特許第6149675号(P6149675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アドヴィックスの特許一覧

<>
  • 特許6149675-二輪車用ブレーキ装置 図000002
  • 特許6149675-二輪車用ブレーキ装置 図000003
  • 特許6149675-二輪車用ブレーキ装置 図000004
  • 特許6149675-二輪車用ブレーキ装置 図000005
  • 特許6149675-二輪車用ブレーキ装置 図000006
  • 特許6149675-二輪車用ブレーキ装置 図000007
  • 特許6149675-二輪車用ブレーキ装置 図000008
  • 特許6149675-二輪車用ブレーキ装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149675
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】二輪車用ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B62L 3/00 20060101AFI20170612BHJP
   B62L 3/08 20060101ALI20170612BHJP
   F16D 55/226 20060101ALI20170612BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20170612BHJP
   B60T 8/34 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   B62L3/00 Z
   B62L3/08
   F16D55/226 104F
   F16D65/02 A
   B60T8/34
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-211896(P2013-211896)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-74345(P2015-74345A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】関原 康仁
(72)【発明者】
【氏名】大島 裕貴
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−238901(JP,A)
【文献】 実開昭63−104168(JP,U)
【文献】 特開2011−089646(JP,A)
【文献】 特開2007−271031(JP,A)
【文献】 特開2003−287069(JP,A)
【文献】 特開2003−137081(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2311697(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62L 3/00
B60T 8/34
B62L 3/08
F16D 55/226
F16D 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールシリンダの液圧を制御して車輪のロックを回避するアンチロックモジュレータを備えた二輪車用ブレーキ装置であって、車輪と一体に回転するディスクロータと、そのディスクロータの両面に摺接させる対向一対のブレーキパッドと、そのブレーキパッドを押圧するアクチュエータ部を具備したキャリパを備え、
ハウジングの内部に少なくとも減圧用の制御弁を内蔵した液圧制御ユニットと、液圧の制御回路を有する回路基板をケースの内部に収容した電子制御ユニットを組み合わせた前記アンチロックモジュレータが、前記液圧制御ユニットを車軸方向の外側に、前記電子制御ユニットを前記液圧制御ユニットよりも車軸方向の内側にそれぞれ配置して前記キャリパに一体化された二輪車用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記キャリパが、前記アクチュエータ部と、そのアクチュエータ部に対向した反作用部と、前記ディスクロータを跨いで前記アクチュエータ部と前記反作用部をつなぐブリッジ部とを備え、このキャリパの前記アクチュエータ部側に前記液圧制御ユニットを、前記ブリッジ部の外周に前記電子制御ユニットをそれぞれ配置し、前記反作用部が車輪と前記ディスクロータとの間に入り込み、前記アクチュエータ部が前記ディスクロータよりも車軸方向の外側にある姿勢にして前記キャリパを車両に搭載した請求項1に記載の二輪車用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ部が液圧作動のブレーキピストンをシリンダに挿入して構成され、前記反作用部が前記シリンダに対向したキャリパの爪によって構成され、前記キャリパは、前記シリンダと前記爪を前記ディスクロータを跨ぐブリッジ部によってつないだ浮動型キャリパであり、この浮動型キャリパの前記シリンダ側に前記液圧制御ユニットを、前記ブリッジ部の外周に前記電子制御ユニットをそれぞれ配置し、これを前記キャリパの爪が車輪とディスクロータとの間に入り込み、前記シリンダがディスクロータよりも車軸方向の外側にある姿勢にして車両に搭載した請求項1又は2に記載の二輪車用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記液圧制御ユニットのハウジングを前記キャリパと一体に形成してキャリパの前記アクチュエータ部の外周から前記ブリッジ部の外周に至る領域に配置した請求項2又は請求項3に記載の二輪車用ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャリパ一体型ABS(アンチロックモジュレータ)を採用した二輪車(自動二輪車)用のブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車は、車輪がロックすると操舵性が損なわれて転倒の可能性が増す。特に、スピードが出ているときに前輪ロックが起こると操舵性の悪化に加えて車体が前のめりになって後輪が路面から浮き上がり易くなることから、転倒の可能性がさらに増す。
【0003】
そのために、二輪車用のブレーキ装置についても車輪ロックを回避するABSを採用することがなされている。
【0004】
そのABSを含む二輪車用ブレーキ装置が、例えば、下記特許文献1に開示されている。その特許文献1に記載された二輪車用ブレーキ装置は、増圧制御手段と減圧制御手段を別箇所に設けることで部品数の削減や省スペース化などを図っている。
【0005】
具体的には、減圧制御手段の液圧制御ボディ(第2の液圧制御ボディ)をキャリパのブレーキディスク径方向外側に一体化して設け、増圧制御手段の液圧制御ボディ(第1の液圧制御ボディ)は、マスターシリンダ(ブレーキモジュレータユニット)に一体化してECUとともに前輪近傍のフロントカバーの内側に配置している。
【0006】
なお、下記特許文献2には、駆動制御装置をキャリパに一体的に固定した四輪車用のブレーキ装置が記載されている。この特許文献2のブレーキ装置は、電気的に駆動されて制動力を発生するアクチュエータをキャリパに組み込み、そのアクチュエータを制御する駆動制御装置をアクチュエータの反ディスクロータ側の端部に連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−238901号公報
【特許文献2】特開2003−137081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
車両用のABSは、近年の小型化の要求に応えることが必要とされている。二輪車用のABSもその例にもれない。
【0009】
また、二輪車用のABSには、過酷な条件下での使用に耐えられることも併せて求められている。
【0010】
この要求に対し、減圧制御手段と増圧制御手段を別箇に設ける特許文献1のブレーキ装置は、減圧制御手段と増圧制御手段を独立させているので、ハウジングを共用することができず、小型化や省スペース化の効果が最大限に発揮されない。
【0011】
また、ブレーキ配管や減、増圧の制御指令を出すECUと減圧制御手段及び増圧制御手段との間の電気配線なども複雑になる。
【0012】
一方、特許文献2のブレーキ装置は、電気駆動のアクチュエータがABSの液圧制御ユニットに相当し、駆動制御装置がABSの電子制御ユニットに相当する。そのため、ABSの全体をキャリパに一体化したものと考えることができるが、電子制御ユニット保護に関する配慮が見られない。
