(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カード落下防止機構は、前記カードスタッカのカード収納部の開口の少なくとも一部を開閉可能な開閉部と、当該開閉部を閉じ側に常時付勢する閉方向付勢部とを備え、
前記カードスタッカが収納位置から突出位置に移動するとき、当接した当該カードスタッカによって押されることにより、前記開閉部が前記閉方向付勢部の付勢力に抗して開状態をとり、前記カードスタッカが突出位置から収納位置に移動するとき、前記カードスタッカが後退し、前記閉方向付勢部の付勢力によって閉状態に戻る
ことを特徴とする請求項1に記載の金庫。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、金庫の一実施形態を
図1〜
図10に従って説明する。
図1に示すように、運賃支払器(以下、運賃箱1と記す)は、運賃箱1に投入された貨幣や券類を収納する金庫2を備える。金庫2は、例えば運賃箱1の側部に配置され、運賃箱1に対して着脱可能に設けられている。
【0012】
運賃箱1は、運賃の投入口として運賃投入部3を備える。運賃投入部3は、例えば硬貨の投入口となる硬貨投入口が好ましい。運賃箱1は、両替用の紙幣の投入口となる紙幣投入口4を備えるのが好ましい。運賃箱1は、電子マネーが書き込まれた電子決済カード(図示略)と双方向の無線通信が可能なリーダライタ部5を備える。電子決済カードは、例えばICカード等が好ましい。運賃箱1は、電子決済カードの情報を表示可能なモニタ6と、両替硬貨を払い出す硬貨排出口7とを備えるとよい。
【0013】
運賃箱1は、自ら乗車券8を発行可能な発券機能付きである。乗車券8は、例えば磁気カード等である。発券機能付き運賃箱1は、乗車券8の発券口9を備える。発券口9は、例えば運賃箱1の上面に配置されるのが好ましい。乗車券8は、例えば一日券や定期券等が好ましい。
【0014】
図2に示すように、金庫2は、複数枚の未書き込みカード10を収納可能なカードスタッカ11と、カードスタッカ11を収納位置及び突出位置の2位置に切り替えるカードスタッカ搬送機構12とを備える。収納位置は、カードスタッカ11が金庫2の内部に完全に収まる状態をいう。突出位置は、カードスタッカ11が金庫2の外部に突出する状態をいう。
【0015】
運賃箱1は、カードスタッカ11内の未書き込みカード10を取り込んで、乗車券8として必要な情報を書き込み、これを発券口9から排出する発券部13を備える。発券部13は、突出位置をとるカードスタッカ11から未書き込みカード10を1枚ずつ繰り出す繰り出し部14と、繰り出し部14から搬送された未書き込みカード10に情報を書き込んで、発券口9から排出する情報書込部15とを備えるのが好ましい。
【0016】
図3(a),(b)に示すように、金庫2は、開閉可能な金庫扉17を備える。金庫扉17は、例えば金庫本体16の上面に配設された複数枚の板材を備えたシャッタからなり、ボールねじ18を介して金庫本体16に連結されている。金庫本体16の内部には、ボールねじ18の回転駆動源となるモータ19が設けられている。金庫本体16の内部には、硬貨収納部20及び紙幣収納部21が区画形成されている。金庫本体16の側面には、運賃箱1と電気接続されるコネクタ22が設けられている。
【0017】
図4〜
図6に示すように、カードスタッカ11は、未書き込みカード10を複数枚収納可能なカード収納部23を備える。カード収納部23は、第1未書き込みカード10aを複数枚収納可能な第1カード収納部23aと、第1未書き込みカード10aとは別種類の第2未書き込みカード10bを複数枚収納可能な第2カード収納部23bとを備えるのが好ましい。第1未書き込みカード10aは、例えば一日券用の未書き込みカードであることが好ましい。第2未書き込みカード10bは、例えば定期券用の未書き込みカードであることが好ましい。
【0018】
第1カード収納部23aは、第1未書き込みカード10aを後から押して整列させる第1プッシャ24を備える。第1プッシャ24は、例えば第1未書き込みカード10aの群に当接する押圧板25と、押圧板25を両側において支持する一対のレバー26とを備える。第2カード収納部23bも、第1プッシャ24と同様の第2プッシャ27を備える。第2プッシャ27も、押圧板28及び一対のレバー29を備えるのが好ましい。レバー26,29には、第1プッシャ24及び第2プッシャ27で共用されるトーションばね30によって、押圧板25,28を未書き込みカード10a,10bに押し当てるための負荷が発生する。トーションばね30は、カードスタッカ11の両側に一対設けられるのが好ましい。
【0019】
