特許第6149438号(P6149438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000002
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000003
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000004
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000005
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000006
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000007
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000008
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000009
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000010
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000011
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000012
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000013
  • 特許6149438-プルリング付き口栓と容器 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149438
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】プルリング付き口栓と容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/74 20060101AFI20170612BHJP
   B65D 47/36 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   B65D5/74 020B
   B65D47/36 210
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-49280(P2013-49280)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-172653(P2014-172653A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓治
(72)【発明者】
【氏名】馬場 利行
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆儀
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−337914(JP,A)
【文献】 特開2002−240845(JP,A)
【文献】 特開2001−240104(JP,A)
【文献】 特開2001−253459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/74
B65D 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注出筒の内側下方を閉鎖板を設けて封止し、閉鎖板の開口予定位置に縦断面を溝形状とした環状薄肉脆弱線を設けて、この閉鎖板中に前記環状薄肉脆弱線で囲まれてなる除去板を形成し、この除去板での前記環状薄肉脆弱線の近傍位置にプルリングを有する支柱が立設されているプルリング付き口栓において、
前記環状薄肉脆弱線は閉鎖板の上面側に形成されていて、前記除去板の外周面である溝内側面と注出筒の筒壁側の溝外側面との間に薄肉の脆弱板が位置してなるものであり、
前記除去板の支柱立設部に連続する脆弱板中に、該脆弱板の支柱立設部側の位置から筒壁側に向けて凸となる領域であって溝外側面位置には非到達とされた裂け始端形成部を有し、
前記裂け始端形成部を下部とする厚肉凸部が、裂け始端形成部から支柱立設部に亘って一体に設けられていて、
