(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るドア開閉装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1であるドア開閉装置の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1のドア開閉装置におけるサイクロイド減速機構の構成を示す分解斜視図である。
図3は、
図1のドア開閉装置におけるクラッチ機構及びブレーキ機構の構成を示す分解斜視図である。
図4は、
図1のドア開閉装置における遊星歯車機構の構成を示す分解斜視図である。
【0013】
本実施の形態のドア開閉装置は、車両のバックドアやスライドドア等を電動で開閉するためのものである。ドア開閉装置1は、
図1に示すように、モータ2と、出力軸3と、伝達機構4とを備える。また、伝達機構4は、
図1乃至
図4に示すように、サイクロイド減速機構5と、クラッチ機構6と、ブレーキ機構7と、遊星歯車機構8とを備える。
【0014】
モータ2は、ドアを開閉する動力を発生させるものであり、収容部材としての筒状のモータケース201内に図示しない回転子や電磁石等が収容されている。電磁石は、図示しない給電回路に接続している。出力軸3は、ドアを開閉する動力を出力するものであり、伝達機構4を介してモータ2の回転軸に接続している。出力軸3には、ドアを開閉するために出力する動力を、開閉部材を介してドア又は車両本体に伝達するためのレバー901(901a,901b)が取り付けられている。レバー901は、図示しない取り付け孔にワッシャー902を介在させてネジ903を挿通し、ネジ903と出力軸3の取り付け孔(図示せず)とを螺合させて取り付けている。
【0015】
伝達機構4は、モータ2の動力を出力軸3に伝達するものであり、モータ2側からサイクロイド減速機構5、クラッチ機構6、ブレーキ機構7、遊星歯車機構8の順にモータ2の回転軸の軸線方向に並んでいる。
【0016】
サイクロイド減速機構5は、モータ2から入力された動力を減速して出力する第1の減速機構であり、
図2に示すように、クランクシャフト501と、第1のプラネタリーギア502と、第2のプラネタリーギア503と、シャフト504と、プラネタリーキャリア505と、リングギア506と、第1のカバー507と、第2のカバー508とを備え、これらを収容部材としての筒状のギアケース510に収容してユニット化している。ギアケース510は、外周面に設けた固定用耳部510aとモータケース201とをネジ止めすることで、モータケース201に固定されている。
【0017】
クランクシャフト501は、モータ2からの動力を第1のプラネタリーギア502及び第2のプラネタリーギア503に伝達する回転軸である。クランクシャフト501と第1のプラネタリーギア502とは、第1のプラネタリーギア502の回転軸線がモータ2の回転軸線から偏心するよう接続している。クランクシャフト501と第2のプラネタリーギア503とは、第2のプラネタリーギア503の回転軸線がモータ2の回転軸線から偏心し、かつ偏心方向が第1のプラネタリーギア502とは異なる方向になるよう接続している。第1のプラネタリーギア502及び第2のプラネタリーギア503は、シャフト504を介してプラネタリーキャリア505に接続している。リングギア506は、第1のプラネタリーギア502及び第2のプラネタリーギア503と噛み合うギアである。第1のプラネタリーギア502、第2のプラネタリーギア503、及びプラネタリーキャリア505は、第1のカバー507及び第2のカバー508によりリングギア507との相対回転が可能な状態で保持される。この際、第2のカバー508をギアケース510に固定することで、リングギア506をギアケースに固定する。これにより、クランクシャフト501が回転すると、第1のプラネタリーギア502、第2のプラネタリーギア503、及びプラネタリーキャリア505が回転する。
【0018】
なお、このサイクロイド減速機構5は、クランクシャフト501とプラネタリーキャリア505とが同一の回転軸線で回転するよう構成している。
【0019】
クラッチ機構6は、出力軸3がモータ2に接続された状態と出力軸3がモータ2から切断された状態との切り替えを行うものであり、本実施の形態では電磁クラッチを用いている。このクラッチ機構6は、
