【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例に係る電源装置10及び突入電流抑制回路20を説明するブロック図である。電源装置10及び突入電流抑制回路20は、それぞれ図の破線で示した部分である。電源装置10は、電源回路30と、電源回路30における外部電源Vinの入力端Inに並列に接続された入力コンデンサ(以下、単にコンデンサと称する)Cinと、突入電流抑制回路20と、を有している。突入電流抑制回路20は、外部電源Vinと電源回路30との間に接続されている。
【0013】
なお、電源回路30における外部電源Vinの入力端Inは、プラス側入力端In1及びマイナス側入力端In2からなり、それぞれ第1及び第2の入力端と称する場合がある。また、ここでは単に入力端Inと表現した場合、プラス側及びマイナス側入力端の両方を指すものとする。
【0014】
また、コンデンサCinが電源回路30の入力端Inに外部素子として接続された場合について示したが、コンデンサCinは電源回路30の内部に設けられ、電源回路30がコンデンサCinを含んでいてもよい。
【0015】
コンデンサCinは、電源装置10内における電圧の平滑化、及び装置内の各素子からの雑音の抑制を行うために設けられている。また、外部電源Vinのマイナス端子には外部スイッチS1が設けられている。外部スイッチS1は、電源装置10への外部電源Vinの接続及び非接続を切り替える。
【0016】
突入電流抑制回路20は、外部電源Vinから電源回路30に供給される電流が流れる電流経路に直列に接続された電流抑制素子21を有している。電流抑制素子21は、電源装置10内に流れる電流を抑制するために設けられている。また、突入電流抑制回路20は、電流抑制素子21に並列に接続されたスイッチ素子22を有している。スイッチ素子22は、電源装置10の定常動作時において電流抑制素子21の両端を導通せしめ、電源装置10の内部損失を抑制するのに用いられる。スイッチ素子22は、導通時においては、電流抑制素子21よりも小さな抵抗値(オン抵抗ともいう)を有している。
【0017】
突入電流抑制回路20は、外部電源Vinから電源回路30への電流経路を流れるコンデンサCinからの放電電流を検出し、スイッチ素子22を非導通とする制御回路23を有している。制御回路23は、その入力端子がスイッチ素子22の両端に接続され、出力端子がスイッチ素子22に接続されている。制御回路23は、コンデンサCinから放電電流が流れた場合、すなわち外部電源Vinが非接続状態となった場合には、これを検出し、スイッチ素子22を非導通とする。制御回路23は、スイッチ素子22の両端の電位によって放電電流を検出する。より詳細には、制御回路23は、コンデンサからの放電電流、すなわち、逆方向電流によってスイッチ素子22の両端における電圧の極性が反転すると、スイッチ素子22を非導通状態とする。
【0018】
また、突入電流抑制回路20には、スイッチ素子22の導通状態を維持する維持回路24が設けられている。より具体的には、維持回路24は、電源装置10の定常動作時においてスイッチ素子22の導通状態を維持し、定常動作時においては電源装置10の内部損失が抑制される。
【0019】
突入電流抑制回路20の制御回路23は、外部スイッチS1が導通状態の際において、チャタリングによって外部スイッチS1が開き、コンデンサCinから放電電流が流れた場合に、この放電電流を検出し、スイッチ素子22を非導通とする。すなわち、維持回路24によってスイッチ素子22は導通状態を維持している際にコンデンサCinからの放電電流を検出した場合には、制御回路23はスイッチ素子22を導通状態から非導通状態に切り替える。
【0020】
従って、この後チャタリングによって外部スイッチS1が再度閉じ、電源装置10に充電電流が流れた際においても、充電電流はスイッチ素子22を流れず、電流抑制素子21を流れることとなる。従って、過大な突入電流を抑制することができる。その一方で、定常動作時においては、動作電流はオン抵抗の低いスイッチ素子22を流れるので、内部損失が抑制された電源装置を提供することができる。
