【文献】
Petherbridge,L. et al.,Cloning of Gallid herpesvirus 3 (Marek's disease virus serotype-2) genome as infectious bacterial artificial chromosomes for analysis of viral gene functions.,J. Virol. Methods,2009年 6月,Vol.158, No.1-2,p.11-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物又はワクチン又はベクターの少なくとも1回の投与を含む、1つ以上のトリ病原体に対して非ヒト動物で免疫形成応答又は防御応答を誘発する方法。
NDV-Fをコードするポリヌクレオチドが配列番号1、8、49、51または53に記載の配列と少なくとも90%配列同一性を有する、請求項1に記載の組成物またはワクチン。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示では、さらに特に特許請求の範囲では、例えば“comprises(含む)”、“comprised”、“compraising”などの用語は、米国特許法で当該用語が帰属するとされる意味を有し、例えばそれらは、“includes(含む)”、“included”、“including”などを意味することができる。さらに例えば“consisting essentially(本質的に〜から成る)”及び“consists essentially”という用語は、米国特許法においてそれらのものとされる意味を有し、例えばそれらは、明確には列挙されていない成分を許容するが、従来技術で見出されている成分又は本発明の基本的な又は新規な特徴に影響を及ぼす成分を排除する。
特段の記載がなければ、技術用語は通常の用い方にしたがって用いられる。分子生物学の一般用語の定義は以下の文献で見出すことができる:Benjamin Lewin, Genes V., Oxford University Press(出版)、1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al.(編集)、The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science Ltd.(出版)、1994(ISBN 0-632-02182-9);及びRobert A. Meyers(編集)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc.(出版)、1995(ISBN 1-56081-569-8)。単数形用語“a(ひとつの)”、“an”及び“the(当該1つの)”は、文脈が明確にそうでないことを指し示していない場合、複数の対応語を含む。同様に、“or(又)”は、文脈が明確にそうでないことを指し示していない場合、“and(及び)”を含む。“or”という語は、個々のリストの任意の一メンバーを意味し、かつまた当該リストのメンバーの任意の組合せを含む。
【0008】
“動物”という用語は、本明細書では全ての哺乳動物、鳥類及び魚類を含むために用いられる。本明細書で用いられる動物は、馬類(例えばウマ)、犬類(例えばイヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカル)、ネコ類(例えばライオン、トラ、家ネコ、野生ネコ、他の大型ネコ及び他のネコ類(チーター及びオオヤマネコを含む))、牛類(例えばウシ)、豚類(例えばブタ)、羊類(例えばヒツジ、ヤギ、ラマ、バイソン)、鳥類(例えばニワトリ、アヒル、カモ、シチメンチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ダチョウ、エミュ及びヒクイドリ)、霊長類(例えばキツネザル、メガネザル、小型長尾猿、テナガザル、大型無尾猿)、ヒト及び魚類から成る群から選択できる。“動物”という用語はまた、全発達段階(胚期及び胎児期を含む)の個々の動物を含む。
【0009】
“ポリペプチド”又は“タンパク質”という用語は本明細書では互換的に用いられ、連続するアミノ酸残基のポリマーを指す。
“核酸”、“ヌクレオチド”及び“ポリヌクレオチド”という用語は互換的に用いられ、RNA、DNA、cDNA又はcRNA及びその誘導体(例えば改変骨格を含むもの)を指す。本発明は、本明細書に記載したものと相補的な配列を含むポリヌクレオチドを提供することは理解されよう。本発明で意図される“ポリヌクレオチド”には、フォワード鎖(5’から3’)及びリバース鎖(3’から5’)の両方が含まれる。本発明のポリヌクレオチドは、種々の方法で調製でき(例えば化学合成、遺伝子クローニングなどによって)、多様な形態を有することができる(例えば線状、分枝状、一本若しくは二本鎖又は前記のハイブリッド、プライマー、プローブなど)。
“ゲノムDNA”又は“ゲノム”は互換的に用いられ、宿主生物の伝承され得る遺伝情報を指す。ゲノムDNAは核のDNA(染色体DNAとも称される)を含むが、さらにまた色素体(例えば葉緑体)及び他の細胞内小器官(例えばミトコンドリア)のDNAも含む。本発明で意図されるゲノムDNA又はゲノムはまたウイルスのRNAも指す。該RNAはプラス鎖又はマイナス鎖RNAであり得る。本発明で意図される“ゲノムDNA”という用語には、本明細書に記載したものと相補的な配列を含むゲノムDNAが含まれる。“ゲノムDNA”という用語はまたメッセンジャーRNA(mRNA)、相補性DNA(cDNA)、及び相補性RNA(cRNA)を指す。
【0010】
“遺伝子”という用語は生物学的機能を伴うポリヌクレオチドの任意の断片を指すために広く用いられる。したがって、遺伝子又はポリヌクレオチドには、ゲノム配列の場合のイントロン及びエクソン、又はcDNAの場合のまさにコード配列(例えばオープンリーディングフレーム(ORF)、開始コドン(メチオニンコドン)から始まり終了シグナル(停止コドン)で終わる)が含まれる。遺伝子又はポリヌクレオチドにはまた、それらの発現(例えば転写開始、翻訳及び転写終了)を調節する領域が含まれ得る。したがって、プロモーター及びリボソーム結合領域(一般的にこれらの調節エレメントは、コード配列又は遺伝子の開始コドンの上流のほぼ60から250ヌクレオチドの間に存在する(Doree S M et al.; Pandher K et al.; Chung J Y et al.))、転写ターミネーター(一般的にターミネーターはコード配列又は遺伝子の停止コドンの下流のほぼ50ヌクレオチド内に配置される(Ward C K et al.))もまた含まれる。遺伝子又はポリヌクレオチドはまた、mRNA若しくは機能的RNAを発現するか又は特異的タンパク質をコードするフラグメント及び調節配列を含むフラグメントを指す。
本明細書で用いられる“異種DNA”という用語は、異なる生物、例えばレシピエントとは異なる細胞タイプ又は異なる種に由来するDNAを指す。該用語はまた、宿主DNAの同じゲノム上のDNA又はそのフラグメントであって、当該異種DNAがその本来の位置とは異なるゲノム領域に挿入される前記DNA又はそのフラグメントを指す。
本明細書で用いられるように、“抗原”又は“免疫原”という用語は、宿主動物で特異的な免疫応答を誘発する物質を意味する。抗原は、全生物(死滅、弱毒、又は生)、生物のサブユニット又は部分、免疫原性特性を有する挿入物を含むベクター、宿主動物に提示されたときに免疫応答を誘発できるDNA片又はフラグメント、ポリペプチド、エピトープ、ハプテン又は前記の任意の組合せを含むことができる。或いは、免疫原又は抗原は毒素又は抗毒素を含むことができる。
【0011】
本明細書で用いられる“免疫原性タンパク質又はペプチド”という用語には、宿主に一度投与されると、当該タンパク質に対して液性及び/又は細胞性タイプの免疫応答を引き起こすことができるという意味で免疫学的に活性なポリペプチドが含まれる。好ましくは、前記タンパク質フラグメントは、完全なタンパク質と実質的に同じ免疫学的活性を有するものである。したがって、本発明のタンパク質フラグメントは、少なくとも1つのエピトープ又は抗原決定基を含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成る。本明細書で用いられる、“免疫原性”タンパク質又はペプチドには、当該タンパク質の完全長配列、そのアナローグ、又はその免疫原性フラグメントが含まれる。“免疫原性フラグメント”とは、1つ以上のエピトープを含み、したがって上記に記載の免疫学的応答を引き出すタンパク質のフラグメントを意味する。そのようなフラグメントは、当業界で周知の多数のエピトープマッピング技術を用いて同定できる。例えば以下を参照されたい:Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66(Glenn E. Morris(編集)1996)。例えば線状エピトープは、多数のペプチド(前記は当該タンパク質分子の部分に対応する)を固相支持体上で同時に合成し、当該ペプチドがなお支持体と結合している間に前記ペプチドを抗体と反応させることによって決定できる。そのような技術は当業界で公知であり、例えば米国特許4,708,871号に記載されている。同様に、コンフォーメーションエピトープは、例えばX線結晶学及び二次元核磁気共鳴によってアミノ酸の空間的構造を決定することによって容易に同定される。例えば上掲書(Epitope Mapping Protocols)を参照されたい。
【0012】
“免疫原性タンパク質又はペプチド”という用語はさらに、当該ポリペプチドが機能して本明細書に規定の免疫学的応答を生じる限り、当該配列への欠失、付加及び置換を意図する。“保存的変型”という用語は、あるアミノ酸残基の別の生物学的に類似する残基による入れ替え、又は当該コードされるアミノ酸残基が変化しないか又は別の生物学的に類似する残基であるような核酸配列中のヌクレオチドの入れ替えを指す。これに関して、特に好ましい置換は一般的に特性が保存的であろう(すなわちアミノ酸の1つのファミリー内で生じる置換)。例えばアミノ酸は一般的に以下の4つのファミリーに分類される:(1)酸性−アスパラギン酸及びグルタミン酸;(2)塩基性−リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4)非荷電極性−グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンはときに芳香族アミノ酸として分類される。保存的置換には以下が含まれる:ある疎水性残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシン又はメチオニンによる別の疎水性残基の置換;又はある極性残基による別の極性残基の置換、例えばアルギニンによるリジンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換又はグルタミンによるアスパラギンの置換など;又はあるアミノ酸の生物学的に大きな影響をもたない構造的に関連するアミノ酸による同様な保存的入れ替え。参照分子と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、該タンパク質の免疫原性に実質的に影響しない小さなアミノ酸置換を有するタンパク質は、したがって参照ポリペプチドの規定内に入る。これらの改変によって生成されるポリペプチドの全てがここに含まれる。“保存的変型”という用語にはまた、置換済みポリペプチドに対して生じた抗体がまた未置換ポリペプチドとも免疫反応することを条件に、非置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することが含まれる。
【0013】
“エピトープ”という用語は、特異的B細胞及び/又はT細胞が応答する抗原又はハプテン上の部位を指す。該用語はまた、“抗原決定基”又は“抗原決定部位”と互換的に用いられる。同じエピトープを認識する抗体は、ある抗体が別の抗体の標的抗原との結合を阻止する能力を示す簡単な免疫アッセイで同定できる。
組成物又はワクチンとの“免疫学的応答”は、対象の組成物又はワクチンに対する細胞性及び/又は抗体媒介性免疫応答の発生である。通常は、“免疫学的応答”には以下の作用の1つ以上が含まれる(ただしこれらに限定されない):対象の組成物又はワクチンに含まれる1つの抗原又は複数の抗原に特異的に誘導される抗体、B細胞、ヘルパー細胞及び/又は細胞傷害性T細胞の産生。好ましくは、宿主は、新規感染に対する抵抗性が強化されるように、及び/又は当該疾患の重症度が低下するように治療的又は防御的応答のどちらかを開陳するであろう。そのような防御は、通常感染宿主が示す症状の緩和若しくは欠如、より短い回復期間及び/又は感染宿主におけるウイルス力価の低下によって示されるであろう。
【0014】
“組換え”及び“遺伝的改変”という用語は互換的に用いられ、その本来の形態若しくは構造にあるポリヌクレオチド又はタンパク質の任意の改変、変更若しくは操作、又はその本来の環境若しくは周辺状況にあるポリヌクレオチド又はタンパク質の任意の改変、変更若しくは操作を指す。ポリヌクレオチド又はタンパク質の改変、変更若しくは操作には、1つ以上のヌクレオチド又はアミノ酸の欠失、全遺伝子の欠失、遺伝子のコドン最適化、アミノ酸の保存的置換、1つ以上の異種ポリヌクレオチドの挿入が含まれ得るが、ただし前記に限定されない。
“多価ワクチン又は組成物”、“組合せ若しくはコンボ(combo)ワクチン又は組成物”及び“多価ワクチン又は組成物”という用語は、2つ以上の組成物又はワクチンを含む組成物又はワクチンを指すために互換的に用いられる。多価ワクチン又は組成物は、2つ、3つ、4つ若しくは5つ以上の組成物又はワクチンを含むことができる。多価ワクチン又は組成は、組換えウイルスベクター、活性若しくは弱毒若しくは死滅野生型ウイルス、又は組換えウイルスベクターと活性若しくは弱毒若しくは死滅形の野生型ウイルスの混合物を含むことができる。
【0015】
本発明のある実施態様は、変異糖タンパク質C(gC又はUL44)遺伝子を含む、組換えガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)ベクターを提供する。“変異gC遺伝子”という用語は、発現に際して非機能性gCタンパク質を生じる変更又は操作ガリドヘルペス3(MDV-2)のgC遺伝子を指す。該gC遺伝子の変更又は操作には、機能性gCタンパク質の発現に必須であるgC遺伝子セグメントの変異又は欠失が含まれる。“変異gC遺伝子”という用語にはまた、ガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)の完全なgC遺伝子の欠失(gCタンパク質は発現されない)が含まれる。本発明の別の実施態様は、gCタンパク質をコードする天然の(野生型)ガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)ゲノムの糖タンパク質C(gC)遺伝子が欠失している組換えガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)を提供する。“糖タンパク質C(gC)遺伝子”という用語には、ガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)の糖タンパク質C(gC)をコードする任意の遺伝子又はポリヌクレオチド、及びそのホモローグ、フラグメント又は変種が含まれる。該gC遺伝子は、配列番号:35と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%の配列同一性を有するgCタンパク質又はその変種をコードすることができる。配列番号:34と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%の配列同一性を有するgC遺伝子もまた本発明に包含される。
【0016】
本発明の別の実施態様は、トリ病原体の少なくとも1つの抗原又はポリペプチドをコード及び発現する1つ以上の異種ポリヌクレオチドを含む、組換えガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)ウイルスベクターを提供する。該組換えウイルスベクターのために用いられるガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)株は任意のSB-1株であり得る。前記には、市販のマレック病ワクチン(SB-1ワクチン)(Merial Select Inc., Gainesville, GA 30503, USA)、GenBankアクセッション番号HQ840738.1により規定されるゲノム配列を有するSB-1株が含まれるが、ただしこれらに限定されない。該組換えウイルスベクターのために用いられるガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)株は他の任意のガリドヘルペスウイルス3単離体であり得る。前記にはGenBankアクセッション番号AB049735.1により規定されるゲノム配列を有するHPRS24株、又はGenBankアクセッション番号NC_002577.1により規定されるゲノム配列を有するHPRS24株が含まれる。HRPRS24及びSB-1のゲノムは98.4%の配列同一性を共有する(Spatz and Schat, 2011; Virus Gene 42, 331-338)。組換えウイルスベクターのために用いられるガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)株は、Witter(1987 Avian Dis 31, 752-765)又はWitterら(1987 Avian Dis 31, 829-840)が記載した301B/1単離体であり得る。ガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)株は、GenBankアクセッション番号HQ840738.1(配列番号:14)、AB049735.1又はNC_002577.1に規定の配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するゲノム配列を含む任意のガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)株であり得る。
【0017】
該抗原又はポリペプチドをコードする遺伝子は、ニューカッスル病ウイルス融合タンパク質(NDV-F)、ニューカッスル病ウイルスヘマグルチニンノイラミニダーゼ(NDV-HN)、マレック病ウイルス糖タンパク質C(gC)、マレック病ウイルス糖タンパク質B(gB)、マレック病ウイルス糖タンパク質E(gE)、マレック病ウイルス糖タンパク質I(gI)、マレック病ウイルス糖タンパク質H(gH)、マレック病ウイルス糖タンパク質L(gL)、IBDV VP2、IBDV VPX、IBDV VP3、IBDV VP4、ILTV糖タンパク質B、ILTV糖タンパク質I、ILTV UL32、ILTV糖タンパク質D、ILTV糖タンパク質E、ILTV糖タンパク質C、インフルエンザヘマグルチニン(HA)、インフルエンザノイラミニダーゼ(NA)、マイコプラズマ・ガリセプチクム(MG)若しくはマイコプラズマ・シノビアエ(MS)由来の防御遺伝子、又は前記の組合せをコードする遺伝子であり得る。前記抗原又はポリペプチドは、トリ脳脊髄炎ウイルス、トリレオウイルス、トリパラミクソウイルス、トリメタニューモウイルス、トリインフルエンザウイルス、トリアデノウイルス、鶏痘ウイルス、トリコロナウイルス、トリロタウイルス、ニワトリ貧血ウイルス、トリアストロウイルス、トリパルボウイルス、コクシジウム症(エイメリア種)、カンピロバクター種、サルモネラ種、パスツレラ種(Pasteurella sp.)、アビバクテリウム種、マイコプラズマ・ガリセプチクム、マイコプラズマ・シノビアエ、クロストリジウム種、及び大腸菌から成る群から選択される家禽病原体の任意の抗原であり得る。
【0018】
さらにまた、上述の抗原又はポリペプチドのホモローグは本発明の範囲内であることが意図される。本明細書で用いられる、“ホモローグ”という用語にはオルトローグ、アナローグ及びパラローグが含まれる。“アナローグ”という用語は、同じ又は類似の機能を有するが、無関係の生物で別々に進化した2つのポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。“オルトローグ”という用語は、異なる種に由来するが、共通の祖先遺伝子から種分化によって進化した2つのポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。通常は、オルトローグは同じ又は類似する機能を有するポリペプチドをコードする。“パラローグ”という用語は、ゲノム内の重複によって関係を有する2つのポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。パラローグは通常異なる機能を有するが、これらの機能は関連性を有することがある。野生型ポリペプチドのアナローグ、オルトローグ及びパラローグは、翻訳語修飾によって、アミノ酸配列の相違によって、又はその両方によって野生型ポリペプチドと相違し得る。特に、本発明のホモローグは、一般的には少なくとも80−85%、85−90%、90−95%、又は95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を、上記記載の抗原のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の全部又は部分に関して示し、さらに類似の機能を示すであろう。
