【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第13回公益社団法人計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会 SI2012 講演概要集 平成24年12月18日発行 第2561〜2563頁
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年12月20日発表 第13回公益社団法人計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(福岡県福岡市)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ほうれん草等の葉菜の収穫機は葉菜を効率的に収穫できること、やわらかな葉を傷めずに収穫することが求められる。従来の根切りした葉菜をコンベヤで挟むようにして引き上げて収穫する収穫機は、葉菜を挟むときに葉を傷めるという問題と、収穫する葉菜が圃場で整列して生育していない場合には使いにくいという問題、収穫可能な品種が直立性に限定され、地表面に垂れた品種は収穫できないという問題がある。
ほうれん草などは土の中で根切りして収穫するが、このような葉菜類を収穫する際には、土の中で根を切断する操作と、葉を傷めずに葉菜を取り入れる操作を確実にかつ効率的に行わなければならない。
本発明は、ほうれん草等の、土の中で根切りして収穫する葉菜類を、効率的にかつ葉を傷めずに確実に収穫することができる葉菜類の収穫機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る葉菜類の収穫機は、自走車の機体に、葉菜類を根切りする
収穫刃と、前記
収穫刃の向きを、前端側が水平向きよりも低位となる下向きと、前端側が水平向きよりも高位となる上向きとの間で周期的に動作させる収穫機構部とを設けた葉菜類の収穫装置であって、前記収穫機構部は、前記機体の進行方向の前方に、鉛直面内において傾動可能に支持された傾動フレームと、該傾動フレームを前記機体の進行方向に往復して傾動駆動する傾動駆動部とを備えるとともに、前記傾動フレームは、前記機体に傾動可能に支持された支持フレームと、該支持フレームに昇降可能に支持された昇降フレームとを備え、前記
収穫刃は前記昇降フレームの下端部に取り付けられ、前記収穫機構部は、前記機体が移動する際に、前記収穫刃が土中で正弦波状に上下動するとともに、前記下向きと上向きとの間で向きを変えながら移動すべく設けられていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る葉菜類の収穫機は、自走車の機体に、葉菜類を根切りする
収穫刃と、前記
収穫刃の向きを、前端側が水平向きよりも低位となる下向きと、前端側が水平向きよりも高位となる上向きとの間で周期的に動作させる収穫機構部とを設けた葉菜類の収穫装置であって、前記収穫機構部は、前記機体の進行方向の前方に、鉛直面内において傾動可能に支持された傾動フレームと、該傾動フレームを前記機体の進行方向に往復して傾動駆動する傾動駆動部とを備えるとともに、前記傾動フレームは、前記機体に傾動可能に支持された支持フレームと、該支持フレームに昇降可能に支持された昇降フレームとを備え、前記
収穫刃は前記昇降フレームの下端部に取り付けられ、前記収穫機構部は、前記機体が移動する際に、前記収穫刃が円弧状に上下動しながら、円弧状の経路の頂部位置で前記上向きから下向きへ向きを転換して移動すべく設けられていることを特徴とする。
また、前記昇降フレームは、制御装置により高さが制御され、前記収穫刃の地中における潜り量が制御されることを特徴とする。
【0007】
また、
前記収穫刃の後方に、前記収穫刃により根切りされた葉菜類を回収する第1の搬送コンベヤと第2の搬送コンベヤが、前記収穫刃に連動して移動動作すべく設けられ、前記第1の搬送コンベヤと前記第2の搬送コンベヤは、前記第1の搬送コンベヤの後端縁と前記第2の搬送コンベヤの前端縁とが前後方向に離間し、前記第2の搬送コンベヤの前端縁が前記第1の搬送コンベヤの後端縁よりも高さ方向に低位となる配置に設けられていることにより、根切りされた葉菜類を傷めずに確実に回収することができ
