く、一部でも結晶化すれば、結晶の隣のアモルファス部分も簡単に結晶化が続いて起こることが確認できた。