【0013】
二輪車の場合、キャリパはタイヤに隣接するスポークに取り付けられる。そのために、異物(タイヤに巻き上げられた飛び石など)が飛散、衝突する環境にさらされる。
【0014】
四輪車の場合、飛散する異物に対して車両のボディがガードとして働くが、二輪車についてはキャリパが外部にむき出しになるため、飛散した異物がABSの電子制御ユニットに当たる可能性が高まる。
【0015】
ABSの電子制御ユニットは、ケースを樹脂で形成したものが一般的である。そのため、異物の衝突による衝撃が大きいとケースが割れて防水性能が損なわれる心配がある。
【0016】
電子制御ユニットのケースには水に弱い回路基板が内蔵されている。従って、そのケースの防水性能が損なわれる懸念があるのは好ましいことではない。
【0017】
そこで、この発明は、ブレーキ配管などの簡素化や装置の小型化の要求に応えられ、悪環境下での使用にも耐えられる二輪車用のブレーキ装置を実現して提供すること課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するため、この発明は、ホイールシリンダの液圧を制御して車輪のロックを回避するアンチロックモジュレータを備えた二輪車用ブレーキ装置を以下の如く構成した。
【0019】
即ち、その二輪車用ブレーキ装置は、車輪と一体に回転するディスクロータと、そのディスクロータの両面に摺接させる対向一対のブレーキパッドと、そのブレーキパッドを押圧するアクチュエータ部を具備したキャリパを備え、
ハウジングの内部に少なくとも減圧用の制御弁を内蔵した液圧制御ユニットと、液圧の制御回路を有する回路基板をケースの内部に収容した電子制御ユニットを組み合わせた前記アンチロックモジュレータが、前記液圧制御ユニットを車軸方向の外側に、前記電子制御ユニットを前記液圧制御ユニットよりも車軸方向の内側にそれぞれ配置して前記キャリパに一体化されたものにした。
【0020】
前記キャリパは、前記アクチュエータ部と、そのアクチュエータ部に対向した反作用部と、前記ディスクロータを跨いで前記アクチュエータ部と前記反作用部をつなぐブリッジ部とで構成されている。そのキャリパの前記アクチュエータ部側に前記液圧制御ユニットを、前記ブリッジ部の外周に前記電子制御ユニットをそれぞれ配置する。そして、好ましくは前記反作用部が車輪と前記ディスクロータとの間に入り込み、前記アクチュエータ部が前記ディスクロータよりも車軸方向の外側にある姿勢にして前記キャリパを車両に搭載する。
【0021】
なお、二輪車のブレーキ装置には、通常、浮動型のキャリパが用いられている。その浮動型のキャリパを用いたディスクブレーキは、前記アクチュエータ部が、キャリパに形成されたシリンダとそのシリンダに挿入された液圧作動のブレーキピストンとで構成されており、前記ブレーキピストンが片方のブレーキパッドを押圧してディスクロータの一面に摺接させる。
【0022】
そのときの反力でキャリパがシリンダ側にスライドし、これにより、キャリパの爪(浮動型キャリパ反作用部)が他方のブレーキパッドを押圧してディスクロータの他面に摺接させる。キャリパのシリンダと爪は、ディスクロータを跨ぐブリッジ部を介してつながっている。
【0023】
その浮動型のキャリパは、車輪とディスクロータとの間に爪を入り込ませ、シリンダをディスクロータよりも車軸方向の外側に配置するのが一般的である。そのような配置がなされるものについては、キャリパのシリンダ側に前記液圧制御ユニットを配置し、キャリパのブリッジ部の外周に電子制御ユニットを配置するとよい。
【0024】
キャリパのアクチュエータ部を車輪とディスクロータとの間に入り込ませ、反作用部をディスクロータよりも車軸方向の外側に配置する形態のものについては、アクチュエータ部側に電子制御ユニットを、キャリパのブリッジ部と反作用部の外周に液圧制御ユニットを配置する。
【発明の効果】
【0025】
この発明の二輪車用ブレーキ装置は、ABSの全体がキャリパに一体化されているので、小型化の効果が最大限に発揮され、ブレーキ配管や電気配線の複雑化も招かない。
【0026】
また、液圧制御ユニットは、ハウジングがアルミニウムなどの金属の塊で形成されており、その液圧制御ユニットが車軸方向の外側、即ち、外部にむき出しになる側にあるので、飛び石などに対する保護効果が高く、悪環境下での使用にも問題なく耐えることができる。
