(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
微多孔膜がコアに捲回され、該コアの一部または全部が導電性部材よりなる微多孔膜捲回体の製造方法であって、巻取り中の捲回体の表面電位が−2kV〜+2kVになるように前記微多孔膜に向けてコロナ放電による除電を行い、前記微多孔膜を巻き取ることを特徴とする微多孔膜捲回体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[微多孔膜]
コアに捲回される微多孔膜はポリオレフィン微多孔膜であることが好適である。以下においては、とくにポリオレフィン微多孔膜について説明する。
【0017】
[ポリオレフィン]
微多孔膜を構成するポリオレフィンの質量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、通常1×10
4〜1×10
7であり、好ましくは1×10
5〜5×10
6である。
【0018】
ポリオレフィンはポリエチレン(PE)を含むことが好ましい。ポリエチレンとしては、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)が挙げられる。これらのポリエチレンは、エチレンの単独重合体のみならず、他のα−オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。
【0019】
ポリエチレンは単一物でもよいが、二種以上のポリエチレンからなる組成物であるのが好ましい。ポリエチレン組成物としては、Mwの異なる二種以上のUHMWPE同士の組成物、同様なHDPE同士の組成物、同様なMDPE同士の組成物、又は同様なLDPE同士の組成物を用いてもよく、UHMWPE、HDPE、MDPE及びLDPEからなる群から二種以上選ばれたポリエチレンの混合組成物を用いてもよい。
【0020】
中でもポリエチレン組成物としては、Mwが5×10
5以上のUHMWPEと、Mwが1×10
4以上〜5×10
5未満の範囲内のポリエチレンとからなるポリエチレン組成物が好ましい。UHMWPEのMwは5×10
5〜1×10
7の範囲内が好ましく、1×10
6〜5×10
6の範囲内が特に好ましい。Mwが1×10
4以上〜5×10
5未満のポリエチレンとしては、HDPE、MDPE及びLDPEのいずれも用いることができるが、特にHDPEを用いるのが好ましい。Mwが1×10
4以上〜5×10
5未満のポリエチレンはMwの異なるものを二種以上用いてもよいし、密度の異なるものを二種以上用いてもよい。また、多段重合のものでもよい。ポリエチレン組成物のMwの上限を15×10
6以下にすることにより、溶融押出を容易にすることができる。ポリエチレン組成物中のUHMWPEの含有量は、ポリエチレン組成物全体を100質量%として1質量%以上であるのが好ましく、2〜80質量%の範囲内であるのがより好ましい。
【0021】
ポリオレフィンのMwと数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は特に制限されないが、5〜300の範囲内であるのが好ましく、6〜100の範囲内であるのがより好ましい。Mw/Mnが5未満では高分子量成分が多過ぎるためにポリオレフィン溶液の押出が困難であり、Mw/Mnが300超では低分子量成分が多過ぎるために得られる微多孔膜の強度が低くなる。Mw/Mnは分子量分布の尺度として用いられるものであり、この値が大きいほど分子量分布の広がり幅が大きい。すなわち単一物からなるポリオレフィンの場合、Mw/Mnはその分子量分布の広がりを示し、その値が大きいほど分子量分布は広がる。単一物からなるポリオレフィンのMw/Mnはポリオレフィンを多段重合で調製することにより適宜調整することができる。多段重合法としては、一段目で高分子量成分を重合し、二段目で低分子量成分を重合する二段重合が好ましい。ポリオレフィンが混合組成物である場合、Mw/Mnが大きいほど配合する各成分のMwの差が大きく、また小さいほどMwの差が小さくなる。ポリオレフィン組成物のMw/Mnは各成分の分子量や混合割合を調整することにより適宜設定することができる。
【0022】
ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレータとして用いる場合には、メルトダウン温度を向上させ、かつ電池の高温保存特性を向上させるために、ポリオレフィンにポリエチレンとともにポリプロピレン(PP)を含ませてもよい。ポリプロピレンのMwは1×10
4〜4×10
6の範囲内であるのが好ましい。ポリプロピレンとしては、単独重合体の他に、他のα−オレフィンを含むブロック共重合体及び/又はランダム共重合体を使用することもできる。ポリプロピレンの添加量はポリオレフィン組成物(ポリエチレン+ポリプロピレン)全体を100質量部として80質量部以下にするのが好ましい。
【0023】
また、電池用セパレータ用途としての特性を向上させるため、ポリオレフィンはシャットダウン機能を付与するポリオレフィンを含んでもよい。シャットダウン機能を付与するポリオレフィンとして、例えばLDPEを用いることができる。LDPEとしては、分岐状のLDPE、線状LDPE(LLDPE)、シングルサイト触媒により製造されたエチレン/α−オレフィン共重合体、及びMwが1×10
3〜4×10
3の範囲内である低分子量PEからなる群から選ばれた少なくとも一種が挙げられる。
【0024】
上記UHMWPEを含むポリエチレン組成物には、任意成分としてポリブテン−1、ポリエチレンワックス、エチレン/α−オレフィン共重合体等を添加してもよい。
【0025】
[ポリオレフィン微多孔膜の製造方法]
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、(1)上記ポリオレフィンに成膜用溶剤を添加した後、溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製する工程、(2)ポリオレフィン溶液をダイリップより押し出した後、冷却してゲル状成形物を形成する工程、(3)ゲル状成形物を少なくとも一軸方向に延伸する工程(一次延伸工程)、(4)成膜用溶剤を除去する工程、(5)得られた膜を乾燥する工程、及び(6)乾燥した膜を再び少なくとも一軸方向に延伸する工程(二次延伸工程)を含む。更に(1)〜(6)の工程の後、必要に応じて(7)熱処理工程、(8)電離放射による架橋処理工程、(9)親水化処理工程、(10)表面被覆処理工程等を設けてもよい。
【0026】
(1)ポリオレフィン溶液の調製工程
まず、ポリオレフィンに適当な成膜用溶剤を添加した後、溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製する。ポリオレフィン溶液には必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、無機充填材等の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0027】
