(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2膨張弁は、その感温部が感知する過熱度範囲が過熱度0℃から2℃の間に収まるよう自律的に動作するように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用冷暖房装置。
前記補助凝縮器と前記室外蒸発器とを接続する第1通路と、前記室外蒸発器と前記圧縮機とを接続する第2通路とを接続するバイパス通路を含み、前記圧縮機の入口側の冷媒状態を過熱度0℃に近づけることを補助するための過熱度調整構造を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用冷暖房装置。
前記バイパス通路が、前記第1通路における前記第2膨張弁の弁部よりも下流側位置と、前記第2通路における前記第2膨張弁の感温部よりも下流側位置とを接続するように設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両用冷暖房装置。
前記第1通路における前記バイパス通路への分岐部よりも下流側に差圧を発生させるための差圧発生構造を有することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の車両用冷暖房装置。
前記第2膨張弁は、前記室外蒸発器の出口側の温度を感知するための時定数を小さくするための感温促進構造を有することを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の車両用冷暖房装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。この車両用冷暖房装置は、電気自動車の冷暖房装置として具体化されたものである。
【0016】
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、補助凝縮器3(室内熱交換器)、室外熱交換器5および蒸発器7を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。本実施形態では、アキュムレータは設けられていない。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFC−134a、HFO−1234yfなど)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
【0017】
圧縮機2および室外熱交換器5は、車室外(エンジンルーム)に設けられている。一方、車室内には空気の熱交換が行われるダクト10が設けられ、そのダクト10における空気の流れ方向上流側に蒸発器7が配設され、下流側に補助凝縮器3が配設されている。補助凝縮器3は、室内凝縮器として構成されている。
【0018】
車両用冷暖房装置1は、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。この冷凍サイクルは、補助凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として並列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として切り替え可能に構成されている。この冷凍サイクルでは、冷房運転時に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、除湿運転時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
【0019】
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室外熱交換器5→蒸発器7→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→室外熱交換器5→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→蒸発器7→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第1冷媒循環通路と第2冷媒循環通路とで逆方向となっている。
【0020】
具体的には、圧縮機2の吐出室につながる通路が分岐し、その一方である第1通路21が室外熱交換器5の一方の出入口につながり、他方である第2通路22が補助凝縮器3の入口につながっている。室外熱交換器5の他方の出入口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第4通路24(戻り通路)を介して圧縮機2の入口(吸入口)に接続されている。第1通路21、第3通路23および第4通路24により第1冷媒循環通路が形成される。
【0021】
