(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記チップパーツとメインパーツとの一方の雄ねじ軸が設けられ、他方に雌ねじ穴が設けられ、該雄ねじ軸と雌ねじ穴とが螺合することにより、チップパーツとメインパーツとが着脱可能に連結されることを特徴とするゴルフクラブシャフトの製造方法。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブシャフトは、いわゆるスチールシャフトとカーボンシャフトとに大別される。軽量性、設計自由度の高さ等の観点から、カーボンシャフトが広く用いられている。
【0003】
カーボンシャフトは、カーボン繊維(炭素繊維)を主要繊維とした繊維強化樹脂よりなる。このカーボンシャフトの製造方法として、シートワインディング法が知られている(特許文献1)。この製造方法では、マンドレル(芯金)にシート状のプリプレグを巻き付け、更にラッピングテープを巻き付けた後、プリプレグを加熱により硬化させてシャフトが製造される。
【0004】
通常のゴルフクラブシャフトは、チップ(ヘッドが取り付けられる先端側)ほど小径となるテーパ形状であるが、特許文献2,3には、チップ近傍に最小径部を設け、該最小径部よりもチップ側をチップに向って徐々に拡径させて逆テーパ形としたゴルフクラブシャフトが記載されている。
【0005】
このようにゴルフクラブシャフトのチップ側を逆テーパ形状とすることにより、シャフトとヘッドとの連結力を増大させたり、しなり性を調節したりすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マンドレルにプリプレグを巻き付け、硬化させた後、マンドレルを脱型するシャフトの製造方法にあっては、マンドレルの脱型を可能とするために、マンドレルはチップ側ほど小径となっており、従って、シャフトの内孔はチップ側ほど小径となっている。
【0008】
本発明は、内孔のチップ側が逆テーパ形となっている、すなわち内孔途中の最小径部からチップ側に向って拡径しているゴルフクラブシャフトを製造することができるゴルフクラブシャフトの製造方法と、この方法により製造されたゴルフクラブシャフトと、このゴルフクラブシャフトを有するゴルフクラブとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のゴルフクラブシャフトの製造方法は、マンドレルの外周に繊維含有プリプレグを巻き付け、該プリプレグを硬化させた後、該マンドレルを脱型する工程を有するゴルフクラブシャフトの製造方法において、該ゴルフクラブシャフトの内孔は、チップ近傍に最小径部が設けられ、該最小径部に隣接して、チップ側に向って拡径するチップ側テーパ部と、バット側に向って拡径するバット側テーパ部とが設けられているゴルフクラブシャフトの製造方法であって、該マンドレルは、該最小径部よりもチップ側のチップパーツと、該最小径部よりもバット側のメインパーツとを着脱可能に連結したものであり、該チップパーツはチップ側ほど拡径しており、前記マンドレルを脱型する工程において、該チップパーツをチップ側に脱型し、メインパーツをバット側に脱型することを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、チップパーツとメインパーツとの一方の雄ねじ軸が設けられ、他方に雌ねじ穴が設けられ、該雄ねじ軸と雌ねじ穴とが螺合することにより、チップパーツとメインパーツとが着脱可能に連結されることが好ましい。この場合、チップパーツとメインパーツとの間にパッキンを介在させてもよい。
【0011】
本発明では、プリプレグの巻き付けに先立って、前記マンドレルの最小径部及びその近傍に、補強繊維を筒状に編成した筒状体を装着してもよい。
【0012】
本発明では、チップパーツのチップ側端部の外周面に雄ねじが設けられており、前記チップパーツの脱型に際しては、脱型用の治具を該雄ねじに螺合させ、該治具を介してチップパーツを脱型してもよい。
【0013】
本発明のゴルフクラブシャフトは、かかる本発明のゴルフクラブシャフトの製造方法によって製造されたものである。
【0014】
本発明のゴルフクラブは、このゴルフクラブシャフトを備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゴルフクラブシャフトの製造方法によると、内孔のチップ側が逆テーパ形となっているゴルフクラブシャフトを製造するに際し、プリプレグを硬化させた後、マンドレルのチップパーツをチップ側に脱型し、メインパーツをバット側に脱型するので、シャフトを容易に製造することができる。
【0016】
シャフトの外面もチップ側ほど拡径する形状とした場合には、シャフトのチップ側の肉厚が過大となることが防止され、シャフト重量の軽減を図ることができる。また、シャフトのしなり特性に制約が加えられることも防止され、シャフト設計上の自由度が高くなる。
【0017】
チップパーツとメインパーツとを雄ねじ軸と雌ねじ穴との螺合によって連結することにより、両者を容易に着脱することができる。
【0018】
チップパーツとメインパーツとの間にパッキンを介在させると、両者の間にプリプレグの樹脂が侵入してバリが発生することが防止される。
【0019】
本発明方法によって製造されたゴルフクラブシャフトは、最小径部に応力が集中するので、シャフト製造に際し、まずマンドレルの最小径部付近に補強繊維の筒状体を装着しておき、シャフト最小径部付近を補強するようにしてもよい。
【0020】
チップパーツのチップ側端部外周に雄ねじを設けておき、脱型用治具を該雄ねじに螺合させ、治具を介してチップパーツを脱型することにより、チップパーツの脱型をスムーズに行うことができる。マンドレルにプリプレグを巻き付けるときには治具をチップパーツから取り外してあるので、マンドレルへのプリプレグ巻き付け作業に支障とならず、プリプレグ巻き付け作業をスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0023】
図1(a)は、本発明のゴルフクラブシャフトの製造方法に用いるマンドレル1の側面図、同(b)はその分解図である。なお、
図1はマンドレル及びシャフトの径を実際よりも拡大した模式図である。
【0024】
このマンドレル1は、メインパーツ2とチップパーツ3とを連結したものである。メインパーツ2は、外周の直径がチップに向って小径となるテーパ部2aと、バット側等径部(ストレート部)2cとを有する。この等径部2cの末端に、脱型時に工具を係合させるための係合溝2dが設けられている。メインパーツ2の先端面の中央部には雌ねじ穴2bが設けられている。
【0025】
チップパーツ3は、外周の直径がチップ側ほど大径となるテーパ部3aを有しており、該テーパ部3aのメインパーツ2側の端面の中央部から雄ねじ軸3bが突設されている。この雄ねじ軸3bの外周面の雄ねじは正ねじである。チップパーツ3のチップ側は等径の円柱形状となっており、その外周面に雄ねじ3cが刻設されている。この雄ねじ3cは逆ねじとなっている。
【0026】
チップパーツ3のメインパーツ2側の直径と、メインパーツ2のチップパーツ3側の直径とは等しい。雄ねじ軸3bを雌ねじ穴2bに螺合させてチップパーツ3とメインパーツ2とを連結することによりマンドレル1が構成される。このマンドレル1は、両パーツ3,2の当接部分が最小径部1aとなっている。この最小径部1aよりもチップ側及びバット側は、テーパ部3a,2aよりなり、最小径部1aから遠ざかるほど拡径する形状となっている。
【0027】
このマンドレル1を用いてゴルフクラブシャフトを製造するには、好ましくは、マンドレル1の表面に離型剤を塗布した後、
図2に示すシート状のプリプレグ11〜17を順次に巻回する。
【0028】
プリプレグ11〜17は、カーボン繊維とマトリクス樹脂とを含む。この実施の形態では、プリプレグ11,14〜17ではカーボン繊維はストレート方向すなわちシャフト長手方向に配向している。プリプレグ12では、カーボン繊維は+45゜のバイアス方向(シャフト長手方向と斜交方向)に配向し、プリプレグ13ではカーボン繊維は−45゜のバイアス方向に配向している。なお、プリプレグ12の繊維を−45゜の配向とし、プリプレグ13の繊維を+45゜の配向としてもよい。また、バイアス方向は45゜に限定されず、30〜60゜の範囲であればよい。
【0029】
プリプレグ12〜15は、シャフトの全長にわたって延在する長さを有している。プリプレグ11,16,17はシャフトのチップ側にのみ配材されるように、シャフト全長の5〜45%特に8〜30%程度の長さを有している。