成膜用溶剤としては液体溶剤及び固体溶剤のいずれも使用できる。液体溶剤としてはノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、及び沸点がこれらに対応する鉱油留分が挙げられる。溶剤含有量が安定したゲル状成形物を得るためには、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。液体溶剤と固体溶剤を併用してもよい。
【0028】
液体溶剤の粘度は25℃の温度において30〜500cStの範囲内であるのが好ましく、50〜200cStの範囲内であるのがより好ましい。この粘度が30cSt未満ではPO溶液のダイリップからの吐出が不均一であり、かつ混練が困難である。一方、500cSt超では液体溶剤の除去が困難である。
【0029】
溶融混練方法に特に限定はないが、押出機中で均一に混練する方法が好ましい。この方法はポリオレフィンの高濃度溶液を調製するのに適する。溶融温度はポリオレフィンの融点+10℃〜+100℃の範囲内であるのが好ましい。融点は、JIS K7121に基づいて示差走査熱量測定(DSC)により求めた値をいう。成膜用溶剤は混練開始前に添加してもよいし、混練中に押出機の途中から添加してもよいが、後者の途中添加が好ましい。溶融混練にあたってはポリオレフィンの酸化を防止するために酸化防止剤を添加するのが好ましい。
【0030】
ポリオレフィン溶液中のポリオレフィンと成膜用溶剤との配合割合は、両者の合計を100質量%として、例えばポリオレフィンが1〜50質量%であり、好ましくは20〜40質量%である。ポリオレフィンの割合を1質量%未満にすると、ポリオレフィン溶液を押し出す際にダイス出口でスウェルやネックインが大きくなり、ゲル状成形物の成形性及び自己支持性が低下する恐れがある。一方、ポリオレフィンの割合が50質量%を超えるとゲル状成形物の成形性が低下する恐れがある。
【0031】
(2)ゲル状成形物の形成工程
溶融混練したポリオレフィン溶液を押出機から直接に又は別の押出機を介してダイから押し出すか、一旦冷却してペレット化した後に再度押出機を介してダイから押し出す。ダイリップとしては、通常は長方形の口金形状をしたシート用ダイリップを用いるが、他のダイリップも使用可能である。共押出用のダイリップを用いて複数層のゲル状成形物を得ることもできる。加熱溶液の押し出し速度は0.2〜15m/分の範囲内であるのが好ましい。
【0032】
このようにしてダイリップから押し出した溶液を冷却することによりゲル状成形物を形成する。冷却は少なくともゲル化温度以下まで50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。このような冷却を行うことにより、ポリオレフィン相が成膜用溶剤によりミクロ相分離された構造(ポリオレフィン相と成膜用溶剤相とからなるゲル構造)を固定化できる。冷却は25℃以下まで行うのが好ましい。一般に冷却速度を遅くすると擬似細胞単位が大きくなり、得られるゲル状成形物の高次構造が粗くなるが、冷却速度を速くすると密な細胞単位となる。冷却速度を50℃/分未満にすると結晶化度が上昇し、延伸に適したゲル状成形物となりにくい。冷却方法としては冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができる。
【0033】
(3)一次延伸工程
得られたシート状のゲル状成形物を少なくとも一軸方向に延伸する。延伸によりポリオレフィン結晶ラメラ層間の開裂が起こり、ポリオレフィン相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。得られるフィブリルは三次元網目構造(三次元的に不規則に連結したネットワーク構造)を形成する。ゲル状成形物は成膜用溶剤を含むので、均一に延伸できる。一次延伸は、ゲル状成形物を加熱後、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法又はこれらの方法の組合せにより所定の倍率で行うことができる。一次延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸又は逐次延伸のいずれでもよいが、同時二軸延伸が好ましい。
【0034】
延伸倍率はゲル状成形物の厚さにより異なるが、一軸延伸では2倍以上にするのが好ましく、3〜30倍にするのがより好ましい。二軸延伸ではいずれの方向でも少なくとも3倍以上、すなわち面積倍率で9倍以上にすることにより、突刺強度が向上するため好ましい。面積倍率が9倍未満では延伸が不十分であり、高弾性及び高強度のポリオレフィン微多孔膜が得られない恐れがある。一方、面積倍率が400倍を超えると、延伸装置、延伸操作等の点で制約が生じる恐れがある。
【0035】
一次延伸の温度はポリオレフィンの融点+10℃以下にするのが好ましく、結晶分散温度から融点未満の範囲内にするのがより好ましい。この延伸温度を融点+10℃超にすると、樹脂が溶融し、延伸による分子鎖の配向ができない恐れがある。一方、結晶分散温度未満では樹脂の軟化が不十分で、延伸により破膜しやすく、高倍率の延伸ができない恐れがある。結晶分散温度は、ASTM D 4065に基づいて動的粘弾性の温度特性測定により求めた。ポリオレフィンとしてPEを用いる場合、その結晶分散温度は、一般的に90〜100℃である。よってポリオレフィンがPEからなる場合、延伸温度を通常90〜140℃の範囲内にし、好ましくは100〜130℃の範囲内にする。
【0036】
(4)成膜用溶剤除去工程
成膜用溶剤の除去(洗浄)には洗浄溶媒を用いる。ポリオレフィン相は成膜用溶剤と相分離しているので、成膜用溶剤を除去すると多孔質の膜が得られる。洗浄溶媒は公知のものでよく、例えば塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、三フッ化エタン等のフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン等の易揮発性溶媒が挙げられる。
【0037】
洗浄は、延伸後の膜を洗浄溶媒に浸漬する方法、延伸後の膜に洗浄溶媒をシャワーする方法、又はこれらの組合せによる方法等により行うことができる。洗浄溶媒は、100質量部の膜に対し300〜30,000質量部の割合で使用するのが好ましい。洗浄温度は通常15〜30℃でよく、必要に応じて加熱洗浄すればよい。洗浄は、残留した成膜用溶剤の濃度がその添加量に対して1質量%未満に低下するまで行うのが好ましい。
【0038】
ポリオレフィン微多孔膜は洗浄の際に帯電する場合が多いので、本発明の微多孔膜捲回体は、製造過程において溶剤除去工程を有する微多孔膜に対して特に効果的に適用可能である。
【0039】
(5)膜の乾燥工程
延伸及び成膜用溶剤除去により得られた膜を、加熱乾燥法、風乾法等により乾燥する。乾燥温度は、ポリオレフィンの結晶分散温度以下の温度であるのが好ましく、特に結晶分散温度より5℃以上低い温度であるのが好ましい。
【0040】
乾燥処理により、微多孔膜中に残存する洗浄溶媒の含有割合を、乾燥処理後の膜質量100質量%に対し5質量%以下にするのが好ましく、3質量%以下にするのがより好ましい。
【0041】
(6)二次延伸工程