補助凝縮器3の出口は第5通路25を介して第3通路23に接続されている。第1通路21は中間部においてバイパス通路26に分岐し、バイパス通路26は圧縮機2の入口に接続されている。さらに、第5通路25は中間部においてバイパス通路27に分岐し、バイパス通路27は第3通路23に接続されている。第2通路22、第5通路25、第3通路23およびバイパス通路26により第2冷媒循環通路が形成される。一方、第2通路22、第5通路25、バイパス通路27、第3通路23および第4通路24により第3冷媒循環通路が形成される。第1冷媒循環通路と第3冷媒循環通路とは、冷房運転時において補助凝縮器3と室外熱交換器5を圧縮機2に対して並列につなぐ並列循環通路を形成する。第4通路24におけるバイパス通路26との合流点よりも下流側は、第1〜第3冷媒循環通路に共用の共用通路28となっている。
【0022】
第1通路21におけるバイパス通路26との分岐点には、第1制御弁31が設けられている。第3通路23における第5通路25との合流点には、第2制御弁32が設けられている。第4通路24とバイパス通路26との合流点には、第3制御弁33が設けられている。第5通路25におけるバイパス通路27との分岐点には、第4制御弁34が設けられている。制御弁31〜34は、複数の冷媒循環通路間の合流点又は分岐点における冷媒の流れを切り替える切替弁として機能する。なお、第4制御弁34は、暖房除湿運転時においては、第5通路25から第3通路23およびバイパス通路27へ流れる冷媒の流量の割合を調整する比例弁としても機能する。
【0023】
第1制御弁31は、第1通路21を開閉する第1弁部と、バイパス通路26を開閉する第2弁部と、各弁部を駆動するアクチュエータとを備える三方弁からなる。第1弁部の開閉により、圧縮機2から室外熱交換器5への冷媒の流れが許容又は遮断される。第2弁部の開閉により、室外熱交換器5からバイパス通路26への冷媒の流れが許容又は遮断される。本実施形態では、第1制御弁31として、ソレノイドへの通電又は非通電により各弁部の開閉状態を切り替え可能な電磁弁が用いられるが、ステッピングモータの駆動により各弁部の開閉状態を切り替え可能な電動弁を用いてもよい。
【0024】
第2制御弁32は、第3通路23を開閉する第1弁部と、第5通路25を開閉する第2弁部と、各弁部を駆動するアクチュエータとを備える三方弁からなる。第1弁部の開閉により、室外熱交換器5から蒸発器7への冷媒の流れが許容又は遮断される。第2弁部の開閉により、補助凝縮器3から室外熱交換器5への冷媒の流れが許容又は遮断される。本実施形態では、第2制御弁32として電磁弁が用いられるが、ステッピングモータ等による電動弁を用いてもよい。
【0025】
第3制御弁33は、第4通路24を開閉する第1弁部と、バイパス通路26を開閉する第2弁部と、各弁部を駆動するアクチュエータとを備える三方弁からなる。第1弁部の開閉により、蒸発器7から共用通路28を介した圧縮機2への冷媒の流れが許容又は遮断される。第2弁部の開閉により、バイパス通路26から共用通路28を介した圧縮機2への冷媒の流れが許容又は遮断される。本実施形態では、第3制御弁33として電磁弁が用いられるが、ステッピングモータ等による電動弁を用いてもよい。
【0026】
第4制御弁34は、第5通路25の開度を調整する第1弁部と、バイパス通路27の開度を調整する第2弁部と、各弁部を駆動するアクチュエータとを備える三方弁からなる。第1弁部の開閉により、補助凝縮器3から室外熱交換器5への冷媒の流れが許容又は遮断される。第2弁部の開閉により、補助凝縮器3からバイパス通路27を介した蒸発器7への冷媒の流れが許容又は遮断される。また、第1弁部と第2弁部との開度比率を調整することにより、補助凝縮器3から室外熱交換器5および蒸発器7のそれぞれへ流れる冷媒の流量を調整することができる。本実施形態では、第4制御弁34として電磁弁が用いられるが、ステッピングモータ等による電動弁を用いてもよい。なお、変形例においては、第4制御弁34における第1弁部と第2弁部の各開度を独立に調整できるように構成してもよい。
【0027】
第1冷媒循環通路には膨張弁41(「第1膨張弁」として機能する)が設けられている。膨張弁41は、冷房運転時に室外熱交換器5(室外凝縮器)から導出された冷媒を絞り膨張させて蒸発器7へ供給する。膨張弁41は、蒸発器7から圧縮機2へ向かう冷媒の温度と圧力を感知して自律的に動作し、室外熱交換器5から蒸発器7へ向かう冷媒の流量を調整するノーマルチャージ方式の温度式膨張弁である。膨張弁41は、第3通路23の一部を構成する第1内部通路と、第4通路24の一部を構成する第2内部通路と、その第1内部通路に設けられた弁部と、第2内部通路を流れる冷媒の温度と圧力を感知する感温部とを有する。
【0028】
第2冷媒循環通路には膨張弁42(「第2膨張弁」として機能する)が設けられている。膨張弁42は、暖房運転時に補助凝縮器3から導出された冷媒を絞り膨張させて室外熱交換器5(室外蒸発器)へ供給する。膨張弁42は、室外熱交換器5から圧縮機2へ向かう冷媒の温度と圧力を感知して自律的に動作し、補助凝縮器3から室外熱交換器5へ向かう冷媒の流量を調整するノーマルチャージ方式の温度式膨張弁である。膨張弁42は、第5通路25の一部を構成する第1内部通路と、共用通路28の一部を構成する第2内部通路と、その第1内部通路に設けられた弁部と、第2内部通路を流れる冷媒の温度と圧力を感知する感温部とを有する。
【0029】
バイパス通路27には、除湿運転時に補助凝縮器3から蒸発器7へ向かう冷媒の流量を制限するためのオリフィス44が設けられている。