前記裂け始端形成部の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅が、前記支柱の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅より幅狭に設けられていることを特徴とするプルリング付き口栓。
【請求項2】
上記厚肉凸部は支柱に達するように口栓高さ方向上方に向けて延設されていて、支柱と上記脆弱板の裂け始端形成部とが厚肉凸部を介して連結されている請求項1に記載のプルリング付き口栓。
【請求項3】
注出筒の内側下方を閉鎖板を設けて封止し、閉鎖板の開口予定位置に縦断面を溝形状とした環状薄肉脆弱線を設けて、この閉鎖板中に前記環状薄肉脆弱線で囲まれてなる除去板を形成し、この除去板での前記環状薄肉脆弱線の近傍位置にプルリングを有する支柱が立設されているプルリング付き口栓において、
前記環状薄肉脆弱線は閉鎖板の下面側に形成されていて、前記除去板の外周面である溝内側面と注出筒の筒壁側の溝外側面との間に薄肉の脆弱板が位置してなるものであり、
前記除去板の支柱立設部に連続する脆弱板中に、該脆弱板の支柱立設部側の位置から筒壁側に向けて凸となる領域であって溝外側面位置には非到達とされた裂け始端形成部を有し、
前記裂け始端形成部を下部とする厚肉凸部が支柱に一体に設けられていて、支柱と記除去板の裂け始端形成部とが前記厚肉凸部を介して連結されており、
前記裂け始端形成部の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅が、前記支柱の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅より幅狭に設けられていることを特徴とするプルリング付き口栓。
【請求項4】
閉鎖板の外周部であって上記裂け始端形成部に対応する部分のみに、閉鎖板厚さを厚肉にしてこの厚肉により撓み変形が抑止された補強部が設けられていて、前記補強部と脆弱板の裂け始端形成部とが近接配置され、この補強部と脆弱板の裂け始端形成部との間に、脆弱板のみとされた部分が位置している請求項1からの何れか一項に記載のプルリング付き口栓。
【請求項5】
請求項1からの何れか一項に記載のプルリング付き口栓が口栓取付部位に取り付けられていることを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体用紙容器などの口栓取付部位に設けられるプルリング付き口栓、及び口栓取付部位にこのプルリング付き口栓が取り付けられている容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料などの液体を収容する容器には容器上部を切妻屋根型にした液体用紙容器が多く使用されており、収容した液体の注出が行ない易くするために容器上部の傾斜板に合成樹脂製の口栓が取り付けられていて、これをキャップで覆うようにしている。このような液体用容器に取り付けられる口栓は、液体用容器の流通時にこの口栓の密封性を確保し、使用時には開封できるようにした仕組みが備えられている。
【0003】
上記口栓の形状として一例を挙げれば、容器上部の板面(例えば上記傾斜板)の口栓取付孔から突出する注出筒とこの注出筒の下端外周に亘って設けられている取付用のフランジとが一体に形成されている。そして、前記注出筒の内側下方を閉鎖板を設けて封止していて、注出に際して密封を切る開口が前記閉鎖板に形成できるようにするために、閉鎖板の開口予定位置に閉鎖板の下面側にして縦断面形状が溝状の環状薄肉脆弱線を設け、この環状薄肉脆弱線に囲まれてなる除去板を閉鎖板中に形成している。また除去板の上面には環状薄肉脆弱線の近傍位置にして上部にブルリングを有する支柱を立設している。
【0004】
口栓を液体用紙容器などの液体用容器に取り付けるには、注出筒を容器の口栓取付孔に通して位置させ、その口栓取付孔周りの板材とフランジとを重ね合わせた状態でその板材とフランジとを超音波溶着している。
【0005】
液体用容器に取り付けられている口栓を開封するときには、注出筒の内側にあるブルリングを指先に掛けて上方に引っ張るようにしており、環状薄肉脆弱線の上記支柱が近接している部分に裂けを生じさせ、その裂けを始端として裂け目が環状薄肉脆弱線に沿って進んで上記除去板が取り除かれ、閉鎖板に開口が得られる。
【0006】
上述したフランジを有するタイプの口栓だけでなくボトル型の容器の口部に嵌め付けるタイプも含めてプルリング付き口栓では、除去板の形状をほぼ円板状としたものが多く流通しているが、例えば特許文献1や特許文献2に示されているように除去板の平面形を略十字形状として一つの突端に支柱を立設するようにしたり、また除去板の大半の部分を円板状として支柱立設部分自体を注出筒の筒壁に向けて凸となる略山形状の平面形を有するものもある。
