(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[発明の実施形態の概要]
本発明に係る溶融塩電池は、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極とを電気的に絶縁するセパレータとを有する電極群と、溶融塩電解質と、電極群と電解質とを収容する容器とを具備する。容器は、開口部を有する有底のケースと、ケースの開口部を封口する封口板と、を具備している。
【0013】
封口板には、第1電極の第1外部端子および第2電極の第2外部端子が設けられている。第1外部端子には、充電電流を第1電極に入力するためのバスバー部品が固定されている。バスバー部品と第1外部端子との間には、第1外部端子とバスバー部品とを電気的に絶縁するように、第1絶縁部が介在されている。一方で、バスバー部品と第1外部端子とには、周囲温度が基準温度T1未満であるときにバスバー部品と第1外部端子とを導通させるように、温度ヒューズ部品が電気的に接続されている。ここで、「周囲温度」とは、温度ヒューズ部品の周囲温度または表面温度である。温度ヒューズ部品の周囲温度が基準温度に達すると、ヒューズが作動し、バスバー部品と第1外部端子との間の電流は遮断される。なお、ヒューズの代わりに、バイメタル、PTC素子などの電流遮断機構を用いることもできる。
【0014】
温度ヒューズ部品は、封口板の表面に接触または近接した状態で、例えば樹脂を含む固定部により、容器の外側で封口板に固定される。そして、本実施形態の溶融塩電池は、充電電流が、バスバー部品から温度ヒューズ部品を経由して、第1外部端子に導入されるように構成されている。
【0015】
上記の構成においては、電池の充電用機器等(以下、充電器)は、第1外部端子に直接的に接続されるのではなく、バスバー部品と温度ヒューズ部品とを介して第1外部端子と接続される。これにより、例えば電池が過充電状態に陥り、電池温度が異常に上昇したときに、温度ヒューズ部品が作動して、充電電流を遮断することができる。その結果、過充電状態からさらに充電が継続されて、電池が損傷されるのを防止することができる。また、電池内圧が異常に上昇する等の不具合が防止される。これにより、溶融塩電池の安全性が向上される。電池内圧が異常に上昇すると、ガス抜き弁(破断弁)が作動する等して、その後の当該電池の使用が不能となる。
【0016】
温度ヒューズ部品は、例えばケースの表面(外側面)にではなく、封口板の表面(外側面)に接触または近接させて配置する(以下、接触している場合も含めて「近接配置する」という)ことが好ましい。ケースは、電池の発電要素(電極群、電解質)と近い位置にあるために、ケースの表面に温度ヒューズ部品を近接配置することは、発電要素の温度変化を温度ヒューズ部品の作動に直接的に反映させることができる点では好ましい。しかしながら、溶融塩電池は、複数の溶融塩電池を直列および/または並列に接続し、互いに密着させるようにして積層した組電池として使用されることも多い。そのような場合には、ケースの表面に温度ヒューズ部品を近接配置することが困難な場合も考えられる。
【0017】
本実施形態では、封口板の表面に温度ヒューズ部品を近接配置しているので、上記のようにケースの表面に温度ヒューズ部品を近接配置することが困難な場合であっても、個々の溶融塩電池に温度ヒューズ部品を含む安全機構を実装することが可能となる。より具体的には、本実施形態では、通常は直結されるべき外部端子とバスバー部品とを第1絶縁部により絶縁する一方で、両者を、温度ヒューズ部品を介して間接的に接続している。その結果、温度ヒューズ部品が外部端子の近傍に配置されるので、温度ヒューズ部品を封口板に近接配置することが容易となる。これにより、個々の溶融塩電池に、温度ヒューズ部品を含む安全機構を実装することが容易となる。その詳細については、後で説明する。
【0018】
なお、封口板は、ケースと比較すると、発電要素からは離れた位置にある。したがって、封口板の表面近傍は、発電要素の温度とは多少異なった温度になっている。このため、そのような位置関係にある封口板の表面に温度ヒューズ部品を含む安全機構を近接配置した場合に、安全機構が確実に作動するかが問題となり得る。本発明者達は、上記安全機構を、封口板の表面に近接配置した場合にも、安全機構が、誤作動することなく、かつ確実に作動することを、十分な再現性および信頼性で確認している。
【0019】
さらに、上述した通り、溶融塩電池は、他の電池に比較すると、広い温度領域で使用することが可能である。例えば、電池を使用しているときのケース(発電要素(電極群、溶融塩電解質)収納部)の温度T2(以下、使用温度という)が0℃〜70℃であるような広い温度領域で使用することが可能である。このため、溶融塩電池は、高温域で使用されることも多く、そのような場合には、温度ヒューズを作動させるときの基準温度T1と使用温度T2との差、(T1−T2)が小さくなる。この点、封口板と発電要素との間には、通常、空間があるために、発電要素の温度変動に対して封口板の温度変動は緩やかなものとなる。言い換えれば、発電要素の温度変動が、時間的に平均化されて、封口板に伝わる。その結果、電池電流を遮断すべき実際の必要性がないときに、温度ヒューズ部品が作動することがなく、温度ヒューズ部品の誤作動を抑えることができる。
【0020】
