(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被測定流体が流れる配管内に超音波パルスを出射し、前記被測定流体に含まれる超音波反射体からの反射信号に基づいて流速プロファイルを作成する超音波流量計であって、
前記反射信号の受信強度に基づいて反射信号強度プロファイルを作成する反射信号強度プロファイル作成部と、
前記反射信号強度プロファイルに基づいて界面位置を特定する界面判定部と、
前記流速プロファイルと、前記界面位置とに基づいて前記被測定流体の流量を算出する流量算出部とを備え、
前記流量算出部は、前記配管内を上下に分け、さらに半円弧状の複数の領域に分割し、それぞれの領域の界面位置以下の面積と、前記流速プロファイルから得られる流速とを乗じて得られる領域毎の流量を合計することで前記被測定流体の流量を算出することを特徴とする超音波流量計。
前記界面判定部は、前記反射信号強度プロファイルにおける反射信号強度の所定基準以上の極大位置を界面位置と特定することを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計。
【背景技術】
【0002】
超音波流量計は種々の方式が提案されているが、代表的な方式として、伝播時間差法が知られている。伝播時間差法を用いた流量測定は、
図14(a)に示すように、被測定流体Fが流れる配管500の上下流に、超音波信号を送受信できる超音波センサ510a、510bを設置し、交互に超音波信号を送受信して、それぞれの伝播時間を測定する。
【0003】
被測定流体Fの流れがないときは、上流側超音波センサ510aから下流側超音波センサ510bに超音波信号が伝播する時間と下流側超音波センサ510bから上流側超音波センサ510aに超音波信号が伝播する時間とは等しくなるが、流れがある場合には、下流側超音波センサ510bから上流側超音波センサ510aよりも上流側超音波センサ510aから下流側超音波センサ510bの方が速く伝播する。伝播時間の差は流れの速さに比例するため、この差に基づいて被測定流体Fの流速を測定することができる。得られた流速は、超音波信号の経路における流速の平均値となる。この流速に配管500の断面積と補正係数とを乗じることで流量が算出される。
【0004】
また、伝播時間差法以外の方式として、配管500内の被測定流体F中に含まれる気泡やパーティクルが被測定流体Fと同じ速度で移動すると仮定し、その移動速度を超音波信号で測定することで配管500の径に沿った流速分布(流速プロファイル)を作成して、被測定流体Fの流量を算出するパルスドップラー法、反射相関法も知られている。
【0005】
パルスドップラー法は、
図14(b)に示すように、超音波センサ510cから特定の周波数の超音波パルス信号を配管500内に斜めに入射し、被測定流体F中に含まれる気泡やパーティクル等の超音波反射体によって反射するエコー波を超音波センサ510cで受信する。
【0006】
超音波反射体によって反射するエコー波は、ドップラー効果により、超音波反射体の移動速度に応じて周波数が変化するため、この変化量を検出することで、配管500内を流れる被測定流体Fの速度を求めることができる。
【0007】
超音波反射体による反射は、配管500内の各所で起こるため、超音波信号を出射してからエコー波が検出されるまでの時間に基づいて径方向についての被測定流体Fの流速プロファイルを求めることができる。
図15は、流速プロファイルの一例を示している。この流速プロファイルを配管500の断面に沿って積分することで、被測定流体Fの流量を算出することができる。
【0008】
反射相関法も、パルスドップラー法と同様に
図14(b)に示す構成とし、超音波センサ510cから配管500内に向けて超音波パルス信号を2回出力して、流体内を流体とともに移動する超音波反射体からのエコー波を受信する。
【0009】
そして、受信した2個のエコー波について一方を参照波、他方を探索波として相関演算を行なう。その結果、相関係数の高い波形を同一の超音波反射体からのエコー波であるとみなし、その伝搬時間と時間差とに基づいて超音波反射体の位置と移動速度とを算出することで、流速プロファイルを求め、流体の流量を算出する。
【0010】
例えば、
