(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
長距離伝送ファイバとして用いるための光ファイバの、それらの例が添付図面に示される、実施形態をここで詳細に参照する。可能であれば必ず、図面を通して同じ参照数字が同じかまたは同様の要素を指して用いられる。長距離伝送ファイバとして用いるための光ファイバの一実施形態が
図1に断面で簡略に示される。光ファイバは一般にガラスクラッド層で囲まれたガラスコアを有する。ガラスコアは一般に約6μmから約50μmの半径R
c及びガラスクラッド層に対する約0.2%から約0.5%の最大相対屈折率Δ
c最大を有する。ガラスコアの有効面積は約150μm
2以上である。ガラスコアは一般に1550nmにおいてX個のモードで光信号の伝送及び伝搬をサポートすることができ、Xは、1より大きく、110以下の整数である。ガラスクラッド層は一般にΔ
c最大>Δ
cl最大であるような最大相対屈折率Δ
cl最大を有する。光ファイバ及び光ファイバの特性が本明細書において添付図面を特に参照してさらに詳細に説明される。
【0013】
光ファイバを説明するため、以下の術語が本明細書に用いられる。
【0014】
術語「屈折率プロファイル」は、本明細書に用いられるように、屈折率または相対屈折率とファイバの半径の間の関係である。
【0015】
術語「相対屈折率」は、本明細書に用いられるように、
【数1】
【0016】
と定義される。ここでn(r)は、別途に指定されない限り、半径rにおける屈折率である。相対屈折率は、別途に指定されない限り、1550nmにおいて定められる。一態様において、基準屈折率n
基準は石英ガラスの屈折率である。別の態様において、n
基準はクラッド層の最大屈折率である。本明細書に用いられるように、別途に指定されない限り、相対屈折率はΔで表され、その値は「%」単位で与えられる。ある領域の屈折率が基準屈折率n
基準より小さい場合、相対屈折率パーセントは負であって、陥没領域または陥没屈折率を有すると称され、最小相対屈折率は、別途に指定されない限り、屈折率が最も負の点において計算される。ある領域の屈折率が基準屈折率n
基準より大きい場合、相対屈折率パーセントは正であって、その領域は隆起している、または正屈折率を有するということができる。
【0017】
術語「上げドーパント」は、本明細書に用いられるように、純粋なアンドープSiO
2に対してガラスの屈折率を上げるドーパントを指す。術語「下げドーパント」は、本明細書に用いられるように、純粋なアンドープSiO
2に対してガラスの屈折率を下げる性質を有するドーパントである。上げドーパントは、上げドーパントではない1つ以上の他のドーパントがともなう場合、負の相対屈折率を有する光ファイバの領域に存在することができる。同様に、正の相対屈折率を有する光ファイバの領域に上げドーパントではない1つ以上の他のドーパントが存在することができる。下げドーパントは、下げドーパントではない1つ以上の他のドーパントがともなう場合、正の相対屈折率を有する光ファイバの領域に存在することができる。同様に、負の相対屈折率を有する光ファイバの領域に下げドーパントではない1つ以上の他のドーパントが存在することができる。
【0018】
本明細書に用いられるように、光ファイバの「有効面積」は光が伝搬する光ファイバの面積であり、
【数2】
【0019】
と定義される。ここで、Eはファイバ内を伝搬する光に付随する電場であり、rはファイバの半径である。有効面積は、別途に指定されない限り、1550nmの波長において決定される。
【0020】
モードフィールド径(MFD)は単一モードファイバ内を伝搬している光のスポット径またはビーム幅の尺度である。モードフィールド径は、光源波長、ファイバコア半径及びファイバ屈折率プロファイルの関数である。MFDはピーターマン(Peterman)II法を用いて測定され、
【数3】
【0022】
である。ここで、Eはファイバ内の電場分布であり、rはファイバの半径である。
【0023】
あるモードのカットオフ波長は、その波長より短い波長ではそのモードの光ファイバ内の伝搬がとまる最短波長である。単一モードファイバのカットオフ波長は、光ファイバが1つの伝搬モードしかサポートしないであろう、最短波長である。単一モードファイバのカットオフ波長は高次モードの中で最長のカットオフ波長に対応する。一般に最長カットオフ波長はLP