一方で、温度ヒューズ部品を封口板の表面に接触または近接した状態で封口板に固定することで、封口板の温度変化を、温度ヒューズ部品の作動に正確に反映させることができる。したがって、例えば本発明の溶融塩電池を使用した電源装置の電池保護回路(BMS)に不具合が生じたような場合にも、溶融塩電池の損傷を防止するとともに、溶融塩電池の安全性を確保することができる。
【0021】
また、封口板の温度変化を温度ヒューズ部品の作動に正確に反映させることができることから、温度ヒューズ部品の作動温度(基準温度T1)を、例えば従来よりも高めに設定しても、温度ヒューズ部品を適時に作動させることができる。したがって、温度ヒューズ部品の作動温度と、溶融塩電池を使用しているときのケースまたは電極群の通常の使用温度との差を大きくすることができる。これにより、温度ヒューズの誤作動を効果的に防止することができ、溶融塩電池を安定的に使用することができる。
【0022】
ここで、本発明の一実施形態においては、放電電流は、バスバー部品と温度ヒューズ部品とを経由せずに、第1外部端子から直接的に出力されるように構成されていることが好ましい。つまり、負荷機器(または、溶融塩電池を電源として作動する機器)は、バスバー部品と温度ヒューズ部品とを介さずに、直接的に第1外部端子と接続することが好ましい。これにより、負荷機器が大電流を必要とするような機器である場合にも、大電流に起因する温度ヒューズ部品自体の温度上昇を防止することができる。よって、温度ヒューズ部品の周囲温度が上昇し、温度ヒューズ部品が誤作動するのを防止することができる。
【0023】
以下、上記のように、充電電流の経路にバスバー部品および温度ヒューズ部品を含ませる一方で、放電電流の経路にバスバー部品および温度ヒューズ部品を含ませないようにするための具体的な構成について説明する。
【0024】
図7に示すように、本発明の溶融塩電池を含む電源装置に、充電器を接続するための第1コネクタ(以下、充電用コネクタ)54と、負荷機器を接続するための第2コネクタ(以下、放電用コネクタ)55とを互いに独立して設けるような場合には、充電用コネクタ54をバスバー部品24に接続する。一方、放電用コネクタ55は、バスバー部品24と温度ヒューズ部品22とを介さずに、第1外部端子40と直接的に接続する。これにより、充電電流を、バスバー部品24から温度ヒューズ部品22を経由して、第1外部端子40に入力し、かつ、放電電流を、バスバー部品24および温度ヒューズ部品22を介さずに、直接的に第1外部端子40から出力することができる。なお、図示は省略するが、充電用コネクタ54と放電用コネクタ55は、第2外部端子42(
図1参照)にもそれぞれ接続されている。
【0025】
図8および
図9に示すように、本発明の溶融塩電池を含む図示しない電源装置に、充電用コネクタと放電用コネクタとを兼用する1つの第3コネクタ(以下、充放電用コネクタ)58を設けることも考えられる。そのような場合には、充放電用コネクタ58に対して、バスバー部品24から温度ヒューズ部品22を経由して第1外部端子40に充電電流を入力する電流経路と、バスバー部品と温度ヒューズ部品とを介さずに、放電電流を第1外部端子から直接的に出力する電流経路の両方が開設される。このとき、トランジスタなどのスイッチや、ダイオードを溶融塩電池に設けることで、電流経路の切り替えを容易に行うことができる。なお、充放電用コネクタ58が第2外部端子42にも接続されていることは、
図7の場合と同様である。
【0026】
具体的には、
図8に示すように、温度ヒューズ部品22と第1外部端子40とに電気的に接続された第1スイッチ44を、溶融塩電池に具備させる。第1スイッチ44は、充電時に温度ヒューズ部品22と第1外部端子40とを導通させ、かつ、放電時に温度ヒューズ部品22と第1外部端子40との間の導通を解除するように作動する。第1スイッチ44は、例えばトランジスタから構成することができる。なお、第1スイッチ44は、バスバー部品24と温度ヒューズ部品22との間に配設してもよい。
【0027】
または、
図9に示すように、溶融塩電池に、温度ヒューズ部品22と第1外部端子40とに電気的に接続されたダイオード48を具備させる。ダイオード48は、充電時に温度ヒューズ部品22と第1外部端子40とを導通させ、かつ、放電時に温度ヒューズ部品22と第1外部端子40との間の電流を遮断するように作動する。そして、充放電用コネクタ58と第1外部端子40との間に、充放電用コネクタ58から第1外部端子40に充電電流が流れるのを阻止するように、別のダイオード56を配置する。なお、ダイオード48は、バスバー部品24と温度ヒューズ部品22との間に配設してもよい。
【0028】
以上の構成により、容易に、充電電流を、バスバー部品から温度ヒューズ部品を経由して、第1外部端子に入力し、かつ、放電電流を、バスバー部品および温度ヒューズ部品を介さずに、第1外部端子から直接的に出力することができる。
【0029】
さらに、放電電流の大きさによって、放電電流の出力経路を切り替えることもできる。具体的には、
図10に示すように、本実施形態の溶融塩電池に第2スイッチ50を備えさせる。そして、本実施形態の溶融塩電池を含む電源装置には、第2スイッチ50の切り替え制御を行う制御装置52と、第1外部端子40を介して出力される放電電流を検出する電流センサ53とを備えさせる。第2スイッチ50は、バスバー部品24と接続される第1入力端子50aと、第1外部端子40と直接的に接続される第2入力端子50bと、放電電流を出力するための出力端子50cとを有している。