【0019】
ある実施態様では、本発明は、NDV-F抗原又はポリペプチドをコード及び発現する1つ、2つ又は3つ以上の異種ポリヌクレオチドを含む組換えガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)ウイルスベクターを提供する。該実施態様のある特徴では、NDV-F抗原又はポリペプチドは、配列番号:2、9、50、52又は54に示す配列を有するポリペプチド、又は保存的変種、対立遺伝子変種、ホモローグ、又はこれらポリペプチドの1つの少なくとも8つ若しくは少なくとも10の連続するアミノ酸を含む免疫原性フラグメント、又はこれらのポリペプチドの組合せと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。該実施態様の別の特徴では、NDV-F抗原又はポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドは、配列番号:2、9、50、52又は54に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。該実施態様のさらに別の特徴では、異種ポリヌクレオチドは、配列番号:1、8、49、51又は53に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。
【0020】
変種には対立遺伝子変種が含まれる。“対立遺伝子変種”という用語は、タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらし、かつ自然界の集団(例えばウイルス種又は変種)内に存在する多形性を含むポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。そのような自然界の対立遺伝子変異は、典型的には1−5%の相違をポリヌクレオチド又はポリペプチドにもたらし得る。対立遺伝子変種は、多数の異なる種で対象の核酸配列を配列決定することによって同定することができる(前記は、それらの種の同じ遺伝子の位置を同定するハイブリダイゼーションプローブを用いることによって容易に実施できる)。自然界の対立遺伝子変異の結果であり、かつ対象の遺伝子の機能的活性を変化させないそのような核酸変異及びその結果であるアミノ酸多形性又は変異はいずれも全てが本発明の範囲内に含まれる。
【0021】
配列に関して“同一性”という用語は、例えば、ウィルバーとリップマンのアルゴリズム(Wilbur and Lipman)にしたがって2つの配列のアラインメントを決定した場合に、2つの配列の短い方のヌクレオチド又はアミノ酸の数で割った同一のヌクレオチド又はアミノ酸の位置の数を指すことができる。2つのアミノ酸配列の配列同一性若しくは配列類似性、又は2つのヌクレオチド配列間の配列同一性は、ベクターNTIソフトウェアパッケージ(Invitrogen, 1600 Faraday Ave., Carlsbad, CA)を用いて決定できる。RNA配列がDNA配列と類似である、又はある程度の配列同一性若しくは相同性を有するというとき、DNA配列中のチミジン(T)はRNA配列中のウラシル(U)と同一と考えられる。したがってRNA配列は本発明の範囲内に含まれ、DNA配列中のチミジン(T)はRNA配列中のウラシル(U)と同一と考えることによってDNA配列から誘導することができる。
【0022】
本開示のポリヌクレオチドには、遺伝暗号の結果としての縮退、例えば特定の宿主のための最適化コドン使用頻度の結果としての縮退である配列が含まれる。本明細書で用いられるように、“最適化”は、遺伝的に操作されて、ある種でその発現が向上したポリヌクレオチドを指す。NDV-Fポリペプチドをコードする最適化ポリヌクレオチドを提供するために、NDV-Fタンパク質遺伝子のDNA配列を以下のように改変することができる:(1)個々の種で強力に発現される遺伝子が好むコドンを含む;(2)前記の種で実質的に見出される、ヌクレオチド塩基組成のA+T又はG+C含有量を含む;(3)前記の種の開始配列を形成する;(4)RNAの不安定化、不適切なポリアデニル化、分解及び停止を引き起こす配列又は二次構造ヘアピン又はRNAスプライス部位を形成する配列を除去する。前記の種でのNDV-Fタンパク質の発現の向上は、真核細胞及び原核細胞又は個々の種におけるコドン使用の配分頻度を利用することによって達成できる。“優先コドン使用頻度”という用語は、あるアミノ酸を指定するために特定の宿主細胞によって示されるヌクレオチドコドンの使用における優先性を指す。自然界に20のアミノ酸が存在し、その大半は2つ以上のコドンによって指定される。したがって、全ての縮退ヌクレオチド配列が、当該ヌクレオチド配列によってコードされるNDV-Fポリペプチドのアミノ酸配列が機能的に変化しないかぎり本開示に含まれる。
【0023】
別の実施態様では、本発明は、組換えガリドヘルペスウイルス3又はSB-1ウイルスベクターを製造する方法を提供し、前記方法は、該SB-1ゲノムの非必須領域へ1つ、2つ、又は3つ以上の単離ポリヌクレオチドを導入する工程を含む。さらに別の実施態様では、本発明は、組換えガリドヘルペスウイルス3又はSB-1ウイルスベクターを製造する方法を提供し、前記方法はgC遺伝子を改変し、操作し又はSB-1ゲノムから欠失させる工程を含む。“非必須領域”という用語は、組織培養又はニワトリでのウイルスの複製及び増殖のために必須ではないウイルスゲノムの領域を指す。そのいずれの非必須領域又は部分もSB-1ゲノムから欠失させることが可能であり、又は外来配列をそれに挿入することができ、当該欠失又は挿入により生じた組換えガリドヘルペスウイルス3又はSB-1ベクターの生存能力及び安定性を用いて、前記の欠失領域又は部分が実際に非必須であるか否かを確認できる。該実施態様のある特徴では、非必須領域は、SB-1ゲノムの固有の長(UL)領域及び固有の短(US)領域に配置される(以下を参照されたい:Spatz et al., Virus Genes 42:331-338, 2011)。SB-1の該UL領域は長さが約109,744bpから約109,932bpであり、配列番号:14の12,209位から121,952位(GenBankアクセッション番号HQ840738.1)、又は他のSB-1ゲノムの同等な位置、例えばHPRS24ゲノムの11,826bpから121,757bpに広がり得る。SB-1のUS領域は長さが約12,109bpから約12,910bpであり、配列番号:14の143,514位から156,423位(GenBankアクセッション番号HQ840738.1)、又は他のSB-1ゲノムの同等な位置、例えばHPRS24ゲノムの142,681bpから154,789bp(Spatz et al., 2011)に広がり得る。該実施態様のある特徴では、非必須領域は、SB-1の固有長(UL)領域のUL55のORFからLORF5のORFの間に存在する。別の特徴では、ポリヌクレオチドは糖タンパク質C(UL44とも称される)に挿入されるか、又は前記と入れ替えられる。gC遺伝子座の使用は、機能的gCタンパク質の産生不能及び水平伝播不能の組換えウイルスの生成を許容し得る。さらに別の実施態様では、非必須領域は、UL7とUL8の間、UL21とUL22の間、UL40とUL41の間、UL50とUL51の間、UL54とLORF4の間、US10とSORF4の間の遺伝子間領域、又はUL43、US2、US10又はUS6遺伝子内であり得る(前記はgDをコードする;GenBankアクセッション番号HQ840738.1)。さらに別の実施態様では、非必須領域は配列番号:14の以下のヌクレオチド領域に存在し得る:118057−118306位(UL55−LORF5遺伝子間)、98595−100031位(gC又はUL44)、25983−26038位(UL7−UL8遺伝子間)、49865−50033位(UL21−UL22遺伝子間)、75880−75948位(UL35−UL36遺伝子間)、93928−93990位(UL40−UL41遺伝子間)、109777−109847位(UL50−UL51遺伝子間)、116466−116571(UL54−LORF4遺伝子間)、146548−146697位(US10−SORF4遺伝子間)、97141−98385位(UL43)、147857−148672位(US2)、145853..146548位(US10)又は150322−151479位(gD又はUS6)。
【0024】
組換えウイルスの構築は当業界では周知であり、例えば以下に記載されている:米国特許4,769,330号、4,722,848号、4,603,112号、5,174,993号、5,756,103号、6,719,979号。特に、組換えガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)ウイルスベクターは2工程で構築できる。最初に、挿入位置にフランキングするガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)又はSB-1ゲノム領域を大腸菌プラスミド構築物でクローニングし、固有の制限部位を2つのフランキング領域の間(挿入プラスミド)に配置して、ドナーの発現カセットDNAの挿入を可能にする。挿入されるべきcDNA又はDNA遺伝子配列の前に、別々にプロモーター領域(遺伝子の開始領域)を先行させ、さらにターミネーター(又はポリアデニル化、ポリ-A)配列(ガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)又はSB-1ベクター及び/又は真核細胞に特異的である)を置く。前記の全発現カセット(プロモーター-外来遺伝子-ポリ-A)を続いて挿入プラスミドの固有の制限部位でクローニングして“ドナープラスミド”を構築する(前記は、該挿入位置にフランキングするガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)又はSB-1“アーム”によってフランキングされた発現カセットを含む)。続いて、得られたドナープラスミド構築物を大腸菌内で増殖させることによって増幅し、プラスミドDNAを抽出する。続いて該プラスミド骨格を切断する制限酵素を用いて、このプラスミドを線状化する(ガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)又はSB-1アーム及び発現カセットの外側で)。続いてニワトリ胚線維芽細胞に親ガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)又はSB-1 DNA及び線状化ドナープラスミドをコトランスフェクトする。続いて、得られたウイルス集団を複数回の限界希釈工程によってクローニングする(ここで外来遺伝子発現ウイルスは非発現ウイルス集団から単離される)。同様に、別の外来カセットを別の挿入位置に挿入して、2つの遺伝子を発現する二重ガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)又はSB-1組換え体を作製することができる。第二のカセットはまた同じ位置に挿入できる。ガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)又はSB-1組換え体は、親ガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)又はSB-1 MDワクチンと同様に初代ニワトリ胚線維芽細胞で製造される。インキュベーション後に、感染細胞を採集し、感染細胞の生存を可能にする凍結媒体と混合し、通常は凍結用バイアル又はガラスアンプル中で凍結し液体窒素で保存する。
【0025】
改変した感染性ウイルスによって挿入されたcDNAの遺伝子配列の発現成功には2つの条件が要求される。第一に、改変ウイルスが生存活性を維持するために挿入物はウイルスゲノムのある領域に導入されなければならない。挿入cDNAの発現のための第二の条件は、該遺伝子の発現を可能にするウイルス骨格中の調節配列の存在である(例えば、プロモーター、エンハンサー、ドナー及びアクセプタースプライシング部位並びにイントロン、Kozak翻訳開始コンセンサス配列、ポリアデニル化シグナル、非翻訳配列エレメント)。
一般的には、真核細胞で強力なプロモーター機能を利用することが有利である。前記プロモーターには、極初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、モルモットCMVプロモーター、SV40プロモーター、偽狂犬病ウイルスプロモーター(例えば糖タンパク質Xプロモーター)、単純ヘルペスウイルス-1(例えばアルファ4プロモーター)、マレック病ウイルス(MDV-1、MDV-2及びHVTを含む)プロモーター(例えばgC、gB、gE又はgI糖タンパク質発現を駆動するプロモーター)、伝染性喉頭気管炎ウイルスプロモーター(例えばgB、gE、gI、gD遺伝子のプロモーター)、又は他のヘルペスウイルスプロモーターが含まれるが、ただしこれらに限定されない。挿入される位置がSB-1遺伝子(例えばgC、gD、US2又はUS10遺伝子)から成るとき、外来遺伝子は別のプロモーター配列を付け加えることなく挿入できる。なぜならば、当該ベクターの欠失させた遺伝子のプロモーターが挿入される外来遺伝子の転写を駆動するからである。
【0026】
ある実施態様では、本発明は、1つ以上の本発明の組換えガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)ウイルスベクター及び医薬的又は獣医的に許容できる担体、賦形剤、ビヒクル又はアジュバントを含む医薬組成物又はワクチンに関する。組換えガリドヘルペスウイルス3ウイルスベクターのために用いられるガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)株は、任意のSB-1株、HPSR24株又は301B/1株であり得る。ガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)株にはまた以下が含まれ得る:Witterら(Avian Diseases 34, 944-957; 1990)、 Witter(Avian Pathology 21, 601-614, 1992)、及びWitter(Avian Pathology 24, 665-678, 1995)が記載したもの:280-5/1、281MI/1、287C/1、298B/1、301A/1、401/1、437A/1、437B/1、468A/1、468A/2、468B/1、471B/1又はHN-1/1。
別の実施態様では、本発明は以下を含む組成物又はワクチンを提供する:(i)トリ病原体の少なくとも1つの抗原をコード及び発現する異種ポリヌクレオチドを含む組換えガリドヘルペスウイルス3ベクター(MDV-2);及び(ii)以下の少なくとも1つ:トリ病原体の少なくとも1つの抗原をコード及び発現する異種ポリヌクレオチドを含む組換えHVTベクター(又はMDV-3又はメレアグリドヘルペスウイルス-1);又は野生型MDV-3;又はトリ病原体の少なくとも1つの抗原をコードし発現する異種ポリヌクレオチドを含む組換えMDV-1ベクター(又はガリドヘルペスウイルス-2);又は野生型MDV-1。組成物又はワクチンはさらに医薬的又は獣医的に許容できる担体、賦形剤、ビヒクル又はアジュバントを含むことができる。本組成物はさらに、トリ病原体の少なくとも1つの抗原をコード及び発現する異種ポリヌクレオチドを含む組換え鶏痘ベクター、又は野生型鶏痘を含むことができる。
【0027】
該実施態様のある特徴では、組成物又はワクチンは、1つ(又は2つ以上)の組換えガリドヘルペスウイルス-3(MDV-2)ベクター及び1つ以上の野生型HVT(MDV-3)を含む。別の特徴では、組成物又はワクチンは、1つ(又は2つ以上)の組換えガリドヘルペスウイルス-3(MDV-2)ベクター及び1つ以上の組換えHVT(MDV-3)を含む。別の特徴では、組成物又はワクチンは、1つ以上の組換えガリドヘルペスウイルス-3(MDV-2)ベクター及び1つ以上の野生型又は遺伝的に改変されたMDV-1を含む。別の特徴では、組成物又はワクチンは、1つ以上の組換えガリドヘルペスウイルス-3(MDV-2)ベクター及び1つ以上の組換えMDV-1を含む。別の特徴では、組成物又はワクチンは、1つ以上の組換えガリドヘルペスウイルス-3(MDV-2)ベクター、1つ以上の野生型HVT(MDV-3)及び1つ以上の野生型MDV-1を含む。別の特徴では、組成物又はワクチンは、1つ以上の組換えガリドヘルペスウイルス-3(MDV-2)ベクター、1つ以上の組換えHVT(MDV-3)及び1つ以上の野生型MDV-1を含む。別の特徴では、組成物又はワクチンは、1つ以上の組換えガリドヘルペスウイルス-3(MDV-2)ベクター、1つ以上の野生型HVT(MDV-3)及び1つ以上の組換えMDV-1を含む。さらに別の特徴では、組成物又はワクチンは、1つ以上の組換えガリドヘルペスウイルス-3(MDV-2)ベクター、1つ以上の組換えHVT(MDV-3)及び1つ以上の組換えMDV-1を含む。該野生型HVT(MDV-3)又は野生型MDV-1は、生、弱毒又は遺伝的改変物であり得る。組換えガリドヘルペスウイルス3(MDV-2)ベクター、組換えHVT(MDV-3)及び組換えMDV-1ベクター中の異種ポリヌクレオチドは、同じ又は異なるトリ病原体由来の同じ又は異なる抗原をコードすることができる。
【0028】
医薬的又は獣医的に許容できる担体又はアジュバント又はビヒクル又は賦形剤は当業者に周知である。例えば、医薬的又は獣医的に許容できる担体又はアジュバント又はビヒクル又は賦形剤は、MDワクチンのために用いられるマレック病ワクチン希釈剤であり得る。本発明の方法で用いることができる他の医薬的又は獣医的に許容できる担体又はアジュバント又はビヒクル又は賦形剤には、0.9%NaCl溶液(例えば食塩水)又はリン酸緩衝液、ポリ-(L-グルタメート)又はポリビニルピロリドンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。医薬的又は獣医的に許容できる担体又はビヒクル又は賦形剤は、ベクター(又はin vitroで本発明のベクターから発現されたタンパク質)の投与を促進するか、又はトランスフェクション若しくは感染を促進するか、及び/又はベクター(又はタンパク質)の保存を改善する、任意の化合物又は化合物の組合せであり得る。1回の用量又は用量体積は一般的な記述として本明細書で考察されるが、当業者はまた、当業界の知識とともに本開示を熟読することによって、煩雑な実験を一切行うことなく決定できよう。
【0029】
場合によって、他の化合物を医薬的又は獣医的に許容できる担体又はアジュバント又はビヒクル又は賦形剤として添加することができる。前記には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ミョウバン;CpGオリゴヌクレオチド(ODN)、特にODN 2006、2007、2059又は2135(Pontarollo R.A. et al., Vet. Immunol. Immunopath, 2002, 84: 43-59;Wernette C.M. et al., Vet. Immunol. Immunopath, 2002, 84: 223-236;Mutwiri G. et al., Vet. Immunol. Immunopath, 2003, 91: 89-103); ポリA-ポリU、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(ODA)(“Vaccine Design The Subunit and Adjuvant Approach”,Michael F. Powell and Mark J. Newman(編集)、Pharmaceutical Biotechnology, 6: p.03, p.157);N,N-ジオクタデシル-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)プロパンジアミン(例えばAVRIDINE(商標))(上掲書p.148);カルボマー、キトサン(例えば以下を参照されたい:米国特許出願No. 5,980,912)。
