特許第6149327号(P6149327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6149327パイロット式弁装置、及び、それを備えた水洗大便器装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149327
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】パイロット式弁装置、及び、それを備えた水洗大便器装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/383 20060101AFI20170612BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20170612BHJP
   E03D 1/30 20060101ALI20170612BHJP
   F16K 31/524 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   F16K31/383
   F16K31/44 B
   E03D1/30
   F16K31/524 A
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-71463(P2013-71463)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-194266(P2014-194266A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 隆
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−001881(JP,A)
【文献】 特許第3312625(JP,B2)
【文献】 特開平09−095992(JP,A)
【文献】 特開2004−308261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/12−31/165;31/36−31/42
F16K 31/44−31/62
E03D 1/00− 7/00;11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水流路を開閉するパイロット式弁装置であって、
前記給水流路に設けられた主弁座と、
前記主弁座に着座して前記給水流路を閉止する止水状態と、前記主弁座から離間して前記給水流路を開放する給水状態とを切り替える主弁体と、
その内部の圧力上昇時には前記主弁体を前記主弁座へ向かって移動させ且つ内部の圧力低下時には前記主弁体を前記主弁座から離間するように移動させる圧力室と、
前記圧力室の圧力を開放するパイロット弁穴部を備え、このパイロット弁穴部を開閉するパイロット弁と、
使用者が操作開始位置から操作終了位置まで手動操作可能な手動操作部と、
この手動操作部の位置に応じて、前記パイロット弁を開閉するパイロット弁駆動機構と、
このパイロット弁駆動機構を収容するケーシングと、を有し、
前記パイロット弁駆動機構は、前記手動操作部が操作開始位置から操作終了位置まで手動操作される途中の途中位置にあるとき、前記パイロット弁を開弁させるように構成され、且つ前記手動操作部が操作終了位置に到達したとき及び保持されたとき、前記パイロット弁の開弁状態を解除して閉弁させるように構成され
前記パイロット弁穴部は、前記ケーシングの内側側面に形成され、
前記パイロット弁は、前記パイロット弁穴部を貫通して前記ケーシングの内側に突出するように設けられているパイロット弁操作部を有し、
前記手動操作部は、回転軸を回転させる手動回転操作部であり、
前記パイロット弁駆動機構は、前記手動操作部の回転に連動して、前記ケーシングの内側側面に沿う方向に回転移動され、前記パイロット弁操作部を押圧して、前記パイロット弁を開弁させる押圧カムを備えていることを特徴とするパイロット式弁装置。
【請求項2】
前記パイロット弁駆動機構は、前記手動操作部が操作終了位置に到達した後、操作開始位置に戻り移動する途中の途中位置にあるとき、前記パイロット弁を閉弁させることを特徴とする請求項1記載のパイロット式弁装置。
【請求項3】
前記パイロット弁駆動機構は、前記手動操作部が操作開始位置から操作終了位置まで手動操作される途中の途中位置にあるとき、前記押圧カムを保持して揺動させずに、前記押圧カムにより前記パイロット弁操作部を押圧して、前記パイロット弁を開弁させ、且つ、前記手動操作部が前記操作終了位置から操作開始位置に戻る途中の途中位置にあるとき、前記押圧カムを保持せずに揺動可能にさせ、前記押圧カムが前記パイロット弁操作部を押圧せずに揺動され、前記パイロット弁を開弁させないようにするクラッチ部材を備えることを特徴とする請求項に記載のパイロット式弁装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかに記載のパイロット式弁装置と、
汚物を受けるボウル部と、洗浄水をボウル部に導くための導水路と、を内部に備えた水洗大便器本体と、
水洗大便器本体に供給する洗浄水を貯水するタンクと、
前記タンク内の下方に配置され、パイロット式弁装置からの給水を噴射する噴射ノズルと、
一端が前記導水路に連結され、さらに、他端が前記噴射ノズルと対向して配置され且つ噴射ノズルから噴射された給水量に対応する洗浄水量をタンクから引き込む開口を形成している、スロート管と、
を備える水洗大便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット式弁装置、及び、それを備えた水洗大便器装置に係り、特に、給水流路を開閉するパイロット式弁装置、及び、それを備えた水洗大便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、給水流路を開閉するパイロット式弁装置として、例えば、特許文献1に記載されているように、使用者が操作ロッドを操作終了位置まで押し込んだ状態で、ボール状弁体を開弁させ、それにより主弁の圧力室の水を排水し、主弁を開弁させるものが知られている。
また、給水流路を開閉するパイロット式弁装置として、特許文献2に記載されているように、使用者が操作するハンドルがニュートラルポジション(操作開始位置)にある場合に開閉弁機構は閉弁状態とされ、使用者がハンドルを操作終了位置まで回転操作させたときは、開閉弁機構が開弁され、それにより主弁が開弁され、使用者の操作終了後、板ばねの力によりハンドルがニュートラルポジション(操作開始位置)まで再び戻された場合に開閉弁機構が再び閉弁状態とされるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−19845号公報
【特許文献2】特許第3312625号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなパイロット式弁装置では、使用者がハンドル等の操作部を操作終了位置に到達したままの状態で所定時間保持(ホールド)してしまう場合には、パイロット弁がそれに伴って開弁されたままの状態となり、主弁が開弁されたままの状態となる。