11モードのカットオフ波長に相当する。動作波長がカットオフ波長より短ければ、多モード動作がおこり得るし、別の分散源の導入がファイバの情報搬送容量を制限し得る。数学的定義は、ヨイノーム(Jeunhomme)著,「単一モード光学(Single Mode Fiber Optics)」,(米国ニューヨーク),マーセル・デッカー(Marcel Dekker),1990年,p.39〜44に見ることができ、モード伝搬定数が外層クラッド内の平面波伝搬定数に等しくなる波長として理論ファイバカットオフが説明されている。この理論波長は直径変化がない無限長の完全に真っ直ぐなファイバについて妥当である。
【0024】
ケーブルカットオフ波長または「ケーブルカットオフ」は、EIA-455-170伝送パワーによる単一モードファイバのケーブルカットオフ波長、すなわち「FOTP-170」に説明される、22mケーブルカットオフ試験で近似され得る。ケーブルカットオフは、本明細書に説明されるように、上記の近似試験を用いて得られた値を意味する。
【0025】
本明細書に用いられるように、「少数モードファイバ」は、単一モードより多くのモードであるが通常の多モードファイバよりは少ないモードの伝搬をサポートするファイバを指す。特に、「少数モードファイバ」は、ケーブルカットオフ測定において定められるような22mより長いファイバ長においてファイバが1つより多くの伝搬モードをサポートすることを意味する。少数モードファイバは理論カットオフ波長が長いファイバを設計することによって得ることができる。
【0026】
光ファイバの曲げ耐性または曲げ性能は、規定された試験条件下でファイバを通って伝搬している光の誘起減衰によって測定することができる。本明細書に説明される光ファイバの曲げ性能は、曲げに対する光ファイバの相対耐性を比較するための、ピンアレイ曲げ試験を用いて測定されている。この試験を実施するため、本質的に誘起曲げ損失のない光ファイバについて減衰が測定される。次いで、光ファイバはピンアレイを巡って編まれ、減衰が再び測定される。一般にdB単位で表される、曲げによって誘起される減衰は2つの減衰測定値の間の差である。ピンアレイは単列に配置され、平坦面上の固定垂直位置に保持された、10本一組の円柱形ピンである。ピンの中心間隔は5mmである。ピン直径は0.67mmである。光ファイバは隣り合うピンの一方の側から他方の側へと巡らされる。試験中、光ファイバは、ファイバが接触しているピンの外周部分に光ファイバを合わせるに十分な張力の下におかれる。試験は光ファイバのマクロ曲げ耐性に関わる。
【0027】
術語「αプロファイル」または「アルファプロファイル」は、本明細書に用いられるように、rを半径として式:
【数5】
【0028】
にしたがう、「%」単位のΔを用いて表される、相対屈折率を指す。ここで、Δ
0はコアの半径であり、rはr
i≦r≦r
fの範囲にあり、Δは上で定義された通りであり、r
iはαプロファイルの始点であり、r
fはαプロファイルの終点であって、αは実数の指数である。ステップ屈折率プロファイルに対し、アルファ値は10以上である。分布屈折率プロファイルに対し、アルファ値は10より小さい。術語「放物型」は、本明細書に用いられるように、コア内の1つ以上の点において2.0のα値から若干変動し得る、実質的に放物線形状の屈折率プロファイルを、また僅かな偏差及び/または中心線ディップを有するプロファイルも、含む。
【0029】
ファイバの波長分散または分散は、材料分散、導波路分散及びモード間分散の総和である。
【0030】
本明細書で別途に指定されない限り、光ファイバの上掲の特性は1550nmにおいて測定されている。
【0031】
図1を参照すれば、本明細書に説明される1つ以上の実施形態にしたがう、光ファイバ100のガラス部分の断面が簡略に示されている。光ファイバ100は一般にクラッド層104に囲まれてクラッド層104に直に接しているコア102を有する。本明細書に図示され、説明される実施形態において、コア102及びクラッド層104は一般にシリカ、具体的には石英ガラスを含む。光ファイバ100の断面は一般にコア102の中心に関して回転対称とすることができ、コア102は半径R
cを有することができる。本明細書に説明される実施形態において、コア102の半径R