、収穫した葉菜類に付着した土を落としながら、効率的に収穫することができる。
【0008】
また、圃場内を収穫機が進行する際に、圃場の地表面の高さ位置を検出するセンサを備え、該センサによる検出結果に基づき前記収穫刃の高さ位置をフィードバック制御する手段を備えることにより、圃場の凹凸状態に応じて収穫することができる
。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る葉菜類の収穫機によれば、葉菜類を根切りして、葉菜類を傷めずに収穫する作業を確実に、かつ効率的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る葉菜類の収穫機の実施の形態として、ほうれん草の収穫に用いる収穫機について説明する。
図1は収穫機の側面図、
図2は正面図である。本実施形態の収穫機は、クローラ10a、10bと、クローラ10a、10bを駆動するエンジンを備える自走式の機体12と、ほうれん草を根切りして収穫する収穫機構部とを備える。機体12の上部には、収穫機構部の動作等を制御する制御装置30と、電動モータ等の駆動用のバッテリボックス32が設けられている。機体12の後部には操作ハンドル13が設けられ、操作ハンドル13により、機体12の進行方向、進行速度、収穫機構部の操作等がなされる。エンジンは操作ハンドル13の下方の機体12の後部に位置する。
【0012】
収穫機構部は、機体12から前方に延設された機枠14と、機枠14に支持された傾動駆動部16と、機枠14の前部に鉛直面内において傾動可能に支持された傾動フレーム18と、傾動フレーム18の下端部に取り付けられた収穫刃20と、収穫刃20の後方に配置された搬送コンベヤ22とを備える。
図1に示すように、傾動駆動部16は、伸縮駆動される駆動ロッド16aを備える駆動部本体16bが、軸16cを介して機枠14の上部に軸支され、駆動ロッド16aはその前端が傾動フレーム18の上部に軸支されている。
【0013】
傾動フレーム18は、軸18cを介して機枠14の前端に軸支される支持フレーム18aと、支持フレーム18aに移動可能に支持された昇降フレーム18bとを備える。支持フレーム18aは軸18cを支点として機体12の進行方向と平行に傾動し、昇降フレーム18bは、支持フレーム18aにガイドされて傾動フレーム18とともに傾動する。支持フレーム18aには昇降フレーム18bの高さ位置を調節する調節部19が設けられ、昇降フレーム18bは支持フレーム18aによる支持位置が調節されて昇降する。
図2に示すように、支持フレーム18aは正面方向から見て矩形の枠体状に形成され、昇降フレーム18bは、支持フレーム18aに設けられたガイドロッド18dにガイド支持されたスライドプレート18eに支持されて高さ方向に位置調節される。
【0014】
収穫刃20は傾動フレーム18bの下端間に掛け渡すようにして固定されている。本実施形態の収穫機に使用している収穫刃20は、前後方向の幅8cm、長さ101.2mm、厚さ10mmの炭素工具鋼材の板からなり、クローラ10a、10bの配置幅よりも外側の範囲までが収穫幅となっている。
収穫刃20は、前縁部(約5cm幅)を、前側が徐々に低位となる傾斜部として、地中に進入しやすい構造としている。収穫刃20は土の中を進みながら、ほうれん草の根を切る作用と、根を切ったほうれん草を地中から地表側へ持ち上げる作用をなす。収穫刃20の前縁部は、ほうれん草の根を切断できるように鋭利に形成する。
【0015】
収穫刃20の後縁に近い位置に、収穫刃20の上面から若干離間させ(間隔5cm)、収穫刃20と平行にストッパロッド24を配置する。ストッパロッド24は傾動フレーム18b間に、掛け渡すように固定する。
ストッパロッド24は収穫刃20により根切りされて地表側に持ち上げられるほうれん草を後ろ向きに、いいかえれば、搬送コンベヤ22側に倒す作用をなす。収穫刃20によりほうれん草を収穫する操作では、機体12が前進するとともに、根切りしたほうれん草がその場に残される。ストッパロッド24の高さを、収穫刃20により地表側へ持ち上げられたほうれん草の根の高さ辺りに設定しておくことにより、収穫刃20の移動とともに、持ち上げられたほうれん草の根の付近にストッパロッド24が当たり、葉の上側が後ろ向きとなるようにほうれん草が倒されていく。