【0007】
除去板の支柱立設部を注出筒の筒壁側に突出した形状にしていることから、除去板を取り外すときにその支柱立設部に沿った環状薄肉脆弱線に裂けが生じ易くなると考えられ、除去板の取り外しがし易くなる効果も期待されていた。即ち、除去板の平面形状がほぼ円形とされた口栓ではプルリングを引っ張り上げて除去板を取り外す際に比較的大きな開栓力が必要となっており、この開栓力を低減させることが望まれているのが現状である。
【0008】
この支柱立設部が凸となっている従来の口栓の一例を図10図13に示した。この口栓aではキャップbが被せられ、また注出筒cの下端外周にフランジdが一体に設けられている。断面で示すように注出筒cの内側下方を閉鎖板eを設けて封止し、閉鎖板eの開口予定位置に縦断面を溝形状とした環状薄肉脆弱線fを閉鎖板eの下面にして設けていて、閉鎖板e中に環状薄肉脆弱線fで囲まれた除去板gを形成し、この除去板gにおいて環状薄肉脆弱線fの近傍位置にプルリングhを有する支柱iが立設されている。
【0009】
そして、支柱iが立つ支柱立設部jについては、その支柱立設部jの両側を注出筒中心側に向けてやや凹んだ形状とすることで、支柱立設部jの部分が筒壁側に向けて凸となるように設けられていた(底面図参照)。支柱立設部jの位置に沿う環状薄肉脆弱線fは底面図で示すようにその支柱立設部jとは反対側の弧形状より曲がりが強く小さな弧形状となっている。このように支柱立設部を筒壁側に向けて凸となる形状とすることで、プルリングを引っ張った際に引っ張り力が分散せずに支柱立設部に沿う環状薄肉脆弱線が切断されると期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭49−002753号公報
【特許文献2】実開昭57−026320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、支柱立設部自体が筒壁側に向けて凸となるようにしている口栓では、プルリングを引っ張った際の引っ張り力が支柱立設部周りに作用するものの、支柱立設部から環状薄肉脆弱線に亘る構造がその支柱立設部周りで一様であるために、その引っ張り力が支柱立設部周りの環状薄肉脆弱線やその環状薄肉脆弱線に沿った部分などに均一に分散して、逆に支柱立設部周り全体での変形量を増大させる作用が生じていた。
【0012】
このことから環状薄肉脆弱線に裂けを簡単に生じさせる応力集中がなかなか生じず、除去板をほぼ円形とした従来からの口栓と比べても開栓力が良好に低減されたものではなかった。また、環状薄肉脆弱線で囲まれてなる除去板の形状を円板形状に対して大きく異形となる形状にすると、その除去板を取り除いた後に形成される開口の形状がいびつになり易く、収容物の注出に不具合を招く可能性もある。
【0013】
そこで本発明は上記事情に鑑み、プルリング付き口栓において、プルリングを引っ張った際に支柱立設部に沿った環状薄肉脆弱線に裂けが容易に生じるようにすることを課題とし、開栓力を低下させて開封し易い口栓を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(請求項1の発明)
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、注出筒の内側下方を閉鎖板を設けて封止し、閉鎖板の開口予定位置に縦断面を溝形状とした環状薄肉脆弱線を設けて、この閉鎖板中に前記環状薄肉脆弱線で囲まれてなる除去板を形成し、この除去板での前記環状薄肉脆弱線の近傍位置にプルリングを有する支柱が立設されているプルリング付き口栓において、
前記環状薄肉脆弱線は閉鎖板の上面側に形成されていて、前記除去板の外周面である溝内側面と注出筒の筒壁側の溝外側面との間に薄肉の脆弱板が位置してなるものであり、
前記除去板の支柱立設部に連続する脆弱板中に、該脆弱板の支柱立設部側の位置から筒壁側に向けて凸となる領域であって溝外側面位置には非到達とされた裂け始端形成部を有し、
前記裂け始端形成部を下部とする厚肉凸部が、裂け始端形成部から支柱立設部に亘って一体に設けられていて、
前記裂け始端形成部の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅が、前記支柱の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅より幅狭に設けられていることを特徴とするプルリング付き口栓を提供して、上記課題を解消するものである。