【0027】
なお、キャリパのアクチュエータ部側に液圧制御ユニットを、ブリッジ部の外周に電子制御ユニットをそれぞれ配置し、これをキャリパの反作用部が車輪とディスクロータとの間に入り込み、シリンダがディスクロータよりも車軸方向の外側にある姿勢にして車両に搭載したものは、液圧制御ユニットのハウジングとキャリパを一体成形してブレーキ装置の小型化の効果をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明の二輪車用ブレーキ装置の一例を使用状態にして示す図である。
図2図1のブレーキ装置に設けたキャリパ一体型ABSのキャリパアクチュエータ部側の端面図である。
図3図1のブレーキ装置に設けたキャリパ一体型ABSの平面図である。
図4図1のブレーキ装置に設けたキャリパ一体型ABSのキャリパ反作用部側の端面図である。
図5図1のブレーキ装置に設けたキャリパ一体型ABSの片側の側面図である。
図6図1のブレーキ装置に設けたキャリパ一体型ABSの他側の側面図である。
図7図1のブレーキ装置に設けたキャリパ一体型ABSのキャリパの反作用部側を、電子制御ユニットのケースのカバーを外した状態にして示す端面図である。
図8】例示のブレーキ装置の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面の図1図8に基づいてこの発明の二輪車用ブレーキ装置の実施の形態を説明する。
【0030】
例示の二輪車用ブレーキ装置は、ポンプレスABS(モータに駆動されるポンプが含まれていないABS)を採用したものになっている。
【0031】
例示のブレーキ装置の回路構成を図8に示す。図示の回路は前輪系のみを示している。後輪系はマスターシリンダがホイールシリンダに直接つながるありふれた構造であるので図を省く。
【0032】
図8のブレーキ装置のABSは、必要時に車輪のロック回避のための減圧制御を行うものであって、ブレーキレバー1の操作によってブレーキ液圧を発生するマスターシリンダ2と前輪のホイールシリンダ3との間の主流路4にノーマルオープンの遮断用電磁弁5を配置している。
【0033】
また、遮断用電磁弁5の下流(ホイールシリンダ3側)から遮断用電磁弁5の上流(マスターシリンダ2側)に至る還流路6にノーマルクローズの減圧用電磁弁7と、その減圧用電磁弁を介してホイールシリンダ3から排出されたブレーキ液を一時的に蓄えるリザーバ8と、還流させるブレーキ液の逆流を阻止する逆止弁9を配置している。
【0034】
このように構成された例示のブレーキ装置は、車輪速センサ(図示せず)などからの情報に基づいて前輪ロックの兆候が検出されると、電子制御ユニットの回路基板に実装された電子制御装置(ECU)10から減圧指令が出て遮断用電磁弁5が主流路4を遮断し、この状態で減圧用電磁弁7が開弁してホイールシリンダ3の液圧が低下する。
【0035】
その液圧低下によってブレーキが緩め過ぎの傾向になると、遮断用電磁弁5が開、減圧用電磁弁7が閉となって再加圧がなされる。その再加圧と減圧は、必要があれば、マスターシリンダ2のピストンが底突きしない(加圧室の底に突き当たらない)範囲内で繰り返される。
【0036】
また、制動が解除されると遮断用電磁弁5が開、減圧用電磁弁7が閉となり、リザーバ8に流入したブレーキ液が還流路6を通ってマスターシリンダ2に戻される。
【0037】
図1に、この発明の二輪車用ブレーキ装置の一例を使用状態にして示す。図示の二輪車用ブレーキ装置は、車輪Wと一体回転するディスクロータDと、そのディスクロータの両面に摺接させる対向一対のブレーキパッド(図5図6のP,P)と、キャリパ一体型ABS11を備えている。
【0038】
例示のキャリパ一体型ABS11の外観を図2図6に示す。図示のキャリパ一体型ABS11は、浮動型のキャリパ12とABSユニット(ポンプレスのアンチロックモジュレータ)13を組み合わせたものである。
【0039】
ABSユニット13は、図8の遮断用電磁弁5、減圧用電磁弁7及びリザーバ8を金属製のハウジング15a(図1図3図5図6参照)の内部に組付けた液圧制御ユニット15と、図8の電子制御装置10が実装された回路基板17をケース16aに収容した電子制御ユニット16を組み合わせたものになっている。
【0040】
