(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整可能なバッフルが、鉛直に調整することで前記上方パイプの前記調整可能なバッフルと前記下方パイプの前記最上部との間の前記間隙の分離寸法を制御するものである、前記調整可能なバッフルが、角度的に調整することで前記第1の液体ガラス流上への前記第2の液体ガラス流の前記降下角度(Ф)を制御するものである、または前記調整可能なバッフルが角度的かつ鉛直に調整するものであることを特徴とする請求項1記載の装置。
前記上方パイプの1つの堰部上で該上方パイプの他方の堰部とは異なった流れを提供するように、前記一対の調整可能なバッフルのうちの一方のバッフルが、該一対の調整可能なバッフルのうちの他方のバッフルとは異なるように位置決めされ、前記異なった流れにより、より厚い前記被覆を前記コアの一方の面に有し、かつより薄い前記被覆を前記コアの他方の面に有する、前記積層板ガラスを提供することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の種々の実施形態を、図面がある場合にはこれを参照して詳細に説明する。種々の実施形態の参照は本発明の範囲を限定するものではなく、本発明はこれに添付される請求項の範囲によってのみ限定される。さらに、本明細書で明記する任意の例は、限定するものではなく、請求される発明の多くの考えられる実施形態のいくつかを単に明記したものである。
【0008】
実施形態において、開示される装置および開示される作製方法は、例えば以下で論じるようなものを含め、1以上の有利な特徴または態様を提供する。任意の請求項において説明する特徴または態様は、一般に本発明の全ての様相に適用できる。任意の1つの請求項における任意の説明される単一または複数の特徴または態様は、任意の他の1以上の請求項における任意の他の説明される特徴または態様と、組み合わせてもよいし、あるいは置き換えてもよい。
【0009】
「含む」または同様の用語は、包含するが限定しないことを意味し、すなわち含むものであって、排他的なものではない。
【0010】
本開示の実施形態の説明において採用される、例えば組成物における成分の量、濃度、容積、プロセス温度、プロセス時間、収量、流量、圧力、粘度、および同様の値、およびその範囲、または構成要素の寸法、および同様の値、およびその範囲、を修飾する「約」は、例えば、材料、組成物、合成物、濃縮物、構成部品、製造物品、または使用配合物、を用意するために使用される典型的な測定および取扱手順を通じて、これらの手順における不用意なエラーを通じて、方法を実行するために使用される出発材料または成分の、製造、ソース、または純度における違いを通じて、および同様の考慮事項を通じて、生じ得る数量の変動を称する。「約」という用語は、特定の初期濃度または混合物を有する組成物または配合物の、経年変化に起因して異なる量、および、特定の初期濃度または混合物を有する組成物または配合物の、混合または処理に起因して異なる量も含有する。本書に添付される請求項は、これらの「約」の量と同等のものを含む。
【0011】
「随意的な」または「随意的に」とは、続いて説明される事象または状況が、生じる可能性もあるし、または生じない可能性もあること、さらにその説明が、その事象または状況が生じる場合と生じない場合とを含むことを意味する。
【0012】
実施形態において「から実質的になる」は、例えば、
積層ガラス物品を作製するための調整可能なバッフルを有する装置、および、
本書で画成されるような調整可能なバッフルを有する開示される装置を用いて積層ガラス物品を作製する方法、
を称することができる。
【0013】
本開示の、積層ガラス物品を作製するための、調整可能なバッフルを有する装置、積層ガラス物品を作製する方法、得られる積層ガラス物品、組成物、または配合物は、請求項に記載された構成要素またはステップに加え、さらに本開示の組成物、物品、装置、または作製および使用方法の、基本的な特性および新規特性に物質的に影響を与えない、例えば特定のガラス組成物、特定の添加剤または成分、特定の薬剤、特定の構造材料または構成成分、特定の溶融物または延伸条件、または選択された同様の構造体、材料、またはプロセス変数など、他の構成要素またはステップを含んでもよい。