cは約6μm以上で約50μm以下である。クラッド層104はコア102を囲み、半径R
cから半径R
clまで広がり、よってクラッド層は径方向厚さT
cl=R
cl−R
cを有する。本明細書に説明されるいくつかの実施形態において、半径R
cl(すなわち光ファイバ100のガラス部分の半径)は約125μmである。しかし、クラッド層104の寸法は、半径R
clが125μmより大きくなり得るかまたは125μmより小さくなり得るように、調節され得ることは当然である。
【0032】
本明細書に説明される実施形態において、コア102はクラッド層104に対する最大相対屈折率Δ
c最大%を有し、クラッド層104は、Δ
c最大%>Δ
cl最大%であるような、純石英ガラスに対する最大相対屈折率Δ
cl最大%を有する。
【0033】
本明細書に図示され、説明される実施形態において、コア102は純石英ガラス(SiO
2)または純粋なアンドープ石英ガラスに対してガラスコアの屈折率を上げる1つ以上のドーパントを有する石英ガラスを含む。コアの屈折率を上げるに適するドーパントには、限定ではなく、GeO
2,Al
2O
3,P
2O
5,TiO
2,ZrO
2,Nb
2O
3,Ta
2O
5及び/またはこれらの組合せがある。本明細書に説明される実施形態において、コア102は、コア102の最大相対屈折率Δ
c最大%が約0.2%から約0.75%、さらに好ましくは約0.3%から約0.5%、さらに一層好ましくは約0.35%から約0.5%、最も好ましくは約0.4%から約0.5%になるような、十分な量のドーパントを含有する。
【0034】
本明細書に説明される実施形態において、コア102はステップ屈折率プロファイルまたは分布屈折率プロファイル(すなわちαプロファイル)を有することができる。例えば、一実施形態において、コア102は、
図2Aに簡略に示されるように、ステップ屈折率プロファイルを有する。これらの実施形態においてコアの半径R
cは約6μmから約16μmであり、プロファイルのα値は10以上、さらに好ましくは15以上、さらに一層好ましくは20以上である。
【0035】
他の実施形態において、コア102は、
図2Bに示されるように、1550nmの波長において、α値が1以上で10より小さく、好ましくは約1.9以上で約2.1以下、さらに好ましくは約1.97以上で約1.98以下の、アルファプロファイルをもつ分布屈折率を有することができる。コア102がアルファプロファイルを有する実施形態において、コア102の半径R
cは約12μm以上で約50μm以下である。
【0036】
図1に示される光ファイバ100の実施形態において、クラッド層104は、コア102の最大相対屈折率Δ
c最大%がクラッド層104の最大相対屈折率Δ
cl最大%より大きい限り、純石英ガラス(SiO
2)、クラッド層104が「上げドープ」されている場合のように、屈折率を上げる1つ以上のドーパント(例えば、GeO
2,Al
2O
3,P
2O
5,TiO
2,ZrO
2,Nb
2O
3及び/またはTa
2O
5)を含む石英ガラス、または内層クラッドが「下げドープ」されている場合のように、フッ素のような、屈折率を下げるドーパントを含む石英ガラスを含むことができる。例えば、一実施形態において、クラッド層は純石英ガラスである。また別の実施形態において、内層クラッドは、GeO
2,TiO
2または同様の上げドーパントで上げドープされた石英ガラスを含むことができる。
【0037】
図3及び4A〜4Bを次に参照すれば、別の実施形態の光ファイバ101が簡略に示されている。光ファイバ101は一般に、上述したように、分布屈折率プロファイルまたはステップ屈折率プロファイルをもつコア102及びクラッド層104を有する。しかし、本実施形態においては、クラッド層104が少なくとも低屈折率リング108及び外層クラッド110を有する。クラッド層104は必要に応じて、
図3に示されるように、内層クラッド106も有することができる。詳しくは、コア102が分布屈折率プロファイルを有する光ファイバ101の実施形態において、低屈折率リング108は、
図3及び4Aに示されるように、内層クラッド106によってコア102から隔てることができる。あるいは、低屈折率リング108は、