したがって、主弁から供給される給水量がばらついてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、手動操作部が操作終了位置に到達したとき及び保持されたとき、パイロット弁の開弁状態を解除して閉弁させ、給水流路から供給される給水量をほぼ一定に保つことができるパイロット式弁装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、給水流路を開閉するパイロット式弁装置であって、給水流路に設けられた主弁座と、主弁座に着座して給水流路を閉止する止水状態と、主弁座から離間して給水流路を開放する給水状態とを切り替える主弁体と、その内部の圧力上昇時には主弁体を主弁座へ向かって移動させ且つ内部の圧力低下時には主弁体を主弁座から離間するように移動させる圧力室と、記圧力室の圧力を開放するパイロット弁穴部を備え、このパイロット弁穴部を開閉するパイロット弁と、使用者が操作開始位置から操作終了位置まで手動操作可能な手動操作部と、この手動操作部の位置に応じて、パイロット弁を開閉するパイロット弁駆動機構と、このパイロット弁駆動機構を収容するケーシングと、を有し、このパイロット弁駆動機構は、手動操作部が操作開始位置から操作終了位置まで手動操作される途中の途中位置にあるとき、パイロット弁を開弁させるように構成され、且つ手動操作部が操作終了位置に到達したとき及び保持されたとき、パイロット弁の開弁状態を解除して閉弁させるように構成され、さらに、パイロット弁駆動機構を収容するケーシングを有し、パイロット弁穴部は、このケーシングの内側側面に形成され、パイロット弁は、パイロット弁穴部を貫通してケーシングの内側に突出するように設けられているパイロット弁操作部を有し、手動操作部は、回転軸を回転させる手動回転操作部であり、パイロット弁駆動機構は、手動操作部の回転に連動して、ケーシングの内側側面に沿う方向に回転移動され、パイロット弁操作部を押圧して、前記パイロット弁を開弁させる押圧カムを備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、パイロット弁駆動機構は、手動操作部が操作開始位置から操作終了位置まで手動操作される途中の途中位置にあるとき、パイロット弁を開弁させるように構成され、一方、手動操作部が操作終了位置に到達したとき及び保持されたとき、パイロット弁の開弁状態を解除して閉弁させるように構成されているので、パイロット弁の開弁時間には影響を与えず、パイロット弁の開弁時間をほぼ一定とすることができる。よって、パイロット弁が開弁され、圧力室内部の圧力が低下して、主弁体が給水流路を開放する給水時間がほぼ一定に保たれる。従って、給水流路から供給される給水量をほぼ一定に保つことができる。
また、パイロット弁駆動機構がケーシング内に収容され、手動操作部の回転に連動して、ケーシングの内側側面に沿って回転でき、パイロット弁操作部を押圧して、パイロット弁を開弁させる押圧カムを備える。従って、ケーシングが、パイロット弁駆動機構の押圧カムを回転させるガイドの役割を果たすことができ、パイロット弁を適切に開弁させることができる。さらに、パイロット弁駆動機構を内側で回転させるケーシングにより、パイロット式弁装置全体をコンパクトに構成することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、パイロット弁駆動機構は、手動操作部が操作終了位置に到達した後、操作開始位置に戻り移動する途中の途中位置にあるとき、パイロット弁を閉弁させる。
このように構成された本発明においては、パイロット弁駆動機構は、手動操作部が操作終了位置に到達して使用者の手動操作が終了した後、操作開始位置に戻る途中の途中位置にあるとき、パイロット弁を閉弁させるので、パイロット弁を閉弁させてから再度開弁させることを防ぐことができる。したがって、パイロット弁が2度開弁され、主弁体が給水流路を2度開放することにより給水量がばらつくことを防止することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、パイロット弁駆動機構は、手動操作部が操作開始位置から操作終了位置まで手動操作される途中の途中位置にあるとき、押圧カムを保持して揺動させずに、押圧カムによりパイロット弁操作部を押圧して、パイロット弁を開弁させ、且つ、手動操作部が操作終了位置から操作開始位置に戻る途中の途中位置にあるとき、押圧カムを保持せずに揺動可能にさせ、押圧カムがパイロット弁操作部を押圧せずに揺動され、パイロット弁を開弁させないようにするクラッチ部材を備える。
このように構成された本発明においては、手動操作部が操作開始位置から操作終了位置まで手動操作される途中の途中位置にあるとき、クラッチ部材が押圧カムを保持して揺動させずに、押圧カムによりパイロット弁操作部を押圧させるので、パイロット弁が開弁され、さらに、手動操作部が操作終了位置から操作開始位置に戻る途中の途中位置にあるとき、クラッチ部材が押圧カムを保持せずに揺動可能にさせ、押圧カムがパイロット弁操作部を押圧せずに揺動されるので、パイロット弁が開弁されることを確実に防ぐことができる。
【0010】
また、本発明は、上記パイロット式弁装置を備えた水洗大便器装置である。本発明において、好ましくは、水洗大便器装置が、請求項1乃至4のいずれかに記載のパイロット式弁装置と、汚物を受けるボウル部と、洗浄水をボウル部に導くための導水路と、を内部に備えた水洗大便器本体と、水洗大便器本体に供給する洗浄水を貯水するタンクと、タンク内の下方に配置され、パイロット式弁装置からの給水を噴射する噴射ノズルと、一端が前記導水路に連結され、さらに、他端が噴射ノズルと対向して配置され且つ噴射ノズルから噴射された給水量に対応する洗浄水量をタンクから引き込む開口を形成している、スロート管と、を備えている。
このように構成された本発明においては、パイロット式弁装置を備えた水洗大便器装置において、噴射ノズルが噴射する給水量はほぼ一定に保たれ、スロート管は噴射ノズルから噴射された給水量に対応する増大された洗浄水量をタンクから引き込むので、噴射ノズルが噴射する給水量がばらついてこの給水量に対応するタンクから引き込まれる洗浄水量がばらつくことを抑制し、スロート管から水洗大便器本体の導水路に供給される洗浄水量をほぼ一定に保つことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパイロット式弁装置及びそれを備えた水洗大便器装置によれば、手動操作部が操作開始位置から操作終了位置まで手動操作される途中の途中位置にあるとき、パイロット弁を開弁させ、手動操作部が操作終了位置に到達したとき及び保持されたとき、パイロット弁の開弁状態を解除して閉弁させ、給水流路から供給される給水量をほぼ一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置を備えた洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器の断面図である。
図2】本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置を備えた洗浄水タンク装置内の構造を示す正面断面図である。
図3】本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置の主弁体部及び主弁体部に接続される流路の構造を概略的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置のケーシング及びパイロット弁部の一部を断面で示し、内部のパイロット弁駆動機構を斜視図で示す部分断面斜視図である。
図5図4に示すパイロット式弁装置について、ケーシング及びパイロット弁部の一部を断面で示した状態のまま、パイロット弁駆動機構、ケーシング及びパイロット弁部を分解した状態を示す分解斜視図である。
図6図4のVI−VI線に沿って見た断面図である。
図7図7(a)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが操作を開始する前の操作開始位置にある状態(初期待機状態)を示す断面図であり、図7(b)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが操作を開始する前の操作開始位置にある状態(初期待機状態)を、概略的に示して駆動状態を説明する図である。
図8図8(a)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける操作途中の位置にある状態を示す断面図であり、図8(b)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける操作途中の位置にある状態を、概略的に示して駆動状態を説明する図である。
図9図9(a)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける操作終了位置にある状態を示す断面図であり、図9(b)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける操作終了位置にある状態を、概略的に示して駆動状態を説明する図である。