【0014】
本書で使用される単数形は、他に既定されていなければ、少なくとも1つ、すなわち1以上を意味する。
【0015】
通常の当業者に周知の省略形(例えば、時間に対して「h」または「hrs」、グラムに対して「g」または「gm」、ミリリットルに対して「mL」、室温に対して「rt」、ナノメートルに対して[nm]、および同様の省略形)を使用することがある。
【0016】
構成要素、成分、添加剤、寸法、条件、および同様の態様に対して開示される、具体的および好適な値、およびその範囲は、説明のみのためのものであり、すなわちこれらは他の画定される値または画定される範囲内の他の値を排除しない。本開示の装置および方法は、明白または潜在的なその中間値および範囲を含め、本書で説明される、任意の値または任意の値の組合せ、特定の値、より具体的な値、さらに好適な値を含み得る。
【0017】
米国特許第4,214,886号明細書に開示されている融合積層プロセスでは、異なる組成物の2つのガラスを結合させて2層または3層の積層板とする。被覆ガラスすなわち外側層のガラスのソースを提供する上方パイプからのガラス流すなわちガラスの流れが、コアガラスのソースを提供する下方パイプのガラス上へと落下する距離は、最終的な積層板の優れたガラス品質の維持にとって重要であることが、例えばオイルモデルシミュレーション、数学モデリング、および観察によって見出された。一般に、2つの液体ガラス流が合流するときの速度は略同一でなければならないと考えられている。落下距離と液体ガラスの粘度とが組み合わさって、上方ガラス流の速度が確立される。さらに、2つのパイプ間の距離は均一であるか、あるいは均一に極近いものであることが好ましい。別の言い方をすれば、上方パイプの最も下方の部分と下方パイプの最も上の部分との間の距離は実質的に等距離であり、すなわちこの距離はパイプ間において略同一の間隙または分離寸法を有する。少なくともこれらの基準を満足するために、装置は広範な可動域を有することが要求される。上方パイプの最も下方の部分と下方パイプの最も上の部分との間の落下距離が実質的に等距離でない場合、積層板に欠陥が生じる可能性がある。実施形態において、開示される調整可能なバッフルを有する装置は、上方および下方のパイプ間の分離寸法における差、すなわちパイプの間隙、またはパイプの傾き、あるいはその両方を補正することができる。
【0018】
実施形態において、開示される装置および方法は、より大きな柔軟性をパイプの運動範囲に与え、また装置の複雑さを低減することができる。
【0019】
実施形態において、本開示は積層融合処理におけるガラス流の合流と得られる積層ガラス板の品質とを制御する装置および方法を提供する。上方パイプの底部領域で、凹所またはスロット内などにおいて例えば鉛直に動くことができるバッフル(別称、合流調整プレート(confluence adjustment plate;CAP))を、開示される装置が含み、またその方法が提供する。このバッフルは、任意の様々な適切な材料から作ることができ、また上方パイプの長手側すなわち側面側の両側に、すなわちこれに沿って位置付けてもよい。実施形態において、バッフルは好適にはパイプの底と同じ長さにすることができる。バッフルの高さは、上方パイプと下方パイプとの間で必要とされる運動および分離を受容するのに十分なものである。実施形態において、パイプの間隙とパイプの傾きに対する調整は、例えば各バッフルの先端に位置するロッドによって実現することができ、このロッドは装置の外部に突出してもよい。
【0020】
バッフルを使用することで、上方および下方のパイプ間の間隙の均一性および間隙の距離を容易に操作することができる。温度、ガラス組成、相対的なガラス流量、相対的なガラス粘度、および同様の考慮事項、またはその組合せなど、変化するプロセス条件に応じるためにパイプの一方または両方を傾斜させなければならないときに、この調整能力の必要性が生じる。
