特許第6149575号(P6149575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149575
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】車両の暖機制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 1/00 20060101AFI20170612BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170612BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   B60L1/00 L
   H02J7/00 P
   B60L11/18 C
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-156491(P2013-156491)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-27220(P2015-27220A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】蒲地 誠
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−005520(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/100878(WO,A1)
【文献】 特開2006−288150(JP,A)
【文献】 実公平07−041023(JP,Y2)
【文献】 特開2009−224256(JP,A)
【文献】 特表2014−506717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源でバッテリーを充電するシステムを具備した車両の暖機制御装置であって、
前記車両に搭載され、前記外部電源の電力供給を受けて発熱する暖機用のヒーターと、
前記外部電源の許容電流値を検出する電流検出手段と、
前記外部電源の出力電圧値を検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段で検出された前記許容電流値と前記電圧検出手段で検出された前記出力電圧値とに基づき、前記ヒーターの電気抵抗値を変更する抵抗変更手段とを備え、
前記抵抗変更手段が、前記ヒーターの電気抵抗値を、前記許容電流値に対する前記出力電圧値の比に応じた値に変更する
ことを特徴とする、車両の暖機制御装置。
【請求項2】
前記抵抗変更手段は、前記許容電流値に対する前記出力電圧値の比の値が、想定される前記外部電源の許容電流値及び出力電圧値の組み合わせの仕様に応じて予め設定された電気抵抗値と一致しない場合に、前記ヒーターに対する通電をオフとする
ことを特徴とする、請求項1記載の車両の暖機制御装置。
【請求項3】
前記車両と前記外部電源とを接続する充電ケーブルに内蔵された制御ボックス内に設けられ、前記許容電流値に対応するデューティ比のパイロット信号を出力するパイロット信号出力手段を備え、
前記電流検出手段が、前記パイロット信号出力手段から出力された前記パイロット信号の前記デューティ比に基づいて前記許容電流値を検出する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両の暖機制御装置。
【請求項4】
前記ヒーターが、電気抵抗の異なる複数の抵抗器及びスイッチを有する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の暖機制御装置。
【請求項5】
前記ヒーターが、電気抵抗を変更可能に形成された可変抵抗器を有する
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の暖機制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電源による充電が可能なバッテリーを備えた車両の暖機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、極低温環境下における車両の始動性を改善するための制御の一つとして、電気ヒーターによる暖機制御が知られている。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載したハイブリッド自動車では、エンジンブロックヒーターと呼ばれる電気ヒーターをエンジンに内蔵させ、エンジンブロックを直接的に暖めることによってエンジンの始動性を改善する手法が普及している。また、エンジンを搭載していない電気自動車においても、環境温度が低いほどバッテリー性能が低下する。そのため、バッテリーの周囲や内部に取り付けられたバッテリーヒーターを用いて、バッテリーを昇温させること(すなわちバッテリーの暖機)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、上記のようなハイブリッド自動車や電気自動車では、車両に内蔵される走行用バッテリーの電力を用いて電気ヒーターを作動させることができる。一方、例えば車両のオーナー宅で深夜電力を利用した走行用バッテリーの外部充電が実施されるような場合には、翌朝の車両始動時にも外部電力を利用して電気ヒーターを作動させることが可能である。このような制御により、走行用バッテリーに蓄えられた電力が温存され、車両の航続距離が延長されるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-224256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、外部充電の仕様は充電設備によって大きく相違する。例えば、国内の家庭用給電設備に接続された充電設備の仕様では、単相交流100[V]の給電方式と単相交流200[V]の給電方式とが混在している。また、充電設備から取り出すことのできる許容電流の大きさも、それぞれの給電方式や家庭用給電設備の契約電流値によって相違しうる。
