特許第6149773号(P6149773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149773
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20170612BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20170612BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20170612BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20170612BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   G03G21/00 318
   G03G15/16
   G03G5/147 502
   G03G5/05 101
   G03G5/06 313
   G03G5/06 312
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-64817(P2014-64817)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-187650(P2015-187650A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰岳
【審査官】 齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−197309(JP,A)
【文献】 特開2004−093864(JP,A)
【文献】 特開2001−265186(JP,A)
【文献】 特開2012−047959(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0229233(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 5/05
G03G 5/06
G03G 5/147
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転して側面に像を保持する像保持体と、
前記側面に付着した物質を除去する除去部材と
を有し、
前記像保持体の前記側面は、摂氏28度で0.5ヘルツの振動を与えたときの損失正接が0.035以下(0.026以下を除く)の第1材料により形成され、
前記除去部材は、
前記側面と接触点で接触する接触部と、
前記接触点の反対側から当該接触部を支持する支持部とを有し、
前記接触部が、100%モジュラスの値が7メガパスカル以上である第2材料で形成され、
前記支持部が、前記第2材料よりも硬度が低い第3材料で形成され、
前記像保持体の回転方向における前記接触点の上流側に対向する対向面の法線ベクトルが、重力方向の上に向かう成分を含まない
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記接触点は、
前記側面のうち重力方向の上に移動している領域にある
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像保持体は、
前記側面の前記接触点における法線ベクトルが、重力方向の上に向かう成分を含まない
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1材料は、電荷輸送能を有する下記一般式(1)に示すブタジエン構造を有する化合物と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位及び下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート共重合体と、を含む
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【化1】
(一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、及び、R6は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、又は、置換若しくは無置換のアリ−ル基を示す。m及びnは0又は1を示す。)
【化2】
【化3】
(一般式(2)及び一般式(3)中、R7、R8、R9、及び、R10は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は、炭素数6以上12以下のアリール基を表す。Xは、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、直鎖若しくは分岐アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、HU(ユニバーサル硬さ値)が150N/mm2以上220N/mm2以下であり、かつ、弾性変形率Woが44%以上65%以下である表面を有する電子写真感光体表面に対して脂肪酸金属塩を供給する脂肪酸金属塩供給手段を有し、かつ、クリーニングブレードのゴム硬度が78度以上99度以下となるようにした画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−164775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、除去性能の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る画像形成装置は、回転して側面に像を保持する像保持体と、前記側面に付着した物質を除去する除去部材とを有し、前記像保持体の前記側面は、摂氏28度で0.5ヘルツの振動を与えたときの損失正接が0.035以下(0.026以下を除く)の第1材料により形成され、前記除去部材は、前記側面と接触点で接触する接触部と、前記接触点の反対側から当該接触部を支持する支持部とを有し、前記接触部が、100%モジュラスの値が7メガパスカル以上である第2材料で形成され、前記支持部が、前記第2材料よりも硬度が低い第3材料で形成され、前記像保持体の回転方向における前記接触点の上流側に対向する対向面の法線ベクトルが、重力方向の上に向かう成分を含まないことを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る画像形成装置は、請求項1に記載の態様において、前記接触点は、前記側面のうち重力方向の上に移動している領域にあることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る画像形成装置は、請求項1または2に記載の態様において、前記像保持体は、前記側面の前記接触点における法線ベクトルが、重力方向の上に向かう成分を含まないことを特徴とする。