【0021】
実施形態において、本開示は積層板ガラスを形成する装置を提供し、この装置は、
積層板ガラス製品のコアを形成する第1のオーバーフローガラス溶融物液体流を提供する、下方パイプと、
一対の調整可能なバッフル(すなわち、合流調整プレート)を有する第1の上方パイプであって、これらのバッフルがこの上方パイプの底部と下方パイプの最上部との間に据えられている、第1の上方パイプとを備え、
第1の上方パイプが、積層板のコア上に積層板の被覆を形成する第2のオーバーフローガラス溶融物液体流を、第1の液体ガラス流上に提供し、
調整可能なバッフルが、下方パイプから間隙と傾斜角度とによって分離されて(すなわち間隔を空けて)おり、かつ調整可能なバッフルが、第1の液体ガラス流上への第2の液体ガラス流の降下角度(Ф)および落下点または落下線を制御することを特徴とする。
【0022】
実施形態では、調整可能なバッフルを例えば鉛直に調整して、上方パイプの調整可能なバッフルと下方パイプの最上部との間の間隙の分離寸法を制御することができる。実施形態では、これらの調整可能なバッフルを例えば独立してまたは連携させて、角度的に外向き、内向き、あるいはこの両方に向けて調整し、第1のオーバーフローガラス溶融物流上への第2のオーバーフローガラス溶融物流の降下角度(Ф)を制御してもよい。実施形態では、これらの調整可能なバッフルを独立してまたは連携させて、角度的調整と鉛直調整の両方を例えば同時にまたは連続して行ってもよい。
【0023】
実施形態において、調整可能なバッフルは、例えば第1の上方パイプの底部の内部または第1の上方パイプのすぐ下に据えてもよく、かつ概して下方パイプの最上部に向けて下向きに延在するものでもよい。
【0024】
実施形態では、上方パイプに対する下方パイプの空間的向きを空間内において固定してもよい。実施形態では、下方パイプと一対のバッフルを備えた上方パイプとを夫々別々に支持してもよく、またこれらは互いに接続する必要のないものであることが好ましい。実施形態において、上方パイプおよび下方パイプは、各パイプが他方のパイプに対して独立して移動または調整可能であるように構成され得る。
【0025】
実施形態では、間隙寸法を調整するために、調整可能なバッフルを上方パイプに1つの端部またはエッジで接続させてもよく、さらに調整可能なバッフルの夫々が少なくとも1つの調整ロッドを、例えば間隙の端部またはエッジの付近に有してもよく、あるいは調整可能なバッフルを任意の他の適切な位置に接続してもよい。いくつかの実施形態では、調整可能なバッフルを上方パイプに接続または締結することを必要としない。代わりに調整可能なバッフルを、上方パイプとの直接の接続または締結を全く設けることなく、上方パイプの底部に近接させて保持してもよい。
【0026】
実施形態において、下方パイプおよび上方パイプへの溶融ガラスの供給は、任意の適切な方法または方向で、例えばこれらのパイプの同じ端部または側から、あるいはこれらのパイプの反対側の端部または側から実現することができる。
【0027】
実施形態において、上方パイプの1つの堰部上でこの上方パイプの他方の堰部とは異なった流れを提供するように、一対の調整可能なバッフルのうちの一方のバッフルを、この対の他方のバッフルとは異なるように位置決めしてもよい。この異なった流れにより、より厚い被覆をコアガラスの一方の面に有し、かつより薄い被覆をコアガラスの他方の面に有する、積層板ガラス、すなわち異なった被覆積層厚さを有する積層板ガラスが提供され、この異なった厚さ特性は、例えばウェッジ状の積層形状を適用する際に有用になり得る。
【0028】