【0030】
プリプレグ14,15はマンドレル1の外周に1周だけ巻回される幅を有している。プリプレグ11〜13,16,17は、マンドレル1の外周に複数周、例えば2〜5周程度巻回される幅を有している。
【0031】
プリプレグ11〜17の厚さは0.05〜0.2mmm程度が好ましい。
【0032】
各プリプレグ11〜17における繊維の割合はFAW10〜150g/m
2特に20〜125g/m
2程度が好適である。プリプレグの樹脂は熱硬化性樹脂であり、エポキシ樹脂などが好適である。
【0033】
プリプレグ中のカーボン繊維の引張弾性率は、ストレート方向の場合10〜80ton・f/mm
2(約98〜784GPa)特に24〜40ton・f/mm
2(約235〜392GPa)程度であることが好ましく、バイアス方向のカーボン繊維は40ton・f/mm
2(約392GPa)以上例えば40〜46ton・f/mm
2(約392〜451GPa)の高弾性率のものが好ましい。なお、1GPa=0.102ton・f/mm
2である。
【0034】
マンドレル1にプリプレグ11〜17を巻回する場合、各プリプレグ11〜17を1枚ずつ巻回してもよく、一部のプリプレグを貼り合わせてから巻回してもよい。例えば、プリプレグ14,15同士を貼り合わせてもよい。マンドレル1にプリプレグ11〜17を巻回する作業は、人力によりなされてもよく、巻回機(ローリングマシンとも称される)が用いられても良い。マンドレルにプリプレグ11〜17を巻回した後、ラッピングテープ巻き付け工程がなされる。図示しないが、ラッピングテープは、螺旋状に巻き付けられる。
【0035】
巻き付け工程の後に、加熱により硬化工程がなされ、プリプレグ中のマトリクス樹脂が硬化する。
【0036】
硬化工程の後、マンドレル1の引き抜き(脱型)及びラッピングテープの除去がなされ、硬化した管状体(素管)が得られる。マンドレル1を脱型するに際しては、チップパーツ3に対し
図3のように治具5を装着する。治具5の先端面に設けられた雌ねじ穴5aとチップパーツ3の雄ねじ3cとを螺合させることにより治具5がチップパーツ3に連結される。治具5の係合溝5bと、メインパーツ2の係合溝2dにそれぞれ工具を係合させ、一方のパーツを固定し、他方のパーツを軸心回りに回してパーツ2,3同士を離反させ、各パーツ2,3を抜き出す。
【0037】
パーツ2,3を引き抜くことにより得られた素管の両端部が必要に応じ切断された後、研磨され、ゴルフクラブシャフト4(
図1(c))とされる。
図6の通り、このゴルフクラブシャフト4にヘッド22とグリップ23を装着することにより、ゴルフクラブ21となる。ヘッド22を装着するには、シャフト4の先端にエポキシ系等の接着剤を塗布し、ヘッド22のホゼル穴内に差し込み、接着剤を硬化させる。
【0038】
このゴルフクラブのシャフト4にあっては、チップ近傍が最小径部4aとなっている。該最小径部4aからチップ側に拡径するようにチップ側テーパ部4bが設けられている。最小径部4aからバット側に向って、バット側ほど拡径するバット側テーパ部4cとなっており、最バット側はストレート部4dとなっている。ただし、ストレート部4dは省略されてもよい。
【0039】
シャフト4の内孔は、最小径部4aにおいて、最も小径となっている。それよりもチップ側の内孔4iはチップ側ほど拡径するテーパ形となっている。最小径部4aよりもバット側の内孔4hは、バット側に向って拡径するテーパ状であるが、ストレート部4dでは等径円筒状となっている。
【0040】
最小径部4aは、シャフト4のチップ側先端から50〜300mm特に100〜200mmの範囲に存在することが好ましい。また、最小径部4aにおける内孔の直径は、チップ側先端における内孔の直径の80〜95%特に85〜92%程度であることが好ましい。
【0041】
このシャフト4は、
図1(c)の通り、チップ側においても肉厚が略均一であり、重量が小さく、またしなり特性の制約もない。
【0042】
本発明では、
図4のように、予めマンドレル1の最小径部1a付近(
