(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
銅合金めっき層からなる金属膜を有するキャリア金属箔付き金属膜、プリプレグおよび支持体を貼り合せることによって作製されたものである、請求項9〜13のいずれか1項に記載のキャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、以下の(A)〜(D)の工程を少なくとも含むことが主たる特徴である。
【0011】
(A)支持体/プリプレグ/銅合金めっき層/キャリア金属箔の積層構成を有するキャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材を用意する工程、
(B)該キャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材の支持体を剥離し、プリプレグを内層回路基板に積層する工程、
(C)プリプレグを硬化して絶縁層を形成する工程、
(D)キャリア金属箔を剥離する工程。
【0012】
[(A)工程]
本工程では、支持体/プリプレグ/銅合金めっき層/キャリア金属箔の積層構成を有するキャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材を用意する。かかるキャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材は、例えば、キャリア金属箔付き金属膜と、プリプレグと、支持体とをラミネートすることによって得ることができる。
なお、本発明において「支持体/プリプレグ/銅合金めっき層/キャリア金属箔の積層構成」とは、支持体、プリプレグ、銅合金めっき層、キャリア金属箔の順に積層されていることを意味する。
【0013】
{キャリア金属箔付き金属膜}
キャリア金属箔付き金属膜は、銅合金めっき層からなる金属膜がキャリア金属箔の片面に形成されたものであり、キャリア金属箔の片面には剥離処理が施されることが好ましい。ここで、「キャリア金属箔」とは、金属箔が後に金属膜から剥がすものであることを意味する。
【0014】
(キャリア金属箔)
キャリア金属箔としては、例えば、銅、アルミニウムまたはSUS等による金属箔が挙げられる。なかでも、汎用性、作業性等の観点から銅箔が好ましい。銅箔としては、例えば、電解銅箔又は圧延銅箔が使用される。金属箔の銅合金めっき層が形成される片面に施される剥離処理は、特に限定はされないが、一般的には、水溶性セルロース樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性アクリル樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、CBTA等の公知の剥離剤の薄層や、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−クロム等の合金層による薄層を形成することによってなされる。剥離剤の薄層は、通常、剥離剤を適当な希釈溶剤に溶解させた溶液を金属箔に塗布、乾燥して形成され、その厚みは10〜3000nm程度が一般的である。
【0015】
金属箔の銅合金めっき層(金属膜)が形成される片面の表面粗さ(Ra)は、微細配線形成、低伝送損失等の観点から、350nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、250nm以下が特に好ましい。下限は特に限定はされないが、銅合金めっき層(金属膜)との適度な密着性を確保しておく点から、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上が特に好ましい。
【0016】
キャリア金属箔の厚みは、特に限定はされないが、キャリア金属箔の取り扱い性向上、絶縁層表面の平坦性向上等の観点から、9μm以上が好ましく、12μm以上がより好ましく、15μm以上が特に好ましい。また、ロール状のキャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材を作製する場合の巻き取り作業性等の観点から、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。
【0017】
(銅合金めっき層)
銅合金は、銅と銅以外の金属からなる合金を意味し、樹脂との接着性向上の観点から、Ni−Co−Cu合金、Ni−Cu合金、Co−Cu合金等が好ましく、より好ましくは、Ni−Co−Cu合金である。銅合金めっき層は、キャリア金属箔の剥離処理が施された片面上にめっき処理を行うことで形成される。めっき処理の条件等に特に制限はなく、例えば、電気めっき(電解めっき)による銅合金めっき方法に準じて行うことができる。
【0018】
銅合金めっき層の厚みは、特に限定はされないが、薄膜化、微細配線形成性、層間接続のためのレーザー加工性等の観点から、7μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。また、絶縁層表面の低粗度化、金属膜のピンホールを防ぐ等の観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
【0019】
銅合金めっき層の十点平均粗さ(Rz)が2μm以下であることが好ましく、1.5μm以下がより好ましく、1μm以下が特に好ましい。十点平均粗さ(Rz)が2μm以下であることで、硬化後のプリプレグ(絶縁層)表面の表面粗さが小さくなり、微細配線形成性、層間絶縁性等が良好となる。また、銅合金めっき層の表面の十点平均粗さ(Rz)は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましい。0.1μm以上であることにより、絶縁層(硬化後のプリプレグ)と配線用金属層との剥離強度を安定化させることができる。なお、本明細書中の「配線用金属層」とは、当該銅合金めっき層や、当該銅合金めっき層が除去された後の絶縁層(硬化後のプリプレグ)の表面に無電解めっきにより形成される銅層(後述の工程(H)で形成される銅層)等を意味する。
【0020】
{支持体}
支持体は自己支持性を有するフィルム乃至シート状物であり、プラスチックフィルムが好適に用いられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」とも略称する)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム等が挙げられ、中でも、剥離性、作業性等の観点から、ポリオレフィンフィルムが好ましい。
【0021】
支持体の厚みは、特に制限はないが、剥離性、取り扱い性等の観点から、10〜70μmが好ましく、15〜50μmがより好ましい。支持体のプリプレグと接する側の表面は、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。また、プリプレグと接しない側の表面にも、マット処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。
【0022】
{プリプレグ}