乾燥後の膜を、再び少なくとも一軸方向に延伸する。二次延伸は、膜を加熱しながら、一次延伸と同様にテンター法等により行うことができる。二次延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸又は逐次延伸のいずれでもよいが、同時二軸延伸が好ましい。
【0042】
二次延伸の温度は、微多孔膜を構成するポリオレフィンの結晶分散温度+20℃以下にするのが好ましく、結晶分散温度+15℃以下にするのがより好ましい。二次延伸温度の下限は、ポリオレフィンの結晶分散温度にするのが好ましい。二次延伸温度を結晶分散温度+20℃超にすると、耐圧縮性が低下したり、TD方向に延伸した場合のシート幅方向の物性のばらつきが大きくなる恐れがあり、特に透気度の延伸シート幅方向のばらつきが大きくなる恐れがある。一方二次延伸温度を結晶分散温度未満にすると、ポリオレフィンの軟化が不十分となり、延伸において破膜しやすくなったり、均一に延伸できなくなる恐れがある。ポリオレフィンがPEからなる場合には、延伸温度を通常90℃〜120℃の範囲内にし、好ましくは95〜115℃の範囲内にする。
【0043】
二次延伸の速度は延伸軸方向に3%/秒以上にすることが好ましい。例えば一軸延伸の場合、長手方向(機械方向;MD方向)又は横方向(幅方向;TD方向)に3%/秒以上にする。二軸延伸の場合、MD方向及びTD方向に各々3%/秒以上にする。二軸延伸は、同時二軸延伸、逐次延伸又は多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよい。延伸軸方向における延伸速度(%/秒)とは、膜(シート)が二次延伸される領域において二次延伸前の延伸軸方向の長さを100%とし、1秒間当りに伸ばされる長さの割合を表す。この延伸速度を3%/秒未満にすると、耐圧縮性が低下したり、TD方向に延伸した場合のシート幅方向の物性のばらつきが大きくなる恐れがあり、特に透気度の延伸シート幅方向のばらつきが大きくなる恐れがある。また、生産性が低くなる恐れもある。二次延伸の速度は5%/秒以上にするのが好ましく、10%/秒以上にするのがより好ましい。二軸延伸の場合、MD方向及びTD方向の各延伸速度は3%/秒以上である限り、MD方向とTD方向で互いに異なってもよいが、互いに等しいのが好ましい。二次延伸の速度の上限に特に制限はないが、破断防止の観点から50%/秒以下であるのが好ましい。
【0044】
二次延伸の一軸方向への倍率は1.1〜2.5倍にするのが好ましい。例えば一軸延伸の場合、MD方向又はTD方向に1.1〜2.5倍にするのが好ましく、二軸延伸の場合、MD方向及びTD方向に各々1.1〜2.5倍にするのが好ましい。二軸延伸の場合、MD方向及びTD方向の各延伸倍率は1.1〜2.5倍である限り、MD方向とTD方向で互いに異なってもよいが、互いに等しいのが好ましい。この倍率が1.1倍未満だと、耐圧縮性が不十分となる恐れがある。一方この倍率を2.5倍超とすると、破膜し易くなったり、耐熱収縮性が低下したりする恐れがある。二次延伸の倍率は1.1〜2.0倍にするのがより好ましい。
【0045】
(7)熱処理工程
二次延伸した膜を熱処理するのが好ましい。熱処理により微多孔膜の結晶が安定化し、ラメラ層が均一化する。熱処理方法としては、熱固定処理及び/又は熱緩和処理を用いればよく、熱固定処理がより好ましい。熱固定処理は、テンター方式、ロール方式又は圧延方式により行う。熱固定処理はポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィンの融点+10℃以下、好ましくは結晶分散温度以上かつ融点以下の温度範囲内で行う。
【0046】
熱緩和処理は、テンター方式、ロール方式、圧延方式、ベルトコンベア方式又はフローティング方式により行う。熱緩和処理はポリオレフィン微多孔膜の融点以下の温度、好ましくは60℃以上〜融点−5℃以下の温度範囲内で行う。熱緩和処理による収縮は、二次延伸した方向における長さを二次延伸前の91%以上に留めるのが好ましく、95%以上に留めるのがより好ましい。この収縮を、91%未満とすると、二次延伸後のシートの幅方向における物性バランス、特に透過性のバランスが悪化する恐れがある。以上のような熱緩和処理により、透過性と強度のバランスが一層向上する。また熱固定処理及び熱緩和処理を多数組み合せてもよい。
【0047】
(8)膜の架橋処理工程
二次延伸した微多孔膜に対して、電離放射による架橋処理を施してもよい。
【0048】
(9)親水化処理工程
二次延伸した微多孔膜を親水化処理してもよい。親水化処理としては、モノマーグラフト処理、界面活性剤処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等を用いる。得られた親水化微多孔膜は乾燥する。乾燥に際しては透過性を向上させるため、ポリオレフィン微多孔膜の融点以下の温度で収縮を防止しながら熱処理するのが好ましい。収縮を防止しながら熱処理する方法としては、例えば親水化微多孔膜に上記熱処理を施す方法が挙げられる。
【0049】
(10)表面被覆処理工程
二次延伸した微多孔膜は、ポリプロピレンやポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂多孔質体、またポリイミド、ポリフェニレンスルフィド等の多孔質体等で表面を被覆することにより、電池用セパレータとして用いた場合のメルトダウン特性が向上する。
【0050】
[ポリオレフィン微多孔膜の特性]
本発明において好適に用いられる微多孔膜は、次の物性を有する。
【0051】
透気度(JIS P8117の透気度試験方法により得られるガーレー値)は20〜800秒/100cm
3である(膜厚20μm換算)。透気度がこの範囲であると電池のサイクル特性が良好であり、微多孔膜を電池セパレータとして用いた場合に電池容量が大きいため本発明の微多孔膜捲回体としたときの効果が大きい。透気度が20秒/100cm
3/20μm未満では電池内部の温度上昇時にシャットダウンが十分に行われない恐れがある。
【0052】
空孔率は25〜80%、好ましくは30〜60%である。空孔率が25%未満では良好な透気度が得られない恐れがある。一方80%を超えていると、微多孔膜を電池セパレータとして用いた場合の強度が不十分であり、電極が短絡する危険が大きい。
【0053】
突刺強度は1,500mN(膜厚20μm換算)以上である。突刺強度が1,500mN(膜厚20μm換算)未満では、微多孔膜を電池用セパレータとして電池に組み込んだ場合に、電極の短絡が発生する恐れがある。突刺強度は3,000mN(膜厚20μm換算)以上であるのが好ましい。
【0054】
引張破断強度はMD方向及びTD方向のいずれにおいても20,000kPa以上である。これにより破膜の心配がない。引張破断強度はMD方向及びTD方向のいずれにおいても50,000kPa以上であるのが好ましい。
【0055】
引張破断伸度はMD方向及びTD方向のいずれにおいても100%以上である。これにより破膜の心配がない。
【0056】
105℃の温度で8時間曝露した後の熱収縮率はMD方向及びTD方向ともに15%以下である。熱収縮率が15%を超えると、微多孔膜をリチウム電池用セパレータとして用いた場合、発熱時にセパレータ端部が収縮し、電極の短絡が発生する可能性が高くなる。熱収縮率はMD方向及びTD方向ともに10%以下であるのが好ましい。
