特許第6149275号(P6149275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6149275-複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置 図000002
  • 6149275-複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置 図000003
  • 6149275-複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置 図000004
  • 6149275-複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置 図000005
  • 6149275-複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置 図000006
  • 6149275-複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149275
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20170612BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20170612BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   H02J3/32
   H02J3/46
   H02J7/00 303C
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-163894(P2013-163894)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-33307(P2015-33307A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康司
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 仁
(72)【発明者】
【氏名】島尾 敏裕
(72)【発明者】
【氏名】有松 健司
(72)【発明者】
【氏名】大日向 敬
【審査官】 古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−234563(JP,A)
【文献】 特開2012−085493(JP,A)
【文献】 特開2011−055671(JP,A)
【文献】 特開2006−287998(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/038667(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/038665(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00− 5/00
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる種類の第1及び第2の蓄電デバイスと、
電力系統に連系され且つ前記第1及び第2の蓄電デバイスに対応して設けられ、前記第1及び第2の蓄電デバイスの各々に対する入力電力および出力電力の変換を行う第1及び第2の電力変換器と、
前記電力系統の電圧および電流に基づき前記電力系統の系統電力を演算する電力演算器と、
前記第1及び第2の電力変換器に対応して設けられ、前記第1及び第2の電力変換器の電力を検出する第1及び第2の電力検出部と、
前記第1及び第2の蓄電デバイスに対応して設けられ、前記蓄電デバイスの電圧および電流を検出する第1及び第2の電圧電流検出部と、
前記電力演算器からの系統電力と前記第1及び第2の電力検出部からの電力と前記第1及び第2の電圧電流検出部からの電圧および電流とに基づき前記系統電力の変動を抑制する制御回路とを備え、
前記制御回路は、
前記電力演算器からの系統電力に応じて充放電電力および回数を、前記第1及び第2の蓄電デバイスのそれぞれに配分し、
前記第1及び第2の蓄電デバイスに分配される充放電指令により、前記系統電力の振幅値が所定の振幅値(±A)内であって、前記第2の蓄電デバイスにより電力変動を抑制するための出力を行わない期間に、前記第1及び第2の蓄電デバイス間で電力を融通し、前記第2の蓄電デバイスの前記充放電の累積が所定値になるように制御し、