プリプレグを構成する繊維基材は特に限定されず、具体的には、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。繊維基材の具体的な例としては、ガラスクロス基材として、具体的には、旭シュエーベル(株)製スタイル1027MS(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布質量20g/m
2、厚さ19μm)、旭シュエーベル(株)製スタイル1037MS(経糸密度70本/25mm、緯糸密度73本/25mm、布質量24g/m
2、厚さ28μm)、(株)有沢製作所製1078(経糸密度54本/25mm、緯糸密度54本/25mm、布質量48g/m
2、厚さ43μm)、(株)有沢製作所製2116(経糸密度50本/25mm、緯糸密度58本/25mm、布質量103.8g/m
2、厚さ94μm)、(株)有沢製作所製1017(経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、布質量13g/m
2、厚み15μm)、(株)有沢製作所製1000(経糸密度85本/25mm、緯糸密度85本/25mm、布質量11g/m
2、厚み14μm)などが挙げられる。また液晶ポリマー不織布として、(株)クラレ製の芳香族ポリエステルからメルトブロー法により製造された不織布であるベクルス(目付け量6〜15g/m
2)や(株)クラレ製のベクトランを繊維素材とする不織布などが挙げられる。
【0023】
絶縁層の薄膜化の観点から、プリプレグを構成する繊維基材の経糸密度および緯糸密度はそれぞれ50〜100本/25mmが好ましく、70〜90本/25mmがより好ましい。また、布質量は10〜100g/m
2が好ましく、11〜30g/m
2がより好ましい。
【0024】
繊維基材に含浸される硬化性樹脂組成物はその硬化物が、十分な硬度と絶縁性を有するものであれば、特に制限されないが、例えば、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する組成物が好ましく、(a)エポキシ樹脂、(b)エポキシ硬化剤及び(c)無機充填材を含有する組成物がより好ましい。
【0025】
(a)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂はいずれか1種を使用するか2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
エポキシ樹脂は、中でも、耐熱性、絶縁信頼性、金属膜との密着性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、例えば、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D])、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4700」)、ナフトール型エポキシ樹脂(東都化成(株)製「ESN−475V」)、アントラキノン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX8800」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂((株)ダイセル製「PB−3600」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000」)などが挙げられる。
【0027】
エポキシ樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1〜40質量%が好ましく、5〜35質量%がより好ましく、10〜30質量%が更に好ましい。
【0028】
(b)エポキシ硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、耐熱性向上、金属膜との密着性向上という観点から、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤が好ましい。
【0029】
フェノール系硬化剤としては、特に制限されないが、ビフェニル型硬化剤、ナフタレン型硬化剤、フェノールノボラック型硬化剤、ナフチレンエーテル型硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤が好ましい。具体的には、ビフェニル型硬化剤のMEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成(株)製)、ナフタレン型硬化剤のNHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成(株)製)、EXB9500(DIC(株)製)、フェノールノボラック型硬化剤のTD2090(DIC(株)製)、ナフチレンエーテル型硬化剤のEXB−6000(DIC(株)製)等が挙げられる。トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤の具体例としては、LA3018、LA7052、LA7054、LA1356(DIC(株)製)等が挙げられる。特に、金属膜との密着性向上という点でトリアジン骨格含有フェノール系硬化剤が好適である。
【0030】
活性エステル系硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能し、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性等の観点から、カルボン酸化合物とフェノール化合物又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
【0031】
活性エステル系硬化剤として、具体的にはジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤等が好ましく、なかでもピール強度の向上に優れるという点で、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。活性エステル系硬化剤としては、特開2004−277460号公報に開示されている活性エステル系硬化剤を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。市販品としてはジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものとしてEXB9451、EXB9460、EXB9460S−65T、HPC8000−65T(DIC(株)製、活性基当量約223)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤としてDC808(三菱化学(株)製、活性基当量約149)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤としてYLH1026(三菱化学(株)製、活性基当量約200)、YLH1030(三菱化学(株)製、活性基当量約201)、YLH1048(三菱化学(株)製、活性基当量約245)等が挙げられる。
【0032】
