特許第6149295号(P6149295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149295
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】大有効面積光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/028 20060101AFI20170612BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   G02B6/028
   G02B6/036
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-511449(P2014-511449)
(86)(22)【出願日】2012年5月15日
(65)【公表番号】特表2014-517343(P2014-517343A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】US2012037887
(87)【国際公開番号】WO2012158667
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年5月12日
(31)【優先権主張番号】61/487,351
(32)【優先日】2011年5月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミンジュン
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−515949(JP,A)
【文献】 特開昭55−021093(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/065499(WO,A1)
【文献】 特開2012−063697(JP,A)
【文献】 特開2006−078543(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/161811(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02− 6/036
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスコア及び前記ガラスコアを囲んで前記ガラスコアに直に接しているガラスクラッド層を有する光ファイバにおいて、
前記ガラスコアが、
約16μm<R<50μmの、半径R
1550nmの波長においてアルファ値が約1.0以上で約10より小さい分布屈折率プロファイル、
前記ガラスクラッド層に対する約0.2%から約0.75%の最大相対屈折率Δc最大%、及び
約150μm以上の有効面積、
を有し、
前記ガラスコアは1550nmの波長においてX個のモードで光信号の伝搬及び伝送をサポートする、ここでXは1より大きく、110以下の整数である、
及び
前記ガラスクラッド層が、Δc最大%>Δcl最大%であるような、最大相対屈折率Δcl最大%を有する、及び
前記光ファイバが1550nmの波長において約0.15ns/km以下のRMSパルス広がりを有し、ここで前記RMSパルス広がりとは、前記ガラスコア内を伝搬する前記光信号の前記X個のモード間の遅延である
ことを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
ガラスコア及び前記ガラスコアを囲んで前記ガラスコアに直に接しているガラスクラッド層を有する光ファイバにおいて、
前記ガラスコアが、
約12μmから約50μmの半径R
1550nmの波長においてアルファ値が約1.0以上で約10より小さい分布屈折率プロファイル、
前記ガラスクラッド層に対する約0.2%から約0.75%の最大相対屈折率Δc最大%、及び
約150μm以上の有効面積、
を有し、
前記ガラスコアは1550nmの波長においてX個のモードで光信号の伝搬及び伝送をサポートする、ここでXは1より大きく、110以下の整数である、
及び
前記ガラスクラッド層が、Δc最大%>Δcl最大%であるような最大相対屈折率Δcl最大%を有し、ΔL最小%<Δcl最大%であるような相対屈折率ΔL最小%をもつ低屈折率リングを含み、
前記光ファイバが1550nmの波長において約0.15ns/km以下のRMSパルス広がりを有し、ここで前記RMSパルス広がりとは、前記ガラスコア内を伝搬する前記光信号の前記X個のモード間の遅延である
ことを特徴とする光ファイバ。
【請求項3】
ガラスコア及び前記ガラスコアを囲んで前記ガラスコアに直に接しているガラスクラッド層を有する光ファイバにおいて、
前記ガラスコアが、
約12μmから約50μmの半径R
1550nmの波長においてアルファ値が約2.0以下の分布屈折率プロファイル、
前記ガラスクラッド層の外層クラッドに対する約0.2%から約0.75%の最大相対屈折率Δc最大%、及び
150μm以上の有効面積、
を有し、
前記ガラスコアは1550nmの波長においてX個のモードで光信号の伝搬及び伝送をサポートする、ここでXは1より大きく、110以下の整数である、
及び
前記ガラスクラッド層が、
前記ガラスコアを囲んで前記ガラスコアに直に接している内層クラッドであって、Δc最大%>Δic%であるような、相対屈折率Δic%を有する内層クラッド、
前記内層クラッドを囲んで前記内層クラッドに直に接している低屈折率リング、及び
前記低屈折リングを囲んで前記低屈折率リングに直に接している前記外層クラッド、
を有し、
前記低屈折リングが前記外層クラッドに対する最小相対屈折率ΔL最小%を有し、
前記外層クラッドが、Δc最大%>Δoc最大%>ΔL最小%であるような、純石英ガラスに対する最大相対屈折率Δoc最大%を有し、
前記光ファイバが1550nmの波長において約0.15ns/km以下のRMSパルス広がりを有し、ここで前記RMSパルス広がりとは、前記ガラスコア内を伝搬する前記光信号の前記X個のモード間の遅延である
ことを特徴とする光ファイバ。
【請求項4】
ガラスコア及び前記ガラスコアを囲んで前記ガラスコアに直に接しているガラスクラッド層を有する光ファイバにおいて、
前記ガラスコアが、
約6μmから約16μmの半径R