図10図10(a)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける戻り移動を開始した直後の位置にある状態を示す断面図であり、図10(b)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける戻り移動を開始した直後の位置にある状態を、概略的に示して駆動状態を説明する図である。
図11図11(a)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける戻り移動の途中の位置にある状態を示す断面図であり、図11(b)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける戻り移動の途中の位置にある状態を、概略的に示して駆動状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、添付図面により、本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置及びそれを備えた水洗大便器装置を説明する。
まず、図1により、本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置を備えた水洗大便器を説明する。
図1は本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置を備えた洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器の断面図である。
【0014】
図1に示すように、符号1はジェットポンプを利用した水洗大便器を示し、この水洗大便器1は、便器本体2を備え、この便器本体2には、ボウル部4と、導水路6と、ボウル部4の下部と連通するトラップ管路8がそれぞれ形成されている。
便器本体2のボウル部4の上縁部には、内側にオーバーハングしたリム10と、導水路6から供給される洗浄水を吐水する多数の吐水口12形成され、この多数の吐水口12から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部を洗浄するようになっている。
【0015】
ボウル部4の下方には、一点鎖線で貯留面W0が示された溜水部14が形成されている。この溜水部14の下方には、トラップ管路8の入口8aが開口し、この入口8aから上昇路8bが後方に延びている。この上昇路8bには下降路8cが連続し、下降路8cの下端は床下の排出管(図示せず)に接続されている。
【0016】
便器本体2の導水路6の後方には、便器本体2に供給する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置16(詳細は後述する)が設けられている。
洗浄水タンク装置16は、水洗大便器1を洗浄する洗浄水が貯水される陶器製の貯水タンク18と、貯水タンク18に載せられる蓋体20を備えている。貯水タンク18は、便器の種類に応じて、貯水する洗浄水の量が異なっている。
【0017】
つぎに、図1及び図2により、洗浄水タンク装置16の詳細について説明する。
図2は本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置を備えた洗浄水タンク装置内の構造を示す正面断面図である。なお、図2においては、貯水タンク18の満水時の満水水位をWLで示し、貯水タンク18の洗浄水位の減少時の最低水位をDWLで示している。
【0018】
図1及び図2に示すように、洗浄水タンク装置16の貯水タンク18内には、この貯水タンク18内に洗浄水を供給する給水装置22と、貯水タンク18に貯えられた洗浄水を便器本体2の導水路6に流出させるジェットポンプ装置24とが設けられている。
【0019】
給水装置22は、外部の給水源に接続された給水管26と、給水管26に接続された止水弁28と、止水弁以降の給水管路29に配置された定流量弁30と、パイロット式弁装置32と、ジェットポンプ装置24に接続されるジェットポンプ配管34とを備えている。ジェットポンプ配管34にはバキュームブレーカ35が設けられている。
さらに、給水装置22は、止水弁28から分岐された補給管路36を備え、この補給管路36にはボールタップ部38が接続され、ボールタップ部38が、いわゆるボールタップ弁装置を形成し、貯水タンク18内の水位の変動に応じて上下動してボールタップ部38による吐水と止水を切り替える浮玉40を備えているので、浮玉40の浮き沈みにより貯水タンク18内に洗浄水の給水を行うようになっている。給水の様子については後述する。
【0020】
ジェットポンプ装置24は、図1に示すように、貯水タンク18内の底部18a近傍から斜め上方を指向して設置されている。ジェットポンプ装置24は、ジェットポンプ配管34に接続される噴射ノズル42と、噴射ノズル42に正対するように配置されるスロート44と、スロート44の指向向きに合わせ且つ導水路6とほぼ同じ高さになるまで上昇するように傾斜されて形成されている下流配管46とを備えている。
噴射ノズル42は、噴出口42aが上方へ向けて形成され、この噴出口42aから洗浄水を噴出して噴流を形成することができる。
スロート44は、貯水タンク18内の水を吸引する吸引口を形成し、噴出口42aの中心軸線とスロート44の管路の中心軸線とがほぼ一致するように配置されている。
噴射ノズル42の噴出口42aとスロート44の流入口44aとの間には隙間Sが形成され、隙間Sが流入口44aの全周にわたって貯水タンク18の内部空間と連通しているので、ジェットポンプ装置24周囲の洗浄水がこの隙間Sから流入口44aに吸引されるように流入可能になっている。
下流配管46は、その下流側において導水路6とほぼ水平に接続されている。
【0021】
さらに、洗浄水タンク装置16の貯水タンク18内の底部18aには、ジェットポンプ装置24を取り囲むようにポンプ区画容器48が形成されている。このポンプ区画容器48は、上端が開放され且つ有底に形成され、貯水タンク18の底部18aに固定されている。
ポンプ区画容器48は、詳細は後述する操作ハンドル50側の側面に形成された通水開口52と、通水開口52を開閉できるように開口下方で回転軸により回転支持された開閉蓋54と、開閉蓋54に固定された錘56とを備えている。
ポンプ区画容器48は、貯水タンク18内に洗浄水が満水水位WLまで貯水されているときには貯水タンク18に貯留された洗浄水に水没されており、ポンプ区画容器48の上端48aは、洗浄水の満水水位WLより低くされている。また、通水開口52は、洗浄終了時における洗浄水の最低水位DWLの高さが通水開口52の開口内の高さに位置するように形成されている。
【0022】
従って、開閉蓋54は、図2に示すように、通水開口52を開放する開放姿勢をとる間、貯水タンク18内の洗浄水が、ポンプ区画容器48の内部に通水可能となり、これにより、貯水タンク18内の洗浄水が満水水位WLと最低水位DWLとの間の高さに貯水している場合も、ポンプ区画容器48の外側の洗浄水がジェットポンプ装置24のスロート44に流入可能となる。従って、ジェットポンプ装置24は、貯水タンク18且つポンプ区画容器48内の満水水位WLから最低水位DWLまでの洗浄水を便器本体2に供給して洗浄を行う。
その一方、開閉蓋54が、通水開口52を閉鎖する開口閉鎖姿勢をとる間、貯水タンク18内の洗浄水が、通水開口52を経て通水できないようになっている。これにより、貯水タンク18内の洗浄水が満水水位WLと最低水位DWLとの間の高さに貯水している場合、ポンプ区画容器48の外側の洗浄水がジェットポンプ装置24のスロート44に流入できなくなる。従って、ジェットポンプ装置24は、貯水タンク18内の満水水位WLからポンプ区画容器48の上端48aまでの間の貯水タンク18内の洗浄水と、上端48aから最低水位DWLの間におけるポンプ区画容器48内の洗浄水とを便器本体2に供給して洗浄を行う。この開閉蓋54が開口閉鎖姿勢をとるときの便器本体2の洗浄水量は、この開閉蓋54が開放姿勢をとるときの便器本体2の洗浄水量よりも少量となる。
【0023】
開閉蓋54は、鎖58により、リンク機構部60の開閉操作桿62と連結されている。リンク機構部60は、操作ハンドル50が小洗浄の回転方向に操作されるときに限って開閉操作桿62を回転駆動軸92(図4)の軸回りに回転させるようにスイングさせて、開閉蓋54を持ち上げるように構成されている。