ベンゾオキサジン化合物の具体的例としては、F−a、P−d(四国化成工業(株)製)、HFB2006M(昭和高分子(株)製)などが挙げられる。
【0033】
(a)エポキシ樹脂と(b)エポキシ硬化剤の配合比率は、エポキシ樹脂のエポキシ基数を1としたときに、エポキシ硬化剤の反応基数が0.4〜2.0の範囲となる比率が好ましく、0.5〜1.0の範囲となる比率がより好ましい。なお硬化性樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂のエポキシ基数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、エポキシ硬化剤の反応基数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。反応基の比率がこの範囲内であることで、硬化物の機械強度や耐水性が向上する傾向にある。
【0034】
(c)無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、雲母、マイカ、珪酸塩、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられ、シリカ、アルミナが好ましく、特に無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカが好ましく、とくに硬化性樹脂組成物への充填性を高めるという点で溶融シリカ、球状シリカがより好ましく、球状溶融シリカが更に好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SOC2」、「SOC1」等が挙げられる。
【0035】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、平均粒径が0.01〜3μmであるのが好ましく、0.05〜1.5μmであるのがより好ましく、0.1〜0.8μmであるのが更に好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0036】
無機充填剤の含有量は、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは30〜90質量%であり、より好ましくは40〜85質量%、更に好ましくは50〜80質量%である。無機充填剤の含有量が30質量%未満の場合、熱膨張率の低下効果が十分に発揮されない傾向にあり、無機充填剤の含有量が90質量%を超えると、硬化物の機械強度が低下しやすい傾向となる。
【0037】
無機充填材は、耐湿性、分散性等の向上のため、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロビルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、メルカトプロピルトリメトキシシラン、メルカトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていてもよい。
【0038】
当該硬化性樹脂組成物には、硬化後の組成物に適度な可撓性を付与する等の目的で、更に(d)高分子樹脂を配合することができる。高分子樹脂としては、特に限定されないが、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂を挙げることができ、特にフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。これらの高分子樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。高分子樹脂の質量平均分子量は8000〜200000の範囲であるのが好ましく、12000〜100000の範囲がより好ましい。なお本発明における質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による質量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。高分子樹脂を配合する場合には、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。この範囲内であると、フィルム成型能や機械強度向上の効果が発揮され、更に溶融粘度の上昇や湿式粗化工程後の絶縁層表面の粗度を低下させることができる。
【0039】
当該硬化性樹脂組成物には、エポキシ樹脂とエポキシ硬化剤を効率的に反応させるという目的で、(e)硬化促進剤をさらに配合することができる。硬化促進剤としては、特に限定されないが、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホスホニウム系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。アミン系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、トリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン(以下、DBUと略記する。)、等が挙げられる。グアニジン系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、等が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体、等が挙げられる。ホスホニウム系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。硬化促進剤を用いる場合、エポキシ樹脂100質量部に対して0.05〜2質量部の範囲で用いるのが好ましい。
【0040】
当該硬化性樹脂組成物には、難燃性を付与するという目的で、さらに(f)難燃剤を配合することができる。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のフェナントレン型リン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、北興化学工業(株)製のTPPO、PPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、新日鐵化学(株)製のFX289、FX305、TX0712等のリン含有エポキシ樹脂、新日鐵化学(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂、三菱化学(株)製のYL7613等のリン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルアミド化合物、大塚化学(株)製のSPB100、SPE100、(株)伏見製薬所製FP−series等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303、UFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。難燃剤を配合する場合には、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対し、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは1〜5質量%である。