前記ガラスクラッド層に対する約0.2%から約0.5%の最大相対屈折率Δc最大%、
1550nmの波長においてアルファ値が10以上のステップ屈折率プロファイル、及び
約150μm以上の有効面積、
を有し、
前記ガラスコアは1550nmの波長においてX個のモードで光信号の伝搬及び伝送をサポートする、ここでXは1より大きく、25以下の整数である、
前記光ファイバの理論カットオフ波長は前記光信号のLP11モードに対して1500nm以上である、
及び
前記ガラスクラッド層が、
Δc最大%>Δcl最大%であるような、最大相対屈折率Δcl最大%、
前記ガラスコアを囲む低屈折率リング、及び
前記低屈折率リングを囲んで前記低屈折率リングに直に接している外層クラッド、
を有し、
前記低屈折率リングは前記外層クラッドに対する最小相対屈折率ΔL最小%を有し、
前記外層クラッドが、Δc最大%>Δoc最大%>ΔL最小%であるような、純石英ガラスに対する最大相対屈折率Δoc最大%を有し、
前記光ファイバが1550nmの波長において約0.15ns/km以下のRMSパルス広がりを有し、ここで前記RMSパルス広がりとは、前記ガラスコア内を伝搬する前記光信号の前記X個のモード間の遅延である、
ことを特徴とする光ファイバ。
【請求項5】
前記ガラスコアの前記有効面積が約200μm以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記アルファ値が1550nmの波長において約1.9以上で約2.1以下であることを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記光ファイバが1550nmの波長において1dB以下のピンアレイ曲げ損失を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項8】
1550nmの波長において前記アルファ値が約1.9以上で約2.1以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は2011年5月18日に出願された米国仮特許出願第61/487351号の下の優先権の恩典を主張する。本明細書は上記特許出願の明細書の内容に依存し、その明細書の内容は全体が本明細書に参照として含められる。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、全般に光ファイバに関し、さらに詳しくは、大有効面積を有し、非線形性が低められた、光ファイバに関する。
【背景技術】
【0003】
長距離にわたる大パワー伝送を提供する光遠距離通信システムには一般に光増幅器技術及び波長分割多重(WDM)技術が用いられる。大パワー及び長距離の定義は、ビットレート、ビットエラーレート、多重化方式及び、おそらく、光増幅器が指定されている、特定の遠距離通信システムの文脈においてのみ有意である。一般に、ファイバ非線形性がそのような高速長距離WDM遠距離通信システムに対する基本的制限要因である。例えば、いくつかの用途において、光ファイバ内を伝搬される1mW以下の単一パワーレベルは、自己位相変調、4光波混合、相互位相変調及び非線形散乱過程を含む、非線形効果に敏感であり得る。これらの非線形効果のそれぞれはWDM遠距離通信システム内を伝搬している光信号の劣化を引きおこし得る。
【0004】
ファイバの非線形性は、光ファイバのパワー密度が光ファイバの有効面積に反比例するから、有効面積を大きくすることで低めることができる。しかし、光ファイバの有効面積の増大は一般に(マイクロ及びマクロの両方の)誘起曲げ損失を増大させ、この結果、光ファイバ内を伝搬している光信号の減衰を増大させる。したがって、ファイバの有効面積を大きくすることによって従来の単一モード伝送光ファイバの非線形性を低めることができる能力は、ファイバ内を伝搬している光信号の基本モードに対する曲げ損失の対応する増大によって制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、非線形性が低められ、かつ曲げ損失が減じられる、伝送光ファイバのための別の設計が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態にしたがえば、光ファイバはガラスコア及びガラスコアを囲んでガラスコアに直に接しているガラスクラッド層を有することができる。ガラスコアは約12μmから約50μmの半径R(例えば、16μm<R<50μm)及び1550nmの波長においてアルファ値が約1.0以上で約10未満の分布屈折率プロファイルを有することができる。ガラスクラッド層に対するコアの最大相対屈折率Δc最大%は約0.2%から約0.75%とすることができる。コアの有効面積は約150μm以上とすることができる。ガラスコアは1550nmの波長においてX個のモードで光信号の伝搬及び伝送をサポートすることができる。ここで、Xは1より大きく、110以下の整数である。ガラスクラッド層は、Δc最大%>Δcl最大%であるような、最大相対屈折率Δcl最大%を有することができ、光ファイバは1550nmの波長において約0.15ns/km以下のRMSパルス広がりを有する。
【0007】
別の実施形態において、光ファイバはガラスコア及びガラスコアを囲んでガラスコアに直に接しているガラスクラッド層を有する。ガラスコアは約12μmから約50μmの半径R(例えば、16μm<R<50μm)及びアルファ値が1550nmの波長において約1.9以上で約2.1以下の分布屈折率プロファイルを有することができる。ガラスクラッド層の外層クラッドに対するコアの最大相対屈折率Δc最大%は約0.2%から約0.75%とすることができる。コアの有効面積は約150μm以上とすることができる。ガラスコアは1550nmの波長においてX個のモードで光信号の伝搬及び伝送をサポートすることができる。ここで、Xは1より大きく、110以下の整数である。ガラスクラッド層はガラスコアを囲んでガラスコアに直に接している内層クラッドを有する。内層クラッドはΔc最大%>Δic最大%であるような相対屈折率Δic%を有することができる。低屈折率リングが内層クラッドを囲んで内層クラッドに直に接することができる。外層クラッドが低屈折率リングを囲んで低屈折率リングに直に接することができる。低屈折率リングは外層クラッドに対する最小相対屈折率ΔL最小%を有し、外層クラッドは、Δc最大%>Δoc最大%>ΔL最小%であるような純石英ガラスに対する最大相対屈折率Δoc最大%を有する。光ファイバは、1550nmの波長において約0.15ns/km以下のRMSパルス広がりを有する。