また、リンク機構部60は、操作ハンドル50の操作が解除されると、開閉操作桿62とともに初期位置に復帰するが、開閉蓋54はポンプ区画容器48の内外の差圧によって小洗浄開始から小洗浄終了までの時間に亘って閉状態を維持する。よって、操作ハンドル50が小洗浄のために操作されると、上記した通水開口52の閉鎖により、スロート44に流入可能な洗浄水量は、少量に制限される。なお、ジェットポンプ装置24からの吐水が終了し、ボールタップ部38から洗浄水が貯水されてポンプ区画容器48の水位が上昇すると、ポンプ区画容器48の内外の差圧がなくなり、開閉蓋54は、錘56の重みが作用することから、速やかに通水開口52の閉鎖位置から離れ、当通水開口52を解放するようになっている。
【0024】
次に、図3乃至図6により、給水装置22のパイロット式弁装置32について詳細に説明する。
図3は本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置の主弁体部及び主弁体部に接続される流路の構造を概略的に示す図であり、図4は本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置のケーシング及びパイロット弁部の一部を断面で示し、内部のパイロット弁駆動機構を斜視図で示す部分断面斜視図であり、図5図4に示すパイロット式弁装置について、ケーシング及びパイロット弁部の一部を断面で示した状態のまま、パイロット弁駆動機構、ケーシング及びパイロット弁部を分解した状態を示す分解斜視図であり、図6図4のVI−VI線に沿って見た断面図である。
【0025】
図3に示すように、パイロット式弁装置32は、給水管路29に接続された一次側通水路(給水流路)64と、内部の洗浄水の圧力が変動する圧力室66と、主弁体部68と、ジェットポンプ配管34に接続される二次側通水路(給水流路)70と、後述するパイロット弁部78と圧力室66とを連通する連通流路72と、を備えている。
【0026】
主弁体部68は、いわゆるダイヤフラム弁を形成し、二次側通水路(給水流路)70の入口端に設けられた弁座74と、この弁座74に着座して二次側通水路70を閉止する止水状態(閉弁状態)と弁座74から離間して二次側通水路70を開放する給水状態(開弁状態)とを切り替える主弁体76とを備え、さらに、主弁体76の一部には一次側通水路64と圧力室66とを連通するブリード穴76aが形成されている。
主弁体76は、圧力室66の内部圧力及び一次側通水路64の水圧力との圧力差により二次側通水路70の入口端の弁座74に向かって当接する方向又は弁座74から離間する方向に移動するように設置されている。主弁体76に形成されたブリード穴76aにより、主弁体76が閉弁した状態において、一次側通水路64と圧力室66とが連通して、圧力室66に一次側通水路64からの水圧が作用するようになっている。
従って、主弁体部68は、二次側通水路70を開放する給水状態(開弁状態)のとき、ジェットポンプ装置24を作動させて洗浄水を噴出させ、二次側通水路70を閉止する止水状態(閉弁状態)のとき、ジェットポンプ装置24の作動を停止させるようになっている。
【0027】
次に、図4乃至図6に示すように、パイロット式弁装置32は、さらに、パイロット弁部78と、使用者が操作開始位置から操作終了位置まで手動操作する操作ハンドル50と、パイロット弁部78を駆動させるためのパイロット弁駆動機構80と、このパイロット弁駆動機構80を収容する円筒形状に形成されたケーシング82とを備えている。
【0028】
図4に示すように、パイロット弁部78は、ケーシング82の内側側面82aに形成され且つ連通流路72と連通して圧力室66の圧力を開放するパイロット弁穴部84と、パイロット弁穴部84の入口端に設けられたパイロット弁座84aに着座してパイロット弁穴部84を閉止できるパイロット弁86とを備え、パイロット弁86は、前記パイロット弁86の先端が、パイロット弁穴部84を貫通してケーシング82の内側に突出するように設けられているパイロット弁操作部86aを有している。
パイロット弁部78は、さらに、パイロット弁86をパイロット弁座84aに着座させる方向に付勢するパイロット弁ばね88を備えている。従って、パイロット弁部78は、パイロット弁操作部86aがパイロット弁ばね88の付勢力と連通流路72の水圧に抗するように押圧力を受け、パイロット弁86がパイロット弁座84aから離間されるときに開状態となり、パイロット弁操作部86aが押圧力を受けておらずパイロット弁ばね88の付勢力と連通流路72の水圧により、パイロット弁86がパイロット弁座84aに押し付けられているときは閉状態となる。
パイロット弁操作部86aは、パイロット弁86が閉状態のとき、ケーシング82の内側側面82aから高さH1まで先端が突出するように配置されている。この高さH1は、ケーシング82の内側側面82aから大用カム102又は小用カム104(初期状態の大用カム102又は小用カム104の位置)までの高さH2よりもわずかに高い位置に設定されている。従って、大用カム102又は小用カム104がカムベース100とともに回転する回転時にパイロット弁操作部86aが大用カム102又は小用カム104を横方向に押し込む又は引き出すように当接することが可能となり、さらに、パイロット弁操作部86aが大用カム押圧操作部102d又は小用カム押圧操作部104dによって押圧されることができるようになっている。
【0029】
本実施形態においては、パイロット弁86がパイロット弁座84aから離間され開状態となる場合において、洗浄水は圧力室66から連通流路72を介してパイロット弁穴部84を通過し、ケーシング82の内部を通って後述するように水抜き孔部94aから貯水タンク18内に流れるようになっているが、変形例として、パイロット弁86がパイロット弁座84aから離間され開状態となる場合において、洗浄水は圧力室66から連通流路72を介してパイロット弁穴部84を通過し、例えば図3に示すような戻り流路90を通って二次側通水路(給水流路)70に流れるようにすることも可能である。
【0030】
操作ハンドル50は、貯水タンク18の側方外面に取付けられ、使用者が手動で回転操作するハンドルである(図2)。操作ハンドル50は、初期待機位置である操作開始位置から一方側に向かう回転方向(例えば操作ハンドル50が回転駆動軸92から鉛直方向下方に延びる初期待機位置を有する場合には、操作ハンドル50を便器本体2の後方に回転させる回転方向)に回転される場合に大便洗浄用の洗浄動作を行うように設定され、他方側に向かう回転方向(例えば操作ハンドル50が回転駆動軸92から鉛直方向下方に延びる初期待機位置を有する場合には、操作ハンドル50を便器本体2の前方に回転させる回転方向)に回転される場合に小便洗浄用の洗浄動作を行うように設定されている。いずれの方向に回転される場合にも、操作ハンドル50は、後述するように使用者の操作する操作開始位置から操作終了位置までの操作範囲が設定されており、使用者が操作開始位置から操作終了位置まで回転操作を行った後は、ばねの力等により自動的に操作終了位置から操作開始位置に戻るように構成されている。操作ハンドル50は、操作レバーその他の使用者が手指で操作できる他の形状であってもよい。
【0031】
次に、図4乃至図6に示すように、パイロット弁駆動機構について説明する。
パイロット弁駆動機構80は、操作ハンドル50の回転に連動して、ケーシング82の内側側面に沿う方向に回転する回転機構を形成し、操作ハンドル50の操作位置に応じて、パイロット弁86を押圧する押圧機構を形成している。
【0032】
パイロット弁駆動機構80は、操作ハンドル50から延びる回転駆動軸92と、回転駆動軸92をガイドするスピンドルガイド94と、操作ハンドル50及び回転駆動軸92を操作開始位置に戻るように比較的強い力で付勢しているリターンコイルばね96と、回転駆動軸92に接続され且つ回転駆動軸92と共に回転されるクラッチ部98と、回転駆動軸92の回転動作よりわずかに遅れて回転動作を開始するように回転駆動軸92と嵌合するカムベース100と、使用者が操作ハンドル50を大洗浄側に回転させた場合にパイロット弁操作部86aを押圧できる大用カム102と、使用者が操作ハンドル50を小洗浄側に回転させた場合にパイロット弁操作部86aを押圧できる小用カム104と、大用カム102及び小用カム104のそれぞれを初期位置に戻るように比較的弱い力で付勢しているカム用リターンばね106と、ねじ108によりカムベース100に固定され且つカムベース100との間に大用カム102、小用カム104及びカム用リターンばね106を配置しているカム押さえ部110と、カム押さえ部110とカムベース100との間に延びて大用カム102の中心軸を形成する大用カムシャフト112と、カム押さえ部110とカムベース100との間に延びて小用カム104の中心軸を形成する小用カムシャフト114とを備える。