【0041】
硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、マレイミド化合物、ブロックイソシアネート化合物のような熱硬化性樹脂、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。硬化性樹脂組成物は、上記成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または混合することにより調整することができる。また、さらに有機溶剤を加えることで樹脂ワニスとしても調整することができる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。有機溶剤は2種以上を組みわせて用いてもよい。
【0042】
プリプレグは、上述の硬化性樹脂組成物をシート状の繊維基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱して半硬化させることにより製造することができる。ホットメルト法は、硬化性樹脂組成物を、有機溶剤に溶解することなく支持体上に一旦コーティングし、それを繊維基材にラミネートするか、あるいはダイコーターにより繊維基材に直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。ソルベント法は、硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解してワニスを調製し、このワニスに繊維基材を浸漬し、樹脂ワニスを繊維基材に含浸させ、その後乾燥、半硬化させてプリプレグを製造する方法である。また、支持体上に上述の硬化性樹脂組成物による樹脂組成物層を形成した接着フィルムを2つ用意し、これらを繊維基材の両面に加熱、加圧条件下で、連続的にラミネートすることでプリプレグを作製することができる。
【0043】
プリプレグにおける硬化性樹脂組成物の含有量は、繊維機材突き出し防止の観点から40質量%以上が好ましく、熱膨張低下の観点から90質量%以下が好ましく、より好ましくは50〜85質量%であり、特に好ましくは60〜80質量%である。また、プリプレグの厚みは10〜35μmが好ましく、15〜30μmがより好ましい。この範囲にあることで多層プリント配線板の薄型化に寄与する。
【0044】
プリプレグはプリプレグの厚みを1とした場合に繊維基材の厚みが0.4〜0.8となるように調製されたものが好ましい。すなわち、プリプレグの厚みを1とした場合に繊維基材の厚みを0.4以上とすることで多層プリント配線板の薄型化に寄与でき、0.8以下とすることで繊維基材の突き出し防止をより確実になすことができる。
【0045】
{キャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材の作製}
キャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材は、銅合金めっき層からなる金属膜がキャリア金属箔の片面に形成されたキャリア金属箔付き金属膜、プリプレグおよび支持体を貼り合せて作製することができる。例えば、(a)キャリア金属箔付き金属膜と、支持体との間に、プリプレグを配置して、これらをラミネートする方法、(b)キャリア金属箔付き金属膜と、支持体付きのプリプレグとを、ラミネートする方法、(c)キャリア金属箔付き金属膜の金属膜上にさらに上述の硬化性樹脂組成物による硬化性樹脂組成物層を形成したものと、支持体上に上述の硬化性樹脂組成物による硬化性樹脂組成物層を形成した接着フィルムとの間に、繊維基材を配置し、これらをラミネートする方法等によって、作製される。いずれの方法においても、ラミネートは真空ラミネーターによって行うのが好ましい。また、ラミネートにおける加熱温度は、30〜120℃(好ましくは50〜100℃)の範囲から選択され、圧着圧力は、2〜20kgf/cm
2(好ましくは4〜15kgf/cm
2)の範囲から選択される。
【0046】
多層プリント配線の連続的生産を可能とするために、ロール状に巻かれた長尺のキャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材を得る場合は、例えば、ロール状に巻き取られた長尺の繊維基材をロールにより連続的に搬送し、熱硬化性樹脂組成物の含浸および乾燥(半硬化)を行ってロール状に巻かれたプリプレグを調製し、該ロール状に巻かれたプリプレグと、ロール状に巻かれた長尺の支持体と、ロール状に巻かれた長尺のキャリア金属箔付き金属膜をロール式ラミネート装置に搬送し、金属ロール又は弾性材ロールで、支持体と、キャリア金属箔付き金属膜とを、プリプレグに連続的に加圧・加熱することにより、ロール状に巻かれた長尺のキャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材を作製することができる。なお、ロール状に巻かれたキャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材におけるプリプレグの全長(長手方向の幅)は一般的には2〜4000mである。
【0047】
本発明におけるキャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材の厚みは、特に限定がされないが、一般的には概ね30〜150μmである。また、キャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材におけるプリプレグの厚みは、多層プリント配線板の絶縁層の薄厚化、平坦性、作業性等の観点から、10〜35μmが好ましく、15〜30μmがより好ましい。
【0048】
また、キャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材におけるキャリア金属箔と銅合金めっき層の剥離強度は0.01〜0.2kgf/cmであるのが好ましく、より好ましくは0.02〜0.1kgf/cmである。剥離強度が0.01kgf/cm以上であれば、キャリア金属箔と金属膜(銅合金めっき層)間の密着性が良好であり、金属膜に皺が入りにくく、ロール状に巻き取る際やプリプレグとの貼り合わせ工程において加工性が良好となる。また、剥離強度が0.2kgf/cm以下であることにより、後述の(D)工程(キャリア金属箔の剥離工程)において、キャリア金属箔が銅合金めっき層との界面にて容易に剥離され、キャリア金属箔の剥離作業性が向上する。
【0049】
[(B)工程]
本工程は、キャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材の支持体を剥離し、露出させたプリプレグを内層回路基板に積層する工程である。
【0050】
本発明でいう「内層回路基板」とは、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板の片面又は両面にパターン加工(回路形成)された導体層を有し、多層プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層および導体層が形成されるべき中間製造物を言う。