【0008】
また別の実施形態において、光ファイバはガラスコア及び、ガラスコアを囲んでガラスコアに直に接している、ガラスクラッド層を有する。ガラスコアは、約6μmから約16μmの半径Rを有することができる。コアの最大相対屈折率Δc最大%はガラスクラッド層に対して約0.2%から約0.5%とすることができる。コアは1550nmの波長においてアルファ値が10以上のステップ屈折率プロファイルを有することができる。コアの有効面積は約150μm以上とすることができ、ガラスコアは1550nm以上の波長においてX個のモードで光信号の伝搬及び伝送をサポートすることができる。ここで、Xは1より大きく、25以下である。光ファイバの理論カットオフ波長は光信号のLP11モードに対して1550nm以上である。ガラスクラッド層は、Δc最大%>Δcl最大%であるような最大相対屈折率Δcl最大%を有することができる。本実施形態の光ファイバのガラスクラッド層は必要に応じて低屈折率リングも有することができる。
【0009】
本発明のさらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者にはその説明から容易に明らかであろうし、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を、また添付図面も、含む本明細書に説明される実施形態を実施することによって認められるであろう。
【0010】
上述の全般的説明及び以下の詳細な説明がいずれも様々な実施形態を説明し。特許請求される主題の本質及び特質を理解するための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。添付図面は様々な実施形態のさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み入れられて本明細書の一部をなす。図面は本明細書に説明される様々な実施形態を示し、記述とともに、特許請求される主題の原理及び動作の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本明細書に説明される1つ以上の実施形態にしたがう、光ファイバの断面を簡略に示す。
図2A図2Aは、本明細書に示され、説明される、1つ以上の実施形態にしたがう、図1の光ファイバの相対屈折率プロファイルを簡略に示す。
図2B図2Bは、本明細書に示され、説明される、1つ以上の実施形態にしたがう、図1の光ファイバの別の相対屈折率プロファイルを簡略に示す。
図3図3は、本明細書に説明される1つ以上の実施形態にしたがう、光ファイバの断面を簡略に示す。
図4A図4Aは、本明細書に示され、説明される、1つ以上の実施形態にしたがう、低屈折率リングをもつ光ファイバの相対屈折率プロファイルを簡略に示す。
図4B図4Bは、本明細書に示され、説明される、1つ以上の実施形態にしたがう、低屈折率リングをもつ光ファイバの相対屈折率プロファイルを簡略に示す。
図5図5は、1550nmの波長におけるΔc最大%値が異なる様々な光ファイバについて、パルス広がり(y軸)をアルファ値(x軸)の関数としてグラフで示す。
図6図6は、Δc最大%値が異なる光ファイバについて、パルス広がり(y軸)を波長(x軸)の関数としてグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
長距離伝送ファイバとして用いるための光ファイバの、それらの例が添付図面に示される、実施形態をここで詳細に参照する。可能であれば必ず、図面を通して同じ参照数字が同じかまたは同様の要素を指して用いられる。長距離伝送ファイバとして用いるための光ファイバの一実施形態が図1に断面で簡略に示される。光ファイバは一般にガラスクラッド層で囲まれたガラスコアを有する。ガラスコアは一般に約6μmから約50μmの半径R及びガラスクラッド層に対する約0.2%から約0.5%の最大相対屈折率Δc最大を有する。ガラスコアの有効面積は約150μm以上である。ガラスコアは一般に1550nmにおいてX個のモードで光信号の伝送及び伝搬をサポートすることができ、Xは、1より大きく、110以下の整数である。ガラスクラッド層は一般にΔc最大>Δcl最大であるような最大相対屈折率Δcl最大を有する。光ファイバ及び光ファイバの特性が本明細書において添付図面を特に参照してさらに詳細に説明される。
【0013】
光ファイバを説明するため、以下の術語が本明細書に用いられる。
【0014】
術語「屈折率プロファイル」は、本明細書に用いられるように、屈折率または相対屈折率とファイバの半径の間の関係である。
【0015】
術語「相対屈折率」は、本明細書に用いられるように、
【数1】
【0016】
と定義される。ここでn(r)は、別途に指定されない限り、半径rにおける屈折率である。相対屈折率は、別途に指定されない限り、1550nmにおいて定められる。一態様において、基準屈折率n基準は石英ガラスの屈折率である。別の態様において、n基準はクラッド層の最大屈折率である。本明細書に用いられるように、別途に指定されない限り、相対屈折率はΔで表され、その値は「%」単位で与えられる。ある領域の屈折率が基準屈折率n基準より小さい場合、相対屈折率パーセントは負であって、陥没領域または陥没屈折率を有すると称され、最小相対屈折率は、別途に指定されない限り、屈折率が最も負の点において計算される。ある領域の屈折率が基準屈折率n基準より大きい場合、相対屈折率パーセントは正であって、その領域は隆起している、または正屈折率を有するということができる。
【0017】