【0030】
本発明の医薬組成物及びワクチンは1つ以上のアジュバントを含むか、又は本質的に前記から成る。本発明の実施に使用される適切なアジュバントは以下である:(1)アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー、無水マレイン酸及びアルケニル誘導体のポリマー、(2)免疫刺激配列(ISS)、例えば1つ以上の非メチル化CpGユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチド配列(Klinman et al., 1996; WO98/16247)、(3)水中油エマルジョン、例えば、以下の文献の147ページに記載されたSPTエマルジョン(“Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach”,M. Powell, M. Newman, Plenum Press(出版)1995)及び同書の183ページに記載されたエマルジョンMF59、(4)四級アンモニウム塩を含む陽イオン脂質、例えばDDA、(5)サイトカイン、(6)水酸化アルミニウム又はリン酸アンモニウム、(7)サポニン、又は(8)本出願に引用され参照により含まれる任意の文献で考察される他のアジュバント、又は(9)前記の任意の組合せ又は混合物。
【0031】
本発明の別の特徴は、1つ以上の抗原に対する免疫学的応答又は1つ以上のトリ病原体に対する防御応答を動物で誘発する方法に関し、本方法は、本発明のワクチン又は医薬組成物を少なくとも1回動物に接種する工程を含む。本発明のさらに別の特徴は、1つ以上の抗原に対する免疫学的応答又は1つ以上のトリ病原体に対する防御応答を動物でプライム-ブースト投与レジメンにより誘発する方法に関し、本方法は、少なくとも1つの共通のポリペプチド、抗原、エピトープ又は免疫原を用いる、少なくとも1回の基礎投与及び少なくとも1回のブースター投与を含む。基礎投与で用いられる該免疫学的組成物又はワクチンは、ブースターとして用いられるものと性質が同じであっても異なっていてもよい。
【0032】
トリ病原体は、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(すなわちIBDV又はグンボロ病ウイルス)、マレック病ウイルス(MDV)、伝染性喉頭気管炎ウイルス(ILTV)、トリ脳脊髄炎ウイルス及び他のピコルナウイルス、トリレオウイルス、トリパラミクソウイルス、トリメタニューモウイルス、トリインフルエンザウイルス、トリアデノウイルス、鶏痘ウイルス、トリコロナウイルス、トリロタウイルス、トリパルボウイルス、トリアストロウイルス及びニワトリ貧血ウイルス、コクシジウム症(アイメリア亜種)、カンピロバクター亜種、サルモネラ亜種、マイコプラズマ・ガリセプチクム、マイコプラズマ・シノビアエ、パスツレラ亜種、アビバクテリウム亜種、大腸菌又はクロストリジウム亜種であり得る。
通常は、ワクチンの1回投与が、1日齢で皮下又は筋肉内経路により、又は17−19日齢の胚にin ovoで実施される。第二の投与は最初の10日齢以内に実施できる。初回投与の時期に、動物は好ましくは少なくとも17日胚又は1日齢である。
1日齢のヒナでは多様な投与経路(例えば皮下又は筋肉内、皮内、経皮)を用いることができる。in ovoワクチン接種は羊膜嚢内及び/又は胚内に実施できる。市場で入手できるin ovo及びSC投与装置をワクチン接種に用いてもよい。
以下の非限定的な実施例によって、これから本発明をさらに述べる。
実施例
DNA挿入物、プラスミド及び組換えウイルスベクターの構築は、J. Sambrookらの文献(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989)に記載された標準的な分子生物学技術を用いて実施された。
【実施例1】
【0033】
NDV-Fを発現する組換え体vSB1-004の構築
本作業の目的は、マウスサイトメガロウイルス(mCMV)プロモーター、ニューカッスル病ウイルス融合タンパク質(NDV-F)、及びサルウイルス40(SV40)ポリAテールを含む発現カセットがSB-1ウイルスのUS10とSORF4部位との間の遺伝子間部位に挿入された組換えSB-1ウイルスを構築することである(表1及び
図2)。
【0034】
表1:vSB1-004の特徴
SB-1
*:メリアル(Merial)社の市販のマレック病ワクチンSB-1((Merial Select Inc., Gainesville, GA 30503, USA)。ワクチンロット番号JV505。
遺伝子型VIId配列(配列番号:3によってコードされる配列番号:2)に対応するニューカッスル病ウイルス融合タンパク質(NDV-F)は化学的に合成した(GenScript, Piscataway, NJ, USA)。この合成遺伝子のFタンパク質切断部位を、レントジェニックなF切断部位配列に適合するように改変させた。得られたNDV-F遺伝子配列は、それぞれアクセッション番号AY337464 (DNA)及びAAP97877.1(タンパク質)としてGenBankに寄託されたNDV-F配列と99%ヌクレオチド同一性及び99%アミノ酸同一性を有する。
【0035】
ドナープラスミドSB-1 US10mFwt SbfIの構築
NotIを用いてpUC57NDV-F VIIdwtプラスミド(GeneScripyが合成)から前記合成NDV-F遺伝子を含むフラグメントを切り出し、mCMVプロモーター及びSV40ポリAテールを含むpCD046プラスミドの同じ部位に挿入した。得られたプラスミドpCD046+NDV-FwtをEcoRI及びSalIで消化し、Klenowで平滑末端を形成した。3.3kbフラグメントをゲル抽出し、フランキングアームを含む、SmaI消化脱リン酸化(CIP実施)ベクター(SB1 US10-SORF4 SbfI pUC57)に連結した。トップ10ワンショットキット(Top10 Oneshot kit;Invitrogen, CA, USA)を用い、連結物質で形質転換を実施した。細菌コロニーをLBampブロスで増殖させ、プラスミドをキアゲンミニスピンプレップキット(Qiagens MiniSpin Prep kit)を用いて抽出し、さらにPstI消化を用いて挿入物の向きについてスクリーニングした。正しいドナープラスミドをSB-1 10mFwt SbfIと称した。大規模培養を増殖させ、キアゲンマキシプレップキット(Qiagens Maxi Prep kit)を用いてプラスミド抽出を実施した。マキシプレップの一過性発現は、ヒュージーン(Fugene)トランスフェクション試薬及び抗NDVニワトリポリクローナル血清を用いてニワトリ胚線維芽細胞(CEF)で確認した。
【0036】
組換え体の作製
標準的な相同組換え手順にしたがい、二代目CEF細胞にSB-1 US10mFwt SbfIドナープラスミド及びSB-1ウイルスのワクチン株から単離したウイルスDNAをコエレクトロポレーションした。コエレクトロポレーションは、300μLのOpti-MEM中の1x10
7の二代目CEFを用いて実施し、2mmエレクトロポレーションキュベットで950静電容量、150ボルトでショックを与えた。このトランスフェクト細胞を96ウェルプレートに播種し、5−7日間インキュベートした。続いて、96ウェルプレートで増殖させた細胞をトリプシン処理し、2枚の“シスター”96ウェルプレートに移し、さらに5日間インキュベートした。1セットの96ウェルプレートを抗NDV-Fニワトリポリクローナル血清によるIFAに用いて組換え体を含む陽性ウェルを同定し、さらに別の96ウェルプレートセットを陽性ウェルから感染細胞を回収するために用いた。
組換えウイルスの精製方法では、最初に96ウェルプレートの複製及び最多のIFA陽性プラーク及び最少量IFA陰性プラーク含有ウェルのIFA選別を実施した。当該基準にマッチするウェルを続いて採集し、DMEM+2%FBSで1mLに調整した。前記1mLストックから、5−20μL(可視プラーク数に応じて)を取り出し、10mLのDMEM+2%FBS中で1x10
7のCEFと混合し、各ウェルにただ1つのSB-1プラークが得られるように適量を新しい96ウェルプレートに加えた。インキュベーション5日後に前記96ウェルプレートを複製し、プラーク含有ウェルについて、組換えSB-1が存在し親ウイルスが存在しないことをIFA及びPCRによって試験した。もう一度、PCRバンド形成結果を比較することによってより多くの組換えウイルスを有するように見えるウェルを採集し、1mLに調整し、さらに適量を新しい96ウェルプレートに加えた。ウイルス感染細胞を3から5回精製した後、NDV-Fタンパク質を発現する組換えSB-1を単離し、この組換えウイルスの純度をIFA及びPCRで試験して親ウイルスが存在しないことを確認した。続いて、選別した組換えウイルスを96ウェルプレートの1ウェル(P0)から2本のT-25フラスコ(P1)に、続いて2本のT-75フラスコ(P2)、2本のT-175フラスコ(P3)、最後に2本の850cm
2のローラーボトル(プレ-MSVストック又はP4)に継代した。2mLアリコットを含むバイアルを液体窒素で保存した。力価測定はトリプリケートでCEFを用いて実施し、1x10
5 pfu/mLの力価がSB1-004について得られた。
【0037】
発現の分析
免疫蛍光試験のために前記P3材料を培養液で1:100に希釈した。前記希釈ウイルスの約50μLを1x10
7のCEFを含むDMEM+2%FBSの10mLに加え、続いて96ウェルプレートに適量を加えた(100μL/ウェル)。このプレートをウイルスのプラークが見えるようになるまで37℃+5%CO
2で5日間インキュベートした。前記プレートを95%の氷冷アセトンで3分間固定し、PBSで3回洗浄した。1:1000の抗ニューカッスル病ウイルスニワトリ抗血清(lot#C0139, Charles Rivers Laboratory)を加え、プレートを37℃で1時間インキュベートした。1時間インキュベートした後、プレートを3回PBSで洗浄し、FITC抗ニワトリ(cat# F8888, Sigma)を1:500で添加した。もう一度プレートを37℃で1時間インキュベートした。1時間インキュベートした後、細胞を3回PBSで洗浄し、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)フィルターを用いて蛍光顕微鏡で可視化した。vSB1-004の全ての被検プラークがNDV-Fタンパク質を発現しているのが認められた(
図3)。
PCRによる組換え体の分析
DNAをフェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿によってストックウイルスから抽出し、20mMのHEPESに再懸濁した。PCRプライマーは、NDV-F VIId遺伝子、プロモーター、SV40ポリA及びSB-1フランキングアームを特異的に同定するために設計した(
図4参照)。HVT(FC126株)、MDV血清型3(MB080+MB081)に特異的なプライマーもまた本分析に加え、SB-1親ウイルスに対する組換えウイルスの純度をチェックした。PCRは20μgのDNA鋳型を指定プライマー対と一緒に用いて実施した。
全てのプライマー対とのPCR反応は予想したPCR生成物及びバンド形成パターンをもたらした。PCRの結果は、組換えウイルスvSB1-004は目的の発現カセットを保持し、ウイルスストックは検出可能量の親SB-1ウイルスを含まないことを示している(
図5)。
ドナープラスミドSB-1 US10mFwt SbfI(配列番号:41)のヌクレオチド配列は
図20に示されている。
PCR試験及び免疫蛍光分析によれば、vSB1-004は、mCMVプロ―モーターの制御下でNDV-F遺伝子を発現する組換えSB-1である。組換えベクターvSB1-004は検出可能な親SB-1ウイルス又は潜在的なHVT夾雑物を全く含まない。
【実施例2】
【0038】
NDV-Fを発現する組換え体vSB1-006の構築
本作業の目的は、SV40プロモーター、ニューカッスル病ウイルス融合タンパク質(NDV-F)、及び合成ポリAテールを含む発現カセットが、SB-1ウイルスのUL55とLORF5部位との間に挿入された組換えSB-1ウイルスを構築することである(表2)。
【0039】
表2:vSB1-006の特徴
コンセンサスコドン最適化遺伝子型VIId配列に対応するニューカッスル病ウイルス融合タンパク質(NDV-F)(配列番号:1によってコードされる配列番号:2)は化学的に合成された(GeneArt)。
【0040】
ドナープラスミドSB-1 UL55 SV Fopt syn tail SbfIの構築
挿入部位のそれぞれの側の約1kbの配列をカバーする合成SB-1 UL55-LOrf5 SbfIプラスミドをSbfIで消化し脱リン酸化した。合成SV OptF syn tail pUC57プラスミド(GenScript)をSbfIで消化し、2239塩基対フラグメントをゲル抽出し、SbfI消化ベクターに連結して、新規なSB-1 UL55 SVFopt syn tail SbfIドナープラスミドを作製した。
組換え体の作製、発現分析及びPCR試験
標準的な相同組換え手順にしたがい、二代目CEF細胞にSB-1 UL55 SV Fopt syn tail SbfIドナープラスミド及びSB-1ウイルスのワクチン株から単離したウイルスDNAをコエレクトロポレーションした。SB1-004のために実施例1で述べた手順に本質的にしたがって、組換え体を作製し、プラーク精製し、免疫蛍光及びPCRによって特徴を決定した。
ドナープラスミドSB-1 UL55 SVFopt syn tail SbfI(配列番号:42)のヌクレオチド配列は
図20に示されている。
組換え体の作製及び発現分析
SB-1ウイルスのゲノムDNAをSB-1 UL55 SVFopt syn tail SbfIドナープラスミドとともにコエレクトロポレーションして、相同組換え技術により組換えSB-1を作製した。組換えウイルスは、免疫蛍光陽性ウェルの選別及び複数回のプラーク精製によって親SB-1ウイルスから分離した。NDV-Fタンパク質を発現する、プラーク精製組換えSB-1ウイルス(vSB1-006と称する)を、組織培養フラスコから2x850cm
2ローラーボトルにスケールアップした。感染後約72時間して、前記感染CEFを採集した。10%FBS及び10%DMSOを含むアリコットを液体窒素で凍結した。力価測定はトリプリケートにてCEFで実施し、SB1-006について8x10
5 pfu/mLの力価を得た。
免疫蛍光は、ニワトリ抗血清(lot# C0139, Charles Rivers Laboratories)、続いてFITC標識抗ニワトリIgG(cat# 02-24-06, KPL)を用いて実施した。vSB1-006の全ての被検プラークがNDV-Fタンパク質を発現することが認められた(
図6)。
vSB1-006のPCR分析
組換えウイルスの純度は、SB-1フランキングアーム、コドン最適化NDV-F VIId、SV40プライマーに特異的なプライマー対とともにHVT特異的プライマー対を用いてPCRによって確認した(
図7参照)。
全てのプライマー対とのPCR反応は予想したPCR生成物及びバンド形成パターンをもたらした。さらにまた、vSB1-006に親SB-1ウイルスが存在するという証拠は認められなかった(
図8)
PCR試験及び免疫蛍光分析によれば、vSB1-006は、SV40プロ―モーターの制御下でコドン最適化NDV-F遺伝子を発現する組換えSB-1であることが確認された。組換えベクターvSB1-006は検出可能量の親SB-1ウイルス及び潜在的なHVT夾雑物を全く含まない。
【実施例3】
【0041】
NDV-Fを発現する組換え体vSB1-007の構築
本作業の目的は、SV40プロモーター、NDVのVIId遺伝子型のF配列と一致するNDV-F遺伝子を含む発現カセットを用いてSB-1ウイルスの糖タンパク質Cのコード配列を置き換えた組換えSB-1ウイルスを構築することである(表3)。
【0042】
表3:vSB1-007の特徴
コンセンサスコドン最適化遺伝子型VIId配列(配列番号:1によってコードされる配列番号:2)に対応するニューカッスル病ウイルス融合タンパク質(NDV-F)は化学的に合成された(GeneArt)。
ドナープラスミドpSB1 44 cds SVOptFの構築
フランキングアームを含む合成pSB1 44cdsプラスミドは遺伝子合成によって作製された(GenScript)。pSB1 44cdsをSbfIで消化し、脱リン酸化した。SV-OptF-syn no polyA tail-pUC57と称される別のプラスミドをSbfIで消化し、SV40プロモーター及びNDV-F遺伝子を含む2.1kbフラグメントをゲル抽出し、SbfI消化ベクターに連結し、トップ10ワンショットキット(Invitrogen)を用い形質転換を実施した。細菌コロニーをLB-アンピシリン培地(100μg/mL)で増殖させ、プラスミドをキアゲンミニスピンプレップキット(Qiagen Mini Spin Prep kit)を用いて抽出し、EcoRI及びNcoI消化により挿入についてスクリーニングした。得られたドナープラスミドをpSB1 44cds SVOptFと称した。
合成プラスミドpSB1 44cds(配列番号:36、
図20)もまた、更なる改変無しに(NDV-F発現カセットを挿入することなく)ドナープラスミドとして用い、糖タンパク質C(gC)遺伝子を欠く組換えSB-1を作製することができる。
【0043】
組換え体の作製及び発現分析
標準的な相同組換え手順にしたがい、二代目CEF細胞にドナープラスミドpSB1 44 cds SVOptF及びSB-1ウイルスのワクチン株から単離したウイルスDNAをコエレクトロポレーションした。SB1-004のために実施例1で述べた手順に本質的にしたがって、組換え体を作製し、プラーク精製し、免疫蛍光によって特徴を決定した。NDV-Fタンパク質を発現する、プラーク精製組換えSB-1ウイルス(vSB1-007と称する)を、T-25組織培養フラスコから10xT-150cm
2フラスコにスケールアップした。感染CEF細胞を採集し、10%FBS及び10%DMSOを含むアリコットを液体窒素で凍結した。力価測定はトリプリケートにてCEFで実施し、SB1-007について7.2x10
4 pfu/mLの力価を得た。
免疫蛍光は、ニワトリ抗血清(lot# C0139, Charles Rivers Laboratories)、続いてFITC標識抗ニワトリIgG(cat# 02-24-06, KPL)を用いて実施した。vSB1-007の全ての被検プラークがNDV-Fタンパク質を発現することが認められた(
図9)。
vSB1-007のPCR分析
ウイルスDNAはP1からP6のSB1-007からQIA DNイージーブラッドアンドティシュー(QIA DNeasy Blood & Tissue)キット(Qiagen)によって抽出した。PCRプライマーは、NDV-F(コドン最適化)、SV40プロモーター及びUL44フランキングアームの存在を特異的に同定できるように設計された(
図10参照)。PCR増幅は、200ngのDNA鋳型を指定プライマー対と一緒に用いて実施した。
同様に、合成プラスミドpSB1 44cds及びSB-1ウイルスのワクチン株から単離したウイルスDNAを用いる標準的な相同組換え手順は、gC遺伝子のコード領域が欠失した組換えSB-1を作出するであろう。2つのPCRプライマー(SB1 43.F及びSB1 45.R(表4))は、親SB-1ウイルスの1540ヌクレオチドに対してgC欠失組換えSB-1のための103ヌクレオチドのPCR生成物をもたらすであろう。
組換えウイルスの純度は、SB-1フランキングアーム、コドン最適化NDV-F VIId、SV40プロモーターに特異的なプライマー対とともにHVTに特異的なプライマー対(MB080+MB081)を用いてPCRによって確認した。全てのプライマー対とのPCR反応は予想したPCR生成物及びバンド形成パターンをもたらした。さらにまた、vSB1-007に親SB-1ウイルスが存在するという証拠は認められなかった(表4−5及び
図11)。
【0044】
表4:PCRプライマー
表5:予想されるアンプリコンのサイズ
PCR試験及び免疫蛍光分析によれば、vSB1-007は、SV40プロ―モーターの制御下でコドン最適化NDV-F遺伝子を発現する組換えSB-1である。NDV-F発現カセットを用いて、SB1のgC遺伝子の置き換えることができ、gCはSB-1ウイルスのin vitro増殖のためには不要であることを示している。組換えベクターvSB1-007は検出可能量の親SB-1ウイルス又はHVTを全く含まない。
ドナープラスミドpSB1 44cds SVOptF(配列番号:43)のヌクレオチド配列は
図20に示されている。
【実施例4】
【0045】
NDV-Fを発現する組換え体vSB1-008の構築