【0030】
ダクト10には、空気の流れ方向上流側から室内送風機12、蒸発器7、補助凝縮器3が配設されている。補助凝縮器3の上流側には、エアミックスドア14が回動自在に設けられ、補助凝縮器3を通過する風量と補助凝縮器3を迂回する風量との比率が調節される。また、室外熱交換器5に対向するように室外送風機16が配置されている。
【0031】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。この圧縮機2としては、レシプロ式、ロータリ式、スクロール式など、様々な形式の圧縮機を採用することができるが、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明については省略する。
【0032】
補助凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる室内凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が補助凝縮器3を通過する際に放熱する。エアミックスドア14の開度に応じて振り分けられた空気は、補助凝縮器3を通過する過程でその熱交換が行われる。
【0033】
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外送風機16は、吸い込み式の送風機であり、軸流ファンをモータにより回転駆動することにより外気を導入する。室外熱交換器5は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
【0034】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張弁41の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。ダクト10の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア14の開度に応じて補助凝縮器3を通過するものと、補助凝縮器3を迂回するものとに振り分けられる。補助凝縮器3を通過する空気は、その通過過程で加熱される。補助凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが補助凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。例えば、ベント吹出口、フット吹出口、デフ吹出口等から車室内所定場所に向かって吹き出される。
【0035】
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、制御部100により制御される。制御部100は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部は、車室内外の温度、蒸発器の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の制御量(開閉状態)や圧縮機2の駆動量等を決定し、それらを駆動させるための制御電流を供給する。これにより、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。なお、本実施形態ではこのような制御を実現するために、補助凝縮器3の出口、室外熱交換器5の出入口、蒸発器7の入口と出口等の温度を検出するための複数の温度センサが設置されている。
【0036】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。
図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示している。各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜gはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の点線は冷媒の流れが遮断されていることを示している。
【0037】
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、制御弁31〜33において第1弁部が開弁状態とされ、第2弁部が閉弁状態とされる。一方、制御弁34において第1弁部が閉弁状態とされ、第2弁部が開弁状態とされる。それにより、第1冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放され、第2冷媒循環通路は遮断される。このため、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で室外熱交換器5を、他方で補助凝縮器3を経ることで凝縮される。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
【0038】