実施形態において、本開示の装置は約2から約10の追加の上方パイプなど、複数の上方パイプをさらに含んでもよく、この各追加の上方パイプは、各追加の上方パイプの底部と、その下に据えられた前の上方パイプの最上部との間に据えられた、一対の調整可能なバッフルを随意的に備えてもよい。各追加の上方パイプは、積層板の片面または両面上に追加の被覆層を形成する追加のオーバーフローガラス溶融物液体流を、前の液体ガラス流上に提供することができる。調整可能なバッフルを備えた複数の上方パイプを有する装置を用いると、多層積層ガラスを作製することができる。実施形態において、積層板ガラスを形成する方法は、一対の調整可能なバッフルを備えた複数の上方パイプを、上方パイプの上に積み重ねて積層板ガラスを提供するステップをさらに含んでもよく、このとき積層板の被覆層の総数は上方パイプの総数の2倍に相当する。
【0029】
実施形態において、調整可能なバッフルの先端と下方パイプとの間の分離寸法または間隙は、間隙の全スパンに亘って実質的に等距離でもよく、すなわち均一または実質的に均一な分離寸法でもよい。実施形態において、調整可能なバッフルと下方パイプとの間の分離寸法または間隙は、意図的または偶然に、間隙の全スパンに亘って等距離でなくてもよく、すなわち実質的に非均一でもよい。実施形態において、調整可能なバッフルと下方パイプとの間の分離寸法または間隙は、均一または実質的に均一な分離寸法と、非均一な分離寸法とを組み合わせたものでもよく、すなわちこれらの調整可能なバッフルを夫々独立して調整して、対向する側で同じ寸法を有する各間隙を提供してもよいし、あるいは対向する側で異なる寸法を有する各間隙を提供してもよい。
【0030】
実施形態において、本開示は前述した装置で積層板ガラスを形成する方法を提供し、この方法は、
第1の液体ガラス流を下方パイプ上に流して、積層板のコアを形成するステップ、
第2の液体ガラス流を、上方パイプ上に、次いで一対の調整可能なバッフルに、さらに次に第1の液体コアガラス流上に流して、積層板の凝固したコアガラス上に積層板の被覆を形成するステップ、
を含む。
【0031】
実施形態において積層板ガラスを形成する方法は、調整可能なバッフルを調整して、間隙、第1の液体ガラス流上への第2の液体ガラス流の、傾斜角度(θ)、降下角度(Φ)、落下線、またはその組合せ、のうちの少なくとも1つを変化させるステップをさらに含んでもよい。
【0032】
実施形態において、上方パイプのバッフルを有する開示される装置と、バッフルおよび結果的にはガラス流の流れおよびガラス流の合流を選択的または系統的に調整する方法は、被覆ガラス流の速度とコアガラス流の速度とを一致させることによってもたらされる課題に解決策を与えることができる。
【0033】
実施形態では、開示される装置と、開示される装置を使用した方法の利点として、例えば以下のものを挙げることができる。
【0034】
積層板の3層(すなわち、外側被覆−内側コア−外側被覆)の厚さの比率を変化させるために流れの調整が必要である場合、上方パイプのトラフ内の液体ガラスの粘度を例えば変化させてもよいし、あるいは上方パイプを傾斜させてもよい。
【0035】
上方パイプを下方パイプに対して相対的に傾斜させた場合、2つのパイプ間の間隙は非均一になり得る。この状況は、開示されるバッフルの一方または両方を操作して、均一な分離寸法、すなわち等距離の分離を有する間隙を提供することによって、容易に補正することができる。
【0036】
下方パイプのトラフ内のコアガラスの温度を変化させた場合、被覆上方パイプからのガラス流の粘度も変化し、従って上方パイプからのガラス流の速度に影響を与える。この状況は間隙の変更を必要とするが、この間隙の変更は開示されるバッフルの一方または両方を操作することによって容易に達成することができ、適切な調整と適合するガラス流の流れを実現することができる。
【0037】
バッフルを、鉛直位置から例えば外向きなどに若干角度をつけることによって、上方パイプからのガラス流の降下位置を、下方パイプの堰部(すなわち防壁)を横切る1以上の異なる位置に、位置付ける、あるいは向け直すことができる。
【0038】
図面を参照すると、