本作業の目的は、SV40プロモーター、NDVのCA02株のF配列と一致するNDV-F遺伝子、及び合成ポリAテールを含む発現カセットが、SB-1ウイルスのUL55とLORF5部位との間に挿入された組換えSB-1ウイルスを構築することである(表6)。
【0046】
表6:vSB1-008の特徴
コドン最適化遺伝子型V(CA02株)配列(配列番号:8によってコードされる配列番号:9)と一致するNDV-Fは化学的に合成された(GeneArt)。この合成遺伝子のFタンパク質切断部位をレントジェニックなF切断部位配列に適合するように改変させた。得られたNDV-F遺伝子配列は、GenBank(ABS84266)に寄託されたNDV-F配列と99%のアミノ酸同一性を有する。
ドナープラスミドSB-1 UL55 SV CaFopt syn tail SbfIの構築
挿入部位のそれぞれの側の約1kbの配列を含む合成SB-1 UL55-LOrf5 SbfIプラスミド(Genscript)をSbfIで消化し脱リン酸化した。合成SV OptF syn tail pUC57プラスミド(GenScript)をSbfIで消化し、synテールを含む2239塩基対フラグメントをゲル抽出し、SbfI消化ベクターに連結して、新規なSB-1 UL55 SVFopt syn tail SbfIドナープラスミドを作製した。このドナープラスミドを続いてNotI消化し、CIP実施し、5196塩基対フラグメントをゲル抽出した。合成NDV-F CAO2 CSmut 0813005 pVR101ドナープラスミド(GeneArt)をNotIで消化し、1677塩基対フラグメントをゲル抽出し、さらにNotI消化してCIP実施したUL55ベクターに連結し、ドナープラスミドSB1 UL55 SV CaFopt syn tail SbfIを生じた。
組換え体の作製及び発現分析
標準的な相同組換え手順にしたがい、二代目CEF細胞にドナープラスミドSB-1 UL55 SV CaFopt syn tail SbfI及びSB-1ウイルスのワクチン株から単離したウイルスDNAをコエレクトロポレーションした。実施例1で述べた手順に本質的にしたがって組換え体を作製し、免疫蛍光及びPCRによって特徴を決定した。
組換えウイルスは、免疫蛍光陽性ウェルの選別及び複数回のプラーク精製でのPCRスクリーニングによって親SB-1ウイルスから分離した。NDV-Fタンパク質を発現する、プラーク精製組換えSB-1ウイルス(vSB1-008と称する)を、組織培養フラスコから2x850cm
2ローラーボトルにスケールアップした。ローラーボトルでの感染から72時間後に感染CEFを採集した。10%FBS及び10%DMSOを含むアリコットを液体窒素で凍結した。
免疫蛍光は、ニワトリ抗血清(Charles Rivers Laboratories)、続いてFITC標識抗ニワトリIgG(KPL)を用いて実施した(
図12)。
vSB1-008のPCR分析
組換えウイルスの純度は、SB-1フランキングアーム、コドン最適化NDV-F VIId、SV40プライマーに特異的なプライマー対(
図13参照)とともにHVT、MDV血清型3に特異的なプライマー対(MB080+MB081)を用いてPCRによって確認した。全てのプライマー対とのPCR反応は予想したPCR生成物及びバンド形成パターンをもたらした。さらにまた、vSB1-008に親SB-1ウイルスが存在するという証拠は存在しない(
図14)。
ドナープラスミドSB-1 UL55 CaFopt syn tail SbfI(配列番号:44)のヌクレオチド配列は
図20に示されている。
PCR試験及び免疫蛍光分析によれば、vSB1-008は、SV40プロ―モーターの制御下でコドン最適化NDV-F遺伝子を発現する組換えSB-1であることが確認された。組換えベクターvSB1-008は検出可能な親SB-1ウイルス又はHVTを全く含まない。
【実施例5】
【0047】
NDV-Fを発現する組換え体vSB1-009及びvSB1-010の構築
本作業の目的は、組換えSB-1ウイルスベクターvSB1-009(前記ウイルスでは、SV40プロモーター及びニューカッスル病ウイルス融合(NDV-F)遺伝子を含む発現カセットが、SB-1のUL44コード(gC)配列と入れ替えるために挿入される)を構築すること、及び組換えSB-1ウイルスベクターvSB1-010(前記ウイルスでは、モルモットCMVプロモーター及びNDV-F遺伝子を含む追加の発現カセットがSB1-009ベクター骨格のSORF-US2遺伝子座に挿入される)を構築することである。
実施例5.1:vSB1-009の構築
SB1ウイルスのUL44フランキングアーム、SV40プロモーター及びNDV Fコドン最適化遺伝子配列を含む、ドナープラスミドpSB1 44 cds SV FCAoptを構築した(配列番号:9をコードする配列番号:8)(表7)
【0048】
表7:SB1-009の特徴
組換えウイルスの作製
標準的な相同組換え手順にしたがい、二代目CEF細胞にドナープラスミドpSB1 44 cds SV FCAopt及びSB-1ウイルス感染CEFから単離したウイルスDNAをコエレクトロポレーションした。実施例1で述べた手順に本質的にしたがって組換え体を作製し、プラーク精製し、免疫蛍光によって特徴を決定した。
2回プラーク精製した後、純粋な組換えウイルス(vSB1-009)を単離し、vSB1-009の純度をIFA及びPCRによって試験し、挿入が適切であること及び残留親ウイルスが存在しないことを確認した。
PCR分析
ウイルスDNAをvSB1-009プレ-マスター種ウイルス(プレ-MSV)ストックからQIA DNイージーブラッドアンドティシュキット(Qiagen)によって抽出した。PCRプライマーは、NDV-F最適化、NDV-F野生型、SV40プロモーター、mCMVプロモーター、SB-1ウイルスのUL44フランキングアーム、及びHVTウイルスの存在を同定できるように設計された。PCR増幅は、約200ngのDNA鋳型をプライマー対と一緒に用いて実施した。
多様なプライマーを用いたPCR増幅によって、前記vSB1-009は予想通りの増幅パターン及びアンプリコンを有することが確認された。
発現の分析
間接免疫蛍光アッセイ(IFA)を、vSB1-009プレ-MSVストックで実施して、NDV-F遺伝子及びSB-1ウイルス抗原の発現を試験した。vSB1-009を接種したCEFを氷冷95%アセトンにより3分間室温で固定し、10分間風乾した。プレートをPBSで洗浄し、続いて1:500稀釈の一次抗体、ニワトリ抗ニューカッスル病ウイルス血清(Charles Rivers Laboratories cat#10100641, lot#C0117A)及び1:3000稀釈の抗SB-1ウイルスY5.9モノクローナル抗体(Merial Select, Gainesville, GA)を添加し、前記プレートを37℃で45分間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、2つの二次抗体、ヤギ抗ニワトリIgG-フルオレセイン(KPL)(1:500稀釈)及びロバ抗マウスIgG-Alexa Fluor568(Molecular Probe)(1:250)を添加した。前記プレートを37℃で45分間インキュベートし、続いてPBSで3回洗浄した。ニコンエクリプス(Nikon Eclipse)Ti倒立顕微鏡のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)及びテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)フィルターを用いて、ウェルをIFA陽性プラークについて蛍光顕微鏡によりスクリーニングした。同様に、一次抗体として抗MDV血清(Charles River Laboratories)(1/300希釈)及び抗NDV-Fモノクローナル抗体(1/300希釈)を用い、vSB1-009とNDV-F Mabとの反応性を二重IFAによって試験した。二次抗体としてヤギ抗ニワトリIgG-フルオレセイン(KPL)(1:500稀釈)及びロバ抗マウスIgG-Alexa Fluor568(Molecular Probe)(1:250)を用いた。ニコンエクリプスTi倒立顕微鏡のFITC-フィルター及びTRITC-フィルターを用い、蛍光顕微鏡でウェルを観察してIFA陽性プラークを同定した。
IFAの結果は、SB1-009は、ウイルス感染CEFでNDV-Fタンパク質を発現することを示した。500を超えるvSB1-009プラークがNDV-Fタンパク質発現について、二重IFAではSB-1ウイルス特異的タンパク質発現について計測された。NDV-Fタンパク質の発現は、SB-1ウイルス抗原発現と各ウイルスプラークにおいて完全に一致した(表8)。
【0049】
表8:vSB1-009の二重IFA
NDV-F Mabの反応性は二重IFAによって確認された。200を超えるvSB1-009プラークをNDV-FMab反応性とともに抗MDV血清反応性について試験した。NDV-F Mabとの反応性は、各ウイルスプラークにおいて抗MDV血清の反応性と完全に一致した(表9)。
【0050】
表9:vSB1-009と抗NDV-F Mabとの反応性
サザンブロット分析
全ゲノムDNAをvSB1-009プレ-MSVストック感染CEFから抽出した。vSB1-009、SB-1ウイルス(陰性コントロール)、pSB1 44 cds SV FCAoptドナープラスミドのゲノムDNAを、EcoRI、NcoI及びKpnI制限エンドヌクレアーゼで別々に消化した。前記制限フラグメントを0.8%アガロースゲル電気泳動で分離し、陽電荷荷電ナイロン膜に移した。移転後、当該膜を0.4MのNaOHで処理し、続いて2xSSC-HCl緩衝液で中和した。続いて前記膜を風乾しさらにUV架橋した。
ノース2サウス(North2South)ケミルミネセンスハイブリダイゼーションアンドディテクションキット(Thermo Scientific cat#89880)の製造業者の指示にしたがい、前記膜を1時間プレハイブリダイズし、続いて55℃にてプローブで一晩ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションでは、以下の2つのプローブを用いた:(1)NDV-FカセットプローブとしてpSB1 44 cds SV FCAoptのSbfIフラグメント、(2)組換えアームプローブとしてpUC57 SB1 44 arm(GenScript)のSmaI-EcoRIフラグメント。一晩ハイブリダイズさせた後、ストレプトアビジン-HRP添加ブロッキング緩衝液で置き換えられるまでいくつかのストリンジェンシー洗浄を実施した。一切の未結合ストレプトアビジン-HRPを膜から洗い流した後、ルミナール及び過酸化物の基質溶液を添加した。続いて前記膜をX-線フィルムに暴露し、フィルムを感光させた。
サザンブロットの結果はベクターNTIマップ分析で予想された通りであった。NDV-Fカセット(SV40プロモーター、NDV-F CA02コドン最適化遺伝子)が、SB-1ウイルスのUL44コード配列と入れ替わっていた。
ゲノム分析
vSB1-009プレ-MSVストックのゲノムDNAを、組換えアーム領域および挿入遺伝子カセットのヌクレオチド配列決定のために処理した。組換えアームを含む完全なNDV-F遺伝子カセットの増幅のために、プライマーを設計し用いた。
組換えアーム、SV40プロモーター及びNDV-Fコドン最適化遺伝子を含むvSB1-009配列(ドナープラスミドpSB1 44 cds SV FCAopt)は、配列番号:37(
図20)で示される通り正確であることが確認された。
【0051】
ウェスタンブロット分析
単層CEFにvSB1-009をMOI約0.1で感染させた。5日間インキュベートした後、CEFをペレットにし、PBSで洗浄し、続いてIP溶解/洗浄緩衝液(Pierce Classic IP Kit;Thermo Scientific cat#26146)で製造業者のプロトコールにしたがって溶解させた。前記溶解物を予備清浄し、100μLの抗NDV-Fモノクローナル抗体とインキュベートして免疫複合物を生成した。前記免疫複合物をプロテインA/Gプラスアガロースで捕捉した。未結合免疫複合物を洗浄工程によって除去した後、50μLのサンプル緩衝液を用い非還元条件下で溶出させた。非感染CEFをコントロールとして含めた。20μLの溶出サンプルを10%ビス-トリスゲルの電気泳動によって分離させた。電気泳動の後でゲルの分離タンパク質をPVDF膜に移した。タンパク検出TMBウェスタンブロットキット(KPL cat#14-24-06)を用い、製造業者のプロトコールにしたがいニワトリ抗NDV血清(Charles River Laboratories cat#10100641, lot#C0117A)及びヤギ抗ニワトリIgG-ペルオキシダーゼ結合物(KPL, cat# 14-24-06)でPVDF膜上のNDV抗原を検出した。
vSB1-009のNDV-Fタンパク質発現は二段階免疫検出によって確認した。第一に、vSB1-009感染CEF溶解物の発現NDV-Fタンパク質を、抗NDV-Fモノクローナル抗体001C3による免疫沈降で捕捉した。続いて、抗NDVポリクローナル血清(Charles River Laboratories cat#10100641, lot#C0117A)によるウェスタンブロットを利用して捕捉サンプル中のNDV-Fタンパク質(NDV-Fタンパク質-モノクローナル抗体複合物)を検出した(
図15)。vSB1-007プレ-MSV溶解物中の約55kDaタンパク質が抗NDV血清によって検出され、NDV-F1融合タンパク質の予想サイズと一致した(
図15)。
【0052】
実施例5.2:vSB1-010の構築
ドナープラスミドSB1US2 gpVIIdwtsynの構築
プラスミドHVT SOrf3-US2 gpVar-Ewt Synを用い、gpCMV、変種E、SynテールをSbfI消化によって取り出した。このフラグメントをSB1 US2ドナープラスミドに連結した。変種E遺伝子をNotIによって切り出し、NDV-F VIId wtと入れ替えた。合成NDV-F VIId野生型遺伝子(配列番号:2は配列番号:3をコードする)は、NotI消化を用いてpUC57 NDV-F VIId wtプラスミド(GeneScriptが合成)から切り出した。トップ10ワンショットキット(cat#C404002, Invitrogen)を用い、連結材料で形質転換を実施した。細菌コロニーをLBampブロスで増殖させ、キアゲンミニスピンプレップキットを用いてプラスミドを抽出し、さらにNcoI+SalI消化を用いて挿入物の向きについてスクリーニングした。正しいドナープラスミドをpSB1 US2 gpVIIdwt Synと称した。表10.1は該発現カセットに関する構築物に固有の特色(対応する配列を含む)を示す。大規模培養を増殖させ、キアゲンマキシプレップキットを用いてプラスミド抽出を実施した。マキシプレップの一過性発現は、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)でのヒュージーントランスフェクション試薬及び抗NDV-Fニワトリポリクローナル血清の使用によって確認した。
組換え体の作製
標準的な相同組換え手順にしたがい、二代目CEF細胞にpSB1 US2 gpVIIdWt Synドナープラスミド及びvSB1-009(vSB1-009は既にNDVのCA01遺伝子を発現する組換えウイルスである)から単離したウイルスDNAをコエレクトロポレーションした。実施例1で述べた手順に本質的にしたがって、組換え体を作製し、プラーク精製し、免疫蛍光によって特徴を決定した。
5回プラーク精製した後、純粋な組換えウイルス(vSB1-010)を単離し、vSB1-010の純度をIFA及びPCRによって試験し、挿入が適切であること及び残留親ウイルスが存在しないことを確認した。
【0053】
表10.1:vSB1-010の特徴
挿入領域の配列決定によって、vSB1-010は、モルモットCMVプロモーター及びドナープラスミドSB1US2 gpVIIdwtsynの配列(配列番号:57)に示すNDV-F VIId wt遺伝子の正確な配列を含むことが確認された。
PCRによる組換え体の分析
DNAをフェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿によってストックウイルスから抽出し、20mMのHEPESに再懸濁した。PCRプライマーを、NDV-F VIId wt遺伝子、プロモーター、ポリAの特異的同定とともに、SB1親ウイルス由来の組換えウイルスの純度のために設計した。PCRは20μgのDNA鋳型を表1に示した指定プライマー対と一緒に用いて実施した。PCRサイクル条件は(特段の指定がなければ)以下のとおりである:94℃で2分;94℃で30秒、55℃で30秒、68℃で3分の30サイクル;68℃で5分。
組換えウイルスの純度は、SB1フランキングアーム、gpCMVプロモーター、NDV-F VIId wt遺伝子及びsynテールに特異的なプライマー対を用いてPCRによって立証した。HVT、MDV血清型3(MB080+MB081)に特異的なプライマーもまた本分析に加えた。PCRの結果は、組換えウイルスvSB1-010は意図する発現カセットを保持し、当該ウイルスストックは検出可能量の親SB1-009ウイルスを全く含まないことを示した。
2つのNDV-Fタンパク質を発現する組換えvSB1-010の免疫蛍光染色
免疫蛍光試験のためにP3材料を培養液で1:100に希釈した。前記希釈ウイルスの約50μLを1x10
7のCEFを含むDMEM+2%FBSの10mLに加え、続いて96ウェルプレートに適量を加えた(100μL/ウェル)。このプレートをウイルスのプラークが見えるようになるまで37℃+5%CO
2で5日間インキュベートした。前記プレートを95%の氷冷アセトンで3分間固定し、PBSで3回洗浄した。1:1000の抗ニューカッスル病ウイルスニワトリ抗血清(lot#C0139, Charles Rivers Laboratory)を加え、プレートを37℃で1時間インキュベートした。1時間インキュベートした後、プレートを3回PBSで洗浄し、FITC抗ニワトリ(cat# F8888, Sigma)を1:500で添加した。もう一度プレートを37℃で1時間インキュベートした。1時間インキュベートした後、細胞を3回PBSで洗浄し、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)フィルターを用いて蛍光顕微鏡で可視化した。
免疫蛍光染色の結果は、vSB1-010は、NDVのCA02及びVIId Fタンパク質の両方に対するポリクローナル血清を用いたとき、NDV-Fタンパク質の非常に強い発現を提示することを示した。
結論
PCR試験及び免疫蛍光分析によれば、vSB1-010は、gpCMVプロモーターの制御下にあるNDVのVIId-F遺伝子がvSB1-009(前記は既にNDVのCA02-F遺伝子を発現する)に上手く挿入された組換えSB-1である。結果として、SB1-010はNDV遺伝子型のVIId及びCA02 F遺伝子の両方を保持し、検出可能な親vSB1-009を全く含まない。
【実施例6】
【0054】
NDV-Fを発現する組換え体vHVTベクターの構築
HVT114のためのドナープラスミドpHM103+Foptの調製
HVT FC126の遺伝子間Iアーム、SV40プロモーター及びSV40ポリAを含むプラスミドpHM103(Merial Limited)をNotIで消化し、脱リン酸化し、5.6kbフラグメントをゲル抽出した。化学的に合成したコドン最適化遺伝子型VIId NDV-F遺伝子(配列番号:1、配列番号:2をコードする)のNotIフランキング1.7kbフラグメントもまたNotI消化し、1.7kbフラグメントをゲル抽出した。前記5.6kb及び1.7kbフラグメントを連結しpHM103+Foptを作製した(表10.2)。
【0055】
表10.2:vHVT114の特徴
組換えHVTウイルスベクターの作製
標準的な相同組換え手順にしたがい、二代目CEF細胞にドナープラスミドpHM103+Fopt及びHVT株FC126(Igarashi T. et al., J. Gen. Virol. 70, 1789-1804, 1989)から単離したウイルスDNAをコエレクトロポレーションした。実施例1で述べた手順に本質的にしたがって組換え体を作製し、プラーク精製し、免疫蛍光によって特徴を決定した。
5回プラーク精製した後、vHVT114と称される組換えウイルスを単離し、純度をIFA及びPCRによって試験して、NDV-Fの発現及び親ウイルスが存在しないことを確認した。
組換え体vHVT114のPCR分析
DNAをフェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿によってvHVT114から抽出し、20mMのHEPESに再懸濁した。PCRプライマーは、コドン最適化NDV-F、SV40プロモーターの存在の特異的同定と併せてFC126CL2親ウイルスに対する組換えウイルスの純度のために設計した。