【0057】
摩擦係数、特に微多孔膜同士の摩擦係数は小さい方が好ましいが、微多孔膜の摩擦係数は原料となるポリマーの処方や微多孔膜の表面状態による影響を受けるため、調整が困難な場合も多い。一般的に、摩擦係数が大きいほど、巻き出した際の剥離帯電が強くなるが、本発明の微多孔膜捲回体は摩擦係数の大きい微多孔膜を使用した際でも、より電位上昇抑制の効果が期待でき、静止摩擦係数が0.8以上、動摩擦係数が0.3以上の場合に、特に顕著な効果が得られる。
【0058】
微多孔膜の膜厚は用途に応じて適宜選択できるが、例えば電池用セパレータとして使用する場合は5〜50μmが好ましく、10〜35μmがより好ましい。また、微多孔膜は単膜であっても、複数層が積層された積層膜であってもかまわない。
【0059】
微多孔膜の表裏の帯電量は低い方が好ましいが、製造工程上、制御することが難しい。ここで、微多孔膜のおもて面を第1の面と呼び、裏面を第2の面と呼ぶことにする。表裏が逆極性に帯電しているとは、
図6に示すように、第1の面100が正または負に帯電しているとき、第2の面200が負または正に帯電していることを言う。この第1の面と第2の面が逆極性に帯電する工程は、たとえば、第1の面が正または負に帯電した状態で、第2の面側からイオンなどを与えて中和し、第2の面に負または正の逆極性の電荷を付与することで形成できる。
図6には、第1の面100に負の静電荷102が、第2の面200に正の静電荷201が同じ量、すなわち同じ電荷密度となっている帯電状態の1例を示す。さらに、第1の面にはほぼ均一に負の静電荷が、第2の面にはほぼ均一に正の静電荷が存在している。
図6の帯電状態の微多孔膜において、表面電位を測定すると、実質ゼロ電位であって、表面電位は−2kV以上+2kV以下となる。これは、第1の面100に負電荷102と第2の面200の正電荷201とでそれぞれ逆極性に対をなしており、2つの面の帯電電荷の和はほぼゼロとなっているからである。
【0060】
このように、表裏がそれぞれ逆極性に帯電していると、通常のイオン風を与えて除電するタイプの除電器では除電ができない。この理由は、表裏の逆極性の電荷で電界が微多孔膜の内部に閉じ込められ、除電器の位置からは見かけの電位がゼロ近傍に見えてしまうことにより、除電器からのイオンを引き寄せないからである。なお、表裏面が等量でない場合には、そのアンバランス分が等量になるまで除電ができる。すなわち、この際は微多孔膜の表裏面には等量逆極性の静電荷が存在する状態である。
【0061】
このように、第1の面100と第2の面200における表裏面が逆極性に帯電しているフィルムをコア1の巻取部2に捲回すると(図は一部分を表示する)、
図7(b)に示すように、第1の面100の外面に、第2の面200の内面が巻かれることで、第1の面の表面と第2の面の裏面で逆極性の電荷が形成され、これが繰り返し積層することで電気二重層が積層され、最内層の第1の面の表面と最外層の第2の面の裏面に大きな電位差を発現する。
図7(b)では、最外層に、−nV(nは任意)に、内層の最内面に+nV(nは任意)の電位が発生する。この微多孔膜の電気二重層による電位は、層の数が多いほど、各層の背面平衡電位(後述)が大きいほど、大きな電位になる。このような電気二重層を形成した微多孔膜捲回体を、たとえば巻き出す際に微多孔膜やコアが強く帯電してしまう課題がある。そのメカニズムは、次のように推定する。
【0062】
巻き出される微多孔膜とコアとの剥離点において、バランスしていた正/負の電荷が移動し、巻き出す微多孔膜の内層との間で静電荷が授受され、巻き出された微多孔膜が帯電するのである。この層と層の間の静電荷の授受は、最表層の外面と、巻き出し剥離するフィルムの内面(コア側の面)との間の電位差(電界)の強さに比例する。すなわち、微多孔膜の表裏の背面平衡電位の絶対値の大きさに比例する。発明者らの知見によると、微多孔膜捲回体の電位は、最表層の外面の静電荷の極性方向に大きくなるので、たとえば、
図7(b)に示す、巻き外面が負の極性であれば、微多孔膜捲回体の電位は巻き出すほど負の電位が大きくなっていく。
【0063】
本発明における、背面平衡電位について説明する。微多孔膜の第1の面の「背面平衡電位」とは、反対の面(背面)に接地導体を微多孔膜の厚みの20%または10μmのいずれか小さい方よりも近くに近接させるか密着させて、上記背面の電荷と等量逆極性の電荷を上記接地導体に誘導させ、これによって上記背面の電位を実質的に0電位とした状態(平衡状態)において上記第1の面の電位を、表面電位計の測定プローブ(測定開口部直径が数mm以下の微小なもの。例えば、モンロー社製プローブ1017、開口部直径1.75mmや1017EH、開口部直径0.5mm等)を、第1の面側から0.5mm〜2mm程度にまで微多孔膜に近接させた状態で測定したものをいう。第2の面の背面平衡電位は、微多孔膜を裏返して同様の測定により得られる。この背面平衡電位の測定は非破壊での確認方法であるため、導体に密着させる面を表裏反対にすることにより、微多孔膜の各面それぞれの背面平衡電位V[V]をそれぞれ知ることができる。また、微多孔膜に金属等の導電性物質の蒸着したものであっては、蒸着層が、金属ロールと同様の働きをし、微多孔膜面の背面平衡電位を測定することが可能である。
【0064】
第1の面100上の帯電の分布状態は、表面電位計のプローブ、または、背面に接地導体を密着させた状態のシートのいずれか一方をXYステージなどの位置調整可能な移動手段を用いて低速(5[mm/秒]程度)で移動させながら背面平衡電位を順次測定し、得られたデータを2次元的にマッピングすることで得られる。第2の面の背面平衡電位も同様に測定することができる。本発明の微多孔膜で、表裏が逆極性に等量帯電し、第1の面および第2の面の正と負の帯電分布は、全体の面積を100%としたときに、その面積の75%が一方の極性(正あるいは負)、残り25%未満の割合でもう一方の極性(負あるいは正)となっている。
【0065】
本発明において、「表裏が等量帯電している」とは、電気絶縁性シートの面内方向のある部位において、第1の面の背面平衡電位と第2の面の背面平衡電位との合計がほぼ同じことをいう。この時、第1の面と第2の面の各背面平衡電位の和が−10[V]以上+10[V]以下である状態である。さらに、表面と裏面がそれぞれほぼ均一に同じ極性に帯電している状態は、表裏面のそれぞれの背面平衡電位の面内分布において、各部の前後0.5mにおいて背面平衡電位の絶対値の最大値と最小値の差が20V以下になっていることをいう。このとき、第1の面の背面平衡電位と第2の面の背面平衡電位の平均値はいくらでもかまわない。
【0066】
なお、通常測定される表面電位は、シートを空中に浮いた状態(背面に密着または近接する導体が存在しない状態)で測定されたものである。微多孔膜の表裏面に存在する電荷が互いに逆極性でちょうど同一の電荷量であれば、つまり逆極性に等量帯電している状態、理論上表面電位もほぼ0[V]になる。一方、表裏の電荷のアンバランスが存在するときは、表面電位は大きい値(たとえばkVオーダー)となる。通常測定される表面電位はアースからの距離が長いので、周囲の導体の存在等の影響を受けやすく、一般に再現性は低いが、背面平衡電位はフィルム反対面にアースが存在する状態で測定するので、一般に再現性が高い。