図3に示すように、入力部材としての入力軸(図示せず)と、出力部材としての出力軸601と、電磁石部602と、連結部603と、スペーサー604とを備え、これらを収容部材としての筒状のクラッチケース610に収容してユニット化している。クラッチケース610は、外周面に設けた固定用耳部610aとサイクロイド減速機構5のギアケース510の外周面に設けた固定用耳部510aとをネジ止めすることで、ギアケース510に固定している(
図1を参照。)。この際、クラッチケース610とギアケース510との間には、ドア開閉装置1を車両本体又はドアに固定するための固定部材としてのブラケットB1を介在させている。
【0020】
クラッチ機構6の入力軸は、サイクロイド減速機構5のプラネタリーキャリア505に接続している。また、クラッチ機構6の出力軸601は、後述するブレーキ機構7のブレーキプレート703に接続している。この際、入力軸には電磁石部602を設け、出力軸601には金属材料からなる連結部603を設ける。クラッチ機構6は、電磁石部602を図示しない制御回路に接続し、制御回路から電磁石部602に電流が加えられた場合に連結部603が電磁石部602に固定されるようにする。また、電磁石部602に電流を加えていない場合には連結部603が電磁石部602から離れるようにする。これにより、ドア開閉装置1における出力軸3(クラッチ機構6の出力軸602)がモータ2に接続された状態とドア開閉装置1における出力軸3がモータ2から切断された状態とを切り替えられる。本実施の形態のドア開閉装置1では、モータ2が動作していない場合には出力軸3がサイクロイド減速機構5及びモータ2から切断された状態になり、モータ2が動作した場合に出力軸3がモータ2に接続された状態になるようクラッチ機構6を制御する。
【0021】
なお、このクラッチ機構6は、入力軸と出力軸601とが同一の回転軸線で回転するよう構成している。
【0022】
ブレーキ機構7は、開いたドアを閉位置と最大開位置との間に保持するためのものであり、本実施の形態ではスプリング式のブレーキ機構を用いている。このブレーキ機構7は、
図3に示すように、ベース701と、ブレーキブロック702と、ブレーキプレート703と、ブレーキスプリング704と、マグネットセンサー705,706とを備え、これらをベース701及び収容部材としての筒状のブレーキケース710に収容してユニット化している。ベース701及びブレーキケース710は、ベース701の外周に設けた固定用耳部701a及びブレーキケース710の外周面に設けた固定用耳部710aと、クラッチ機構6のクラッチケース610の外周面に設けた固定用耳部610b及び後述する遊星歯車機構8の第1のギアケース810の外周面に設けた固定用耳部810aとをネジ止めすることで、クラッチケース610及び第1のギアケース810に固定している(
図1を参照。)。
【0023】
ベース701はブレーキスプリング704等を収容するカバー部材であり、非動作時にはブレーキスプリング704の外径部がベース701の内径部に接触している。ブレーキスプリング704の外径部とベース701の内径部とは、これらが接触することで、開いたドアの位置を保持可能な大きさの摩擦力が生じるように構成されている。また、ブレーキブロック702は後述する遊星歯車機構8における第1のサンギア801に接続しており、ブレーキプレート703はクラッチ機構6の出力軸601に接続している。ブレーキブロック702とブレーキプレート703とは、同一の回転軸線で回転する。
【0024】
ブレーキ機構7は、モータ2を動作させるとクラッチ機構6の出力軸601に接続されたブレーキプレート703が回転し、ブレーキプレート703が回転することでブレーキブロック702が回転する。この際、ブレーキプレート703は、押圧部703a(又は703b)でブレーキスプリング704の被押圧部704a(又は704b)を押圧し、ブレーキスプリング704を径方向に縮むように変形させる。これにより、ブレーキスプリング704の外径部とベース701の内径部との摩擦力が低減するので、小さなモータ2の動力でドアを開閉させることができる。
【0025】