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載の態様において、前記第1材料は、電荷輸送能を有する下記一般式(1)に示すブタジエン構造を有する化合物と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位及び下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート共重合体と、を含むことを特徴とする。
【化1】
(一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、及び、R6は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、又は、置換若しくは無置換のアリ−ル基を示す。m及びnは0又は1を示す。)
【化2】
【化3】
(一般式(2)及び一般式(3)中、R7、R8、R9、及び、R10は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は、炭素数6以上12以下のアリール基を表す。Xは、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、直鎖若しくは分岐アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。)
【発明の効果】
【0007】
請求項1、4に係る発明によれば、この構成を有しない場合に比べて除去性能の劣化を抑制することができる。
請求項2、3に係る発明によれば、除去された物質が像保持体の側面上に堆積し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す図である。
図2】ドラムクリーナの構成を示す図である。
図3図2における領域IIIを拡大した図である。
図4】像保持体に対する除去部材の配置を説明するための図である。
図5】変形例におけるドラムクリーナの構成を示す図である。
図6】変形例におけるドラムクリーナの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施形態
1−1.画像形成装置の全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す図である。
以下、図において、画像形成装置1の各構成の配置を説明するため、各構成が配置される空間をxyz右手系座標空間として表す。図に示す座標記号のうち、白い円の中に黒い円を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表している。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を−x方向という。y、z成分についても、上記の定義に沿ってy軸方向、+y方向、−y方向、z軸方向、+z方向、−z方向を定義する。
【0010】
図1に示すように、画像形成装置1は、現像部13と、転写部14と、定着部15と、搬送部16とを有している。
搬送部16は、容器と搬送ロールとを有する。容器には媒体としての用紙Pが収容される。容器に収容されている用紙Pは、図示しない制御部の指示により搬送ロールによって1枚ずつ取り出され、用紙搬送路を経由して転写部14へと搬送される。なお、媒体は用紙に限らず、例えば樹脂製のシートなどであってもよい。要するに、媒体は、表面に画像を記録し得るものであればよい。
【0011】
現像部13は、像保持体31と、帯電器32と、露光装置33と、現像装置34と、一次転写ロール35と、ドラムクリーナ36とを有している。像保持体31は、電荷発生層や電荷輸送層を有する感光体ドラムであり、図示しない駆動部により図中の矢線D13の方向に回転させられる。
【0012】
像保持体31の側面を形成する材料(以下、第1材料という)は、損失正接が0.015以上、0.035以下となるものを用いる。
【0013】
ここで、損失正接(以下、「tanδ」とも表記する)とは、K6394−2007「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−動的性質の求め方」に定める「損失正接」であって、損失弾性係数と貯蔵弾性係数との比である。損失正接は、材料の種類や温度など測定条件により異なる値を示す。tanδの「δ」は、損失角である。ここでは、測定条件を摂氏28度で0.5ヘルツの振動を与えたとき、とした。
【0014】
具体的には、第1材料として適した材料に、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、および上記した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などが挙げられる。また、第1材料は、特に電荷輸送能を有する下記一般式(1)に示すブタジエン構造を有する化合物を含むとよい。
【化4】
【0015】
この一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、及び、R6は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、又は、置換若しくは無置換のアリ−ル基を示す。m及びnは0又は1を示す。
【0016】
また、第1材料には、例えば、バインダー樹脂(結着樹脂)として公知の樹脂を使用してもよく、電気絶縁性のフィルムとして形成される樹脂を使用してもよい。第1材料に使用されるバインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンーブタジエン共重合体、塩化ビニリデンーアクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、スチレンーアルキッド樹脂、ポリーN―カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタンなどが挙げられる。また、特に、第1材料は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位及び下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート共重合体を含むとよい。
【化5】
【化6】
【0017】
これらの一般式(2)及び一般式(3)中、R7、R8、R9、及び、R10は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は、炭素数6以上12以下のアリール基を表す。Xは、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、直鎖若しくは分岐アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。
