(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149674
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】放射線CT装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
G01N23/04 320
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-211738(P2013-211738)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-75394(P2015-75394A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】欅 泰行
【審査官】
比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−019082(JP,A)
【文献】
特開2009−276163(JP,A)
【文献】
特開2000−316843(JP,A)
【文献】
特開2012−081101(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/068044(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
A61B 6/00− 6/14
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置された放射線源と放射線検出器の間に、層状構造を有する被検体を搭載するテーブルが設けられ、そのテーブルと、上記放射線源と放射線検出器の対とを、放射線光軸に交差する回転軸の周りに相対的に回転させつつ、上記テーブル上の被検体に放射線を照射し、設定されているビュー数に基づくピッチで上記放射線検出器の出力を取り込んで被検体の複数の投影角度における放射線投影データを収集し、再構成演算手段により上記放射線投影データを用いた再構成演算を行って上記回転軸に直交するスライス面に沿った被検体の断層像を構築し、当該断層像を表示器に表示する放射線CT装置において、
あらかじめ設定されているビュー数V1に基づく微小ピッチで放射線投影データを取り込み、その取り込んだ各放射線投影データを投影データ記憶手段に記憶していく撮影動作制御手段と、
投影角度範囲とビュー数V2(V2≦V1)を指定する指定手段を備え、
上記再構成演算手段は、ビュー数V1のもとに投影データを収集後、全投影角度範囲をあらかじめ設定されている少ないビュー数V3(V3<V2)のもとに再構成演算を行って粗い概観断層像を構築して上記表示器上に当該概観断層像を表示し、
上記指定手段は、上記表示器上に、上記概観断層像とともに被検体の層状構造に沿って表示させた直線状のカーソルの前後の角度範囲として上記投影角度範囲の指定を行うように構成され、
さらに、上記再構成演算手段は、上記指定手段により指定された投影角度範囲については、当該指定手段により指定されたビュー数V2に該当する投影データを、その指定された投影角度範囲を除く投影角度範囲については、上記ビュー数V3に該当する投影データを、それぞれ上記投影データ記憶手段の記憶内容から抽出して再構成演算に供して断層像を構築することを特徴とする放射線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線をはじめとする放射線を用いて、各種工業製品等の内部構造や欠陥の有無等を非破壊のもとに調査するための放射線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用の放射線CT装置においては、一般に、互いに対向配置した放射線源と放射線検出器との間に、被検体を搭載するテーブルを配置し、そのテーブルと、放射線源と放射線検出器との対とを、放射線光軸方向(放射線源と放射線検出器とを結ぶ方向)に直交する回転軸の周りに相対的に回転させる構成が採用されている。
【0003】
被検体のCT撮影、つまり被検体の放射線投影データの収集は、被検体に放射線を照射しながら、テーブルもしくは放射線源と放射線検出器の対を回転軸の周りに回転させて、事前に設定したビュー数に基づくピッチごと、すなわち360°をビュー数で除した角度をサンプリングピッチとして放射線検出器の出力を取り込む(例えば特許文献1参照)。