ケース16aは、ハウジング15aの内部に組付けた遮断用電磁弁5と減圧用電磁弁7の駆動用コイル(図示せず)を覆う蓋の役目も担っている。
【0041】
キャリパ12は、アクチュエータ部12aと、反作用部12bと、ディスクロータD(図1参照)を跨いでアクチュエータ部12aと反作用部12bをつなぐブリッジ部12cを備えている。
【0042】
図示のキャリパ12のアクチュエータ部12aは、シリンダとそれに挿入したブレーキピストン(図示せず)とからなる。これが図8のホイールシリンダ3に相当する。
【0043】
また、図示のキャリパ12の反作用部12bは、アクチュエータ部12aのシリンダに対向させてキャリパに設けた爪である。
【0044】
このキャリパ12は、固定部材14によってディスク軸方向スライド可能に支持されている。例示のブレーキ装置におけるキャリパの支持は、固定部材14に設けたディスク軸方向のガイドピン14a、14bをキャリパに設けたガイド孔にスライド可能に挿入して行われているが、この支持構造に限定されるものではない。
【0045】
なお、例示のキャリパ一体型ABS11は、図1に示した車輪WとディスクロータDとの間に反作用部12b(キャリパの爪)を入り込ませ、アクチュエータ部12aをディスクロータDよりも車軸方向の外側に配置する。そのために、キャリパのアクチュエータ部12a側に液圧制御ユニット15を配置し、キャリパのブリッジ部12cの外周に電子制御ユニット16を配置している。
【0046】
これにより、剛性の高いハウジング15aを備えた液圧制御ユニット15が外部さらされることになり、樹脂やアルミニウムなどからなる剛性の低いケースを有する電子制御ユニット16に対して飛散するなどした異物が衝突する可能性が小さくなってキャリパ一体型ABS11が悪環境下での使用に耐えられるものになる。
【0047】
例示の液圧制御ユニット15のハウジング15aは、キャリパ12と一体成形されており、キャリパ一体型ABS11の小型化も図られている。
【0048】
また、例示のキャリパ一体型ABS11は、キャリパと一体のハウジング15aがキャリパのアクチュエータ部12aの外周からブリッジ部12cの外周に至る領域に配置されており、このために、キャリパ12がハウジング15aによって強化され、制動力を受けたときのキャリパの口開き現象(ディスク溝が開くように撓む現象)が抑制される効果も期待できる。
【0049】
さらに、ハウジング15aをキャリパ12と一体に形成することで、キャリパの熱容量が大きくなって放熱性も向上する。
【0050】
遮断用電磁弁5と減圧用電磁弁7とリザーバ8は、図7に示すように、ハウジング15aの内部に横一列(図1の使用状態では縦一列)に並べ、かつ、同一方向から組み付けると好ましい。遮断用電磁弁5は図7の組付け孔H1に、減圧用電磁弁7は図7の組付け孔H2にそれぞれ組付けられ、図7の組付け孔H3がリザーバ8の液室として用いられる。
【0051】
そのようなレイアウトは組み付け性に優れて有利であり、内部油路の加工もし易い。リザーバ8は、図1のキャリパ一体型ABSの使用状態において、減圧用電磁弁7の重力方向下になる位置に配置するとホイールシリンダ3から排出されたブレーキ液がそのリザーバ8に流入し易くなる。
【0052】
なお、ABS制御の対象となる二輪車の車輪は、前輪に限定されない。後輪の制動も例示したようなキャリパ一体型ABSを用いて行うことができる。
【0053】
また、例示のブレーキ装置は、浮動型(フローティング型)のキャリパを採用したが、本願発明の目的は、前述の反作用部もアクチュエータ部として構成されたピストン対向型などのキャリパを用いても達成される。
【符号の説明】
【0054】
1 ブレーキレバー
2 マスターシリンダ
3 ホイールシリンダ
4 主流路
5 遮断用電磁弁
6 還流路
7 減圧用電磁弁
8 リザーバ
9 逆止弁
10 電子制御装置
11 キャリパ一体型ABS
12 キャリパ
12a アクチュエータ部
12b 反作用部
12c ブリッジ部
13 ABSユニット
14 固定部材
14a、14b ガイドピン
15 液圧制御ユニット
15a ハウジング
16 電子制御ユニット
16a ケース
17 回路基板
H1〜H3 組付け孔
W 車輪
D ディスクロータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8