【0051】
キャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材からの支持体の剥離は、手動または自動剥離装置による機械的除去によって行うことができる。
【0052】
「プリプレグを内層回路基板に積層する」とは、プリプレグが内層回路基板に接するようにキャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材を内層回路基板にラミネートすることである。これにより、キャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材を内層回路基板に接着・一体化させることができる。ラミネートは作業性及び一様な接触状態が得られやすい点から、ロールによる圧着、プレス板による圧着等で行うのが好ましい。また、真空ラミネート、すなわち、減圧下でラミネートするのが好適である。また、ラミネートはバッチ式であっても連続式であってもよい。
【0053】
ラミネート条件は、温度が好ましくは60〜140℃の範囲から選択され、より好ましくは80〜120℃の範囲から選択される。また、加圧の圧力は好ましくは1〜11kgf/cm
2(9.8×10
4〜107.9×10
4N/m
2)の範囲から選択され、より好ましくは、2〜7kgf/cm
2(19.6×10
4〜68.6×10
4N/m
2)の範囲から選択される。時間は、5秒〜3分の範囲が好ましく、15秒〜1分の範囲がより好ましい。また、空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下が好ましい。
【0054】
真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、具体的には、(株)名機製作所製のバッチ式真空加圧ラミネーター MVLP−500、ニチゴー・モートン(株)製のバキュームアップリケーター、(株)日立インダストリイズ製のロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製の真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0055】
プリプレグが内層回路基板に圧着されるため、内層回路基板上の回路の凹凸によってプリプレグ中の繊維基材のプリプレグからの突き出しが懸念されるが、プリプレグの背面はキャリア金属箔で押圧されているため、繊維基材の突き出しが生じることなく、プリプレグの平坦性が保たれた状態で、内層回路基板にプリプレグがラミネートされる。
【0056】
[工程(C)]
本工程は、工程(B)により、内層回路基板に接着・一体化させたキャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材のプリプレグを硬化して絶縁層を形成する工程である。その硬化方法は特に制限はないが、熱硬化処理を使用することが好ましい。熱硬化処理での硬化条件は硬化性樹脂の種類等によっても異なるが、硬化温度が120〜200℃、硬化時間が15〜90分の条件で行うことが好ましい。なお、形成される絶縁層表面のしわ防止の観点から、比較的低い硬化温度から高い硬化温度へ段階的に硬化させる方法、又は比較的低い硬化温度から高い硬化温度へ上昇させながら硬化させる方法が好ましい。
【0057】
工程(B)と、工程(C)は、一般的な真空ホットプレス機を用いて連続的に行うことも可能である。例えば、加熱されたSUS板等の金属板をキャリア金属側からプレスすることにより行うことができる。市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200(株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0058】
[工程(D)]
本工程は、キャリア金属箔を剥離する工程である。キャリア金属箔の剥離方法は特に限定されないが、手動または自動剥離装置による機械的除去によって行うことができる。市販されている自動剥離機としては、例えば、カバーフィルム自動剥離機ACPM650((株)アドテックエンジニアリング製)などが挙げられる。
【0059】
なお、キャリア金属箔を剥離した後の絶縁層表面における銅合金めっき層の残存量はX線光電子分光(XPS)によって測定することができる。銅合金めっき層の残存量はX線光電子分光(XPS)による測定値で1.0atomic%以上となりうる。なお、銅合金めっき層の残存量が異なっても絶縁層の表面粗さ(Ra)は一定である。また、銅合金めっき層の表面は防錆処理がなされている場合が多いが、ここでいう銅合金めっき層の残存量とは、銅合金めっき層の表面が防錆処理されている場合、銅合金めっき層と防錆処理被膜の合計量である。なお、防錆処理被膜が残存しても特に問題はない。
【0060】
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、以上の(A)〜(D)の工程以外に、(E)ブラインドビアを形成する工程、を含むことができ、該(E)工程を含むことにより、層間の導通を行うことができる。該(E)工程は、具体的には、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等により行うことができる。該(E)工程は、前述の(C)工程若しくは(D)工程の後か、或いは、後述の(G)銅合金めっき層を除去する工程、の後に行うことが好ましい。また、ブラインドビア形成後にデスミア液によって絶縁層表面が粗化されることなく、微細配線化を可能にするという観点から、(E)工程は(D)工程の前に行うことがより好ましい。
【0061】
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、さらに、(F)デスミア工程、を含むことができ、該(F)工程を含むことにより、ブラインドビア形成により生じたビア底残渣を除去し、ビア壁面の粗化を行うことができる。該(F)工程は、特に制限はなく、公知の方法によって行うことができる。具体的には、プラズマ等のドライ法、アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤処理によるウエット法が好ましい。ビア底のスミアを除去すると同時に、ビア壁面が酸化剤で粗化され、めっき密着強度を向上させることができる観点から、酸化剤溶液による処理がより好ましい。
【0062】
かかる酸化剤溶液処理は、特に制限はないが、(a)膨潤液による膨潤処理、(b)酸化剤溶液による粗化処理及び(c)中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。
【0063】