【0030】
制御装置52は、電流センサ53の検出結果に基づいて、第1外部端子40から出力される放電電流が基準電流値(例えば、50A)未満のときに、放電電流を、温度ヒューズ部品からバスバー部品を経由して第1外部端子から出力するように第2スイッチ50を切り替える。また、制御装置52は、放電電流が基準電流値以上のときには、放電電流を、バスバー部品および温度ヒューズ部品を介さずに、第1外部端子から直接的に出力するように、第2スイッチ50を切り替える。これにより、放電電流が大電流であるときには、放電電流は、温度ヒューズ部品およびバスバー部品を介さずに出力される。したがって、放電電流が大電流であることに起因して、温度ヒューズ部品が誤作動するのを防止できる。
【0031】
第1外部端子には、柱状の部材を含ませることが好ましい。温度ヒューズ部品には、第1外部端子が挿通されるリング状の入力端子と、第1外部端子が挿通されるリング状の出力端子とを含ませることが好ましい。これにより、溶融塩電池をコンパクトに構成することができる。このとき、温度ヒューズ部品の入力端子は、バスバー部品と電気的に接続し、かつ、第1外部端子と電気的に絶縁する。反対に、温度ヒューズ部品の出力端子は、バスバー部品と電気的に絶縁し、かつ、第1外部端子と電気的に接続する。これにより、バスバー部品からの充電電流は、温度ヒューズ部品の入力端子を介して温度ヒューズ部品に入力され、出力端子を経由して、第1外部端子まで導かれる。
【0032】
また、固定部に樹脂を使用することで、温度ヒューズ部品を封口板に固定することが容易になる。このとき、樹脂にはシリコーン(Silicone)を使用することが好ましい。シリコーンは、ポリシロキサン構造を含み、樹脂の中でも最も熱伝導性の良好な材料の1つである。このため、例えば温度ヒューズ部品と封口板との間に固定部が介在する場合、つまり温度ヒューズ部品が、封口板と接触していないような場合にも、封口板の温度を温度ヒューズ部品の周囲温度に正確に反映させることができる。これにより、溶融塩電池の温度が電池電流を遮断すべき温度にまで上昇したときに、温度ヒューズ部品を適時に作動させることが容易になる。
【0033】
電池を使用しているときのケースまたは電極群の温度(以下、使用温度)T2の温度範囲の上限温度T2maxと、温度ヒューズ部品の作動温度(基準温度T1)との差、T1−T2max:ΔTは、10〜30度に設定するのが好ましい。温度差ΔTを10度以上に設定することで、温度ヒューズ部品の誤作動を抑えることが容易になる。温度差ΔTを30度以下に設定することで、温度ヒューズを適時に作動させることが容易になる。これにより、電池の損傷を抑えることが容易になるとともに、安全性を向上させることができる。
【0034】
さらに、封口板が、温度ヒューズ部品の少なくとも一部分を収容する凹部を有していることも好ましい。これにより、温度ヒューズ部品の作動に、封口板の温度変化を正確に反映させることが容易になる。
【0035】
ここで、溶融塩電池とは、溶融塩電解質を含み、かつアルカリ金属イオンを電荷のキャリアとする電池である。正極および負極では、アルカリ金属イオンが関与するファラデー反応が進行する。溶融塩電池には、例えば、ナトリウムイオン溶融塩電池(ナトリウムイオン二次電池)、リチウムイオン溶融塩電池(リチウムイオン二次電池)が含まれる。中でも、本発明は、ナトリウムイオン溶融塩電池に適用するのに適している。
【0036】
ここで、第1電極は、第1集電体と、第1集電体に担持された第1活物質とを含む。第2電極は、第2集電体と、第2集電体に担持された第2活物質とを含む。
第1集電体は、第1金属多孔体を含むことが好ましい。例えば第1電極が正極であれば、第1集電体には、アルミニウムを含む金属多孔体を使用するのが好ましい。
【0037】
蓄電デバイスの容量を増大させるためには、集電体の単位面積当りに担持される活物質量を極力多くすることが望まれる。ところが、従来の金属箔の集電体に多量の活物質を担持させると、活物質層が分厚くなり、活物質と集電体との平均距離が大きくなる。その結果、電極の集電性が低下するとともに、活物質と電解質との接触が制限され、充放電特性が損なわれやすくなる。
【0038】
そこで、連通孔を有する気孔率の高い金属多孔体を集電体として用いることが好ましい。金属多孔体は、例えば、発泡ウレタンなどの連通孔を有する発泡樹脂の骨格表面に金属層を形成した後、発泡樹脂を熱分解し、さらに金属を還元処理することによって製造される。
【0039】
また、電極群が複数の第1電極を含む場合には、複数の第1電極の第1集電体は、それぞれ、隣接する他の第1集電体と電気的に接続するためのタブ状の第1接続部を有しているのが好ましい。
【0040】
第2集電体にも、第2金属多孔体を含ませることができる。第2電極がナトリウムイオン溶融塩電池の負極であれば、第2集電体には、アルミニウムを含む金属多孔体を使用するのが好ましい。第2電極がリチウムイオン溶融塩電池の負極であれば、第2集電体には、銅を含む金属多孔体を使用するのが好ましい。そして、電極群が複数の第2電極を含む場合には、複数の第2電極の複数の第2集電体にも、それぞれ、隣接する他の第2集電体と電気的に接続するためのタブ状の第2接続部を設けることができる。それらの第2接続部は、電極群の積層方向に沿って重なるように配することができる。