術語「上げドーパント」は、本明細書に用いられるように、純粋なアンドープSiOに対してガラスの屈折率を上げるドーパントを指す。術語「下げドーパント」は、本明細書に用いられるように、純粋なアンドープSiOに対してガラスの屈折率を下げる性質を有するドーパントである。上げドーパントは、上げドーパントではない1つ以上の他のドーパントがともなう場合、負の相対屈折率を有する光ファイバの領域に存在することができる。同様に、正の相対屈折率を有する光ファイバの領域に上げドーパントではない1つ以上の他のドーパントが存在することができる。下げドーパントは、下げドーパントではない1つ以上の他のドーパントがともなう場合、正の相対屈折率を有する光ファイバの領域に存在することができる。同様に、負の相対屈折率を有する光ファイバの領域に下げドーパントではない1つ以上の他のドーパントが存在することができる。
【0018】
本明細書に用いられるように、光ファイバの「有効面積」は光が伝搬する光ファイバの面積であり、
【数2】
【0019】
と定義される。ここで、Eはファイバ内を伝搬する光に付随する電場であり、rはファイバの半径である。有効面積は、別途に指定されない限り、1550nmの波長において決定される。
【0020】
モードフィールド径(MFD)は単一モードファイバ内を伝搬している光のスポット径またはビーム幅の尺度である。モードフィールド径は、光源波長、ファイバコア半径及びファイバ屈折率プロファイルの関数である。MFDはピーターマン(Peterman)II法を用いて測定され、
【数3】
【0021】
及び
【数4】
【0022】
である。ここで、Eはファイバ内の電場分布であり、rはファイバの半径である。
【0023】
あるモードのカットオフ波長は、その波長より短い波長ではそのモードの光ファイバ内の伝搬がとまる最短波長である。単一モードファイバのカットオフ波長は、光ファイバが1つの伝搬モードしかサポートしないであろう、最短波長である。単一モードファイバのカットオフ波長は高次モードの中で最長のカットオフ波長に対応する。一般に最長カットオフ波長はLP11モードのカットオフ波長に相当する。動作波長がカットオフ波長より短ければ、多モード動作がおこり得るし、別の分散源の導入がファイバの情報搬送容量を制限し得る。数学的定義は、ヨイノーム(Jeunhomme)著,「単一モード光学(Single Mode Fiber Optics)」,(米国ニューヨーク),マーセル・デッカー(Marcel Dekker),1990年,p.39〜44に見ることができ、モード伝搬定数が外層クラッド内の平面波伝搬定数に等しくなる波長として理論ファイバカットオフが説明されている。この理論波長は直径変化がない無限長の完全に真っ直ぐなファイバについて妥当である。
【0024】
ケーブルカットオフ波長または「ケーブルカットオフ」は、EIA-455-170伝送パワーによる単一モードファイバのケーブルカットオフ波長、すなわち「FOTP-170」に説明される、22mケーブルカットオフ試験で近似され得る。ケーブルカットオフは、本明細書に説明されるように、上記の近似試験を用いて得られた値を意味する。
【0025】
本明細書に用いられるように、「少数モードファイバ」は、単一モードより多くのモードであるが通常の多モードファイバよりは少ないモードの伝搬をサポートするファイバを指す。特に、「少数モードファイバ」は、ケーブルカットオフ測定において定められるような22mより長いファイバ長においてファイバが1つより多くの伝搬モードをサポートすることを意味する。少数モードファイバは理論カットオフ波長が長いファイバを設計することによって得ることができる。
【0026】
光ファイバの曲げ耐性または曲げ性能は、規定された試験条件下でファイバを通って伝搬している光の誘起減衰によって測定することができる。本明細書に説明される光ファイバの曲げ性能は、曲げに対する光ファイバの相対耐性を比較するための、ピンアレイ曲げ試験を用いて測定されている。この試験を実施するため、本質的に誘起曲げ損失のない光ファイバについて減衰が測定される。次いで、光ファイバはピンアレイを巡って編まれ、減衰が再び測定される。一般にdB単位で表される、曲げによって誘起される減衰は2つの減衰測定値の間の差である。ピンアレイは単列に配置され、平坦面上の固定垂直位置に保持された、10本一組の円柱形ピンである。ピンの中心間隔は5mmである。ピン直径は0.67mmである。光ファイバは隣り合うピンの一方の側から他方の側へと巡らされる。試験中、光ファイバは、ファイバが接触しているピンの外周部分に光ファイバを合わせるに十分な張力の下におかれる。試験は光ファイバのマクロ曲げ耐性に関わる。
【0027】
術語「αプロファイル」または「アルファプロファイル」は、本明細書に用いられるように、rを半径として式:
【数5】
【0028】
にしたがう、「%」単位のΔを用いて表される、相対屈折率を指す。ここで、Δはコアの半径であり、rはr≦r≦rの範囲にあり、Δは上で定義された通りであり、rはαプロファイルの始点であり、rはαプロファイルの終点であって、αは実数の指数である。ステップ屈折率プロファイルに対し、アルファ値は10以上である。分布屈折率プロファイルに対し、アルファ値は10より小さい。術語「放物型」は、本明細書に用いられるように、コア内の1つ以上の点において2.0のα値から若干変動し得る、実質的に放物線形状の屈折率プロファイルを、また僅かな偏差及び/または中心線ディップを有するプロファイルも、含む。
【0029】
ファイバの波長分散または分散は、材料分散、導波路分散及びモード間分散の総和である。
【0030】
本明細書で別途に指定されない限り、光ファイバの上掲の特性は1550nmにおいて測定されている。
【0031】
図1を参照すれば、本明細書に説明される1つ以上の実施形態にしたがう、光ファイバ100のガラス部分の断面が簡略に示されている。光ファイバ100は一般にクラッド層104に囲まれてクラッド層104に直に接しているコア102を有する。本明細書に図示され、説明される実施形態において、コア102及びクラッド層104は一般にシリカ、具体的には石英ガラスを含む。光ファイバ100の断面は一般にコア102の中心に関して回転対称とすることができ、コア102は半径Rを有することができる。本明細書に説明される実施形態において、コア102の半径Rは約6μm以上で約50μm以下である。クラッド層104はコア102を囲み、半径Rから半径Rclまで広がり、よってクラッド層は径方向厚さTcl=Rcl−Rを有する。本明細書に説明されるいくつかの実施形態において、半径Rcl(すなわち光ファイバ100のガラス部分の半径)は約125μmである。しかし、クラッド層104の寸法は、半径Rclが125μmより大きくなり得るかまたは125μmより小さくなり得るように、調節され得ることは当然である。