一方、手動でドアを開閉させる場合、ブレーキ機構7は、ブレーキブロック702が回転し、ブレーキブロック702が回転することでブレーキプレート703が回転する。この際、ブレーキブロック702は、図示しない押圧部でブレーキスプリング704の被押圧部704a(又は704b)を押圧し、ブレーキスプリング704を径方向に拡がるように変形させる。これにより、手動でドアを開閉させる場合には、ブレーキスプリング704の外径部とベース701の内径部との摩擦力が増大する。しかしながら、この摩擦力は、ドアが自重で閉方向に落下しない程度の大きさであるため、手動でドアを開閉する際の操作力が著しく重くなるようなことはない。しかも、手動でドアを開閉する際に摩擦力が働くことでドアの移動速度を抑制でき、ドアが閉位置又は最大開位置で停止する際の衝撃を小さくすることができる。
【0026】
また、マグネットセンサー705,706は、ドアの開閉状態を検出する開閉状態検出部であり、一方のマグネットセンサー705はブレーキブロック702とともに回転し、他方のマグネットセンサー706はブレーキケース710に固定されている。マグネットセンサー705,706でドアの開閉状態を検出することにより、例えばモータ2の動力でドアを開閉する際にドアが閉位置又は最大開位置に近づくとドアの移動速度を落として、ドアを閉位置又は最大開位置で停止させる際の衝撃を小さくすることができる。
【0027】
遊星歯車機構8は、クラッチ機構6及びブレーキ機構7を介してサイクロイド減速機構5から入力された動力を減速して出力する第2の減速機構であり、2段の遊星歯車機構で構成されている。この遊星歯車機構8は、
図4に示すように、第1のサンギア801と、第1のプラネタリーギア802と、第1のリングギア803と、第2のサンギア804と、第2のプラネタリーギア805と、第2のプラネタリーキャリア806とを備え、これらを第1のギアケース810、第2のギアケース811、及び終端部材812からなる筒状の収容部材に収容してユニット化している。また、終端部材812には、ドア開閉装置1を車両本体又はドアに固定するための固定部材としてのブラケットB2を取り付けている。なお、
図4では、遊星歯車機構8における上記各ギアの歯を省略している。
【0028】
第1のサンギア801は、ブレーキ機構7のブレーキブロック702と接続されるとともに、第1のプラネタリーギア802と噛み合っている。第1のプラネタリーギア802は、第1のギアケース810に回転可能に支持されている。すなわち、第1のギアケース810は第1のプラネタリーギア802に対する第1のプラネタリーキャリアとしての機能を有する。第1のリングギア803は、第1のプラネタリーギア802と噛み合っており、第1のプラネタリーギア802が自転することで回転する。第1のリングギア803には、第2のサンギア804が接続している。
【0029】
第2のサンギア804は、第1のリングギア803と接続されるとともに、第2のプラネタリーギア805と噛み合っている。第2のプラネタリーギア805は、第2のプラネタリーキャリア806に自転可能に支持されている。また、第2のプラネタリーギア805は、第2のギアケース811の内周面に設けた内歯車と噛み合っている。すなわち、第2のギアケース811は第2のプラネタリーギア805に対する第2のリングギアとしての機能を有する。また、第2のプラネタリーキャリア806にはドア開閉装置1における出力軸3が接続している。出力軸3は、ベアリング10を介して終端部材812に支持されている。
【0030】
第1のサンギア801が回転すると、第1のプラネタリーギア802が自転する。第1のプラネタリーギア802を支持する第1のギアケース810は、伝達機構4を収容する収容部材の1つであり、ブレーキケース710等を介してモータケース201に固定されている。そのため、第1のプラネタリーギア802が自転すると、第1のリングギア803及び第2のサンギア804が回転する。第2のサンギア804が回転すると、第2のプラネタリーギア805が自転する。第2のプラネタリーギア805と噛み合う第2のリングギアは第2のギアケース811に設けられている。第2のギアケース811は、伝達機構4を収容する収容部材の1つであり、第1のギアケース810等を介してモータケース201に固定されている。そのため、第2のプラネタリーギア805は自転とともに公転する。そのため、第2のサンギア801が回転すると、第2のプラネタリーキャリア806及びドア開閉装置1における出力軸3が回転する。したがって、第1のサンギア801が回転するとドア開閉装置1における出力軸3が回転する。