【0041】
第1金属多孔体および第2金属多孔体は、活物質を担持させるべき表面積(以下、有効表面積ともいう)が単なる金属箔などよりも大きくなるような孔構造を有するものであればよい。そのような観点から、第1金属多孔体および第2金属多孔体としては、後で説明するセルメット(住友電気工業株式会社の登録商標)、アルミセルメット(住友電気工業株式会社の登録商標)などの三次元網目状で中空の骨格を有する金属多孔体が、単位体積当たりの有効表面積を顕著に大きくできるので、最も好ましい。その他に、第1金属多孔体および第2金属多孔体としては、不織布、パンチングメタル、エキスパンドメタルなどを使用することができる。なお、不織布、セルメット、アルミセルメットは、三次元構造の多孔体であり、パンチングメタル、エキスパンドメタルは、二次元構造の多孔体である。
【0042】
上述したような金属多孔体は、表面積が大きいため、多くの活物質を担持することができる上、電解質を保持しやすいため、蓄電デバイス用の電極として適していると考えられる。金属多孔体を集電体として含む同極性の電極を複数使用する場合、同極性の集電体同士は並列に接続される。
【0043】
[発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態の詳細について説明する。
図1に、本実施形態に係る溶融塩電池の外観を斜視図により示す。
図2は、その溶融塩電池の正面図(a)、上面図(b)および側面図(c)である。
【0044】
図示例の溶融塩電池10は、第1電極と第2電極とを含む電極群(図示せず)と、これを電解質(図示せず)とともに収容するケース14と、ケース14の開口部を封口する封口板16とを具備している。溶融塩電池10においては、ケース14と、封口板16とが溶融塩電池の容器を構成している。図示例では、ケース14は角形であり、本発明は、図示例のような角形ケースの溶融塩電池に対して好適に適用することができる。
【0045】
第1電極および第2電極の一方は正極であり、他方は負極である。正極は、正極集電体と正極活物質とを含む。負極は、負極集電体と負極活物質とを含む。したがって、第1集電体および第2集電体の一方は正極集電体であり、他方は負極集電体である。
【0046】
第1集電体(以下、正極集電体とする)には、第1金属多孔体を含ませることができる。第2集電体(以下、負極集電体とする)にも、第2金属多孔体を含ませることができる。正極集電体の厚みは0.1〜10mmが好ましい。負極集電体の厚みは0.1〜10mmが好ましい。
【0047】
第1集電体(正極集電体)は、気孔率が大きく(例えば90%以上)、連続気孔を有し、かつ閉気孔をほとんど含まない点で、アルミセルメット(住友電気工業株式会社の登録商標)が特に好ましい。また、第2集電体(負極集電体)は、同様の理由で、銅やニッケルのセルメット(住友電気工業株式会社の登録商標)、あるいはアルミセルメットが特に好ましい。セルメットもしくはアルミセルメットについては後で詳しく説明する。
【0048】
封口板16は、1以上の第1電極と電気的に接続された柱状の第1外部端子40と、1以上の第2電極と電気的に接続された柱状の第2外部端子42とを有している。第1外部端子40および第2外部端子42の外周部には雄ねじを形成することができる。また、第1外部端子40には、後で詳細に説明する電流分岐部が付設されている。
【0049】
封口板16の第2外部端子寄りの位置には、封口板16によりケース14の開口部を封口した後に、電解質をケースの内部に注入するための図示しない注液孔が設けられている。その注液孔は、液栓49によって塞がれている。封口板16の中央部には、ケース内圧が基準圧力まで上昇したときに破断して、ケース内部のガスを放出するガス抜き弁51が形成されている。
【0050】
角形のケース14は、長方形の4つの平面部を有する側壁と、4つの平面部に垂直な底部とを有している。4つの平面部は、面積の異なる2組の平面部を含んでいる。第1組は、互いに平行な、比較的に面積が大きい2つの平面部18A,18Bを含んでいる。第2組は、第1組の2つの平面部と垂直であり、かつ互いに平行な、比較的に面積が小さい2つの平面部18C、18Dを含んでいる。
【0051】
図3に、第1外部端子に付設された電流分岐部の分解斜視図を示す。電流分岐部20は、封口板16の温度(または、温度ヒューズ部品22の周囲温度)TSが基準温度T1(例えば、80〜100℃の温度)未満であるときにバスバー部品と第1外部端子とを導通させる一方で、周囲温度TSが基準温度T1に達するとバスバー部品と第1外部端子との間の電流を遮断する温度ヒューズ部品22を含んでいる。温度ヒューズ部品22は、入力端子22aと出力端子22bとを有している。
【0052】
さらに、電流分岐部20は、充電電流を入力するように第1外部端子40に固定される板状のバスバー部品24と、リング状ないしは円筒状の第1絶縁部26とを含んでいる。バスバー部品24は、第1外部端子40に挿通される貫通孔24aを有している。第1絶縁部26は、貫通孔24aの内周面と第1外部端子40の外周面との間に介在するように、第1外部端子40に固定される。これにより、バスバー部品24は貫通孔24aで第1外部端子40と接触することなく、電気的に絶縁されて、第1外部端子40に固定される。