図16に示すような、同一の超音波反射体からのエコー波とみなされた1回目の超音波パルス信号に対するエコー波T1と2回目の超音波パルス信号に対するエコー波T2とにおいて、時間差ΔTは、1回目の超音波パルス信号と2回目の超音波パルス信号との間に進んだ超音波反射体の距離、すなわち、被測定流体Fの速度に対応し、伝搬時間Tdは、超音波反射体の超音波センサ510cからの距離、すなわち、超音波反射体の配管500内の径方向の位置に対応する。超音波反射体による反射は、配管500内の各所で起こるため、配管内の径方向について、流速プロファイルを得ることができる。この流速プロファイルを配管500の断面に沿って積分することで流体の流量が算出される。
【0011】
一般に、超音波流量計では、被測定流体Fの流速を測定し配管500の断面積を乗じることにより流量を算出するために、配管500内が被測定流体Fで満たされている満水状態であることが測定の条件となっている。
【0012】
これに対して、非満水状態でも流量を測定可能な超音波流量計が特許文献1、特許文献2で提案されている。特許文献1に記載されている超音波流量計は、
図17(a)に示すように、配管500を流れる非満水状態の被測定流体Fに対して、配管500の上方に超音波センサ510dと超音波センサ510eとを軸方向に間隔をおいて設置し、超音波センサ510dから出射した超音波信号が界面で反射して超音波センサ510eに入射するように構成されている。
【0013】
そして、超音波センサ510eで検出された超音波信号のドップラー効果による周波数変化から被測定流体Fの流速を算出する。また、超音波センサ510dから超音波センサ510eまでの超音波信号の伝播時間から界面の高さを算出し、被測定流体Fの断面積を求める。算出された流速と断面積とを乗じることにより、非満水状態の被測定流体Fの流量が得られることが記載されている。
【0014】
特許文献2に記載されている超音波流量計は、
図17(b)に示すように、配管500を流れる非満水状態の被測定流体Fに対して、配管500の下方に超音波センサ510fと超音波センサ510gとを軸方向に間隔をおいて設置し、超音波センサ510fから出射してから界面で反射して超音波センサ510gに入射するまでの時間T1と、超音波センサ510gから出射してから界面で反射して超音波センサ510fに入射するまでの時間T2とを計測する。
【0015】
そして、得られた時間T1、T2に基づいて、流速と界面高さを算出し、算出された流速と界面高さに基づく流体断面積とを乗じることにより、非満水状態の被測定流体Fの流量が得られることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
一般に、流速プロファイルを用いた流量算出は、配管500の外周側領域の流速から内周側領域の流速までについて、それぞれの領域面積の配管断面積に占める割合を評価して流量を算出できるため、単に平均流速に断面積を乗じて流量を算出する場合よりも精度の高い流量測定を行なうことができる。
【0018】
特許文献1に記載された発明は、界面で反射する超音波信号のドップラー効果による周波数変化から被測定流体Fの流速を算出しているが、この際に得られる流速は界面部分の流速であり、被測定流体Fの流速分布を考慮していないため、精度が十分とはいえない。
【0019】
また、特許文献2に記載された発明は、伝播時間差法を利用して被測定流体Fの流速を算出しているが、この際に得られる流速は超音波信号の経路の平均流速であり、被測定流体Fの流速分布を考慮していないため、精度が十分とはいえない。
【0020】
そこで、本発明は、被測定流体が配管内において非満水状態であっても精度の高い流量測定が可能な超音波流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明の超音波流量計は、被測定流体が流れる配管内に超音波パルスを出射し、前記被測定流体に含まれる超音波反射体からの反射信号に基づいて流速プロファイルを作成する超音波流量計であって、前記反射信号の受信強度に基づいて反射信号強度プロファイルを作成する反射信号強度プロファイル作成部と、前記反射信号強度プロファイルに基づいて界面位置を特定する界面判定部と、前記流速プロファイルと、前記界面位置とに基づいて前記被測定流体の流量を算出する流量算出部とを備えたことを特徴とする。
ここで、前記界面判定部は、前記反射信号強度プロファイルにおける反射信号強度の所定基準以上の極大位置を界面位置と特定することができる。
また、前記流量算出部は、前記配管内を上下に分け、さらに半円弧状の複数の領域に分割し、それぞれの領域の界面位置以下の面積と、前記流速プロファイルから得られる流速とを乗じて得られる領域毎の流量を合計することで前記被測定流体の流量を算出することができる。