【0018】
帯電器32は像保持体31の表面を帯電させる。露光装置33はレーザ発光源やポリゴンミラーなど(いずれも図示せず)を有し、図示しない制御部の制御の下、画像データに応じたレーザ光を、帯電器32により帯電させられた後の像保持体31に向けて照射する。これにより、像保持体31の側面には潜像が保持される。
【0019】
なお、上記の画像データは、画像形成装置1が図示しない通信部を介して外部装置から取得したものであってもよい。外部装置とは、例えば原画像を読み取る読取装置や画像を示すデータを記憶した記憶装置などである。現像装置34は現像剤を像保持体31に供給する。これにより像保持体31には、画像が形成(現像)される。
【0020】
一次転写ロール35は転写部14の中間転写ベルト41が像保持体31と対向する位置において予め定めた電位差を生じさせ、この電位差によって中間転写ベルト41に画像を転写する。ドラムクリーナ36は、画像の転写後に像保持体31の表面に残留している未転写のトナーを取り除き、像保持体31の表面を除電する。
【0021】
転写部14は、中間転写ベルト41と、二次転写ロール42と、ベルト搬送ロール43と、バックアップロール44と、ベルトクリーナ49とを有しており、現像部13によって形成された画像を用紙Pに転写する転写部である。中間転写ベルト41は無端のベルト部材であり、ベルト搬送ロール43およびバックアップロール44はこの中間転写ベルト41を張架する。ベルト搬送ロール43およびバックアップロール44の少なくとも1つには駆動部(図示せず)が備えられており、中間転写ベルト41を図1の矢印D14方向に移動させる。なお、駆動部を有しないベルト搬送ロール43またはバックアップロール44は、中間転写ベルト41の移動に伴って回転する。中間転写ベルト41が図1の矢印D14方向に移動して回転することにより、中間転写ベルト41上の画像は、二次転写ロール42とバックアップロール44とに挟まれる領域に移動させられる。
【0022】
二次転写ロール42は、中間転写ベルト41との電位差によって、中間転写ベルト41上の画像を搬送部16から搬送されてきた用紙Pに転写させる。ベルトクリーナ49は、中間転写ベルト41の表面に残留している未転写のトナーを取り除く。そして、転写部14または搬送部16は、画像が転写された用紙Pを定着部15へと搬送する。定着部15は、加熱によって用紙Pに転写された画像を定着させる。
【0023】
1−2.ドラムクリーナの構成
図2は、ドラムクリーナ36の構成を示す図である。図2に示すように、ドラムクリーナ36は、ケース360、除去部材361、および保持部材362を有する。ドラムクリーナ36は、他に像保持体31の表面を除電する機構やその表面に潤滑剤を供給する機構などを有していてもよい。
【0024】
ケース360は、像保持体31に対向する側に開口部を有する筐体であり、天井板に固定された保持部材362を有する。保持部材362は、除去部材361の一端を保持し、他端をケース360の開口部から露出させて、決められた圧力(以下、接触圧という)および決められた角度(以下、接触角度という)で像保持体31に対して接触させる。なお、図2に示すように、像保持体31の接触点における接平面と、除去部材361の接触部3611が伸びる方向との角度θが接触角度である。
【0025】
除去部材361は、いわゆる二層構造のクリーニングブレードであり、接触部3611と支持部3612とを有する。接触部3611は、像保持体31に接触して像保持体31の表面に付着したトナーなどの物質を除去する。支持部3612は、接触部3611が像保持体31に接触する点(以下、接触点という)の反対側から接触部3611を支持する。除去部材361の接触部3611によって掻き落とされた上記の物質はケース360に収容されメンテナンスの際に画像形成装置1から取り除かれる。
【0026】
なお、図2に示す保持部材362は、除去部材361のうち支持部3612の側を保持しているが、接触部3611の側を保持してもよいし、接触部3611および支持部3612の両方に接触して除去部材361を保持してもよい。
【0027】
接触部3611および支持部3612の各材料は、以下の規定を満たすものが用いられる。すなわち、接触部3611を構成する材料(以下、第2材料という)は、100%モジュラスの値が7メガパスカル以上になるように調整された材料である。100%モジュラスの値とは、JISのK6251−2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に定める「所定伸び引張応力」であり、試験片に100%の伸びを与えたときの引張力を試験片の初期断面積で除した値である。ここでは、試験温度として25℃を採用する。これにより、第2材料によって構成される接触部3611の摩耗が抑制される。
支持部3612を構成する材料(以下、第3材料という)は、第2材料よりも硬度が低い材料である。
【0028】
1−3.除去部材の配置
図3は、図2における領域IIIを拡大した図である。像保持体31は、矢線D13の方向に回転しており、除去部材361の接触部3611は、接触点Cで像保持体31の側面F0に接触している。
除去部材361は、先端に対向面F1を有する。この対向面F1は、像保持体31の回転方向における接触点Cの上流側に対向する面である。
【0029】
ここで、接触点Cおよび対向面F1が、以下の2つの条件を満たすように除去部材361の配置が決められる。
(条件a)接触点Cは、像保持体31の側面のうち、重力方向の上(+z方向)に移動している領域にある。すなわち、接触点Cは、像保持体31が昇る側の側面にある。
(条件b)対向面F1の法線ベクトルN1は、重力方向の上(+z方向)に向かう成分を含まない。すなわち、対向面F1は下向きの面である。
【0030】
図4は、像保持体31に対する除去部材361の配置を説明するための図である。上述した2つの条件により、像保持体31に対して除去部材361が配置される範囲が定まる。条件aにより、接触点Cは、像保持体31が昇る側の側面にあるので、図4に示す領域R1の範囲内にある。条件bにより、対向面F1は下向きの面であるので、図4に示す領域R2の範囲内にある。条件aおよび条件bをいずれも満たすため、除去部材361は、領域R1と領域R2とが重なる領域にある接触点Cと接触する。つまり、図4においては、除去部材361−0から除去部材361−5までが、配置可能な除去部材361である。
【0031】