【0006】
そのため、外部充電設備の仕様を考慮せずに外部電力を利用して電気ヒーターを作動させると、外部充電器側に作用する電気的負荷が過剰となり、家庭用給電設備のブレーカーが作動してしまう恐れがある。あるいは、外部充電器の給電能力に対して電気ヒーターの負荷が過小である場合には、車両が暖機するまでにかかる時間が長くなり、暖機効率や車両の始動性の低下を招く。特に、海外で販売される車両の場合には、販売先の地域毎に充電規格が相違する場合があるため、このような課題が顕著となり、効率的に外部電源の電力を活用することが難しい。
【0007】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、充電設備の仕様に依存することなく適切に暖機制御を実施することができるようにした車両の暖機制御装置を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)ここで開示する車両の暖機制御装置は、外部電源でバッテリーを充電するシステ
ムを具備した車両の暖機制御装置である。この暖機制御装置は、前記車両に搭載され、前
記外部電源の電力供給を受けて発熱する暖機用のヒーターを備える。また、前記外部電源
の許容電流値を検出する電流検出手段と、前記外部電源の出力電圧値を検出する電圧検出
手段とを備える。さらに、前記電流検出手段で検出された前記許容電流値と前記電圧検出
手段で検出された前記出力電圧値とに基づき、前記ヒーターの電気抵抗値を変更する抵抗
変更手段を備える。前記抵抗変更手段は、前記ヒーターの電気抵抗値を、前記許容電流値に対する前記出力電圧値の比に応じた値に変更する。
【0009】
これにより、前記ヒーターに通電される電流値が前記許容電流値に一致し、前記ヒーターでの暖機効率が向上する。
ここでいう「許容電流値」とは、充電システムを適正に動作させるための条件となる電流値であり、例えば前記外部電源の定格電流値に相当するものである。一般に、定格電流値は、所定の工業規格や国家規格,国際規格等に基づいて定められる。ただし、充電システムの保護性を向上させるべく、定格電流値とは異なる大きさの(定格電流よりも小さい)許容電流値を独自に設定してもよい。
また、ここでいう「出力電圧値」とは、例えば所定の工業規格や国家規格,国際規格等に基づいて定められるものであって、前記外部電源の定格電圧値に相当する。あるいは、前記外部電源から供給されている電圧の実測値を「出力電圧値」としてもよい。
【0010】
(2)前記抵抗変更手段は、前記許容電流値に対する前記出力電圧値の比の値が、想定される前記外部電源の許容電流値及び出力電圧値の組み合わせの仕様に応じて予め設定された電気抵抗値と一致しない場合に、前記ヒーターに対する通電をオフとすることが好ましい。
【0011】
(3)前記車両と前記外部電源とを接続する充電ケーブルに内蔵された制御ボックス内に設けられ、前記許容電流値(例えば、前記外部電源や前記充電ケーブルの定格電流値)に対応するデューティ比のパイロット信号を出力するパイロット信号出力手段を備えることが好ましい。この場合、前記電流検出手段が、前記パイロット信号出力手段から出力された前記パイロット信号の前記デューティ比に基づいて前記許容電流値を検出することが好ましい。
【0012】
(4)また、前記ヒーターが、電気抵抗の異なる複数の抵抗器及びスイッチを有することが好ましい。
(5)あるいは、前記ヒーターが、電気抵抗を変更可能に形成された可変抵抗器を有することが好ましい。なお、前記複数の抵抗器と前記可変抵抗器とを併用してもよい。
【発明の効果】
【0013】
開示の車両の暖機制御装置によれば、外部電源の出力電圧値及び許容電流値に基づいてヒーターの電気抵抗値を変更することで、どのような設備仕様に対しても適切にヒーターを作動させて暖機を行うことができ、車両の始動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る暖機制御装置が適用された車両の構成を例示する側面図である。
図2】暖機制御装置のブロック構成及び回路を模式的に示す回路図である。
図3】パイロットコントローラーの制御内容を例示するフローチャートである。
図4】車載コントローラーでの制御内容を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、実施形態としての車両の暖機制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0016】
[1.装置構成]
本実施形態の車両の暖機制御装置は、車両駆動用のバッテリー6を外部電源で充電するシステムを具備した車両の暖機制御装置であり、図1に示す車両10に搭載される。この車両10は、バッテリー6に蓄えられた電力でモーター20(車両駆動モーター)を駆動する電気自動車又はハイブリッド自動車である。モーター20は、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた電動発電機である。また、バッテリー6は、外部電源から供給される電力やモーター20での回生電力で充電される蓄電装置であり、モーター20の電源として車両10に搭載される。なお、外部電源とは、車両10の外部に設けられる充電設備であり、例えば家庭用充電設備や公共用充電設備等がこれに含まれる。