前記電力演算器からの系統電力の振幅値に基づく変動抑制指令値と前記系統電力との第1の偏差を充放電指令値として算出する充放電指令値加算器と、
前記充放電指令値を一定の振幅値に制限することにより前記第1の蓄電デバイスの充放電を制御するための第1の指令値を作成する第1のリミッタと、
前記充放電指令値から前記第1の指令値を減算して前記第2の蓄電デバイスの充放電を制御するための第2の指令値を得る第1の加算器と、
前記第2の蓄電デバイスの前記所定値の充放電量と前記第2の蓄電デバイスの実際の充放電量との第2の偏差を前記第2の指令値から減算し得られた値を前記第2の蓄電デバイスの指令値とする第2の加算器と、
前記第1の指令値と前記第2の偏差とを加算し得られた値を前記第1の蓄電デバイスの指令値とする第3の加算器と、
を備えることを特徴とする複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記第2の蓄電デバイスの前記所定値の充放電量と前記第2の蓄電デバイスの実際の充放電量との第2の偏差を、前記第1の蓄電デバイスの最大出力と前記第1の蓄電デバイスの実際の充放電量との偏差を上下限値として制限し得られた値を前記第2の加算器及び前記第3の加算器に出力する第2のリミッタを備えることを特徴とする請求項1記載の複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の変動を抑制する複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギーを用いた発電装置、例えば太陽光発電などを用いた発電装置が電力系統に大量に導入されることが予想される。この太陽光発電装置は不安定電源であり、電力系統に多数連系された場合、電力系統において様々な悪影響をもたらす電力変動を抑制する必要がある。
【0003】
従来、電力変動を抑制する電力変動抑制装置は、蓄電デバイスとして鉛蓄電池のような安価な蓄電池を用い、この蓄電池を充放電させて蓄電池のエネルギーにより、太陽光発電装置から供給される電力の変動および負荷で消費される電力の変動を抑制していた。
【0004】
また、従来の技術として、特許文献1が知られている。特許文献1に記載された電力変動補償システムは、電力供給部から供給される電力の変動および負荷で消費される電力の変動を補償するシステムであって、蓄電部と、蓄電部への入力電力および蓄電部からの出力電力を変換するコンバータと、コンバータを制御する制御部とを備え、制御部は、補償対象となる電力の変動量に基づいて、補償電力の値を演算する補償電力演算部と、変動量に基づいて、コンバータの運転および停止を判断する判断部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−346332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、鉛蓄電池のような安価な蓄電池により全ての充放電を行う場合、充放電サイクル数が増加するため、蓄電池の寿命が短くなる。蓄電池は電気二重層キャパシタのような高サイクル寿命を持つ蓄電デバイスと比べて安価であるが、メンテナンス回数が増加するので、メンテナンスコストが増加し、総合的なコストが増加する。
【0007】
本発明は、蓄電デバイスの総合的なコストを低減することができる複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置は、互いに異なる種類の第1及び第2の蓄電デバイスと、電力系統に連系され且つ前記第1及び第2の蓄電デバイスに対応して設けられ、前記第1及び第2の蓄電デバイスの各々に対する入力電力および出力電力の変換を行う第1及び第2の電力変換器と、前記電力系統の電圧および電流に基づき前記電力系統の系統電力を演算する電力演算器と、前記第1及び第2の電力変換器に対応して設けられ、前記第1及び第2の電力変換器の電力を検出する第1及び第2の電力検出部と、前記第1及び第2の蓄電デバイスに対応して設けられ、前記蓄電デバイスの電圧および電流を検出する第1及び第2の電圧電流検出部と、前記電力演算器からの系統電力と前記第1及び第2の電力検出部からの電力と前記第1及び第2の電圧電流検出部からの電圧および電流とに基づき前記系統電力の変動を抑制する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記電力演算器からの系統電力に応じて充放電電力および回数を、前記第1及び第2の蓄電デバイスのそれぞれに配分し、前記第1及び第2の蓄電デバイスに分配される充放電指令により、前記系統電力の振幅値が所定の振幅値(±A)内であって、前記第2の蓄電デバイスにより電力変動を抑制するための出力を行わない期間に、前記第1及び第2の蓄電デバイス間で電力を融通し、前記第2の蓄電デバイスの前記充放電の累積が所定値になるように制御し、前記電力演算器からの系統電力の振幅値に基づく変動抑制指令値と前記系統電力との第1の偏差を充放電指令値として算出する充放電指令値加算器と、前記充放電指令値を一定の振幅値に制限することにより前記第1の蓄電デバイスの充放電を制御するための第1の指令値を作成する第1のリミッタと、前記充放電指令値から前記第1の指令値を減算して前記第2の蓄電デバイスの充放電を制御するための第2の指令値を得る第1の加算器と、前記第2の蓄電デバイスの前記所定値の充放電量と前記第2の蓄電デバイスの実際の充放電量との第2の偏差を前記第2の指令値から減算し得られた値を前記第2の蓄電デバイスの指令値とする第2の加算器と、前記第1の指令値と前記第2の偏差とを加算し得られた値を前記第1の蓄電デバイスの指令値とする第3の加算器とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の蓄電デバイスに分配される充放電指令により、系統電力の振幅値が所定の振幅値(±A)内であって、前記第2の蓄電デバイスにより電力変動を抑制するための出力を行わない期間に、複数の蓄電デバイス間で電力を融通し、第2の蓄電デバイスの充放電の累積が所定値になるように制御するので、電力量の変動幅が小さくなり、容量を小さく設計できるから、蓄電デバイスの総合的なコストを低減することができる電力変動抑制装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1の複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置の回路構成図である。
図2】本発明の実施例1による電力変動を抑制するために電力変動抑制装置が出力する充放電パターンを示したものである。
図3】本発明の実施例1の複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置の指令値生成部および指令値分離部の回路構成図である。
図4図3に示す電力変動抑制装置において単にリミッタ213を用いた場合の各蓄電デバイスの充放電パターンを示す図である。
図5】本発明の実施例1の複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置の各蓄電デバイスの充放電パターンを示す図である。
図6】本発明の実施例の複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置においてフライホイールの充放電電力量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置およびその制御方法を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1の複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置の回路構成図である。図1において、交流電源などの電力系統1には電力系統母線Lを介して負荷2が接続され、電力系統1から系統電力が負荷2に供給される。電力系統1と負荷2との間には、電力変換器4を介して太陽光発電装置3が接続されている。太陽光発電装置3は、自然エネルギーを用いた発電装置である風力発電などでも良い。太陽光発電装置3は、太陽光により発電し、発電量を電力変換器4に出力する。電力変換器4は、太陽光発電装置3の発電量を所定の電力に変換して電力系統母線Lに供給する。
【0014】
図1に示す電力変動抑制装置は、複数の電力変換器7−1〜7−n、複数の蓄電デバイス5−1〜5−n、複数の電力検出部12−1〜12−n、複数の電圧電流検出部14−1〜14−n、複数の制御器23−1〜23−n、指令値生成部21、指令値分離部22を備えたことを特徴とする。
【0015】
電力系統1と電力変換器4を介する太陽光発電装置3との間には、複数の電力変換器7−1〜7−nを介して複数の蓄電デバイス5−1〜5−nが接続されている。
【0016】