【0032】
本明細書に説明される実施形態において、コア102はクラッド層104に対する最大相対屈折率Δc最大%を有し、クラッド層104は、Δc最大%>Δcl最大%であるような、純石英ガラスに対する最大相対屈折率Δcl最大%を有する。
【0033】
本明細書に図示され、説明される実施形態において、コア102は純石英ガラス(SiO)または純粋なアンドープ石英ガラスに対してガラスコアの屈折率を上げる1つ以上のドーパントを有する石英ガラスを含む。コアの屈折率を上げるに適するドーパントには、限定ではなく、GeO,Al,P,TiO,ZrO,Nb,Ta及び/またはこれらの組合せがある。本明細書に説明される実施形態において、コア102は、コア102の最大相対屈折率Δc最大%が約0.2%から約0.75%、さらに好ましくは約0.3%から約0.5%、さらに一層好ましくは約0.35%から約0.5%、最も好ましくは約0.4%から約0.5%になるような、十分な量のドーパントを含有する。
【0034】
本明細書に説明される実施形態において、コア102はステップ屈折率プロファイルまたは分布屈折率プロファイル(すなわちαプロファイル)を有することができる。例えば、一実施形態において、コア102は、図2Aに簡略に示されるように、ステップ屈折率プロファイルを有する。これらの実施形態においてコアの半径Rは約6μmから約16μmであり、プロファイルのα値は10以上、さらに好ましくは15以上、さらに一層好ましくは20以上である。
【0035】
他の実施形態において、コア102は、図2Bに示されるように、1550nmの波長において、α値が1以上で10より小さく、好ましくは約1.9以上で約2.1以下、さらに好ましくは約1.97以上で約1.98以下の、アルファプロファイルをもつ分布屈折率を有することができる。コア102がアルファプロファイルを有する実施形態において、コア102の半径Rは約12μm以上で約50μm以下である。
【0036】
図1に示される光ファイバ100の実施形態において、クラッド層104は、コア102の最大相対屈折率Δc最大%がクラッド層104の最大相対屈折率Δcl最大%より大きい限り、純石英ガラス(SiO)、クラッド層104が「上げドープ」されている場合のように、屈折率を上げる1つ以上のドーパント(例えば、GeO,Al,P,TiO,ZrO,Nb及び/またはTa)を含む石英ガラス、または内層クラッドが「下げドープ」されている場合のように、フッ素のような、屈折率を下げるドーパントを含む石英ガラスを含むことができる。例えば、一実施形態において、クラッド層は純石英ガラスである。また別の実施形態において、内層クラッドは、GeO,TiOまたは同様の上げドーパントで上げドープされた石英ガラスを含むことができる。
【0037】
図3及び4A〜4Bを次に参照すれば、別の実施形態の光ファイバ101が簡略に示されている。光ファイバ101は一般に、上述したように、分布屈折率プロファイルまたはステップ屈折率プロファイルをもつコア102及びクラッド層104を有する。しかし、本実施形態においては、クラッド層104が少なくとも低屈折率リング108及び外層クラッド110を有する。クラッド層104は必要に応じて、図3に示されるように、内層クラッド106も有することができる。詳しくは、コア102が分布屈折率プロファイルを有する光ファイバ101の実施形態において、低屈折率リング108は、図3及び4Aに示されるように、内層クラッド106によってコア102から隔てることができる。あるいは、低屈折率リング108は、図4Bに簡略に示されるように、コア領域を囲んでコア領域に直に接することができる。同様に、コア102がステップ屈折率プロファイルを有する光ファイバ101の実施形態において、低屈折率リング108はコア102を囲んでコア102に直に接することができ(クラッド層は内層クラッドを有していない)、あるいは低屈折率リング108は、図3に示されるように、コア102と低屈折率リングの間に配置された内層クラッド102によってコア102から隔てることができる。
【0038】
内層クラッド106は、含められている場合、コア102を囲んでコア102に直に接していて、コア102の半径Rから半径Ricまで広がり、よって内層クラッド106は、本明細書に説明される実施形態では約1μmから約5μmの、径方向厚さTic=Ric−Rを有する。
【0039】
内層クラッド106は、純石英ガラス(SiO)、内層クラッド106が「上げドープ」されている場合のように、屈折率を上げる1つ以上のドーパント(例えば、GeO,Al,P,TiO,ZrO,Nb及び/またはTa)を含む石英ガラス、または内層クラッドが「下げドープ」されている場合のように、フッ素のような、屈折率を下げるドーパントを含む石英ガラスを含むことができる。本明細書に説明される光ファイバ101の実施形態において、内層クラッド106の相対屈折率Δic%は、図4に示されるように、コア102の最大相対屈折率Δc最大%より小さい。本明細書に説明される実施形態において、内層クラッドの相対屈折率Δic%は約0%から約0.2%、さらに好ましくは約0%から約0.1%である。
【0040】
低屈折率リング108は、コア102を囲む、シリカベースガラスの環状領域である。低屈折リング108は、本明細書でさらに詳細に説明されるように、光ファイバ101の曲げ性能のさらなる向上に役立つ。クラッド層104が内層クラッド106を有する実施形態において、内層クラッド106はコア102と低屈折リング108の間に配置され、よって低屈折リング108はコア102から隔てられる(すなわち低屈折リング108はコア102に直に接していない)。低屈折率リング108が内層クラッド106によってコア102から隔てられ、コアがアルファプロファイルをもつ分布屈折率を有する実施形態において、コアのアルファ値は1550nmの波長において約1以上で約10より小さく、さらに好ましくは1550nmの波長において約1.9以上で約2.1以下に、さらに一層好ましくは1550nmの波長において約1.97以上で約1.98以下に、することができる。
【0041】