カードスタッカ搬送機構12は、カードスタッカ11を相対移動可能に支持するフレーム31を備える。フレーム31は、例えば3枚の板(第1フレーム31a、第2フレーム31b、第3フレーム31c)からなる。
【0020】
カードスタッカ搬送機構12は、カードスタッカ搬送機構12の駆動源となるモータ32と、モータ32の回転をカードスタッカ11の上下動の駆動力に変換する駆動変換部33とを備える。駆動変換部33は、例えばボールねじが好ましい。この場合、駆動変換部33は、カードスタッカ11の上下動方向に沿って延びるねじ部34と、ねじ部34に螺合された可動ピース35とを備える。ねじ部34は、例えば第2フレーム31bに回動可能に支持されるとともに、下端がギヤ機構36を介してモータ32に連結されている。モータ32が回転すると、駆動変換部33によりモータ32の回転力がカードスタッカ11の上下動の駆動力に変換されることにより、カードスタッカ11がシャフト37に沿って上下動する。カードスタッカ搬送機構12は、カードスタッカ11が収納位置に位置することを検出する収納位置検出センサ38と、カードスタッカ11が突出位置に位置することを検出する突出位置検出センサ39とを備える。収納位置検出センサ38及び突出位置検出センサ39は、例えばフォトセンサが好ましい。
【0021】
金庫2は、カードスタッカ11が収納位置のときに、カードスタッカ11内の未書き込みカード10の外部への落下を防止するカード落下防止機構40を備える。カード落下防止機構40は、カード収納部23の開口23cの少なくとも一部を開閉可能な開閉部41と、開閉部41を閉じ側に常時付勢する閉方向付勢部42とを備えることが好ましい。開閉部41は、第1カード収納部23a及び第2カード収納部23bの両方の一部分を同時に開閉可能である。開閉部41は、カードスタッカ11の幅方向(
図4のY軸方向)の両側に設けられた一対の軸部43,44が形成され、これらがカードスタッカ11のフレーム31の上部付近に回動可能に連結されるのが好ましい。ちなみに、軸部43が第1フレーム31aに軸支され、軸部44が第3フレーム31cに軸支される。閉方向付勢部42は、例えばコイルばねが好ましい。このコイルばねは、一端が開閉部41の突片45に取り付けられ、他方が第1フレーム31aの係止片46に取り付けられている。
【0022】
図6に示すように、カード落下防止機構40は、カードスタッカ11の側壁11aから突出する形状をとるとともに、カードスタッカ11の移動に伴う開閉部41の開閉を案内する開閉案内部47を備えることが好ましい。開閉案内部47は、例えば板状に形成されるのが好ましい。開閉案内部47の上部には、例えば円弧状の斜面状部48が形成されるのが好ましい。開閉案内部47の側部には、鉛直方向に沿って真っ直ぐの直線状部49が形成されるのが好ましい。
【0023】
開閉部41は、カードスタッカ搬送機構12によるカードスタッカ11の移動に連動して開閉状態が切り替わるものが好ましい。具体的には、開閉部41は、カードスタッカ11が収納位置から突出位置に移動するとき、開閉案内部47によって下から押されることにより、閉方向付勢部42の付勢力に抗して開状態に切り替わる動きをとる。また、開閉部41は、カードスタッカ11が突出位置から収納位置に移動するとき、開閉案内部47の逃げ、かつ閉方向付勢部42の付勢力によって閉状態に戻る動きをとる。
【0024】
次に、
図3,
図7〜
図10を用いて、金庫2の動作を説明する。
[金庫を運賃箱にセットするときの動作]
図3(a)に示すように、金庫2は、運賃箱1にセットされると、背面のコネクタ22が運賃箱1のコネクタ50に電気接続される。このとき、運賃箱1は、金庫2からIDを取得して認証し、認証が成立すれば、金庫扉17の開操作を許可する。つまり、
図3(b)に示すように、モータ19が開方向に駆動されて金庫扉17の開作動が開始され、金庫2の上部の金庫開口部51が開状態に切り替えられる。なお、金庫扉17が開状態になると、金庫2は運賃箱1にロックされ、取り外しが不可にされる。
【0025】
図7(a)に示すように、カードスタッカ11が収納位置をとるとき、開閉部41が全閉状態をとることにより、カード収納部23の開口23cの一部が閉じられている。つまり、第1カード収納部23a及び第2カード収納部23bの開口23cの一部が開閉部41によって蓋をされる。開閉部41は、閉方向付勢部42の付勢力(ばね構造)によって、常に水平を維持しようとする位置で保持される。第1カード収納部23a内の第1未書き込みカード10a、及び第2カード収納部23b内の第2未書き込みカード10bは、閉じ状態の開閉部41によって外への動きが規制されて、第1カード収納部23a及び第2カード収納部23bに留まる。
【0026】