複数の蓄電デバイス5−1〜5−nは、互いに異なる種類と容量の蓄電デバイスである。蓄電デバイス5−1は、低コストで小振幅(小出力)の充放電パターンにより充放電を行う例えば、鉛蓄電池などを用いることができる。蓄電デバイス5−2は、高コストで大振幅(大出力)の充放電パターンが可能な例えば、フライホイール(FW)などを用いることができる。蓄電デバイス5−nは、大振幅の充放電パターンが可能な例えば、リチウムイオン電池などを用いることができる。
【0017】
なお、電力変換器7−1〜7−nと蓄電デバイス5−1〜5−nの各々は、複数個設けても良い。
【0018】
電力変換器7−1〜7−nは、蓄電デバイス5−1〜5−nと電力系統母線Lとに接続され、蓄電デバイス5−1〜5−nへの入力電力および蓄電デバイス5−1〜5−nからの出力電力を変換する。
【0019】
電力系統1と負荷2との間の電力系統母線Lには電力系統母線Lに流れる電流を検出する電流検出器9が設けられている。また、電力系統母線Lには電力系統1の地点Aにおける電圧を検出する電圧検出器10が接続されている。電力演算器11は、電流検出器9と電圧検出器10とに接続され、電流検出器9で検出された電流と電圧検出器10で検出された電圧とに基づき電力系統1の系統電力を演算して制御回路20に出力する。
【0020】
電力検出部12−1〜12−nは、電力変換器7−1〜7−nに接続され、電力変換器7−1〜7−nで変換された電力を検出し、検出された電力を制御回路20に出力する。
【0021】
電圧電流検出部14−1〜14−nは、蓄電デバイス5−1〜5−nに接続され、蓄電デバイス5−1〜5−nの端子電圧と蓄電デバイス5−1〜5−nに流れる電流とを検出し、検出された電圧および電流を制御回路20に出力する。
【0022】
制御回路20は、電力演算器11からの電力系統1の系統電力と、電力検出部12−1〜12−nで検出された電力変換器7−1〜7−nの電力と、電圧電流検出部14−1〜14−nで検出された蓄電デバイス5−1〜5−nの電圧および電流とに基づいて、太陽光発電装置3からの電力および負荷2の電力の変動を抑制する。
【0023】
図2は、本発明の実施例1による電力変動を抑制するために電力変動抑制装置が出力する充放電パターンを示したものである。本充放電パターンは曇天時などの太陽光発電装置の出力が大きく変動する場合の一例を示しており、電力系統に大きく影響を与える場合の出力電圧変動を抑制する充放電パターンに値するものである。例えば、図2に示す充放電パターンによる変動抑制を蓄電デバイス5−1のみで行う場合、充放電回数が多く、瞬間的に大電力を出力できる蓄電容量設定とする必要がある。このため、蓄電デバイス5−1の容量が大きくなり、コストが増加する。
【0024】
このように図2に示す充放電パターンを単一の蓄電デバイスで行う場合には、コスト面では最適とは言えない。このため、実施例1の電力変動抑制装置は、充放電回数と充放電電力を、蓄電デバイス5−1と蓄電デバイス5−2とのそれぞれに配分することで最適化を図るようにした。なお、n個の場合も適用できる。
【0025】
上記最適化を実現するために、制御回路20は、電力演算器11からの電力系統1の系統電力(地点Aにおける電力)の充放電電力に応じて、充放電パターンの充放電電力および回数を、蓄電デバイス5−1と蓄電デバイス5−2とのそれぞれに配分することを特徴とする。
【0026】
より具体的に上記最適化を実現するために、本発明者らは、充放電電力、充放電サイクル数(頻度)、サイクル寿命と総コストに着目した。
【0027】
即ち、図2に示す充放電パターンを、図4(a)に示す±Aの充放電を行う第1充放電パターンと、図2に示す充放電パターンから図4(a)に示す第1充放電パターンを差し引いて得られた図4(b)に示す第2充放電パターンとに分割して取り扱うことにより、蓄電デバイス5−1と蓄電デバイス5−2とのそれぞれに充放電電力と回数とを配分する。
【0028】
このようにするため、制御回路20は、電力演算器11からの電力系統1の系統電力の振幅値が±Aの振幅値内である場合には、即ち、振幅値が小さい図4(a)に示す第1充放電パターンである場合には、第1充放電パターンにより蓄電デバイス5−1の充放電を制御する。
【0029】
また、制御回路20は、系統電力の振幅値が±Aの振幅値を超える場合には、即ち、振幅値が大きい充放電パターンである場合には、図4(a)に示す第1充放電パターンによる蓄電デバイス5−1の充放電制御と、図4(b)に示す第2充放電パターンによる蓄電デバイス5−2の充放電制御とを行う。
【0030】