【0017】
車両10の側面における外表面には、外部電源でバッテリー6を充電する際に充電ケーブル11を接続するためのインレット15(電力引き込み口)が設けられる。また、インレット15とバッテリー6とを接続する充電回路上には、車載充電器8が設けられる。車載充電器8は、外部電源から供給される交流電流を直流電流に変換してバッテリー6を充電するための電力変換装置である。例えば、外部電源から入力された交流電流は、車載充電器8で直流電流に変換され、バッテリー6側に給電される。車載充電器8の動作は、車両10に搭載された車載コントローラー1で制御される。
【0018】
ここで、外部電源の仕様の種類として以下の三種類を想定する。なお、世界各国で使用されている家庭用コンセントの定格電圧は、単相交流電源で100〜240[V]であり、三相交流電源では200〜400[V]である。
【0019】
【表1】
【0020】
バッテリー6の近傍には、ヒーター7が設けられる。このヒーター7は、バッテリー6から供給される電流や外部電源から供給される電流を用いて、車両10の暖機用の熱を発生させる発熱装置である。ここでいう暖機用の熱とは、車両の冷態始動時にパワープラント(動力装置)を暖めるための熱全般を意味し、例えばバッテリー6や走行用のモーター20を昇温させるために用いられる。また、電動モーターの他にエンジンを備えたハイブリッド車両の場合には、エンジン本体やエンジンオイル,エンジン冷却水,その他の車載装置等を暖めるためにその熱が用いられる。本実施形態では、おもに外部電源によるバッテリー6の充電後に、バッテリー6の昇温のためにヒーター7が用いられるものとする。なお、バッテリー6を昇温させる暖機制御は、バッテリー6の充電後だけでなく、充電前や充電中に実施してもよい。
【0021】
また、図1に示すように、充電ケーブル11の一端には充電ガン12が設けられ、その先端には車両のインレット15に対して接続されるコネクター12aが設けられる。充電ケーブル11の他端には、家庭用充電設備や公共用充電設備のコンセント16に接続されるプラグ14が設けられる。このコンセント16は、図示しない電気配線を介して外部電源(例えば、商用電源や自家発電電源等)に接続される。
【0022】
充電ケーブル11のプラグ14から充電ガン12に至る電力供給路の中途には、図2に示すように、パイロットコントローラー9(パイロット信号出力手段)及びリレー19を内蔵したコントロールボックス13が介装される。リレー19は、パイロットコントローラー9によって断接制御される継電器であり、外部電源から供給される電流を車両10側に供給する接続状態と電流を遮断する切断状態とを切り換えるように機能する。また、パイロットコントローラー9は、リレー19の断接状態を制御するとともに、外部電源による給電状態や外部電源の許容電流(あるいは定格電流)の大きさといったさまざまな情報を車両10側に伝達するためのパイロット信号を出力するものである。なお、一般的なパイロットコントローラー9の機能は、車両10の仕向け先の国家規格や工業規格,国際規格等に準拠したものとされる。
【0023】
図1に示すように、車室内の任意の位置には、充電許可スイッチ17及び暖機ヒータースイッチ18が設けられる。充電許可スイッチ17は、外部電源でバッテリー6を充電する場合にオン状態とされ、充電時以外にはオフ状態とされるスイッチである。充電許可スイッチ17がオン状態であることは、外部充電を実施するための必要条件とされる。また、暖機ヒータースイッチ18は、車両10の暖機時にオン状態とされ、非暖機時にオフ状態とされるスイッチである。暖機ヒータースイッチ18がオン状態であることは、暖機制御を実施するための必要条件とされる。
【0024】
これらの充電許可スイッチ17及び暖機ヒータースイッチ18はそれぞれ、ユーザーのマニュアル操作によってオン/オフの断接状態を切り換えられるものとしてもよいし、所定の制御条件に応じて車載コントローラー1が自動的に切り換えるものとしてもよい。本実施形態では、マニュアル操作によるオン/オフの切り換えが可能であるとともに、所定条件の成立時に車載コントローラー1が自動的に断接状態を切り換えることのできる充電許可スイッチ17,暖機ヒータースイッチ18が適用されている。
【0025】
バッテリー6の内部には、バッテリー6に内蔵された電池セルの温度や電池ケース内部の温度をバッテリー温度Tとして検出する温度センサー24が設けられる。ここで検出されたバッテリー温度Tの情報は、車載コントローラー1に伝達される。
【0026】
[2.回路構成]
[2−1.ケーブル側]
図2に示すように、充電ケーブル11のプラグ14からコントロールボックス13までの間には、二本の電源線L1とアースに接続されるアース線L2とが配線される。一方、コントロールボックス13から充電ガン12のコネクター12aまでの間には、これらの電源線L1,アース線L2に加えて、信号線L3が配線される。この信号線L3は、車載コントローラー1とパイロットコントローラー9との間で情報をやり取りするためのライン(信号ライン)である。
【0027】
コントロールボックス13内のリレー19は、二本の電源線L1のそれぞれに介装される。パイロットコントローラー9は、リレー19よりもプラグ14側の電源線L1から分岐した受電ラインに接続されており、プラグ14が外部電源に接続されると同時に起動する。また、パイロットコントローラー9内には、リレー19よりもコネクター12a側の電源線L1の漏電を検出するための漏電検出回路D1が設けられる。