【0021】
図2は、本実施例の突入電流抑制回路20の構成の具体例を示す回路図である。図の破線で示した部分は
図1における各構成要素に対応する。
図2に示すように、突入電流抑制回路20は、電流抑制素子21として抵抗R3を、スイッチ素子22としてnチャネル型MOSFET(以下、電界効果トランジスタと称する)Q1を、制御回路23としてコンパレータIC1を、維持回路24としてツェナーダイオードD1及びnpn型バイポーラトランジスタ(以下、単にバイポーラトランジスタと称する)Q2、抵抗R1、R2、R4及びR5を、有している。
【0022】
維持回路24のツェナーダイオードD1は、そのカソードが電界効果トランジスタQ1のゲートに接続され、また抵抗R1を通して電源回路30のプラス側入力端In1に接続され、アノードが電源回路30のマイナス側入力端In2及び電界効果トランジスタQ1のソースに接続されている。維持回路24のバイポーラトランジスタQ2は、そのコレクタがツェナーダイオードD1のカソード、電界効果トランジスタQ1のゲート及びコンパレータIC1の出力端子に接続され、ベースが抵抗R5を通してコンパレータIC1の非反転入力端子及び電界効果トランジスタQ1のドレインに接続され、エミッタがツェナーダイオードD1のアノードに接続されている。
【0023】
外部電源Vinのプラス端子は、抵抗R1の一端、コンデンサCinの一端及び電源回路30のプラス側入力端In1(第1の入力端)に接続されている。外部電源Vinのマイナス端子は、外部スイッチS1の一端に接続されている。
【0024】
抵抗R1の他端は、ツェナーダイオードD1のカソード、抵抗R2の一端、電界効果トランジスタQ1のゲート、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ及びコンパレータのIC1の出力端子に接続されている。
【0025】
外部スイッチS1の他端は、ツェナーダイオードD1のアノード、抵抗R2の他端、バイポーラトランジスタQ2のエミッタ、抵抗R4の一端、電界効果トランジスタQ1のソース、抵抗R3の一端及びコンパレータIC1の反転(−)入力端子に接続されている。
【0026】
電界効果トランジスタQ1のドレインは、抵抗R3の他端、抵抗R5の一端、コンパレータIC1の非反転(+)入力端子、コンデンサCinの他端及び電源回路30のマイナス側入力端In2(第2の入力端)に接続されている。
【0027】
バイポーラトランジスタQ2のベースは、抵抗R4の他端及び抵抗R5の他端に接続されている。抵抗1、2、4及び5は、それぞれの両端において電位差を発生させること、及び電流の調整などを行うのに用いられる。
【0028】
次に、突入電流抑制回路20の動作について説明する。まず、外部スイッチS1を閉じるとコンデンサCinへの充電が開始される。このとき、電界効果トランジスタQ1(スイッチ素子22)は非導通状態であるため、抵抗R3(電流抑制素子21)により電流が抑制されながら充電される。コンデンサCinの充電当初は充電電流によって抵抗R3の両端に電位差が発生しているため、バイポーラトランジスタQ2が導通状態となる。従って、バイポーラトランジスタQ2のコレクタに接続された電界効果トランジスタQ1のゲート電圧はLowレベルとなり、電界効果トランジスタQ1は非導通状態を維持する。
【0029】
コンデンサCinに流れる充電電流が徐々に減少し、抵抗R3の両端の電位差が低下すると、バイポーラトランジスタQ2のベースとエミッタとの間の電圧が減少し、バイポーラトランジスタQ2が非導通状態となる。従って、電界効果トランジスタQ1のゲートとソースとの間の電圧が上昇し、電界効果トランジスタQ1が導通状態となる。以後、定常動作時において、電界効果トランジスタQ1は抵抗R1、R2、ツェナーダイオードD1及びバイポーラトランジスタQ2(すなわち維持回路24)によって導通状態を維持し、電源装置10の動作電流はオン抵抗の低い電界効果トランジスタQ1を通して流れる。
【0030】