【0016】
図1、
図2に示すように、搬送コンベヤ22は、収穫刃20の後方に、収穫刃20よりもやや高位に配置する。収穫刃20は土の中を進むのに対して、搬送コンベヤ22は根切りされた地表上のほうれん草を後方へ搬出する作用をなすものであり、地表上で移動して回収作用をなすからである。
本実施形態では根切りされたほうれん草を搬送コンベヤ22に移載しやすくするため、搬送コンベヤ22の前側(収穫刃20側)が低位となるように搬送コンベヤ22の搬送面を傾斜させて配置している。搬送コンベヤ22の前側を地表に近くすることで、ほうれん草のひろい落としがなくなる。
【0017】
搬送コンベヤ22はローラに無端状ベルトを装着し、電動モータによりローラを回転駆動し、無端状ベルトを循環移動させて、順次、ほうれん草を取り込む作用をなす。
本実施形態では、搬送コンベヤ22をクローラ10a、10bの全幅と略同幅としているが、搬送コンベヤ22によるほうれん草のひろい落としをなくすには、収穫刃20と搬送コンベヤ22とを同幅程度にするのがよい。
また、本実施形態では、収穫刃20により根切りされて地表に持ち上げられたほうれん草が搬送コンベヤ22に移載される作用を確かめるため、搬送コンベヤ22の前後方向の長さ(搬送距離)を35cm程度としたが、実機では搬送コンベヤを機体12側まで延設し、機体12にコンテナ等の収納部を設置して、収穫したほうれん草をコンテナ等に順次収納する構成とすることもできる。
【0018】
(収穫機の収穫動作)
続いて、本実施形態の収穫機によりほうれん草を収穫する作用について説明する。
本発明に係る収穫機は、クローラ10a、10bを駆動して収穫機を前進させながら、収穫刃20の向きを周期的に変え、これによって掘り下げ、掘り上げ動作を繰り返してほうれん草を収穫する。
図3(a)〜(d)は、本発明に係る収穫機の主要な構成部分と収穫時における各部の作用を示す。
【0019】
図3(a)は、クローラ10a、10bを駆動して機体12を前進させながら、傾動駆動部16の駆動ロッド16aにより傾動フレーム18の上側を進行方向の前方に突き出し、収穫刃20を下向き(収穫刃20の前端側が水平向きよりも低位となる向き)とした状態を示す。収穫刃20は傾動フレーム18の傾動角度によってその面の向きが変わる。収穫刃20を水平向きから傾動フレーム18を傾けて下向きにすると、機体12が前進することにより、収穫刃20は土からの抵抗力による下向きのモーメントを受け、さらに下向きとなって土中に潜っていく。
図3(a)は、駆動ロッド16aが突き出されて、収穫刃20が最も下向きになった状態である。
【0020】
図3(b)は、
図3(a)に示す駆動ロッド16aが突き出された状態から引き込み方向へ反転し、傾動フレーム18が
図3(a)に示す状態から逆向きに若干傾動した状態で、収穫刃20が下向きから水平向きになった状態である。この収穫刃20が水平向きになった状態は、いわば掘り下げ状態から掘り上げ状態に移行する転換点である。
【0021】
図3(c)は、
図3(b)に示す状態から駆動ロッド16をさらに引き込んだ状態で、収穫刃20を水平向きから最も上向き(収穫刃20の前端側が水平位置よりも高位となる向き)にした状態である。
図3(b)に示す状態から駆動ロッド16aをさらに引き込むと収穫刃20は上向きに移動開始し、収穫機が前進することにより収穫刃20に上向きの抵抗力が作用しさらに上向きとなって
図3(c)の状態になる。傾動フレーム18の傾動も収穫刃20を上向きにする作用に寄与している。
【0022】
図3(d)は、
図3(c)の状態から駆動ロッド16aを引き込み方向から突き出し方向へ反転させ、収穫刃20を上向き移動から下向き移動に転換して、収穫刃20が水平向きとなった状態である。
図3(b)に示す掘り上げ向きへの転換点からこの水平向きになる時点までが、いわば掘り上げ状態である。