しかし、内層クラッドを含まずにクラッド層104が形成されている(すなわちTic=0の)実施形態においては、低屈折率リング108がコア102を囲んでコア102に直に接していて、コアはアルファプロファイルをもつ分布屈折率を有し、コアのアルファ値は1550nmの波長において約2.0以下、さらに好ましくは1550nmの波長において1.97以上で約1.98以下である。
【0042】
本明細書に説明される実施形態において、低屈折率リング108は半径Ricから半径Rまで広がり、よって低屈折率リングの径方向厚さはT=R−Ricである。しかし、Tic=0の(すなわち光ファイバ101が内層クラッド106を含まずに形成されている)実施形態においては、径方向厚さはT=R−Rである。一般に、低屈折率リング108の径方向厚さTは約2μmから約15μmである。
【0043】
低屈折率リング108は一般に、純石英ガラスに対して低屈折率リング108の屈折率を小さくするために下げドープされた、石英ガラスを含む。例えば、低屈折率リング108は、フッ素、ホウ素及び/またはこれらの組合せで、下げドープすることができる。本明細書に説明される実施形態において、低屈折率リング108は、低屈折率リングの最小相対屈折率(ΔL最小%)が純石英ガラスに対して約−0.1%から約−1.0%、さらに好ましくは約−0.1%から約−0.7%になるような、十分な量の下げドーパントによって形成される。
【0044】
外層クラッド110は低屈折率リング108を囲んで低屈折率リング108に直に接している。外層クラッド110は一般に半径Rから半径Rclまで広がり、よって外層クラッドは径方向厚さToc=Rcl−Rを有する。外層クラッド110は一般に、低屈折率リング108の相対屈折率ΔL最小%より大きく、コア102の最大相対屈折率Δc最大%より小さい、純石英ガラスに対する相対屈折率Δoc%を有する。いくつかの実施形態においてはΔoc%≧Δic%であり、他の実施形態においてはΔoc%≦Δic%である。したがって、外層クラッド110は、外層クラッド110の相対屈折率Δoc%がコア102の最大相対屈折率Δc最大%より小さく、低屈折率リング108の最小相対屈折率ΔL最小%より大きい限り、純石英ガラス(SiO)、外層クラッド110が「上げドープ」されている場合のように、屈折率を上げる1つ以上のドーパント(例えば、GeO,Al,P,TiO,ZrO,Nb及び/またはTa)を含む石英ガラス、または外層クラッドが「下げドープ」されている場合のように、フッ素のような、屈折率を下げるドーパントを含む石英ガラスを含むことができる。特例の一実施形態において、外層クラッド110は、外層クラッド110の純石英ガラスに対する相対屈折率Δoc%が約0.02%から約0.2%であるように、上げドープされる。
【0045】
図4Aを特に参照すれば、光ファイバの特定の一実施形態の屈折率プロファイルが図式表示されている。本実施形態において、ファイバのコアは、最大相対屈折率Δc最大%を有する、分布屈折率プロファイルを有する。光ファイバのクラッド層はコアの最大相対屈折率Δc最大%より小さい相対屈折率Δic%を有する内層クラッドを含めて形成される。低屈折率リングが、内層クラッドのすぐ隣に、内層クラッドに直に接して配置される。低屈折率リングはΔic%及びΔc最大%より小さい最小相対屈折率ΔL最小%を有する。外層クラッドが低屈折率リングを囲んで低屈折率リングに直に接し、Δic%及びΔL最小%より大きく、Δc最大%より小さい相対屈折率Δoc%を有する。したがって、本実施形態においてはΔc最大%>Δoc%>Δic%>ΔL最小%である。しかし、他の実施形態も可能であることは当然である。例えば、Δoc%をΔic%と等しくすることができる。あるいはΔic%をΔoc%より大きくすることができる。
【0046】
本明細書に説明される光ファイバの実施形態において、コア半径Rとコアの最大相対屈折率Δc最大%の組合せが、光ファイバを伝搬している光信号の高次モードの理論カットオフ波長を長くする。これらの高次モードの理論カットオフ波長を長くすることには、光ファイバのコア内を伝搬することができるモードの数を増やす効果があり、この結果、光ファイバは小数モードになる(すなわち、光ファイバは、単一モードよりは多く、多モードファイバよりは少ない、モードの伝搬及び伝送をサポートする)。例えば、本明細書に説明される実施形態において、光信号のLP11モードの理論カットオフ波長は1550nm以上であり、2000nmより長波長であることが好ましく、2500nmより長波長であることがさらに好ましい。同様に、LP02モードの理論カットオフ波長は1100nm以上であり、1500nmより長波長であることが好ましく、1800nmより長波長であることがさらに好ましい。1550nmの波長を有する光信号のLP12モードの理論カットオフ波長は800nm以上であり、1200nmより長波長であることが好ましく、1500nmより長波長であることがさらに好ましい。
【0047】
本明細書に説明される実施形態において、コア半径が6μmから50μmの範囲にあり、相対屈折率Δc最大%が約0.2%以上で約0.5%以下の、光ファイバを形成することにより、X個のモードをサポートする光ファイバが得られる。ここでXは整数である。ファイバのコア内でサポートされるスカラーモード(すなわち縮退偏波モード)の数は式:
【数6】
【0048】
によって決定することができる。ここで、Rはコアの半径であり、nc最大はコアの最大屈折率であり、kは波数(すなわち、2π/λ,ここでλはコア内を伝搬される光の波長である)であり、アルファはコアのアルファ値であって、Δc最大はコアの最大相対屈折率である。本明細書に説明される実施形態において、Xは1より大きく、110以下である。例えば、アルファ値が2でΔc最大が0.2〜0.5%の分布屈折率プロファイル及び約15μm〜50μmの半径を光ファイバのコアが有する実施形態において、Xは4〜110の整数をとり得る。しかし、Δc最大が0.2〜0.5%のステップ屈折率プロファイル及び約6μmから約16μmの半径を光ファイバのコアが有する実施形態において、Xは2〜25の整数になるであろう。
【0049】