そして、室外熱交換器5を経由した冷媒が膨張弁41にて絞り膨張され、冷温・低圧の霧状の冷媒となって蒸発器7に導入される。また、補助凝縮器3を経由した冷媒がオリフィス44にて絞り膨張され、冷温・低圧の霧状の冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その冷媒が蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器7から導出された冷媒は、膨張弁42の第2内部通路を通って圧縮機2に戻される。このとき、膨張弁41により圧縮機2の入口側の過熱度が適正値となるように制御される。本実施形態では、冷房運転時において圧縮機2の入口側の冷媒状態が過熱度5℃から10℃の間となるよう膨張弁41が自律的に弁開度を調整する。
【0039】
一方、
図2(B)に示すように、通常の暖房運転時においては、制御弁31〜33において第1弁部が閉弁状態とされ、第2弁部が開弁状態とされる。一方、制御弁34において第1弁部が開弁状態とされ、第2弁部が閉弁状態とされる。それにより、第1冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が遮断され、第2冷媒循環通路が開放される。このため、冷媒は蒸発器7を通過せず、蒸発器7は実質的に機能しなくなる。つまり、室外熱交換器5のみが蒸発器(室外蒸発器)として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、補助凝縮器3、膨張弁42、室外熱交換器5を経由するように第2冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
【0040】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、補助凝縮器3を経て凝縮され、膨張弁42にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5を通過して蒸発される。これにより、外部から熱を汲み上げる。室外熱交換器5を通過した冷媒は、膨張弁42の第2内部通路を通って圧縮機2に戻る。車室内に導入された空気は、補助凝縮器3を通過する過程で温められる。このとき、膨張弁42により圧縮機2の入口側の過熱度が適正値となるように制御される。本実施形態では、暖房運転時において圧縮機2の入口側の冷媒状態が乾き度0.9から過熱度5℃の間となるよう膨張弁42が自律的に弁開度を調整する。なお、暖房除湿運転時においては、第1冷媒循環通路が遮断される一方、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放される。そして、制御弁34により第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路のそれぞれを流れる冷媒の流量が調整される。これにより、車室内の空気が温められるとともに除湿も行われる。
【0041】
次に、膨張弁の具体的構成について説明する。
図3は、膨張弁42の構成を表す断面図である。膨張弁42は、アルミニウム合金からなる素材を押出成形して得た部材に所定の切削加工を施して形成されたボディ102を有する。このボディ102は角柱状をなし、その内部には冷媒の絞り膨張を行う弁部が設けられている。ボディ102の長手方向の端部には、感温部として機能するパワーエレメント103が設けられている。
【0042】
ボディ102の側部には、補助凝縮器3側から高温・高圧の液冷媒を導入する導入ポート106、膨張弁42にて絞り膨張された低温・低圧の冷媒を室外熱交換器5(室外蒸発器)へ向けて導出する導出ポート107、室外熱交換器5にて蒸発された冷媒を導入する導入ポート108、膨張弁42を通過した冷媒を圧縮機2側へ導出する導出ポート109が設けられている。
【0043】
膨張弁42においては、導入ポート106、導出ポート107およびこれらをつなぐ通路により第1内部通路113が構成されている。第1内部通路113は、その中間部に弁部が設けられており、導入ポート106から導入された冷媒をその弁部にて絞り膨張させて霧状にし、導出ポート107から室外熱交換器5へ向けて導出する。一方、導入ポート108、導出ポート109およびこれらをつなぐ通路により第2内部通路114(「戻り通路」に該当する)が構成されている。第2内部通路114は、ストレートに延びており、導入ポート108を介して導入された冷媒を、導出ポート109を介して圧縮機2へ導出する。
【0044】
すなわち、ボディ102における第1内部通路113の中間部には弁孔116が設けられ、その弁孔116の導入ポート106側の開口端縁により弁座117が形成されている。弁座117に導入ポート106側から対向するように弁体118が配置されている。弁体118は、弁座117に着脱して弁部を開閉する球状のボール弁体と、ボール弁体を下方から支持する弁体受けとを接合して構成されている。
【0045】
ボディ102の下端部には、第1内部通路113に直交するように内外を連通させる連通孔119が形成されており、その上半部により弁体118を収容する弁室140が形成されている。弁室140は、その上端部にて弁孔116に連通し、側部にて小孔142を介して導入ポート106に連通しており、第1内部通路113の一部を構成している。小孔142は、第1内部通路113の通路断面が局部的に狭小化されて形成され、弁室140に開口している。