【0028】
パイロットコントローラー9は、外部電源が供給可能な電流(許容電流,定格電流)の大きさに応じたパイロット信号を、信号線L3を介して車両10側へ伝達する。このパイロット信号は、外部電源の許容電流の大きさに応じたデューティ比の方形波とされる。なお、外部電源の許容電流の大きさは、車両10の仕向け先となる地域に応じて異なる。パイロットコントローラー9には、車両10の仕向け地に応じて、外部電源の許容電流の目安となる大きさが予め記憶されている。パイロットコントローラー9から出力されたパイロット信号は、車両10側の車載コントローラー1に伝達される。これを受けた車載コントローラー1では、パイロット信号のデューティ比に基づいて外部電源の許容電流の大きさが把握される。
【0029】
信号線L3には、抵抗素子R1が介装されるとともに、抵抗素子R1よりもコネクター12a側から分岐した信号電圧検出ラインD2が設けられる。信号電圧検出ラインD2は、抵抗素子R1よりもコネクター12a側の電圧を検出し、これを信号電圧としてパイロットコントローラー9に伝達する。この信号電圧検出ラインD2で検出される信号電圧は、信号線L3に接続される車両10側の信号線L6の抵抗値に応じて変化する。パイロットコントローラー9はこの信号電圧をモニターすることにより、コネクター12aの接続状態や車両10側の各種スイッチの操作状態を識別する。
【0030】
[2−2.車両側]
コネクター12a及びインレット15を挟んだ車両10側にも、上記の電源線L1,アース線L2,信号線L3のそれぞれに対応する電源線L4,アース線L5,信号線L6が配線される。ヒーター7及び車載充電器8は、図2に示すように、電源線L4に対して並列に接続される。また、バッテリー6は、車載充電器8に対して充電線L7を介して接続される。車載充電器8からバッテリー6に充電される電力の大きさやヒーター7で熱に変換される電力の大きさは、車載コントローラー1によって制御される。
【0031】
ヒーター7の内部には、電気抵抗の異なる複数の抵抗器H1,H2が設けられるとともに、各抵抗器H1,H2の通電状態を制御するためのスイッチ7a,7bが設けられる。図2では、抵抗器H1,H2及びスイッチ7a,7bが二個ずつ設けられたヒーター7が例示されている。以下、これらの抵抗器H1,H2及びスイッチ7a,7bを区別して説明する際には、接頭辞(第一,第二)を付して説明する。これらの第一抵抗器H1,第二抵抗器H2は、各々が通電を受けて発熱する抵抗発熱体であり、電源線L4に対して互いに並列となるように介装される。
【0032】
これらの抵抗器H1,H2の電気抵抗の大きさは外部電源の仕様に応じて設定される。本実施形態における第一抵抗器H1の電気抵抗は15[Ω]であり、第二抵抗器H2の電気抵抗は30[Ω]である。また、第一抵抗器H1には第一スイッチ7aが直列に接続され、第二抵抗器H2には第二スイッチ7bが直列に接続される。したがって、外部電源から給電されるのは、第一抵抗器H1及び第二抵抗器H2のうち、オン状態のスイッチ7a,7bに対応するもののみとなる。第一スイッチ7a及び第二スイッチ7bの断接状態は、車載コントローラー1で制御される。
【0033】
信号線L6には、インレット15から車載コントローラー1側へと向かう電流のみを流す整流器が介装される。また、信号線L6のインレット15側とは反対側の端部は、車載コントローラー1に接続される。これにより、車載コントローラー1は、パイロットコントローラー9側から伝達される信号線L3のパイロット信号を検知し、これに基づいてヒーター7及び車載充電器8を制御する。
【0034】
また、アース線L5と信号線L6との間を梯子の横木状に接続するように、複数の抵抗回路21〜23が設けられる。これらの抵抗回路21〜23は、車載コントローラー1及びパイロットコントローラー9のそれぞれがコネクター12a及びインレット15の接続状態,充電許可スイッチ17の操作状態,暖機ヒータースイッチ18の操作状態等を検出するための回路である。図2では、二つの抵抗素子R2,R3が介装された電気回路を例示する。
【0035】
第一の抵抗回路21は、抵抗素子R3が介装されたものである。コネクター12a及びインレット15が接続されると、アース線L2,L5を介して信号線L3が閉回路となる。これにより、信号電圧検出ラインD2には、抵抗素子R1,R3の抵抗分圧値に応じた所定の電圧値が発生する。
【0036】
第二の抵抗回路22は、抵抗素子R2及び充電許可スイッチ17が介装されたものである。充電許可スイッチ17がオンのとき、信号電圧検出ラインD2には、抵抗素子R1,R2,R3の抵抗分圧値に応じた所定の電圧値が発生する。このような信号電圧検出ラインD2の信号電圧に基づき、パイロットコントローラー9は充電許可スイッチ17がオンであるか否かを判断する。この信号電圧は車載コントローラー1にも伝達されるため、車載コントローラー1も充電許可スイッチ17がオンであるか否かを判断可能である。
【0037】
第三の抵抗回路23は、第二の抵抗回路22の抵抗素子R2と充電許可スイッチ17との間から分岐して形成された回路上に暖機ヒータースイッチ18が介装されたものである。充電許可スイッチ17,暖機ヒータースイッチ18の何れかがオンのとき、信号電圧検出ラインD2には、抵抗素子R1,R2,R3の抵抗分圧値に応じた所定の電圧値が発生する。パイロットコントローラー9はこのような信号電圧検出ラインD2の信号電圧に基づいて充電許可スイッチ17,暖機ヒータースイッチ18の操作状態を判断する。