このビュー数を多くすることにより、得られる断層像の空間分解能が向上する。なお、各ビューにおける投影データは、実際には、微小時間間隔で取り込んだ複数のフレームデータを積算したものが用いられ、この積算数(アベレージ数と称される)を多くすることによって投影データのS/Nが向上するとともに、得られる断層像のコントラストを向上させることができる。以下、本明細書においては、各ビューにおける投影データの取り込み動作には、特に明記はしないものの、このような複数のフレームデータの積算動作を含むものとする。
【0004】
従来の放射線CT装置において、高分解能の断層像を得るためには、CT撮影前にビュー数を多く設定し、断層像の構築時にはその全ての投影データを用いて断層像視野全体を再構成している。そのため、高分解能の断層像を得るためには、再構成に相応の時間を要していた。
【0005】
ここで、従来、層状構造体の層状構造を分解する断層像、つまり層状構造の層面に交差する断層像の取得に特化したCT装置において、投影データの収集時に、層面が放射線光軸と平行となる回転角度を基準として、その両側にあらかじめ設定した所定の投影角度範囲についてはそれ以外の投影角度に比してサンプリングピッチを細かくすることにより、層構造の像を高分解能で表す断層像を得ながら、断層像上での層構造の分解能に寄与しない投影角度範囲、つまり、放射線光軸が層面に対して大きな角度で交差する投影角度範囲のサンプリングピッチを粗くして、再構成に要する時間を短縮化する技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−219224号公報
【特許文献2】特許第4598880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、CT撮影に先立って設定したビュー数で収集した全投影データを用いて断層像視野全体を一様に再構成する従来のCT装置では、高分解能の断層像を得るための再構成に時間がかかることは前記した通りである。これに対し、層状構造体の層構造の像を高分解能で表示するために、層面に平行な投影角度を中心に、その両側所定の角度範囲のみのサンプリングピッチを細かくする従来の提案技術では、他の角度範囲のサンプリングピッチを粗くしてデータ収集と再構成演算を行うため、再構成に要する時間は短くなる。しかしながら、この方式においては、サンプリングピッチを細かくする角度範囲をCT撮影前に設定する必要があり、層状構造の方向と被検体の外観とが明確に対応している場合にはさほどではないが、層状構造の方向が外部から視認できない被検体では、サンプリングピッチを細かくする角度範囲の設定が困難になるという問題がある。また、いずれにしても、CT撮影前に設定した角度範囲が実際の被検体の層状構造の方向とずれていた場合には、CT撮影を最初からやり直さなければならないという問題もある。
【0008】
また、上記した従来のいずれの方式においても、CT撮影後にビュー数を変更することができないという問題もある。
【0009】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、CT撮影後に任意の投影角度範囲を指定することにより、その指定された投影角度範囲のビュー数を多くして、その投影角度範囲の分解能を高くすることのできる放射線CT装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の放射線CT装置は、互いに対向配置された放射線源と放射線検出器の間に、
層状構造を有する被検体を搭載するテーブルが設けられ、そのテーブルと、上記放射線源と放射線検出器の対とを、放射線光軸に交差する回転軸の周りに相対的に回転させつつ、上記テーブル上の被検体に放射線を照射し、設定されているビュー数に基づくピッチで上記放射線検出器の出力を取り込ん
で被検体の複数の投影角度における放射線投影データを
収集し、再構成演算手段により上記放射線投影データを用いた再構成演算を行って上記回転軸に直交するスライス面に沿った被検体の断層像を構築
し、当該断層像を表示器に表示する放射線CT装置において、あらかじめ設定されているビュー数V1に基づく微小ピッチで放射線投影データを取り込み、その取り込んだ各放射線投影データを投影データ記憶手段に記憶していく撮影動作制御手段と、投影角
度範囲とビュー数V2(V2≦V1)を指定する指定手段を備え、
