【実施例1】
【0017】
図1(a)は実施例1に係る半導体装置100を例示する平面図であり、絶縁層14及び基板30は透視している。
図1(b)は
図1(a)の線A−Aに沿った断面を示す断面図である。
【0018】
図1(b)に示すように、半導体装置100は、半導体チップ10と基板30とを含む。半導体チップ10は基板30に実装されている。半導体チップ10は半導体基板12と、半導体基板12上に設けられた絶縁層14を含む。半導体基板12は例えばガリウム砒素(GaAs)、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)及びインジウムガリウム砒素(InGaAs)などにより形成された半導体層を含む。半導体基板12にはFET(Field
Effect Transistor:電界効果トランジスタ)12aが形成されている。
【0019】
図1(b)に示すように、絶縁層14内にビア配線11及び伝送線路15が設けられている。信号配線16及び基準層18が、マイクロストリップラインである伝送線路15を形成する。伝送線路15は、例えば数十GHzのような周波数を有する高周波信号を伝送する。信号配線16は、半導体基板12の上に設けられ、絶縁層14の厚さ方向に延びるビア配線11を介して、FET12aと電気的に接続されている。また信号配線16は、絶縁層14の面方向(
図1(b)の横方向)及び厚さ方向(縦方向)に延びる配線部16a、並びに電極面16bを含む。電極面16bは、配線部16aとは異なる層に設けられ、パッド13と対向する、配線部16aより幅広の導体である。基準層18は、信号配線16と対向し、
パッド13の領域13bと同じ平面内に設けられた板状の導体層である。基準層18は、基準電位である接地電位を有する。
【0020】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、絶縁層14の基板30と対向する面には、パッド13が設けられている。パッド13は領域13a(第1領域)、領域13b(第2領域)、及び下地層13cを備える。領域13aと領域13bとは隣接しており、一体の部材として形成されている。
図1(b)に楕円で示すように、パッド13は電極面16bと対向し、キャパシタCを形成する。領域13aの下面には下地層13cが設けられ、下地層13cには半田ボール26が電気的に接続されている。半田ボール26のうち少なくとも1つは入力端子Inとして機能し、少なくとも1つは出力端子Outとして機能する。入力端子In及び出力端子Outは高周波信号の入力及び出力に用いられる。高周波信号は信号配線16を介してFET12aに入力及び出力する。
【0021】
図1(b)に示すように、基板30の上面には端子32及び34、下面には接地端子36が設けられている。端子34はビア配線38を介して接地端子36と電気的に接続されている。端子32は不図示のビア配線を介して、下面に設けられた不図示の端子と電気的に接続されている。半導体チップ10の信号配線16は端子32と、基準層18は端子34と電気的に接続されている。半導体チップ10と基板30とでGND(グランド)は共通化されている。
【0022】
図2(a)はパッド13付近を拡大した断面図である。
図2(b)はパッド13付近を拡大した平面図である。
図2(c)はパッド13及び信号配線16を模式的に示す斜視図である。
図2(c)においては、パッド13及び電極面16bを長方形として示している。
【0023】
図2(a)に示すように、絶縁層14は、半導体基板12に近い方から、絶縁層14a〜14eを積層したものである。電極面16bは絶縁層14cに設けられている。配線部16aは絶縁層14bに設けられ、絶縁層14b及び14cを貫通して電極面16bに接続されている。基準層18、領域13a及び13bは絶縁層14eに設けられている。領域13b及び基準層18は絶縁層14eの下面から露出する。電極面16bとパッド13とは離間しており、その間に絶縁層14dが介在している。電極面16bとパッド13との距離Dは例えば2.5μm以上、5μm以下である。電極面16bとパッド13とは、直流的には分離されるが、容量性結合により接続される。すなわち、
図2(a)及び
図2(c)に示すように、信号配線16とパッド13とは、電極面16bを上部電極、パッド13を下部電極、絶縁層14dを誘電体層とするキャパシタCを形成する。キャパシタCは、入力端子In側及び出力端子Out側の両方に形成される。キャパシタCは高周波信号を通過させるハイパスフィルタとして機能する。
【0024】
図2(a)から
図2(c)に示すように、配線部16aと電極面16bとの接続箇所16cは、領域13aと領域13bとの境界13dと対向する。
図2(b)に示す電極面16bの長さL1は例えば200μm、電極面16bの幅W1は例えば120μmである。領域13aの直径R1は例えば120μm、領域13bの長さL2及び幅W2は例えば100μmである。このように、電極面16bは領域13a及び13bの全体を含むように、領域13a及び13bと対向している。
【0025】
基板30の下面の端子から入力された高周波信号は、入力端子Inに入力される。高周波信号は入力端子In及びキャパシタCを介して信号配線16に入力される。伝送線路15は高周波信号を伝送し、FET12aに出力する。FET12aはアンプとして機能し、高周波信号を増幅する。増幅された高周波信号は、伝送線路15を伝播し、出力端子Out側のキャパシタC及び出力端子Outを介して基板30に出力される。次に、半導体チップ10の特性の試験と、半導体装置100の使用時とにおいて、特性の差異が抑制されることを説明する。