PCRの結果は、ゲル電気泳動後のPCR生成物のサイズは予想されるサイズ及びバンド形成パターンに良好に一致することを示した。
組換え体vHVT114の挿入領域の配列分析
vHVT114のゲノムDNA領域の分析をPCR増幅によって実施した。合計10プライマーを用いて完全なカセットとともにドナープラスミドで用いられたフランキングBamHIアームを超える部分も増幅した。4.727kbのPCR生成物をゲル精製し、シークェンシングプライマーを用いて完全なフラグメントの配列を決定した。前記配列の結果から、vHVT114は、配列番号:38(
図20参照)のドナープラスミドpHM103+Foptに関して記載された配列と正確に一致する、正しいSV40プロモーター、コドン最適化NDV-F及びSV40ポリA配列を含むことが確認された。
【0056】
組換え体vHVT114のウェスタンブロット分析
ほぼ2x10
6のニワトリ線維芽細胞にvHVT114プレ-MSVをMOI約0.1で感染させた。37℃で2日間インキュベートした後で、培養液の除去及びPBSによる洗浄後にセルスクレイパーを用いて感染細胞とともに非感染細胞を採集した。細胞を1mLのPBSに採集し遠心分離した。前記細胞ペレットをピアスクラシックIPキット(Pierce Classic IP Kit;Thermo Scientific)に溶解した。100μLの抗NDV-Fモノクローナル抗体001C3(Merial Limited)を用いて免疫複合物を形成した。前記抗体/溶解サンプルをプロテインA/Gプラスアガロースに添加して前記免疫複合物を捕捉した。前記免疫複合物を3回洗浄して未結合物質を除去し、続いてサンプル緩衝液溶出を用いて非還元条件下で50μL体積中に溶出させた。5分間煮沸後に、サンプルの10μLを10%アクリルアミドゲル(Invitrogen)にロードした。PAGEゲルは200ボルトにて1時間MOPS緩衝液(Invitrogen)で泳動させた。続いてゲルをPVDF膜に転写した。
タンパク検出装置ウェスタンブロットキットTMBシステム(KPL cat#54-11-50)をPVDF膜のブロッティングのために用い、該当試薬を製造業者の指示にしたがって用いた。前記膜を1時間室温でブロッキングした後、膜を1x洗浄緩衝液で3回、各回5分洗い流し、続いてニワトリ抗NDVウイルス血清(Lot#C0139、Charles River Laboratories)の1:1000稀釈を含むブロッキング緩衝液に浸漬した。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、前記膜を1:2000稀釈のペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ニワトリIgG(KPL, cat#14-24-06)とともに1時間室温でインキュベートした。続いて前記膜を1x洗浄緩衝液で3回、各回5分洗浄した。5mLのTMB膜ペルオキシダーゼ基質を前記膜に添加し、約1分間穏やかに揺らした。前記膜を水に入れることによって現像反応を停止させた。
前記免疫沈降及びウェスタンブロット技術によってvHVT114サンプルでほぼ55kDのタンパク質が検出され、前記はNDV-Fタンパク質のF1成分の予想サイズと一致する(
図16)。
他のHVT組換え体の作製及び特徴決定
他のHVT組換え体、例えばvHVT039、vHVT110、vHVT111、vHVT112、vHVT113及びvHVT116の作製及び特徴決定を、上記に記載したvHVT114のための方法と本質的に同じ方法で実施した。組換えHVTウイルスベクターの作製及び特徴決定はまた米国特許出願_号(_年_月_日出願(Merial limited))(前記文献は参照により本明細書に含まれる)にも記載された。表11は発現カセットに関して各構築物に固有の特色(対応する配列を含む)を示す。
【0057】
表11:単一HVT組換え体の発現カセット特徴
【実施例7】
【0058】
NDV-F及びIBDV VP2を発現する二重HVTベクター並びにIBDV VP2変種を発現する二重HVTベクターの構築
vHVT306のためのドナープラスミドpHVT US2 SV-Fopt-synPAの調製
SV40プロモーター、合成NDV Fコドン最適化VII遺伝子、HVT FC126のSORF3及びUS2アーム配列によってフランキングされた合性ポリAテールを含むドナープラスミドpHVT US2 SV-Fopt-synPAを構築した。
組換えウイルスの作製
標準的な相同組換え手順にしたがい、二代目CEF細胞にドナープラスミドpHVT US2 SV-Fopt-synPA及びvHVT13(IBDV VP2遺伝子を発現するHVTベクター、Merial Limited)から単離したウイルスDNAをコエレクトロポレーションした。実施例1で述べた手順に本質的にしたがって組換え体を作製し、プラーク精製し、免疫蛍光によって特徴を決定した。
2回プラーク精製した後、純粋な組換えウイルス(vHVT306)を単離し、vHVT306の純度をIFA及びPCRによって試験し確認した。
PCR分析
ウイルスDNAをvHVT306プレ-マスター種ウイルス(プレ-MSV)ストックからQIA DNイージーブラッドアンドティシュキット(Qiagen)によって抽出した。PCRプライマーは、NDV-F最適化、NDV-F野生型、SV40プロモーター、mCMVプロモーター、US2 HVTウイルス及びSB-1ウイルスのフランキングアームの存在を同定できるように設計された。
多様なプライマーを用いたPCR増幅によって、vHVT306は予想通りの増幅パターン及びアンプリコンを有することが確認された。
ゲノム分析
vHVT306プレ-MSVストックのゲノムDNAの配列を決定して、組換えアーム領域とともに挿入された遺伝子カセットの配列を確認した。
プライマーは、ドナープラスミドで用いられた組換えアームを含む完全な挿入遺伝子カセットを増幅できるように設計した。vHVT306ゲノムDNAの分析はPCR増幅によって実施し、続いてヌクレオチド配列を決定した。
組換えアーム、SV40プロモーター及びNDV-Fコドン最適化遺伝子を含むvHVT306(ドナープラスミドpHVT US2 SV-Fopt-synPA)は、配列番号:45(
図20)に示された通りであることが確認された。
【0059】
ウェスタンブロット分析
vHVT306のNDV-Fタンパク質発現は二段階免疫検出によって確認した。第一に、vHVT306感染CEFの発現NDV-Fタンパク質を、抗NDV-Fモノクローナル抗体001C3(Merial Limited)による免疫沈降で捕捉した。続いて、抗NDVポリクローナル血清(Charles River Laboratories)によるウェスタンブロット分析を利用して捕捉サンプル中のNDV-Fタンパク質(NDV-Fタンパク質-モノクローナル抗体複合物)を検出した。NDV-F1融合タンパク質の予想サイズと一致する、vHVT306プレ-MSV溶解物中の約55kDaタンパク質が抗NDV血清によって検出された。
他の二重HVT組換え体の作製及び特徴決定
二重HVT組換え体、例えばvHVT301、vHVT302、vHVT303、vHVT304、vHVT202及びvHVT307の作製及び特徴決定を、上記に記載したvHVT306のための方法と本質的に同じ方法で実施した。組換えHVTウイルスベクターの作製及び特徴決定はまた米国特許出願_号(_年_月_日出願(Merial limited))(前記文献は参照により本明細書に含まれる)にも記載された。表12は発現カセットに関して各構築物に固有の特色(対応する配列を含む)を示す。
【0060】
表12:二重HVT組換え体の発現カセット特徴
【実施例8】
【0061】
gC欠失SB-1変異体の水平伝播の欠如
本実験の目的は、親SB-1によって誘発されるウイルス血症及び水平伝播のレベルとgC遺伝子欠失組換えSB-1ウイルス(実施例3を参照されたい)のレベルとを比較することであった。
30羽の1日齢特定病原体非保有(SPF)白色レグホン鶏の2グループ(A及びB)を無作為に構成した。グループAの20羽のトリに皮下経路(頸部の首筋;0.2mL/トリ)で2000PFUの親SB-1を、グループBの20羽に2000PFUのgC欠失SB-1変異体をワクチン接種した(D0)。10羽のトリはワクチン接種トリと同じ隔離部屋でワクチンを接種しないで維持した(グループAc及びBc)。2週齢(D14)で、安楽死後にグループA及びBの20羽のワクチン接種トリの脾臓とともに2枚の羽を摘出した。4週齢(D28)でグループAc及びBcの10羽の接触トリの脾臓をウイルス単離のために摘出した。白血球は、リンパ球分離媒体を添加しすり潰した脾臓のバフィーコートから収集し遠心分離した。各トリについて、10
6のリンパ球を60mmの組織培養皿(前日に調製したコンフルエントな単層初代ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)を含んでいた)に添加した。感染後5日して、各皿のMDVプラークを数え、陽性トリの数及びプラークの平均数を計算した。羽胞サンプルについては、羽髄をSPGA媒体に添加し、10秒間超音波処理してから、培養液を取り除いたコンフルエントな初代CEF単層上に加えた。前記髄懸濁物は1%のウシ血清を含む新しい培養液を添加する前に45分間吸着させた。D14のワクチン接種トリの脾臓及び羽胞からのウイルス単離の結果は表13に報告されている。両グループの全てのトリが脾臓からのウイルス単離について陽性で、グループA及びBについてそれぞれ142.5及び176.0の類似する平均プラーク数を示した。グループAでは全てのトリ及びグループBでは90%のトリの羽胞からウイルスを単離することができた。
D28のワクチン非接種接触トリの脾臓からのウイルス単離の結果は表14に報告されている。グループAcの10羽のトリのうち7羽が脾臓からのウイルス単離が陽性で、親SB-1が接触トリに水平拡散したことを示している。グループBcのトリからはウイルスを単離できず、gC欠失変異体は接触トリに拡散しなかったことを示している。
【0062】
表13:D14のグループA及びBのワクチン接種トリの脾臓バフィーコート(BC)及び羽胞(FF)のウイルス単離の結果
*脾臓バフィーコート(BC)の平均プラーク計測数
**羽胞の陽性サンプル
***TNTC多過ぎて計測不能
【0063】
表14:D28のグループAc及びBcの非ワクチン接種接触トリの脾臓バフィーコートのウイルス単離の結果
*平均プラーク計測数
本実験は、ワクチン接種後D14で測定したgC欠失SB-1変異体のウイルス血症レベルは親SB-1ウイルスのレベルと類似することを示し、gC欠失はワクチン接種トリでSB-1増殖能力を損なわないことを示唆した。羽胞のウイルスレベルは、20羽のトリのうち2羽が検出可能量のウイルスを保有しないのでgC欠失変異体でわずかに低かった。水平伝播は、親SB-1でワクチン接種したトリと接触した10羽のうち7羽で検出できた。対照的に、gC欠失変異体でワクチン接種したトリと接触したトリからはウイルスは検出できず、gC欠失は水平伝播を激しく損なうことを示した。
【実施例9】
【0064】
SB-1組換え体単独又はHVT-IBDベクターワクチン併用SB-1組換え体によって1日齢ニワトリで誘発されるND有効性
本実験の目的は、vSB1-004単独又はHVT-IBDベクターワクチン併用によりワクチン免疫したSPFニワトリの4週齢で実施されたNDチャレンジに対する、NDV-F遺伝子を発現するSB1-004組換え体の有効性を評価することであった。
15羽の1日齢特定病原体非保有(SPF)白色レグホン鶏の3グループ(1、2及び3)を無作為に構成した。以下の2つのベクターワクチンを用いた:実施例1に記載のvSB1-004、及びvHVT13、すなわち伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスFaragher52/70株のVP2遺伝子を発現するシチメンチョウヘルペス(HVT)ベクター(認可されたMerialのVAXXITEK(商標)HVT+IBDワクチンの活性成分、US 5,980,906及びEP 0 719 864)。グループ1、2及び3のトリは、vHVT13のみ(コントロール)、vSB1-004のみ、及びvHVT13及びvSB1-004の混合物をそれぞれ投与された(表6参照)。全てのトリが皮下経路(頸部の首筋)により2000PFUのvSB1-004及び/又はvHVT13を接種された(D0)。ワクチン接種から27日後(D27)に各グループのトリを遺伝子型V メキシコChimalhuacan(Mex V)ベロジェニックNDV株でチャレンジした。前記チャレンジは、0.2mLの生理学的滅菌水で稀釈した10
5鶏卵感染用量50(EID50)を用いて筋肉内経路によって実施した。トリをチャレンジ後14日間毎日臨床徴候及び死亡率について観察した。口腔咽頭拭き取り検体もまた、チャレンジの5、7及び9日後に各グループに付き10羽からサンプル採取した。M遺伝子を基準にした定量的な逆転写酵素リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を用いて、これらの拭き取り検体でウイルスRNA負荷をRNA抽出後に評価した(前記はWiseらによって記載されている:Wise et al. 2004; Development of a Real-Time Reverse-Transcription PCR for Detection of Newcastle Disease Virus RNA in Clinical Samples; J. Clin. Microbiol. 42, 328-338)。排出レベルはlog10鶏卵感染用量50%(EID50)/mLとして表した。血液サンプルもまたチャレンジ時(D27)に採取した。血清は抗IBD ELISA(Synbiotics ELISA ProFlok PLUS IBD)で試験して、vHVT13誘発IBDV抗体に対するvSBA-004の影響を評価した。
防御及び血清学に関する結果は表15に要約されている。NDチャレンジ後5日以内に全コントロールトリが死んだ。vSB1-004組換えウイルスは、単独でもvHVT13併用時でも完全な臨床的防御を誘発した。検出可能量のチャレンジNDウイルスを排出したトリの数は両ワクチングループで非常に低かった。グループ1及び3の平均IBD ELISA力価はほぼ同一で、vHVT13誘発IBD抗体に対するvSB1-004の干渉は存在しないことを示した。
【0065】
表15:D27でチャレンジされた1日齢SPFニワトリ(15羽/グループ)におけるNDV-F遺伝子発現SB-1組換え体によって誘発されるND防御の結果
*標準偏差
**排出トリ数/総数(平均log10 EID50等価/mL)
***チャレンジ後日数
****D5前にグループ1の全てのトリが死亡し、したがってこのグループでは排出は評価されなかった。
遺伝子型VのChimalhuacanベロジェニックNDVによるNDチャレンジモデルは非常に激烈である。これらの激烈なチャレンジ条件で、vSB1-004は、完全な臨床的防御及び口腔咽頭経路によるチャレンジウイルス排出に対する優れた防御を誘発した。vSB1-004に挿入されたF遺伝子は遺伝子型VIId NDV株由来であり、ここで用いられたチャレンジ株は遺伝子型Vであるということは注目に値する。したがって、SB-1ベクターに挿入された遺伝子型VIId F遺伝子は遺伝子型Vのチャレンジに対してトリを交差防御する。vHVT13の付加は、vSB1-004によって誘発されるND防御を損なわず、さらにvSB1-004はvHVT13誘発IBD抗体力価に干渉せず、SB-1ベクターとHVTベクターとの適合性が示された。
【実施例10】
【0066】
SB1-組換え体によって1日齢SPFニワトリで誘発されるND早期有効性
本実験の目的は、2つの異なるNDVチャレンジ株で実施されるSPFニワトリの早期(D14)NDチャレンジに対する、NDV-F遺伝子発現vSB1-004組換え体の有効性を評価することであった。
20羽の1日齢の特定病原体非保有(SPF)白色レグホン鶏の2グループ(1及び2)を無作為に構成した。グループ2のトリを皮下経路(頸部の首筋)により2000PFUのvSB1-004でワクチン免疫した。グループ1のニワトリにはワクチンを接種せず、コントロールトリとして維持した。2週齢で、各グループのトリの半分を遺伝子型VのメキシコChimalhuacan(Mex V)ベロジェニックNDV株で、さらに他の半分を遺伝子型VIIdマレーシア04-1(Mal VIId)ベロジェニックNDV株でチャレンジした。前記チャレンジは、0.2mLの生理学的滅菌水で稀釈した10
5鶏卵感染用量50(EID50)を用いて筋肉内(IM)経路によって実施した。トリをチャレンジ後14日間毎日臨床徴候及び死亡率について観察した。
防御の結果は表16に要約されている。全てのコントロールトリがNDチャレンジ後5日以内に死んだ。vSB1-004組換えウイルスは、これらの激烈な早期チャレンジ条件で死亡率に対して(Mal VIId及びMex Vによるチャレンジ後にそれぞれ70%及び40%の防御)、及び罹患率に対して(Mal VIId及びMex Vによるチャレンジ後にそれぞれ50%及び30%の防御)部分的防御を誘発した。
【0067】
表16: NDV-F遺伝子発現SB-1組換え体によって誘発される1日齢SPFニワトリにおける早期ND防御の結果
vSB1-004組換え体の有効性の評価に用いられた早期NDチャレンジモデルは、NDV-F遺伝子を発現するマレック病ウイルスベクターはこのモデルでは一般的に完全な防御を提供しないので選択した。実際、それらの免疫開始は生NDVワクチンと比較して遅い(Morgan et al. (1993) Avian Dis 37, 1032-40;Heckert et al. (1996) Avian Dis 40, 770-777)。したがって前記はワクチン候補物の評価及び比較のために良好なモデルである。これらの激烈な早期チャレンジ条件で、vSB1-004組換え体は部分的防御を誘発し、前記防御はメキシコChimalhuacan遺伝子型Vチャレンジよりもマレーシア遺伝子型VIIdチャレンジに対してわずかに高いだけであって、アメリカ及びユーラシア/アフリカにそれぞれ広がる2つのもっとも蔓延性の遺伝子型に対する広範囲の防御を示す。
【実施例11】
【0068】
母体移行抗体を有する1日齢ブロイラー鶏において、SB-1組換え体単独又はHVT-IBDベクターワクチン併用SB-1組換え体によって誘発されるND有効性
本実験の目的は、vSB1-004単独又はHVT-IBDベクターワクチン併用によりワクチン免疫した4週齢のブロイラー鶏で実施される2つのNDVチャレンジに対する、NDV-F遺伝子発現vSB1-004組換え体の有効性を評価することであった。
20羽の1日齢ブロイラー(Hubbard JA957系統)の6グループ(1a、1b、2a、2b、3a、3b)を無作為に構成した。以下の2つのベクターワクチンを用いた:実施例1に記載のvSB1-004及び、vHVT13、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスFaragher52/70株のVP2遺伝子を発現するシチメンチョウヘルペス(HVT)ベクター(認可されたMerialのVAXXITEK(商標)HVT+IBDワクチンの活性成分)。グループ1のトリ(1a及び1b)にはvHVT13のみ(コントロールグループ)、グループ2のトリにはvSB1-004のみ、グループ3のトリにはvHVT13及びvSB1-004の混合物をワクチン接種した(表17参照)。全てのトリに皮下経路(頸部の首筋)により2000PFUのvSB1-004及び/又はvHVT13を接種した(D0)。ワクチン接種後28日(D28)に、各サブグループの“a”のトリ全てを遺伝子型VIIdマレーシア04-1(Mal VIId)ベロジェニックNDV株でチャレンジし、さらに各サブグループの“b”のトリ全てを遺伝子型VメキシコChimalhuacan(Mex V)ベロジェニックNDV株でチャレンジした。前記チャレンジは、0.2mLの生理学的滅菌水で稀釈した10
5鶏卵感染用量50(EID50)を用いて筋肉内(IM)経路によって実施した。トリをチャレンジ後14日間毎日臨床徴候及び死亡率について観察した。血液サンプルもまたチャレンジ時(D28)に各グループの5羽のトリから採取した。血清は抗IBD ELISA(Synbiotics ELISA ProFlok PLUS IBD)で試験して、ブロイラーにおけるvHVT13誘発IBDV抗体に対するvSBA-004の影響を評価した。
防御及び血清学に関する結果は表17に要約されている。全コントロールトリがNDチャレンジ後5日以内に死んだ。vSB1-004組換えウイルスは、vHVT13併用時に有意なレベルの臨床的防御を誘発したが、vHVT13では誘発されなかった。検出可能量のウイルスを排出するトリの数は両ワクチングループで非常に低かった。グループ2の平均IBD抗体力価はD27でなお高く(3log10)、高レベルの母体移行IBD抗体を示しているが、それにもかかわらずvHVT13は明瞭なIBD抗体応答を誘発し、vSB1-004と混合された場合にも影響されなかった。