上記再構成演算手段は、ビュー数V1のもとに投影データを収集後、全投影角度範囲をあらかじめ設定されている少ないビュー数V3(V3<V2)のもとに再構成演算を行って粗い概観断層像を構築して上記表示器上に当該概観断層像を表示し、上記指定手段は、上記表示器上に、上記概観断層像とともに被検体の層状構造に沿って表示させた直線状のカーソルの前後の角度範囲として上記投影角度範囲の指定を行うように構成され、さらに、上記再構成演算手段は、上記指定手段により指定された投影角度範囲については、当該指定手段により指定されたビュー数V2に該当する投影データを、その指定された投影角度範囲を除く投影角度範囲については、
上記ビュー数V3
に該当する投影データを、それぞれ上記投影データ記憶手段の記憶内容から抽出して再構成演算に供して断層像を構築することによって特徴づけられる。
【0011】
本発明は、CT撮影時に全投影角度においてビュー数を多く、つまり細かいピッチで収集した放射線投影データを記憶するとともに、該データ収集後に投影角度範囲を指定することにより、収集した各放射線投影データを再構成演算時において適宜選択的に用いる。
【0012】
すなわち、指定された投影角度範囲のみを指定されたビュー数に該当する投影データ、また、それ以外の投影角度範囲では粗いサンプリングピッチの投影データをそれぞれ用いて再構成演算を行うことで、指定された投影角度範囲のみについて精細な断層像を得ようとするものである。
【0013】
すなわち、CT撮影時には、あらかじめ設定されているビュー数V1で放射線投影データを収集することになるが、このビュー数V1の値を大きく設定しておくことで、放射線投影データを細かい角度ピッチで収集して記憶するようにしている。
【0014】
上記のようにして取得され、投影データ記憶手段に記憶された放射線投影データを用いて再構成演算する前に、任意の投影角度範囲を指定し、併せてビュー数V2(V2≦V1)を指定する。再構成演算手段では、その指定された投影角度範囲については、指定されたビュー数V2に該当する投影データの採用を行うが、その指定された投影角度範囲以外の投影角度では、あらかじめ設定されている少ないビュー数V3(V3<V2)に該当する投影データを採用し、それらの投影データを使用して再構成演算を行う。これにより、例えば層状構造に沿った投影角度範囲を中心としてその両側所定の角度範囲を指定することで、その指定された角度範囲のみを精細に、他を粗くした断層像を構築することができ、層状構造の断層像を精細化しながらも、全体としての再構成演算時間を短くすることができる。そして、本発明においては、そのサンプリングピッチを細かくして断層像を構築する投影角度範囲の指定を、CT撮影後に随時行うことができるので、前記した特許文献2の技術のように角度範囲をあらかじめ指定する必要がなく、指定した角度範囲がずれていた場合でもCT撮影をやり直す必要がない。
【0015】
ここで、投影角度範囲の指定の手法は
、CT撮影後に、粗い断層像、つまり被検体の内部構造が判る程度の概観断層像を構築し、その概観断層像上で指定することにより、例えば層状構造の方向を見極めた上で、精細な再構成演算を必要とする投影角度範囲を正確に指定することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、細かいサンプリングピッチで投影データを採取して記憶した後、投影角度範囲を指定することにより、その指定された投影角度範囲については同じく指定されたビュー数に該当する投影データを記憶しているものの中から抽出し、それ以外の投影角度範囲については、あらかじめ設定されている少ないビュー数に該当する投影データを抽出して、それぞれ再構成演算に供するので、例えば層状構造を有する被検体において、層状構造の分解能に寄与しない投影角度のデータについてはビュー数を少なくして、その再構成演算に要する時間を短くしながらも層状構造を高い分解能のもとに断層表示することが可能となる。しかも、ビュー数を多くして再構成演算を行う投影角度範囲は、CT撮影後に随時行うことができるので、指定した投影角度範囲が層状構造の方向に対してずれていた場合でも、従来技術のようにCT撮影をはじめからやり直すことなく指定した投影角度範囲を変更することができる。
また
、CT撮影後に再構成演算された粗い断層像上で、例えば層状構造の方向を確認しながら、精細な再構成演算を行うべき投影角度範囲を指定することにより、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の機械的構成を表す模式図と機能的構成を表すブロック図とを併記して示す図。