【0038】
なお、パイロットコントローラー9でのリレー19の制御に関しては、充電許可スイッチ17,暖機ヒータースイッチ18のそれぞれの操作状態を区別する必要はないが、例えば図示しない検出回路を利用してこれらの操作状態を区別する構成としてもよい。同様に、車載コントローラー1も図示しない検出回路で充電許可スイッチ17及び暖機ヒータースイッチ18の操作状態を個別にモニター可能である。
【0039】
[3.制御構成]
[3−1.概要]
上記の車載コントローラー1(暖機制御装置)及びパイロットコントローラー9は、例えばCPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processing Unit)等のマイクロプロセッサや、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory),補助記憶装置,インターフェイス装置等を集積した電子デバイスであり、本車両10の充電制御及び暖機制御を司るものである。
【0040】
車載コントローラー1は、車両10に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。車載ネットワーク上には、例えばモーター制御装置やエンジン制御装置,ブレーキ制御装置,変速機制御装置,空調制御装置,電装品制御装置といったさまざまな公知の電子制御装置が互いに通信可能に接続される。パイロットコントローラー9は、少なくとも信号線L3,L6を介して車載コントローラー1との間で情報伝達が可能である。なお、図示しない車載ネットワーク網の通信バスを車載コントローラー1とパイロットコントローラー9との間に設けてもよい。
【0041】
ここで、車載コントローラー1及びパイロットコントローラー9の機能を説明する。
パイロットコントローラー9は、リレー19の断接を切り換える機能と、外部電源側の許容電流の情報を車載コントローラー1に伝達する機能とを有する。リレー19を接続する条件としては、例えば車両10と充電ガン12とが接続され、かつ、充電許可スイッチ17がオン状態であることとする。このような所定の条件の成立時に、パイロットコントローラー9はリレー19を接続する。また、パイロットコントローラー9は、外部電源の許容電流の大きさに対応するデューティ比のパイロット信号を生成し、このパイロット信号を信号線L3に出力する。
【0042】
車載コントローラー1は、外部電源によるバッテリー6の充電制御を行う機能と、外部充電の完了後に暖機制御を行う機能とを持つ。外部電源による充電制御の開始条件は、例えば車両10が外部電源に接続され、外部電源から給電がなされていることと、充電許可スイッチ17がオン状態であることとする。また、車載コントローラー1は、外部電源による充電制御の完了後に車両10の暖機制御を実施する。なお、バッテリー6がすでに満充電の場合には、暖機制御のみを実施する。
【0043】
[3−2.制御ブロック]
上記の暖機制御を実施するためのするソフトウェア又はハードウェアとして、車載コントローラー1には、電流検出部2,電圧検出部3,条件判定部4及び抵抗変更部5が設けられる。これらの各要素での処理内容は、例えばアプリケーションプログラムとしてROM,RAM,補助記憶装置,リムーバルメディア等に記録される。また、プログラムの実行時には、プログラムの内容がROM,RAMのメモリ空間に展開され、マイクロプロセッサによって実行される。
【0044】
電流検出部2(電流検出手段)は、信号線L6を介してパイロットコントローラー9から伝達されるパイロット信号のデューティ比に基づき、外部電源の許容電流値I[A]を検出するものである。外部電源の許容電流値Iとは、外部電源から引き出すことのできる最大の電流値(充電システムを適正に動作させるための条件となる電流値)であり、外部電源の定格電流値に相当する。一般に、定格電流値は、所定の工業規格や国家規格,国際規格等に基づいて定められる。ただし、電源設備や充電ケーブル11の保護性を向上させるべく、定格電流値とは異なる大きさの(定格電流よりも小さい)許容電流値Iを設定してもよい。
【0045】
また、許容電流値Iの設定は、バッテリー温度Tに応じて補正するようにしてもよい。例えば、バッテリー温度Tが所定温度T以上(所定温度Tは後述する所定温度Tより小さい値とする)である場合には、許容電流値Iを低く設定するようにしてもよい。言い換えれば、バッテリー温度Tが高温であるほど許容電流値Iを小さく設定してもよい。このような設定により、暖機制御の開始条件は成立しているもののバッテリー6の暖機の必要性が比較的小さい場合に、ヒーター7の出力を低減できる。
【0046】
外部電源の仕様が上記の仕様A又は仕様Bである場合、ここで検出される許容電流値Iは8[A]となる。また、外部電源の仕様が上記の仕様Cである場合には、許容電流値Iが16[A]となる。ここで検出された許容電流値Iの情報は、抵抗変更部5に伝達される。
【0047】
電圧検出部3(電圧検出手段)は、外部電源の出力電圧値V[V]を検出するものである。ここでは、車両10の電源線L4に実際に供給されている交流電圧の実効値(公称電圧)が取得される。外部電源の仕様が上記の仕様Aの場合、ここで検出される出力電圧値Vは120[V]となる。また、外部電源の仕様が上記の仕様B又は仕様Cである場合には、出力電圧値Vが240[V]となる。ここで検出された出力電圧値Vの情報は、抵抗変更部5に伝達される。なお、実測された電圧値の代わりに、外部電源の定格電圧値を出力電圧値Vとして検出するような構成としてもよい。