【0067】
図7(b)には第1の面100の負電荷102と第2の面200の正電荷201が、存在するのみであるが、微多孔膜の帯電状態においては、第1の面100に正電荷101が、第2の面200に負電荷202があっても良い。その割合は、極性反転の割合は面積割合で25%以下(1/4以下)となっている。極性反転は、巻き長方向に反転していてもよいし、微多孔膜の幅方向に反転していてもよい。これは、最終的な帯電の割合として1/2が許容されるが、その半分すなわち1/4の割合において、帯電極性が反転していれば、全体の半分が相殺されて帯電を抑えることができるからである。ここで、表裏が逆極性にほとんど帯電しておらず、実質的にゼロである−15以上+15V以下の部位は、極性が反転しているとは言わず、同じ極性の部位として面積を計算する。
【0068】
本発明者らは、微多孔膜の逆極性に等量帯電した微多孔膜の帯電状態を測定した結果、第1の面と第2の面の背面平衡電位の絶対値が3V以上150V以下であれば、本発明が有効で帯電が抑制できることがわかった。背面平衡電位の絶対値が150Vを超える場合には、放電が発生しやすいなどの不具合があり、巻き出したフィルムが帯電してしまう場合があった。
【0069】
特許文献1で開示された技術においては、磁気記録材向けのフィルムが帯電している状態であって、
図7(a)に示すように、第1の面または第2の面のいずれか/またはどちらもが、同一の極性に帯電していると考えられる。これは、フィルムによる摩擦帯電の極性は通常一定の極性であるためである。
図7(a)の場合、内層から外層にむけてすべてが正または負の同一電荷となっている。そのため、フィルムがコアに巻かれた捲回体の電位Vは、正または負の電位をもっている状態である。
図7(a)は−nVの電位を持っている。
【0070】
ここで、特許文献1の少なくとも1箇所以上に導電性である部分と絶縁性である箇所をそれぞれ有する樹脂コアを用いて巻き取って静電気を抑制する技術は、静電容量を大きくし電位を低減する効果があるという(たとえば特許文献1の段落〔0016〕)。詳細には説明されていないが、この効果は、電位V[V]と単位面積あたりの静電容量C[μF]、および電荷Qの関係式は、Q=C・V である。ここで、微多孔膜のように薄いシート状物が巻かれた微多孔膜捲回体においては、単位面積あたりの静電容量Cは、平行平板の単位面積あたりの静電容量C=ε
0ε
r/t(ただし、ε
0は真空中の誘電率:8.854×10
−12[F/m]、ε
rはフィルムの比誘電率、tは厚み[m])により求められる。Q=CVの関係から、電位Vは、電荷Qに比例し、静電容量Cに反比例する。同じ帯電電荷量Qであれば、静電容量Cが大きいほど電位Vを小さくすることができるものと推定される。
【0071】
本発明者らの知見によると、大地に対する静電容量を大きくするには、絶縁性コアの導電性部分を大地に接地することが当然必要となる。特許文献1の技術において、
図7(a)などに示すように、大地に対する静電容量とは、コア、樹脂フィルム(または微多孔膜)、が直列接続された構成であり、合成静電容量は、もっとも小さい静電容量によって決まってしまう。そうすると、樹脂コアの絶縁部の静電容量とフィルムの静電容量が支配的になる。そのため、本発明者らの知見によると、樹脂コア中の導電性部は樹脂コアの最表面に形成し、接地することで樹脂コアの絶縁部の静電容量をない状態とする必要がある。この状態が
図8(a)に示されている。樹脂コアの導電性部分を大地に接地せずに浮いた状態で存在しては、大地に対する静電容量は大きくならないからである。
【0072】
すなわち、特許文献1の実施例において、接地してある巻き取り駆動装置、接地していない巻取り駆動装置とあるが、「巻き取り装置」のコア受け軸および巻き取り駆動装置が大地に対して接地されており(接地していなくても十分に大地と同等)、樹脂コアの導電部が接地されたコアの受け軸および巻取り駆動装置を介して、大地と接地されていると考えられる。
【0073】
本特許における技術では、表裏逆極性帯電による電気二重層が形成されたフィルムに好適に利用されるもので、50pFから1nFの静電容量であって、電気二重層の形成による外部への電位発現を抑制できるため、巻き出した際に微多孔捲回体の電位が上昇しにくい効果が得られる。すなわち、発明者らは、微多孔膜の第1の面と第2の面が逆極性に等量帯電した状態の膜を巻回体としたときに、コアの一部や内部に接地していない導電性の部分を配置して、電気二重層の形成を抑制できることを見出した。これを
図8(b)に示す。その原理は、推定ではあるが、導電性部分の自由電子の偏りを利用して安定化し、もともとの一枚のフィルム(あるいは微多孔膜)の第1の面と第2の面で正と負の対を形成し、最外層や最内層に電位を発現しにくい構成にできると考える。最外層や最内層に電位を発現しにくいので、微多孔膜を巻きだす際の電荷の移動も抑制されやすい。つまり、もともと一枚の微多孔膜自身が持つ、正と負の逆極性電荷の対がバランスされると推定する。
【0074】
上記効果は、コアの一部や内部が接地された状態であっても効果があり、導電性の部分を配置して、電気二重層の形成を抑制できることを見出した。
【0075】
一方、表裏が逆極性に帯電したフィルムの状態は、巻き出した際には上述のような課題があるが利点もある。たとえば、フィルム(あるいは微多孔膜)を仮留めやずれないように積層したい場合には、フィルムの静電荷と基材とのクーロン力で摩擦抵抗を上げることができ、また、フィルムの上側の面を布等で擦ると大きな密着力を発現することができる。さらに、捲回体を得る際には、1つ下の層の外面における第1の面の静電荷と、その1つ上の層の内面における第2の面の静電荷とが、互いに逆極性になっており、クーロン力の作用で密着しており巻きずれが発生しにくくなる効果がある。これらは、微多孔膜をリチウムイオン等の二次電池のセパレータとして使用する際に、積層や素子捲き工程のハンドリングの安定化につながり、 好ましい。
【0076】
フィルムの表裏が逆極性に等量帯電した帯電状態は、少なくとも1方の面を正または負に帯電させ、続いてもう1方の面から除電するようにことで作成できる。この場合、除電条件をコントロールして、フィルムの帯電量を3V以上150V以下にすることが好ましい。すなわち、若干の帯電が残っている方が、表裏の帯電極性の違いによって生じるフィルム間のクーロン力により巻姿が向上したり、さらにはユーザーでの使用の際のユーザーでの搬送ロールとの接触帯電などを抑える効果が期待できるためである。
【0077】
[コア]
コアの形状は公知の形状でかまわない。例えば、
図1のように微多孔膜を捲回する巻取部2および軸を通すための軸受部3を連結部(スポ−ク)4で連結した円筒形のものがコア1の例として挙げられる。
図1の巻取面5とは微多孔膜が捲回される巻取部2の外周面である。この場合、外径は100mm以上であり、幅は巻き取る微多孔膜の幅よりも0〜50mm広くなる。具体的な一実施態様として、外径が200mm、軸受部3の内径が75mm、幅が60mmといった寸法のコアが挙げられる。さらに、耐熱などのコーティングを施したフィルム(あるいは微多孔膜)を巻き取るコアは、コーティングの原反、ならびにコーティング済み原反が広幅であり、幅が300mm以上1500mmといった寸法のコアが挙げられる。