図4Bに簡略に示されるように、コア領域を囲んでコア領域に直に接することができる。同様に、コア102がステップ屈折率プロファイルを有する光ファイバ101の実施形態において、低屈折率リング108はコア102を囲んでコア102に直に接することができ(クラッド層は内層クラッドを有していない)、あるいは低屈折率リング108は、
図3に示されるように、コア102と低屈折率リングの間に配置された内層クラッド102によってコア102から隔てることができる。
【0038】
内層クラッド106は、含められている場合、コア102を囲んでコア102に直に接していて、コア102の半径R
cから半径R
icまで広がり、よって内層クラッド106は、本明細書に説明される実施形態では約1μmから約5μmの、径方向厚さT
ic=R
ic−R
cを有する。
【0039】
内層クラッド106は、純石英ガラス(SiO
2)、内層クラッド106が「上げドープ」されている場合のように、屈折率を上げる1つ以上のドーパント(例えば、GeO
2,Al
2O
3,P
2O
5,TiO
2,ZrO
2,Nb
2O
3及び/またはTa
2O
5)を含む石英ガラス、または内層クラッドが「下げドープ」されている場合のように、フッ素のような、屈折率を下げるドーパントを含む石英ガラスを含むことができる。本明細書に説明される光ファイバ101の実施形態において、内層クラッド106の相対屈折率Δ
ic%は、
図4に示されるように、コア102の最大相対屈折率Δ
c最大%より小さい。本明細書に説明される実施形態において、内層クラッドの相対屈折率Δ
ic%は約0%から約0.2%、さらに好ましくは約0%から約0.1%である。
【0040】
低屈折率リング108は、コア102を囲む、シリカベースガラスの環状領域である。低屈折リング108は、本明細書でさらに詳細に説明されるように、光ファイバ101の曲げ性能のさらなる向上に役立つ。クラッド層104が内層クラッド106を有する実施形態において、内層クラッド106はコア102と低屈折リング108の間に配置され、よって低屈折リング108はコア102から隔てられる(すなわち低屈折リング108はコア102に直に接していない)。低屈折率リング108が内層クラッド106によってコア102から隔てられ、コアがアルファプロファイルをもつ分布屈折率を有する実施形態において、コアのアルファ値は1550nmの波長において約1以上で約10より小さく、さらに好ましくは1550nmの波長において約1.9以上で約2.1以下に、さらに一層好ましくは1550nmの波長において約1.97以上で約1.98以下に、することができる。
【0041】
しかし、内層クラッドを含まずにクラッド層104が形成されている(すなわちT
ic=0の)実施形態においては、低屈折率リング108がコア102を囲んでコア102に直に接していて、コアはアルファプロファイルをもつ分布屈折率を有し、コアのアルファ値は1550nmの波長において約2.0以下、さらに好ましくは1550nmの波長において1.97以上で約1.98以下である。
【0042】
本明細書に説明される実施形態において、低屈折率リング108は半径R
icから半径R
Lまで広がり、よって低屈折率リングの径方向厚さはT
L=R
L−R
icである。しかし、T
ic=0の(すなわち光ファイバ101が内層クラッド106を含まずに形成されている)実施形態においては、径方向厚さはT
L=R
L−R
cである。一般に、低屈折率リング108の径方向厚さT
Lは約2μmから約15μmである。
【0043】
低屈折率リング108は一般に、純石英ガラスに対して低屈折率リング108の屈折率を小さくするために下げドープされた、石英ガラスを含む。例えば、低屈折率リング108は、フッ素、ホウ素及び/またはこれらの組合せで、下げドープすることができる。本明細書に説明される実施形態において、低屈折率リング108は、低屈折率リングの最小相対屈折率(Δ
L最小%)が純石英ガラスに対して約−0.1%から約−1.0%、さらに好ましくは約−0.1%から約−0.7%になるような、十分な量の下げドーパントによって形成される。
【0044】
外層クラッド110は低屈折率リング108を囲んで低屈折率リング108に直に接している。外層クラッド110は一般に半径R
Lから半径R
clまで広がり、よって外層クラッドは径方向厚さT
oc=R
cl−R