【0015】
(請求項2の発明)
そして、上記発明は、上記厚肉凸部は支柱に達するように口栓高さ方向上方に向けて延設されていて、支柱と上記脆弱板の裂け始端形成部とが厚肉凸部を介して連結されているものとすることが可能である。
【0016】
(請求項3の発明)
また、もう一つの発明は、注出筒の内側下方を閉鎖板を設けて封止し、閉鎖板の開口予定位置に縦断面を溝形状とした環状薄肉脆弱線を設けて、この閉鎖板中に前記環状薄肉脆弱線で囲まれてなる除去板を形成し、この除去板での前記環状薄肉脆弱線の近傍位置にプルリングを有する支柱が立設されているプルリング付き口栓において、
前記環状薄肉脆弱線は閉鎖板の下面側に形成されていて、前記除去板の外周面である溝内側面と注出筒の筒壁側の溝外側面との間に薄肉の脆弱板が位置してなるものであり、
前記除去板の支柱立設部に連続する脆弱板中に、該脆弱板の支柱立設部側の位置から筒壁側に向けて凸となる領域であって溝外側面位置には非到達とされた裂け始端形成部を有し、
前記裂け始端形成部を下部とする厚肉凸部が支柱に一体に設けられていて、支柱と記除去板の裂け始端形成部とが前記厚肉凸部を介して連結されており、
前記裂け始端形成部の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅が、前記支柱の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅より幅狭に設けられていることを特徴とするプルリング付き口栓を提供して、上記課題を解消するものである。
【0018】
(請求項の発明)
また、上記発明は、閉鎖板の外周部であって上記裂け始端形成部に対応する部分のみに、閉鎖板厚さを厚肉にしてこの厚肉により撓み変形が抑止された補強部が設けられていて、前記補強部と脆弱板の裂け始端形成部とが近接配置され、この補強部と脆弱板の裂け始端形成部との間に、脆弱板のみとされた部分が位置していることが良好である。
【0019】
(請求項の発明)
さらにもう一つの発明は、上記プルリング付き口栓が口栓取付部位に取り付けられていることを特徴とする容器であり、この容器を提供して上記課題を解消するものである。
【発明の効果】
【0020】
(請求項1の発明の効果)
請求項1の発明によれば、脆弱板中に凸型の領域とした裂け始端形成部があって、その裂け始端形成部が、支柱立設部の溝内側面に設けた厚肉凸部の下部として形成されており、即ち、前記厚肉凸部が脆弱板に対してはその脆弱板の一部分のみに一体となっており、プルリングを引っ張った際には厚肉凸部の下部である裂け始端形成部は引っ張りによる応力が集中する箇所となる。
【0021】
そして、裂け始端形成部は応力の集中箇所となるのでこの裂け始端形成部、特に裂け始端形成部の突端位置(筒壁側)に裂けが簡単に生じるようになる。また支柱立設部の周りの環状薄肉脆弱線やこの環状薄肉脆弱線に沿った部分が引っ張りによって変形しかけても、引っ張りによる作用が、裂け始端形成部で生じた裂け始端からの裂け目を脆弱板に沿って進める作用として働くようになり、支柱立設部の周りの変形が大きくならずに環状薄肉脆弱線に沿って切断することが簡単で、開栓力を低減できるようになる。
さらに、裂け始端形成部の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅が、上記支柱の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅より幅狭に設けられているので、プルリングを引っ張った際の裂け始端形成部に、引っ張りによる応力をより一層集中させることができるようになる。
【0022】
(請求項2の発明の効果)
請求項2の発明によれば、厚肉凸部は支柱に達するように口栓高さ方向上方に向けて延設されていて、支柱と脆弱板の裂け始端形成部とが厚肉凸部を介して連結されているので、プルリングを引っ張ったときの引っ張り力が支柱から裂け始端形成部に直接的に伝わることとなり、プルリングを引っ張った際に裂け始端形成部でより一層簡単に裂けが生じるようになる。
【0023】
(請求項3の発明の効果)
請求項3の発明によれば、脆弱板中に凸型の領域とした裂け始端形成部があって、その裂け始端形成部が厚肉凸部の下部として形成されており、即ち、前記厚肉凸部が脆弱板に対してはその脆弱板の一部分のみに一体となっており、さらに、厚肉凸部が支柱とも一体となっているので、プルリングを引っ張った際には厚肉凸部の下部である裂け始端形成部は引っ張りによる応力が集中する箇所となる。
【0024】