図3(d)に示す状態からさらに駆動ロッド16aを突き出すことにより、収穫刃20は水平向きから下向きに向きを変え、収穫機が前進することにより収穫刃20が土中に潜る掘り下げ状態に移行する。
【0023】
図4に、収穫作業時の収穫刃20の動きを模式的に示す。
図4中のa、b、c、dが
図3(a)、(b)、(c)、(d)の各動作状態に対応する。収穫刃20の向きを周期的に変える操作と、クローラ10a、10bにより収穫機を前進させる操作との作用に基づいて収穫刃20は
図4に示すような正弦波状の動きをしながら前進する。
【0024】
図4に示すように、土中における収穫刃20の潜り量、上下動量、1周期の移動量等は、収穫刃20を傾ける際の設定角度、収穫刃20の向きを転換させるサイクルタイム、収穫機の進行速度等によって適宜設定することができる。これらの設定については、圃場や葉菜類の生育状況に応じて制御装置30により適宜設定すればよい。
【0025】
ほうれん草の根の長さを均一にするためには、収穫刃20を地表面と並行に推進させた方が良いように思われる。しかしながら、この方法では単に土が前方に移動されるのみで、土が地表面上に堆積してしまい、収穫刃20を地中に潜らせることができず、収穫機を長い距離にわたって前進させることができない。これに対して、本実施形態の収穫機では、収穫刃20の推進角度を徐々に変えながら収穫刃20を前進させることにより、収穫刃20の前方に土が堆積されることを軽減して、土中に潜る速さを早めることができ、きわめてスムーズに根切りすることができる。
このような収穫刃20の動きは、地中に石などの障害物が存在した場合に、単に収穫刃20を水平に移動させる方法では、障害物を前方に押し出すばかりで、障害物を避けることができず根切りに支障をきたす結果になるのに対して、障害物を上下に押し出すように作用し、障害物の影響を受けにくくすることができるという利点もある。
【0026】
収穫機はクローラ10a、10bにより一定速度で前進する。この収穫機の移動速度と、傾動フレーム18を前方から後方へ傾動させる際、すなわち傾動駆動部16の駆動ロッド16aが突き出し操作している際(
図3(c)→(d)→(a))の収穫刃20の移動速度とが一致するように、クローラ10a、10bと傾動フレーム18の動きを制御すると、収穫刃20はその場で、
図4のcの状態からaの状態に向きを変える動きをする。
【0027】
図5に、このように制御した場合の収穫刃20の動きを示す。この場合には、c→d→aの状態で収穫刃20が前進せず、その場で収穫刃20の向きが転換し、収穫刃20全体としての周期的な動きは円弧状の動きとなる。すなわち、収穫刃20は円弧状の経路の頂部で上向きから水平向きを経由して下向きへ転換する。
図5に示すような制御を行うと、収穫刃20の前進にともなう土の堆積が抑えられ、ほうれん草の根切り動作はさらにスムーズとなる。なお、収穫刃20を円弧状に移動させる操作は、収穫作業の全工程にわたってこのような操作をしなければならない訳ではなく、必要に応じてこのような動作をするように制御すればよい。
【0028】
本実施形態の収穫機は、収穫幅が広い収穫刃20を使用することにより、一度に広い範囲にわたってほうれん草を収穫することができる。圃場で育てられているほうれん草は必ずしも正しく整列して育っているとは限らない。また、葉菜類は葉が地表から起立した状態にあるとは限らず、地表に垂れた状態になっている場合もある。このような場合にも、本実施形態の収穫機は、土中で収穫刃20を周期的に上下動させながら根切りして収穫することにより葉菜類を傷めずに、また葉菜類の生育状況に関わらず的確に収穫することができる。
【0029】
前述したように、収穫刃20の土中における潜り量や収穫刃20の向き等については、制御装置30等による設定により、圃場の状態や収穫する葉菜類の状態をみながら、適宜設定可能である。
たとえば、ほうれん草は、収穫したほうれん草の根を数mm〜5mm程度残すように根をそろえてから出荷する。したがって、ほうれん草を収穫する際には、ある程度根を長く残して(数cm程度)収穫してかまわない。圃場の状態に応じて、収穫機の動作を制御することで、確実にほうれん草を収穫することができる。実際に、本発明者らは、ほうれん草の生育圃場で、上記収穫機を用いてほうれん草を収穫する実験を行い、ほうれん草を確実に根切りして収穫できることを確認している。