【0053】
一方で、バスバー部品24は、温度ヒューズ部品22の入力端子22aと接触した状態で第1外部端子40に固定される。これにより、バスバー部品24と入力端子22aとが導通される。そして、温度ヒューズ部品22の出力端子22bは、第1外部端子40と導通した状態で第1外部端子40に固定される。温度ヒューズ部品22の入力端子22aと、出力端子22bとの間には、平板リング状の第2絶縁部28が配置されており、入力端子22aと出力端子22bとは電気的に絶縁されている。
【0054】
温度ヒューズ部品22の入力端子22aには第1絶縁部26が挿通されており、これにより入力端子22aと第1外部端子40とは電気的に絶縁されている。一方、温度ヒューズ部品22の出力端子22bは第1外部端子40と接触しており、出力端子22bと第1外部端子40とは電気的に接続されている。
【0055】
以上の構成により、封口板16の温度が基準温度T1未満であるときに、第1外部端子40とバスバー部品24とは、温度ヒューズ部品22を介して導通される。これにより、封口板16の温度が基準温度T1未満であるときに、充電電流がバスバー部品24から温度ヒューズ部品22を経由して、第1外部端子40に入力可能である。
【0056】
温度ヒューズ部品22の入力端子22aおよび出力端子22bと、第1絶縁部26と、第2絶縁部28とは、例えばナット29を第1外部端子40の雄ねじに締め込むことで第1外部端子40に固定することができる。ナット29とバスバー部品24との間にはワッシャ30を配することができる。このとき、ワッシャ30とバスバー部品24との間には、平板リング状の第3絶縁部32を配設することができる。これにより、ワッシャ30とバスバー部品24とが電気的に絶縁される。そして、放電用のライン(不図示である)は、例えばナット29とワッシャ30との間や、ワッシャ30と第3絶縁部32との間で、第1外部端子40に接続することができる。
【0057】
図5に示すように、温度ヒューズ部品22は、例えばシリコーンを含む固定部34により封口板16に固定することができる。このとき、温度ヒューズ部品22は、封口板16と接触していてもよいし、接触せずに、例えば、最短距離を1mm以下とするように、近接配置されるだけでもよい。このとき、温度ヒューズ部品22と封口板16との隙間には、固定部34を充填することが好ましい。ただし、温度ヒューズ部品22と封口板16とは、封口板16の温度を温度ヒューズ部品22の作動に正確に反映できる点で、接触しているのがより好ましい。同様の理由で、
図6に示すように、封口板16に温度ヒューズ部品22の少なくとも一部分を収容する凹部16aを設けるのが好ましい。
【0058】
次に、第1集電体または第2集電体として用いられる金属多孔体について詳しく説明する。
金属多孔体は、三次元網目状で中空の骨格を有することが好ましい。骨格が内部に空洞を有することで、金属多孔体は、嵩高い三次元構造を有しながらも、極めて軽量である。このような金属多孔体は、連続空隙を有する樹脂製の多孔体を、集電体を構成する金属でメッキ処理し、さらに加熱処理などにより、内部の樹脂を分解または溶解させることにより形成できる。メッキ処理により、三次元網目状の骨格が形成され、樹脂の分解や溶解により、骨格の内部を中空にすることができる。
【0059】
樹脂製の多孔体としては、連続空隙を有する限り、特に制限されず、樹脂発泡体、樹脂製の不織布などが使用できる。加熱処理後、骨格内に残存した成分(樹脂、分解物、未反応モノマー、樹脂に含まれる添加剤など)を洗浄などにより除去してもよい。
【0060】
樹脂製多孔体を構成する樹脂としては、熱硬化性ポリウレタン、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂;オレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、熱可塑性ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂などが例示できる。樹脂発泡体を用いると、樹脂の種類や発泡体の製造方法にもよるが、発泡体内部に形成された個々の空孔がセル状となる。そして、セルが連なって連通し、連続空隙が形成される。このような発泡体では、セル状の空孔が小さく、サイズがより均一となり易い。中でも熱硬化性ポリウレタンなどを用いると、空孔のサイズや形状がより均一になりやすい。
【0061】
メッキ処理は、樹脂製多孔体の表面(連続空隙内の表面も含む)に、集電体として機能する金属層を形成できればよく、公知のメッキ処理方法、例えば、電解メッキ法、溶融塩メッキ法などが採用できる。メッキ処理により、樹脂製多孔体の形状に応じた、三次元網目状の金属多孔体が形成される。なお、電解メッキ法によりメッキ処理を行う場合、電解メッキに先立って、導電性層を形成することが望ましい。導電性層は、樹脂製多孔体の表面に、無電解メッキ、蒸着、スパッタリングなどの他、導電剤の塗布などにより形成してもよく、導電剤を含む分散液に樹脂製多孔体を浸漬することにより形成してもよい。
【0062】
