特許第6149238号(P6149238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6149238発泡ウレタンシート、クッション材および発泡ウレタンシートの製造方法
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  • 特許6149238-発泡ウレタンシート、クッション材および発泡ウレタンシートの製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149238
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】発泡ウレタンシート、クッション材および発泡ウレタンシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20170612BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20170612BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170612BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20170612BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   B32B5/18
   B32B27/40
   B32B27/00 M
   B05D5/00 J
   B05D7/24 302T
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-112708(P2013-112708)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-231170(P2014-231170A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112416
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 定信
(72)【発明者】
【氏名】前田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】世良 範幸
(72)【発明者】
【氏名】河上 岳志
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−213942(JP,A)
【文献】 特開2012−011516(JP,A)
【文献】 特開2012−223856(JP,A)
【文献】 特開2013−094929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B05D 1/00− 7/26
C08J 9/00− 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂、有機溶剤、水およびフッ素系界面活性剤を含む混合物を、片面に粘着剤を有するポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルムまたはメチルペンテンポリマーフィルムのいずれか一種からなる基材の他面に塗布、加温することにより得られる発泡体を有する発泡ウレタンシートであって、前記有機溶剤がトルエンとメチルエチルケトンの混合液であり、前記基材の他面には水の滴下3分後の接触角が55°以上の飽和ポリエステル系表面処理剤による表面処理が施され、その上に前記発泡体が接着され、該発泡体および前記基材を含む厚さが0.01〜0.15mmであり、前記発泡体が連続通気構造の微細セルで構成されることを特徴とする発泡ウレタンシート。
【請求項2】
前記フッ素系界面活性剤はパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物またはパーフルオロアルケニルポリエチレンオキシド付加物であることを特徴とする請求項1に記載の発泡ウレタンシート。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の発泡ウレタンシートからなることを特徴とするクッション材。
【請求項4】
水との接触角が90°以上の疎水性であることを特徴とする請求項3記載のクッション材。
【請求項5】
水との接触角が90°未満で吸水性であることを特徴とする請求項3記載のクッション材。
【請求項6】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、フッ素系界面活性剤、触媒、トルエンとメチルエチルケトンを含む有機溶剤および用途に応じて架橋剤、着色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、耐久性改良材から選択される添加剤の配合物を混合撹拌して得られた反応原料を、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、メチルペンテンフィルムのいずれか一種のフィルムであって、片面に粘着剤を有する基材のもう一方の片面に水の滴下3分後の接触角が55°以上の飽和ポリエステル系樹脂による表面処理を施して均一に塗布して2段階加熱発泡して連続通気構造の微細セルからなる発泡体を形成することを特徴とする発泡ウレタンシートの製造方法。