【
図2】本発明の実施形態のCT撮影から再構成演算の動作を示すフローチャート。
【
図3】本発明の実施形態での投影角度範囲の設定方法の説明図であって、(a)は概観断層像上で投影角度範囲の中心を指定する際の説明図、(b)はその指定によりビュー数V2の投影データを利用する投影角度範囲の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の機械的構成を表す模式図と機能的構成を表すブロック図とを併記して示した構成図である。
【0019】
放射線源1はコーンビーム状の放射線を水平方向(x軸方向)に発生するように配置され、この放射線源1に対向して2次元の放射線検出器2が配置されており、これらの間に回転テーブル3が設けられている。放射線源1は、例えば、X線管を利用したX線発生器である。放射線検出器2は、例えば、フラットパネル型のX線検出器である。
【0020】
回転テーブル3は、放射線源1と放射線検出器2を結ぶx軸方向に沿ったX線光軸方向に対して直交する鉛直方向(z軸方向)に沿う回転軸Rの周りに回転が与えられる。この回転テーブル3は移動機構(図示略)の駆動により放射線光軸方向(x軸方向)に移動させることができ、そのx軸方向の位置に応じてCT撮影の倍率が定まる。放射線光軸方向と回転中心軸の方向は必ずしも直交していなくてもよく、直交ではない角度で交差する配置でもよい。すなわち、傾斜型の放射線CT装置にも本発明を適用することができる。
【0021】
CT撮影に際しては、被検体Wを回転テーブル3上に搭載した状態で放射線源1からの放射線を照射しながら回転テーブル3を回転させて、所定の微小回転角度ごとに放射線検出器2の出力を画像データ取込回路11に取り込む。この放射線検出器2から出力される情報は、被検体Wの放射線透過像であり、そのフレームデータは放射線投影データとして投影データ記憶部12に格納されるが、その格納方法は選択されたCT撮影モードに応じて異なる。この点については後述する。
【0022】
また、投影データ記憶部12に格納された放射線投影データは、再構成演算部13による再構成演算に供されるが、この再構成演算の方法も、選択されているCT撮影モードに応じて異なる。この点についても後述する。
【0023】
再構成演算部13により再構成された断層像は、断層像記憶部14に記憶される。この断層像記憶部14に記憶された断層像は、操作部15からの指令により表示制御部16を介して指定されたものが表示器17に表示される。操作部15は、マウス、キーボードおよびジョイスティック等からなり、この操作部15の操作によって前記したモードの選択やビュー数の設定等を行うことができ、また、回転テーブル3をx軸方向に移動させて撮影倍率を変更することもできる。
【0024】
画像データ取込回路11、投影データ記憶部12、再構成演算部13、断層像記憶部14、表示制御部16、および回転テーブル3の回転は、制御部18の制御下に置かれている。制御部18は、操作部15により選択されたモードや、指定されたビュー数に基づいてCT撮影動作を制御するとともに、再構成演算部13による各種演算等についても、操作部15による指定に従うようにその動作を制御する。
【0025】
本発明では、CT撮影モードとして、通常モードと指定角度範囲精細再構成モードを選択することができる。以下に、CT撮影から再構成演算までの各モードにおける動作について、
図2のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0026】
まず、通常モードにおいては、設定されたビュー数に応じたサンプリングピッチに対応する投影データを収集する。したがって、データ収集を完了した時点では、ビュー数と同じ数の投影データが
図1に示す投影データ記憶部12に格納された状態となる。再構成演算部13は、この投影データ記憶部12に格納された全投影データを用いた逆投影により、断層像視野全域を一様な分解能とコントラストのもとに断層像を構築する。
【0027】
次に、指定角度範囲精細再構成モードを選択した場合には、任意に設定、もしくはこのモード専用に設定されているビュー数V1のもとに投影データを収集して投影データ記憶部12に格納する。このCT撮影におけるビュー数V1値は大きい値とされる。つまり、細かい角度ピッチで投影データを収集している。
【0028】