【0069】
表17:D28でチャレンジした1日齢ブロイラー鶏(グループ1b(11羽)を除き12羽/グループ)におけるNDV-F遺伝子発現SB-1組換え体によって誘発されるND防御の結果
*標準偏差
本実験の結果は、NDV MDAを有するブロイラーでvSB1-004によって誘発される有意なレベルの防御を示した。vHVT13の付加は、vSB1-004誘発ND防御に対して負の影響を与えず、vHVT13への干渉がないことを示した。さらにまた、vSB1-004はvHVT13誘発IBD抗体に対して干渉せず、これら2つのベクターのブロイラーでの適合性が確認された。
【実施例12】
【0070】
HVT-IBDベクターワクチンによって1日齢SPFニワトリで誘発されるIBD早期有効性におけるvSB1-004の干渉の欠如
本実験の目的は、SPFニワトリの早期(D14)IBDチャレンジにおけるHVT-IBDベクターワクチン(vHVT13)によって誘発されるIBD有効性に対するvSB1-004組換え体の潜在的干渉を評価することであった。
10羽の1日齢特定病原体非保有(SPF)白色レグホン鶏の3グループ(1から3)を無作為に構成した。グループ1のトリには皮下経路(頸部の首筋)により2000PFUのvSB1-004(コントロールグループ)をワクチン接種した。グループ2のトリには2000PFUのvHVT13をワクチン接種し、グループ3のトリには2000PFUのvHVT13及び2000PFUのvSB1-004をワクチン接種した。2週齢で、各群の全てのトリを眼内経路により2.5log10EID50のIBDVクラシック株Faragher 52/70を含む50μLでチャレンジした。チャレンジ後10日間トリを毎日臨床徴候及び死亡率について観察した。全てのトリをチャレンジ後10日で安楽死させ、体重及びファブリキウス嚢の重量を記録し、嚢/体重比を評価した。前記の嚢をまたIBDに典型的な組織学的病巣に関して検査した。表18に示すように、病巣の重篤度を基準に各嚢にスコアを割り当てた。各グループの罹患(非防御)トリの数を計測した。トリが死亡するか及び/又は疾患の顕著な徴候及び/又は中等度又は重度のファブリキウス嚢病巣(すなわち組織学スコアは3以上)を示す場合トリは罹患したと考えられる。
【0071】
表18:ファブリキウス嚢の組織学的病巣のスコア基準
防御の結果は表19に要約されている。コントロールでは全てのトリが病的状態となり、1羽はチャレンジ後に死亡したが、一方、ワクチン接種トリは全て健康を維持した。グループ2及び3の嚢体重比は類似し、グループ1のそれよりも有意に高かった。チャレンジに生存したグループ1の8羽のトリはいずれも嚢病巣スコアが4又は5であった。
【0072】
表19:1日齢SPFニワトリにおけるvHVT13単独又はNDV-F遺伝子発現vSB1-004組換え体併用により誘発された早期(D14)IBD防御の結果
*これらのグループの1羽のトリがチャレンジ前に死亡した
vHVT13誘発IBD防御に対するvSB1-004組換え体の干渉の欠如を評価するために用いた早期IBDチャレンジモデルを選択したのは、vHVT13防御に対する干渉を検出するために前記モデルは非常に感度が高いからである。vSB1-004+vHVT13を用いて得られた結果は極めて高いレベルのIBD防御(89%)を提示し、早期IBDチャレンジで測定したときでさえvSB1-004とvHVT13間の適合性を示した。
【実施例13】
【0073】
21日齢SPFニワトリのNDV ZJ1(遺伝子型VIId)及びカリフォルニア/02(遺伝子型V)によるチャレンジに対するvHVT114、vHVT116、vSB1-007、vSB1-008(単独又はvHVT13併用)及びvHVT304の有効性
本実験の目的は、21日齢のSPFニワトリで実施されるNDV ZJ1(遺伝子型VIId)及びカリフォルニア/02(遺伝子型V)によるニューカッスル病チャレンジに対する、NDV-F遺伝子を発現する2つの単一HVT組換え体構築物(vHVT114及びvHVT116)、2つのSB1組換え体構築物(vSB1-007及びvSB1-008)、及び1つの二重HVT組換え体(vHVT304)の有効性を評価することであった。
これら5つのワクチン候補物の特徴は下記の表20に記載されている。
【0074】
表20:チャレンジ実験で用いたベクターの特徴
*vHVT13は、IBDV VP2遺伝子を発現するHVTベクターを土台にする認可されたVaxxitek HVT-IBDワクチンの活性成分である(US 5,980,906及びEP 0 719 864を参照されたい)。
D0に158羽の1日齢SPFニワトリを24羽の6グループ(ワクチン接種)及び12羽の1グループ(非ワクチン接種コントロール)に無作為に割り当てた。前記のトリの頸部に下記表21に記載するように1000PFUの標的用量を含む0.2mLの組換えワクチンを皮下注射によってD0に注射した。続いてこれらのトリを2つのサブグループに分離し、各サブグループをNDV ZJ1(遺伝子型VIId)又はカリフォルニア/02(遺伝子型V)ベロジェニック株の5log10EID50でD21に筋肉内経路によりチャレンジした。
【0075】
表21:有効性の結果
チャレンジの前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。隔離室に関して見出された技術的問題はグループ2のトリの数(vHVT114:24から14)及びグループ3(vHVT116:24から20)のトリの数を減少させた。NDVの臨床徴候をチャレンジ後に記録した。抗原として各チャレンジ株を用いるHI試験によるNDV血清学のために、チャレンジ(D21)の2及び7日前にグループのトリから採取した血液サンプルから血清を収集した。
死亡率及び罹患率に対する防御のパーセンテージを上記の表に記録した。非ワクチン接種チャレンジコントロールグループ(G1)で完全な感受性が観察され、したがって両チャレンジの高い重篤性が確認された。全てのワクチンが高レベル(75%以上)の防御を両チャレンジに対して誘発した。両チャレンジに対する完全な臨床的防御がvHVT114及びvSB1-008によって誘発された。
ウイルス排出は、チャレンジ後2及び4日後に採取した口腔拭き取り検体及び総排泄腔拭き取り検体のリアルタイムRT-PCRによってチャレンジ後に評価した。陽性(Ct<40)トリのパーセンテージは両チャレンジについて
図17A及び17Bに示されている。6羽全てがCA/02でチャレンジしたコントロールグループでチャレンジ4日後に死亡し、(6羽のうち)1羽のみがZJ1でチャレンジしたコントロールグループでチャレンジ4日後になお生存していたことに留意されたい。ウイルス排出は全てのコントロールトリで検出された。排出陽性トリのパーセンテージの減少が全てのワクチン接種グループで観察された。
結論すれば、本実験の結果は、マレック病ベクターワクチンによって誘発される3週齢における非常に良好なND防御を示した。
【実施例14】
【0076】
28日齢SPFニワトリのNDVテキサスGB株によるチャレンジに対するvHVT114、vSB1-007、vSB1-009、vHVT306及びvHVT307ワクチンの有効性
本実験の目的は、28日齢のSPFニワトリで実施されるニューカッスル病チャレンジ(テキサスGB株、遺伝子型II)に対する、NDV-F及び/又はIBDV VP2遺伝子を発現する異なるマレック病ベクターワクチンの組合せ物の有効性を評価することであった。
本実験で試験する5つの組換え体ワクチン候補物の特徴は下記の表22に記載されている。
【0077】
表22:チャレンジ実験で用いられるベクターの特徴
マレック病ウイルス血清型1(CV1988(又はRispens)株;ガリドヘルペス2)及び血清型3(SB-1株;ガリドヘルペス3)ワクチンをまた、いくつかのグループで組換えウイルスとの併用で用いた。
D0に135羽の1日齢SPFニワトリを15羽の9グループに無作為に割り当てた。前記のトリの頸部に組換え体ワクチン(vSB1-007、vSB1-009、vHVT13、vHVT306、vHVT307、vHVT114)のために2000PFU、及び親マレック病ワクチン株(SB-1及びCVI988)のために1000PFUの標的用量を含む0.2mLを皮下注射によってD0で注射した。本実験の設計は下記の表23に示されている。これらのトリを4.0log10EID50のベロジェニックNDテキサスGB(遺伝子型II)株でD28に筋肉内経路によりチャレンジした。
【0078】
表23:有効性の結果
チャレンジの前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。NDVの臨床徴候をチャレンジ後に記録した。
死亡率及び罹患率に対する防御のパーセンテージを上記の表23に記録した。非ワクチン接種チャレンジコントロールグループ(G1)で完全な感受性が観察され、したがってチャレンジの高い重篤性が確認された。全てのワクチン接種グループで非常に高レベルの防御が観察された。G3、G6、G7及びG9のトリは完全に防御された。本実験は、vSB1-ND候補物はvHVT13及びCVI988と共投与することができ、なお非常に良好なND防御を提供することを示している。同様に、二重HVT-IBD+NDはSB-1と適合性を有し、vHVT-ND(vHVT114)はvHVT13及びSB-1と適合性を有する。
結論すれば、本実験の結果は、試験に用いたマレック病親ワクチン及びベクターワクチンによって誘発される、ND防御に対する干渉は存在しないことを示した。
【実施例15】
【0079】
SPFニワトリのD28におけるNDV Chimalhuacan株(遺伝子型V)によるチャレンジに対するvHVT13併用vHVT114、vHVT307、vSB1-007及びvSB1-009の有効性
本実験の目的は、28日齢のSPFニワトリで実施されるニューカッスル病チャレンジ(Chimalhuacan、遺伝子型V)に対する、vHVT-IBD(vHVT13)と併用されるNDV-F遺伝子を発現する1つのHVT組換え体構築物(vHVT114)及び2つのSB1組換え体構築物とともにNDV-F及びIBDV VP2の両方を発現する二重HVTのvHVT307の有効性を評価することであった。
これら4つのワクチン候補物の特徴は下記の表24に記載されている。
【0080】
表24:チャレンジ実験で用いられるベクターの特徴
D0に45羽の1日齢SPFニワトリを10羽の4グループ及び5羽の1グループ(非ワクチン接種コントロールグループ)に無作為に割り当てた。前記のトリの頸部に、下記の表25に記載の2000PFUの標的用量を含む0.2mLの組換え体ワクチンを皮下注射によってD0に注射した。これらのトリを5.0log10EID50のベロジェニックChimalhuacan(遺伝子型V)株でD28に筋肉内経路によりチャレンジした。
【0081】
表25:ND有効性の実験設計及び結果
【0082】
チャレンジの前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。NDVの臨床徴候をチャレンジ後に記録した。口腔咽頭拭き取り検体をチャレンジ5及び7日後にワクチン接種グループで採取し、リアルタイムRT-PCRによりウイルス負荷を評価した。
死亡率及び罹患率に対する防御パーセンテージを上記の表23に記録する。非ワクチン接種チャレンジコントロールグループ(G1)で完全な感受性が観察され、したがってチャレンジの高い重篤性が確認された。全ての4ワクチン接種グループで非常に良好な防御が観察され、完全な臨床的防御がvHVT114+vHVT13によって誘発された。陽性トリのパーセンテージ及び平均排出力価(log10EID50等価/mLとして表現)は
図18A及び18Bに示されている。驚くべきことに、排出はG2では検出されず、完全な(臨床的徴候及びウイルス排出の両方に対する)ND防御が、被検条件下では、たとえvHVT13と共投与されたとしてもvHVT114によって誘発されることを示した。他のワクチン接種グループで検出されるウイルス排出レベルは低く、わずかにより高いレベルが感染後(pi)5日のみG3(vHVT307)で検出された。
結論すれば、本実施例はさらに、二重HVT-IBD+ND組換え体、又はSB1-ND若しくはHVT-NDとHVT-IBD(vHVT13)組換え体ウイルスとの組合せ、によって優れたND防御が誘発されることを例証する。第二のHVTワクチン(通常のHVTワクチン又は組換えHVTワクチン)は、第一の組換えHVTワクチンに挿入された外来遺伝子に対する免疫に干渉するというこの分野で一般的に信じられていることとは反対に、本発明は、vHVT13と併用されたvHVT114はNDVに対して優れた防御を提供し、かつ干渉作用は観察されないという驚くべき結果を示した。
【実施例16】
【0083】
SPFニワトリのD28におけるNDV Chimalhuacan株(遺伝子型V)チャレンジに対するSC又はin ovo投与されたvHVT306、vHVT13併用vSB1-008の有効性
本実験の目的は、28日齢のSPFニワトリで実施されるニューカッスル病チャレンジ(Chimalhuacan、遺伝子型V)に対する、in ovo又は皮下経路により投与された、NDV-F及びIBDV VP2遺伝子の両方を発現するvHVT306二重HVT、及びvHVT-IBD(vHVT13)と併用されるNDV-F遺伝子発現vSB1-008 SB1組換え体の有効性を評価することであった。
これらグループの設計は表26に示されている。in ovo投与には60個のSPF胚発育卵(インキュベーション約18日及び18時間経過;D-3)を用いた(G1、G2及びG3のグループにつき20個)。2000PFUを含む50μLのワクチンを、アビテックLLC社(AviTach LLC, Salisbury, MD, USA)のインテリラブシステム(IntelliLab System)装置を用いてin ovo経路で投与した。in ovo投与後の孵化率及び生存率を記録した。D0で20羽の1日齢SPFニワトリを10羽の2グループに無作為に割り当てた。前記のトリの頸部に2000PFUの標的用量を含む下記表26に記載の組換え体ワクチンの0.2mLを皮下(SC)注射によってD0で注射した。各グループ10羽のトリを5.0log10EID50のベロジェニックChimalhuacan(遺伝子型V)株でD28に筋肉内経路によりチャレンジした。
【0084】
表26:ND有効性の実験設計及び結果
チャレンジの前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。NDVの臨床徴候をチャレンジ後に記録した。口腔咽頭拭き取り検体をチャレンジ5及び7日後にワクチン接種グループで採取し、リアルタイムRT-PCRによりウイルス負荷を評価した。
グループG1及びG2のトリについてD28(チャレンジ日)まで全孵化率及び生存率が記録された。G3の孵化率は85%で、このグループではさらにもう1羽のトリが孵化後に死亡した。当該グループのより低い孵化率は孵卵機の問題に起因し得る。G1、G2及びG3の雄及び雌の体重はD1及びD28で類似していた。
死亡率及び罹患率に対する防御パーセンテージを表26に記録する。非ワクチン接種チャレンジコントロールグループ(G1)で完全な感受性が観察され、したがってチャレンジの高い重篤性が確認された。全ての4ワクチン接種グループで非常に良好な防御が観察され、完全な臨床的防御が両経路により投与されたvHVT306によって誘発された。
陽性トリのパーセンテージ及び平均排出力価(log10EID50等価/mLとして表現)は表27に示されている。検出可能な排出が存在しないか又は非常に低い排出が、vHVT306をワクチン接種したG2及びG4で観察された。vSB1-008+vHVT13をワクチン接種したグループで検出された排出レベルは感染後(pi)5日で特に高かった。
【0085】
表27:NDVチャレンジ後D5及びD7で評価したウイルス排出に対する防御の結果(検出可能な排出を示すトリのパーセンテージ及び平均ウイルス負荷(log10))
* log10 EID50等価で表現した定量性リアルタイムPCR値の平均;閾値は2.7log10に設定。
結論すれば、本実施例は、in ovo又はSC経路で投与したvHVT306二重HVT組換え体によって誘発される優れたND防御を示す。vSB1-008+vHVT13の成績は特にin ovo投与後にわずかに低かったが、それは少なくとも部分的には孵卵機の問題であった。実際、6000PFUのvHVT13と一緒にした別のSB1-ND組換え体(vSB1-009)の1000又は4000PFUでのin ovo安全性試験は、6000PFUのvHVT13のみを投与したグループと孵化率及び初期生存率に一切相違を示さなかった。
【実施例17】
【0086】
市場ブロイラー鶏のD42におけるNDV Chimalhuacan株(遺伝子型V)チャレンジに対するvHVT304、vHVT306、vHVT13併用vSB1-007及びvSB1-008の有効性
本実験の目的は、42日齢の市場ブロイラー鶏で実施されるニューカッスル病チャレンジ(Chimalhuacan、遺伝子型V)に対する、NDV-F及びIBDV VP2遺伝子の両方を発現する2つの二重HVT(vHVT304及びvHVT306)、及びvHVT-IBD(vHVT13)と併用されるNDV-F遺伝子を発現する2つのSB1組換え体(vSB1-007及びvSB1-008)の有効性を評価することであった。
これらグループの設計は表28に示されている。D0で55羽の1日齢市場ブロイラー鶏を11羽の5グループに無作為に割り当てた。前記のトリの頸部に2000PFUの標的用量を含む下記表28に記載の組換え体ワクチンの0.2mLを皮下(SC)注射によってD0で注射した。各グループ10羽のトリを5.0log10EID50のベロジェニックChimalhuacan(遺伝子型V)株でD42に筋肉内経路によりチャレンジした。
【0087】
表28:ND有効性の実験設計及び結果
チャレンジ前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。NDVの臨床徴候をチャレンジ後14日間記録した。口腔咽頭拭き取り検体をチャレンジ5及び7日後にワクチン接種グループで採取し、リアルタイムRT-PCRによりウイルス負荷を評価した。
死亡率及び罹患率に対する防御パーセンテージを表28に記録する。非ワクチン接種チャレンジコントロールグループ(G1)で完全な感受性が観察され、したがってチャレンジの高い重篤性が確認された。全ての4ワクチン接種グループで非常に良好な防御が観察され、完全な臨床的防御がvHVT306及びvSB1-007+HVT13によって誘発された。
陽性トリのパーセンテージ及び平均排出力価(log10EID50等価/mLとして表現)は表29に示されている。ウイルス排出の最大の減少はvHVT306及びvSB1-007+HVT13によって誘発され、前記はまた臨床的防御のための最良の候補物であった。
【0088】
表29:NDVチャレンジ後(pi)D5及びD7で評価したウイルス排出に対する防御の結果(検出可能な排出を示すトリのパーセンテージ及び平均ウイルス負荷(log10))
* log10 EID50等価で表現した定量性リアルタイムPCR値の平均;閾値は2.7log10に設定。
vSB1-007+HVT13はvSB1-008+HVT13よりも良好な性能を示した。vSB1-007ゲノム構造はvSB1-008の構造と以下のように種々の面で異なっている:挿入の位置、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びF遺伝子起点。これら外来遺伝子の組合せ及びvSB1-007における挿入の位置が、vSB1-007のより良好なND防御性能をもたらしたことは大いに考えられる。
要約すれば、本実施例は、HVT及びMDV血清型2によって誘発されるND防御における、挿入の位置及びNDV発現カセットの他の調節配列の重要性を例証している。
【実施例18】
【0089】
SPFニワトリのD14におけるクラシックIBDV単離体によるチャレンジに対する二重HVT-ND+IBD(vHVT304及びvHVT306)又はvHVT13組換えワクチン併用SB1-ND(vSB1-008)の有効性
本実験の目的は、14日齢のSPFニワトリで実施されるヴィルレント伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(vIBDV)チャレンジ(Faragher 52/70株)に対する、二重HVT組換え体vHVT304及びvHVT306並びにSB1-ND(vSB1-008)と共投与したvHVT13の早期IBD有効性を評価することであった。