そして、裂け始端形成部は応力の集中箇所となるのでこの裂け始端形成部、特に裂け始端形成部の突端位置(筒壁側)に裂けが簡単に生じるようになる。また支柱立設部の周りの環状薄肉脆弱線やこの環状薄肉脆弱線に沿った部分が引っ張りによって変形しかけても、引っ張りによる作用が、裂け始端形成部で生じた裂け始端からの裂け目を脆弱板に沿って進める作用として働くようになり、支柱立設部の周りの変形が大きくならずに環状薄肉脆弱線に沿って切断することが簡単で、開栓力を低減できる。
さらに、裂け始端形成部の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅が、上記支柱の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅より幅狭に設けられているので、プルリングを引っ張った際の裂け始端形成部に、引っ張りによる応力をより一層集中させることができるようになる。
【0026】
(請求項の発明の効果)
請求項の発明によれば、閉鎖板の外周部であって上記裂け始端形成部に対応する部分のみに設けられている補強部が、上記脆弱板の裂け始端形成部と非接触にして近接配置され、この補強部と脆弱板の裂け始端形成部との間に、脆弱板のみとされた部分が位置していることを特徴としている。したがってプルリングを引っ張った際、前記補強部は変形し難く、引っ張りによる応力がより一層裂け始端形成部に集中し易く、裂けの発生が容易になる。
【0027】
(請求項の発明の効果)
請求項の発明によれば、閉鎖板による密封を切る開栓力を小さくした上記発明の口栓が取り付けられているので開封が容易な容器となる。また閉鎖板中にある除去板を円形としても開栓力が高まることがないため、この除去板を円形にして開封後に円形の開口が形成されるようにすることで、口栓から収容液を注出し易い容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る口栓の第一の実施例を断面で示す説明図である。
図2】第一の実施例の要部を拡大断面で示す説明図である。
図3】第一の実施例の底面を示す説明図である。
図4】第一の実施例における環状薄肉脆弱線と厚肉凸部と裂け始端形成部とを斜視の状態で示す説明図である。
図5】第二の実施例を示す説明図である。
図6】補強部の変形の例を示す説明図である。
図7】第三の実施例を要部拡大断面で示す説明図である。
図8】第四の実施例を要部拡大断面で示す説明図である。
図9】本発明の容器の一例を示す説明図である。
図10】キャップで閉じられた口栓の従来例を示すものでその上面を示す説明図である。
図11】同じく従来例の側面を示す説明図である。
図12】同じく従来例の底面を示す説明図である。
図13】同じく従来例の断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
つぎに本発明を図1から図9に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
(口栓の第一の実施例)
図中1はプルリング付き口栓で、該口栓1はキャップ2が被せられる注出筒3の下端外周にフランジ4が一体に設けられている。前記注出筒3の内側下方は閉鎖板5を設けて封止し、この閉鎖板5の開口予定位置に縦断面を略V字の溝形状とした環状薄肉脆弱線6を設けていて、閉鎖板5中に環状薄肉脆弱線6で囲まれてなる除去板7を形成し、この除去板7において環状薄肉脆弱線6の近傍位置に、プルリング8を有する支柱9が立設されている。
【0030】
(環状薄肉脆弱線)
上記環状薄肉脆弱線6は閉鎖板5の上面側に形成されていて、除去板7の外周面である溝内側面10と注出筒3の筒壁11側の溝外側面12との間に薄肉の脆弱板13が位置してなるものである。この環状薄肉脆弱線6は口栓1を下方から見た状態で示すように注出筒3と同心の円形状であり、筒壁11の近くを通る配置である。また環状薄肉脆弱線6が円形状であるため、除去板7の平面形状は円板となっている(図3)。
【0031】
本発明の口栓1にあっては、開栓に際してプルリング8を引っ張り上げたときに支柱9に近い位置にある環状薄肉脆弱線6の脆弱板13に裂けが生じ易くなるようにした工夫が施されている。この第一の実施例の口栓1において、上述したように支柱9は除去板7での環状薄肉脆弱線6の近傍位置に立設されていて、除去板7での支柱立設部14の外側面は溝内側面10の一部である(図2参照)。
【0032】
(厚肉凸部)