メッキ処理後、加熱により樹脂製多孔体を除去することにより、金属多孔体の骨格の内部に空洞が形成されて中空となる。骨格内部の空洞の幅は、平均値で、例えば0.5〜5μm、好ましくは1〜4μmまたは2〜3μmである。樹脂製多孔体は、必要に応じて、適宜電圧を印加しながら加熱処理を行うことにより除去できる。また、溶融塩メッキ浴に、メッキ処理した多孔体を浸漬し、電圧を印加しながら、加熱処理を行ってもよい。
【0063】
金属多孔体は、樹脂製発泡体の形状に対応する三次元網目構造を有する。具体的には、集電体は、1つ1つがセル状の空孔を多数有しており、これらのセル状の空孔が互いに連なって連通した連続空隙を有する。隣り合うセル状の空孔の間には、開口(または窓)が形成される。この開口により、空孔が互いに連通した状態となることが好ましい。開口(または窓)の形状は特に制限されないが、例えば、略多角形(略三角形、略四角形、略五角形、および/または略六角形など)である。なお、略多角形状とは、多角形、および多角形に類似の形状(例えば、多角形の角が丸まった形状、多角形の辺が曲線となった形状など)を含む意味で使用する。
【0064】
金属多孔体は、気孔率が非常に高く、比表面積が大きい。つまり、空隙内の表面も含む広い面積に活物質を多く付着させることができる。また、多くの活物質を空隙内に充填しながらも、金属多孔体と活物質との接触面積が大きく、気孔率も大きくすることができるので、活物質を有効利用できる。溶融塩電池の正極では、通常、導電助剤を添加することにより、導電性を高めている。一方、上記のような金属多孔体を正極集電体として用いることにより、導電助剤の添加量を少なくしても、高い導電性を確保し易い。よって、電池のレート特性やエネルギ密度(および容量)をより有効に高めることができる。
【0065】
金属多孔体の比表面積(BET比表面積)は、例えば100〜700cm
2/g、好ましくは150〜650cm
2/g、さらに好ましくは200〜600cm
2/gである。
【0066】
金属多孔体の気孔率は、例えば、40〜99体積%、好ましくは60〜98体積%、さらに好ましくは80〜98体積%である。また、三次元網目構造における平均空孔径(互いに連通するセル状の空孔の平均径)は、例えば50〜1000μm、好ましくは100〜900μm、さらに好ましくは350〜900μmである。ただし、平均空孔径は、金属多孔体(または電極)の厚みよりも小さい。なお、圧延により、金属多孔体の骨格は変形して、気孔率および平均空孔径は変化する。上記気孔率および平均空孔径の範囲は、圧延前(合剤充填前)の金属多孔体の気孔率および平均空孔径である。
【0067】
溶融塩電池の正極集電体を構成する金属(上記のメッキされる金属)としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケルおよびニッケル合金より選択される少なくとも一種が例示できる。溶融塩電池の負極集電体を構成する金属(上記のメッキされる金属)としては、正極集電体を構成する金属として例示したものの他に、例えば銅、銅合金、ニッケルおよびニッケル合金より選択される少なくとも一種が例示できる。
【0068】
正極または負極は、例えば、上記のようにして得られる金属多孔体の空隙に、電極合剤を充填し、必要に応じて、厚み方向に集電体を圧縮することにより形成される。電極合剤は、必須成分としての活物質を含み、任意成分としての導電助剤および/またはバインダを含んでもよい。
【0069】
集電体のセル状の空孔内に、合剤を充填することにより形成される合剤層の厚みw
mは、例えば、10〜500μm、好ましくは40〜250μm、さらに好ましくは100〜200μmである。セル状の空孔内に形成される合剤層の内側に空隙を確保できるように、合剤層の厚みw
mは、セル状の空孔の平均空孔径の5〜40%であることが好ましく、10〜30%であることがさらに好ましい。
【0070】
溶融塩電池の負極活物質としては、ナトリウムイオン、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンを可逆的に担持する物質を使用できる。このような物質としては、例えば、炭素物質、スピネル型リチウムチタン酸化物、スピネル型ナトリウムチタン酸化物、ケイ素酸化物、ケイ素合金、錫酸化物、錫合金などが挙げられる。炭素物質としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)などが例示できる。
【0071】
溶融塩電池の正極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に担持する遷移金属化合物が好ましく用いられる。遷移金属化合物としては、ナトリウム含有遷移金属酸化物(例えばNaCrO
2)、リチウム含有遷移金属酸化物(例えばLiCoO
2)などを用いることができる。
なお、正極および負極において、アルカリ金属イオンを可逆的に担持する反応は、例えば、アルカリ金属イオンを吸蔵および放出(挿入および脱離)する反応である。
【0072】
電極合剤に含ませる導電助剤の種類は、特に制限されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;カーボンナノチューブなどのナノカーボンなどが挙げられる。導電助剤の量は、特に限定されず、活物質100質量部あたり、例えば0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。)
【0073】