Lを有する。外層クラッド110は一般に、低屈折率リング108の相対屈折率Δ
L最小%より大きく、コア102の最大相対屈折率Δ
c最大%より小さい、純石英ガラスに対する相対屈折率Δ
oc%を有する。いくつかの実施形態においてはΔ
oc%≧Δ
ic%であり、他の実施形態においてはΔ
oc%≦Δ
ic%である。したがって、外層クラッド110は、外層クラッド110の相対屈折率Δ
oc%がコア102の最大相対屈折率Δ
c最大%より小さく、低屈折率リング108の最小相対屈折率Δ
L最小%より大きい限り、純石英ガラス(SiO
2)、外層クラッド110が「上げドープ」されている場合のように、屈折率を上げる1つ以上のドーパント(例えば、GeO
2,Al
2O
3,P
2O
5,TiO
2,ZrO
2,Nb
2O
3及び/またはTa
2O
5)を含む石英ガラス、または外層クラッドが「下げドープ」されている場合のように、フッ素のような、屈折率を下げるドーパントを含む石英ガラスを含むことができる。特例の一実施形態において、外層クラッド110は、外層クラッド110の純石英ガラスに対する相対屈折率Δ
oc%が約0.02%から約0.2%であるように、上げドープされる。
【0045】
図4Aを特に参照すれば、光ファイバの特定の一実施形態の屈折率プロファイルが図式表示されている。本実施形態において、ファイバのコアは、最大相対屈折率Δ
c最大%を有する、分布屈折率プロファイルを有する。光ファイバのクラッド層はコアの最大相対屈折率Δ
c最大%より小さい相対屈折率Δ
ic%を有する内層クラッドを含めて形成される。低屈折率リングが、内層クラッドのすぐ隣に、内層クラッドに直に接して配置される。低屈折率リングはΔ
ic%及びΔ
c最大%より小さい最小相対屈折率Δ
L最小%を有する。外層クラッドが低屈折率リングを囲んで低屈折率リングに直に接し、Δ
ic%及びΔ
L最小%より大きく、Δ
c最大%より小さい相対屈折率Δ
oc%を有する。したがって、本実施形態においてはΔ
c最大%>Δ
oc%>Δ
ic%>Δ
L最小%である。しかし、他の実施形態も可能であることは当然である。例えば、Δ
oc%をΔ
ic%と等しくすることができる。あるいはΔ
ic%をΔ
oc%より大きくすることができる。
【0046】
本明細書に説明される光ファイバの実施形態において、コア半径R
cとコアの最大相対屈折率Δ
c最大%の組合せが、光ファイバを伝搬している光信号の高次モードの理論カットオフ波長を長くする。これらの高次モードの理論カットオフ波長を長くすることには、光ファイバのコア内を伝搬することができるモードの数を増やす効果があり、この結果、光ファイバは小数モードになる(すなわち、光ファイバは、単一モードよりは多く、多モードファイバよりは少ない、モードの伝搬及び伝送をサポートする)。例えば、本明細書に説明される実施形態において、光信号のLP
11モードの理論カットオフ波長は1550nm以上であり、2000nmより長波長であることが好ましく、2500nmより長波長であることがさらに好ましい。同様に、LP
02モードの理論カットオフ波長は1100nm以上であり、1500nmより長波長であることが好ましく、1800nmより長波長であることがさらに好ましい。1550nmの波長を有する光信号のLP
12モードの理論カットオフ波長は800nm以上であり、1200nmより長波長であることが好ましく、1500nmより長波長であることがさらに好ましい。
【0047】
本明細書に説明される実施形態において、コア半径が6μmから50μmの範囲にあり、相対屈折率Δ
c最大%が約0.2%以上で約0.5%以下の、光ファイバを形成することにより、X個のモードをサポートする光ファイバが得られる。ここでXは整数である。ファイバのコア内でサポートされるスカラーモード(すなわち縮退偏波モード)の数は式:
【数6】
【0048】
によって決定することができる。ここで、R
cはコアの半径であり、n
c最大はコアの最大屈折率であり、kは波数(すなわち、2π/λ,ここでλはコア内を伝搬される光の波長である)であり、アルファはコアのアルファ値であって、Δ
c最大はコアの最大相対屈折率である。本明細書に説明される実施形態において、Xは1より大きく、110以下である。例えば、アルファ値が2でΔ