そして、溝内側面10での支柱直下に対応する部分であって、支柱9での筒壁最接近側の下方となる部分を筒壁11側に向けて盛り上がった形状とすることで、その溝内側面10に平断面形状を筒壁11側に向けて凸となる厚肉凸部15が一体に設けられている。さらに前記厚肉凸部15は支柱9の基部に達するように口栓高さ方向上方に向けて延設され、その支柱9の基端における筒壁11側の部分(支柱9での筒壁最接近側の部分)も筒壁11側に向けて盛り上がった形状としている(図2図4参照)。
【0033】
即ち、支柱9の基端における筒壁11側の部分と前記溝内側面10での支柱直下に対応する部分とが共に筒壁11側に向けて盛り上がった形状とされ、支柱9から溝内側面10にかけて連続して平断面形状を筒壁11側に向けて凸となる厚肉凸部15を一体に設けている。
【0034】
(裂け始端形成部)
さらに支柱立設部14に連続する脆弱板13中に、該脆弱板13の支柱立設部側の位置から筒壁11側に向けて凸となる領域にして、かつ突端16が溝外側面位置には非到達にした裂け始端形成部17が形成されている(図4)。そして、脆弱板13中の前記裂け始端形成部17は上記厚肉凸部15の下部として成形されており、厚肉凸部15は裂け始端形成部17から支柱立設部14と支柱9とに亘って一体に設けられている。
【0035】
上記厚肉凸部15は支柱9の基部に達するように口栓高さ方向上方に向けて延設されているので、この厚肉凸部15を介して支柱9と脆弱板13中の裂け始端形成部17とが連結されている構成を有する形態となっている。また支柱9の基端と裂け始端形成部17とに亘る厚肉凸部15は、溝内側面10の部分において口栓高さ方向での下方に下がるに従って環状薄肉脆弱線6の長さ方向に沿った幅が徐々に幅狭になるように成形されていて、厚肉凸部15の下部である脆弱板13中の裂け始端形成部17は、環状薄肉脆弱線6の長さ方向に沿った幅が、支柱9の基端の環状薄肉脆弱線の長さ方向に沿った幅より幅狭に設けられている。
【0036】
上述したように厚肉凸部15が脆弱板13に対してはその脆弱板13の一部分のみである裂け始端形成部17に一体となっており、プルリング8を引っ張った際には厚肉凸部15の下部である裂け始端形成部17は引っ張りによる応力が集中する箇所となり、特に突端16で脆弱板13に裂けが生じるようになる。また、厚肉凸部15を介して支柱9と裂け始端形成部17とを連結した構成としているので、プルリング8を引っ張ったときの引っ張り力が支柱9から裂け始端形成部17に直接的に伝わることとなり、プルリング8を引っ張った際に裂け始端形成部17でより一層簡単に裂けが生じるようになる。
【0037】
さらに、裂け始端形成部17の環状薄肉脆弱線6の長さ方向に沿った幅を、支柱9の環状薄肉脆弱線6の長さ方向に沿った幅より幅狭に設けられているので、これによっても引っ張りによる応力が裂け始端形成部17に集中するようになり、より一層脆弱板13で裂けを生じさせ易くする上で効果がある。この第一の実施例における厚肉凸部15の環状薄肉脆弱線6の長さ方向に沿った幅は、裂け始端形成部17の位置から除去板7の上面の高さ位置にかけて漸次幅広にされていて、その裂け始端形成部17の位置から除去板7の上面の高さ位置にかけて厚肉凸部15の盛り上がり方向と相対する方向から見た形状がテーパー形状としている。なお、除去板7の上面の高さ位置での幅は支柱9の基部の幅より狭くなるようにしている。
【0038】
(第二の実施例)
(補強部)
図5は第二の実施例を示していて、図中の符号18は上記第一の実施例における閉鎖板5の環状薄肉脆弱線6の筒壁11側となる外周部19の一部分に設けられた補強部を示している。即ち、この第二の実施例は、裂け始端形成部17に相対する位置のみを補強部18としている例である。前記補強部18は、裂け始端形成部17に相対する部分がプルリング8の引っ張り方向に撓むように変形することを抑えるために、その裂け始端形成部17に相対する部分の剛性を高める補強を行なうもので、本口栓1においてプルリング8を引っ張って開封する際に上記裂け始端形成部17に裂けがより生じ易くなるようにしているものである。
【0039】
図示されているように補強部18は、環状薄肉脆弱線6の溝外側面12から筒壁11に亘る閉鎖板5の外周部19の上面であって、裂け始端形成部17に閉鎖板5の径方向に対応する部分のみに位置していて、閉鎖板5が厚さ方向上方に凸となるように閉鎖板5の厚さを厚肉して設けている。さらにこの補強部18の環状薄肉脆弱線6にかかる部分は脆弱板13にも連続しており、脆弱板13中で裂け始端形成部17と非連続にして相対してその裂け始端形成部17に向けて凸状の剛性強化部20が、補強部18の環状薄肉脆弱線6中の下部として一体に形成されている。
【0040】