【0031】
なお、この遊星歯車機構8は、第1のサンギア801と第2のプラネタリーキャリア806(ドア開閉装置1における出力軸3)とが同一の回転軸線で回転するよう構成している。
【0032】
本実施の形態のドア開閉装置1では、上記のように、モータ2の動力を減速する減速機構の1つとしてサイクロイド減速機構5を用いている。そのため、ドア開閉装置1は、減速機構のすべてを遊星歯車機構で構成した場合に比べて、大きな減速比を得られるとともに、モータ2の回転軸における軸線方向及び径外方向の小型化が可能である。
【0033】
また、本実施の形態のドア開閉装置1は、電動でドアを開閉する場合にはクラッチ機構6により出力軸3とモータ2とを接続し、モータ2の動力を出力軸3に伝達する。一方、モータ2が動作していない状態で出力軸3が回転した場合には、クラッチ機構6により出力軸3をサイクロイド減速機構5及びモータ2から切断する。そのため、手動でドアを開閉して出力軸3が回転した場合、その回転がサイクロイド減速機構5に伝わらない。そのため、手動でドアを開閉する際にサイクロイド減速機構5が出力軸3の回転の抵抗にならず、手動によるドア開閉操作の操作力を軽くできる。
【0034】
なお、減速機構の1つとして減速比の大きいサイクロイド減速機構5を用いているので、クラッチ機構6とドア開閉装置1における出力軸3との間に設けた遊星歯車機構8の減速比は小さくできる。そのため、手動でドアを開閉する際の遊星歯車機能8による抵抗は小さく、手動によるドア開閉操作の操作力が重くなることを抑えられる。加えて、クラッチ機構6と出力軸3との間に遊星歯車機構8を設けたことで、遊星歯車機構8と出力軸3との間にクラッチ機構6を設けた場合に比べてクラッチ機構6の伝達力を小さくすることができる。そのため、クラッチ機構6の小型化が可能である。
【0035】
さらに、クラッチ機構6とドア開閉装置1における出力軸3との間にブレーキ機構7を設けたため、出力軸3がモータ2から切断された状態であっても、ドアを閉位置と最大開位置との間で保持することができる。加えて、クラッチ機構6とブレーキ機構7とを隣り合うように設けているので、例えばドアの自重による閉方向の力やガスステーによる開方向の力等が出力軸3に作用したときにドアの位置を保持するのに必要な保持力が小さくても、ドアの位置を保持できる。そのため、ブレーキ機構7の小型化が可能である。
【0036】
しかも、本実施の形態のドア開閉装置1は、モータ2及び伝達機構4を収容する収容部材が筒状をなし、モータ2、伝達機構4、及び出力軸3がモータ2の回転軸の軸線方向に並ぶように収容されている。そのため、ドア開閉装置1の外形が
図1に示したように棒状になっている。このような外形形状のドア開閉装置1は、車両本体やドアの隅部等の車種による寸法差が小さいスペースに設置することが容易であるため、設置位置の変更や複数車種への適用が可能であり、車両搭載性が高い。また、車両本体やドアの隅部は、金属板の曲げ加工された部分であるため、平坦な部分に比べて強度が高い。そのため、ドア開閉装置1を車両本体又はドアに設置するためのブラケットB1,B2を小型化でき、車両搭載性がさらに高くなる。
【0037】
次に、本実施の形態のドア開閉装置1の設置例を説明する。
【0038】
図5は、本実施の形態のドア開閉装置をバックドアの開閉に用いる場合の設置例を示す模式図である。
図6は、出力軸にユニバーサルジョイントを取り付けた例を示す模式図である。
図7は、出力軸にベベルギアを取り付けた例を示す模式図である。
図8は、出力軸にスピンドルを取り付けた例を示す模式図である。
【0039】
本実施の形態のドア開閉装置1は、上記のように外形が柱状になっている。そのため、ドア開閉装置1をバックドアの開閉に用いる場合、例えば、
図5に示した位置のいずれかを選択して設置することが可能である。すなわち、車両本体100における屋根の隅部や、車両最後部の屋根から車両下方に向かって延在するリアピラー(CピラーやDピラー)に、出力軸3の回転軸線が設置面に沿うように設置することが可能である。また、車両本体100における屋根の隅部に沿って設置する場合、車両本体100とバックドア101とを接続するヒンジ102の軸(ヒンジ軸)に沿った車両幅方向に限らず、車両前後方向に沿うように設置することも可能である。このようなドア開閉装置1にあっては、出力軸3を、