第1電極極および第2電極の厚みは、0.2mm以上、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上である。また、第1電極極および第2電極の厚みは、5mm以下、好ましくは4.5mm以下、さらに好ましくは4mm以下または3mm以下である。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。第1電極極および第2電極の厚みは、0.5〜4.5mmまたは0.7〜4mmであってもよい。
【0074】
セパレータは、イオン透過性を有し、第1電極極と第2電極との間に介在して、これらの短絡を防止する。セパレータは、多孔質構造を有し、細孔内に電解質を保持することで、イオンを透過させる。セパレータとしては、微多孔フィルム、不織布(紙も含む)などを使用できる。
【0075】
溶融塩電池の電解質(溶融塩電解質)は、アルカリ金属カチオンとアニオン(第1アニオン)との塩を含む。アルカリ金属カチオンとしては、ナトリウムイオン、リチウムイオンなどが挙げられる。第1アニオンとしては、フッ素含有酸アニオン(PF
6-、BF
4-など)、塩素含有酸アニオン(ClO
4-)、ビススルホニルアミドアニオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF
3SO
3-)などが挙げられる。
【0076】
溶融塩電解質は、耐熱性の向上の観点からは、90質量%以上が溶融塩(アニオンとカチオンで構成されるイオン性物質)で占められていることが好ましい。
【0077】
溶融塩は、アルカリ金属カチオンの他に、有機カチオンを含むことが好ましい。有機カチオンとしては、窒素含有カチオン;イオウ含有カチオン;リン含有カチオンなどが例示できる。有機カチオンの対アニオンとしては、ビススルホニルアミドアニオンが好ましい。ビススルホニルアミドアニオンの中でも、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオン((N(SO
2F)
2-)(FSA
-:bis(fluorosulfonyl)amide anion));ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン(N(SO
2CF
3)
2-)(TFSA
-:bis(trifluoromethylsulfonyl)amide anion)、(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン(N(SO
2F)(SO
2CF
3)
-)((fluorosulfonyl)(trifluoromethylsulfonyl)amide anion)などが好ましい。
【0078】
窒素含有カチオンとしては、例えば、第4級アンモニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンなどが例示できる。
【0079】
第4級アンモニウムカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウム(TEA
+:tetraethylammonium cation)、メチルトリエチルアンモニウムカチオン(TEMA
+:methyltriethylammonium cation)などのテトラアルキルアンモニウムカチオン(テトラC
1-10アルキルアンモニウムカチオンなど)などが挙げられる。
【0080】
ピロリジニウムカチオンとしては、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1,1−ジエチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン(MPPY
+:1-methyl-1-propylpyrrolidinium cation)、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムカチオン(MBPY
+:1-butyl-1-methylpyrrolidinium cation)、1−エチル−1−プロピルピロリジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0081】
ピリジニウムカチオンとしては、1−メチルピリジニウムカチオン、1−エチルピリジニウムカチオン、1−プロピルピリジニウムカチオンなどの1−アルキルピリジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0082】
イミダゾリウムカチオンとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(EMI
+: 1-ethyl-3-methylimidazolium cation)、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(BMI
+:1-buthyl-3-methylimidazolium cation)、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムカチオンなどが挙げられる。
【0083】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