図7(b)に示すように、カードスタッカ搬送機構12は、金庫扉17が開状態になったことをセンサ(図示略)などにより確認すると、モータ32を一方向に駆動して、収納位置のカードスタッカ11を突出位置に搬送する動作を開始する。このとき、カードスタッカ11の上昇に伴って、開閉案内部47の斜面状部48が開閉部41を下から押し、開閉部41が軸部43,44の軸回りに沿って開方向(
図7(b)の矢印A1方向)に回り始める。
【0027】
図7(c)に示すように、カードスタッカ11が突出位置側へ所定量上昇すると、開閉部41が全開状態となる。つまり、開閉案内部47は、側壁の直線状部49で開閉部41を最大量回した状態にする。これにより、開閉部41は、カードスタッカ11が収納位置のときの状態から約90度回転した状態となり、カードスタッカ11の突出位置への動きに干渉しなくなる。よって、カード収納部23において、カード落下防止機構40による規制が外れ、未書き込みカード10の取り出しが許可される。
【0028】
そして、
図7(d)〜
図7(f)に示すように、開閉部41が全開状態となった後も、カードスタッカ11の上昇が継続される。なお、開閉部41の全開状態は、開閉案内部47の直線状部49によって押されることにより維持される。そして、最終的に突出位置に配置されると、カードスタッカ11が繰り出し部14にセットされる。これにより、カード収納部23内の未書き込みカード10が繰り出し部14に搬送可能となる。
【0029】
図8に示すように、運賃箱1に発券要求が入力されると、繰り出し部14は、カードスタッカ11のカード収納部23内の未書き込みカード10を1枚引き込み、これを情報書込部15に繰り出す。例えば、1日券発券要求が入力されると、第1カード収納部23a内の第1未書き込みカード10aが繰り出される。情報書込部15は、未書き込みカード10に乗車券8としての必要な情報を書き込み、書き込み処理後、乗車券8を発券口9から排出する。例えば、複数枚の発券要求が入力された場合は、1枚ずつ発券処理が実行される。
【0030】
[金庫を運賃箱から取り外すときの動作]
図9に示すように、路線運行後、金庫2を営業所に持ち運ぶにあたり、運賃箱1に金庫取り外し要求が入力されると、カードスタッカ搬送機構12は、金庫取り外し要求の入力を確認し、モータ32を他方向に駆動して、突出位置のカードスタッカ11を収納位置に搬送する動作を開始する。
【0031】
このとき、
図7(f)→(e)→(d)→(c)の流れで図示するように、開閉部41は全開状態をとったまま、まずはカードスタッカ11が下降を開始する。そして、
図7(b)に示すように、カードスタッカ11が収納位置に到達する間近になると、それまで開閉案内部47の直線状部49で押されていた開閉部41が斜面状部48で支えられる状態に切り替わり、開閉部41が軸部43,44の軸回りに沿って閉方向(
図7(b)の矢印A2方向)に回り始める。
図7(a)に示すように、カードスタッカ11が収納位置に到達すると、開閉案内部47が開閉部41を下から押し上げる状態が解消され、開閉部41が全閉状態に戻る。つまり、カード収納部23の開口23cの一部が開閉部41によって蓋をされる。金庫2は、カードスタッカ11が収納位置に到達したことを収納位置検出センサ38で確認する。
【0032】
図3(b)→(a)の流れで図示するように、金庫2は、カードスタッカ11が収納位置に到達後、モータ19を閉方向に駆動して金庫扉17の閉作動を開始し、金庫2の金庫扉17を閉状態にする。金庫扉17が閉状態になると、金庫2は運賃箱1に対してアンロックされ、取り外しが可能になる。よって、作業者は、金庫2を運賃箱1から取り外し、営業所等に持ち運ぶことが可能になる。
【0033】
ところで、
図10に示すように、金庫2を営業所等から運んで運賃箱1にセットするときや、運賃箱1から金庫2を取り外して営業所等に持ち運ぶとき、金庫2が大きく揺らされたり、逆さまにされたりすることも想定される。本例の金庫2には、未書き込みカード10が収納されているので、金庫2に傾きが生じると、未書き込みカード10がカード収納部23から脱落してしまうことも想定されるが、本例の場合、金庫2内にカード落下防止機構40を設けたので、未書き込みカード10がカード収納部23から落下して金庫2の中に散乱してしまうことが回避される。
【0034】
また、カード収納部23に未書き込みカード10が複数収納されている場合、複数の未書き込みカード10同士の位置が大幅にずれていると、繰り出し部14がカードを繰り出すときにカードの引き込みに失敗して動作不良を起こす恐れがある。そのため、開閉部41は、カード収納部23に収納された未書き込みカード10の全数についてカード収納部23内部での移動を規制するように、開口23c側の未書き込みカード10の端部に近接して被さるように開口23cを塞ぐ。開閉部41のカード端部側の面と、カード収納部23に収納された未書き込みカード10の端部との距離は、2mm以下であることが望ましい。