膨潤液としては、特に制限はないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、アルカリ溶液が好ましく、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。また、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等の市販の膨潤液を使用してもよい。膨潤液による膨潤処理は、特に制限はないが、具体的には、30〜90℃の膨潤液を1分〜15分付すことで行われる。作業性、樹脂が膨潤されすぎないようにする点から、40〜80℃の膨潤液に5秒〜10分浸漬する方法が好ましい。
【0064】
酸化剤溶液としては、特に制限はないが、具体的には、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10質量%が好ましい。また、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ド−ジングソリューション セキュリガンスP等の市販の酸化剤溶液を使用してもよい。酸化剤溶液による粗化処理は、特に制限はないが、具体的には、膨潤液による膨湿処理がなされた処理面に50〜90℃の酸化剤溶液を10分〜40分付す方法を用いることができる。作業性、樹脂が粗化されすぎないようにする点から、膨湿処理がなされた対象物を、60〜85℃の酸化剤溶液に20分〜30分浸漬する方法が好ましい。
【0065】
中和液としては、特に制限はないが、酸性の水溶液が好ましい。アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューション・セキュリガントP等の市販の中和液を使用してもよい。中和液による処理は、酸化剤溶液による粗化処理がなされた処理面に30〜80℃の中和液を5分〜30分付す方法を用いることができる。作業性等の点から、酸化剤溶液による粗化処理がなされた対象物を、40〜70℃の中和液に5分〜20分浸漬する方法が好ましい。
【0066】
該(F)工程は(E)工程の後に行うことが好ましく、後に無電解めっきを行い、ブラインドビアの接続信頼性を高めるという観点から、該(F)工程は、後述の(H)絶縁層表面に無電解めっきにより銅層を形成する工程、の前に行うのがより好ましい。また、(D)工程の際にビア底の下地銅層表面がエッチングされビア底のスミアをより完全に除くことができ、さらに絶縁層表面が粗化されるのを防ぐと言う観点から、該(F)工程は(D)工程の前に行うのが更に好ましい。
【0067】
また、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、さらに、(G)銅合金めっき層を除去する工程、を含むことが好ましい。高周波でのノイズの原因となる懸念がある銅合金めっき層を除去し、絶縁層表面に残存する銅合金めっきを減量でき、多層プリント配線板の高周波での電気特性を向上させることができる。また、回路形成後、銅ランド上にバンプを形成するために、銅ランド上にAu−Ni無電解めっきを行う場合に、本来無電解めっきが析出しない樹脂表面上にも微小な銅合金めっきを核としてめっきが析出するなどの不具合発生を回避させることができる。
【0068】
該(G)工程は、酸化剤溶液処理によって行うことができ、特に制限はないが、かかる酸化剤溶液処理は、具体的には、(a)膨潤液による膨潤処理、(b)酸化剤溶液による粗化処理及び(c)中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。
【0069】
膨潤液としては、特に制限はないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、アルカリ溶液が好ましく、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。また、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等の市販の膨潤液を使用してもよい。膨潤液による膨潤処理は、特に制限はないが、具体的には、銅箔が除去された処理面に20〜50℃の膨潤液を10秒〜2分付す方法を用いることができる。作業性、樹脂が膨潤されすぎないようにする点から、銅箔が除去された対象物を20〜50℃の膨潤液に10秒〜1分浸漬する方法が好ましい。
【0070】
酸化剤溶液としては、特に制限はないが、具体的には、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10質量%が好ましい。また、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガンスP等の市販の酸化剤溶液を使用してもよい。酸化剤溶液による粗化処理は、特に制限はないが、具体的には、膨潤液による膨湿処理がなされた処理面に20〜60℃の酸化剤溶液を10秒〜2分付す方法を用いることができる。作業性、樹脂が粗化されすぎないようにする点から、膨湿処理がなされた対象物を、20〜50℃の酸化剤溶液に10秒〜1分浸漬する方法が好ましい。
【0071】
中和液としては、特に制限はないが、酸性の水溶液が好ましい。アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューション・セキュリガントP等の市販の中和液を使用してもよい。中和液による処理は、酸化剤溶液による粗化処理がなされた処理面に20〜60℃の中和液を10秒〜2分付す方法を用いることができる。作業性等の点から、酸化剤溶液による粗化処理がなされた対象物を、20〜50℃の中和液に10秒〜1分浸漬する方法が好ましい。
【0072】
以上の酸化剤溶液処理を行うことで、銅合金めっき層は略完全に除去され、酸化剤溶液処理後の絶縁層の露出面には銅合金めっきが存在しないか、存在していてもXPSによる測定値で0.1atomic%以下である。
【0073】
また、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、さらに、(H)絶縁層表面に無電解めっきにより銅層を形成する工程、を含むことが好ましい。無電解めっきによる銅層の形成方法は、特に制限はなく、公知の方法により行うことができる。具体的には、絶縁層表面を界面活性剤等で処理し、パラジウム等のめっき触媒を付与した後、無電解めっき液に浸漬することで銅層を形成することが好ましい。銅層の厚みは、0.1〜5.0μmが好ましく、0.2〜2.5μmがより好ましく、0.2〜1.5μmが更に好ましい。なお、銅層は、無電解めっきの一種であるダイレクトプレーティング法によって形成してもよい。該(H)工程は、(D)工程を経て露出した絶縁層表面に施すことが好ましく、(G)工程を経て露出した絶縁層表面に施すことがより好ましい。
【0074】
また、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、さらに、(I)電気めっきにより導体層を形成する工程、を含むことができる。該(I)工程における導体層形成方法は、特に制限はないが、セミアディティブ法等の公知の方法により行うことができる。具体的には、めっきレジストを形成し、上記の(H)工程で形成した銅層をめっきシード層として、電気めっきにより導体層(パターニングされた導体層)を形成することが好ましい。該(I)工程は(H)工程の後に行うのが好ましい。電気めっきによる導体層は銅が好ましい。導体層の厚みは所望の回路基板のデザインによるが、3〜35μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。