ここで、電界効果トランジスタQ1が導通状態となった後、外部スイッチS1のチャタリングによって外部スイッチS1が開いて外部電源Vinが非接続状態となると、コンデンサCinの放電が開始される。突入電流抑制回路20内を流れる放電電流及びこのときの回路内の動作を
図3(a)及び
図3(b)を用いて具体的に説明する。
【0031】
図3(a)に示すように、コンデンサCinからの放電電流DCは、抵抗R1、ツェナーダイオードD1、電界効果トランジスタQ1のソース及び電界効果トランジスタQ1のドレインの順に流れる。このとき、電界効果トランジスタQ1のソースから電界効果トランジスタQ1のドレインに向かって流れる放電電流DCによって、電界効果トランジスタQ1のソースは電界効果トランジスタQ1のドレインよりも高電位となる。すなわち、充電電流及び動作電流とは逆方向の電流である放電電流DCによって電界効果トランジスタQ1(スイッチ素子22)の両端における電圧極性が反転する。
【0032】
従って、
図3(b)に示すように、電界効果トランジスタQ1のソースに接続されているコンパレータIC1(制御回路23)の反転(−)入力端子は、電界効果トランジスタQ1のドレインに接続されているコンパレータIC1の非反転(+)入力端子よりも高電位となる。これによって、コンパレータIC1の出力はLowレベルとなる。換言すれば、コンパレータIC1の出力がLowレベルである場合、外部スイッチS1が開き、コンデンサCinから放電電流が流れていることを意味する。
【0033】
このようにして、コンパレータIC1は、外部スイッチS1が開くこと、すなわちコンデンサCinから放電電流DCが流れたことを検出する。そして、コンパレータIC1の出力がLowレベルとなった場合は、電界効果トランジスタQ1のゲート電圧もLowレベルとなり、電界効果トランジスタQ1が非導通状態となる。
【0034】
従って、この後外部スイッチS1のチャタリングによって外部スイッチS1が再度閉じ、外部電源Vinが再度接続された場合、すでに電界効果トランジスタQ1は非導通状態となっているため、コンデンサCinへの充電電流は抵抗R3で抑制される。つまり、外部スイッチS1でチャタリングが発生した場合でも電流抑制素子である抵抗R3が正常に機能し、過大な突入電流の発生を防止することができる。
【0035】
上記したように、本実施例の突入電流抑制回路によれば、コンデンサCinからの放電電流によってチャタリングの発生を検出することができる。従って、従来技術の問題点を解決することができる。
【0036】
具体的には、特許文献1においては、ツェナーダイオードによって回路内の電圧を制御し、突入電流を抑制している。従って、ツェナーダイオードで設定した電圧以上の電圧変動時においては突入電流を抑制することが困難である。一方、本実施例においては、コンデンサCinからの放電電流を検出することによって突入電流を抑制することが可能となる。従って、コンデンサCinの充電電圧の大小に関わらず外部スイッチS1のチャタリングによる突入電流抑制回路の誤動作を防止し、突入電流を確実に抑制することができる。
【0037】
また、非特許文献1に開示されている回路においては、電流検出用抵抗(以下、単に抵抗と称する)Rsが用いられているが、本発明によれば、抵抗Rsを不要にすることが可能となる。従って、定常動作中において抵抗Rsによって無駄に電力が消費されることはなく、定常動作時の損失を低く抑えることが可能となる。
【0038】
以下に、非特許文献1に開示されているような従来の突入電流抑制回路に対する本実施例の突入電流抑制回路の損失低減の効果について説明する。ここでは、仮に、非特許文献1に記載された抵抗Rs及び本実施例の突入電流抑制回路内の電界効果トランジスタQ1のオン抵抗が同程度の抵抗値を有する場合を考える。
【0039】
従来の突入電流抑制回路において、抵抗Rs及び電界効果トランジスタQ1は電源装置の入力端に直列に接続されているため、定常動作時において抵抗Rsでの損失及び電界効果トランジスタQ1での損失は同程度となる。一方、本実施例においては抵抗Rsでの損失が発生しない。従って、従来の突入電流抑制回路に比べて損失を半減することが可能である。