c最大が0.2〜0.5%の分布屈折率プロファイル及び約15μm〜50μmの半径を光ファイバのコアが有する実施形態において、Xは4〜110の整数をとり得る。しかし、Δ
c最大が0.2〜0.5%のステップ屈折率プロファイル及び約6μmから約16μmの半径を光ファイバのコアが有する実施形態において、Xは2〜25の整数になるであろう。
【0049】
光ファイバのコア内を伝搬し得る高次モードの数を増やすだけでなく、上に説明され、
図1及び3に示される、構造及び特性をもって形成された光ファイバは一般に、光ファイバのコアを通って伝搬される基本モードに対する、拡大された有効面積(A
有効)を有し、したがって光ファイバは一般に低められた非線形性を有する。具体的には、約6μmから約50μmの半径と、約0.2%以上で約0.5%以下の相対屈折率Δ
c最大%が組み合わさったコアにより、通常の単一モードファイバに対して光ファイバの有効面積の拡大が得られる。本明細書に説明される実施形態において、光ファイバは一般に、約150μm
2より大きく、さらに好ましくは約160μm
2より大きく、さらに一層好ましくは約170μm
2より大きい、有効面積を有する。いくつかの実施形態において、光ファイバの有効面積は約200μm
2より大きく、さらには300μm
2より大きくなり得る。また別の実施形態において、有効面積は500μm
2もの大きさにさえなり得る。
【0050】
しかし、通常の単一モードファイバとは異なり、光ファイバの有効面積の拡大に対応する光ファイバの曲げ性能の劣化が生じない。実際には、有効面積の拡大は1550nmの波長におけるピンアレイ曲げ損失の実減少をもたらす。一般に、本明細書に説明される光ファイバは、1550nmにおいて約8dBより小さく、好ましくは4dBより小さく、さらに好ましくは2dBより小さく、最も好ましくは約1dBより小さい、ピンアレイ曲げ損失を有する。
【0051】
好ましいことに、本明細書に開示される光ファイバは、13μmより大きく、好ましくは13μm以上で30μm以下の、1550nmにおけるモードフィールド径を有する。いくつかの実施形態において、モードフィールド径は、約13μmよりは大きく、約23μmよりは小さくなり得る。
【0052】
本明細書に開示される光ファイバは、1500nmにおいて約20ps/nm/km以上で約23ps/nm/km以下の波長分散及び、約0.0600ps/nm
2/km以上で約0.0700ps/nm
2/km以下、好ましくは約0.0600ps/nm
2/km以上で約0.0670ps/nm
2/km以下の、1550nmにおける分散勾配も有する。分散勾配に対する分散値の比として定義されるカッパ(κ)値は1550nmにおいて約310nmから350nmの間であることが好ましい。
【0053】
本明細書に説明される光ファイバはコアの拡大された有効面積の結果として非線形性が低められている。これらのファイバは標準的単一モードファイバに対して改善されたピンアレイ曲げ性能も示す。しかし、ステップ屈折率プロファイルを有するコアを用いる光ファイバの実施形態においては、光信号の基本モードが相異なる時間遅延をもって高次モードを励起し得る。さらに、基本モードと高次モードの間のモード転換は、雑音を増大させ、性能を劣化させる、マルチパス干渉(MPI)を生じさせ得る。原理的には、モードとMPIの間の時間遅延はデジタル信号処理を利用することで補償され得る。しかし、そのような補償手法は、デジタル信号処理を適用する前に、時間遅延及びMPIを最小限に抑えることによって改善され得る。
【0054】
図5を次に参照すれば、上述したように、アルファ値が20より小さい分布屈折率プロファイルを有するコアをもつ光ファイバを形成することによって、高次モードとMPIの間の時間遅延を減じることができる。一般に、アルファ値をステップ屈折率プロファイルから小さくすると、光ファイバ内を伝搬しているモード間の時間遅延が減少する。例えばアルファ値を約20から約3まで小さくすると、時間遅延は1/10よりも小さくなる。特に、アルファ値が1.9と2.1の間の分布屈折率を光ファイバが有する場合に、高次モード間の時間遅延を最小限に抑え得ることが判明した。例えば、
図5は、最大相対屈折率Δ
c最大%が0.35%,0.40%,0.45%及び0.50%のモデル化光ファイバについて、RMSパルス広がり(y軸)をアルファ値(x軸)の関数としてグラフで示す。RMSパルス広がりは一般にコア内を伝搬される光信号間のモード間の遅延を表す。