【0078】
コアは一部または全部が導電性部材よりなる。コアの全てを導電性部材で構成してもよいし、一部に導電性部材を用いていてもよい。コアの表面に導電性部材が露出している必要はなく、コアの内部に導電性部材が埋め込まれた態様でもかまわない。また、導電性部材による導電部分が複数かつ非連続に存在、すなわち互いに電気的に接続されていなくてもよく、導電性部材の電気的な接地についてもその有無を問わない。なお、導電性部材は、コアの外側表面に積層、塗布、貼り付け、あるいは蒸着によって形成され、あるいは芯材として導電性部材が使用されてもよい。あるいは導電性部材を絶縁性樹脂に練り込んで成型する方法や、導電性部材を内部にインサート成型してもよい。特にコア外側表面あるいは内側表面の部分に導電性部分を設けることが好ましく、この場合、運搬時やセット時の接触による傷つきなどが発生しても修正が容易となる。また、コアの巻取面に導電性部材を積層、塗布、貼り付けする態様も好ましい態様として挙げられる。
【0079】
コアの一部または全部が導電性部材よりなることが必要である理由は次のとおりである。すなわち、微多孔膜捲回体の静電気対策としては微多孔膜捲回体の表面電位を小さくする必要があり、具体的には、巻き取り用のコアとして少なくとも1箇所以上に導電性である部分と絶縁性である箇所をそれぞれ有する樹脂コアを用い巻き取ることが特に有効であるからである。一般にコアの材料として用いられる紙や樹脂は絶縁性を有するが、導電性部分を有することによって、大地に対する静電容量が大きくなるばかりか、フィルム(あるいは微多孔膜)の表裏を逆極性に等量帯電させた電気二重層を1枚のフィルム内でバランスさせ、結果として捲回体の表面電位が抑えられるのである。
【0080】
導電性部材は導電性の素材を含んで構成され、導電性素材としては各種の金属や導電性樹脂、また、樹脂にカーボンブラックなどの導電性素材を混合した導電性樹脂組成物が挙げられる。導電性部材の表面抵抗値としては10
8Ωcm以下、さらには10
6Ωcm以下であることが好ましい。10
8Ωcmを超えると、1枚のフィルム(あるいは微多孔膜)の表裏が、逆極性に等量帯電した電気二重層をバランスさせる本発明の効果が得られにくくなるためである。
【0081】
一方、導電性部材以外の部分は非導電性の素材により構成され、典型的には紙や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの樹脂(プラスチック)といった電気絶縁性部材により構成されるが、取り扱い性の点から各種の樹脂、特にABS樹脂により構成されることが好ましい。
【0082】
導電性部材がコアの巻取面表面に占める面積Aは、微多孔膜がコアに接する接触面積Bの50%以上となる(つまり、(A/B)×100≧50なる関係式が充足される)ことが好ましい。さらに好ましくは(A/B)が80%以上であり、より好ましくは90%以上である。一般的なコアにおいては、微多孔膜がコアに接する接触面積と巻取面全面の面積はほぼ等しいから、巻取面表面に占める導電性部材の面積が大きいほどよい。
【0083】
具体的な実施態様の一つとして、ABS樹脂製のコアの巻取面全面に薄い金属層を形成したものが挙げられる。この場合、金属層は、例えば蒸着によって形成されたものであっても、含金属ペースト等を塗布して形成したものであっても、金属箔を貼り付けたものであってもかまわない。また別の実施態様として、電気絶縁性部材の内部に導電性部材が埋め込まれた態様、例えば、巻取部の内部に金属層や導電性樹脂層を有するものが挙げられる。さらに別の実施態様として、コア全体を導電性部材で構成したもの、例えばカーボンブラックのような導電性粒子入りのABS樹脂で成形されたコアが挙げられるが、導電性樹脂又は導電性粒子(導電性成分)を含んだ樹脂組成物によりコアを成形したものが最も好ましい。
【0084】
巻取面には巻き始めの微多孔膜が接触することから、巻取面の表面粗度は小さい方が好ましい。ここでいう表面粗度とはJIS B0601により測定されたRa(算術平均粗さ)であり、具体的には5.0μm以下、好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。5.0μm以下であれば、巻取面表面の凹凸により微多孔膜に影響を及ぼすことを防ぐことができる。下限としては特に限定されないが、0.01μm以上が現実的である。また、巻取面の幅方向(コアの幅方向)の表面粗度の平均値が3.0μm以下であることが好ましい。所望の表面粗度を得るためには、研磨、研削するなど公知の方法を用いることができる。
【0085】
コアの熱膨張係数は、その絶対値で100×10
−6/K以下であることが好ましい。より好ましくは、50×10
−6/K以下である。熱膨張係数が前記数値範囲内であると、微多孔膜捲回体を長期間輸送や保管するにあたって外気温度の影響によりコアが膨張・収縮しにくいため、微多孔膜に不要な応力がかかりにくく、特性の低下を抑制することができる。
【0086】
[捲回体の作製]
上記のように微多孔膜を製膜した後、微多孔膜をコアに捲回する(巻き取る)が、通常、製造装置により製造されたままの微多孔膜(原反)は数百mm〜数千mmの幅を有するため、所望の幅とするためのスリット(裁断)工程が実施される。場合によっては数回のスリット工程を経て、導電性部材を用いたコアに捲回された最終的な微多孔膜捲回体(製品として供給される微多孔膜捲回体)が得られる。
【0087】
微多孔膜の巻き取り、スリット工程においては公知の装置を用いることができる。スリット工程においては所定幅にスリットされた微多孔膜を、巻き取り張力を制御しつつ捲回することが好ましい。巻き取り張力の制御にあたっては、スリット前の捲回体から巻き出す(繰り出す)際の張力と巻き取り張力とをほぼ等しくすることが好ましく、巻き取り張力を巻き出し張力の±30%程度の範囲内に収まるよう制御することが好ましい。この場合、最終的な微多孔膜捲回体の巻き取りは、個別に張力調整可能な巻き取り装置により所定値に合わせて個別に張力を調整しつつ実施される。
【0088】
導電性部材を用いたコアに微多孔膜を捲回する(巻き取る)際には、捲回体を除電しながら捲回することが重要である。具体的には巻取り中の捲回体の表面電位が−2kV〜+2kVの範囲内となるように巻き取る。何故なら、捲回体から微多孔膜を巻き出す際の剥離帯電による電位上昇を抑えるには、もともとの捲回体の電位も低くしておく必要があるからである。また、捲回体を巻き出した微多孔膜1枚の表面電位が−5kV〜+5kVの範囲内に制御されることにより、ハンドリングでの不快感やハンドリング性の低下が防止できる。
【0089】
表面電位の調整は公知の方法によって行うことができる。具体的には、自己放電型の除電器、直流および/または交流の針状電極式除電器あるいはエアブロア式除電器を単独、複数、あるいは組み合わせて使用して捲回体の表面電位を調整することが好ましい。また、除電器の設置箇所は微多孔膜の捲回体、あるいは微多孔膜1枚がロールに接触していない空中に浮いている箇所で行うことが好ましい。より好ましくは、微多孔膜が捲回体に巻き取られる際の巻き取り点(接線との接点)付近に向けて外側および/または内側から除電するとよい。なお、導電性部材を用いたコアに対し、コアを除電しながら微多孔膜を捲回する(巻き取る)際の巻き取り速度については特に限定されないが、30〜200m/分程度が好ましい。