上記機能を実現するために、制御回路20は、指令値生成部21、指令値分離部22、および制御器23−1〜23−nを設けている。指令値生成部21は、電力演算器11からの電力系統1の系統電力(地点Aにおける電力)の振幅値に応じて、図2に示す充放電パターンを、図4(a)に示す第1充放電パターンと、図4(b)に示す第2充放電パターンとに分割するように、蓄電デバイス5−1と蓄電デバイス5−2とのそれぞれに充放電パターンの振幅と頻度とを配分するための指令値を作成する。
【0031】
指令値分離部22は、指令値生成部21で生成された指令値を、蓄電デバイス5−1の充放電を制御するための蓄電デバイス5−1用の指令値と、蓄電デバイス5−2の充放電を制御するための蓄電デバイス5−2用の指令値と、に分離する。
【0032】
制御器23−1は、指令値分離部22からの蓄電デバイス5−1用の指令値に基づき蓄電デバイス5−1の充放電を制御する。制御器23−2は、指令値分離部22からの蓄電デバイス5−2用の指令値に基づき蓄電デバイス5−2の充放電を制御する。
【0033】
図3は、本発明の実施例1の複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置の指令値生成部および指令値分離部の回路構成図である。指令値生成部21は、電力平準化部211と加算器212とにより構成されている。
【0034】
電力平準化部211は、一例として移動平均法により、即ち、電力変動を抑制する地点Aの電力Ppvを平滑化する処理を行うことにより、変動抑制指令値Pfを得る。加算器212は、移動平均部211からの変動抑制指令値Pfと電力Ppvとの偏差を求め、この偏差を電力変動抑制装置全体で行う充放電指令値Pconvrefとして出力する。なお、その他の平準化法も適用できる。
【0035】
リミッタ213は、加算器212からの充放電指令値Pconvrefを一定の振幅値に制限して指令値PBATref図4(a)に示す蓄電デバイス5−1のための第1充放電パターンに対応する指令値)を作成し、この指令値PBATrefを蓄電デバイス5−1の充放電のために用いる。
【0036】
加算器214は、加算器212からの充放電指令値Pconvrefから、リミッタ213からの指令値PBATrefを差し引いて得られた指令値PFWref図4(b)に示す蓄電デバイス5−2のための第2充放電パターンに対応する指令値)を作成し、この指令値PFWrefを蓄電デバイス5−2の充放電のために用いる。即ち、リミッタ213と加算器214とを用いることにより、充放電指令値Pconvrefを指令値PBATrefと指令値PFWrefとに分離する。
【0037】
(実施例1の電力変動抑制装置の特徴的構成)
次に、実施例1の電力変動抑制装置の特徴的構成について説明する。
【0038】
上述したように、リミッタ213により、図2に示す充放電パターンを、図4(a)に示す第1充放電パターンと、図4(b)に示す第2充放電パターンとに分割している。
【0039】
しかし、図4(b)に示す蓄電デバイス5−2の充放電パターンは、充電側に偏っている。このため、蓄電デバイス5−2の充放電電力量の変動幅が大きくなり、大きな容量を持つ蓄電デバイス5−2が必要となる。
【0040】
そこで、蓄電デバイス5−2の充放電電力量の変動幅を小さくし、小さい容量を持つ蓄電デバイス5−2に設定するために、実施例1の電力変動抑制装置は、図3に示すように、スイッチ215a,215b,216a,216b、スイッチ制御部217、加算器218,221,222、バッファ219、電力制限リミッタ220を備えることを特徴とする。
【0041】
スイッチ215aは、選択端子a,bを有し、スイッチ215bは、選択端子c,dを有し、スイッチ216aは、選択端子e,fを有し、スイッチ216bは、選択端子g,hを有する。
【0042】
スイッチ制御部217は、ゼロでない指令値PBATrefとゼロでない指令値PFWrefとに基づき蓄電デバイス5−1のみの充放電の出力が行われた場合に、スイッチ215aの端子aを選択し、スイッチ216aの端子eを選択して、蓄電デバイス5−1のための指令値PBATrefを出力する。
【0043】
スイッチ制御部217は、ゼロでない指令値PFWrefに基づき蓄電デバイス5−2の充放電の出力が行われた場合に、電力変換器11からの系統電力の振幅値による蓄電デバイス5−2の出力が有る期間に、スイッチ215bの端子cを選択し、スイッチ216bの端子gを選択して、蓄電デバイス5−2のための指令値PFWrefを出力する。
【0044】
スイッチ制御部217は、指令値PFWrefに基づき蓄電デバイス5−2の充放電の出力が行われた場合に、電力変換器11からの系統電力の振幅値による蓄電デバイス5−2の出力が無い期間に、蓄電デバイス5−2の充放電量WFWが所定値、例えばゼロになるように制御する。なお、所定値は、ゼロ以外の値であっても良い。