【0048】
条件判定部4は、外部電源による暖機制御の開始条件,終了条件を判定するものである。ここでは、暖機制御を実施するか否かが判定される。なお、充電制御が実施されているときには、その充電制御が終了した後に、暖機制御を実施するか否かが判定される。また、暖機制御の実施中には、暖機制御を終了するか否かが判定される。
【0049】
暖機制御の開始条件は、例えば暖機ヒータースイッチ18がオン状態であること、上記の充電制御が終了したことや、バッテリー温度Tが所定温度T未満であること等である。本実施形態の条件判定部4では、暖機ヒータースイッチ18がオン状態であれば、暖機制御の開始条件が成立したと判定される。ただし、暖機ヒータースイッチ18がオン状態であっても、充電許可スイッチ17もオン状態であれば、充電制御が完了してから暖機制御が実施される。
【0050】
また、暖機制御の終了条件は、例えばバッテリー温度Tが所定温度T0以上になったことや、暖機制御の継続時間が所定時間以上になったこと、暖機ヒータースイッチ18がマニュアル操作でオフに切り換えられたこと等である。本実施形態の条件判定部4では、バッテリー温度Tが所定温度T0以上になった時点で、暖機制御の終了条件が成立したと判定される。ここで判定された結果は、抵抗変更部5に伝達される。
【0051】
抵抗変更部5(抵抗変更手段)は、暖機制御の開始条件が成立しているときに、外部電源からの給電仕様に応じてヒーター7の電気抵抗値R[Ω]を変更するものである。ここでは、電流検出部2で検出された許容電流値Iと電圧検出部3で検出された出力電圧値Vとに基づいて、ヒーター7の電気抵抗値Rが制御される。ここで制御される電気抵抗値Rは、許容電流値Iに対する出力電圧値Vの比の値に応じた大きさとされる。
【0052】
例えば、外部電源の仕様が上記の仕様A(電流値8[A],電圧値120[V])の場合には、ヒーター7の電気抵抗値Rが15[Ω]とされる。つまり、電流値8[A]に対する電圧値120[V]の比〔(120/8)=15〕の値に一致するように、ヒーター7の電気抵抗値Rが設定される。このとき、ヒーター7の第一スイッチ7aのみがオン状態に制御されて、第一抵抗器H1のみに通電される。
【0053】
一方、仕様B(電流値8[A],電圧値240[V])の場合には、電気抵抗値Rが30[Ω]とされる。つまり、第二スイッチ7bのみがオン状態に制御されて、第二抵抗器H2のみに通電される。また、仕様C(電流値16[A],電圧値240[V])の場合には、仕様Aと同じく15[Ω]とされる。つまり、ヒーター7の第一スイッチ7aのみがオン状態に制御されて、第一抵抗器H1のみに通電される。
【0054】
条件判定部4で暖機制御の終了条件が成立した場合には、抵抗変更部5が全てのスイッチ7a,7bをオフ状態に制御する。これにより、ヒーター7への通電が遮断され、暖機制御が終了する。
【0055】
[4.フローチャート]
[4−1.パイロットコントローラー]
図3は、パイロットコントローラー9で実施される制御の手順を示すフローチャートである。パイロットコントローラー9は、プラグ14が外部電源のコンセント16に接続されると通電され、リレー19の断接状態とパイロット信号の出力とを所定の周期(例えば、数[ms]周期)で繰り返し制御する。
【0056】
ステップA10では、充電ガン12のコネクター12aが車両10のインレット15に接続されているか否かが判定される。ここでは、信号電圧検出ラインD2から伝達される信号電圧の大きさに基づいて車両10との接続状態が判断される。コネクター12aがインレット15に接続されていればステップA20へ進み、接続されていなければステップA50へ進む。
【0057】
ステップA20では、外部電源の許容電流の大きさに対応するデューティ比を持つパイロット信号がパイロットコントローラー9で生成され、信号線L3に出力される。デューティ比は、例えば交流電流の実効値に対応する大きさとされる。このパイロット信号は、外部電源による給電中には常に信号線L3から車載コントローラー1側へと伝達される。
【0058】
続くステップA30では、車両10側の充電許可スイッチ17及び暖機ヒータースイッチ18がともにオフであるか否かが判定される。これらのスイッチ17,18の操作状態も、信号電圧検出ラインD2から伝達される信号電圧の大きさに基づいて判定される。ここで充電許可スイッチ17及び暖機ヒータースイッチ18がともにオフ状態である場合にはステップA50へ進み、少なくとも何れか一方がオン状態であればステップA40へ進む。
【0059】
ステップA40では、パイロットコントローラー9からリレー19へと制御信号が出力され、リレー19が接続状態に制御される。これにより、外部電源の電力が電源線L1,L4を介してヒーター7,車載充電器8側へと供給される。
【0060】
一方、ステップA50に進んだ場合には、ステップA30に進んだ場合とは異なる制御信号がパイロットコントローラー9からリレー19へと出力され、リレー19が切断状態に制御される。これにより、コンセント16側からの電力供給が遮断される。したがって、例えば外部電源からの給電中にコネクター12aが外れた場合や、充電許可スイッチ17,暖機ヒータースイッチ18がともにオフ操作されたような場合には、リレー19よりもコネクター12a側への給電が停止する。
【0061】
[4−2.車載コントローラー]
図4は、車載コントローラー1で実施される制御の手順を示すフローチャートである。車載コントローラー1は、図示しない車載バッテリーからの電力供給を受けて通電し、ヒーター7の動作や車載充電器8の動作を所定の周期(例えば、数[ms]周期)で繰り返し制御する。