【0033】
回転駆動軸92は、スピンドルガイド94との間に駆動軸用リターンコイルばね96を配置するように形成され、カムベース100内を通ってケーシング82まで延ばされている。この回転駆動軸92は、使用者が操作ハンドル50を大洗浄側に回転させた場合に駆動軸用リターンコイルばね96を巻き閉めるように係合する大用コイルばね係合部(図示せず)と、使用者が操作ハンドル50を小洗浄側に回転させた場合にリターンコイルばね96を巻き閉めるように係合する小用コイルばね係合部92aと、使用者が操作ハンドル50を回転させる範囲を規制できる回転規制部92bと、カムベース100の駆動軸受け孔100aに嵌合されるように回転駆動軸92の外方に突出して形成された扇形部92cと、を備えている。
スピンドルガイド94には、ケーシング82内に流入した洗浄水を貯水タンク18内に戻すための水抜き孔部94aが形成されている。
【0034】
使用者が操作ハンドル50を大洗浄側に回転させた場合には、大用コイルばね係合部(図示せず)が駆動軸用リターンコイルばね96を巻き閉めるので、使用者の回転操作が終了し、使用者が操作ハンドル50を離した後、駆動軸用リターンコイルばね96の力により、回転駆動軸92が初期位置まで操作された回転と逆の回転をして戻るようになっている。同様に、使用者が操作ハンドル50を小洗浄側に回転させた場合には、小用コイルばね係合部92aが駆動軸用リターンコイルばね96を巻き閉めるので、使用者の回転操作が終了し、使用者が操作ハンドル50を離した後、駆動軸用リターンコイルばね96の力により、回転駆動軸92が初期位置まで操作された回転と逆の回転をして戻るようになっている。
【0035】
カムベース100は、その中心部に回転駆動軸92が貫通する駆動軸受け孔100aを形成し、この駆動軸受け孔100aは、扇形部92cが嵌合できるように、円形孔に扇形部92cよりも若干大きい広がり角度に形成された扇形孔を加えたようないわゆる鍵穴形状に形成されている。従って、回転駆動軸92上の扇形部92cが回転されるとき、扇形部92cが駆動軸受け孔100aに係合するまでに若干の遊びが発生する。すなわち、回転駆動軸92が回転動作を開始した後、扇形部92cが駆動軸受け孔100aに係合するまでは、カムベース100は回転動作を開始せず、わずかに遅れてカムベース100が回転動作を開始するようになっている。
【0036】
大用カム102は、大用カムシャフト112を中心軸として受け入れる大用カムシャフト受入部102aと、クラッチ側端部102bからクラッチ部98の方向にカムベース100を超えて突出する大用カムクラッチ係合部102cと、パイロット弁操作部86aを押圧できる大用カム押圧操作部102dと、パイロット弁操作部86aとわずかに接触した状態で大用カムクラッチ係合部102cを後述する大用カム係合部98aにわずかに押し込むように作動させる大用カム押圧操作部102dの第1側面部102eと、パイロット弁操作部86aとわずかに接触した状態で大用カムクラッチ係合部102cを大用カム係合部98aからわずかに引き出すように作動させる大用カム押圧操作部102dの第2側面部102fと、を備えている。
【0037】
大用カム102は、大用カムシャフト112によりカムベース100に取付けられ、大用カムシャフト112を支点とした揺動動作が可能となっている。さらに、大用カム102には、カム用リターンばね106の一端が大用カムシャフト受入部102aと大用カム押圧操作部102dとの間に取付けられ、大用カム押圧操作部102dを比較的小さい力で半径方向外側向きに付勢している。大用カム押圧操作部102dは、カム用リターンばね106により半径方向外側向きに付勢されている初期位置において、内側側面82aから高さH2の高さに設定され、使用者が操作ハンドル50を回転している間は、大用カム押圧操作部102dがほぼ内側側面82aから高さH2の高さで内側側面82aに沿って回転されている。大用カム押圧操作部102dは、内側側面82aに沿うことができるような円弧状の面を形成している。
【0038】
小用カム104は、小用カムシャフト114を中心軸として受け入れる小用カムシャフト受入部104aと、クラッチ側端部104bからクラッチ部98の方向にカムベース100を超えて突出する小用カムクラッチ係合部104cと、パイロット弁操作部86aを押圧できる小用カム押圧操作部104dと、パイロット弁操作部86aとわずかに接触した状態で小用カムクラッチ係合部104cを小用カム係合部98bにわずかに押し込むように作動させる小用カム押圧操作部104dの第1側面部104eと、パイロット弁操作部86aとわずかに接触した状態で小用カムクラッチ係合部104cを小用カム係合部98bからわずかに引き出すように作動させる小用カム押圧操作部104dの第2側面部104fとを備えている。
【0039】
小用カム104は、小用カムシャフト114によりカムベース100に取付けられ、小用カムシャフト114を支点とした揺動動作が可能となっている。さらに、小用カム104には、カム用リターンばね106の他端が小用カムシャフト受入部104aと小用カム押圧操作部104dとの間に取付けられ、小用カム押圧操作部104dを比較的小さい力で半径方向外側向きに付勢している。小用カム押圧操作部104dは、カム用リターンばね106により半径方向外側向きに付勢されている初期位置において、大用カム押圧操作部102dと同様に、内側側面82aから高さH2の高さに設定され、使用者が操作ハンドル50を回転している間は、小用カム押圧操作部104dがほぼ内側側面82aから高さH2の高さで内側側面82aに沿って回転されている。
【0040】
クラッチ部98は、大用カム102又は小用カム104を保持するように回転される。クラッチ部98は、T字形状に形成され、T字形状の大用カム側に開くような凹形状を形成する大用カム係合部98aと、T字形状の小用カム側に開くような凹形状を形成する小用カム係合部98bと、を形成している。
大用カム係合部98aは、大用カム102方向に回転するとき、大用カムクラッチ係合部102cと係合して、大用カム102が揺動しないように揺動方向D1に関してほぼ固定されるロック状態を生じさせ、ロック状態で回転駆動軸92の駆動力が大用カム102に伝達できるようなクラッチを構成している。一方で、大用カム係合部98aは、大用カム方向と逆に回転するとき、凹形状の開放側から大用カムクラッチ係合部102cとの係合が容易に外れるように形成されているので、大用カムクラッチ係合部102cとの係合が外れて、大用カム102が揺動方向D1に関して揺動可能にされる揺動可能状態を生じさせることができる。
小用カム係合部98bは、小用カムクラッチ係合部104cと係合して、小用カム104が揺動しないように揺動方向D2に関してほぼ固定されるロック状態を生じさせ、ロック状態で回転駆動軸92の駆動力が小用カム104に伝達できるようなクラッチを構成している。一方で、小用カム係合部98bは、小用カム方向と逆に回転するとき、凹形状の開放側から小用カムクラッチ係合部104cとの係合が容易に外れるように形成されているので、小用カムクラッチ係合部104cとの係合が外れて、小用カム104が揺動方向D2に関して揺動可能にされる揺動可能状態を生じさせることができる。
【0041】
つぎに、図1図11を参照して、本発明の実施形態によるパイロット式弁装置及びそれを備えた水洗大便器装置の大洗浄動作(作用)を説明する。