【0035】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)金庫2は、未書き込みカード10を収納するカードスタッカ11を内部に備える。よって、未書き込みカード10を収納した金庫2を運賃箱1に装着することによって、カードの補充を簡単かつ確実に行うことができる。金庫2は、カードスタッカ11が収納位置をとるとき、カード収納部23の開口23cの一部を閉じることが可能なカード落下防止機構40を備える。よって、金庫2にカードスタッカ11(カード収納部23)が設けられた構造をとっていても、カードスタッカ11から未書き込みカード10を脱落し難くすることができる。
【0036】
(2)カード落下防止機構40は、カード収納部23の開口23cを開閉する開閉部41と、開閉部41を閉じ側に常時付勢する閉方向付勢部42とを備える。そして、カードスタッカ11が収納位置から突出位置に上昇するとき、カードスタッカ11が下から開閉部41を押すことにより、閉方向付勢部42の付勢力に抗して開閉部41を開状態に切り替える。よって、カード落下防止機構40の構造を、上昇するカードスタッカ11で押し上げて開状態に切り替えるという簡素な構成とすることができる。
【0037】
(3)カード落下防止機構40は、カードスタッカ11の側壁11aにおいて開閉部41の開閉を案内する開閉案内部47を備える。よって、カードスタッカ11の開閉をスムーズに切り替えることができる。
【0038】
(4)開閉部41は、軸部43,44回りに回動して開閉状態が切り替わる回動部材である。よって、例えば開閉部41は自位置で回る部材で済むので、開閉部41の作動に必要となるスペースが小さく済む。
【0039】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・開閉部41は、軸回りに回動する部材に限定されず、例えば直線方向に往復動するスライド部材でもよい。
【0040】
・カードスタッカ11が突出位置に上昇する動作を開始するとき、例えばアクチュエータ等によって開閉部41を閉状態から開状態に切り替える構造としてもよい。
・発券部13は、繰り出し部14及び情報書込部15が一体となった構造でもよい。
【0041】
・発券される乗車券8は、磁気カードに限らず、例えばICカード等の他のカードに変更可能である。
・運賃箱1に紙幣も運賃として投入可能としてもよい。
【0042】
・金庫扉17は、モータ19によって開閉される方式に限らず、例えばレバー等を操作して手動で開閉を切り替える方式でもよい。
・運賃支払器(運賃箱1)は、路線バスや電車等の車両に設けられることに限らず、例えば駅等に設置されてもよい。
・開閉部41は、各カード収納部(第1カード収納部23および第2カード収納部)ごとに独立して設けられていてもよい。
・カード収納部23は、必ずしも2つのカード収納部(第1カード収納部23および第2カード収納部)から構成されている必要はなく、1つまたは3つ以上のカード収納部から構成されていてもよい。
・金庫2は、複数のカードスタッカ11を備えてもよい。
【0043】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)前記金庫において、前記カード落下防止機構は、前記カードスタッカのカード収納部の開口を開閉可能な開閉部を備え、当該開閉部は、前記カードスタッカ搬送機構による前記カードスタッカの移動に連動して、開閉状態が切り替わる。この構成によれば、カードスタッカの作動に連動して、開閉部の開閉を切り替えることが可能となる。
【0044】
(ロ)前記金庫において、前記開閉部は、フレームに軸を介して連結された回動可能な部材であって、前記軸回りに回動して開閉状態が切り替わる。この構成によれば、開閉部はその場で回る部材であるので、配置スペースが少なく済む。
(ハ)前記金庫において、前記開閉案内部は、その上部に円弧状の斜面状部と、その側部に鉛直方向に延びる直線状部を備える。この構成によれば、カードスタッカが収納位置から突出位置に搬送されるとき、開閉案内部の斜面状部が開閉部を押し上げる。カードスタッカが一定距離以上上昇した状態では、直線状部が開閉部を水平方向に押すことで開閉部を開状態に保つ。また、カードスタッカが突出位置から収納位置に搬送されるとき、開閉部が閉じられる。したがって、開閉部の開閉状態を、カードスタッカの移動に連動して切り換えることができる。
(ニ)前記金庫において、前記カードスタッカは、前記未書き込みカードの面を水平方向に押す押圧板を備える。この構成によれば、カードスタッカに収納された未書き込みカードに常に押圧板からの力が課されるので、未書き込みカードの位置がずれる恐れが少なくなる。