【0040】
以下に具体的な数値例を示す。従来の突入電流抑制回路の場合、抵抗Rsが20mΩの抵抗値を有し、電界効果トランジスタQ1が20mΩのオン抵抗を有し、動作電流が1Aであることを条件とすると、その損失は、
損失:(20mΩ+20mΩ)×(1A)
2=40mW
となる。
【0041】
一方、本実施例の突入電流抑制回路の場合、電界効果トランジスタQ1が20mΩのオン抵抗を有し、動作電流が1Aであることを条件とすると、その損失は、
損失:20mΩ×(1A)
2=20mW
となる。従って、本実施例の突入電流抑制回路においては、非特許文献1に記載の突入電流抑制回路に比べて損失を半減することが可能であることがわかる。
【0042】
なお、本実施例においては、スイッチによるチャタリングが発生した場合について説明したが、コネクタへの活線挿入時のチャタリング、ヒューズ挿入時のチャタリングなど、物理的接点を有する部材によるチャタリングが発生した場合においても本実施例の効果を得ることが可能である。すなわち、通電中にコネクタなどを挿入した場合、回路にヒューズを挿入した場合におけるチャタリングについても同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、本実施例においては、突入電流抑制回路が電源回路に接続されて実装される場合について説明したが、本発明による突入電流抑制回路は、電源回路に限らず、外部電源の入力端に並列に接続されたコンデンサを有する電気回路について実装可能である。
【0044】
また、本実施例においては、電流抑制素子を外部電源Vinのマイナス端子側に構成した場合について説明したが、これに限るものではなく、外部電源Vinのプラス端子側に構成した場合においても適用可能である。
【0045】
また、本実施例においては、nチャネル型MOSFETをスイッチ素子として用いる場合について説明したが、これに限るものではなく、pチャネル型MOSFET、npn型若しくはpnp型のバイポーラトランジスタを用いても良い。
【0046】
また、スイッチ素子としては、上記した素子を用いず、オン抵抗のないON/OFFスイッチを用いることもできる。この場合、コンデンサからの放電電流を検出するために、電流抑制素子よりも小さな抵抗値を有する抵抗が設けられる。
図4(a)及び(b)を参照して、スイッチ素子としてON/OFFスイッチを用いる場合の回路例について説明する。
【0047】
例えば、
図4(a)に示すように、電流抑制素子21に並列に接続されたスイッチ素子22としてON/OFFスイッチSWを用い、電流抑制素子21に並列に接続された抵抗rを設けることができる。また、
図4(b)に示すように、抵抗rは、外部電源Vinから電源回路30への電流経路に直列に接続されていても良い。換言すれば、突入電流抑制回路は、電流抑制素子に並列にかつON/OFFスイッチSWに直列に接続されているか、又は外部電源から電源回路への電流経路に直列に接続された抵抗rを有していても良い。この場合、制御回路は、その入力端子は抵抗rの両端に接続され、抵抗rの両端の電位によって放電電流を検出する。
【0048】
また、コンパレータとしては、プッシュプル型、オープンコレクタ、オープンドレインのいずれのタイプのものを用いても良い。
【0049】
また、維持回路の構成及びその接続態様は一例に過ぎず、定常動作時においてスイッチ素子の導通状態を維持することが可能であれば他の構成を有していてもよい。
【0050】
上記したように、本発明による突入電流抑制回路は、外部電源から電源回路への電流経路に直列に接続された電流抑制素子と、電流抑制素子に並列に接続され、電流抑制素子の両端を導通せしめるスイッチ素子と、電流経路を流れるコンデンサからの放電電流を検出してスイッチ素子を非導通とする制御回路と、を有している。従って、チャタリングが発生した場合でも誤動作を起こすことなく突入電流を抑制し、回路内での損失発生を低く抑えることが可能な低コストの突入電流抑制回路及び電源装置を提供することができる。