【0075】
また、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、さらに(J)回路(配線)形成工程、を含むことができる。該(J)工程における回路形成方法は、特に制限はなく、めっきレジストをアルカリ性水溶液等のめっきレジスト剥離液で除去し、めっきシード層の除去を行うことにより回路形成することができる。なお、めっきシード層の除去は、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、ペルオキソ二硫酸ナトリウムと硫酸の水溶液等の銅エッチング液により行うことができる。市販の銅エッチング液としては、メック(株)製のCF−6000、メルテックス(株)製のE−プロセス−WL等のアルカリ性エッチング液が挙げられる。処理は、エッチング液(20〜60℃)に5〜120秒程度浸漬させる浸漬法、エッチング液(20〜60℃)をスプレー状にして吹きかけてエッチングする方法等で実施できる。
【0076】
本発明方法によれば、絶縁層にプリプレグを使用していながら、繊維基材の突き出しがなく、平坦性に優れ、しかも、表面粗さ(Ra)が極めて小さい絶縁層表面に高い密着強度の配線用金属層が積層された積層構造を簡便に形成することができる。絶縁層の表面粗さ(Ra)は絶縁層と銅めっき層との接着性の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましい。一方、回路形成の際の不要金属層のエッチング除去作業における作業性と微細配線形成性の観点から、350nm以下が好ましく、320nm以下がより好ましく、250nm以下が更に好ましく、220nm以下が更に一層好ましい。
【0077】
なお、本発明の多層プリント配線板の製造方法には、キャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材の積層工程から回路(配線)形成工程(すなわち、工程(A)〜工程(J))迄の一連の工程を複数回繰り返して、ビルドアップ層を多段に積層していく、ビルドアップ工法も含まれる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は「質量部」を意味する。
【0079】
<評価基板の作製>
(1)内層回路基板の作製
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板[銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.8mm、松下電工(株)製R5715ES]にIPC MULTI−PURPOSE TEST BOARD NO. IPC B−25のパターン(ライン/スペース=175/175umの櫛歯パターン(残銅率50%))を形成し、さらにマイクロエッチング剤(メック(株)製CZ8100)で粗化処理を行い、内層回路基板を作製した。
【0080】
(2)キャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材等のラミネート
各実施例および各比較例で作製した、キャリア金属箔付きプリプレグ含有複合材、PETフィルム付きプリプレグ等を、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500(商品名、名機(株)製)を用いて、上記(1)で作製した内層回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後120℃、30秒間、圧力0.74MPaで圧着させることにより行った。
【0081】
(3)プリプレグの硬化
170℃、30分の硬化条件でプリプレグを硬化して、絶縁層を形成した。その後、キャリア金属箔又はPETフィルムを剥離した。なお、キャリア金属箔については、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端のキャリア銅箔を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC−50C−SL)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がすことで、キャリア金属箔の剥離強度(kgf/cm)を測定した。
【0082】
(4)ビアホール形成
松下溶接システム(株)製CO
2レーザー加工機(YB−HCS03T04)を使用し、周波数2000Hzでパルス幅27μ秒、ショット数1の条件で絶縁層を穴あけして、絶縁層表面におけるビアホールのトップ径(直径)が60μmのビアホールを形成した。
【0083】
(5)デスミア処理
上記作業後の内層回路基板を含む積層体を、膨潤液であるアトテックジャパン(株)のスエリングディップ・セキュリガントPに60℃で5分間浸漬した。次に、粗化液であるアトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO
4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬した。最後に、中和液であるアトテックジャパン(株)のリダクションソリューション・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。
【0084】
(6)銅合金めっき層の除去
実施例1〜6の銅合金めっき層、比較例1の銅箔と銅合金めっき層に関して、上記作業後の内層回路基板を含む積層体を、25℃の塩化第二鉄水溶液に、銅合金めっき層が除去されるまで浸漬した。これにより評価基板を作製した。
【0085】
(7)導体層の形成
下記のアトテックジャパン(株)製薬液を使用した無電解銅めっきプロセスを使用して無電解銅めっきを行い、膜厚1μmの銅層を形成した。その後、電解銅めっきを行って合計30μm厚の導体層を形成して多層プリント配線板を得た。
【0086】
[アトテックジャパン(株)製薬液を使用した無電解銅めっきプロセス]
1.アルカリクリーニング(樹脂表面の洗浄と電荷調整)
商品名:Cleaning cleaner Securiganth 902
条件:60℃で5分
2.ソフトエッチング(ビア底、導体の銅の洗浄)
硫酸酸性ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液
条件:30℃で1分
3.プレディップ(次工程のPd付与のための表面の電荷の調整が目的)
商品名:Pre. Dip Neoganth B
条件:室温で1分
4.アクティヴェーター(樹脂表面へのPdの付与)
商品名:Activator Neoganth 834
条件:35℃で5分
5.還元(樹脂に付いたPdを還元する)
商品名:Reducer Neoganth WA
:Reducer Acceralator 810 mod.の混合液
条件:30℃で5分
6.無電解銅めっき(Cuを樹脂表面(Pd表面)に析出させる)
商品名:Basic Solution Printganth MSK-DK