図1に示したレバー901以外の部材も取り付け可能な構成にしておくことが好ましい。すなわち、本実施の形態のドア開閉装置1における出力軸3は、ドアを開閉するための開閉部材や、その開閉部材と出力軸3とを連結する連結機構(レバー901等)を、選択的に取り付け可能な構成にしておくことが好ましい。
【0040】
出力軸3に、
図1に示したようなレバー901を取り付けた場合、レバー901の回転軸線は出力軸3の回転軸線と一致している。そのため、レバー901を出力軸3に取り付けたドア開閉装置1は、出力軸3の回転軸線の方向がヒンジ102の軸に沿った車両幅方向になるよう設置するのに適している。
【0041】
また、出力軸3は、レバー901の他に、
図6に示すようなユニバーサルジョイント904を取り付け可能な構成にしておくとよい。ユニバーサルジョイント904は、第1の軸接続部904a,904bと第2の軸接続部904cとを連結部材904dで連結したものである。第1の軸接続部904a,904bと第2の軸接続部904cとは、互いの回転軸線の角度θを任意の値にすることができる。そのため、ユニバーサルジョイント904を出力軸3取り付けることで、出力軸3の回転を、出力軸3の回転軸線とは異なる方向の回転軸線での回転に変換できる。また、ユニバーサルジョイント904を2つ用いることで、出力軸3の回転軸線とヒンジ軸の回転軸線とを平行でありかつ所定の距離だけ離れた関係にすることができる。そのため、ドア開閉装置1をヒンジ102の軸に沿った車両幅方向に設置する際に、出力軸3とヒンジ軸とが同一の回転軸線で回転するように設置する必要がなくなり、設置位置の自由度が高くなる。
【0042】
また、出力軸3は、
図7に示すように、軸線方向変換機構905を取り付け可能な構成にしておくとよい。軸線方向変換機構905は、第1のベベルギア905aと、第2のベベルギア905bと、回転軸905cとを備える。この軸線方向変換機構905は、第1のベベルギア905aをドア開閉装置1の出力軸3に取り付け、回転軸905cを取り付けた第2のベベルギア905bを第1のベベルギア905aと噛み合わせる。これにより、ドア開閉装置1の出力軸3が回転すると、第1のベベルギア905a及び第2のベベルギア905bを介して回転軸905cが回転する。この際、回転軸905cの回転軸線は、出力軸3の回転軸線と直交する方向に変換される。そのため、出力軸3が回転すると、回転軸905cに取り付けたレバー901は、出力軸3の回転軸線と直交する回転軸線で回転する。このような構成は、出力軸3の回転軸線の方向が車両前後方向又は車両上下方向になるように設置するのに適している。
【0043】
また、出力軸3は、
図8に示すように、運動変換機構906を取り付け可能な構成にしておくとよい。この運動変換機構906は、ドア開閉装置1の出力軸3から出力する回転運動を軸心方向に沿った直線運動に変換するものであり、スピンドル906a及びスピンドルナット906bを備える。運動変換機構906は、スピンドル906aをドア開閉装置1の出力軸3に取り付け、スピンドルナット906bをヒンジ11に取り付ける。ヒンジ11は、ヒンジ軸12により出力軸3の軸心方向と直交する方向で回転するよう支持し、ヒンジ軸12で回転することによりドア連結部11aが旋回するようにしてある。ドア開閉装置1の出力軸3及びスピンドル906aが回転すると、スピンドルナット906bがスピンドル906aの回転軸線に沿って移動し、ヒンジ11が回転する。これによりヒンジ11のドア連結部11aが旋回し、ドアが開閉される。このような構成は、出力軸3の回転軸線の方向が車両前後方向又は車両上下方向になるように設置するのに適している。
【0044】
さらに、本実施の形態のドア開閉装置は、バックドア101に限らず、車両本体100の側部に設けられるスライドドアの開閉に用いることも可能である。
【0045】
図9は、本実施の形態のドア開閉装置をスライドドアの開閉に用いる場合の設置例を示す模式図である。
図10は、
図9を車両上方側から見た場合の模式図である。
【0046】
スライドドア103は、車両本体100に設けたガイドレール104に沿って車両前後方向に移動する。本実施の形態のドア開閉装置1をスライドドアの開閉に用いる場合、例えば、
図9及び
