特許第6149336号(P6149336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149336
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】オイルクーラの配管構造
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20170612BHJP
【FI】
   F16H57/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-260679(P2012-260679)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-105819(P2014-105819A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】前田 英明
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−340153(JP,A)
【文献】 特開2012−141026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/00−57/12
b60k 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の変速機のオイルクーラの配管構造であって、
変速機内の油圧を出入させ、変速機ユニット側からオイルクーラ側に向かって順に金属製チューブとゴム被覆チューブとを連結させて構成するオイルホースと、
該オイルホースのうち金属製チューブの2箇所で変速機ケースに固定するブラケットと、を備え、
前記ブラケットのうち、
変速機ユニットの油圧出入口に近い方のブラケットは、前記オイルクーラ側に近い方のブラケットよりも板厚が薄く、
前記オイルクーラ側に近い方のブラケットは、前記変速機の上面を軸方向に亘るハーネスを前記変速機ケースに固定する機能を兼用する、ことを特徴とする変速機のオイルクーラの配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な配管作業でオイルクーラーホースを堅く固定しつつホースの破損を防止し得るオイルクーラの配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエンジンには、無段変速機や自動変速機を連結して設け、これらの変速機のオイルを冷却するオイルクーラを設けたものがある。変速機とオイルクーラとは、オイルクーラ配管により連絡されており、オイルクーラチューブによりオイルを変速機とオイルクーラとの間で循環させている。
【0003】
例えば、特許文献1には、オイルクーラの配管における取付構造が開示されている。オイルクーラチューブを変速機ユニットに配管する場合、ユニット油圧出口と取り付けブラケットとの距離が短いときには、配管や溶接のばらつきを吸収することができず十分な固定できず、逆に固定剛性を確保しようとすると余分な力が配管にかかって、亀裂が入る等の問題があった。ユニット油圧出口が取り付けブラケットとの距離が長いときであっても上記問題は少なからず残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−340153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み創作されたものであり、自動変速機や無段変速機のオイルクーラの配管において、簡単な配管作業で配管や溶接のばらつきを吸収し、固定時の配管の損傷を回避しつつ、十分な固定と振動防止とを確保し得るオイルクーラーの配管構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両の変速機のオイルクーラの配管構造は、変速機内の油圧を出入させ、変速機ユニット側からオイルクーラ側に向かって順に金属製チューブとゴム被覆チューブとを連結させて構成するオイルホースと、該オイルホースのうち金属製チューブの2箇所で変速機ケースに固定するブラケットと、を備えている。また、前記ブラケットのうち、変速機ユニットの油圧出入口(例えば、本実施形態における油圧吐出口3,油圧導入口4)に近い方のブラケットは、前記オイルクーラ側に近い方のブラケットよりも板厚が薄く、前記オイルクーラ側に近い方のブラケットは、前記変速機の上面を軸方向に亘るハーネスを前記変速機ケースに固定する機能を兼用する
【0007】