また、伝播時間差法による流量測定を行なう伝播時間差法測定部をさらに備え、前記流量算出部は、伝播時間差法での測定結果が所定の基準を満たさない場合に、前記流速プロファイルと前記界面位置とに基づいた流量算出を行なうようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被測定流体が配管内において非満水状態であっても精度の高い流量測定が可能な超音波流量計が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施例に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施例の超音波流量計における流量測定の手順について説明するフローチャートである。
【
図3】被測定流体が配管内で満水状態のときの流速プロファイルと反射信号強度プロファイルとを示す図である。
【
図4】被測定流体が配管内で非満水状態のときの流速プロファイルと反射信号強度プロファイルとを示す図である。
【
図5】流量算出部が行なう流量算出について詳細に説明するフローチャートである。
【
図6】流量算出部が行なう流量算出について詳細に説明するフローチャートである。
【
図7】満水状態の場合の積分について説明する図である。
【
図8】非満水状態で界面が中心以下の場合の積分について説明する図である。
【
図9】非満水状態で界面が中心以下の場合の積分例について説明する図である。
【
図10】非満水状態で界面が中心より高い場合の積分について説明する図である。
【
図11】非満水状態で界面が中心より高い場合の積分例について説明する図である。
【
図12】本発明の第2実施例に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。
【
図13】第2実施例の超音波流量計における流量測定の手順について説明するフローチャートである。
【
図14】従来の超音波流量計の構成を示す図である。
【
図16】反射相関法におけるエコー波を説明する図である。
【
図17】非満水状態で測定可能な従来の超音波流量計の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態の第1実施例に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。本例において、超音波流量計は配管500内を流れる被測定流体Fの流量を測定する。被測定流体Fは、配管500内をすべて満たす満水状態であってもよいし、上部に空間を有する非満水状態であってもよい。
【0025】
本図に示すように、超音波流量計は、超音波センサ210と測定制御部100とを備えている。本発明の第1実施例に係る超音波流量計は、パルスドップラー法あるいは反射相関法のいずれかの方式を用いるものとする。
【0026】
超音波センサ210は、超音波信号の送受信を行なうデバイスであり、配管500の外側下部に超音波信号が配管軸方向斜めに出射されるように取り付けられる。すなわち、本実施例の超音波流量計は、被測定流体Fに非接触の状態で流量測定を行なうことができる。
【0027】
測定制御部100は、出力制御部110、受信制御部120、流速プロファイル作成部130、反射信号強度プロファイル作成部140、界面判定部150、流量算出部160、測定結果出力部170を備えている。
【0028】
出力制御部110は、超音波信号の出力制御を行ない、受信制御部120は、超音波信号の受信制御を行なう。受信制御部120が受信対象とする超音波信号は、出力制御部110が出力した超音波信号に対する被測定流体Fに含まれる超音波反射体からのエコー波である。
【0029】
流速プロファイル作成部130は、受信制御部120で受信した超音波信号に基づいて配管500の径(上下)方向についての流速プロファイルを作成する。反射信号強度プロファイル作成部140は、受信制御部120で受信した超音波信号に基づいて配管500の径(上下)方向についての反射信号強度プロファイルを作成する。
【0030】
ここで、反射信号強度プロファイルは、超音波反射体からのエコー波の強度を測定し、エコー波の検出時間に基づいて配管500の径(上下)方向についての反射信号強度分布を表わしたものである。なお、第1実施例に係る超音波流量計は、パルスドップラー法、反射相関法のいずれかの方式としたが、流速プロファイルおよび反射信号強度プロファイルを作成することができれば他の方式を用いてもよい。