ここで、図7(a)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが操作を開始する前の操作開始位置にある状態(初期待機状態)を示す断面図であり、図7(b)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが操作を開始する前の操作開始位置にある状態(初期待機状態)を、概略的に示して駆動状態を説明する図であり、図8(a)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける操作途中の位置にある状態を示す断面図であり、図8(b)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける操作途中の位置にある状態を、概略的に示して駆動状態を説明する図であり、図9(a)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける操作終了位置にある状態を示す断面図であり、図9(b)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける操作終了位置にある状態を、概略的に示して駆動状態を説明する図であり、図10(a)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける戻り移動を開始した直後の位置にある状態を示す断面図であり、図10(b)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける戻り移動を開始した直後の位置にある状態を、概略的に示して駆動状態を説明する図であり、図11(a)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける戻り移動の途中の位置にある状態を示す断面図であり、図11(b)は、図4のVII−VII線に沿って見た断面において、操作ハンドルが大洗浄モードにおける戻り移動の途中の位置にある状態を、概略的に示して駆動状態を説明する図である。
図7図8図9図10図11の順に操作ハンドル50が操作開始位置から操作終了位置まで移動し、再び操作開始位置に戻ってくる一連の動作を順に示している。図7(b)、図8(b)、図9(b)、図10(b)及び図11(b)においては、図7(a)、図8(a)、図9(a)、図10(a)及び図11(a)のそれぞれにおける回転駆動軸92、クラッチ部98、カムベース100、大用カム102及びパイロット弁操作部86a等の動作を分かりやすく説明するために、複数の部材及び構成を省略し、これらの部材の位置、動作等を分かりやすく示している。
【0042】
まず、貯水タンク18内には、満水水位WLまで洗浄水が満たされている。給水装置22においては、給水装置22が貯水タンク18内への洗浄水の給水を行う前の状態は、主弁体76が弁座74に着座して二次側通水路70を閉止している閉弁状態にあり、図7(a)に示すように、パイロット弁86はパイロット弁座84aに着座してパイロット弁穴部84を閉止している閉状態にあり、一次側通水路64及び圧力室66内が外部水道等からの給水で満たされ、所定の一次水圧で止水された状態になっている。
図7(a)及び(b)に示すように、操作ハンドル50は、待機位置でもある操作開始位置にあり、パイロット弁駆動機構80において、回転駆動軸92と共に回転されるクラッチ部98は、初期位置に配置され、カムベース100上に配置される大用カム102及び小用カム104もそれぞれ初期位置に配置されている。
【0043】
使用者が、便器使用後に、例えば、操作ハンドル50を大洗浄用の回転方向に回転操作して、便器本体2において大洗浄を行わせる場合を説明する。
使用者が、便器使用後に、例えば、操作ハンドル50を大洗浄用の回転方向に回転操作を開始すると、操作ハンドル50の操作開始位置からの回転操作に連動して回転駆動軸92が回転動作を開始する。このときクラッチ部98は、回転駆動軸92と共に回転移動を開始する。回転駆動軸92の扇形部92cも共に回転移動を開始する。回転駆動軸92の駆動力の一部は、扇形部92cとカムベース100の駆動軸受け孔100aとが大用カム102側で当接することにより伝達される。
カムベース100の駆動軸受け孔100aは扇形部92cよりも若干大きな扇型形状且若干大きな広がり角度に形成されているので、扇形部92cと駆動軸受け孔100aとの間にはわずかに遊びがあるように設計されている。従って、クラッチ部98に対し大用カム102等が後述するように相対的に押し込まれる或いは相対的に引き出される動作が可能とされている。扇形部92cが駆動軸受け孔100aの大用カム側に当接して回転駆動軸92の駆動力がカムベース100に伝達され始めるとカムベース100は回転駆動軸92の回転力を十分に受けて連動した回転を開始する。
【0044】
カムベース100とともに大用カム102が回転を開始され、第1側面部102eがパイロット弁操作部86aとパイロット弁操作部86aの横方向から接触するようにわずかに当接し、わずかに引っかかるような状態になると、大用カム102及びカムベース100がクラッチ部98の回転に対して静止された状態となり、大用カムクラッチ係合部102cが大用カム係合部98aに相対的に押し込まれ且つ確実に嵌合される。
大用カムクラッチ係合部102cが大用カム係合部98aと嵌合すると、大用カム102は揺動方向D1に関して揺動しないようにほぼ固定されるロック状態となる。そして、クラッチ部98と大用カム102はこのロック状態を維持しながらほぼ一体の回転を開始し、大用カム102は第1側面部102eから続く大用カム押圧操作部102dがパイロット弁操作部86aを押し込むようにパイロット弁操作部86aと当接する状態となる。
【0045】
図8(a)及び(b)に示すように、パイロット弁操作部86aが押し込まれるとき、パイロット弁86はパイロット弁座84aから離間され開状態となる。パイロット弁86が開状態となると、圧力室66内の洗浄水が、連通流路72からパイロット弁穴部84を通ってケーシング82内に流れ、圧力室66の圧力が開放される。ケーシング82内に流入した洗浄水はケーシング82内を通過して水抜き孔部94aから貯水タンク18内に流れる。圧力室66の内部圧力は低下され、主弁体76が弁座74から離間する方向に移動し、二次側通水路70を開放する給水状態(開弁状態)となる。
すると、洗浄水が、給水管路29に接続された一次側通水路64から二次側通水路70に流入され、バキュームブレーカ35及びジェットポンプ配管34を通過し、ジェットポンプ装置24の噴射ノズル42から噴射される。この噴出された洗浄水流は、その流速が増速された高速噴流となっているので、図1及び2に矢印Fで示すように、噴射ノズル42の周囲の洗浄水の引き込みが隙間Sから生じる。噴射ノズル42からスロート44に流入する流れは、噴射ノズル42から噴出された高速噴流F1と、この高速噴流に引き込まれるように周囲から流れ込む洗浄水流F2とにより形成される。
スロート44に吸引されるように流入した洗浄水は、下流配管46を通って便器本体2の導水路6へ流入する。便器本体2の導水路6へ流入した洗浄水はボウル部4上の汚物を洗浄した後に汚物とともにトラップ管路8から排出される。
また、貯水タンク18内の洗浄水が、ジェットポンプ装置24から便器本体2に供給されることに伴い、貯水タンク18内の洗浄水水位が下降し、浮玉40が所定位置まで下降するとボールタップ部38が洗浄水の給水を開始させる。
【0046】
使用者が、操作ハンドル50を大洗浄用の回転方向に回転操作した場合には、開閉操作桿62は回転操作されないので、通水開口52は、開閉蓋54が開いて開放された状態となっている。従って、貯水タンク18内の洗浄水が満水水位WLと最低水位DWLとの間の高さまで下降してくる場合、ポンプ区画容器48の外側の洗浄水がジェットポンプ装置24のスロート44に引込まれて、便器本体2に流れることが出来る。従って、大洗浄動作においては、小洗浄動作よりも多くの洗浄水を便器本体2に流して洗浄を行うことが出来る。
【0047】
図9(a)及び(b)に示すように、使用者が、操作ハンドル50をさらに操作終了位置まで回転させると、大用カムクラッチ係合部102cが大用カム係合部98aと嵌合したまま回転され、大用カム押圧操作部102dがパイロット弁操作部86aを押し込む途中位置からさらに回転移動された位置になる、パイロット弁86は、大用カム押圧操作部102dがパイロット弁操作部86aから外れてパイロット弁86の開弁状態が解除され、パイロット弁ばね88と連通流路72の水圧の力によりパイロット弁座84aに押し付けられている閉弁状態に戻る。従って、パイロット弁86が閉状態となり、洗浄水は圧力室66から連通流路72に流れることができなくなり、再び、圧力室66の圧力が所定の一次水圧まで上昇し、主弁体76が弁座74に着座して二次側通水路70を閉止する閉弁状態となる。すると、洗浄水がジェットポンプ装置24の噴射ノズル42に供給されなくなり、ジェットポンプ装置24から便器本体2の導水路6への洗浄水の流入が終了する。