【0026】
図3(a)はパッド13を用いた半導体チップ10の試験を例示する平面図である。半田ボール26は省略している。
図3(b)は試験を例示する模式図である。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、パッド13の領域13bにプローブ40を接続する。プローブ40から高周波信号を入力し、半導体チップ10の高周波特性の試験を行う。高周波信号は
図3(b)に示すキャパシタCを介して伝送線路15に入力され、伝送線路15を伝播する。
【0027】
図3(c)は半導体チップ10と基板30との接続を示す模式図である。
図3(c)においては半田ボール26を実線として示した。
図3(c)に示すように、領域13aが半田ボール26を介して、基板30の端子32と接続される。端子32から半田ボール26を介して高周波信号が入力される。高周波信号はキャパシタCを介して伝送線路15に入力され、伝送線路15を伝播する。特性の試験及び半導体装置100の使用の両方において、領域13a及び13bはキャパシタCの下部電極として機能する。高周波信号は領域13a及び13bの両方に伝搬する。領域13a及び13bが電極として等価であるため、試験時と使用時とにおいて特性の差異が生じ難い。
【0028】
特性の差異が生じる例として比較例を説明する。
図4(a)は比較例に係る半導体装置100Rを例示する断面図である。
図4(b)はパッド13付近を拡大した断面図である。
【0029】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、比較例における信号配線16は電極面16bを有していない。
図4(b)に示すように、信号配線16は面方向に延び、絶縁層14b及び14cを厚さ方向に貫通して絶縁層14dに達し、かつ絶縁層14dにおいて面方向に延びる。信号配線16はパッド13の領域13aと接触している。パッド13、信号配線16及び絶縁層14dはキャパシタを形成しない。高周波信号はパッド13及び信号配線16を介してFET12aに流れる。
【0030】
図5(a)は比較例における試験を例示する平面図である。
図5(b)は試験を例示する模式図である。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、パッド13の領域13bにプローブ40を接続し、高周波信号を入力する。高周波信号は領域13b及び13aを通じて伝送線路15に入力され、伝送線路15を伝播する。
【0031】
図5(c)は半導体チップ10と基板30との接続を示す模式図である。
図5(c)に示すように、領域13aが半田ボール26を介して端子32と接続される。端子32から半田ボール26を介して高周波信号が入力される。高周波信号は下地層13c及び領域13aを介して伝送線路15に入力され、伝送線路15を伝播する。
【0032】
比較例においては、試験における特性と、使用時の特性とに差異が生じる。
図5(b)に示すように、試験において、領域13a及び13bは高周波信号を流す配線として機能する。その一方、
図5(c)に示す使用時には、領域13aが高周波信号を流す配線として機能し、領域13bは一端が領域13aに接続され、他端が開放された容量性のスタブとして機能する。使用時には、試験と比較してスタブが付加された状態となるため、特性に変化が生じる。特にミリ波帯域の信号を利用する場合、特性の差異が大きくなる。例えば試験においても下地層13cにプローブ40を接続することで、特性の差異は抑制される。しかし、プローブ40との接触により、領域13a及び下地層13cが損傷し、半田ボール26の接続が不安定になる。従って、試験用の領域と使用時の領域とは分けることが好ましい。
【0033】
上記のように、実施例1においては、領域13a及び13bがキャパシタCの電極として等価であるため、試験における特性と使用時における特性とにおいて差異が生じ難い。また、領域13a及び下地層13cはプローブと接触しないため、損傷が抑制され、半田ボール26が安定して接続される。キャパシタCは信号の直流(Direct
Current:DC)成分及び低周波数のノイズをカットするフィルタとして機能する。またキャパシタCはサージを抑制する。従って、半導体装置100の特性が改善する。
【0034】
半導体装置100の周波数特性のシミュレーションを行った。シミュレーションの条件を以下に示す(寸法については
図2(b)参照)。
直径R1=120μm
長さL1=200μm
長さL2=80μm
幅W1=120μm
幅W2=80μm
絶縁層14の材料:ポリイミド(比誘電率:6)
【0035】
図6は半導体装置100の周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。横軸は周波数、縦軸は信号の通過量を表す。
図6に示すように、0〜10GHz程度の低周波数帯域においては信号が大きく抑圧されている。キャパシタCが低周波数の信号を抑圧するためである。20〜180GHzでは通過量が大きい。80GHzにおける通過量は−0.155dBである。高周波信号がキャパシタCを通じて半導体装置100に入力及び出力するためである。
【0036】
図3(a)に示すように接続箇所16cが境界13dと対向することが好ましい。接続箇所16cが境界13dと対向することで、伝送線路15から見て電極面16bの全体が等価な電極となる。電極面16bが等価な電極となることで、試験及び使用時において領域13a及び13bが互いに等価な電極として機能する。伝送線路15のレイアウトなどに応じて、接続箇所16cの位置を変え、例えば領域13aと対向させてもよいし、領域13bと対向させてもよい。