【0031】
界面判定部150は、反射信号強度プロファイルに基づいて界面の有無を判定し、界面がある場合にはさらに界面の高さSを特定する。これは、気体と接する界面において反射信号強度が強くなることを利用したものである。流量算出部160は、流速プロファイルと界面の有無、界面がある場合の界面の高さSに基づいて被測定流体Fの流量を算出する。測定結果出力部170は、算出された被測定流体Fの流量を測定結果として出力する。
【0032】
次に、第1実施例の超音波流量計における流量測定の手順について
図2のフローチャートを参照して説明する。まず、測定に際しての各種設定を行なう(S101)。各種設定では、配管500の内径、超音波センサ210の取付角度、被測定流体Fの密度・粘度、音速、その他パラメータ等の設定を行なう。
【0033】
各種設定を行なうと、パルスドップラー法あるいは反射相関法のいずれかの方式で測定を実行する(S102)。いずれの方式も、プロファイルを作成できるように、繰り返し超音波信号を出力して測定を行なう。
【0034】
パルスドップラー法の場合は、特定の周波数の超音波パルス信号を配管500内に出力し、超音波反射体によって反射するエコー波を超音波センサ210で受信する。このときの周波数の変化と受信強度とを検出時間毎に測定する。反射相関法の場合は、超音波パルス信号を2回出力して、超音波反射体からのエコー波を受信する。そして、相関係数の高い波形を同一の超音波反射体からのエコー波であるとみなし、その伝搬時間と時間差とに基づいて超音波反射体の位置と移動速度とを算出するとともに、受信強度を測定する。
【0035】
測定を繰り返して得られた結果を基に、流速プロファイル作成部130が流速プロファイルを作成し(S103)、反射信号強度プロファイル作成部140が反射信号強度プロファイルを作成する(S104)。
【0036】
ついで、界面判定部150が、反射信号強度プロファイルに基づいて界面の有無を判定し、界面がある場合は界面の高さSを特定する(S105)。ここで、被測定流体Fが配管500内で満水状態であれば、一般に、
図3に示すような流速プロファイルと反射信号強度プロファイルとが得られる。
【0037】
これに対して、
図4(a)に示すように被測定流体Fが非満水状態で、界面が存在する場合には、
図4(b)に示すように、反射信号強度プロファイルが、界面に対応する位置で数倍程度に極めて大きくなる。これは、界面にて上部を満たす気体からの反射信号が多く得られるためである。
【0038】
このため、界面判定部150は、反射信号強度プロファイルに所定基準以上の極大部分があるかどうかで界面の有無を判定し、極大部分の位置で界面の高さSを特定することができる。
【0039】
界面の判定を行なうと、流量算出部160が流速プロファイルを被測定流体Fの断面の範囲で積分して流量を算出し(S106)、算出された流量を測定結果出力部170が測定結果として出力する(S107)。
【0040】
ここで、流量算出部160が行なう流量算出について
図5および
図6のフローチャートを参照して詳細に説明する。ただし、以下に説明する流量算出法は例示であり、反射信号強度プロファイルから得られた界面高さと流速プロファイルとを用いた流量算出であれば、他の方法を用いてもよい。
【0041】
まず、界面判定部150の判定結果に基づいて、被測定流体Fが満水状態かどうかを判定する(S201)。
【0042】
ここで、満水状態の場合の積分について
図7を参照して説明する。本図では、流速プロファイルを配管下部が下に位置し、配管上部が上に位置するように表示し、高さ方向に複数の区分に分割している。この分割幅を積分幅とする。各区分は、その区分の平均流速を算出する等により流速と対応付けることができる。積分幅を細かくするほど、流量算出の精度は向上する。
【0043】
例えば、
図7(a)に示すように最も下部の区分に着目した場合、この区分の流速は、下半分の最外周領域に適用することができる。このため、下半分の最外周領域の面積を求め、対応する区分の流速を乗じれば、下半分の最外周領域の流量が算出される。最外周領域の面積は、配管500の半径が既知であるため、設定した積分幅を用いて容易に求めることができる。この演算を
図7(b)に示すように下半分および上半分の各区分について行ない、各区分に対応する領域の流量を合計することで、満水状態の被測定流体Fの流量が算出される。
【0044】