第二の実施例の口栓1では上記補強部18と裂け始端形成部17とが非接触で近接配置されており、特にこの例では、閉鎖板5の上面側が開く溝形状にして形成された環状薄肉脆弱線6の脆弱板13中で、補強部18の上記剛性強化部20と前記裂け始端形成部17とが、非接触で近接配置の位置関係となるように形成されており、この剛性強化部20と裂け始端形成部17との間に、脆弱板13のみとした部分が位置している。
【0041】
口栓1はこのように補強部18を設けたものであっても、裂け始端形成部17の突端16側には脆弱板13があるため、プルリング8を引っ張ることで裂け始端形成部17と構成強化部20との間で、特にその突端16側で裂けが生じ易くなる。さらに前記補強部18を設けてなる強度を高めて撓み難くした部分が脆弱板13の一部分を介在させて裂け始端形成部17と相対しているので、プルリング8の引っ張り時により一層前記裂けが生じ易くなっているものである。
【0042】
(補強部の変形例)
図6は上記補強部18の構成を変更した例を示している。上記第二の実施例の補強部18では、この補強部18としている閉鎖板5の厚さ(外周部位置および溝外側面位置での厚さ)が厚肉となるように上面側に凸部分18aを一体に形成しているが、厚肉凸部15や裂け始端形成部17に対向する部分の剛性が強化されればよいものである。
【0043】
変形例での補強部18は、図6に示されているように第二の実施例の場合とは上下反対側となるように、環状薄肉脆弱線6の溝外側面12から筒壁11に亘る閉鎖板5の外周部19の下面で、かつ裂け始端形成部17に閉鎖板5の径方向に対応する部分のみに、閉鎖板5が厚さ方向下方に突出する凸部分18aを一体に形成して、これによって閉鎖板5の厚さを厚肉して剛性を強化した補強部18が設けられるようにしている。
【0044】
上述したように本口栓1では、上記補強部18を、上方に突出した凸部分18aを設けることによってその凸部分18aのある閉鎖板5の厚さを厚肉にされたものとしたり、下方に突出した凸部分18aを設けることによってその凸部分18aのある閉鎖板5の厚さを厚肉にされたものとしている。上方に突出の凸部分18aにて厚肉にしてなる補強部18では溝外側面12に位置する部分で剛性強化部20を下部として一体にし、下方に突出の凸部分18aにて厚肉にしてなる補強部18では図示されているようにその凸部分18aが脆弱板13側に延設されて剛性強化部20を側端部として一体にしているが、いずれの場合の補強部18でも、凸部分18aが脆弱板13の一部分と一体となるように延設されている必要はない。なお、口栓1において補強部自体は必ずしも必要とされるものではない。
【0045】
(口栓の第三の実施例)
(厚肉凸部)
図7は第三の実施例を示している。第三の実施例における口栓1は厚肉凸部15の口栓高さ方向での形成範囲が第一の実施例と相違している。図示されているように、この厚肉凸部15も、溝内側面10での支柱直下に対応する部分で、支柱9での筒壁最接近側の下方となる部分を筒壁11側に向けて盛り上がった形状とすることで、その溝内側面10に平断面形状を筒壁11側に向けて凸となるように一体に設けられているものである。そして、この厚肉凸部15は支柱9の基部には連続しておらず、上位置が溝内側面10の上端縁までにして形成されているものである。
【0046】
この第三の実施例でも、上記厚肉凸部15が脆弱板13に対しては厚肉凸部の下部として裂け始端形成部17に一体となっており、プルリング8を引っ張った際には厚肉凸部15の下部である裂け始端形成部17は引っ張りによる応力が集中する箇所となり、特に突端16で脆弱板13に裂けが生じるようになる。この裂けが始端となって裂け目が環状薄肉脆弱線6を進んで除去板7を外すことで、閉鎖板5に開口が得られる。
【0047】
(補強部)
さらに第三の実施例においても、第二の実施例と同様に、上方に突出した凸部分18aを設けることによってその凸部分18aのある閉鎖板5の厚さを厚肉にされた補強部18を形成したり、下方に突出した凸部分18aを設けることによってその凸部分18aのある閉鎖板5の厚さを厚肉にされた補強部18を形成することも可能である。
【0048】
(口栓の第四の実施例)
(環状薄肉脆弱線)
図8は第四の実施例を示している。上記実施例では環状薄肉脆弱線6が閉鎖板5の上面側に形成されて、縦断面形状が上方に開く略V字状としているが、本口栓1ではこの環状薄肉脆弱線6が閉鎖板5の下面側に形成して縦断面形状を下方が開く略V字状としてもよく、その例をこの第四の実施例として示している。第四の実施例の環状薄肉脆弱線6は閉鎖板5の下面側に形成されている点で上記実施例と相違していて、除去板7の外周面である溝内側面10と注出筒3の筒壁11側の溝外側面12との間に位置する脆弱板13の上面と除去板7の上面とは面一となっている。