図1(a)の領域T)に、補強繊維を有する筒状体6を装着した後、プリプレグを巻き付けてもよい。この筒状体6は、補強繊維を筒状に編成したものであってもよい。この場合、補強繊維の筒状体6に対し、プリプレグ中の樹脂が浸透するので、得られるシャフト中において筒状体6もプリプレグ由来の繊維強化合成樹脂と一体となる。ただし、筒状体6は補強繊維を含んだものであればよく、補強繊維を筒状に編成したものに限定されない。この筒状体6を配材することにより、最小径部1a付近の強度及び剛性が高くなる。筒状体6の長さは50〜200mm特に75〜150mm程度が好ましい。補強繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、芳香族ポリアミド繊維、ボロン繊維などを用いることができる。
【0043】
図1(c)のシャフト4は、外径においても、最小径部4aよりもチップ側に向って拡径する逆テーパ形となっているが、
図7のシャフト4’のように、内孔は最小径部4aからチップ側に向って拡径する逆テーパ形となっているが、外径はバット側からチップ側に向って縮径する正テーパ形となっているシャフトに対しても、本発明を適用することができる。
【0044】
本発明では、
図8のシャフト4''のように、最小径部4aよりもチップ側が等径(ストレート形)であってもよい。なお、
図7,8のシャフト4’,4''のその他の構成はシャフト4と同一であり、同一符号は
図1(c)と同一部分を示している。
【0045】
図9〜11は
図8のようなシャフトを構成するのに好適なプリプレグの説明図である。
図9では、最内層のプリプレグ11aをバット側に向って細長い三角形状に長くし、シャフト先端の外形をストレート形とし易くしている。
図10では、最内層のプリプレグ11bとして、繊維の配向を斜めとしたものを用い、曲げ剛性の影響を少なくしている。
図11では、プリプレグ11の代わりに複数枚(
図11では2枚)のプリプレグ11c,11dを用いている。プリプレグ11dはプリプレグ11cよりもシャフト長手方向の長さが大きい。
【0046】
本発明では、
図5のように、チップパーツ3とメインパーツ2の端面間にパッキン7等の隙間埋め部材を介在させてもよい。このパッキン7等の隙間埋め部材を介在させると、シャフト成形途中で樹脂がパーツ3,2の当接面に侵入することが防止され、該パーツ3,2間に樹脂が残留することが防止される。このように樹脂残留が防止されることにより、次サイクルの成形工程においてもパーツ3,2同士をしっかりと連結することができる。
【0047】
上記説明ではチップ3,2に雄ねじ軸3bと雌ねじ穴2bとを設けているが、ねじを有しない単なる棒状の凸部と素穴状の凹穴とを設けてもよい。このような凸部と凹部とをパーツ2,3に設けたマンドレルにあっては、脱型時にパーツ2,3を直線状に反対方向に引くだけで脱型を行うことができ、脱型が容易である。この場合、マンドレルの姿勢を、メインパーツ2を上位とした鉛直姿勢とし、メインパーツ2を上方に引いて脱型することができる。この際、メインパーツ2を掴むためのチャック機構を係合溝2dに係合させる。硬化工程においてメインパーツ2が上位となるようにマンドレルを鉛直姿勢とした場合、チップパーツ3が脱落しないように、マンドレルを上下から挟むことが好ましい。
【0048】
上記
図2のプリプレグの積層例は本発明の一例であり、
図2以外の積層例としてもよい。例えば、
図2において、カーボン繊維方向がストレート方向のプリプレグ14,15間にカーボン繊維方向がフープ方向(周方向)のプリプレグを介在させてもよい。
【0049】
また、バイアスプリプレグ12,13を合計で4〜6枚としてもよい。通常の場合、繊維がストレート方向のプリプレグを3〜5枚、バイアス方向のプリプレグを2,4又は6枚、フープ方向のプリプレグを1〜3枚積層するのが好ましい。
【0050】
上記説明では、プリプレグ中にはカーボン繊維のみを含ませるものとしているが、ガラス繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、芳香族ポリアミド繊維、ボロン繊維など他の繊維をさらに配合してもよい。
【0051】
本発明は、ドライバー、スプーン等のウッド型ゴルフクラブや、ユーティリティ型ゴルフクラブ、アイアン型ゴルフクラブなどに適用することができるが、特にシャフトが長いウッド型、ユーティリティ型又はロングアイアンに適用するのに好適である。