【請求項7】
前記フッ素系界面活性剤はパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物またはパーフルオロアルケニルポリエチレンオキシド付加物であることを特徴とする請求項6に記載の発泡ウレタンシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝用パッキン、防水パッキン、防水シート、透湿性シート、吸水シートなどに有用な、厚さ0.01〜0.15mmの極薄シート状の発泡ウレタンシート、クッション材および発泡ウレタンシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在本出願人は薄物緩衝用シートとして発泡ウレタンシートを市販しているが、その最低厚みは0.3mmである。一方、メカニカルフロス方式で生産されたウレタン発泡シートも市場に見られるが、このシートは塗布前の原料泡立てにより厚み制御が容易に行えるため、厚み0.2mmの製品が実用化されている。しかし、これより薄い製品は市販されておらず、現在の生産方式では厚み0.1mmが技術的な生産限界であると考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これらウレタン発泡体は柔軟性・衝撃吸収性から液晶用の緩衝材として使用されており、近年の製品薄型化により更に薄いクッション材が求められている。これとは別に、薄物シートとして0.1mm厚み程度のシリコーンシートがある。しかしながら、柔軟性、衝撃吸収性に劣るため、携帯電話の液晶用途には使用出来ない。シリコーンシートは、加工時の低発塵性、機械的強度、滑り性から液晶テレビのクッション材として使用されているが、衝撃吸収性は要求を満足していないのが実状である。
【0004】
また、柔軟な薄物シート材は、肉薄で樹脂特有の収縮性を持つために抜き型を用いた打抜き加工や両面テープを貼り合わせるラミネート加工などの後加工工程時に発泡シートが収縮してカールや寸法変化を生じ、取り扱いが難しくなる。そこで、このような課題を解決するものとして従来から発泡シートに可塑剤やフィラー、または架橋剤を多量に添加して収縮性を低減させた発泡ウレタンシートが提案されている。
【0005】
ところが、発泡シートに可塑剤、フィラーや架橋剤を多量に添加させた場合、発泡シートからのブリードアウトが生じたり、発泡シートが硬くなったりして、発泡シートのクッション性が低下してしまうとういう不都合があった。また、前述のメカニカルフロス方式は塗布前の原料泡立てにより厚み制御が容易に行えるものの、原料を希釈していないため10〜100μmと薄い発泡ウレタンにすることができない。
【0006】
また、0.1〜3.0mmのウレタン発泡シートは、形状保持性などの取扱いを容易にするためや補強の目的で0.01〜0.1mmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルム等が一体化されている。一般的にポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材と発泡ウレタンシートとを一体化するには、基材の表面をマット調の凹凸面としたポリエチレンテレフタレートフィルムや濡れ性を上げるために静電力処理、コロナ処理、超音波処理または温熱処理等によって、反応固化させ、密着性を高め、ウレタン樹脂と接着させることが一般的である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4677134号公報
【特許文献2】特許第3903244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のポリエチレンテレフタレートフィルムと発泡ウレタンシートとの一体化の方法では、乾燥中の剥離や塗工後のハジキにより適用することができなかった。そこで、滴下3分後の水との接触角が55°以上のポリエステル系樹脂を、コーティング、転写、スプレー等の方法によってポリエチレンテレフタレートフィルムである基材に平滑に塗布し、乾燥させることによって、取扱いを容易化できるほか補強化でき、かつ収縮の生じないポリエチレンテレフタレートフィルム等のテープ基材一体化発泡ウレタンシートが得られることを確認した。
【0009】
本発明は、上述した諸事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記したように、薄くて(厚みが0.15mm以下)、柔軟性に富み、微細均一構造を有するとともに、取扱いが容易で、強度が高く、しかも収縮が生じない基材付きの発泡ウレタンシート、クッション材および発泡ウレタンシートの製造方法を提供することにある。
換言すれば、本発明が目的とするウレタンシートの特性は以下の通りである。
(1)厚みが0.15mm以下であること。
(2)厚み精度が高く(土10%以内)、表面の平坦性が高いこと。
(3)発泡体であり、シリコーンシートよりも柔軟であること。
(4)フォーム内での上下構造に大きな差が無く均一性の高い構造であること。