図1は1以上のバッフル110を備えた上方被覆融合パイプ100の一例の斜視図を示し、この上方パイプは、1以上の調整ロッド120を使用して、その長さ(すなわち、長手側)に亘って均一な被覆ガラスの流れを、上方被覆融合パイプの下に据えられた下方融合パイプに送出することができる。上方被覆ガラスパイプはパイプの底部に1以上の調整可能なバッフル110を有している(長手側の1つのみを図示する)。
【0039】
図2Aは「通常」の位置、すなわち位置合わせされた、または平行な、上方被覆パイプ100および下方コアパイプ130を有し、また2つのガラス流の合流点(図示なし)で、調整可能なバッフル110によって実現される均一な間隙140を有している、「通常」の位置の一例の正面図を示している。バッフル110の両端部で外側に延在しているロッド120を、バッフルの相対位置を維持または変更するために、またバッフルの相対運動または調整を実現するために使用し、例えばバッフルを上または下に動かして、全体の間隙寸法140を調整したり、または傾斜角度(θ)170を変化させたりすることができる。傾斜角度(θ)は、調整可能なバッフルがない場合での、上方被覆パイプからのガラス溶融物流160が下方コアパイプ130から流れるガラス溶融物流150上に降下する際の角度である。傾斜角度(θ)は、その中間値および範囲を含めて、例えば0から20°、1から15°、1から10°、1から5°でもよい。ロッドは、バッフルの間隙および傾斜角度の調整の便宜上、例えば屈折性バリア壁175を有するマッフル炉から外に突出していてもよい。ロッドは、1以上の調整可能なホルダーマウント180など、任意の適切な構造体によってさらに支持してもよい。
【0040】
図2Bは「非通常」の位置、すなわち歪曲した、または非平行な、上方被覆ソースパイプ100および下方コアソースパイプ130を有し、また2つのガラス流の合流点(図示なし)で均一な間隙140を有している、「非通常」の位置の一例の正面図を示している。パイプ間の非通常の、すなわち歪曲した関係の発現は、例えば調整ロッド120で間隙140の寸法を調整して均一な間隙140を得ることにより、調整可能なバッフル110(隠線で部分的に図示されている)で修正することができる。
【0041】
図3は、上方被覆パイプ100と、適合する下方コアパイプ130とを示した
図2Aの装置の断面(A−A)立面図を示している。実施形態においてバッフル110は、例えば上方パイプの傾斜した凹所(この図に示されている)または鉛直の凹所(
図5から7に示されている)の内部に存在し得、さらにこのバッフルを下向きに伸ばしたり、あるいは上向きに格納したりするなどして調整して、2つのガラス流の合流点で均一な間隙140を提供することができる。ここで図示されている間隙140の寸法は、「閉じた」または略閉じた状態であり、バッフルが下方パイプ130に向かって十分に下向きに伸ばされた、または下方パイプ130に接触した場合など、非常に小さいまたはゼロの状態である。実施形態において間隙140の寸法は、その中間値および範囲を含めて、例えば0.1から20インチ(0.254〜50.8cm)以上、0.1から10インチ(0.254〜25.4cm)、0.2から8インチ(0.508〜20.32cm)、0.3から6インチ(0.762〜15.24cm)でもよい。間隙寸法を変更すると、被覆パイプから流れるガラス流の速度が、例えば徐々に、あるいは連続的に変化する。
【0042】
図4は別の例の被覆パイプ100およびコアパイプ130の別の断面立面図を示し、バッフル110に角度を加えて被覆ガラス流が下方パイプのコアガラス流上に降下する位置を変化させる例を示している。ここでバッフル110は、枢動点190に関してバッフルが枢動する形で枢動的に調整するように構成される。バッフルを、内向きに(図示なし。すなわち1つまたは両方の角度Φが、鉛直の基準線196によって画成される領域の内部に存在する)、外向き194に(1つまたは両方の角度Φが、降下角度偏差ゼロの基準線196すなわち鉛直によって画成される領域の外側に存在して無限斜面を有する、あるいはΦ=0°である)、またはこれらを組み合わせるなどして枢動させると、コアガラス流上に流れる被覆ガラス流の「降下」角度(Ф)192と対応する「落下」線198とを変化させることができる。