D0で95羽の1日齢SPFニワトリを10羽の9グループ及び5羽の1グループ(非ワクチン接種コントロールグループ)に無作為に割り当てた。前記のトリの頸部に300又は1000PFUの標的用量を含む下記表30に記載の組換え体ワクチンの0.2mLを皮下注射によってD0に注射した。キットプロフロック(商標)プラスIBD(Kit ProFLOK(商標) plus IBD;Synbiotics Corp)を用いる血清学的試験のために、D14に各グループの5羽から血液サンプルを収集した。これらのトリ(グループ7(チャレンジ前に1羽のトリが死亡した)を除き各グループ10羽のトリ)を点眼(0.05mL/トリ)によって2.5log10EID50でチャレンジした。
【0090】
表30:IBD有効性の実験設計及び結果
1平均IBD+ ELISA力価はチャレンジ前のD14にサンプル採取した5羽/グループの血清のlog10で表した;
22日より長く病的状態であるか又はD25になお病的状態であるトリを有病と考えた;
3臨床的徴候及び重度の嚢病巣に対抗する防御(嚢スコア<3);
4非ワクチン接種/非チャレンジグループの嚢/体重比は0.0047であった。
チャレンジ前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。IBDVの臨床徴候をチャレンジ後11日間記録した(D15からD25)。チャレンジ後観察期間の終了時(D25)に全ての生存トリを安楽死させ剖検した。体重及び嚢重量を記録した。各ファブリキウス嚢(BF)を秤量し、続いて組織学のために4%ホルムアルデヒドを含む個々の容器に保存した。嚢の組織学的病巣を表31に提示した基準にしたがって評価した。
表31:ファブリキウス嚢の組織学的病巣のスコア基準*
*EU薬局方“トリ伝染性ファブリキウス嚢病ワクチン(生)”モノグラフN0.01/2008:0587より
【0091】
トリが死亡及び/又は病気の顕著な徴候及び/又はファブリキウス嚢の重度の病巣(すなわち3以上の組織学スコア)を示す場合には罹患したと考えた。
チャレンジ前のlog10で表した平均ELISA IBD+抗体は表30に示されている。コントロールグループ(G1)よりも有意に高い顕著な力価が全ワクチングループで検出された。この血清学的力価は用量依存性ではなかった。
重度の臨床的徴候がコントロールグループG1の全てのトリでチャレンジ後に観察された。当該グループの10羽のうち7羽が11日の観察期間内に死亡し、チャレンジの高い重篤性を示した。ワクチン接種トリのいずれもチャレンジ後に重篤な徴候を示さなかったが、ただしG4の1羽は死亡した。嚢の重度の病巣に対する防御のパーセンテージは上記の表30に示されている。顕著なIBD防御が全グループで観察され、最高の防御はG2及びG3(vHVT13単独)で認められた。vSB1-008+vHVT13の共投与及び二重vHVT304及びvHVT306構築物は類似レベルのIBD防御を誘発した。この防御は被検用量では用量依存性ではなかった。平均嚢/体重比も表30に示されている。全ワクチン接種グループの比がチャレンジを受けたコントロールグループの比より高かった。
結論すれば、これらのデータは、SB1-NDベクターと単一HVT-IBDとの併用、又はNDV-F及びIBDV-VP2の両方を発現する二重HVTは、重度IBDVチャレンジモデルにおいてIBD抗体及び早期IBD防御を誘発することを示している。
【実施例19】
【0092】
市場ブロイラー鶏のD23における高ビルレント(very virulent)IBDV単離体によるチャレンジに対するvHVT13組換えワクチンと併用される単一HVT-ND(vHVT114)又はSB1-ND(vSB1-007及びvSB1-009)の有効性
本実験の目的は、23日齢の市場ブロイラー鶏で実施される高ビルレント(very virulent)伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(vvIBDV)チャレンジ(91-168/980702単離体)に対する、HVT-ND(vHVT114)又はSB1-ND(vSB1-007及びvSB1-009)組換え構築物を共投与したvHVT13のIBD有効性を評価することであった。
D0で90羽の1日齢ブロイラー鶏を12羽の7グループ及び6羽の1グループ(非ワクチン接種非チャレンジコントロールグループ)に無作為に割り当てた。前記のトリの頸部に3000PFUの標的用量を含む表32に記載の組換え体ワクチンの0.2mLを皮下注射によってD0に注射した。キットプロフロック(商標)プラスIBD(Synbiotics Corp)を用いた血清学的試験のために、D14にグループにつき5羽のトリから血液サンプルを収集した。IBDV母体由来抗体のレベルを評価するために、10羽の別の1日齢ブロイラー鶏の血清を同じキットによりD0に試験した。前記のトリ(グループにつき10羽のトリ)を点眼(0.05mL/トリ)によってD23に4.3log10EID50のvvIBDD 91-168単離体でチャレンジした。
チャレンジ前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。IBDVの臨床徴候をチャレンジ後11日間記録した(D23からD33)。チャレンジ後観察期間の終了時(D33)に全ての生存トリを安楽死させ剖検した。体重及び嚢重量を記録した。各ファブリキウス嚢(BF)を秤量し、続いて組織学のために4%ホルムアルデヒドを含む個々の容器に保存した。嚢の組織学的病巣を表31に提示した基準にしたがって評価した。
トリが死亡及び/又は病気の顕著な徴候及び/又はファブリキウス嚢の重度の病巣(すなわち3以上の組織学スコア)を示す場合には罹患したと考えた。
【0093】
表32:実験設計及び血清学の結果
1平均IBD+ ELISA力価はチャレンジ前のD23にサンプル採取した5羽/グループの血清のlog10で表した;
2非ワクチン接種/非チャレンジグループの嚢/体重比は0.0047であった。
D0の平均ELISA IBD+血清学力価は4.36±0.01 log10であり、孵化時の非常に高レベルのIBD母体移行抗体を示した。D23にコントロールグループでは平均ELISA IBD+力価はなお高かった(3.9)。ワクチン接種グループのELISA平均力価はコントロールグループの力価と有意には相違しなかった。
チャレンジ後いずれのグループでも罹患率又は死亡率は認められなかった。重度の嚢病巣に対する防御パーセンテージは上記の表32に示されている。結果は、vHVT114、vSB1-007又はvSB1-009の共投与はvHVT13誘発IBD防御に干渉せず、干渉の欠如を示した。同様に、ワクチン接種グループの平均嚢/体重比は類似し、かつコントロールグループのそれより明瞭に高く、IBD防御とワクチン接種レジメン間に相違がないことを示した。
結論すれば、これらのデータは、IBD防御のためのvHVT114、vSB1-007又はvSB1-009とvHVT13との間の適合性を示している。
【実施例20】
【0094】
SPFニワトリのD28における変種E IBDV単離体によるチャレンジに対する、SB-1を伴う若しくは伴わない二重HVT-ND+IBD(vHVT304及びvHVT306)、及びvHVT13組換え体ワクチン併用SB1-ND(vSB1-007及びvSB1-008)の有効性
本実験の目的は、ワクチン接種後28日でIBDV変種(VAR-E)によりチャレンジされる1日齢SPFニワトリに皮下(SC)投与される、2つの二重HVT(HVT-ND+IBD:vHVT304及びvHVT306)又はvHVT13と併用される2つのvSB-1-NDV(vSB1-007+vHVT13、vSB1-008+vHVT13)ベクターワクチンの有効性を評価することであった。
D0で105羽の1日齢SPFニワトリを15羽の7グループ(チャレンジコントロール(G6)及び非チャレンジコントロール(G7)のグループを含む)に無作為に割り当てた。前記G1からG5のグループのトリの頸部に2000PFUの標的用量を各々含む組換え体及び/又はSB-1ワクチンの0.2mLを皮下注射によってD0に注射した。実験の設計は下記の表33に示されている。D28に、G1からG6のグループの全てのトリを、IBDV変種E単離体(University of Delaware(USA))の点眼(3log10EID50/トリを含む0.03mL)によってでチャレンジした。チャレンジの前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。チャレンジ後11日に、トリを秤量し、剖検した。嚢を収集して秤量した。嚢/体重比(嚢重量/体重比x100)を計算した。
【0095】
表33:実験設計及びIBD有効性の結果
平均嚢/体重比は表33に示されている。チャレンジコントロールのトリは、非チャレンジコントロールのトリと比較して重度の嚢萎縮を示した。vSB1-007及びvSB1-008ワクチンは、vHVT13誘発防御に干渉しなかった(G4及びG5)。二重HVT(HVT-ND+IBD)でワクチン免疫したトリの嚢/体重比は、非チャレンジコントロールグループよりもわずかに低かったが、チャレンジコントロールグループよりも明瞭に高かった。さらにまた、SB-1血清型2マレック病ワクチンは、vHVT304誘発IBD防御に干渉しなかった。
結論すれば、これらのデータは、SB1-NDベクターと単一HVT-IBDとの併用又はNDV-F及びIBDV-VP2の両方を発現する二重HVTはともに、変種E IBDVチャレンジモデルにおいてIBD防御を誘発することを示している。
【実施例21】
【0096】
SPFニワトリのvHVT13により誘発される変種E IBD防御におけるvHVT114、vSB1-009及び/又は SB-1の干渉の欠如
本実験の目的は、IBDV-変種(VAR-E)のD28チャレンジモデルにおいてSPFにvHVT114、vSB1-009及び/又はSB-1をSC又はin ovo経路で同時に投与した時のvHVT13のIBD有効性を評価することであった。
75羽の1日齢SPFニワトリ及び75羽の18から19日齢ニワトリ胚を5グループ(それぞれG1からG5及びG6からG10)に無作為に割り当てた。前記5グループには、チャレンジコントロール(それぞれG4及びG9)及び非チャレンジコントロール(それぞれG5及びG10)が含まれる。G1からG3のグループのトリの頸部に(標的用量が1000PFUであるSB-1を除き)3000PFUの標的用量を含むワクチンの0.2mLを皮下注射によってD0に注射した。G6からG8のトリには同じワクチン用量であるが、ただし0.05mL体積で孵化2−3日前にin ovo経路によって投与した。実験の設計は下記の表34に示されている。28日齢で、G1からG4及びG6からG9の全てのトリを、IBDV変種E単離体(University of Delaware, USA)の点眼(3log10EID50/トリを含む0.03mL)によってチャレンジした。チャレンジの前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。チャレンジ後11日に、トリを秤量し剖検した。嚢を収集して秤量した。嚢/体重比(嚢重量/体重比x100)を計算した。
【0097】
表34:実験設計及びIBD有効性の結果
平均嚢/体重比は表34に示されている。チャレンジコントロールのトリ(G4及びG9)は、非チャレンジコントロールと比較して重度の嚢萎縮を示した。ワクチン接種グループ(G1からG3及びG6からG8)の嚢/体重比は、非チャレンジコントロールグループ(G5及びG10)のものと類似していたが、チャレンジコントロールグループ(G4及びG9)のものをはるかに超えていた。SC又はin ovoの両経路後のvHVT13誘発IBD防御に対してvHVT114が干渉しないことは驚くべきことであり、実施例15及び19で得られたデータが確認された。
結論すれば、これらのデータは、変種E IBDVチャレンジモデルにおいてSC又はin ovo経路で投与されたとき、vHVT114+vSB1-009又は+SB-1及びvSB1-009はvHVT13と適合性を有することを明瞭に示している。
【実施例22】
【0098】
高ビルレントプラスマレック病チャレンジに対するvHVT114 及びvHVT13及び SB1又はvSB1-009ベクターの有効性
本実験の目的は、1日齢SPFニワトリにSC経路で投与した種々のワクチン組合せ(vHVT114、vHVT13、SB1及び/又はvSB1-009を含む)によって誘発される、4日後の高ビルレントプラスマレック病ウイルス(vv+MDV)T-King単離体のチャレンジに対するマレック病有効性を評価することであった。
D0で100羽の1日齢SPFニワトリを20羽の5グループに無作為に割り当てた。前記グループ1から3のトリの頸部に(標的用量が1000PFUであるSB-1を除き)各ワクチンにつき2000PFUの標的用量を含むワクチンの0.2mLを皮下注射によってD0に注射した。グループ4及び5のトリにはワクチンを接種せず、チャレンジ(グループ4)又は非チャレンジ(グループ5)偽コントロールとして用いた。実験設計は表35に示されている。D4でグループ1から4の全てのトリを0.2mLのvv+MDV T-King単離体を腹腔内投与経路を用いてチャレンジした。
【0099】
表35:実験設計及びMD防御結果
各グループをチャレンジ前及びチャレンジ後に何らかの好ましくない反応について毎日モニターした。49日目に全ての生存トリを殺して剖検し、マレック病関連肉眼病巣について調べた。神経性徴候(例えば麻痺)、当該疾患に帰せられる運動に関する徴候及び重度の衰弱又は抑うつが観察される場合、又は剖検で肉眼病巣が観察される場合には、ニワトリをマレック病感染陽性として分類した。病巣には以下が含まれ得る(ただしそれらに限定されない):肝臓、心臓、脾臓、性腺、腎臓及び筋肉病巣。
防御の結果は上記の表35に示されている。全てのワクチン接種グループ(G1からG3)が同等な成果を示し、この非常に重篤で早期チャレンジモデルで予想されたように部分的な(65%)MD防御を誘発した。これらの結果は、このベクターワクチン候補物はマレック病に対して防御するそれらの能力を維持することを示している。
【実施例23】
【0100】
HVT-IBDベクター併用SB1-NDベクターのマレック病有効性の評価
マレック病に対する防御の誘発における親HVTとSB-1との間の相乗作用はよく知られている。外来遺伝子を発現するSB-1ベクターはしたがって親HVT又は別の外来遺伝子を発現するベクターHVTと混合して、それぞれ二価又は三価ワクチン溶液を得ることができる。vSB1-009とvHVT114及びvHVT13との併用によって誘発されるマレック病有効性の評価の例は上記(実施例22)に示されている。マレック病(MD)有効性はまた、他のMDチャレンジモデルにおいてマレック病ベクター組換え体単独で又は併用で示されている。前記チャレンジモデルは以下を含む:ビルレントマレック病(vMD)チャレンジ(例えばGA22)、高ビルレントマレック病(vvMD)チャレンジ(例えばRB1B)、及び/又は高ビルレントプラスマレック病(vv+MD)チャレンジ(例えばT.Kingウイルス)。1日齢ニワトリの皮下に又は18−19日齢胚発育卵に試験ウイルスの0.2mL用量又は0.05mL用量がそれぞれ接種される。5日齢で、ワクチン接種ニワトリ及びナイーブコントロールを対応するマレック病チャレンジウイルス(v、vv又はvv+MDV))でチャレンジする。前記チャレンジトリを7週齢まで観察する。全てのトリを殺して剖検し、実施例22に記載したように肉眼で見えるマレック病関連病巣について観察する。
【実施例24】
【0101】
SPFニワトリの14日齢及び/又は28日齢におけるNDV Texas BG株によるチャレンジに対するvSB1-004、vSB1-006、vSB1-007、vSB1-008、単独又はvHVT13 HVT-ベクターIBDワクチンを伴うSB1-ベクターNDワクチン、並びにvHVT302及びvHVT304ワクチンの有効性
本実験の目的は、14日齢及び/又は28日齢SPFニワトリで実施したニューカッスル病チャレンジ(Texas GB株、遺伝子型II)に対する、NDV F及び/又はIBDV VP2遺伝子を発現する種々のマレック病ベクターワクチンの併用の有効性を評価することであった。
本実験で試験した6つのNDV組換え体ワクチン候補物の特徴は下記表36に記載されている。
【0102】
表36:6つのNDV組換え体ワクチン候補物の特徴
D0で225羽の1日齢SPFニワトリを15羽の9グループ(D14でチャレンジするG1aからG9a)及び15羽の6グループ(D28にチャレンジするG1b、G3b、G4b、G5b、G8b、G9b)に無作為に割り当てた。前記トリの頸部に組換えワクチンについて2000PFUの標的用量を含む0.2mLを皮下注射によってD0に注射した。実験設計は下記表37に示されている。前記トリを筋肉内経路でD14又はD28にそれぞれ4.3及び4.2 log10EID50(0.1mL)のベロジェニックなND Texas GB(遺伝子型II)株によりチャレンジした。
【0103】
表37:ND有効性の結果
*ND=実施せず
チャレンジ前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。チャレンジ後のNDV臨床徴候を記録した。1羽のトリがチャレンジ前にG6及びG7で死亡し、これらのグループではトリの数が15から14に減少した。
臨床的防御(死亡率及び罹患率の両方に対する防御を含む)のパーセンテージを上記の表37に記録した。非ワクチン接種チャレンジコントロールグループ(G1a及びG1b)で完全な感受性が観察され、したがってチャレンジの高い重篤性が確認された。13.3から46.6%の範囲の部分的防御がD14のチャレンジ後に観察され、最高レベルの防御はvSB1-008、vSB1-007及びvHVT304によって誘発された。全てのワクチン接種グループについて、D28のNDチャレンジ後の防御レベルははるかに高く、再びvSB1-008、vSB1-007又はvHVT304によるワクチングループでわずかに高かった。これらの結果は、ND防御レベルはチャレンジの日にち及び構築物によって左右されることを示している。vSB1-008及びvSB1-007構築物はvSB1-004及びvSB1-006よりも性能がわずかに良好であり、vHVT304はvHVT302よりも性能がわずかに良好であり、これら構築物の特徴の相違が、MDV系ベクターワクチンの性能に役割を果たすことを示している。
結論すれば、本実験の結果は、NDV F遺伝子を発現するマレック病ベクターによって誘発されるND防御レベルは、種々のパラメーター(ベクター、挿入の位置、F遺伝子、プロモーター、ポリアデニル化部位及びチャレンジ条件を含む)に左右され得ることを示した。
【実施例25】
【0104】
SPFニワトリの14日齢及び/又は28日齢におけるNDV Texas BG株によるチャレンジに対する二重HVT-ND+IBD vHVT304及びvHVT306ワクチンの有効性
本実験の目的は、14日齢及び/又は28日齢SPFニワトリで実施したニューカッスル病チャレンジ(Texas GB株、遺伝子型II)に対する、NDV F及び/又はIBDV VP2遺伝子の両方を発現するHVTベクターワクチンの併用の有効性を評価することであった。
本実験で試験した2つの組換え体ワクチン候補物の特徴は下記表38に記載されている。
【0105】
表38:本実験で用いられた組換え体ワクチン候補物の特徴
D0で90羽の1日齢SPFニワトリを15羽の3グループ(D14でチャレンジするG1aからG3a)及び15羽の3グループ(D28にチャレンジするG1bからG3b)に無作為に割り当てた。前記トリの頸部に組換えワクチンについて2000PFUの標的用量を含む0.2mLを皮下注射によってD0に注射した。実験設計は下記表39に示されている。前記トリをD14又はD28に筋肉内経路で4.0 log10EID50(0.1mL)のベロジェニックなND Texas GB(遺伝子型II)株によりチャレンジした。
【0106】
表39:ND有効性の結果
チャレンジ前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。チャレンジ後のNDV臨床徴候を記録した。1羽のトリがチャレンジ前にG2bで死亡し、このグループではトリの数が15から14に減少した。
臨床的防御(死亡率及び罹患率の両方に対する防御を含む)のパーセンテージを上記の表39に記録した。非ワクチン接種チャレンジコントロールグループ(G1a及びG1b)で完全な感受性が観察され、したがってチャレンジの高い重篤性が確認された。D14のチャレンジ後の防御レベルは、D28のチャレンジ後に得られた防御レベルよりはるかに低かった。
これらのワクチン候補物は、vHVT13の2つの異なる位置に挿入された同じNDV F発現カセットを有していた。それらは、当該試験条件下でのND防御という点で等しい性能を有し、両挿入位置(IG2及びSORF3-US2)はNDV Fカセット挿入のために等しく適切であることを示している。