【0030】
本実施形態の収穫機では、収穫刃20の直後に搬送コンベヤ22を配置している。収穫刃20はほうれん草を根切りするとともに、根切りしたほうれん草を地表側へ持ち上げるように作用しながら進むから、根切りされた直後に、ほうれん草の下側に搬送コンベヤ22が進入し、ほうれん草を確実に搬送コンベヤ22に移載することができる。収穫刃20はある程度前後幅をもたせる(15cm程度)ことで、土とともにほうれん草を持ち上げる作用が生じ、根切りされたほうれん草が搬送コンベヤ22に移載されやすくなる。
【0031】
(第2の実施の形態)
図6はほうれん草の収穫機の第2の実施形態の構成を示す側面図、
図7は正面図である。本実施形態の収穫機は、根切りしたほうれん草の回収に使用する搬送コンベヤを第1の搬送コンベヤ22aと第2の搬送コンベヤ22bの2段構成としたものである。自走式の機体12と、傾動フレーム18、傾動フレーム18の昇降位置を調節する調節部19、収穫刃20等の構成及び作用は前述した第1の実施の形態の収穫機と同様である。なお、傾動駆動部16は傾動フレーム18が軸18cを支点として傾動するときの傾動角度を制御するもので、第1の実施の形態における傾動駆動部16とは若干構成を異にしている。
【0032】
第1の搬送コンベヤ22aは、第1の実施の形態におけると同様に、収穫刃20の後方に、収穫刃20よりもやや高位となる位置に、進行方向に対し後縁側が高位となる傾斜配置に設けられている。
第2の搬送コンベヤ22bは、第1の搬送コンベヤ22aの後方(機体12の進行方向に対して後方)に、第2の搬送コンベヤ22bの前端縁が第1の搬送コンベヤ22aの後端縁よりも高さ方向に見て低位となるように配置し、かつ第2の搬送コンベヤ22bの前端縁と第1の搬送コンベヤ22aの後端縁との間が離間する(離間距離20mm)ように配置する。第1の搬送コンベヤ22aの後端縁と第2の搬送コンベヤ22bの前端縁は高さ方向に離間すると同時に、進行方向の前後方向にも離間する。
【0033】
第1の搬送コンベヤ22aの後端縁と第2の搬送コンベヤ22bの前端縁とを離間させた配置としている理由は、回収されたほうれん草が第1の搬送コンベヤ22aから第2の搬送コンベヤ22bに移載される際に、ほうれん草に付着していた土を落とすためである。
【0034】
第2の搬送コンベヤ22bは、
図6に示すように、第1の搬送コンベヤ22aに比べて搬送面の角度を急角度に設定している。
第1の搬送コンベヤ22aと第2の搬送コンベヤ22bの搬送面の角度は、根切りされたほうれん草を確実に搬送する上で重要であり、収穫刃20と第1の搬送コンベヤ22aの離間間隔も適正に設定する必要がある。
収穫刃20と第1の搬送コンベヤ22aとの離間距離を一定にするため、本実施形態においては、昇降フレーム18bの下端に取り付けた支持板18fに第1の搬送コンベヤ22aを固定し、第1の搬送コンベヤ22aと第2の搬送コンベヤ22bとを連結板18gを介して連結している。第2の搬送コンベヤ22bは後端側に配置した支持ロッド23により下方から支持し、傾動フレーム18が傾動した場合でも、第1の搬送コンベヤ22aと第2の搬送コンベヤ22bの搬送面がなす角度が固定となるようにしている。
【0035】
昇降フレーム18bに第1の搬送コンベヤ22aと第2の搬送コンベヤ22bとを連結した構成としたことから、傾動フレーム18が傾動して収穫刃20が前後に移動しても収穫刃20と第1の搬送コンベヤ22aとの離間距離は不変である。根切りのために収穫刃20が前後動しても収穫刃20と第1の搬送コンベヤ22aとの間隔が一定であることから、根切りしたほうれん草を確実に回収することができる。
【0036】
第1の搬送コンベヤ22aは収穫刃20が前後動するとともに傾動することになるが、第1の搬送コンベヤ22aの搬送面が水平面となす角度(勾配)があまり大きくなると、ほうれん草の回収ミスが起こりやすくなる。本実施形態では、傾動フレーム18が鉛直向き(90°)となったときに第1の搬送コンベヤ22aの搬送面の角度が10°、傾動フレーム18の上端が前方に最大傾いたときに(95°)第1の搬送コンベヤ22aの搬送面の角度が15°となるように設定している。第1の搬送コンベヤ22aの傾きは、