そこで、満水状態の場合は(S201:Yes)、積分幅を設定し(S202)、下半分について各領域の面積を算出して対応する流量を乗じる積分を行なう(S203)。上半分についても同様に各領域の面積を算出して対応する区分の流量を乗じる積分を行なう(S204)。そして、各領域の流量を合計する(S205)。
【0045】
図5のフローチャートの説明に戻って、非満水状態の場合は(S201:No)、界面が中心以下かどうかで場合分けを行なう(S206)。ここで、界面が中心以下の場合の積分について
図8を参照して説明する。例えば、
図8(a)に示すように界面高さSが特定された場合は、
図8(b)に示すように、積分幅の厚さを有する半円弧状の各領域について界面までの面積を算出し、対応する区分の流速を乗じて足し合わせればよい。
【0046】
そこで、界面が中心以下の場合は(S206:Yes)、積分幅を設定し(S207)、下半分で対象領域を設定する(S208)。
図9(a)は、最外周部分を対象領域とした場合の例である。
【0047】
そして、対象領域の半径Rと高さHとから、対象領域の中心角の半分の角度θを算出する(S209)。ここで、半径Rは、対象領域の外周を弧とした扇形の半径であり、高さHは、対象領域の外周の最下部から界面までの高さである。このとき、cosθ=(R−H)/Rが成り立つため、角度θを算出することができる。なお、最外周部分を対象領域とした場合は、半径Rは、配管500の半径に等しく、高さHは、界面高さSに等しくなる。
【0048】
角度θが得られれば、領域の外周を弧とした半径R、中心角2θの扇形の面積から、領域の内周を弧とした半径(R−積分幅d)、中心角2θの扇形の面積を引くことで対象領域の面積を算出することができる(S210)。この面積に対応する区分の流速を乗じることで対象領域の流量が算出される(S211)。
【0049】
以上の対象領域の流量を算出する処理を下半分の全領域に対して繰り返す(S212)。
図9(b)、
図9(c)は、対象領域を変化させたときの半径R、高さH、中心角θを示している。
【0050】
下半分の全領域に対して流量を算出する処理を行なうと(S212:Yes)、各領域の流量を合計する(S213)。
【0051】
次に、界面が中心以上の場合の積分について
図10を参照して説明する。例えば、
図10(a)に示すように界面高さSが特定された場合は、
図10(b)に示すように、下半分については積分幅の厚さを有する半円弧状の各領域の面積を算出し、対応する区分の流速を乗じて足し合わせればよい。一方、上半分については、積分幅の厚さを有する半円弧状の各領域について界面までの面積を算出し、対応する区分の流速を乗じて足し合わせればよい。
【0052】
そこで、界面が中心より高い場合は(S206:No)、積分幅を設定し(
図6:S207)、下半分の積分を実行する(S215)。また、上半分の積分については以下のように行なう。
【0053】
まず、上半分で対象領域を設定する(S216)。
図11(a)は、最外周部分を対象領域とした場合の例である。そして、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも大きいかどうかを判定する(S217)。ここで、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも大きい場合は、対象領域の上部分が界面により切り取られ、左右2つの部分に分割されることになる。一方、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも小さい場合は、対象領域は界面と交わらず、半円弧状のままとなる。
【0054】
図11(a)、
図11(b)は、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも大きい場合であり、
図11(c)は、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも小さい場合である。
【0055】
対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも大きい場合には(S217:Yes)、半径Rと配管500中心から界面までの高さKとから、対象領域の一方の領域の中心角θを算出する(S218)。ここで、
図11(a)、
図11(b)に示すように、sinθ=K/Rが成り立つため、角度θを算出することができる。なお、最外周部分を対象領域とした場合は、半径Rは、配管500の半径に等しく、高さKは、界面高さSから配管500の半径を引いた値に等しくなる。