【0090】
一部または全部が導電性部材よりなるコアを用い、巻取り中の捲回体の表面電位が−2kV〜+2kVの範囲内となるように微多孔膜を巻き取った微多孔膜捲回体によれば、微多孔膜を巻き出す際の表面電位を−5kV〜+5kVの範囲内とすることができる。すなわち、捲回体の電位が低く維持され、巻き出し時の剥離放電や電荷移動が抑えられ、電位が上昇しにくくなり、電池への加工時のハンドリング性を向上させることができる。微多孔膜を巻き出す際の表面電位は好ましくは−2kV〜+2kVの範囲内である。なお、ここでいう微多孔膜を巻き出す際の表面電位とは、微多孔膜捲回体から微多孔膜を500m巻き出した時の微多孔膜捲回体の表面電位をいう。500m巻き出し時を評価基準とした理由は、巻き出しが数百mに及んでくると
図2に示すように電位上昇が顕著になり電位測定に不都合が生じてくるためである。巻長が1000mを超えない微多孔膜捲回体も多いため、巻き出し長さが比較的小さく精度良く表面電位測定ができる500m巻き出し時を表面電位の評価基準とした。
【0091】
捲回される微多孔膜の幅や長さ(巻長)は特に限定されず、長さは数十m〜数千m、幅は数mm〜数mである。例えば、巻長は50m〜5000m、好ましくは100m〜3000mであり、幅は10mm〜1500mm、好ましくは20mm〜500mmである。また、微多孔膜は、表面に耐熱コートなどのコーティングを施したもの、ラミネートしたものでもよい。
【0092】
また、コアに捲回される微多孔膜の長さ(巻長:m)と積層回数(捲回数:回)の比(積層回数/巻長)は小さいほうが好ましく、具体的には2.0以下が好ましい。
【0093】
本発明の微多孔膜捲回体及び本発明の微多孔膜捲回体の製造方法により得られた微多孔膜捲回体は、電位上昇が抑制されたものであるため、例えばユーザーにおいて微多孔膜を巻き出した際に巻き出した微多孔膜から手を離しても微多孔膜捲回体や周囲の装置等に“ピチャ”と戻って吸着することがなく、不快感の低減やハンドリング性(作業性)の向上が実現できる。
【実施例】
【0094】
以下に実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
なお、各物性値の評価、実施例及び比較例に使用した微多孔膜の製造は以下の方法で行った。
【0096】
[電位の測定]
微多孔膜および微多孔膜捲回体の表面電位の測定については、微多孔膜捲回体の巻き取り中の表面電位、および微多孔膜捲回体を500m巻き出した時の表面電位を測定した。なお、測定は以下の方法による。
【0097】
20kVまでの表面電位は、TRek社製電位計MODEL523を用いてサンプルから30mm離した位置で、20kVを越える場合にはKSD1000(春日電機社製)を用いてサンプルから100mm離した位置でそれぞれ測定した。概略を
図5に示す。
【0098】
[表面抵抗の測定]
コアの表面抵抗値はシムコ製表面抵抗計ST−4を用いて測定した。
【0099】
[背面平衡電位の測定]
あらかじめ微多孔膜捲回体から膜を引き出し、微多孔膜の第1の面の「背面平衡電位」とは、反対の面(背面)に接地導体をシートの厚みの20%または10μmのいずれか小さいほうよりも近く近接させるか密着させて上記背面の電荷と等量逆極性の電荷を上記接地導体に誘導させ、これによって上記背面の電位を実質的に0電位とした状態において上記第1の面の電位を、表面電位計の測定プローブ(測定開口部直径が数[mm]以下の微小なもの。例えば、モンロー社製プローブ1017、開口部直径1.75[mm]や1017EH、開口部直径0.5[mm]等)を、第1の面側から0.5〜2[mm]程度までシートに十分近接させた状態で測定した電位(V)をいう。第2の面の背面平衡電位は、微多孔膜を裏返して同様の測定により得られる。この背面平衡電位の測定は非破壊での確認方法であるため、導体に密着させる面を表裏反対にすることにより、微多孔膜の各面それぞれの背面平衡電位V[V]を測定した。なお、第1の面と第2の面の極性は逆極性で、その絶対値は同等であった。
【0100】
[静電容量の測定]
本発明において、微多孔膜捲回体の静電容量は、次のように測定する。微多孔膜捲回体の最表層にアルミニウム箔など金属からなる電極を表面に一周ぐるりと巻きつける。さらに、巻回体リールの最内層で巻取り駆動軸で固定される内周にもアルミニウム箔など金属からなる電極を内面に一周巻きつける。両電極間の静電容量は、インピーダンスアナライザーLF41924A(ヒューレットパッカード社製)を用いて、周波数1kHzのときの値を読み取る。
【0101】
[摩擦係数の測定]
25mm(TD)×200mm(MD)のサンプルを平面に置く。その上に、18mm幅(TD)のサンプルを5mmφの円柱にMD方向に巻いたものを荷重30gをかけた状態で置く。これを50mm/分で平面に置いたサンプルの上を移動させ、静止摩擦係数と動摩擦係数を測定する。
【0102】
[膜厚]
ミツトヨ製マイクロゲージで、10×10cmのサンプルの4角を10Rの測定子を用い測定し、平均することにより求めた。
【0103】
[透気度]
透気度(秒/100cm
3;20μm換算)を求めるにあたっては、膜厚T
AVの微多孔膜に対してJIS P8117に準拠して測定した透気度P
1を、P
2=P
1/T
AVの式を用いて、膜厚を20μmとしたときの透気度P
2に換算した。
【0104】
[空孔率(%)]
空孔率は、微多孔膜の質量w
1と、微多孔膜と同じポリエチレン組成物からなる同サイズの空孔のない膜の質量w
2から、空孔率(%)=(w
2−w
1)/w
2×100の式により算出した。
【0105】
[突刺強度]
先端に球面(曲率半径R:0.5mm)を有する直径1mmの針を、膜厚T
AVの微多孔膜に2mm/秒の速度で突刺して最大荷重S(貫通する直前の荷重[mN])を測定し、膜厚を20μmとしたときの荷重S’をS’=S/T
AVの式により求め、突刺強度(mN;20μm換算)とした。
【0106】
[引張破断強度]
幅10mmの短冊状試験片を用いてASTM D882により測定した。
【0107】
[微多孔膜の製造]
(微多孔膜A)
Mwが2.0×10
6の超高分子量ポリエチレンPE1(Mw/Mn:8.0)30質量%、及びMwが3.0×10
5の高密度ポリエチレンPE2(Mw/Mn:8.6)70質量%からなるポリエチレン(融点:135℃、結晶分散温度:100℃)に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタンを、ポリエチレン100質量部当たり0.2質量部の割合でドライブレンドし、ポリエチレン組成物を調製した。得られたポリエチレン組成物40質量部を二軸押出機(シリンダ内径:58mm、スクリュの長さ(L)と直径(D)の比L/D:42、強混練タイプ)に投入し、この二軸押出機のサイドフィーダーから60質量部の流動パラフィン[50cst(40℃)]を供給し、210℃及び390rpmの条件で溶融混練して、二軸押出機中でポリエチレン溶液を調製した。得られたポリエチレン溶液を二軸押出機の先端に設置されたTダイから押し出し、40℃に温度調節した冷却ロールで引き取りながら、ゲル状成形物を形成した。得られたゲル状成形物に対して、テンター延伸機を用いて、118℃の温度で5×5倍の同時二軸延伸(第一の延伸)を施し、95℃で熱固定処理をした。次いで延伸したシート状のゲル状成形物を塩化メチレンの洗浄槽中に浸漬し、洗浄して流動パラフィンを除去した。洗浄した膜を風乾し、次に126℃の温度に加熱しながら、テンター延伸機によりTD方向に1.4倍に再び延伸(第二の延伸)し、テンターに保持しながら126℃で熱固定処理して(第二の延伸と熱固定処理の合計26秒)ポリエチレン微多孔膜を得た。