【0046】
連通孔119の下半部には、その連通孔119を外部から封止するようにアジャストねじ120(「アジャスト部材」に該当する)が螺着されている。弁体118(正確には弁体受け)とアジャストねじ120との間には、弁体118を閉弁方向に付勢するスプリング123が介装されている。アジャストねじ120のボディ102への螺入量を調整することで、スプリング123の荷重を調整することができる。アジャストねじ120とボディ102との間には、冷媒の漏洩を防止するためのOリング124が介装されている。
【0047】
一方、ボディ102の上端部には、第2内部通路114に直交するように内外を連通させる連通孔125が形成されており、その連通孔125を封止するようにパワーエレメント103(「感温部」に該当する)が螺着されている。パワーエレメント103は、アッパーハウジング126とロアハウジング127との間に金属薄板からなるダイヤフラム128を挟むように介装し、そのロアハウジング127側にディスク129を配置して構成されている。アッパーハウジング126とダイヤフラム128とによって囲まれる密閉空間はガス室Sを形成し、感温用のガスが封入されている。本実施形態では、冷凍サイクルを循環する冷媒と同種のガスもしくは同等の飽和液特性の傾きをもつガスがその感温ガスとして封入されている。ディスク129は、円板状の本体の下面中央から下方に延びる延在部130を有する。パワーエレメント103とボディ102との間には、冷媒の漏洩を防止するためのOリング132が介装されている。
【0048】
第2内部通路114を通過する冷媒の圧力および温度は、連通孔125とディスク129に設けられた溝部を通ってダイヤフラム128の下面に伝達される。また、本実施形態ではディスク129の素材として、熱伝導率の高いアルミニウム合金等のサーマルフィラーを採用しており、そのディスク129が第2内部通路114まで延在する構成としている。これにより、第2内部通路114を通過する冷媒の温度がディスク129を介してダイヤフラム128の下面に伝達され易くなっている。このことは、膨張弁42が室外熱交換器5の出口側の温度を感知するための時定数を小さくすることに寄与する。すなわち、ディスク129の構造が「感温促進構造」として機能している。
【0049】
ボディ102の中央部には、第1内部通路113と第2内部通路114とをつなぐ段付孔134が設けられており、この段付孔134の小径部144には長尺状のシャフト133(「作動ロッド」として機能する)が摺動可能に挿通されている。シャフト133は、ディスク129と弁体118との間に介装されている。シャフト133は、その上端部がディスク129の延在部130の下面に嵌合するように接続され、下端部が弁体118に当接するように接続される。これにより、ダイヤフラム128の変位よる駆動力が、ディスク129およびシャフト133を介して弁体118へ伝達され、弁部が開閉される。
【0050】
シャフト133の上半部は第2内部通路114に延出し、下半部は段付孔134の小径部144を摺動可能に貫通している。段付孔134の大径部146(「穴部」に対応する)には、シャフト133に軸線方向と直角な方向の付勢力、つまり横荷重(摺動荷重)を付与するための防振ばね150が配設されている。シャフト133がその防振ばね150の横荷重を受けることにより、冷媒圧力の変動によるシャフト133や弁体118の振動が抑制されるようになっている。なお、防振ばね150の具体的構造については、例えば特願2013−32425号(未公開特許出願)に記載の構成を採用することができるため、その詳細な説明については省略する。
【0051】
以上のように構成された膨張弁42は、室外熱交換器5から導入ポート108を介して戻ってきた冷媒の圧力及び温度をパワーエレメント103が感知してそのダイヤフラム128が変位する。このダイヤフラム128の変位が駆動力となり、ディスク129およびシャフト133を介して弁体118に伝達されて弁部を開閉させる。一方、補助凝縮器3から供給された液冷媒は、導入ポート106から導入され、弁部を通過することにより絞り膨張されて、低温・低圧の霧状の冷媒になる。その冷媒は導出ポート107から室外熱交換器5へ向けて導出される。
【0052】
図4は、膨張弁42に封入されるガスの飽和液特性を表す図である。同図の横軸は膨張弁42が感知する冷媒の温度を示し、縦軸は冷媒の圧力を示している。図中実線は膨張弁42の制御特性を示し、一点鎖線は冷凍サイクルを流れる冷媒の特性を示している。
図5は、圧縮機2の吸入冷媒の過熱度と暖房能力との関係を表す図である。同図の横軸は圧縮機2の入口付近の吸入冷媒の乾き度および過熱度を示し、縦軸は暖房能力を示している。
【0053】
図4に示すように、本実施形態では、膨張弁42としてノーマルチャージ(またはパラレルチャージ)方式の温度式膨張弁を採用している。このため、暖房運転時における室外熱交換器5(室外蒸発器)の出口の冷媒温度は、基本的に冷凍サイクルに使用されている冷媒の飽和蒸気圧曲線よりも常に高い温度、すなわち常に過熱度SHを有するように室外熱交換器5に供給する冷媒流量を制御する。本実施形態では、膨張弁42が調整する過熱度SHの範囲(パワーエレメント103が感知する過熱度範囲)が、設計上図示のように、過熱度0℃から2℃の間に収まるようにスプリング123の荷重が調整されている。