結論すれば、本実験の結果は、NDV F遺伝子を発現するマレック病ベクターによって誘発されるND防御レベルは、種々のパラメーター(ベクター、挿入の位置、F遺伝子、プロモーター、ポリアデニル化部位及びチャレンジ条件を含む)に左右されることを示した。
【実施例26】
【0107】
ベロジェニック遺伝子型VのNDVチャレンジに対する二重HVT-ND+IBD(vHVT302、vHVT303及びvHVT304)又はSB1ベクター(vSB1-006及びvSB1-007)によって1日齢SPFニワトリで誘発されるND早期有効性
本実験の目的は、14日齢で実施されるベロジェニックな遺伝子型V(Chimalhuacan)NDVチャレンジに対する、1日齢SPFニワトリにおける3つの二重HVT-ND+IBD(vHVT302、vHVT303及びvHVT304)及び2つのSB1-NDベクター(vSB1-006及びvSB1-007)の有効性を評価することであった。
本実験で試験した5つの組換え体ワクチン候補物の特徴は下記表40に記載されている。
【0108】
表40:本実験で用いられた組換え体ワクチン候補物の特徴
10日齢特定病原体非保有(SPF)白色レグホン鶏の6グループ(1及び2)を無作為に構成した。グループ2から6のトリに下記表41に示す2000PFUの標的用量を皮下経路(頸部の首筋)によってワクチン接種した。グループ1のニワトリにはワクチンを接種せず、コントロールトリとして維持した。2週齢で、全てのトリを遺伝子型VメキシコChimalhuacan(Mex V)ベロジェニックNDV株によりチャレンジした。このチャレンジは、生理学的滅菌水の0.2mLに稀釈した10
5鶏卵感染用量(EID50)を用い筋肉内(IM)経路により実施した。全てのトリをチャレンジ後14日までモニターした。チャレンジ後、各トリの健康状態を以下のように毎日点数を付けた:健常/特有の症状あり(羽毛の逆立ち、衰弱、斜頸、振せん)/死亡。3日以上固有の症状を示すか、又はD28に病気であったいずれのトリも罹患率の計算に加えた。
【0109】
表41:NDV F遺伝子を発現する種々のMDVベクター候補物によって1日齢SPFニワトリで誘発される早期ND防御の結果
防御の結果は表41に要約されている。全てのコントロールトリはNDチャレンジ後に死亡した。多様なND防御レベルが種々の被検ワクチンによって誘発され、死亡率及び罹患率に対する防御としてそれぞれ10%から80%及び0%から60%の範囲であった。vHVT304候補物はvHVT303及びvHVT302候補物よりも良好な防御を誘発したが、これはNDV F遺伝子の前に配置した外因性SV40プロモーターに起因するのかもしれない。vSB1-007はvSB1-006よりもわずかに良好な性能を示した。さらにまた、vHVT304で得られた性能はvSB1-007により得られた性能と類似し、種々のマレック病ベクターが同じND防御レベルを達成できることを示した。
結論すれば、本実験は、二重HVT-ND+IBD及びSB1-NDベクターワクチンは両方とも、非常に激烈で早期のNDVチャレンジモデルにおいて顕著なND防御レベルを達成できることを示している。
【実施例27】
【0110】
D28に実施されるベロジェニック遺伝子型V NDVチャレンジに対する、1日齢SPFニワトリにin ovo又はSC経路で投与される二重HVT-ND+IBD vHVT306によって誘発されるND有効性
本実験の目的は、28日齢で実施されるベロジェニックな遺伝子型V(Chimalhuacan)NDVチャレンジに対する、SPFニワトリにin ovo又はSC経路で投与された1つの二重HVT-ND+IBD(vHVT306)の有効性を評価することであった。
本実験で試験したvHVT306組換え体ワクチン候補物の特徴は下記表42に記載されている。
【0111】
表42:本実験で用いられた組換え体ワクチン候補物の特徴
-3日目に、40個のSPF発育鶏卵(約18日及び18時間の孵卵期間)を各々20鶏卵の2グループに無作為に割り当てた。D0に、12羽の1日齢SPFニワトリの1グループを加えた。グループの定義は下記の表43に提示されている。ワクチン接種はD-3(in ovo経路)又はD0(SC経路、頸部の首筋に)に実施し、vHVT306及びvHVT13の標的用量は2000PFU/トリであった。in ovo経路については、孵化率、生存率(D28まで)及びトリの成長(孵化からD28の間)をモニターした。
D28に1グループに付き10羽のトリをビルレントなND Chimalhuacan株でチャレンジした。前記チャレンジは、0.2mLの生理学的滅菌水に稀釈した10
5鶏卵感染用量50(EID50)を用いて筋肉内(IM)経路によって実施した。トリをチャレンジ後14日間モニターした。特有の臨床徴候及び死亡率を記録した。3日以上固有の症状を示すか、又はD42に病気であったいずれのトリも罹患率の計算に加えた。チャレンジ後5日及び7日(すなわちD33及びD35)に、口腔咽頭拭き取り検体を各生存トリから採取した。全ての拭き取り検体を特異的NDV qR-PCRによって分析した。
【0112】
表43:SPFニワトリにSC又はin ovo経路で投与された、NDV F及びIBDV VP2の両方を発現するvHVT306 MDVベクター候補物によって誘発されるND防御の結果
*リアルタイムRT PCRの閾値は2.7log10等価EID50に設定された
完全な孵化率がグループ1及び2でin ovoワクチン接種後に記録され、孵化した全てのトリがD28まで生存した。in ovoで投与が実施されたとき、D0及びD28で2つのグループに体重の相違は検出されなかった。防御の結果は表43に要約されている。全てのvHVT13ワクチン接種コントロールトリはNDチャレンジ後4日までに死亡した。完全な臨床的ND防御は、両経路で投与されたvHVT306によって誘発された。さらにまた、ウイルス排出はin ovo投与後には検出されなかったが、SC投与後にはほんの数羽のトリが検出可能量のチャレンジウイルスを排出した。
結論すれば、本実験は、二重HVT-ND+IBD vHVT306は、非常に激烈な異種NDVチャレンジモデルにおいてSC又はin ovo投与経路によって優れた防御レベルを誘発することを示している。
【実施例28】
【0113】
SPFニワトリのD15におけるクラシックIBDV単離体によるチャレンジに対する二重HVT-ND+IBD(vHVT302、vHVT303及びvHVT304)組換え体ワクチンの有効性
本実験の目的は、SPFニワトリに15日齢で実施されるビルレントな伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(vIBDV)チャレンジ(Faragher 52/70株)に対する、二重HVT組換え体vHVT302、vHVT303及びvHVT304組換え体構築物の早期IBD有効性を評価することであった。
本実験で試験した3つの二重HVT-ND+IBD組換え体ワクチン候補物の特徴は下記表44に記載されている。
【0114】
表44:二重HVT組換え体の発現カセットの特徴
D0で40羽の1日齢SPFニワトリを10羽の4グループに無作為に割り当てた。前記グループには、SB1-004(NDV F遺伝子を発現するSB-1ベクター)をワクチン接種した1つのコントロールグループ(G1)が含まれていた。他の5羽のSPFトリを、嚢/体重比評価のためにワクチン非接種及び非チャレンジで維持した。D0に、下記表45に記載の2000PFUの標的用量を含む組換えワクチンの0.2mLを、これらのトリの頸部に皮下注射によって注射した。D15に、キットプロフロック(商標)プラスIBD(Synbiotics Corp)を用いる血清学的試験のために、各グループの全てのトリから血液サンプルを収集した(グループ1及び3を除き10羽/グループ(前記グループでは1羽のトリがサンプル採取前に死亡した))。D15に、全4グループのトリを点眼(0.05mL/トリ)によって2.5log10EID50でチャレンジした。
【0115】
表45:実験設計及びIBD有効性の結果
12日を超えて病気又はD25に依然として病気のトリは病気と判断した。カッコ内の数字はチャレンジを実施したトリのグループ内総数である。
2臨床徴候及び重篤な嚢病巣に対する防御(嚢スコア<3)。
4非ワクチン接種/非チャレンジグループの嚢/体重比は0.0043であった。
チャレンジ前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。IBDVの臨床徴候をチャレンジ後11日間記録した(D15からD25)。チャレンジ後観察期間の終了時(D25)に全ての生存トリを安楽死させ剖検した。体重及び嚢重量を記録した。各ファブリキウス嚢(BF)を秤量し、続いて組織学のために4%ホルムアルデヒドを含む個々の容器に保存した。嚢の組織学的病巣を表46に提示した基準にしたがって評価した。
【0116】
表46:ファブリキウス嚢の組織学的病巣のスコア基準*
*EU薬局方“トリ伝染性ファブリキウス嚢病ワクチン(生)”モノグラフN0.01/2008:0587より
トリが死亡及び/又は病気の顕著な徴候及び/又はファブリキウス嚢の重度の病巣(すなわち3以上の組織学スコア)を示す場合には罹患したと考えた。
チャレンジ前のlog10で表した平均ELISA IBD+抗体は表45に示されている。コントロールグループ(G1)よりも有意に高い顕著な力価が全ワクチングループで検出された。この血清学的力価はG3(vHVT303)でわずかに高かった。
重度の臨床的徴候がコントロールグループG1の9羽のトリ全てでチャレンジ後に観察された(1羽のトリが死亡に至った)。G2(vHVT302)でただ1羽のワクチン接種トリがチャレンジ後に臨床徴候を示した。重度の嚢病巣に対する防御のパーセンテージは上記の表45に示されている。顕著なIBD防御が全ワクチン接種グループで観察され、完全な防御がG3(vHVT303)で認められた。平均嚢/体重比もまた表45に示されている。全ワクチン接種グループの比がチャレンジコントロールグループG1の比より高く、非ワクチン接種かつ非チャレンジコントロールグループとは有意には相違しなかった。
結論すれば、これらのデータは、本実験で試験した3つの二重HVT-IBD+NDは、重度IBDVチャレンジモデルにおいてIBD抗体及び早期IBD防御を誘発することを示している。
【実施例29】
【0117】
SPFニワトリの14日におけるベロジェニックNDV ZJ1(遺伝子型VIId)単離体によるチャレンジに対する異なる5つのHVT-NDワクチン候補物の有効性
本実験の目的は、SPFニワトリに14日齢で実施されるベロジェニックNDV ZJ1(遺伝子型VIId)単離体によるニューカッスル病チャレンジ(Faragher 52/70株)に対する、NDV F遺伝子を発現する5つの単一HVT組換え体構築物(vHVT39、vHVT110、vHVT111、vHVT112及びvHVT113)の有効性を評価することであった。
これら5つのワクチン候補物の特徴は下記表47に記載されている。
【0118】
表47:本チャレンジ実験で用いられたHVT-ND組換え体ウイルスの特徴
*Wtは、野生型のベロジェニックなF遺伝子が用いられたが、切断部位はレントジェニックなウイルスの切断部位に改変されたことを意味する。Wtnmは、野生型配列の切断部位が改変されなかったことを意味する。Texasベロジェニック株は遺伝子型IVに属し、YZCQは遺伝子型VIIdに属する。
D0で72羽の1日齢SPFニワトリを12羽の5グループ(ワクチン接種)及び12羽の1グループ(非ワクチン接種コントロール)に無作為に割り当てた。前記トリの頸部に下記表48に記載の6000PFUの標的用量を含む組換えワクチンの0.2mLを皮下注射によってD0に注射した。前記トリをD14に筋肉内経路で5.0log10EID50のNDV ZJ1/2000(遺伝子型VIId)ベロジェニック株によりチャレンジした。
【0119】
表48:ND有効性の結果
チャレンジの前及びチャレンジ後に各グループをモニターした。NDVの臨床徴候及び死亡率をチャレンジ後に記録した。口腔咽頭拭き取り検体を感染後(dpi)2及び4日に採取し、文献に記載された方法を用いてリアルタイムRT-PCRによりウイルス負荷を評価した(Wise et al. 2004; Development of a Real-Time Reverse-Transcription PCR for Detection of Newcastle Disease Virus RNA in Clinical Samples. J Clin Microbiol 42, 329-338)。
死亡率及び罹患率に対する防御パーセンテージは上記の表48に記録されている。非ワクチン接種チャレンジコントロールグループ(G1)で完全な感受性が観察され、したがって当該チャレンジの高い重篤性が確認された。ワクチンは、死亡率(25−100%)又は罹患率(8%−83%)に対して多様な防御レベルを誘発した。最良の防御はvHVT110によって誘発され、最低の防御はvHVT039によって誘発され、他の候補ワクチンは中間的な結果を提供した。2及び4dpiの口腔咽頭ウイルス排出の結果もまた上記表48に示され、臨床的防御の結果と一致する。これらのワクチン候補物はそれらのプロモーター及びF遺伝子が異なっている。これらの結果は、前記パラメーターの両方が最適なHVT-NDワクチン候補物の設計に重要であることを示している。
結論すれば、本実験の結果は、HVT-ベクターNDワクチン候補物によって誘発されるND有効性におけるプロモーター及びF遺伝子配列の重要性を示した。
【実施例30】
【0120】
IBDV VP2及びNDV Fを発現する二重SB1構築物によって誘発されるニューカッスル病有効性の評価
本実験の目的は、ニューカッスル病チャレンジに対する、IBDV VP2及びNDV F遺伝子を発現する二重SB1構築物の有効性を評価することである。
D0で、1日齢SPFニワトリを10−20羽のいくつかのグループ(ワクチン接種及び非ワクチン接種グループを含む)に無作為に割り当てる。ワクチン接種グループのトリの頸部に組換えワクチンの1000から5000PFUの標的用量を含む0.2mLを皮下注射によってD0に注射する。或いは0.05mL中の同じ用量を、孵化2又は3日前にin ovoで投与してもよい。前記トリ(少なくとも1つのワクチン接種グループ及び1つの非ワクチン接種グループ)を、ワクチン接種後の種々の時期(例えばD14、D28又はD42)に、筋肉内経路で約4.0log10EID50(0.1mL)のベロジェニックNDV株(例えばTexas GB(遺伝子型II)、ZJ1(遺伝子型VIId)、Chimalhuacan(遺伝子型V)株)によりチャレンジする。
チャレンジの前及びチャレンジ後に各グループを臨床的にモニターする。NDVの臨床徴候(罹患率)及び死亡率をチャレンジ後に記録する。全グループにおける臨床的防御のパーセンテージを計算する。チャレンジの重篤性を確認するためには、非ワクチン接種チャレンジSPFトリの少なくとも90%がチャレンジ後に死亡するか又は重症でなければならない。口腔咽頭及び総排泄腔拭き取り検体をチャレンジ後の種々の時期に(例えばチャレンジ後3、5、7及び9日)サンプル採取することができ、さらにウイルス負荷をリアルタイムRT-PCRによって概算することができる。最良の候補物は、最高レベルの臨床的防御及び拭き取り検体の最低レベルのウイルス負荷を誘発するものであろう。NDV母体移行抗体を含むブロイラーで同様な実験を実施できるが、しかしながらこれら母体移行抗体は、チャレンジが早期に実施される場合、非ワクチン接種トリを潜在的に防御することがある。二重SB1構築物はまた、他のマレック病ワクチン又はベクターワクチンと併用して試験することができる。
【実施例31】
【0121】
IBDV VP2及びNDV Fを発現する二重SB1構築物によって誘発される伝染性ファブリキウス嚢病有効性の評価
本実験の目的は、IBDV VP2及びNDV F遺伝子を発現する二重SB1のIBD有効性を評価することである。
1日齢SPFニワトリを10−20羽のいくつかのグループ(ワクチン接種及び非ワクチン接種コントロールを含む)に無作為に割り当てる。非ワクチン接種コントロールは、チャレンジ及び非チャレンジトリを含む2つのサブグループに分割されるであろう。ワクチン接種グループのトリの頸部に各々1000から5000PFU含むワクチンの0.2mLを皮下注射によってD0に注射する。或いは0.05mL中の同じ用量を、孵化2又は3日前にin ovoで投与してもよい。ワクチン接種後の種々の時期(例えばワクチン接種後14日、21日、28日または42日)に、ワクチン接種グループ及びチャレンジコントロールの全てのトリを、ビルレントIBDV(例えばFaragher又はUS標準株)、高ビルレントIBDV(例えば91-168単離体)、又は変種IBDV単離体(例えばUS Delaware変種E単離体)の点眼(2−4log10EID50/トリを含む0.03mL)によってチャレンジする。チャレンジの前及びチャレンジ後に各グループを臨床的にモニターする。嚢の肉眼病巣の評価のために、チャレンジ4又は5日後にトリを剖検することができる。チャレンジ10又は11日後にトリを剖検してもよい。肉眼及び/又は組織学病巣を評価することができる。さらにまた、トリ及び嚢を秤量して嚢/体重比(嚢重量/体重比x100)を計算し、非ワクチン接種非チャレンジグループの嚢/体重比と比較する。チャレンジの重篤性を確認するためには、コントロールのチャレンジSPFトリは臨床的徴候を示すか、及び/又は顕著な肉眼病巣及び/又は組織学病巣を有するか、及び/又は非ワクチン接種非チャレンジコントロールよりも顕著に低い嚢/体重比を示さなければならない。ワクチンの有効性は、これらのパラメーターを非ワクチン接種/チャレンジグループ及び非ワクチン接種/非チャレンジグループと比較することによって評価される。そのような実験は、IBDV母体移行抗体を含むブロイラー鶏で実施できるが、しかしながらこれら母体移行抗体は、チャレンジが早期に実施される場合、非ワクチン接種トリを潜在的に防御することがある。二重SB1構築物はまた、他のマレック病ワクチン又はベクターワクチンと併用して試験することができる。
【実施例32】
【0122】
IBDV VP2及びNDV Fを発現する二重SB1構築物によって誘発されるマレック病有効性の評価
本実験の目的は、IBDV VP2及びNDV F遺伝子を発現するSB1ベクターによって誘発されるマレック病有効性を評価することである。
1日齢SPFニワトリを20−50羽のいくつかのグループ(ワクチン接種及び非ワクチン接種コントロールを含む)に無作為に割り当てる。非ワクチン接種コントロールは、チャレンジ及び非チャレンジトリを含む2つのサブグループに分割できる。ワクチン接種グループのトリの頸部に各々1000から5000PFU含むワクチンの0.2mLを皮下注射によってD0に注射する。或いは0.05mL中の同じ用量を、孵化2又は3日前にin ovoで投与してもよい。ワクチン接種後の種々の時期(例えばワクチン接種後3から10日)に、ワクチン接種グループ及びチャレンジコントロールの全てのトリをマレック病ウイルス(MDV)株の0.2mLで腹腔内経路によってチャレンジする。MDV株はいくつかの病原型、例えばビルレントMDV(vMDV)(JM又はGA22単離体を含む)、高ビルレントMDV(vMDV)(例えばRB-1B又はMd5単離体)、高ビルレントプラス(vv+MDV)(例えばT-King又は648A単離体)であり得る。MDVチャレンジ株の接種物は、ニワトリを感染させ、それらの血液細胞を採集し凍結保護剤(例えばDMSO)の存在下にて液体窒素中で凍結することによって調製される。ワクチン接種/チャレンジ実験を実施する前に各チャレンジバッチについてニワトリ感染用量50(CID50)を確立する。チャレンジの前及びチャレンジ後に各グループを臨床的にモニターする。ワクチン接種後少なくとも7週後にトリを剖検し、マレック病の肉眼病巣の有無を各トリでチェックする。病巣には以下が含まれ得る(ただしそれらに限定されない):肝臓、心臓、脾臓、性腺、腎臓、神経及び筋肉病巣。そのような実験は、MDV母体移行抗体を含むブロイラー鶏で実施できる。二重SB1構築物はまた、他のマレック病ワクチン(例えばHVT及び/又はCMI988Rispens株)又はMDベクターワクチンと併用して試験することができる。MDチャレンジはまた、ワクチン接種トリとMDV感染非ワクチン接種SPFニワトリ間の接触によって実施することができる。
【0123】
前記のように本発明の好ましい実施態様を詳細に述べてきたが、本発明の範囲を逸脱することなくそれらの多くの明白な変型が可能であるので、上記実施例で規定した本発明は上記に記載した特定の事柄に限定されないことは理解されよう。
本明細書に引用又は参照された全ての文書(“本明細書引用文書”)、及び本明細書引用文書に引用又は参照された全ての文書は、本明細書に又は本明細書に参照により含まれる任意の文書に記載された、任意の製造業者の指示、説明物、製品明細書、及び任意の製品に関する製品説明書とともに、参照により本明細書に含まれ、本発明の実施に利用することができる。