(5)表面に開孔が均一にあり、フォーム全体が微細な連続通気構造であること。
(6)衝撃吸収性を有すること。
(7)引張・引裂・層間強度が高く、打抜き・テープ粘りなどの加工に支障がないこと。
(8)耐磨耗性があり、発塵性が低いこと。
(9)長期耐久性に優れること。
(10)基材と一体化して長さ方向の収縮率が小さいこと。
(11)(可能であれば)人工皮革のような耐候性を有すること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的達成のために、本発明の請求項1にかかる発泡ウレタンシートは、ウレタン樹脂、有機溶剤、水およびフッ素系界面活性剤の混合物を、片面に粘着剤を有するポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムまたはメチルペンテンポリマーフィルムのいずれか一種からなる基材の他面に塗布、加温することにより得られる発泡体を有する発泡ウレタンシートであって、前記有機溶剤がトルエンとメチルエチルケトンの混合溶液であり、前記基材の他面には水の滴下3分後の接触角が55°以上の飽和ポリエステル系表面処理剤による表面処理が施され、その上に前記発泡体が接着され、該発泡体および前記基材を含む厚さが0.01〜0.15mmであり、前記発泡体が連続通気構造の微細セルで構成されることを特徴とする。
【0011】
この構成により、発泡ウレタンシートはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマーといった有機合成高分子物質のフィルムに表面処理により、一体化されたシートであるため、収縮性が低下し、寸法安定性に優れた発泡ウレタンシートとなる。
【0012】
また、本発明の発泡ウレタンシートは、前記発泡体および前記基材を含む厚みが0.01〜0.15mmであるため、シリコーンシートに比べて柔軟性を持ち、衝撃吸収性に対する要求を満たすことが可能になり、液晶テレビのクッション材として満足な性能を有するものとなる。
【0013】
また、本発明の発泡ウレタンシートは、片面に粘着層を有する前記基材のもう一方の片面に、発泡体と接着する表面処理が施され、この表面処理剤は、滴下3分後の水との接触角が55°以上の飽和ポリエステル系表面処理剤であることにより、適度の50%圧縮硬さと伸びを有し、さらに優れた引張り強さを有する発泡ウレタンシートになる。
【0014】
上記のフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキレンエチレンオキシド付加物、例えばAGCセイケミカル株式会社製の商品名サーフロンS−420、DIC株式会社の商品名メガファックF−444や、パーフルオロアルケニルポリエチレンオキシド付加物、例えば、株式会社ネオス製のフタージェント250、FTX−218が挙げられる。上記のフッ素系界面活性剤を添加することによって、水と溶剤との混合分散性(乳化)が安定し、整泡効果が得られるという利点がある。
【0015】
また、架橋剤および界面活性剤の添加量を変えることによって水と溶剤との混合分散性(乳化)の安定が得られるという利点が得られる。
【0016】
また、本発明の請求項3にかかるクッション材は、請求項1または2のいずれか1項に記載の発泡ウレタンシートからなることを特徴とする。この構成により、クッション材は50%圧縮力が低く、柔軟で復元性に優れたものとなる。
【0017】
また、本発明の請求項4にかかるクッション材は、水との接触角が90°以上で疎水性であることを特徴とする。この構成により、撥水性が高く、吸水率および水膨潤性が低くなる。従って、緩衝用パッキンとしてハードディスク基板、シリコンウエハ、液晶ディスプレイ用のガラス基板などを研磨する際の研磨保持用パッドや、防水パッキン、防水シートなどに好適なシートとなる。
【0018】
また、本発明の請求項5にかかるクッション材は、水との接触角が90°未満で吸水性であることを特徴とする。この構成により、クッション材を構成する発泡ウレタンシートが連続通気構造の微細セルで構成されていることと併せて、透湿性や通水性に優れているため、透湿性シート、吸水シート等に好適なシートとなる。
【0019】
また、本発明の請求項6にかかる発泡ウレタンシートの製造方法は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、フッ素系界面活性剤、触媒、トルエンとメチルエチルケトンを含む有機溶剤および用途に応じて架橋剤、着色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、耐久性改良剤から選択される添加剤、等の配合物を混合撹拌して得られた反応原料を、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、メチルペンテンフィルムのいずれか一種のフィルムであって片面に粘着層を有する基材のもう一方の片面に水の滴下3分後の接触角が55°以上の飽和ポリエステル系樹脂による表面処理を施して均一に塗布して2段階加熱発泡して連続気泡構造の微細セルからなる発泡体を形成することを特徴とする。
【0020】