「落下」線198は、バッフルの最も外側のエッジ上の、上方被覆ガラス流の流れの最も内側のエッジ部分を表す基準線である。実施形態では、開示される装置および方法を用いて、バッフル110の1つまたは両方の鉛直位置、水平位置、またはその両方を変化させることによって必要に応じて落下線を有利に制御または調整することができる。実施形態では、これらのバッフルの枢動を、例えば滑動可能なタイロッド410、拡張させる部材(spreader member)、あるいは同様の部材または機構でリンクさせてもよい。タイロッド410を任意の適切な手段(図示なし)で上昇または下降させることで(両矢印420)、バッフルを実質的に等しく外向きまたは内向きに変位させることができる。タイロッド410は、
図1および2に図示されている1以上の調整ロッド120によって作動させることができる。バッフル110の枢動動作(例えば、194)によって、下方コアガラス流上への上方被覆ガラス流の流れの制御と位置の制御が可能になる。
【0043】
図5Aおよび5Bは、鉛直に変位可能なバッフル110を有する、被覆パイプ100およびコアパイプ130の別の例の断面立面図を示している。
図5Aは、バッフルの下方端部と下方コアパイプ130または下方コアガラス流(図示なし)の最上部との間の間隙140を調整するための制御ロッド120を備えた、鉛直に変位可能なバッフル110を有する、被覆パイプ100およびコアパイプ130の別の例の別の断面立面図を示している。
図5Bは、鉛直に変位可能なバッフル110が上方パイプ100の凹所内に格納されていることを除き、
図5Aに示したものと同じ被覆パイプの断面立面図を示している。ここでの制御ロッド120または同等の構造体は、バッフルを上昇させて、バッフルの下方端部と下方コアパイプ130または下方コアガラス流(図示なし)の最上部との間の寸法をより大きくするよう間隙140を調整するために使用することができる。バッフル110が鉛直にのみ変位して枢動変位または水平変位をしなかったため、
図5Aおよび5Bの両方において「落下」線198は略同じである。
【0044】
図6Aおよび6Bは、鉛直かつ枢動的に変位および調整が可能な変位可能なバッフル110を有する、被覆パイプ100およびコアパイプ130の別の例の断面立面図を示している。
図6Aは、上方パイプ100の凹所内に鉛直に格納されかつ外向きに枢動的に延在して、結果的に比較的大きい間隙140と拡大すなわち広げられた降下角度(特定のФ、図示なし)とを提供する、バッフル110を示している。これに対し、
図6Bは同じ装置で、上方パイプ100の凹所から下向きに鉛直に部分的(図示)または十分に延在して、結果的に比較的小さい間隙140と、より狭い降下角度(特定のФ、図示なし)と、さらに下方パイプ130の外側エッジにより近い「落下」線198とを提供するように枢動的に引かれた、バッフル110を有したものを示している。
【0045】
図7は、溶融ガラス流の合流を管理するようコアパイプの上に据えられたバッフル110を備えている、被覆パイプ100の別の例の断面立面図を示している。下方コアパイプはトラフ155内に溶融ガラスを含有し、この溶融ガラスが意図的に容量を超えるまで満たされるとオーバーフローコアガラス流150が生成され、このコアガラス流が重力下で下向きに流れ落ちる。バッフル110を有する上方被覆パイプ100も同様にオーバーフロー被覆ガラス流160を生成および提供し、このガラス流はバッフル110の外側エッジによって決定される点または領域でコア流150に接触するまで、下向きに流れ落ちる。被覆ガラス溶融物流とコアガラス溶融物流とが組み合わさって(すなわち、合流し)、2つの部分積層流165が生成される。これらの部分積層流165を、他方の部分積層流とは分けてその下降を継続させて、例えば片面積層ガラスを提供することができるし、あるいは別々の部分積層流165を融合すなわち合流させて、その両面に単一のコア150と被覆層160とを有する積層板(図示なし)としてもよい。「被覆」および「コア」という用語は実施形態において相対的なものであり、開示される装置および方法で例えば片面の積層板が作製される場合には、これらを交換可能に用いることができることを当業者は認識している。説明のために、