【0054】
これにより、
図5に示すように、圧縮機2の入口側の冷媒状態(吸入冷媒の状態)が乾き度0.9から過熱度5℃の間となるようにされている。言い換えれば、圧縮機2の入口側の冷媒状態が乾き度0.9から過熱度5℃の間となるよう膨張弁42が自律的に動作するように、膨張弁42の弁開度特性が設定されている。暖房運転時においては図示のように、吸入冷媒の過熱度が5℃を超えると暖房能力の低下率が大きくなる。一方、乾き度が0.9を下回ると、いわゆる液バックにより圧縮機2の作動に支障をきたす可能性がある。そこで、本実施形態では、圧縮機2の入口側の冷媒状態(吸入冷媒の状態)が乾き度0.9から過熱度5℃の間となるように膨張弁42の弁開度特性を設定することとした。
【0055】
本実施形態によれば、圧縮機2への液バックを解消又は緩和しつつ、暖房能力を高く維持することが可能となる。なお、ここで乾き度0.9から過熱度0℃を許容したのは、圧縮機2の吸入冷媒に若干の液分が含まれることは、その作動に影響がなく、むしろ圧縮機2に必要量の潤滑オイルを戻すことができる点で好ましいからである。また、膨張弁42の設定値(過熱度0℃から2℃)と、圧縮機2の吸入冷媒の設定値(乾き度0.9から過熱度5℃)との間の包含関係は、膨張弁42の設定により圧縮機2の吸入冷媒の設定値を狙うことを意味する。なお、好ましくは、圧縮機2の入口側の冷媒状態が過熱度0℃となるのが良い。また、本実施形態によれば、上述したディスク129の感温促進構造により、その吸入冷媒の状態を目標値に速やかに近づけ、また目標値近傍に安定に維持することができる。
【0056】
なお、膨張弁41については、過熱度設定値が異なる以外は膨張弁42と同様の構成を有するため、その詳細な説明については省略する。すなわち、膨張弁41は、感温ガスの封入ガス圧が膨張弁42とは異なる。本実施形態では、冷房運転時における圧縮機2の入口側の冷媒状態が過熱度5℃から10℃の間となるよう膨張弁41が自律的に動作するように、膨張弁41の弁開度特性が設定されている。
【0057】
(変形例1)
図6は、変形例に係る膨張弁42の構成を表す断面図である。なお、同図において上記実施形態(
図3)と同様の構成については同一の符号を付している。
本変形例においては、ディスク159が有底段付円筒状をなし、その延在部160の内方に内部空間が形成されている。一方、ダイヤフラム158は円環状に構成され、その内周部がディスク159の上面に接合されている。パワーエレメント153において、アッパーハウジング126、ダイヤフラム158およびディスク159によって囲まれる密閉空間がガス室Sを形成している。すなわち、本変形例では上記実施形態とは異なり、ガス室Sが第2内部通路114の位置まで延在している。シャフト163は、上記実施形態のシャフト133よりもやや短く、その上端面がディスク159の下端面に当接している。このような構成により、第2内部通路114を流れる冷媒の温度がガス室Sに速やかに伝達されるため、パワーエレメント153の感度が向上する。すなわち、このようなガス室Sを形成する構造が「感温促進構造」として機能している。なお、この変形例が膨張弁41についても適用可能であることは言うまでもない。
【0058】
(変形例2)
図7は、他の変形例に係る膨張弁42の構成を表す断面図である。なお、同図において上記実施形態(
図3)と同様の構成については同一の符号を付している。
本変形例においては、パワーエレメント173の全体が第2内部通路114に配置される。ボディ172の上端開口部は、蓋部材180により閉止される。パワーエレメント173のディスク179と弁体118との間にシャフト163が介装される。ボディ172には、第1内部通路113と第2内部通路114との隔壁から第2内部通路114の内方に向けて延出する円ボス状の区画壁176が設けられている。パワーエレメント173は、区画壁176の上端開口部を封止するように取り付けられている。
【0059】
区画壁176には内外を連通させる連通孔182が設けられている。このため、第2内部通路114を流れる冷媒の一部が、連通孔182を介して区画壁176の内部に導入され、ダイヤフラム128の下面に導かれる。本変形例によれば、第2内部通路114を流れる冷媒の温度がガス室Sに速やかに伝達されるため、パワーエレメント173の感度が向上する。すなわち、このようにパワーエレメント173を第2内部通路114に配置する構造が「感温促進構造」として機能している。なお、この変形例が膨張弁41についても適用可能であることは言うまでもない。
【0060】
なお、「感温促進構造」については上記以外にも種々考えられる。例えば感温筒(キャピラリチューブ)を圧縮機2の入口近傍に取り付け、その温度をガス室Sに伝達させてもよい。また、膨張弁42と圧縮機2との間の配管を極力短くし、圧縮機2の入口近傍の温度を感知できるようにしてもよい。