前記製造方法にあって、発泡ウレタンについては、配合した混合原料の分散安定性が高いので製造時間を長くでき、従って製造コストの低減が可能となり、平面平坦性、セル均一性、衝撃吸収性、機械的強度、耐摩耗性に優れた発泡ウレタンシートを、容易に製造することができる。
【0021】
また、製造時に、前記ウレタン発泡原料がフィルム状基材上で反応して硬化する際に、同時に接着も行われるので、その接着強度は発泡ウレタンシートを接着剤によって基材に貼り付けたものに比べて強くなるだけでなく、別の工程を使用して接着する手間や設備を省くことができ、経済的である。
【0022】
また、本発明の発泡ウレタンシートに用いる基材としては、各種のプラスチックフィルムが考えられるが、強度、耐熱性、寸法安定性などの点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムまたはメチルペンテンポリマーフィルムが特に好ましい。
【0023】
さらに、本発明の請求項6にかかる発泡ウレタンシートの製造方法は、前記フッ素系界面活性剤がパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物またはパーフルオロアルケニルポリエチレンオキシド付加物であることを特徴とする。
パーフルオロアルキレンエチレンオキシド付加物としては、例えばAGCセイケミカル株式会社製の商品名サーフロンS−420、DIC株式会社の商品名メガファックF−444、パーフルオロアルケニルポリエチレンオキシド付加物としては、例えば、株式会社ネオス製のフタージェント250、FTX−218が挙げられる。上記のフッ素系界面活性剤を添加することによって、水と溶剤との混合分散性(乳化)が安定し、整泡効果が得られるという利点がある。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、肉厚が厚み0.15mm以下であるにも拘わらず、柔軟性に富み、微細均一構造を有して衝撃吸収性が高く、しかも収縮性を抑えた基材付き発泡ウレタンシートを提供できる。
【0025】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に本発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明にかかる発泡ウレタンシートの製造方法を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る発泡ウレタンシートを、図面を参照して説明する。
まず、基材2を用意する。該基材2は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)フィルム、ポリプロピレン(以下、PPと略す)フィルム、4−メチルペンテン−1を重合したメチルペンテンポリマー(以下、TPXと略す)フィルムのうちいずれかのフィルム3の片面に粘着層4を有する。フィルム3としては、例えば、リンテック株式会社製PET100GSを用いる。
次に、熱可塑性ポリウレタン溶液(DIC株式会社製ゾルテックスPX−550)100部に対し、架橋剤としてイソシアネートプレポリマー(DIC株式会社製CL−15)2部、触媒として有機錫触媒(DIC株式会社製T・81E)2部、界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)1部を混合して均一分散した後、これを前記粘着層4を有する基材2の他面の表面処理面にスキージ等を用いて塗工し、70℃×5min間、その後120℃×20min(10〜30min)間反応させ、前記基材2上に発泡体1を一体化した発泡ウレタンシートを得る。
【0028】
界面活性剤の添加量は0.68部以上で、より好ましい範囲は0.68〜4部である。
フッ素系界面活性剤はパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(DIC株式会社製メガファックF−444)、パーフルオロアルケニルポリエチレンオキシド付加物(株式会社ネオス製フタージェント250、FTX−218)が好ましい。
上記界面活性剤を添加することによって、水と溶剤の混合分散性(乳化)が安定化し、整泡効果が得られる。
また、架橋剤および界面活性剤の添加量を変えることで接触角を調整することができ、親水性から疎水性の発泡フィルムを作ることができる。
【0029】
なお、図1中で基材2を構成するフィルム3としては、前記PETフィルム、PPフィルム、4−メチルペンテン−1を重合したTPXフィルムのほか、紙とポリプロピレンラミネートフィルムなども使用できる。フィルム3の片面には発泡体(熱可塑性ポリウレタン樹脂又は熱硬化性ポリウレタン樹脂)1が設けられている。なお、前記粘着層4にはセパレータ(図示しない)が剥離可能に貼り付けられる。この発泡ウレタンシートを使用する際は、粘着層4に貼り合わせられたセパレータ(図示しない)を剥離してから固定板などに貼り付ける。
【0030】
前記発泡ウレタンシートは、請求項1に記載の特徴を有するものであれば、ジイソシアナートとポリオールの重付加で作られるポリウレタンである限り熱可塑性、熱硬化性のどちらの樹脂であってもよい。ただし、フッ素系界面活性剤を用いると、得られる発泡ウレタンシートの原料の安定性、表面平坦性、セル均一性、低通気性、防水性/吸水性、層間剥離力の点から特に好ましい。
【0031】