光ファイバのコア内を伝搬し得る高次モードの数を増やすだけでなく、上に説明され、図1及び3に示される、構造及び特性をもって形成された光ファイバは一般に、光ファイバのコアを通って伝搬される基本モードに対する、拡大された有効面積(A有効)を有し、したがって光ファイバは一般に低められた非線形性を有する。具体的には、約6μmから約50μmの半径と、約0.2%以上で約0.5%以下の相対屈折率Δc最大%が組み合わさったコアにより、通常の単一モードファイバに対して光ファイバの有効面積の拡大が得られる。本明細書に説明される実施形態において、光ファイバは一般に、約150μmより大きく、さらに好ましくは約160μmより大きく、さらに一層好ましくは約170μmより大きい、有効面積を有する。いくつかの実施形態において、光ファイバの有効面積は約200μmより大きく、さらには300μmより大きくなり得る。また別の実施形態において、有効面積は500μmもの大きさにさえなり得る。
【0050】
しかし、通常の単一モードファイバとは異なり、光ファイバの有効面積の拡大に対応する光ファイバの曲げ性能の劣化が生じない。実際には、有効面積の拡大は1550nmの波長におけるピンアレイ曲げ損失の実減少をもたらす。一般に、本明細書に説明される光ファイバは、1550nmにおいて約8dBより小さく、好ましくは4dBより小さく、さらに好ましくは2dBより小さく、最も好ましくは約1dBより小さい、ピンアレイ曲げ損失を有する。
【0051】
好ましいことに、本明細書に開示される光ファイバは、13μmより大きく、好ましくは13μm以上で30μm以下の、1550nmにおけるモードフィールド径を有する。いくつかの実施形態において、モードフィールド径は、約13μmよりは大きく、約23μmよりは小さくなり得る。
【0052】
本明細書に開示される光ファイバは、1500nmにおいて約20ps/nm/km以上で約23ps/nm/km以下の波長分散及び、約0.0600ps/nm/km以上で約0.0700ps/nm/km以下、好ましくは約0.0600ps/nm/km以上で約0.0670ps/nm/km以下の、1550nmにおける分散勾配も有する。分散勾配に対する分散値の比として定義されるカッパ(κ)値は1550nmにおいて約310nmから350nmの間であることが好ましい。
【0053】
本明細書に説明される光ファイバはコアの拡大された有効面積の結果として非線形性が低められている。これらのファイバは標準的単一モードファイバに対して改善されたピンアレイ曲げ性能も示す。しかし、ステップ屈折率プロファイルを有するコアを用いる光ファイバの実施形態においては、光信号の基本モードが相異なる時間遅延をもって高次モードを励起し得る。さらに、基本モードと高次モードの間のモード転換は、雑音を増大させ、性能を劣化させる、マルチパス干渉(MPI)を生じさせ得る。原理的には、モードとMPIの間の時間遅延はデジタル信号処理を利用することで補償され得る。しかし、そのような補償手法は、デジタル信号処理を適用する前に、時間遅延及びMPIを最小限に抑えることによって改善され得る。
【0054】
図5を次に参照すれば、上述したように、アルファ値が20より小さい分布屈折率プロファイルを有するコアをもつ光ファイバを形成することによって、高次モードとMPIの間の時間遅延を減じることができる。一般に、アルファ値をステップ屈折率プロファイルから小さくすると、光ファイバ内を伝搬しているモード間の時間遅延が減少する。例えばアルファ値を約20から約3まで小さくすると、時間遅延は1/10よりも小さくなる。特に、アルファ値が1.9と2.1の間の分布屈折率を光ファイバが有する場合に、高次モード間の時間遅延を最小限に抑え得ることが判明した。例えば、図5は、最大相対屈折率Δc最大%が0.35%,0.40%,0.45%及び0.50%のモデル化光ファイバについて、RMSパルス広がり(y軸)をアルファ値(x軸)の関数としてグラフで示す。RMSパルス広がりは一般にコア内を伝搬される光信号間のモード間の遅延を表す。図5に示されるように、本明細書に説明される光ファイバは一般に、コアの最大相対屈折率Δc最大%が0.5%以下であり、コアのアルファ値が1.9以上で2.1以下である場合に、0.15ns/kmより小さいRMSパルス広がり値を有する。特定の一実施形態において、コアのアルファ値は約1.97と1.98の間にあり、RMSパルス広がり値は0.01ns/kmより小さい。
【0055】
図6を次に参照すれば、最大相対屈折率Δc最大%が0.35%,0.40%,0.45%及び0.50%であり、最適アルファ値が1.972と1.974の間にある、モデル化光ファイバについて、RMSパルス広がり(y軸)が波長(x軸)の関数として示されている。図6に示されるように、1.5μmから1.6μm(すなわち1500nmから1600nm)の範囲内の波長に対し、RMSパルス広がりの変化は4ps/nmより小さい。RMSパルス広がりがそのように小さく、MPIが小さい光ファイバが得られる時間遅延は、WDM光通信システムにおいてデジタル信号処理を用いて容易に補償することができる。
【実施例】
【0056】
本発明は以下の実施例によってさらに明確になるであろう。
【0057】
1550nmにおける有効面積及びピンアレイ曲げ損失へのΔc最大%及びコア半径の変化の効果を決定するため、複数の光ファイバを数学的にモデル化した。表1はステップ屈折率プロファイルをもつ対照ファイバ及び本発明のファイバに対するデータを収める。具体的には、対照実施例C1は、コアがステップ屈折率プロファイル、0.20%のΔc最大%値及び6μmの半径を有する単一モードファイバであり、1550nmにおいて153.9μmの有効面積及び1550nmにおいて65dBのピンアレイ曲げ損失が得られた。実施例2〜8もステップ屈折率プロファイルを有するコアについてモデル化している。しかし、実施例2〜8においては、理論カットオフ波長が、Δc最大%を大きくし、コアの半径を変えることによって調節されている。表1に示されるように、実施例2〜8はそれぞれ少なくとも2つのモードの伝搬及び伝送をサポートし、それぞれは約150μmより大きく、ほとんどの場合に170μmより大きい、有効面積を有している。実施例2〜8のそれぞれは対照実施例C1に比較して曲げ損失のかなりの低下を示した。具体的には、実施例2〜8のそれぞれは、少なくともある程度は光ファイバの有効面積の増大により、少なくとも60dBの曲げ損失の低下を示した。
【表1】
【0058】