図7ではコアガラス流および被覆ガラス流を、同等の厚さまたは容積を有した、すなわち1:1の比率のものとして示している。しかしながら、実施形態においてコア150および被覆層160のガラス流の夫々は、同じ、類似した、あるいは異なる、厚さまたは容積を有したものでもよい。コア層および被覆層の相対的な厚さ比率または容積比率は、例えばその中間値および範囲を含めて、約50:1、20:1、10:1、5:1、2:1、1:1、1:2、1:10、1:20、1:50、および同様の比率からのものとし得る。
【0046】
図8は、
図1から7で図示および説明した装置の態様を示した斜視図である。ここでの制御ロッド120または同等の構造体は、バッフルを持ち上げて、バッフル110の下方端部と下方コアパイプ130または下方コアガラス流150の最上部との間の寸法、角度、またはこの両方を、より大きくまたはより小さくするよう間隙140を調整するために使用することができる。間隙140が適切に調整されると、上方被覆ガラス流140および下方コアガラス流150の合流の制御を信頼できるものにすることができる。
【0047】
実施形態においてバッフルは、上方パイプの下方部分の下または内部に位置する、可動プレートでもよい。プレートの材料は任意の適切な材料を含み得、例えば、白金、種々のセラミック、高温金属、および同様の材料、またはこれらの組合せが挙げられる。随意的にはロッドがバッフルの各端部に位置し、例えば、このロッドは調整の便宜上、装置の外部ハウジングを超えて延在してもよい。バッフルの下部端部と下方パイプの最上部との間の間隙は変化させることができ、また間隙の均一性は調整ロッドを用いて容易に維持または制御可能に変更することができる。
【0048】
実施形態では、開示される装置および方法の使用時に、バッフルを調整してガラスの流れおよび得られる積層板の積層特性を補正することができる。
【0049】
実施形態において、ガラス流が結合すなわち合流する点で上方被覆ガラス流が下方コアガラス流よりも低速である場合、被覆ガラスが引き伸ばされる可能性があり、またコアガラスは遅くなる。この状況は、堰部(すなわち、パイプの防壁)に亘る均一な流れの分布に悪影響を与える可能性がある。実施形態においてこの条件は、バッフル部材の1つまたは両方を適切に調整して間隙を変えることによって補正することができる。
【0050】
実施形態では、上方被覆パイプ100にまたはこの内部に据えられたバッフル110の両端部と下方パイプとの間の分離寸法により形成される間隙140を、調整することができ、すなわち都合よく変化させることができる。間隙のサイズの増加は、例えば、上方被覆パイプ100および下方コアパイプ130の両方を固定位置で保持し、かつバッフル110を下方コアパイプ130から離れるように相対運動させることによって実現することができる。バッフル110は、例えばバッフル110を対で上方被覆パイプ100の本体内に格納することによって、鉛直に下方コアパイプ130から離れるように、すなわち上向きに下方コアパイプ130から離れるように移動または調整することができる。逆に、上方被覆パイプ100および下方コアパイプ130の両方を一定のまたは固定の位置で保持し、かつバッフル110を下方コアパイプ130に向けて相対運動させることによって、間隙140のサイズを小さくすることができる。実施形態では、調整または制御ロッド120などを用いてバッフル110またはバッフル対の一部に接続されたスクリューリフタにさらに接続された、遠隔にあるサーボモータなどの任意の適切な機構によって、バッフル110の全長または一部を最初の鉛直位置から上向きまたは下向きに動かして間隙140を変化または調整することができる。