前記発泡ウレタンシートは、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、フッ素系界面活性剤、必要に応じて触媒および架橋剤、着色剤、樹脂改質剤、難燃剤、紫外線吸収剤、耐久性改良材から選択される添加剤、等の配合物を混合撹拌して得られた配合原料を、剥離処理を施した工程紙の剥離面に均一に塗布した後、60〜70℃のオーブン中で加熱してメチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の有機溶剤を蒸発させ、次いで90〜120℃のオーブン中で加熱し、水を蒸発させるという2段階加熱法により、厚さ0.01〜0.1mmの極めて薄い発泡ウレタンシートを作製することに実用的に初めて成功した。
【0032】
ポリウレタン樹脂の原料のポリオールおよびポリイソシアネートとしては、従来からポリウレタン樹脂の合成原料として使用されてきたものであれば、如何なるものでも何らの制限なく使用できる。例えば、ポリエーテル系ウレタン(DIC株式会社製ゾルテックスPX−550、大日精化工業株式会社製HI−MURENATXシリーズ)が挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂の希釈用有機溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、およびこれらの混合溶剤などが使用できるが、トルエンとメチルエチルケトンとの混合液が原料混合物溶液の貯蔵安定性の点から特に好ましい希釈用溶剤である。
【0033】
前記発泡剤として、水、プロパン、ブタン等を発生するアクリロニトリル骨格を持つマイクロカプセルがあげられる。また、水の替わりに、70°乾燥後に炭酸ガスや窒素ガスを用いて加圧ガス発泡を行っても良い。
【0034】
また、特に好ましい界面活性剤として、先に発泡ウレタンシートの製造方法において記述した通りであり、フッ素系界面活性剤が用いられる。これにより水と溶剤との混合分散性(乳化)が安定し、好ましい整泡効果が得られる。
さらに、触媒、架橋剤および界面活性剤の添加量を変えることにより水との接触角を調整することができることも製造方法において記述した通りである。
【0035】
次に、本発明を実施例および比較例により詳細に説明する。以下において、「部」および「%」は重量基準の単位とする。
この実施例および比較例による発泡ウレタンシートの作製は、先ず、ポリオール、ポリイソシアネート、MEKおよびトルエンからなる希釈溶剤、水、フッ素系界面活性剤、必要に応じて触媒および架橋剤からなる配合物を混合する。
【0036】
次に、この配合物の混合撹拌によって得られた反応原料を、塗布バーを用いて剥離処理を施したPETフィルム等の工程紙の剥離面に均一に塗布する。そして、工程紙に塗布した反応原料を60〜70℃のオーブン中で加熱し希釈溶剤を蒸発させ、次いで90〜120℃のオーブン中で水を蒸発させながら発泡硬化させることによって、連続気泡構造の微細セルからなる発泡ウレタンシートを得ることができる。そして、この発泡ウレタンシートの実施例および比較例を挙げ、その各発泡ウレタンシートの諸特性を、以下に示す。この諸特性の評価方法は、後述する。
【実施例1】
【0037】
ポリウレタン樹脂溶液(DIC株式会社製ゾルテックスPX550)100部と希釈溶剤(トルエン/2−ブタノン=2/1で配合)50部、発泡剤(水/2−ブタノン=9/1)80部、界面活性剤としてパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)1部を良く攪拌しながら25℃に調整した。調整した液を更に攪拌・脱泡機にて5分間攪拌後、0.025mm厚みの片面に3分後の接触角55°ポリエステルコーティングを施し、もう一方の片面に粘着層を有するPETフィルムに均一に塗布することによって、厚み0.1mmで密度500kg/m3のポリウレタン発泡ウレタアンシート材を得た。この発泡ウレタンシート材の収縮率は0%であった。
【実施例2】
【0038】
ポリウレタン樹脂溶液(DIC株式会社製ゾルテックスPX550)100部と希釈溶剤(トルエン/2−ブタノン=2/1で配合)50部、発泡剤(水/2−ブタノン=9/1)80部、界面活性剤としてパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)1部、架橋剤および触媒(架橋剤;ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネート、触媒溶液;1%未満含有有機錫触媒(ジブチルチンジラウレート)酢酸エチル/2−ブタノン溶液)をそれぞれ各1部添加し、良く攪拌しながら25℃に調整した。調整した液を更に攪拌・脱泡機にて5分間攪拌後、0.025mm厚みの片面に3分後の接触角75°でポリエステルコーティングを施し、もう一方の片面に粘着層を有するPETフィルム基材に均一に塗布することによって、厚み0.1mmで密度が510kg/m3のポリウレタン発泡ウレタンシート材を得た。この発泡ウレタンシート材の収縮率は0%であった。
【実施例3】
【0039】