【0056】
一方、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも小さい場合には(S217:No)、一律にθ=90°とすればよい(S219)。
【0057】
角度θが得られれば、領域の外周を弧とした半径R、中心角θの扇形の面積の2倍から、領域の内周を弧とした半径(R−積分幅d)、中心角θの扇形の面積の2倍を引くことで対象領域の面積を算出することができる(S220)。この面積に対応する区分の流速を乗じることで対象領域の流量が算出される(S221)。
【0058】
以上の対象領域の流量を算出する処理を上半分の全領域に対して繰り返す(S222)。そして、上半分の全領域に対して流量を算出する処理を行なうと(S222:Yes)、下半分および上半分の各領域の流量を合計する(S223)。
【0059】
以上、本実施形態の第1実施例について説明した。次に、本実施形態の第2実施例について説明する。第2実施例における超音波流量計は、第1実施例の超音波流量計に伝播時間差法による測定機能を付加したものである。
【0060】
図12は、本発明の第2実施例に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。第1実施例と同じブロックについて同じ符号を付している。本例において、超音波流量計は配管500内を流れる被測定流体Fの流量を測定する。被測定流体Fは、配管500内をすべて満たす満水状態であってもよいし、上部に空間を有する非満水状態であってもよい。
【0061】
本図に示すように、第2実施例の超音波流量計は、超音波センサ210に加えて超音波センサ210aを備え、測定制御部100に替えて測定制御部101を備えている。超音波センサ210aは、配管500の上部で、超音波センサ210から斜めに出射された超音波信号を受信でき、超音波センサ210aが出射した超音波信号を超音波センサ210が受信できる位置に設置される。
【0062】
測定制御部101は、出力制御部110、受信制御部120、流速プロファイル作成部130、反射信号強度プロファイル作成部140、界面判定部150、流量算出部160、測定結果出力部170、測定方法制御部180、伝播時間差法測定部190を備えている。
【0063】
測定方法制御部180は、伝播時間差法を用いた流量測定と、第1実施例に示したパルスドップラー法あるいは反射相関法を用いた流量測定の実行を制御する。伝播時間差法測定部190は、伝播時間差法を用いた流量測定を行なう。
【0064】
第2実施例の超音波流量計における流量測定の手順について
図13のフローチャートを参照して説明する。まず、測定に際しての各種設定を行なう(S301)。各種設定では、配管500の内径、超音波センサ210、210aの取付角度、被測定流体Fの密度・粘度、音速、その他パラメータ等の設定を行なう。
【0065】
第2実施例では、最初に伝播時間差法を用いた測定を実行する(S302)。これは、被測定流体Fが満水状態であり、気泡等が少ない状態であれば、伝播時間差法による測定で高い精度が得られるからである。伝播時間差法を用いた測定では、超音波センサ210、210aとで交互に超音波信号を送受信して、それぞれの伝播時間を測定する。
【0066】
この結果、それぞれの超音波センサ210、210aで他方の超音波センサ210a、210が出射した超音波信号を所定の強度で受信できたかどうかを判定する(S303)。ここで、被測定流体Fが非満水状態であれば、他方からの超音波信号は受信することができず、被測定流体Fに気泡等が多ければ他方からの超音波信号の受信強度が弱くなり、いずれの場合も伝播時間差法での流量測定は適さない。
【0067】
他方が出射した超音波信号を所定の強度で受信できた場合には(S303:Yes)、伝播時間差法による流量演算を行ない(S304)、得られた流量を測定結果として出力する(S307)。
【0068】
一方、他方が出射した超音波信号を所定の強度で受信できなかった場合には(S303:No)、第1実施例で示した流量測定を行なう。すなわち、パルスドップラー法あるいは反射相関法を用いた測定を実行し(S305)、受信信号強度プロファイルにより得られた界面高さと流速プロファイルとに基づいた流量演算を実行する(S306)。
【0069】
なお、第1実施例で示した流量測定でも測定ができない場合には、例えば、再度、(S302)以降の処理を繰り返し、それでも測定できない場合にアラームを出力するようにしてもよい。