この指定角度範囲精細再構成モードにおいて最初に構築される断層像は、上記のようにして投影データ記憶部12に格納された投影データのうちの一部のみを用いた再構成演算による粗い断層像、すなわち概観断層像である。具体的には、投影データは回転テーブル3の1回転当たりにビュー数V1だけ収集されるが、このうちの数分の一の投影データのみが間引き的に用いられて再構成演算に供される。すなわち、この概観断層像の演算に用いる投影データのビュー数V3は、データ収集時のビュー数V1よりも相当に小さい値とされる。
【0029】
このようにして構築された概観断層像は、投影角度範囲指定用のGUI表示内に組み込まれ、表示器17に表示される。オペレータはその概観断層像上で、精細な再構成演算を行って高い分解能の断層像を得たい投影角度範囲と、その投影角度範囲の再構成演算に用いるビュー数V2を指定する。ビュー数V2は基本的にはデータ収集時のビュー数V1と同じとするが、V1の範囲内で任意に指定してもよい。本発明における精細な再構成演算を行うべき投影角度範囲の設定方法を
図3を用いて説明する。
図3(a)は上述の概観断層像上で投影角度範囲の中心を指定する際の説明図であり、(b)はその指定によりビュー数V2の投影データを利用する投影角度範囲の説明図である。
【0030】
図3(a)に示すように、断層像視野Q内に現れる被検体の概観断層像P上で、例えば直線状のカーソルCを被検体の層状構造の方向に沿わせることにより、投影角度範囲の中心角度を指定する。すなわち、概観断層像Pは、被検体のCT撮影開始時点における姿勢のもとに表示され、最初の投影データの採取角度を0°とすると、図示のようにその角度は表示器上で水平線に沿った角度となる。層状構造の被検体において精細に再構成演算を行うべき角度範囲は、層状構造に沿った方向を中心とする前後の角度範囲であり、直線状のカーソルCを層状構造に沿わせることにより、その中心の角度θを指定することができる。角度の範囲は、操作部15の操作により例えば±φの形で指定する。以上の指定により、精細な再構成演算を行うべき投影角度範囲は、投影角度0°〜360°のうち、θ±φとして指定されたことになる。
【0031】
つまり、以上の投影角度範囲指定により、
図3(b)のビュー数V2のもとに再構成演算が行われる投影角度範囲が、投影角度0°に対してθだけ進んだ角度を中心として、θ−φからθ+φまでの投影角度の範囲と指定されたことになる。以上の実施の形態における各ビュー数の関係をまとめると、V1,V2,V3の大きさの関係は、V3<V2≦V1となる。
【0032】
再構成演算部13では、指定された投影角度範囲θ±φの投影データを、指定通りのビュー数V2を使用して再構成すべく、必要なデータを投影データ記憶部12から読み出して断層像の構築に供する。また、指定された投影角度範囲θ±φ以外の投影データとしては、先に構築した概観断層像に用いた投影データ、つまりビュー数V3の投影データをそのまま用いることができる。
【0033】
以上の実施の形態によると、指定された投影角度範囲θ±φ以外の角度の投影データとして少ないビュー数で再構成演算を行うので、全体としての再構成時間を短くしながら、精細な投影データが必要な投影角度範囲θ±φについては大きなビュー数で演算が行われ、高分解能の断層像が表示される。しかも、投影角度範囲θ±φは、概観断層像を見ながらオペレータが随意に指定することができるので、内部の構造と被検体の外観とが一対一で対応しないような被検体、あるいは内部構造が不明な被検体であっても、精細な投影データが必要な投影角度範囲の設定を正確に行うことができる。
【0034】
なお、投影角度範囲θ±φの指定により、そのθ±φの角度範囲のみをビュー数V2のもとに再構成を行ってもよいが、その裏側の投影角度、つまり
図3(b)に破線で示すθ+180°±φの投影角度範囲についても、上記の指定によって自動的にビュー数V2のもとに再構成演算を行ってもよい。
【0035】
以上の実施の形態においては、被検体を搭載するテーブルを回転テーブルとして、放射線源と放射線検出器の対に対して回転させた例を示したが、テーブルを回転させずに固定し、放射線源と放射線検出器の対をテーブルの周りに回転させる構造のCT装置であっても、本発明を等しく適用し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 放射線源
2 放射線検出器
3 回転テーブル
11 画像データ取込回路
12 投影データ記憶部
13 再構成演算部
14 断層像記憶部
15 操作部
16 表示制御部
17 表示器
18 制御部
R 回転軸
W 被検体
Q 断層像視野
P 概観断層像