【0051】
実施形態ではバッフル110の一部または端部を、降下角度(Ф)がゼロ(Ф=0°)である最初の鉛直向きから、その中間値および範囲を含めて約0.1°から30°、約0.1°から20°、約0.1°から10°、および同等の降下角度値の、ゼロではない降下角度(Ф)を有する第2の向きまで、外向きに動かしてもよい。実施形態では、隣接するバッフル110の対の間に据えられた拡張させる部材410など任意の適切な機構によって、バッフル110の端部を最初の鉛直向きから外向きに動かして、降下角度(Ф)を変化または調整することができる。
【0052】
実施形態では、バッフル110を同じ量だけ、相前後してまたは同時に調整してもよい。あるいは隣接するバッフル110を、対になっている他方のバッフルとは別に、すなわち無関係に調整してもよい。
【0053】
実施形態では、隣接するバッフル110で間隙調整(すなわち、鉛直方向)および降下角度調整(すなわち、水平方向)の両方を、例えば選択された調整機構に応じて同時にまたは連続して行ってもよい。実施形態において、間隙および降下角度の両方を調整する適切な機構は、例えば伸長−格納の相対運動および迎角に対する相対運動の両方を含め、固定翼航空機のフラップ調整に似た、あるいはこれをモデルにし得る構造体でもよい。実施形態において、間隙および降下角度のいずれかまたは両方を調整する別の適切な機構は、例えば間隙寸法を調整するために上昇または下降させることができ、制御可能に拡張または格納させて降下角度の所望の調整を実現することができる、柔軟なブーツ構造(boot structure)でもよい。ブーツの拡張または格納は、例えば外部または内部の機械的な、空気圧式の、油圧式の、および同様の、力または圧力変化、あるいはこれらの組み合わせによって、ブーツ内で実現することができる。
【0054】
実施形態において間隙すなわち分離寸法を変化させると、下方コアパイプから流れている溶融ガラスの溶融物上に上方被覆パイプから流れる、溶融ガラスまたは溶融物の速度に変化が生じる。具体的には、間隙140の分離寸法を増加させると、上方被覆パイプから下方の溶融物の流れの上に流れるガラス溶融物の流速が相対的に増加する。間隙の分離寸法を減少させると、典型的には、上方被覆パイプから下方の溶融物の流れの上に流れるガラス溶融物の流速が相対的に減少する。
【0055】
実施形態では、結合点において被覆ガラス流がコアガラス流よりも速い場合、被覆ガラス流が折り重なり始めて「重なり効果(piling effect)」が生じる。これは、パイプの長さに沿った外見上のガラスの質量分布と延伸線に沿った外見上のガラスの質量分布との両方に影響を与え得る。これは延伸方向を横切る方向と下る方向において、板厚に変動を生じさせ得る。第2の問題点は、被覆層、コア層、または両方の層の内部、あるいは被覆層とコア層との間に、空気が捕捉される可能性が高いことであろう。被覆層とコア層との間に空気が捕捉されると、2つの異なるガラス層間の界面にシードが生成される可能性がある。この第2の問題点も、間隙を変更して、例えば上方被覆ガラスの流れの速さを減少させることによって補正することができる。上方被覆ガラスの流れの速さは、例えば相対的な間隙サイズを減少させることによって減速させることができる。
【0056】
実施形態では、プロセスパラメータの変化に起因する流れまたは粘度の変化に対処するために、パイプの1つを傾斜させることが必要になる状況があり得る。この傾斜によって2つのパイプ間に非均一な間隙が生じ得る。2つのパイプ間の距離が均一でない場合、パイプの全長で下降速度が非均一になる可能性があり、上述した問題が生じ得る。この問題は、開示される装置およびその作製方法で修正または回避することができる。傾斜が相対的に非均一になる条件は、典型的には単一の融合パイプでは問題にならない。
【0057】
本開示を、種々の具体的な実施形態および技術を参照して説明した。しかしながら、本開示の範囲内に留まったまま、多くの変形および改変が可能であることを理解されたい。