図6に示すように、長孔を備える調節アーム18hを用いて調節している。
第2の搬送コンベヤ22bの傾斜角度は、傾動フレーム18が鉛直向きとなる状態で31.5°、第2の搬送コンベヤ22bの傾斜角度が最大となるのは、傾動フレーム18の上端が後方に最大傾いたときで(85°)、そのときの第2の搬送コンベヤ22bの傾斜角度は32.5°である。
【0037】
第2の搬送コンベヤ22bの後方の機体12の上面には回収したほうれん草を収容する収容部40が設けられる。この収容部40にコンテナ等を配置することにより、回収したほうれん草を順次収穫することができる。
第1の搬送コンベヤ22aと第2の搬送コンベヤ22bは、共通の搬送速度となるように設定し、第1の搬送コンベヤ22aから第2の搬送コンベヤ22bへ円滑にほうれん草が移送されるようにする。第1の搬送コンベヤ22aと第2の搬送コンベヤ22bの搬送速度は、根切りしたほうれん草が滞留しないように、機体12の移動速度(クローラ10a、10bの移動速度)よりも速い速度に設定する。
本実施形態の収穫機では、根切りしたほうれん草を搬送コンベヤで挟み込んで引き上げるといった回収操作を行わないから、ほうれん草などのやわらかな葉菜類を損傷させることなく収穫することができる。
【0038】
本実施形態の収穫機において特徴とする他の構成は、
図7に示すように、収穫刃20の上方、すなわち収穫刃20を正面方向から見て左右方向の外側位置に一対の変位センサ25を配置したことにある。この変位センサ25は収穫刃20を側面方向から見た場合に、収穫刃20の鉛直上方(傾動フレーム18の長手方向に平行となる方向)に配置する。
本実施形態の収穫機においては、制御装置30により昇降フレーム18bの高さを制御しながら、傾動フレーム18を傾動させて収穫刃20を地中で前後方向に動かしながらほうれん草を収穫する。
【0039】
収穫刃20の側方の上方位置に変位センサ25を配置することにより、傾動フレーム18が傾動しても、その傾動位置において地表面の高さ位置を検知することができるから、地表面に対して収穫刃20の高さ位置(潜り位置)を正確に設定することができ、地表面に凹凸がある場合でも的確にほうれん草を収穫することができる。すなわち、変位センサ25により地表面の位置を検出し、その検出結果に基づいたフィードバック制御により収穫刃20の鉛直方向の位置をリアルタイムで制御することにより、的確にほうれん草を根切りして収穫することができる。
【0040】
本発明に係る葉菜類の収穫機は、上述した各実施形態において説明したように、収穫刃20が土中で周期的に上下動して前進し、正弦波状あるいは円弧状の動きをしながら葉菜類を根切りして収穫する作用をなすことが特徴的である。
上述した実施形態では、このような収穫刃20の動作を行わせる方法として、傾動フレーム18の下端に収穫刃20を取り付け、傾動駆動部16により傾動フレーム18を周期的に往復して傾動させる構成とした。このように収穫刃22を動作させる装置構成、制御装置、制御方法は、もちろん本実施形態のような傾動フレーム18を使用する方法に限るものではなく、傾動フレーム18を使用せずに構成することも可能である。
【0041】
また、本実施形態では、支持フレーム18aにスライド可能に昇降フレーム18bを設け、制御装置30により、昇降フレーム18bの高さを制御して収穫刃20の地中における潜り量を制御している。収穫刃20の潜り量と傾動フレーム18の傾動速度(傾動周期時間)は、収穫作業開始時にあらかじめ設定した値に固定して作業を進めることもできるし、収穫作業時に随時設定値を変えながら作業を進めることもできる。収穫刃20の潜り量と傾動フレーム18の傾動速度を調節することで、収穫対象である葉菜類の種類や、圃場における葉菜類の生長具合等に応じてさらに的確に葉菜類を収穫することができる。
また、本発明に係る収穫機は、収穫幅の広い収穫刃を使用して収穫することにより、収穫作業を効率化させることができ、広い圃場での収穫作業に好適に利用することができる。