【0045】
具体的には、スイッチ制御部217は、スイッチ215aの端子bを選択し、スイッチ215bの端子dを選択し、スイッチ216aの端子fを選択し、スイッチ216bの端子hを選択する。加算器218は、蓄電デバイス5−2の所定値の充放電量のための指令値WFWrefとバッファ219を介する蓄電デバイス5−2の実際の電力量WFWとの偏差を求める。蓄電デバイス5−2の所定値の充放電量のための指令値WFWrefは、例えばゼロに設定される。
【0046】
電力制限リミッタ220は、加算器218からの偏差を所定の電力量に制限して、電力量WFWrefを加算器221,222に出力する。具体的には、電力制限リミッタ220は、蓄電デバイス5−2の所定値の充放電量と蓄電デバイス5−2の実際の充放電量との第2の偏差を、蓄電デバイス5−1の最大出力と蓄電デバイス5−1の実際の充放電量との偏差を上下限値として制限する。
【0047】
加算器221は、蓄電デバイス5−2の所定値の充放電量と蓄電デバイス5−2の実際の充放電量との偏差PFWref´を指令値WFWrefとから減算し得られた値を蓄電デバイス5−2の指令値として出力する。加算器222は、指令値PBATrefと偏差PFWref´とを加算し得られた値を蓄電デバイス5−1の指令値として出力する。
【0048】
即ち、制御回路20は、蓄電デバイス5−1と蓄電デバイス5−2間で電力を融通しあうように制御を行う。トータルの電力変動抑制に影響を与えないために、電力を融通するタイミングは、蓄電デバイス5−2の出力が無い期間に、蓄電デバイス5−2から蓄電デバイス5−1への充放電を行う。
【0049】
次にこのように構成された実施例1の複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置の動作を図1乃至図6を参照しながら詳細に説明する。ここでは、図3に示す指令生成部21、指令分離部22の動作を主に説明する。
【0050】
まず、電力演算器11により、電力変動を抑制する地点Aの電力Ppvが検出される。移動平均部211により、変動抑制指令値Pfが求められ、加算器212により、変動抑制指令値Pfと電力Ppvとの偏差である充放電指令値Pconvrefが求められる。
【0051】
次に、充放電指令値Pconvrefがリミッタ213の上下限値以下である場合には、PBATref=Pconvrefとなり、指令値PFWrefはゼロとなる。このため、スイッチ215aが端子aを選択し、スイッチ216aが端子eを選択し、小出力側の蓄電デバイス5−1側が出力され、大出力の蓄電デバイス5−2側は出力されない。
【0052】
次に、充放電指令値Pconvrefがリミッタ213の上下限値を超える場合には、PBATrefと指令値PFWrefとが出力される。これにより、小出力側の蓄電デバイス5−1側が出力されるとともに、大出力の蓄電デバイス5−2側も出力される。
【0053】
スイッチ制御部217は、ゼロでない指令値PFWrefに基づき蓄電デバイス5−2の充放電の出力が行われた場合には、電力変換器11からの系統電力の振幅値による蓄電デバイス5−2の出力が有る期間に、スイッチ215bの端子cを選択し、スイッチ216bの端子gを選択して、蓄電デバイス5−2のための指令値PFWrefを出力する。
【0054】
一方、スイッチ制御部217は、指令値PFWrefに基づき蓄電デバイス5−2の充放電の出力が行われた場合に、電力変換器11からの系統電力の振幅値による蓄電デバイス5−2の出力が無い期間には、蓄電デバイス5−2の充放電量WFWが所定値、例えばゼロになるように制御する。
【0055】
具体的には、図4(b)に示す蓄電デバイス5−2の出力が無い期間、例えば、期間T1,T2,T3において、スイッチ制御部217は、スイッチ215aの端子bを選択し、スイッチ215bの端子dを選択し、スイッチ216aの端子fを選択し、スイッチ216bの端子hを選択する。
【0056】
このとき、加算器218は、蓄電デバイス5−2の所定値の充放電量のための指令値WFWrefとバッファ219を介する蓄電デバイス5−2の実際の電力量WFWとの偏差を求める。電力制限リミッタ220は、加算器218からの偏差を所定の電力量に制限して、電力量WFWrefを加算器221,222に出力する。
【0057】