図5に示されるように、本明細書に説明される光ファイバは一般に、コアの最大相対屈折率Δ
c最大%が0.5%以下であり、コアのアルファ値が1.9以上で2.1以下である場合に、0.15ns/kmより小さいRMSパルス広がり値を有する。特定の一実施形態において、コアのアルファ値は約1.97と1.98の間にあり、RMSパルス広がり値は0.01ns/kmより小さい。
【0055】
図6を次に参照すれば、最大相対屈折率Δ
c最大%が0.35%,0.40%,0.45%及び0.50%であり、最適アルファ値が1.972と1.974の間にある、モデル化光ファイバについて、RMSパルス広がり(y軸)が波長(x軸)の関数として示されている。
図6に示されるように、1.5μmから1.6μm(すなわち1500nmから1600nm)の範囲内の波長に対し、RMSパルス広がりの変化は4ps/nmより小さい。RMSパルス広がりがそのように小さく、MPIが小さい光ファイバが得られる時間遅延は、WDM光通信システムにおいてデジタル信号処理を用いて容易に補償することができる。
【実施例】
【0056】
本発明は以下の実施例によってさらに明確になるであろう。
【0057】
1550nmにおける有効面積及びピンアレイ曲げ損失へのΔ
c最大%及びコア半径の変化の効果を決定するため、複数の光ファイバを数学的にモデル化した。表1はステップ屈折率プロファイルをもつ対照ファイバ及び本発明のファイバに対するデータを収める。具体的には、対照実施例C1は、コアがステップ屈折率プロファイル、0.20%のΔ
c最大%値及び6μmの半径を有する単一モードファイバであり、1550nmにおいて153.9μm
2の有効面積及び1550nmにおいて65dBのピンアレイ曲げ損失が得られた。実施例2〜8もステップ屈折率プロファイルを有するコアについてモデル化している。しかし、実施例2〜8においては、理論カットオフ波長が、Δ
c最大%を大きくし、コアの半径を変えることによって調節されている。表1に示されるように、実施例2〜8はそれぞれ少なくとも2つのモードの伝搬及び伝送をサポートし、それぞれは約150μm
2より大きく、ほとんどの場合に170μm
2より大きい、有効面積を有している。実施例2〜8のそれぞれは対照実施例C1に比較して曲げ損失のかなりの低下を示した。具体的には、実施例2〜8のそれぞれは、少なくともある程度は光ファイバの有効面積の増大により、少なくとも60dBの曲げ損失の低下を示した。
【表1】
【0058】
分布屈折率プロファイルを有するコアをもつモデル化光ファイバについても同様の傾向が見られた。詳しくは、表2は、アルファ値が2.0の分布屈折率プロファイルを有するコアについてモデル化した実施例9〜16についてのデータを収める。上述したステップ屈折率プロファイルをもつ実施例と同様、Δ
c最大%を大きくし、コアの半径を変えることによって、分布屈折率コアをもつ光ファイバの理論カットオフ波長を調節した。表2に示されるように、モデル化光ファイバのそれぞれは1550nmにおいて2つより多くのモードをサポートし、実施例16は103のモードをサポートしている。さらに、上述したステップ屈折率プロファイルをもつ実施例と同様に、実施例9〜16のそれぞれは150μm
2より大きい有効面積を有し、実施例14及び16は500μm
2をこえる有効面積を有している。さらになお、実施例9〜16のそれぞれは7dBより小さいピンアレイ曲げ損失を有し、さらに詳しくは、対照実施例C1の光ファイバのピンアレイ曲げ損失よりも少なくとも50dBは低いピンアレイ曲げ損失を有していた。
【表2】
【0059】
表3は実施例17〜22についてのデータを収める。実施例17〜22の光ファイバはアルファ値が2.0の分布屈折率コアについてモデル化した。実施例17〜22の光ファイバでは、上で
図3に示されるような、内層クラッドでコアから隔てられた低屈折率リングについてもモデル化した。コアの最大相対屈折率Δ
c最大%を0.40%から約0.75%まで変えて、コアの半径R
cを12.6μmから36.3μmまで変えた。内層クラッドの相対屈折率Δ
ic%を0.0%から−0.1%まで変えて、内層クラッドの径方向厚さを0.8μmと2.7μmの間で変えた。低屈折率リングの最小相対屈折率Δ