【0108】
なお、樹脂のMw及びMw/Mnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定[測定機器:Waters Corporation製GPC−150C,温度:135℃,溶媒:o−ジクロルベンゼン,濃度:0.1質量%(インジェクション量:500μl)、カラム:昭和電工株式会社製Shodex UT806M,溶媒流速:1.0ml/分,溶解条件:135℃/1h]による積分曲線から求めた。なお、測定条件の定値はポリエチレン基準のものである。
【0109】
得られた微多孔膜の各種物性を測定した所、厚みは16μm、透気度(ガーレー値)が80秒/100cm
3(20μm換算)、空孔率が53%、突刺強度が3432mN(20μm換算)、引張破断強度が73,553kPa(MD方向)、93,167kPa(TD方向)であった。得られた微多孔膜の背面平衡電位は、第1の面が−45V、第2の面が+45Vであった。
【0110】
(微多孔膜B〜J)
原料のポリエチレン組成物および製造条件を表2のとおりに変更した以外は上記微多孔膜Aと同様の方法で微多孔膜B〜Jを製造した。得られた微多孔膜の背面平衡電位は、第1の面が−10V以上―149V以下、第2の面が+5V以上+145V以下であった。
【0111】
得られた微多孔膜B〜Jの物性は表2に記載のとおりである。
【0112】
比較例1
図1に示す形状の絶縁性樹脂(ABS樹脂)製のコアを用いた。コアの外径は200mm(8インチ)、幅50mm、表面抵抗値は10
13Ω/□である。静電容量は10pFであった。
【0113】
このコアに、上記微多孔膜Aを捲回した。微多孔膜Aの巻長は1000m、幅は50mmであり、巻き取り時の条件は巻き取り速度50m/分である。また、巻き取り時は
図5(b)に示すように除電器(シムコ社製“SS−50”)を用いて設置距離50mmで除電を行いながら巻き取り、同時に表面電位を測定した。なお、巻き出し時は巻き出し速度50m/分で、表面電位は
図5(a)に示すようにして測定した。
【0114】
比較例2
比較例1で用いたコアに帯電防止処理を施して使用した。帯電防止処理のためにコアの巻取面に帯電防止剤(コルコート社製“コルコート200”)を塗布し、これにより表面抵抗値は10
9Ω/□となた。このコアに、比較例1と同様に微多孔膜Aを捲回した。表面電位の測定も比較例1と同様にして行った。静電容量は22pFであった。
【0115】
実施例1
図1に示す形状の導電性樹脂(カーボンブラックを混練したポリエチレン、カーボンブラック含量16重量%)製のコアを用いた。コアの各寸法は比較例1と同様であり、表面抵抗値は10
6Ω/□であった。静電容量は400pFであった。このコアに、比較例1と同様に微多孔膜Aを捲回した。表面電位の測定も比較例1と同様にして行った。
【0116】
実施例2
図1に示す形状の導電性樹脂(カーボンブラックを混練したポリエチレン、カーボンブラック含量19重量%)製のコアを用いた。コアの各寸法は比較例1と同様であり、表面抵抗値は10
4Ω/□であった。静電容量は670pFであった。このコアに、比較例1と同様に微多孔膜Aを捲回した。表面電位の測定も比較例1と同様にして行った。
【0117】
実施例3
図1に示す形状のアルミ製のコアを用いた。コアの各寸法は比較例1と同様であり、表面抵抗値は10
0Ω/□であった。このコアに、比較例1と同様に微多孔膜Aを捲回した。表面電位の測定も比較例1と同様にして行った。
【0118】
実施例4
図1に示す形状のアルミ製のコアを用いた。コアの各寸法は比較例1と同様であり、表面抵抗値は10
0Ω/□であった。このコアに、コアを接地した以外は比較例1と同様に微多孔膜Aを捲回した。表面電位の測定も比較例1と同様にして行った。
【0119】
実施例5
図4に示した絶縁性樹脂(ABS樹脂)製のコア(外径200mm=8インチ、幅50mm)の巻取面(外周面)の全面にアルミテープ(厚み100μm)を貼付したものを用いた。アルミテープは接地しなかった。コアの表面抵抗値は10
0Ω/□であった。静電容量は120pFであった。このコアに、比較例1と同様に微多孔膜Aを捲回した。表面電位の測定も比較例1と同様にして行った。
【0120】
実施例6
図4に示した絶縁性樹脂(ABS樹脂)製のコア(外径は200mm=8インチ、幅50mm)の巻取面(外周面)に、外周面の半分の幅のアルミテープ(厚み100μm)を外周面と金属テープの中心線が重なるように貼付したものを用いた。コアのアルミテープ部分の表面抵抗値は10
0Ω/□であった。静電容量は88pFであった。このコアに、比較例1と同様に微多孔膜Aを捲回した。表面電位の測定も比較例1と同様にして行った。
【0121】
実施例7
図3に示した絶縁性樹脂(ABS樹脂)製のコアの巻取部内部に巻取部と同一の幅のアルミ製帯(厚み100μm)を埋め込んだものを用いた。コアの各寸法は比較例1と同様であり、表面抵抗値は10
0Ω/□であった。静電容量は130pFであった。このコアに、比較例1と同様に微多孔膜Aを捲回した。表面電位の測定も比較例1と同様にして行った。
【0122】
実施例8
図3に示した絶縁性樹脂(ABS樹脂)製のコアの巻取部内部に巻取部と同一の幅の導電性樹脂層(厚み1mm)を有するものを用いた。コアの各寸法は比較例1と同様であり、表面抵抗値は10
4Ω/□であった。静電容量は210pFであった。このコアに、比較例1と同様に微多孔膜Aを捲回した。表面電位の測定も比較例1と同様にして行った。
【0123】
実施例9
巻き取り時に除電を行わなかった以外は実施例2と同様にして微多孔膜捲回体を作製し、評価も同様にして行った。
【0124】
巻き取り時に除電を行わなかったため、巻き取り時の捲回体の表面電位は−3kVであった。
【0125】
実施例10〜18
捲回する微多孔膜として微多孔膜B〜Jを使用した以外は実施例2と同様にして微多孔膜捲回体を作製し、評価も同様にして行った。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
表1に実施例及び比較例の評価結果を示す。ハンドリング性については巻き出し時の捲回体電位が±5kV以内のものを○、それ以外を×と評価した。導電性部材を有さないコアに捲回された微多孔膜捲回体(比較例1、2)に比べ、導電性部材を有するコアに捲回された微多孔膜捲回体は巻き出し時の表面電位が小さく抑えられ、ハンドリング性に優れたものとなっていることがわかる。また、実施例2と実施例9の比較から巻き取り時の除電による効果があることがわかる。