【0061】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、第2の膨張弁の構成が異なる点を除けば第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。
図8は、第2実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。
図9は、第2実施形態に係る第2の膨張弁の構成を表す断面図である。
【0062】
図8に示すように、車両用冷暖房装置201は、第2冷媒循環通路に第1実施形態の膨張弁42に代えて膨張弁242を備える。膨張弁242には、第5通路25と共用通路28とを連通させるバイパス通路244が設けられる。
【0063】
すなわち、
図9に示すように、膨張弁242のボディ202には、第1内部通路113と第2内部通路114とを連通させるバイパス通路244が形成されている。バイパス通路244は、第1内部通路113における弁部よりも下流側位置に入口を有し、第2内部通路114におけるパワーエレメント103(感温部)よりも下流側位置に出口を有する。バイパス通路244は、その断面積が弁孔116の断面積よりも小さい固定オリフィスとして構成されており、第1内部通路113を流れる冷媒の大部分は導出ポート107から室外熱交換器5へ向けて導出されるようになる。なお、本実施形態のディスク229には、第1実施形態のような延在部は設けられていない。
【0064】
このような構成により、導入ポート108から導入された冷媒を、バイパス通路244を介してバイパスされる冷媒により冷却することができる。すなわち、弁部により絞り膨張されて低温となった冷媒の一部を第2内部通路114に導入することにより、室外熱交換器5を経由した冷媒の過熱度を低減できる構成とされている。本実施形態では、膨張弁242による過熱度の制御と、バイパスされた冷媒による過熱度の低減とにより、圧縮機2の入口側の冷媒状態が過熱度0℃に近づくように設定されている。すなわち、バイパス通路244により低温の冷媒をバイパスさせる構造が、圧縮機2の入口側の冷媒状態を過熱度0℃に近づけることを補助するための「過熱度調整構造」として機能している。なお、バイパス通路244の出口がパワーエレメント103よりも下流側に位置するため、バイパス通路244を介した冷媒の導入が、膨張弁242による過熱度制御にハンチングを生じさせることはない。
【0065】
(変形例1)
図10は、変形例に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。なお、各図において第2実施形態(
図8)と同様の構成については同一の符号を付している。
本変形例においては、
図10(A)に示すように、バイパス通路244に過熱度制御弁246が設けられる。過熱度制御弁246は、バイパス通路244の出口側(室外熱交換器5の出口側)の過熱度を感知して動作し、その過熱度が予め設定された値(設定過熱度)に近づくよう弁開度を調整する。すなわち、膨張弁242と過熱度制御弁246との協働により、圧縮機2の入口側の冷媒状態が過熱度0℃に近づくように制御する。
【0066】
あるいは、
図10(B)に示すように、バイパス通路244を第2の膨張弁の外部に配管として設けてもよい。この変形例では、第2の膨張弁として第1実施形態の膨張弁42を用いる。そして、第5通路25における膨張弁42の下流側位置と共用通路28における膨張弁42の下流側位置とをバイパス通路244により接続する。バイパス通路244には過熱度制御弁246が設けられる。なお、この構成を採用する場合には、圧縮機2の入口側の過熱度を直接制御できるよう、バイパス通路244の出口を圧縮機2の入口近傍に設けるのが好ましい。過熱度制御弁246は、圧縮機2の入口側の冷媒状態が過熱度0℃に近づくように制御する。
【0067】
なお、過熱度制御弁246に代えて差圧弁を設けてもよい。この差圧弁は、第5通路25の所定位置(膨張弁42,242の弁部の下流側位置)と、共用通路28の所定位置(膨張弁42,242の感温部の下流側位置)との2点間の差圧が設定差圧以上となったときに開弁し、バイパス通路244を開放する。室外熱交換器5の出口側の過熱度が大きくなるとその2点間の差圧が大きくなる傾向にあるため、必要な状態においてのみ差圧弁を開弁させて低温の冷媒をバイパスさせ、過熱度の上昇を抑えるものである。
【0068】
(変形例2)
図11は、他の変形例に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。なお、各図において第2実施形態(
図8)と同様の構成については同一の符号を付している。
本変形例においては、
図11(A)に示すように、バイパス通路244の入口を膨張弁342における弁部の上流側位置に設けている。バイパス通路244には過熱度制御弁246が設けられる。このような構成により、膨張弁342における感温部の下流側には、第2実施形態とは異なり、高温・高圧の液冷媒の一部が導入されるようになる。過熱度制御弁246は、バイパス通路244の出口側(室外熱交換器5の出口側)の過熱度を感知して動作し、その過熱度が予め設定された値(設定過熱度)に近づくよう弁開度を調整する。すなわち、膨張弁242と過熱度制御弁246との協働により、圧縮機2の入口側の冷媒状態が過熱度0℃に近づくように制御する。