【0062】
ステップB10では、パイロットコントローラー9から出力されたパイロット信号が車載コントローラー1に入力されているか否かが判定される。ここで、信号線L6を介してパイロット信号が入力されている場合には、ステップB20に進む。一方、パイロット信号が入力されていない場合には、この演算周期での制御が終了し、次回の演算周期で再びステップB10から、制御が実施される。
【0063】
ステップB20では、電流検出部2において、パイロット信号のデューティ比に基づいて外部電源の許容電流値Iが検出されるとともに、電圧検出部3において、電源線L4の電圧値が出力電圧値Vとして検出される。また、続くステップB30では、温度センサー24で検出されたバッテリー温度Tの情報が車載コントローラー1に入力される。ここで取得されたバッテリー温度Tの情報は、暖機制御の終了条件を判定するために用いられる。また、電流検出部2において、バッテリー温度Tに基づいて許容電流値Iを補正してもよい。
【0064】
ステップB40では、充電許可スイッチ17がオン状態であるか否かが判定される。ここで、充電許可スイッチ17がオン状態である場合にはステップB50に進み、外部電源によるバッテリー6の充電が実施される。一方、充電許可スイッチ17がオフ状態である場合には、充電制御に係るステップB50〜B70をスキップして、ステップB80に進む。
【0065】
ステップB60では、バッテリー6が満充電であるか否かが判定される。ここでは、充電制御の終了条件が判定される。バッテリー6が満充電でない場合には、この演算周期での制御が終了し、次回の演算周期で制御が再びステップB10から実施される。この場合、バッテリー6が満充電になるまで外部電源による充電制御が継続される。一方、ステップB60でバッテリー6が満充電であると判定された場合には、ステップB70に進む。
【0066】
ステップB70では、充電許可スイッチ17が車載コントローラー1により自動的にオフ状態に制御される。また、続くステップB80では、暖機制御の開始条件が成立するか否かが判定される。例えば、暖機ヒータースイッチ18がオン状態であるか否かが判定される。ここで暖機ヒータースイッチ18がオン状態の場合にはステップB90に進む。一方、暖機ヒータースイッチ18がオフ状態である場合には、本フローが終了する。この場合、充電許可スイッチ17及び暖機ヒータースイッチ18がともにオフ状態となっているため、パイロットコントローラー9によってリレー19が切断状態に制御される。
【0067】
ステップB90では、抵抗変更部5において、外部電源の出力電圧値Vと許容電流値Iとに基づいて電気抵抗値Rが算出される。ここでは、許容電流値Iに対する出力電圧値Vの比の値(V/I)が電気抵抗値Rとして算出される。例えば、外部電源の出力電圧値V,許容電流値Iの組み合わせが120[V],8[A](仕様A)であるとき、ここで算出される電気抵抗値Rは15[Ω]となる。また、外部電源の仕様が240[V],8[A](仕様B)であるときの電気抵抗値Rは30[Ω]となり、240[V],16[A](仕様C)であるときの電気抵抗値Rは15[Ω]となる。
【0068】
ステップB100では、前ステップで算出された電気抵抗値Rが15[Ω]であるか否かが判定される。例えば、外部電源の仕様が上記の仕様A又は仕様Cである場合には電気抵抗値Rが15[Ω]となり、この条件が成立するため、ステップB120に進む。ステップB120では、ヒーター7の第一スイッチ7aがオン状態に制御されるとともに、ヒーター7の第二スイッチ7bがオフ状態に制御される。つまり、ヒーター7の抵抗発熱体の抵抗値が許容電流値Iに対する出力電圧値Vの比の値(V/I)に対応するように、ヒーター7の通電状態が制御される。これにより、第一抵抗器H1のみに通電されることになる。
【0069】
一方、ステップB100での判定条件が不成立の場合にはステップB110に進む。ステップB110では、電気抵抗値Rが30[Ω]であるか否かが判定される。例えば、外部電源の仕様が上記の仕様Bである場合には電気抵抗値Rが30[Ω]となり、この条件が成立するため、ステップB130に進む。ステップB130では、第一スイッチ7aがオフ状態に制御されるとともに、第二スイッチ7bがオン状態に制御される。つまりこの場合も、ヒーター7の抵抗発熱体の抵抗値が許容電流値Iに対する出力電圧値Vの比に対応するように、ヒーター7の通電状態が制御され、第二抵抗器H2のみに通電される。
【0070】
ステップB100,B110の条件が不成立の場合にはステップB140に進み、両方のスイッチ7a,7bがオフ状態に制御されて、暖機制御が不実施とされる。また、ステップB120,B130,B140の各々に続いて実施されるステップB150では、暖機制御の終了条件が成立したか否かが判定される。例えば、バッテリー温度Tが所定温度T0以上になったか否かが判定される。この条件が成立するまでは、次回の演算周期で制御が再びステップB10から実施され、暖機制御が継続される。
【0071】
また、暖機制御の終了条件が成立するとステップB160に進み、暖機ヒータースイッチ18が車載コントローラー1により自動的にオフ状態に制御される。これにより、パイロットコントローラー9ではリレー19が切断され、外部電源からの給電が遮断されて、暖機制御が完了する。
【0072】
[5.作用,効果]