【0037】
キャパシタCの容量値は領域13a及び13bの面積、電極面16bの面積、距離D(
図1(b)参照)、及び絶縁層14dの誘電率などに応じて変化する。使用する信号の周波数などに応じて、所望の容量値が得られればよい。電極面16bはパッド13より小さくてもよいし大きくてもよく、またパッド13と同一の形状及び寸法を有してもよい。絶縁層14は例えばポリイミドなどの樹脂、及び窒化シリコンなどの絶縁体により形成してもよい。なお、ビア配線11及び38、パッド13の領域13a及び13b、信号配線16、基準層18、端子32及び34は例えば銅(Cu)及び金(Au)などの金属により形成されている。下地層13cは例えばニッケル(Ni)などの金属により形成されている。半田ボール26は例えば錫銀(Sn−Ag)などを主成分とする半田により形成されている。
【実施例2】
【0038】
実施例2は配線部16aと電極面16bとの接続箇所16cの位置を変更した例である。
図7(a)は実施例2に係る半導体装置200を例示する断面図である。
図7(b)はパッド13付近を拡大した断面図である。
図7(c)はパッド13及び信号配線16を模式的に示す斜視図である。
【0039】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、信号配線16は同一平面内を延びる。
図7(b)に示すように、配線部16a及び電極面16bの両方が絶縁層14cに設けられている。
図7(c)に示すように、配線部16aは、電極面16bの背面に回りこむように屈曲している。接続箇所16cは電極面16bの背面に位置し、領域13a及び13bの境界13dと対向する。
【0040】
実施例2によれば、実施例1と同様に、パッド13と電極面16bとがキャパシタCを形成する。このため特性の差異が抑制される。配線部16aと電極面16bとが同一平面内に位置するため、絶縁層14を薄くしても、配線部16a及び電極面16bを形成することが可能である。半導体装置200の薄型化が可能となる。
【0041】
図7(c)に示すように接続箇所16cが境界13dと対向することが好ましい。接続箇所16cが境界13dと対向することで、伝送線路15から見て電極面16bの全体が等価な電極となり、領域13a及び13bも互いに等価な電極として機能する。伝送線路15のレイアウトなどに応じて、接続箇所16cは境界13dと対向せず、例えば電極面16bの右端及び左端などに位置してもよい。
【実施例3】
【0042】
実施例3はキャパシタCが不要な信号を抑圧するフィルタとして機能する例である。
図8(a)は実施例3におけるパッド13付近を拡大した平面図である。
図8(a)に示すように、パッド13と基準層18とが、配線17により電気的に接続されている。断面図は省略するが、配線17はパッド13及び基準層18と同じく絶縁層14e(
図2(a)参照)に設けられている。
【0043】
配線17はインダクタ成分を有するため、キャパシタCと配線17とは基準層18に接続されたフィルタとして機能する。キャパシタCの容量値、及び配線17のインダクタンス値に応じて、信号配線16を流れる信号のうち所定の周波数の信号が基準層18に流れ込む。このフィルタを用いて、不要な信号を抑圧することができる。
【0044】
実施例3に係る半導体装置の周波数特性のシミュレーションを行った。シミュレーションの条件は実施例1に示したものと同じである。配線17の長さは約360μmであり、80GHzの信号の波長をλとすると、λ/4である。
図8(b)はシミュレーション結果を示す図である。
【0045】
図8(b)に示すように、160GHz付近において信号が大きく抑圧されている。80GHzの信号に対する2次高調波を抑圧することができる。80GHzにおける通過量は−0.154dBであり、実施例1のシミュレーションとほぼ同等である。実施例3によれば、所望の信号を通過させ、かつ不要な信号を抑圧する半導体装置を得ることができる。
【0046】
抑圧したい信号の周波数に応じて、配線17の長さは変更可能である。配線17を、パッド13と基準層18との間で引き回すことで、配線17の長さを稼ぐことができる。配線17は、電極面16bと基準層18との間を接続するとしてもよい。
【0047】
実施例1〜3において、電極面16bが設けられていなくとも、パッド13と信号配線16とが容量性結合により接続されていればよい。例えば、配線部16aとパッド13とが厚さ方向に重なることでキャパシタCが形成されてもよい。信号配線16は直線状の配線でもよいし、引き回された配線でもよい。基準層18は半導体基板12と対向するような板状の導体層であり、信号配線16より広い面積を有する。例えば基準層18は半導体基板12の下面全体又は大部分を覆ってもよい。伝送線路15は例えばコプレーナラインなどでもよい。
【0048】
半導体基板12は砒素系半導体以外に窒化物半導体を含んでもよい。窒化物半導体とは、Nを含む半導体であり、例えば窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウム(InN)、及び窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)などがある。
【0049】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。