L最小%を約−0.3%から約−0.8%まで変え、低屈折率リングの径方向幅を4.2μmから6.6μmまで変えた。
【0060】
実施例17〜22の光ファイバは表2の光ファイバと同様の傾向を表した。詳しくは、Δ
c最大%を大きくし、コアの半径を変えることによって、分布屈折率コアをもつ光ファイバの理論カットオフ波長を調節した。表3に示されるように、モデル化光ファイバのそれぞれは1550nmの波長において2より多くのモードをサポートしている。さらに、上述したステップ屈折率プロファイルをもつ実施例と同様に、実施例17〜22のそれぞれは150μm
2より大きい有効面積を有し、実施例21及び22は200μm
2をこえる有効面積を有している。しかし、内層クラッドによってコアから隔てられた低屈折率リングの付加により、表2に報告される光ファイバに対して光ファイバのピンアレイ曲げ損失はかなり低下し、ピンアレイ曲げ損失は無視できるまでに(すなわち0に)なっている。特に、実施例17〜22は、光ファイバがコアから隔てられた低屈折率リングを有して形成された場合に、特に光ファイバのコアが約0.4%より大きな最大相対屈折率Δ
c最大%を有している場合に、光ファイバのピンアレイ曲げ損失が1dB以下にまで低められ得ることを明らかに示している。
【表3】
【0061】
表4は実施例23〜28についてのデータを示す。実施例23〜28の光ファイバは、アルファ値が2の分布屈折率コアについてモデル化した。実施例23〜28のファイバでは、上で
図4Bに示されるような、コアを囲んでコアに直接している低屈折率リングについてもモデル化した。コアの最大相対屈折率Δ
c最大%を0.20%から約070%まで変え、コアの半径R
cを13.9μmから37.3μmまで変えた。低屈折率リングの最小相対屈折率Δ
L最小%を約−0.1%から約−0.5%まで変え、低屈折率リングの径方向幅を4.7μmから11.7μmまで変えた。
【0062】
実施例23〜28の光ファイバは表3の光ファイバと同様の傾向を表した。詳しくは、Δ
c最大%を大きくし、コアの半径を変えることによって、分布屈折率コアをもつ光ファイバの理論カットオフ波長を調節した。表4に示されるように、モデル化光ファイバのそれぞれは1550nmの波長において2より多くのモードをサポートしている。さらに、上述したステップ屈折率ファイバと同様に、実施例23〜28のそれぞれは150μm
2より大きい有効面積を有し、実施例28は250μm
2をこえる有効面積を有している。しかし、低屈折率リングの付加により、光ファイバのピンアレイ曲げ損失はかなり低下した。特に、実施例24〜28は、光ファイバが低屈折率リングを有して形成された場合に、光ファイバのピンアレイ曲げ損失が1dB以下にまで低められ得ることを明らかに示している。
【表4】
【0063】
本明細書に説明される光ファイバが拡大された有効面積及び低められたピンアレイ曲げ損失を有し、これらはいずれもファイバ内を伝搬する光信号の高次モード理論カットオフ波長を長くすることによって達成されることが、今では理解されるはずである。したがって、本明細書に説明される光ファイバが光信号の1つより多くのモードの伝搬及び伝送をサポートすることは当然である。さらに、有効面積の拡大により光ファイバの非線形性が低められ、よって長距離光通信システムにおける光ファイバの性能が向上する。
【0064】
分布屈折率プロファイルを有するコアをもつ、本明細書に説明される光ファイバが、光ファイバのコア内を伝搬している光信号の高次モード間の時間遅延を最小限に抑えるために用いられ得ることも当然である。さらに、コアから隔てられた低屈折率リングをもつ光ファイバを形成することでファイバのピンアレイ曲げ損失がかなり改善され、よってファイバの伝送性能が改善される。そのような光ファイバは、光ファイバにおける最小限に抑えられた時間遅延を補償するためにデジタル信号処理を容易に用いることができるWDM通信システムに用いるに適している。
【0065】
特許請求される主題の精神及び範囲を逸脱することなく本明細書に説明される実施形態に様々な改変及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書に説明される実施形態の改変及び変形が添付される特許請求項及びそれらの等価形態の範囲内に入れば、本明細書はそのような改変及び変形を包含するとされる。