分布屈折率プロファイルを有するコアをもつモデル化光ファイバについても同様の傾向が見られた。詳しくは、表2は、アルファ値が2.0の分布屈折率プロファイルを有するコアについてモデル化した実施例9〜16についてのデータを収める。上述したステップ屈折率プロファイルをもつ実施例と同様、Δc最大%を大きくし、コアの半径を変えることによって、分布屈折率コアをもつ光ファイバの理論カットオフ波長を調節した。表2に示されるように、モデル化光ファイバのそれぞれは1550nmにおいて2つより多くのモードをサポートし、実施例16は103のモードをサポートしている。さらに、上述したステップ屈折率プロファイルをもつ実施例と同様に、実施例9〜16のそれぞれは150μmより大きい有効面積を有し、実施例14及び16は500μmをこえる有効面積を有している。さらになお、実施例9〜16のそれぞれは7dBより小さいピンアレイ曲げ損失を有し、さらに詳しくは、対照実施例C1の光ファイバのピンアレイ曲げ損失よりも少なくとも50dBは低いピンアレイ曲げ損失を有していた。
【表2】
【0059】
表3は実施例17〜22についてのデータを収める。実施例17〜22の光ファイバはアルファ値が2.0の分布屈折率コアについてモデル化した。実施例17〜22の光ファイバでは、上で図3に示されるような、内層クラッドでコアから隔てられた低屈折率リングについてもモデル化した。コアの最大相対屈折率Δc最大%を0.40%から約0.75%まで変えて、コアの半径Rを12.6μmから36.3μmまで変えた。内層クラッドの相対屈折率Δic%を0.0%から−0.1%まで変えて、内層クラッドの径方向厚さを0.8μmと2.7μmの間で変えた。低屈折率リングの最小相対屈折率ΔL最小%を約−0.3%から約−0.8%まで変え、低屈折率リングの径方向幅を4.2μmから6.6μmまで変えた。
【0060】
実施例17〜22の光ファイバは表2の光ファイバと同様の傾向を表した。詳しくは、Δc最大%を大きくし、コアの半径を変えることによって、分布屈折率コアをもつ光ファイバの理論カットオフ波長を調節した。表3に示されるように、モデル化光ファイバのそれぞれは1550nmの波長において2より多くのモードをサポートしている。さらに、上述したステップ屈折率プロファイルをもつ実施例と同様に、実施例17〜22のそれぞれは150μmより大きい有効面積を有し、実施例21及び22は200μmをこえる有効面積を有している。しかし、内層クラッドによってコアから隔てられた低屈折率リングの付加により、表2に報告される光ファイバに対して光ファイバのピンアレイ曲げ損失はかなり低下し、ピンアレイ曲げ損失は無視できるまでに(すなわち0に)なっている。特に、実施例17〜22は、光ファイバがコアから隔てられた低屈折率リングを有して形成された場合に、特に光ファイバのコアが約0.4%より大きな最大相対屈折率Δc最大%を有している場合に、光ファイバのピンアレイ曲げ損失が1dB以下にまで低められ得ることを明らかに示している。
【表3】
【0061】
表4は実施例23〜28についてのデータを示す。実施例23〜28の光ファイバは、アルファ値が2の分布屈折率コアについてモデル化した。実施例23〜28のファイバでは、上で図4Bに示されるような、コアを囲んでコアに直接している低屈折率リングについてもモデル化した。コアの最大相対屈折率Δc最大%を0.20%から約070%まで変え、コアの半径Rを13.9μmから37.3μmまで変えた。低屈折率リングの最小相対屈折率ΔL最小%を約−0.1%から約−0.5%まで変え、低屈折率リングの径方向幅を4.7μmから11.7μmまで変えた。
【0062】
実施例23〜28の光ファイバは表3の光ファイバと同様の傾向を表した。詳しくは、Δc最大%を大きくし、コアの半径を変えることによって、分布屈折率コアをもつ光ファイバの理論カットオフ波長を調節した。表4に示されるように、モデル化光ファイバのそれぞれは1550nmの波長において2より多くのモードをサポートしている。さらに、上述したステップ屈折率ファイバと同様に、実施例23〜28のそれぞれは150μmより大きい有効面積を有し、実施例28は250μmをこえる有効面積を有している。しかし、低屈折率リングの付加により、光ファイバのピンアレイ曲げ損失はかなり低下した。特に、実施例24〜28は、光ファイバが低屈折率リングを有して形成された場合に、光ファイバのピンアレイ曲げ損失が1dB以下にまで低められ得ることを明らかに示している。
【表4】
【0063】
本明細書に説明される光ファイバが拡大された有効面積及び低められたピンアレイ曲げ損失を有し、これらはいずれもファイバ内を伝搬する光信号の高次モード理論カットオフ波長を長くすることによって達成されることが、今では理解されるはずである。したがって、本明細書に説明される光ファイバが光信号の1つより多くのモードの伝搬及び伝送をサポートすることは当然である。さらに、有効面積の拡大により光ファイバの非線形性が低められ、よって長距離光通信システムにおける光ファイバの性能が向上する。
【0064】
分布屈折率プロファイルを有するコアをもつ、本明細書に説明される光ファイバが、光ファイバのコア内を伝搬している光信号の高次モード間の時間遅延を最小限に抑えるために用いられ得ることも当然である。さらに、コアから隔てられた低屈折率リングをもつ光ファイバを形成することでファイバのピンアレイ曲げ損失がかなり改善され、よってファイバの伝送性能が改善される。そのような光ファイバは、光ファイバにおける最小限に抑えられた時間遅延を補償するためにデジタル信号処理を容易に用いることができるWDM通信システムに用いるに適している。
【0065】
特許請求される主題の精神及び範囲を逸脱することなく本明細書に説明される実施形態に様々な改変及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書に説明される実施形態の改変及び変形が添付される特許請求項及びそれらの等価形態の範囲内に入れば、本明細書はそのような改変及び変形を包含するとされる。
【符号の説明】
【0066】
100,101 光ファイバ
102 コア
104 クラッド層
106 内層クラッド
108 低屈折率リング
110 外層クラッド
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6