【0049】
プルリング8を有する支柱9は環状薄肉脆弱線6の近傍位置にあり、上記実施例の場合に比べて脆弱板13により一層近付いた位置に支柱9が立設されている。そして、上記実施例と同じように支柱立設部14に連続する脆弱板7中に裂け始端形成部17を有し、この裂け始端形成部17が支柱9の基端に隣接している。
【0050】
(厚肉凸部)
さらに上記支柱9の基端を含む部分は、筒壁最接近側となる部分において筒壁11側に向けて盛り上がった形状にしており、平断面形状を筒壁11側に向けて凸となる厚肉凸部15がこの支柱9の基端を含む部分に一体に設けられている。そして、この第四の実施例における前記厚肉凸部15は、支柱9の基端が隣接する脆弱板13中の上記裂け始端形成部17を下部として脆弱板13に一体に連続しており、これによって第四の実施例では支柱9と裂け始端形成部17とが前記厚肉凸部15を介して連結されている。
【0051】
第四の実施例においても、厚肉凸部15が脆弱板13に対してはその脆弱板13の一部分のみである裂け始端形成部17に一体となっている。そのため、上記実施例と同じようにプルリング8を引っ張った際には厚肉凸部15の下部である裂け始端形成部17は引っ張りによる応力が集中する箇所となり、突端16で脆弱板13に裂けが生じるようになる。さらに、厚肉凸部15を介して支柱9と裂け始端形成部17とを連結した構成としているので、プルリング8を引っ張ったときの引っ張り力が支柱9から裂け始端形成部17に直接的に伝わって、プルリング8を引っ張った際に裂け始端形成部17でより一層簡単に裂けが生じるものとなる。
【0052】
(補強部)
第四の実施例でも、上記実施例と同様に、上方に突出した凸部分18aを設けることによってその凸部分18aのある閉鎖板5の厚さを厚肉にされた補強部18を形成したり、下方に突出した凸部分18aを設けることによってその凸部分18aのある閉鎖板5の厚さを厚肉にされた補強部18を形成することも可能である。
【0053】
この第四の実施例によれば、上記厚肉凸部15が脆弱板13に対しては厚肉凸部の下部として裂け始端形成部17に一体となっており、プルリング8を引っ張った際には厚肉凸部15の下部である裂け始端形成部17は引っ張りによる応力が集中する箇所となり、特に突端16で脆弱板13に裂けが生じるようになる。この裂けが始端となって裂け目が環状薄肉脆弱線6を進んで除去板7を外すことで、閉鎖板5に開口が得られる。
【0054】
(容器)
図9は上記実施例による口栓1が取り付けられている液体用紙容器21を示している。この液体用紙容器21は容器上部を切妻屋根状としたゲーベルトップタイプの容器で、一面の傾斜天板に開口された口栓取付孔(口栓取付部位)から注出筒3が外部に突出するようにして配されていて、口栓取付孔周りの板材内面と口栓1のフランジとを融着することでブルリング付き口栓1を取り付けた容器としているものであり、注出筒3にはキャップが被せ付けられている。上述したように口栓1の開封に際し、プルリングを引っ張ったときの応力が集中する裂け始端形成部によって、支柱立設部やその周辺で撓みや伸長などの大きな変形を招かずに容易に裂けが生じて開栓力が小さくなり、これによって開封操作がすこぶる簡単な容器となるものである。なお、口栓1を取り付けた容器はこの液体用紙容器に限定されるものではない。
【0055】
(口栓の変例)
口栓1について上述した実施例ではそれぞれフランジを一体に有するものであって、別成形のキャップをネジ付けできるように注出筒の外周には外ネジを有するものとしている。しかしながら、本発明での口栓は上記実施例に示したものに限定されるものではなく、注出筒にセルフヒンジを介してキャップが連結されている口栓や、ボトル型の容器の口栓取付孔に嵌め付けることができるようにその嵌合部位を注出筒が備える形態の口栓であってもよく、容器も嵌合タイプの口栓が取り付けられたものとすることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…口栓
3…注出筒
5…閉鎖板
6…環状薄肉脆弱線
7…除去板
8…プルリング
9…支柱
10…溝内側面
12…溝外側面
13…脆弱板
14…支柱立設部
15…厚肉凸部
16…突端
17…裂け始端形成部
18…補強部
18a…補強部の凸部分
19…閉鎖板5の外周部
20…剛性強化部
21…液体用紙容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13