本発明のオイルクーラの配管構造では、オイルホースのうちある程度の長さを有する金属製チューブの両側をブラケットでケースに固定に固定するが、まず最初にゴム被覆チューブ側(すなわちオイルクーラ側)のブラケットを先に固定する。このブラケットは、板厚が厚いため剛性が確保されており、しっかりとオイルホースとハーネスとを固定することができる。
【0008】
次に、変速機ユニットの油圧出入口側のブラケットで、金属製チューブをケースに固定する。このとき、既に前述のブラケットによりオイルホースの固定はなされているため油圧出入口側のブラケットでの固定は位置ズレ防止や振動防止ができるものであれば足りる。また、配管や溶接のばらつきを考慮すれば既にオイルクーラ側ブラケットを堅く固定しているので、この油圧出入口側のブラケットは、オイルクーラ側のブラケットより剛性を低くし、配管にかかった余分な力を吸収し得る方が望ましい。そこで、変速機側のブラケットをオイルクーラ側よりも板薄とする構成を有している。
【発明の効果】
【0009】
上述するように本発明のオイルクーラの配管構造は、自動変速機や無段変速機のオイルクーラの配管において、簡単な配管作業で配管や溶接のばらつきを吸収し、固定時の配管の損傷を回避しつつ、十分な固定と振動防止とを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のオイルクーラの配管取付構造の一例が示されており、無段変速機にオイルクーラホースがCVTユニットのケースに取付られた様子が示す斜視図である。
図2図1に示す斜視図のY方向(天面方向)から見た略平面図である。
図3図1および図2におけるインレットチューブであり、(a)はY方向から見た略天面図、(b)はZ方向から見た略左側面図、(c)はX方向から見た略背面図である。
図4図1および図2におけるアウトレットチューブであり、(a)はY方向から見た略天面図、(b)はZ方向から見た略左側面図、(c)はX方向から見た略背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には、本発明のオイルクーラの配管取付構造の一例が示されており、無段変速機(以下、「CVT」と称する)にオイルクーラホースがCVTユニットのケースに取付られた様子の斜視図である。また、図2図1に示す斜視図のY方向(天面方向)から見た略平面図である。また図3は、図1および図2におけるインレットチューブであり、(a)はY方向から見た略天面図、(b)はZ方向から見た略左側面図、(c)はX方向から見た略背面図である。さらに図4は、図1および図2におけるアウトレットチューブであり、(a)はY方向から見た略天面図、(b)はZ方向から見た略左側面図、(c)はX方向から見た略背面図である。
【0012】
オイルチューブ10〜13は、CVT内のオイルをCVTとオイルクーラ2との間で循環させるための配管である。図1図2に示すオイルチューブ10〜13はCVTユニット2の上面全体にX方向に亘って取り付けられている。まず、オイルチューブ10〜13が取り付けられた際のオイルの流れを概説する。CVT1内のオイルは油圧吐出口3から吐出され、一端で油圧吐出口3と連結されたインレットチューブ10を流れる。そして、インレットチューブ10内を流れたオイルはインレットチューブ10の他端に到達する。
【0013】
インレットチューブ10は、亜鉛めっきスチール等の金属製の中空棒である。
図4に示すようにインレットチューブ10の一端には、環状アタッチメント10aが設けられ、この環状アタッチメント10aをCVTユニット1の油圧吐出口3に連結することでCVT1内のオイルをチューブ10内に導入する。そして、矢印Aに示すようにオイルがインレットチューブ10内を流れ、他端10bまで到達する。この他端10bが図1に示すゴム被覆チューブ11の端部に連結することで、オイルが被覆チューブ11内に導入される(図1の矢印A参照)。
【0014】
そして、オイルはゴム被覆チューブ11からオイルクーラ(CVT用オイルウォーマ)2に導入され、他のゴム被覆チューブ13内に吐出される。なお、ゴム被覆チューブ11、13は、金属製中空配管の周囲をゴムで被覆する構成を有している。
【0015】
ゴム被覆チューブ13内を流れたオイル(図1矢印B参照)は、金属製のアウトレットチューブ12に導入される。アウトレットチューブはその端部12aで、図4に示すようにゴム被覆チューブ12の端部に連結する。そして、図4矢印Bに示すようにゴム被覆チューブ13内をオイルが流れ、他端に設けられた環状アタッチメント12bをCVTユニット1の油圧導入口4に連結する。これにより油圧吐出口3から吐出口されたオイルが再びCVT2内に戻される。
【0016】