加算器221は、蓄電デバイス5−2の所定値の充放電量と蓄電デバイス5−2の実際の充放電量との偏差PFWref´を指令値PFWrefとから減算し得られた値を蓄電デバイス5−2の指令値として出力する。加算器222は、指令値PBATrefと偏差PFWref´とを加算し得られた値を蓄電デバイス5−1の指令値として出力する。
【0058】
即ち、蓄電デバイス5−2では、指令値がPFWref−PFWref´となり、充放電量が減少する。一方、蓄電デバイス5−1では、指令値がPBATref+PFWref´となり、充放電量が増加する。また、スイッチ216a,216bから出力される蓄電デバイス5−1の指令値と蓄電デバイス5−2の指令値との合計は、PBATref+PFWrefとなり、リミッタ213からの指令値PBATrefと加算器214の指令値PFWrefとの合計と同じになるので、電力系統の電力を一定値に保持することができる。
【0059】
図5は、本発明の実施例1の複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置の各蓄電デバイスの充放電パターンを示す図である。図4(a)に示す蓄電デバイス5−1の充放電量に比べて、図5(a)に示す蓄電デバイス5−1では、フライホイールFWの充放電電力を補うため、電力の変動が激しくなっている。例えば、図4(b)に示すT1、T2、T3の期間に着目し、図4(a)と図5(a)を比較すると、鉛蓄電池からフライホイールFWへの充電又は放電が行われている。これにより、鉛蓄電池の充放電電力量の偏りは大きくなるが、鉛蓄電池の容量は瞬時電力で決まるため、容量は、大きくならない。
【0060】
また、図4(b)に示す蓄電デバイス5−2の充放電量に比べて、図5(b)に示す蓄電デバイス5−2では、フライホイールFWの充放電の偏りが小さくなっている。フライホイールFWの容量は充放電電力量により決まるため、電力量の変動幅を小さくすることで容量を低減できる。
【0061】
また、図6(a)に単にリミッタ213を用いた場合のフライホイールFWの充放電電力量、図6(b)にスイッチ制御部217、加算器221,222等を設けた場合のフライホイールFWの充放電電力量を示す。図6(b)に示す電力量の変動幅ΔW2は、図6(a)に示す電力量の変動幅ΔW1よりも小さく、容量を小さくすることができる。
【0062】
このように、実施例1の複数蓄電デバイスを用いた電力変動抑制装置によれば、制御回路20は、電力演算器11からの系統電力に応じて充放電電力および回数を、蓄電デバイス5−1と蓄電デバイス5−2とのそれぞれに配分するので、蓄電デバイス5−2の充放電頻度を少なくできるため、長寿命化が実現できるとともに、蓄電デバイスの総合的なコストを低減することができる。
【0063】
また、蓄電デバイス5−1,5−2に分配される充放電指令により、蓄電デバイス5−2の出力が無い期間に、蓄電デバイス5−1と蓄電デバイス5−2との間で電力を融通し、蓄電デバイス5−2の充放電量の累積が所定値になるように制御するので、電力量の変動幅が小さくなり、小さい容量を持つ蓄電デバイス5−2を設計することができる。これにより、蓄電デバイスの総合的なコストを低減することができる。
【0064】
また、蓄電デバイス5−2から蓄電デバイス5−1への充放電を制御するので、系統の電力を一定値に保持することができる。
【0065】
また、電力制限リミッタ220は、蓄電デバイス5−2の所定値の充放電量と蓄電デバイス5−2の実際の充放電量との第2の偏差を、蓄電デバイス5−1の最大出力と蓄電デバイス5−1の実際の充放電量との偏差を上下限値として制限するので、蓄電デバイス5−1の最大出力を超えないようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、太陽光発電システム等の電力変動が大きいシステムに適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 電力系統
2 負荷
3 太陽光発電装置(PV)
4,7−1〜7−n 電力変換器
5−1〜5−n 蓄電デバイス
9 電流検出器
10 電圧検出器
11 電力演算器
12−1〜12−n 電力検出部
14−1〜14−n 電圧電流検出部
20 制御回路
21 指令値生成部
22 指令値分離部
23−1〜23−n 制御器
211 電力平準化部
212,214,218,221,222 加算器
213 リミッタ
215a,215b,216a,216b スイッチ
217 スイッチ制御部
219 バッファ
220 電力制限リミッタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6