貯水タンク18内にはボールタップ部38から洗浄水が給水されており、洗浄水の最低水位DWLから洗浄水が貯水されて上昇する。
使用者が操作ハンドル50を操作終了位置に到達したまま保持してしまう場合であっても、このようにパイロット弁86が閉状態にされている。さらに、使用者が操作ハンドル50を操作開始位置から操作終了位置まで手動操作する途中の移動速度及び移動時間はほぼ一定であるので、パイロット弁86の開弁時間はほぼ一定にされている。
【0048】
使用者が、操作ハンドル50をさらに操作終了位置まで回転させて操作を終了する。すると、使用者が手指等を離した状態で、操作ハンドル50は、駆動軸用リターンコイルばね96の力により、戻り移動を開始する。具体的には、使用者が操作ハンドル50を回転させたときに駆動軸用リターンコイルばね96を巻き閉めているので、駆動軸用リターンコイルばね96の戻ろうとする力により回転駆動軸92が逆回転され、操作ハンドル50が戻り回転を行う。
図10(a)及び(b)に示すように、回転駆動軸92が戻り回転移動を開始してすぐ、第2側面部102fがパイロット弁操作部86aとパイロット弁操作部86aの横方向から接触するようにわずかに当接し、わずかに引っかかるような状態になると、大用カム102及びカムベース100がクラッチ部98の戻り回転に対して静止された状態となり、大用カムクラッチ係合部102cが大用カム係合部98aから相対的にわずかに引き出され且つ嵌合が解消される。
従って、大用カム102は、大用カムクラッチ係合部102cとの係合が外れて、大用カム102が揺動方向D1に関して揺動可能にされる揺動可能状態となる。この揺動可能状態では、大用カム102が大用カムシャフト112を中心軸として揺動できるようになっている。
続いて、図11(a)及び(b)に示すように、大用カム102及びカムベース100が戻り回転をするとき、大用カム102は、揺動可能状態であるので、大用カム押圧操作部102dがパイロット弁操作部86aを避けるように揺動方向D1に揺動しながら戻り回転することができる。すなわち、大用カム押圧操作部102dがパイロット弁操作部86aと接してはいるものの、パイロット弁操作部86aを押圧して押し込むよりも、むしろ大用カム押圧操作部102dがパイロット弁操作部86aにより半径方向内側に押されるように揺動しながら戻り回転するようになっている。
従って、パイロット弁86は、パイロット弁座84aに着座してパイロット弁穴部84を閉止している閉状態を維持しており、一次側通水路64及び圧力室66内は外部水道等からの給水で満たされており、主弁体76が弁座74に着座して二次側通水路70を閉止する閉弁状態を維持している。
【0049】
引き続いて、操作ハンドル50は、駆動軸用リターンコイルばね96の力により、操作開始位置(初期待機位置)まで戻り移動される。これにともない、回転駆動軸92が操作開始位置(初期待機位置)まで戻るとき、クラッチ部98がほぼ水平に延びる初期位置に戻り、大用カム押圧操作部102dがパイロット弁操作部86aと当接する途中位置から初期位置に移動して戻る。パイロット弁操作部86aは、大用カム102と小用カム104のほぼ中間の初期位置に位置するようになっている。
貯水タンク18内への洗浄水の給水は、洗浄水の水位が満水水位WLに到達すると、ボールタップ部38が洗浄水の給水を停止させて、一連の洗浄動作を終了する。
【0050】
つぎに、図1図12を参照して、本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置及びそれを備えた水洗大便器装置の小洗浄動作(作用)について説明する。
ここで、本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置において、小用カム104は大用カム102と回転駆動軸92に対して対象に配置された同形状の部材であり、使用者が操作ハンドル50を小洗浄用の回転方向に回転操作させる以外は、大用カム102と同様の動作をする部材である。そこで図面を省略し、上述した本発明の一実施形態によるパイロット式弁装置及びそれを備えた水洗大便器装置の大洗浄動作(作用)の部分と同一の部分については説明を省略し、異なる動作(作用)の部分を中心に説明する。
【0051】
図7(a)及び(b)に示すように、操作ハンドル50は、初期待機位置でもある操作開始位置にあり、パイロット弁駆動機構80において、回転駆動軸92と共に回転されるクラッチ部98は、初期位置に配置され、カムベース100上に配置される大用カム102及び小用カム104もそれぞれ初期位置に配置されている。
【0052】
使用者が、便器使用後に、例えば、操作ハンドル50を小洗浄用の回転方向(大洗浄用の回転方向と逆の回転方向)に回転操作して、便器本体2において小洗浄を行わせる場合を説明する。
【0053】
使用者が、便器使用後に、例えば、操作ハンドル50を小洗浄用の回転方向に回転操作を開始すると、操作ハンドル50の操作開始位置からの回転操作に連動して回転駆動軸92が回転動作を開始する。このときクラッチ部98は、回転駆動軸92と共に回転移動を開始する。回転駆動軸92の扇形部92cも共に回転移動を開始する。回転駆動軸92の駆動力の一部は、扇形部92cとカムベース100の駆動軸受け孔100aとが当接することにより伝達される。
カムベース100の駆動軸受け孔100aは扇形部92cよりも若干大きな扇型形状且若干大きな広がり角度に形成されているので、扇形部92cと駆動軸受け孔100aとの間にはわずかに遊びがあるように設計されている。従って、クラッチ部98に対し小用カム104等が後述するように相対的に回転して押し込まれる或いは相対的に引き出される動作が可能とされている。扇形部92cが駆動軸受け孔100aの小用カム側に当接して回転駆動軸92の駆動力がカムベース100に伝達され始めるとカムベース100は回転駆動軸92の回転力を十分に受けて連動した回転を開始する。
【0054】
カムベース100とともに小用カム104が回転を開始され、第1側面部104eがパイロット弁操作部86aとパイロット弁操作部86aの横方向から接触するようにわずかに当接し、わずかに引っかかるような状態になると、小用カム104及びカムベース100がクラッチ部98の回転に対して静止された状態となり、小用カムクラッチ係合部104cが小用カム係合部98bに相対的に押し込まれ且つ確実に嵌合される。
小用カムクラッチ係合部104cが小用カム係合部98bと嵌合すると、小用カム104は揺動方向D2に関して揺動しないように固定されるロック状態となる。そして、クラッチ部98と小用カム104はこのロック状態を維持しながらほぼ一体の回転を開始し、小用カム104は第1側面部104eから続く小用カム押圧操作部104dがパイロット弁操作部86aを押し込むようにパイロット弁操作部86aと当接する状態となる。
【0055】
パイロット弁操作部86aが押し込まれるとき、パイロット弁86はパイロット弁座84aから離間され開状態となり、主弁体76が弁座74から離間する方向に移動し、二次側通水路70を開放する給水状態(開弁状態)となる。
すると、洗浄水が、ジェットポンプ装置24の噴射ノズル42から噴射され、下流配管46を通って便器本体2の導水路6へ流入する。便器本体2の導水路6へ流入した洗浄水はボウル部4上の汚物を洗浄した後に汚物とともにトラップ管路8から排出される。
【0056】
使用者が、操作ハンドル50を小洗浄用の回転方向に回転操作した場合には、リンク機構部60が鎖58を引き上げることにより開閉蓋54を持ち上げ、開閉蓋54で通水開口52を閉鎖する。よって、貯水タンク18内の洗浄水が満水水位WLと最低水位DWLとの間の高さまで下降してくる場合、ポンプ区画容器48の外側の洗浄水がポンプ区画容器48内に流入することができず、ジェットポンプ装置24のスロート44に流入しない。