図1に示すような外観を有するナトリウム溶融塩電池(定格容量:26Ah)を組み立てた。ケースには、厚み(平面部の厚み)が0.9mmである、A3003(アルミニウム合金)を使用した。封口板には、厚み(平面部の厚み)が1.5mmである、A3003(アルミニウム合金)を使用した。温度ヒューズ部品として、日本エマソン株式会社製のS9E51084C(製品番号)を使用した。温度ヒューズ部品は、シリコーンを含む樹脂素材(信越化学工業株式会社製のシリコーンゴム、KE−3467(製品番号))により、封口板に接触した状態で固定した。
【0085】
温度ヒューズ部品の作動温度、すなわち基準温度(ヒューズが作動するときの温度ヒューズ部品の表面温度)T1は、84℃に設定した。バスバー部品には、厚みが1.5mmである銅板を使用した。溶融塩電解質には、Na・FSAと、MPPY・FSAとを、モル比、40:60で混合した混合物を用いた。
【0086】
上記のナトリウム溶融塩電池(以下、電池Aという)を100個作製した。電池Aに対して下記の(試験条件1)で100サイクルの充放電試験を実行した。このとき、電池温度が使用温度T2に達してから充放電試験を実行した。また、電池温度を使用温度T2まで昇温し、その温度を維持するために、電池ケースの表面にヒータを設置し、電池を加熱した。電池温度を測定するために、ヒータを設けたケース側壁とは反対側のケース側壁に温度センサを設置した。実施例1、および比較例1、2では、この温度センサにより測定された温度を電池温度とする。
【0087】
充電電流は、バスバー部品から温度ヒューズ部品を経由して第1外部端子(具体的には、正極外部端子)に入力するようにした。放電電流は、バスバー部品および温度ヒューズ部品を経由せずに、直接に第1外部端子から出力するようにした。また、100サイクルの充放電試験を完了した後、1つの電池Aに対して、101サイクル目の充電を行った。このとき、その電池Aを過充電状態にするために、充電終止電圧に達した後、同じ充電電流で、さらに充電を継続し、その後の経過を観察した(過充電試験)。
【0088】
(試験条件1)
定格容量:26Ah
充電電流:26A
使用温度T2:70℃(T1−T2=14度)
充電終止電圧:3.3V
放電終止電圧:1.5V
【0089】
(比較例1)
上記樹脂素材により、温度ヒューズ部品をケースに接触させて固定した点で実施例1の電池Aと異なる電池(以下、電池Xという)を100個作製した。温度ヒューズ部品は、温度センサを設置したケース側壁と同じ側のケース側壁に接触させた。そして、実施例1と同様にして、100個の電池Xを使用して、充放電試験と過充電試験を実行した。
【0090】
(比較例2)
バスバー部品および温度ヒューズ部品を含んでいない点で実施例1の電池Aとは異なる電池(以下、電池Yという)を100個作製した。そして、バスバー部品および温度ヒューズ部品を経由せずに、充電電流および放電電流を直接に第1外部端子に入出力したこと以外は、実施例1と同様にして、100個の電池Yを使用して、充放電試験を実行した。
【0091】
実施例1および比較例1、2の結果を下記表1に示す。
【0093】
表1から明らかなように、温度ヒューズ部品を含む安全機構を実装した実施例1および比較例1では、電池が過充電状態になり、周囲温度が基準温度(84℃)の近傍の温度に達したときに温度ヒューズ部品が作動し、電池電流が遮断され、充電が停止された。一方、上記安全機構を実装していない比較例2では、電池が過充電状態になっても充電が継続され、電池に不具合が生じた。この結果により、温度ヒューズ部品を含む安全機構を溶融塩電池に実装することで、溶融塩電池の安全性が向上されることが確かめられた。
【0094】
しかしながら、温度ヒューズ部品をケースの表面に近接配置した比較例1では、試験条件1の使用温度T2が70℃と比較的に高いこともあって、3個の電池で、過充電状態となっていない100サイクルの充放電試験中に、温度ヒューズ部品が誤作動した。これに対して、封口板の表面に温度ヒューズ部品を近接配置した実施例1では、100サイクルの充放電試験中に温度ヒューズ部品が誤作動したものはなかった。
【0095】
比較例1で温度ヒューズ部品が誤作動した原因は、溶融塩電池の温度変動が大きいことによるものと思われる。より具体的には、平均温度が70℃であっても、電池温度が瞬間的に基準温度に達することがあり、比較例1では、そのときに温度ヒューズ部品が誤作動したものと考えられる。一方、実施例1では、電池温度が瞬間的に基準温度に達しても、その温度変動が平均化されて封口板に伝わることで、ピーク温度が比較例1よりも低くなり、温度ヒューズ部品の誤作動が防止できたものと考えられる。この結果により、封口板の表面に温度ヒューズ部品を近接配置することで、温度ヒューズ部品の誤作動が抑えられることが確かめられた。
【0096】
また、実施例1で、温度ヒューズ部品の誤作動を抑えることができた他の要因として、温度ヒューズ部品を、シリコーンを含む固定部により封口板に固定したことが挙げられる。熱伝導性に優れたシリコーンを固定部に使用することで、封口板の温度を温度ヒューズ部品の作動に正確に反映させることができたものと思われる。これにより、電池の使用温度と温度ヒューズ部品の作動温度との差が小さいときにも、温度ヒューズ部品の誤作動を抑える一方で、電池電流を遮断すべき必要性があるときに、温度ヒューズ部品を確実に作動させることができたものと思われる。