(1)上記の車載コントローラー1では、電流検出部2で検出された外部電源の許容電流値Iと電圧検出部3で検出された外部電源の出力電圧値Vとに基づいて、ヒーター7の電気抵抗値Rが変更される。例えば、外部電源の電流,電圧の仕様が上記の仕様Aである場合には、ヒーター7の電気抵抗値Rが15[Ω]に設定される。一方、仕様Bの外部電源が接続された場合には、自動的にヒーター7の電気抵抗値Rが30[Ω]に変更される。このように、あらゆる外部電源の仕様に対して適切な電気抵抗値Rを設定することができる。したがって、充電設備の仕様に依存することなく適切に暖機制御を実施することができる。
【0073】
(2)上記の車載コントローラー1では、ヒーター7の電気抵抗値Rが、許容電流値Iに対する出力電圧値Vの比(V/I)に応じた値に設定される。このような制御構成により、ヒーター7に実際に通電される電流値を許容電流値Iに一致させることができ、外部電源の給電能力を最大に活用して効率的に暖機を行うことができる。また、許容電流値Iを超えるような過大な電流が外部電源から引き出される(過大な電流がヒーター7に流れる)ことがないため、外部電源のブレーカー(遮断器)を作動させる心配がなく、適切にヒーター7を作動させ続けることができる。
【0074】
(3)上記の車載コントローラー1では、パイロットコントローラー9から出力されるパイロット信号のデューティ比に基づいて、外部電源の許容電流値Iが検出される。一方、既存の充電システムでは、外部電源によるバッテリー6の充電時に、外部電源の定格電流の情報をパイロット信号のデューティ比として車載コントローラー1に送信するものが開発されている。このような充電制御用のパイロット信号を利用して暖機制御を実施することで、既存の充電システムや通信規格に変更を加えることなく、適切にヒーター7を作動させることができる。
【0075】
(4)上記のヒーター7には複数の抵抗器H1,H2が設けられるとともに、それぞれの抵抗器H1,H2への通電状態を制御するためのスイッチ7a,7bが設けられ、スイッチ7a,7bの断接状態が上記の車載コントローラー1で制御される。このような簡素な装置構成により、充電システムのコストを低減させることができるとともに、適切に暖機を実施することができる。また、車両10の仕向け先に応じて抵抗器H1,H2を変更する場合に、抵抗器H1,H2の交換が容易であるというメリットがある。
【0076】
(5)上記の車載コントローラー1では、図4に示すように、充電許可スイッチ17がオン操作されている場合には、暖機制御よりも充電制御が優先的に実施される。また、暖機制御はバッテリー6が満充電状態となってから実施される。したがって、確実にバッテリー6を充電させることができる。
【0077】
[6.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上述の実施形態では、複数の抵抗器H1,H2及び複数のスイッチ7a,7bを内蔵したヒーター7を例示したが、代わりに電子制御式の可変抵抗器(ディジタルポテンショメーター)を用いてヒーター7の電気抵抗値Rを変更してもよい。すなわち、可変抵抗器の電気抵抗値Rを、外部電源の出力電圧値Vと許容電流値Iとに基づいて変更してもよい。
【0078】
この場合、可変抵抗器の電気抵抗値Rは、上述の実施形態と同様に、許容電流値Iに対する出力電圧値Vの比(V/I)に応じた大きさとすることが考えられる。このような制御構成により、上述の実施形態と同様の作用,効果を奏するものとなる。また、単一の可変抵抗器で多様な外部電源の仕様に対応することができ、コストをさらに削減することができる。
【0079】
さらに、可変抵抗器を用いることで、上記の仕様A〜仕様Cとは僅かに異なる仕様の外部電源に対しても、適切な電気抵抗値Rを設定することが可能となる。例えば、外部電源がやや劣化しており、出力電圧が定格電圧よりも若干低い場合には、それに応じてヒーター7の電気抵抗値Rが小さく設定される。つまり、ヒーター7での発熱量が減少し、外部電源に対するヒーター7の電気的負荷が軽減される。したがって、外部電源から過大な電流が引き出されること(ブレーカーの作動)を防止することができ、適切にヒーター7を作動させることができる。
【0080】
また、上述の実施形態では、バッテリー6を昇温させるためのヒーター7を装備した電気自動車又はハイブリッド自動車を例示したが、ヒーター7で発生する熱の供給先はバッテリー6のみに限定されない。例えば、ハイブリッド自動車に搭載されるエンジン本体やエンジンオイル,エンジン冷却水,その他の車載装置等を暖めるためにヒーター7の熱を利用してもよいし、あるいは走行用のモーター20を暖めるためにヒーター7の熱を利用してもよい。少なくとも、車両10の冷態始動時にパワープラント(動力装置)を暖めることで、車両10の始動性を向上させることができる。
【0081】
また、上述の実施形態では、暖機制御よりも充電制御が優先的に実施されるフローチャートを例示したが、暖機制御を充電制御よりも優先してもよいし、あるいはこれらを同時に実施してもよい。少なくとも、暖機制御の実施時にヒーター7の電気抵抗値Rを変更することで、上述の実施形態と同様の作用,効果を奏するものとなる。
【符号の説明】
【0082】
1 車載コントローラー
2 電流検出部(電流検出手段)
3 電圧検出部(電圧検出手段)
4 条件判定部
5 抵抗変更部(抵抗変更手段)
6 バッテリー
7 ヒーター
7a 第一スイッチ(複数のスイッチ)
7b 第二スイッチ(複数のスイッチ)
9 パイロットコントローラー(パイロット信号出力手段)
13 コントロールボックス
H1 第一抵抗器(複数の抵抗器)
H2 第二抵抗器(複数の抵抗器)
I 許容電流値
V 出力電圧値
R 電気抵抗値
図1
図2
図3
図4