図10に示すように、スライドドア103の内部にドア開閉装置1を設置する。ドア開閉装置1は、出力軸3の回転軸線の方向が車両上下方向になるように設置し、出力軸3には第1の回転ドラム907aを取り付ける。第1の回転ドラム907aは出力軸3の回転軸線で回転するように取り付ける。ドア開閉装置1を用いてスライドドア103を開閉するときには、第1の回転ドラム907a及び第2の回転ドラム907bにより、ガイドレール104に沿って設けられたケーブル105を巻き取る一方で送り出す。これにより、スライドドア103がガイドレール104に沿って移動する。なお、第1の回転ドラム907a及び第2の回転ドラム907bの回転軸線は、例えば上記の軸線方向変換機構905を用いて出力軸3の回転軸線と直交する方向に変換してもよい。
【0047】
このように、本実施の形態のドア開閉装置1は、ドアを開閉するための開閉部材や、その開閉部材と出力軸3とを連結する連結機構(レバー901、ユニバーサルジョイント904、軸線方向変換機構905、運動変換機構906、回転ドラム907a,907b等)を、出力軸3に選択的に取り付け可能な構成にすることで、車両搭載性がより一層高まる。
【0048】
(実施の形態2)
図11は、本発明の実施の形態2であるドア開閉装置におけるモータの回転軸とサイクロイド減速機構のクランクシャフトとの接続部の構成を示す分解斜視図である。
図12は、本実施の形態のドア開閉装置におけるサイクロイド減速機構のプラネタリーキャリアとクラッチ機構の入力軸との接続部の構成を示す分解斜視図である。
【0049】
本実施の形態では、実施の形態1のドア開閉装置1における伝達機構4を様々な要求性能に対応させるための構成について説明する。ここで様々な要求性能とは、ドア開閉装置1を適用するドアに要求される性能であり、例えば減速機構の構成、クラッチ機構6の有無、ブレーキ機構7の有無などがある。
【0050】
本実施の形態のドア開閉装置1では、伝達機構4を様々な要求性能に対応させるために、サイクロイド減速機構5、クラッチ機構6、ブレーキ機構7、及び遊星歯車機構8のユニット化された機構の組み合わせを容易に変えることができるようにする。そのため、ユニット化された機構間における出力部材と入力部材との接続形態を一致させる。例えば、
図11に示すように、サイクロイド減速機構5における入力部材であるクランクシャフト501とモータ2の回転軸202とは、クランクシャフト501に設けた嵌合凸部501aと回転軸202に設けた嵌合凹部202aとを嵌合させて接続する。また、
図12に示すように、サイクロイド減速機構5における出力部材であるプラネタリーキャリア505とクラッチ機構6における入力部材である入力軸605とは、入力軸605に設けた嵌合凸部605aとプラネタリーキャリア505の接続部505aに設けた嵌合凹部505bとを嵌合させて接続する。またこのとき、プラネタリーキャリア505の嵌合凹部505bは、クランクシャフト501に設けた嵌合凸部501aとも嵌合可能な形状にする。これにより、サイクロイド減速機構5のプラネタリーキャリア505の嵌合凹部505bと嵌合するクラッチ機構6の入力軸605の嵌合凸部605aは、モータ2の回転軸202の嵌合凹部202aとも嵌合可能となる。なお、上記の嵌合凸部と嵌合凹部とは、動力を伝達可能な態様で嵌合する形状をなす。
【0051】
同様に、クラッチ機構6における出力部材である出力軸601には、図示しないブレーキ機構7における入力部材に設けた嵌合凸部及びクラッチ機構6の入力軸605の嵌合凸部605aと嵌合可能な嵌合凹部601aを設ける。これにより、ブレーキ機構7における入力部材に設けた嵌合凸部は、サイクロイド減速機構5のプラネタリーキャリア505の嵌合凹部505b及びモータ2の回転軸202の嵌合凹部202aとも嵌合可能になる。
【0052】
このように、本実施の形態のドア開閉装置1では、ユニット化された各機構における入力部材に設けた嵌合凸部と出力部材に設けた嵌合凹部とを嵌合させて機構間を接続する。この際、ドア開閉装置1における出力軸3には、遊星歯車機構8における出力部材である第2のプラネタリーキャリア806の嵌合凹部、ブレーキ機構7における出力部材であるブレーキブロック702の嵌合凹部、クラッチ機構6における出力部材である出力軸601の嵌合凹部601a、サイクロイド減速機構5における出力部材であるプラネタリーキャリア505の嵌合凹部505b、及びモータ2の回転軸202の嵌合凹部202aのいずれとも嵌合可能な嵌合凸部が設けられる。また、ユニット化された各機構は入力部材と出力部材とが同一の回転軸線で回転するよう構成してあるとともに、入力部材の嵌合凸部と出力部材の嵌合凹部とが嵌合可能になっている。そのため、本実施の形態のドア開閉装置1では、例えばサイクロイド減速機構5、クラッチ機構6、ブレーキ機構7、及び遊星歯車機構8の並び順を容易に変えることができる。また、本実施の形態のドア開閉装置1では、伝達機構4の構成を変更すること、例えばサイクロイド減速機構5及びクラッチ機構6のみにすることなども容易になる。