ポリウレタン樹脂溶液(DIC株式会社製ゾルテックスPX550)100部と希釈溶剤(トルエン/2−ブタノン=2/1で配合)50部、発泡材(水/2−ブタノン=9/1)を50部、界面活性剤としてパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)1部を良く攪拌しながら25℃に調整した。調整した液を更に攪拌・脱泡機にて5分間攪拌後、0.025mm厚みの片面に3分後の接触角57°ポリエステルコーティングを施し、もう一方の片面に粘着層を有するPETフィルム基材に均一に塗布することによって、厚み0.01mmで密度680kg/mのポリウレタン発泡ウレタンシート材を得た。この発泡ウレタンシートの収縮率は0%であった。
【実施例4】
【0040】
ポリウレタン樹脂溶液(DIC株式会社製ゾルテックスPX550)100部と希釈溶剤(トルエン/2−ブタノン=2/1で配合)50部、発泡材(水/2−ブタノン=9/1)を80部、界面活性剤としてパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)1部、架橋剤および触媒(架橋剤;ヘキサメチレンジイソシアネート、触媒溶液;1%未満含有有機錫触媒(ジブチルチンジラウレート)酢酸エチル/2−ブタノン溶液)をそれぞれ各1部添加し、良く攪拌しながら25℃に調整した。調整した液を更に攪拌・脱泡機にて5分間攪拌後、0.025mm厚みの片面に3分後の接触角60°ポリエステルコーティングを施し、もう一方の片面に粘着層を有するPETフィルム基材に均一に塗布することによって、厚み0.04mmで密度570kg/mのポリウレタン発泡ウレタンシート材を得た。この発泡ウレタンシートの収縮率は0%であった。
【実施例5】
【0041】
ポリウレタン樹脂溶液(DIC株式会社製ゾルテックスPX550)100部と希釈溶剤(トルエン/2−ブタノン=2/1で配合)50部、発泡材(水/2−ブタノン=9/1)を80部、界面活性剤としてパーフルオロアルケニルポリエチレンオキシド付加物(株式会社ネオス製フタージェント251)1部、架橋剤および触媒(架橋剤;ヘキサメチレンジイソシアネート、触媒溶液;1%未満含有有機錫触媒(ジブチルチンジラウレート)酢酸エチル/2−ブタノン溶液)をそれぞれ各1部添加し、良く攪拌しながら25℃に調整した。調整した液を更に攪拌・脱泡機にて5分間攪拌後、0.025mm厚みの片面に3分後の接触角60°ポリエステルコーティングを施し、もう一方の片面に粘着層を有するPETフィルム基材に均一に塗布することによって、厚み0.1mmで密度507kg/mのポリウレタン発泡ウレタンシート材を得た。この発泡ウレタンシートの収縮率は0%であった。
この実施例1乃至実施例5の発泡ウレタンシートの諸特性は、表1の通りである。
【0042】
【表1】

乾式ウレタン原料;ポリエーテル系ウレタン
架橋剤;ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネート
触媒溶液;1%未満含有有機錫触媒(ジブチルチンジラウレート)酢酸エチル/2−ブタノン溶液
界面活性剤A;パーフルオロアルキルエチレンオキサイド共重合体(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)
界面活性剤B;パーフルオロアルケニルポリエチレンオキシド付加物(株式会社ネオス製フタージェント251)
可塑剤;ジアルキレングリコールジベンゾエート(DIC株式会社製PB−3A)
コーティング剤;シリコーン;シリコーン系離型コーティング、ポリエステル;飽和ポリエステル系コーティング
次に比較例を示す。
【比較例1】
【0043】
ポリウレタン樹脂溶液(DIC株式会社製ゾルテックスPX550)100部と希釈溶剤(トルエン/2−ブタノン=2/1で配合)50部、発泡剤(水/2−ブタノン=9/1)80部、界面活性剤としてパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)1部を良く攪拌しながら25℃に調整した。調整した液を更に攪拌・脱泡機にて5分間攪拌後、0.025mm厚みのPETフィルムの片面にシリコーン系離型処理を施した基材に均一に塗布することによって、厚み0.1mmで密度500kg/mのポリウレタン発泡ウレタンシート材を得た。この発泡ウレタンシート材の収縮率は5%であり、後加工性の悪い発泡ウレタンシートが得られた。
【比較例2】
【0044】
ポリウレタン樹脂溶液(DIC株式会社製ゾルテックスPX550)100部と希釈溶剤(トルエン/2−ブタノン=2/1)50部、発泡剤(水/2−ブタノン=9/1)80部、界面活性剤としてパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)1部、架橋剤および触媒(架橋剤;ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネート、触媒溶液;1%未満含有有機錫触媒(ジブチルチンジラウレート)酢酸エチル/2−ブタノン溶液)をそれぞれ各7部添加し、良く攪拌しながら25℃に調整した。調整した液を更に攪拌・脱泡機にて5分間攪拌後、0.025mm厚みのPETフィルムの片面にシリコーン系離型処理を施した基材に均一に塗布することによって、厚み0.1mmで密度が580kg/mのポリウレタン発泡ウレタンシート材を得た。この発泡ウレタンシート材の収縮率は1.5%であったが、発泡ウレタンシートの50%圧縮硬さが硬い発泡ウレタンシートが得られた。