【0069】
あるいは、
図11(B)に示すように、バイパス通路244を第2の膨張弁の外部に配管として設けてもよい。この変形例では、第2の膨張弁として第1実施形態の膨張弁42を用いる。そして、第5通路25における膨張弁42の上流側位置と共用通路28における膨張弁42の下流側位置とをバイパス通路244により接続する。バイパス通路244には過熱度制御弁246が設けられる。なお、この構成を採用する場合には、圧縮機2の入口側の過熱度を直接制御できるよう、バイパス通路244の出口を圧縮機2の入口近傍に設けるのが好ましい。過熱度制御弁246は、圧縮機2の入口側の冷媒状態が過熱度0℃に近づくように制御する。
【0070】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0071】
上記第2実施形態およびその変形例では述べなかったが、第5通路25におけるバイパス通路244への分岐部よりも下流側に差圧を発生させるための差圧発生構造を設け、バイパス通路244を介した冷媒の流れをある程度促進するようにしてもよい。例えば、膨張弁242の第1内部通路113において、導出ポート107側に流れる冷媒に対して流動抵抗(圧力損失)を与えるための絞り通路部材を設けてもよい。この「絞り通路部材」としては、例えば特開2011−245549号公報に記載のもの(絞り通路部材1)を採用することができる。このような絞り通路部材を、第1内部通路113における弁孔116よりも導出ポート107寄りの位置(弁孔116に対してバイパス通路244とは反対側の位置)に設けることで差圧(圧力損失)を発生させ、その反対側位置にあるバイパス通路244への冷媒の流れを促進することができる。
【0072】
上記実施形態では、膨張弁として温度と圧力を感知して自律的に動作する機械式の制御弁を例示したが、ソレノイドやモータ等をアクチュエータとして動作する電子式の制御弁を採用してもよい。例えば、ステッピングモータ駆動式の電子膨張弁を採用し、制御部によりその開度を制御してもよい。その際、圧縮機2の入口側の温度あるいは室外熱交換器5の出口側の温度を検出するセンサを設けてもよい。制御部は、センサの検出値に基づいて圧縮機2の入口側の冷媒状態が乾き度0.9から過熱度5℃の間となるよう(より好ましくは過熱度0℃に近づくよう)電子膨張弁の弁開度を制御するようにしてもよい。電子膨張弁については比例弁としてもよいし、開閉弁(オン・オフ弁)としてもよい。後者の場合には、弁部の開閉のためのデューティ比を設定すればよい。
【0073】
上記第2実施形態の変形例(
図10,
図11)においては、過熱度制御弁246として過熱度を感知して自律的に動作する機械式の制御弁を例示したが、ソレノイドやモータ等をアクチュエータとして動作する電子式の過熱度制御弁を採用してもよい。制御部は、センサの検出値に基づいて圧縮機2の入口側の冷媒状態が乾き度0.9から過熱度5℃の間となるよう(より好ましくは過熱度0℃に近づくよう)過熱度制御弁の弁開度を制御するようにしてもよい。過熱度制御弁については比例弁としてもよいし、開閉弁(オン・オフ弁)としてもよい。
【0074】
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置として単一の圧縮機が設けられる構成を例示した。変形例においては、例えば複数の圧縮機を設けるシステムとしてもよい。例えば二段圧縮式とし、その低段側に上記実施形態および変形例に示した構成を適用してもよい。具体的には、低段側である室外熱交換器5の過熱度制御用の膨張弁として、上記第2膨張弁を採用してもよい。
【0075】
上記実施形態では述べなかったが、パワーエレメントの駆動により弁部の開度を自律的に調整する機械式の弁機構に対し、その開弁特性を外部から設定変更するためのソレノイドを組み付けた電磁弁付膨張弁を採用してもよい。例えば、特開2004−116834号公報に記載の構成を採用してもよい。このような構成によれば、圧縮機2の入口側の過熱度に応じて適宜ソレノイドを駆動することにより、過熱度制御の応答性を向上させることが可能となる。
【0076】
上記実施形態では述べなかったが、膨張弁42の弁部の上流側位置と感温部の下流側位置とをバイパスさせる第1のバイパス通路と、膨張弁42の弁部の下流側位置と感温部の下流側位置とをバイパスさせる第2のバイパス通路とを形成してもよい。そして、第1のバイパス通路の開度を調整可能な第1の過熱度制御弁と、第2のバイパス通路の開度を調整可能な第2の過熱度制御弁とを設け、これらを連動させることにより、圧縮機2の入口側の過熱度を制御するようにしてもよい。これら第1および第2の過熱度制御弁は、単一のパワーエレメントにより連動して開閉駆動される複合弁として構成することもできる。例えば、特開2012−220142号公報に記載の膨張弁の構成を利用し、その第1の弁を第1の過熱度制御弁、第2の弁を第2の過熱度制御弁としてもよい。
【0077】
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。