【0053】
図13は、本実施の形態のドア開閉装置における収容部材の構成例を示す斜視図である。
【0054】
本実施の形態のドア開閉装置1のようにユニット化された機構を組み合わせて伝達機構4を構成する場合、機構間における入力部材と出力部材との接続形態を一致させるだけでなく、収容部材同士の接続形態も一致させることが好ましい。例えばクラッチ機構6のクラッチケース610は、
図13に示すように、外周面における出力側の端部にも固定用耳部610cを設ける。クラッチケース610の固定用耳部610cは、終端部材812の固定用耳部812aとのネジ止めが可能な態様で設ける。これにより、ドア開閉装置1の伝達機構4をサイクロイド減速機構5及びクラッチ機構6のみにすることができる。
【0055】
また、
図13に示すように、ブレーキ機構7のブレーキケース710の外周面に終端部材812の固定用耳部812aとネジ止め可能な固定用耳部710cを設ければ、伝達機構4を、サイクロイド減速機構5、クラッチ機構6、及びブレーキ機構7の3つの機構で構成することができる。さらに、図示は省略するが、遊星歯車機構8の第1のギアカバー810の外周面における入力側の端部に、クラッチ機構6のクラッチケース610の固定用耳部610cとネジ止め可能な固定用耳部を設ければ、伝達機構4を、サイクロイド減速機構5、クラッチ機構6、及び遊星歯車機構8の3つの機構で構成することができる。
【0056】
このように、モータ2と出力軸3との間にユニット化した機構を並べて伝達機構4を構成する場合、伝達機構4が備える機構の数や構成によって回転軸線方向の寸法が変わる。伝達機構4をサイクロイド減速機構5及びクラッチ機構6のみで構成した場合、ドア開閉装置1は回転軸線方向の寸法が小さくなる。このような回転軸線方向の寸法が小さいドア開閉装置1を車両本体やドアの隅部に設置する場合、終端部材812に取り付けたブラケットB2のみでも十分なことがある。その場合、サイクロイド減速機構5のギアケース510とクラッチ機構6のクラッチケース610との間にブラケットB1を介在させなくてもよい。すなわち、伝達機構4をユニット化した機構を組み合わせて構成するとともに、収容部材とは別体の固定部材(ブラケットB1,B2)を収容部材に取り付けるようにしたことで、固定部材を選択的に設けることが可能になる。
【0057】
さらに、本実施の形態のドア開閉装置1は、伝達機構4の構成に応じて回転軸線方向の寸法が変わるものの、径外方向の寸法はほとんど変わらない。そのため、
図5や
図9に示したように回転軸線が設置面に沿うようにドア開閉装置1を設置する場合、車両搭載性を損なうことなく、様々な要求性能に対応することが可能である。
【0058】
以上、本発明に係るドア開閉装置1の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に示した構成に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であることはもちろんである。
【0059】
例えば、サイクロイド減速機構5は、
図2に示したような構成に限らず、他の構成であってもよい。また、モータ2に接続する減速機構は、サイクロイド減速機構5に限らず、遊星歯車機構であってもよい。
【0060】
また、クラッチ機構6は、電磁クラッチに限らず、他の構成であってもよい。また、ブレーキ機構7は、
図7に示したようなスプリング式に限らず、他の構成であってもよい。また、遊星歯車機構8の代わりに平歯車を用いた減速機構を用いてもよい。
【0061】
さらに、実施の形態2では、ユニット化した機構における入力部材の嵌合凸部と出力部材の嵌合凹部とを嵌合させて機構同士を接続しているが、動力を伝達可能であれば、嵌合とは別の方法で接続してもよい。