次に、オイルチューブ、とりわけインレットチューブ10とアウトレットチューブ12と、をCVTユニット1のケースに取り付ける工程および構造を説明する。
【0017】
まず、インレットチューブ10の端部10bをゴム被覆チューブ11に挿入して連結する。また、アウトレットチューブ12の端部12aもゴム被覆チューブ13に挿入して連結し、最初のある程度の長さで両チューブ10,12は並列する。インレットチューブ10、アウトレットチューブ12はゴム被覆チューブ側近傍でブラケット14に束ねられて溶接されている。これにより、ブラケット14によりインレットチューブ10とアウトレットチューブ12とを保護することができ、めっき剥げや傷つきを防止することができる。
【0018】
ブラケット14には、図3に示すようにボルト受容穴19が設けられており、ボルト18をボルト受容穴19とCVTボス20とに挿入し締結することでブラケット14をCVTボス20に固定する。ブラケット14は、ある程度の板厚を有しているため剛性が確保され、CVTユニット1にしっかりと固定される。
【0019】
なお、図1図4のブラケット14では板厚t=2.3mmが例示される。また、図3図4ではインレットチューブ10とアウトレットチューブ12とは別個の部材として表現されているが、上述するように実際にはブラケット14で一体に溶着している。さらに、ブラケット14は、インレットチューブ11とアウトレットチューブ13とを上方から挟み込み下開放の凹形状の略板状部材であるが、ボルト受容穴19に至る直前で下方に一段作るように屈曲しているため、CVTボス20の高さを低く設定できる。その結果、CVTユニット1のケースの鋳造性が良くなる。
【0020】
また、ブラケット14はCVTユニット1の上面を軸方向(Z方向)に亘るハーネス18をも固定することが可能である。ハーネス18をブラケット14と別部材であるハーネスクランプ16でクランプし、クランプしたハーネスクランプ18の下方に延びる足(図示せず)を、ブラケット14のクランプ受容穴17に挿入し締結することでハーネス18を固定する。これによりハーネス18のばらつきを抑えることができる。従って、ブラケット14はオイルチューブ10〜13およびハーネス18の固定機能を兼用し、部品点数を低減でき製造コストを低減できる。
【0021】
次に、ブラケット24での固定について説明する。上述するようにインレットチューブ10とアウトレットチューブ12とは、ブラケット14でCVTユニット1のケースに固定されるが、インレットチューブ10は長いためブラケット14のみでは先端の位置がズレて定まりにくい。また、CVT1の動作中の振動でインレットチューブ10の先端側はブレやすく、抜けてしまったり、他の周辺部材との干渉し干渉音の発生もあり得る。これは、個々のインレットチューブ10やブラケット14、溶接のばらつきがあることを大きな理由とする。
【0022】
このためインレットチューブ10は、油圧吐出口3側でブラケット24が溶接されている。ブラケット24には、図3に示すようにボルト受容穴25が設けられており、ボルト26をボルト受容穴25に挿入してブラケット24をCVTユニット1のケースに固定する。ブラケット24は、ブラケット14に比べて板厚が薄い。図1図4のブラケット24では板厚t=1.6mmが例示される。このためブラケット24は剛性が低い。したがって、ブラケット24はブラケット14よりも可撓性が高い。そして、インレットチューブ10やブラケット14にばらつきがあっても、ばらつきによる先端位置のズレをブラケット24が吸収し、チューブ10〜13の固定作業においてチューブ10〜13が破損や傷つきを防止することができる。すなわち、ブラケット24は、位置規制が目的であり、堅く固定されることまでは要求されない。
【0023】
以上、本発明の変速機のオイルクーラの配管構造についての実施形態およびその概念について説明してきたが本発明はこれに限定されるものではなく特許請求の範囲および明細書等に記載の精神や教示を逸脱しない範囲で他の変形例、改良例が得られることが当業者は理解できるであろう。
【符号の説明】
【0024】
1 CVTユニット(CVT)
2 オイルクーラ(CVT用ウォーマ)
3 油圧吐出口
4 油圧導入口
10 インレットチューブ(オイルチューブ(金属製チューブ))
11 オイルチューブ(ゴム被覆チューブ)
12 アウトレットチューブ
13 オイルチューブ(ゴム被覆チューブ)
14 ブラケット
15 ボルト
16 ハーネスクランプ
17 クランプ受容穴
18 ハーネス
19 ボルト受容穴
20 CVTボス
24 ブラケット
25 ボルト受容穴
26 ボルト
図1
図2
図3
図4