従って、ジェットポンプ装置24は、貯水タンク18内の満水水位WLからポンプ区画容器48の上端48aまでの間の貯水タンク18内の洗浄水と、上端48aから最低水位DWLの間におけるポンプ区画容器48内の洗浄水とを便器本体2に供給して洗浄を行う。
【0057】
使用者が、操作ハンドル50をさらに操作終了位置まで回転させると、小用カムクラッチ係合部104cが小用カム係合部98bと嵌合したまま回転され、小用カム押圧操作部104dがパイロット弁操作部86aを押し込む途中位置からさらに回転移動された位置になる。パイロット弁86は、小用カム押圧操作部104dがパイロット弁操作部86aから外れてパイロット弁86の開弁状態が解除され、パイロット弁ばね88と連通流路の水圧の力によりパイロット弁座84aに押し付けられている閉弁状態に戻る。従って、パイロット弁86が閉状態となり、主弁体76が弁座74に着座して二次側通水路70を閉止する閉弁状態となる。すると、洗浄水がジェットポンプ装置24の噴射ノズル42に供給されなくなり、ジェットポンプ装置24から便器本体2の導水路6への洗浄水の流入が終了する。
貯水タンク18内にはボールタップ部38から洗浄水が給水されており、洗浄水の最低水位DWLから洗浄水が貯水されて上昇する。
【0058】
使用者が、操作ハンドル50をさらに操作終了位置まで回転させて操作を終了する。すると、使用者が手指等を離した状態で、操作ハンドル50は、駆動軸用リターンコイルばね96の力により、戻り移動を開始する。
回転駆動軸92が戻り回転移動を開始してすぐ、第2側面部104fがパイロット弁操作部86aとパイロット弁操作部86aの横方向から接触するようにわずかに当接し、わずかに引っかかるような状態になると、小用カム104及びカムベース100がクラッチ部98の戻り回転に対して静止された状態となり、小用カムクラッチ係合部104cが小用カム係合部98bから相対的にわずかに引き出され且つ嵌合が解消される。
従って、小用カム104は、小用カムクラッチ係合部104cとの係合が外れて、小用カム104が揺動方向D2に関して揺動可能にされる揺動可能状態となる。この揺動可能状態では、小用カム104が小用カムシャフト114を中心軸として揺動できるようになっている。
続いて、小用カム104及びカムベース100が戻り回転をするとき、小用カム104は、揺動可能状態であるので、小用カム押圧操作部104dがパイロット弁操作部86aを避けるように揺動方向D2に揺動しながら戻り回転することができる。すなわち、小用カム押圧操作部104dがパイロット弁操作部86aと接してはいるものの、パイロット弁操作部86aを押圧して押し込むよりも、むしろ小用カム押圧操作部104dがパイロット弁操作部86aにより半径方向内側に押されるように揺動しながら戻り回転するようになっている。
従って、パイロット弁86は、パイロット弁座84aに着座してパイロット弁穴部84を閉止している閉状態を維持しており、一次側通水路64及び圧力室66内は外部水道等からの給水で満たされており、主弁体76が弁座74に着座して二次側通水路70を閉止する閉弁状態を維持している。
【0059】
引き続いて、操作ハンドル50は、駆動軸用リターンコイルばね96の力により、操作開始位置(初期待機位置)まで戻り移動される。これにともない、回転駆動軸92が操作開始位置(初期待機位置)まで戻るとき、クラッチ部98がほぼ水平に延びる初期位置に移動して戻り、小用カム押圧操作部104dがパイロット弁操作部86aと当接する途中位置から初期位置に移動して戻る。パイロット弁操作部86aは、大用カム102と小用カム104のほぼ中間の初期位置に位置するようになっている。
貯水タンク18内への洗浄水の給水は、洗浄水の水位が満水水位WLに到達すると、ボールタップ部38が洗浄水の給水を停止させて、一連の洗浄動作を終了する。
【0060】
上述した本発明の実施形態によるパイロット式弁装置32によれば、パイロット弁駆動機構80は、操作ハンドル50が操作開始位置から操作終了位置まで手動操作される途中の途中位置にあるとき、パイロット弁86を開弁させ、操作ハンドル50が操作終了位置に到達したとき及び作終了位置で保持されたとき、パイロット弁86の開弁状態を解除して閉弁させるので、パイロット弁86の開弁時間には影響を与えず、パイロット弁86の開弁時間をほぼ一定とすることができる。よって、パイロット弁86が開弁され、圧力室66内部の圧力が低下して、主弁体部76が二次側通水路70を開放する給水時間がほぼ一定に保たれる。従って、二次側通水路70から供給される給水量をほぼ一定に保つことができる。
【0061】
また、本発明の実施形態によるパイロット式弁装置32によれば、パイロット弁駆動機構80は、操作ハンドル50が操作終了位置に到達して使用者の手動操作が終了した後、操作開始位置に戻る途中の途中位置にあるとき、パイロット弁86を閉弁させるので、パイロット弁86を再度開弁させることを防ぐことができる。したがって、パイロット弁86が2度開弁され、主弁体76が二次側通水路70を2度開放することにより給水量がばらつくことを防止することができる。
【0062】
また、本発明の実施形態によるパイロット式弁装置32によれば、パイロット弁駆動機構80が、円筒状に形成されたケーシング82内に収容された状態で、操作ハンドル50の回転に連動して、ケーシング82の内側側面82aに沿って回転でき、パイロット弁操作部86aを押圧するときに、パイロット弁86を開弁させる。従って、円筒状のケーシング82が、パイロット弁駆動機構80が回転するガイドの役割を果たすことができ、パイロット弁86を適切に開弁させることができる。
さらに、パイロット弁駆動機構80を内側で回転させるケーシング82は円筒状に形成されているので、パイロット式弁装置32全体をコンパクトに構成することができる。
【0063】
また、本発明の実施形態によるパイロット式弁装32置によれば、操作ハンドル50が操作開始位置から操作終了位置まで手動操作される途中の途中位置にあるとき、クラッチ部98が大用カムクラッチ係合部102c又は小用カムクラッチ係合部104cを保持して揺動させずに、大用カム押圧操作部102d又は小用カム押圧操作部104dによりパイロット弁操作部86aを押圧させるので、パイロット弁86が開弁され、さらに、操作ハンドル50が操作終了位置から操作開始位置に戻る途中の途中位置にあるとき、クラッチ部98が大用カムクラッチ係合部102c又は小用カムクラッチ係合部104cを保持せずに揺動可能にさせ、大用カム押圧操作部102d又は小用カム押圧操作部104dがパイロット弁操作部86aを押圧せずに揺動されるので、パイロット弁86が開弁されることを確実に防ぐことができる。
【0064】
また、本発明の実施形態によるパイロット式弁装置32を備えた水洗大便器1によれば、パイロット式弁装置32により、噴射ノズル42が噴射する給水量をほぼ一定に保つことができ、スロート44は噴射ノズル42から噴射された給水量に対応して増大された洗浄水量を貯水タンク18から引き込むので、噴射ノズル42が噴射する給水量がばらついてこの給水量に対応して貯水タンク18から引き込まれる増大された洗浄水量がばらつくことを抑制し、スロート44から便器本体2の導水路6に供給される洗浄水量をほぼ一定に保つことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 ボウル部
6 導水路
16 洗浄水タンク装置
18 貯水タンク
22 給水装置
24 ジェットポンプ装置
32 パイロット式弁装置
34 ジェットポンプ配管
42 噴射ノズル
44 スロート
50 操作ハンドル
66 圧力室
68 主弁体部
74 弁座
76 主弁体
78 パイロット弁部
80 パイロット弁駆動機構
82 ケーシング
82a 内側側面
84 パイロット弁穴部
84a パイロット弁座
86 パイロット弁
86a パイロット弁操作部
92 回転駆動軸
98 クラッチ部
102 大用カム
102d 大用カム押圧操作部
104 小用カム
104d 小用カム押圧操作部
D1 揺動方向
D2 揺動方向
DWL 最低水位
F 矢印
F1 高速噴流
F2 洗浄水流
S 隙間
0 貯留面
WL 満水水位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11