【比較例3】
【0045】
ポリウレタン樹脂溶液(DIC株式会社製ゾルテックスPX550)100部と希釈溶剤(トルエン/2−ブタノン=2/1)50部、発泡剤(水/2−ブタノン=9/1)80部、界面活性剤としてパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)1部、可塑剤(ジアルキレングリコールジベンゾエート(DIC株式会社製PB−3A))10部を配合し、良く攪拌しながら25℃に調整した。調整した液を更に攪拌・脱泡機にて5分間攪拌後、0.025mm厚みのPETフィルムの片面にシリコーン系離型処理を施した基材に均一に塗布することによって、厚み0.1mmで密度720kg/mのポリウレタン発泡ウレタンシート材を得た。この発泡ウレタンシートの収縮率は2.0%であったが、密度の高い発泡ウレタンシートが得られた。
【比較例4】
【0046】
ポリウレタン樹脂溶液(DIC株式会社製ゾルテックスPX550)100部と希釈溶剤(トルエン/2−ブタノン=2/1)50部、発泡剤(水/2−ブタノン=9/1)80部、界面活性剤としてパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)1部を良く攪拌しながら25℃に調整した。調整した液を更に攪拌・脱泡機にて5分間攪拌後、0.025mm厚みのPETフィルムの片面に3分後の接触角50°ポリエステルコーティングを施し、もう一方の片面に粘着層を有するPETフィルム基材に均一に塗布すると不均一で斑な発泡ウレタンシートが得られた。
【比較例5】
【0047】
ポリウレタン樹脂溶液(DIC株式会社製ゾルテックスPX550)100部と希釈溶剤(トルエン/2−ブタノン=2/1)50部、発泡剤(水/2−ブタノン=9/1)80部、界面活性剤としてパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)1部、架橋剤および触媒(架橋剤;ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネート。触媒溶液;1%未満含有有機錫触媒(ジブチルチンジラウレート)酢酸エチル/2ブタノン溶液)をそれぞれ各2部添加し、良く攪拌しながら25℃に調整した。調整した液を更に攪拌・脱泡機にて5分間攪拌後、0.025mm厚みのPETフィルムの片面に3分後の接触角25°ポリエステルコーティングを施し、もう一方の片面に粘着層を有するPETフィルム基材に均一に塗布すると不均一で斑な発泡ウレタンシートが得られた。
上記比較例1乃至5の発泡ウレタンシートの諸特性は、表2の通りである。
【0048】
【表2】

乾式ウレタン原料;ポリエーテル系ウレタン(DIC株式会社製ゾルテックスPX−550)
架橋剤;ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー、ヘキサメチレンジイソシアネート
触媒溶液;1%未満含有有機錫触媒(ジブチルチンジラウレート)酢酸エチル/2−ブタノン溶液
界面活性剤A;パーフルオロアルキルエチレンオキサイド共重合体(AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS−420)
可塑剤;ジアルキレングリコールジベンゾエート(DIC株式会社製PB−3A)
コーティング剤;シリコーン;シリコーン系離型コーティング、ポリエステル;飽和ポリエステル系コーティング
【0049】
なお、前記諸特性の評価項目(試験項目)の値は、次のようにして測定したものである。
密度;軟質ポリウレタンフォームの物性試験:JIS K 6400に準ずる。
接触角;発泡体スキン面状に水を15μL滴下した後、3分後の接触角を接触角計で測定した値である。接触角計としては、協和接触角計(CA−A協和科学社製)を使用した。
引張り強さ・伸び;軟質ポリウレタンフォームの物性試験:JIS K 6400に準ずる。引張強度は200mm/minで測定した。
50%圧縮硬さ;30×30mmのサンプルを2枚積層し、1mm/minの速度で50%圧縮したときの圧縮応力値。測定器は株式会社島津製作所製autographAG−Xを使用した。単位;MPa。
収縮率;100×100のサンプルを打ち抜き、離型PETフィルムから剥がし、横方向(TD=Traverse Directiоn)と縦方向(MD=Machine Directiоn)の収縮率を測定し、それらの平均値を記載した。
ブリードアウト;添加剤の表面移行を発泡ウレタンシートを接触させて目視で確認する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、薄くて柔軟性に富み、微細均一構造を有する基材付き発泡ウレタンシートを提供実施できるという効果を有し、緩衝用パッキン、防水パッキン、防水シート、透湿性シート、吸水シートなどに有用な、収縮率が0、厚さが0.01〜0.15mmの極薄シート状発泡ウレタンシートおよびその製造方法等に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 発泡体
2 基材
3 フィルム(PETフィルム等)
4 粘着層
図1