:Copper solution Printganth MSK
:Stabilizer Printganth MSK-DK
:Reducer Cu の混合液
条件:35℃で20分
【0087】
<めっき導体層の引き剥がし強さ(めっき剥離強度)の測定>
評価基板の導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC−50C−SL)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定し、めっき剥離強度が0.5kgf/cm以上を〇、0.5kgf/cm未満を×とした。
【0088】
<加工性の評価>
評価基板作成時に、塩化第二鉄水溶液に浸漬した時間が、1分未満の場合を○(良)、1分以上2分未満を△(可)、2分以上を×(不可)とした。なお、比較例1は5分以上かかった。
【0089】
<算術平均粗さ(Ra)の測定及び評価>
評価基板の絶縁層表面について、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値によりRa値を求めた。そして、それぞれ10点の平均値を求めることにより測定値とした。Raが300nm以下の場合を〇(良)、Raが300nm以上、400nm未満を△(可)、400nm以上の場合を×(不可)とした。
【0090】
<表面平坦性の評価>
評価基板を200mm×200mmの試験片に切断し、光干渉型表面粗度、表面形状測定装置(Wyko NT9300(日本Veeco(株))を用いて表面状態を観察し、アンジュレーションが3μm未満の場合を○(合格)、3μm以上を×(不合格)と評価した。
【0091】
<表面外観の評価>
評価基板を200mm×200mmの試験片に切断し、マイクロスコープ(KEYENCE(株)製 マイクロスコープVH−5500)を用いて表面状態を観察し、ガラスクロスの露出が0箇所の場合は○(良)、1箇所以上3箇所以下の場合は△(可)、4箇所以上ある場合は×(不可)と評価した。
【0092】
(実施例1)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「エピコート828EL」)20部と、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000」)18部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、DIC(株)製「HP4710」)8部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEK溶液)5部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学(株)製「KS−1」、固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)とをMEK5部、シクロヘキサノン5部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、窒素含有量約12質量%、固形分60質量%のMEK溶液)15部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、新日鐵化学(株)製「SN−485」、固形分60質量%のMEK溶液)15部、反応型難燃剤(水酸基当量162、(株)三光製「HCA−HQ」、リン含有量9.5%)5部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」、アミノシラン処理付き)130部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。該ワニスを、(株)有沢製作所製1017ガラスクロス(厚み15μm)に含浸し、縦型乾燥炉にて110℃で5分間乾燥させプリプレグを作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有量は74質量%、プリプレグの厚みは30μmであった。その後、キャリア金属箔付き金属膜(JX日鉱日石金属工業(株)製「JXUT−FN」、銅合金めっき層(Ni−Co−Cu):厚み3μm、Rz0.8μm、銅キャリア(銅箔):厚み18μm)とポリプロピレンフィルム(厚み15μm)との間にプリプレグを配置し、自動ラミネーター VA770特殊型(大成ラミネーター(株)製)を用いて、加熱温度80℃、圧着圧力3kgf/cm
2、で貼り合わせながらロール状に巻き取り、金属箔付きプリプレグ含有複合材を作製した。金属箔付きプリプレグ含有複合材の厚みは66μmであった((株)ミツトヨ製、接触式層厚計 MCD−25MJによる測定値)。
【0093】
(実施例2)
キャリア金属箔付き金属膜の銅合金めっき層の厚みを1.5μmとしたこと以外は、実施例1と全く同様にして金属箔付きプリプレグ含有複合材を作製した。
【0094】
(実施例3)
キャリア金属箔付き金属膜の銅合金めっき層の厚みを5μmとしたこと以外は、実施例1と全く同様にして金属箔付きプリプレグ含有複合材を作製した。
【0095】
(実施例4)
キャリア金属箔付き金属膜の銅キャリア(銅箔)の厚みを12μmとしたこと以外は、実施例1と全く同様にして金属箔付きプリプレグ含有複合材を作製した。
【0096】
(実施例5)
キャリア金属箔付き金属膜(JX日鉱日石金属工業(株)製「JXUT−FN」)を、キャリア金属箔付き金属膜(JX日鉱日石金属工業(株)製「JXUT−II」、銅合金めっき層(Ni−Co−Cu):厚み3μm、Rz1.5μm、銅キャリア(銅箔):厚み18μm)としたこと以外は、実施例1と全く同様にして金属箔付きプリプレグ含有複合材を作製した。
【0097】
(実施例6)
(株)有沢製作所製1017ガラスクロス(厚み15μm)を(株)有沢製作所製1000ガラスクロス(厚み14μm)に変更したこと以外は、実施例1と全く同様にして金属箔付きプリプレグ含有複合材を作製した。プリプレグ中の硬化性樹脂組成物含有量は75質量%、プリプレグの厚みは25μmであった。
【0098】
なお、実施例で使用した、JX日鉱日石金属工業(株)製「JXUT−FN」およびJX日鉱日石金属工業(株)製「JXUT−II」における銅合金めっき層の十点平均粗さ(Rz)は、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより、測定範囲を121μm×92μmとする方法による測定値である。
【0099】
(比較例1)
キャリア金属箔付き金属膜(JX日鉱日石金属工業(株)製「JXUT−FN」)を、金属箔付き金属膜(JX日鉱日石金属工業(株)製「HLPFN」、厚み12μmの金属箔上に厚み3μmの銅合金めっき層が形成されているもの。銅合金メッキ層のRz0.8μm)としたこと以外は、実施例1と全く同様にして金属箔付きプリプレグを作製した。
【0100】
(比較例2)
キャリア金属箔付き金属膜(JX日鉱日石金属工業(株)製「JXUT−FN」)を、PETフィルム(38μm)としたこと以外は、実施例1と全く同様にしてPET付きプリプレグを作製した。
【0101】
【表1】