接触点Cを像保持体31が昇る側の側面に限定したため、像保持体31の側面に付着しているトナーなどの物質が除去部材361により剥がされたときに、この物質が除去部材361に阻まれて落下し難くなり、除去部材361と像保持体31との間に留まる可能性が低減される。また、対向面F1を下向きの面としたため、剥がされた上記の物質が対向面F1に載り難くなり、除去部材361と像保持体31との間に留まる可能性が低減される。以上説明したとおり、条件aおよび条件bを設けたことによって、像保持体31の側面から剥がされた物質が、除去部材361と像保持体31との間に留まる可能性が低減されるため、除去部材361の摩耗、変形、振動が抑えられる。そして、これらが抑えられるため、除去性能の劣化が低減する。
【0032】
2.試験例
2−1.試験構成
以下に、試験1から試験11を行った。表1に示すように、試験に用いた各装置は、上述した対向面F1の向き、像保持体31の側面に用いる第1材料、第1材料の損失正接、接触部3611の100%モジュラスの値によってそれぞれ特徴付けられる。
第1材料として、材料M1,M2,M3,M4を用いた。材料M1は、以下に示す手順に従って作成された。
【0033】
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m2/g)100質量部をメタノール500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、KBM603(信越化学社製)0.75質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、メタノールを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0034】
前記表面処理を施した酸化亜鉛粒子60質量部と、式(4)に示すアントラキノン構造を含む反応性アクセプター物質を1.2質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引き層形成用塗布液を得た。下引き層形成用塗布液の塗布温度(24℃)における粘度は235mPa・sであった。
この塗布液を、浸漬塗布法にて塗布速度220mm/minで直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ25μmの下引き層を得た。
【0035】
次に、電荷発生材料として、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部およびn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層形成用塗布液を得た。電荷発生層形成用塗布液の塗布温度(24℃)における粘度は1.8mPa・sであった。この塗布液を前記下引き層上に浸漬塗布法にて塗布速度65mm/minで浸漬塗布し、150℃で10分間乾燥して電荷発生層を得た。
【0036】
次に、4フッ化エチレン樹脂粒子8質量部(平均粒径:0.2μm)と、フッ化アルキル基含有メタクリルコポリマー(重量平均分子量30000)0.01質量部とを、テトラヒドロフラン4質量部、トルエン1質量部とともに20℃の液温に保ち、48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液Aを得た。
次に、電荷輸送物質として下記構造式1を示す化合物(一般式(1)において、n=1、m=1、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6が全てHのもの、トリス[4−(4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエニル)フェニル]アミン)を4質量部、バインダー樹脂として、下記構造式2(一般式(2)において、R7及びR8が全てHのもの)および下記構造式3(一般式(3)において、Xがイソプロピリデン基、R9及びR10が全てCH3のもの)の繰り返し単位からなるポリカーボネート共重合体(粘度平均分子量40000)を6質量部、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.1質量部を混合して、テトラヒドロフラン24質量部及びトルエン11質量部を混合溶解して、混合溶解液Bを得た。なお、構造式3の繰り返し単位からなるポリカーボネート共重合体は、ビスフェノールC型ポリカーボネートである。
【0037】
このB液に前記A液を加えて攪拌混合した後、微細な流路を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興行株式会社製)を用いて、500kgf/cm2まで昇圧しての分散処理を6回繰り返した液に、フッ素変性シリコーンオイル(商品名:FL−100 信越シリコーン社製)を5ppm添加し、十分に撹拌して電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に24μmの厚さで塗布して135℃で25分間乾燥して電荷輸送層を形成し、目的の材料M1を得た。
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
材料M2は、上述した手順のうち、バインダー樹脂を構成する物質のうち、構造式3の繰り返し単位からなるポリカーボネート共重合体を、一般式(3)のXをシクロアルキレン基とした構造式の繰り返し単位からなるポリカーボネート共重合体に変更した手順に従って作成された。
材料M3は、上述した手順のうち、バインダー樹脂として構造式2の繰り返し単位を含まず、構造式3の繰り返し単位のみからなるポリカーボネート共重合体(ビスフェノールC型ポリカーボネート)を用いて作成された。
材料M4は、電荷輸送物質として下記構造式4を示す化合物であるN,N´−ビス(3−メチルフェニル)−N,N´−ジフェニルベンジジンを4質量部、バインダー樹脂として下記構造式5を示す化合物であるビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40000)を6質量部、それぞれ用いた以外は、上述した手順と共通の手順に従って作成された。
【0041】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】
【化11】
【0044】
材料M5は、N,N´−ビス(3−メチルフェニル)−N,N´−ジフェニルベンジジンを減量し、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40000)を増量することによって損失正接が0.015未満となるように調整した以外は、材料M4と共通の手順に従って作成された。
【0045】
2−2.評価方法
各試験例について、画質および摩耗の評価をした。評価は、高いものから順に「優」「良」「困難」「不適」の四段階とし、「優」または「良」と評価されたものを有効な構成と判断した。
【0046】
画質の評価は、画像密度1%のランダムチャートを1万枚採取した後、画像密度100%の画像を採取し、直後に像保持体31の側面条に残留したスジの本数を数えることで評価した。スジの本数が0のものを「優」、2本以下のものを「良」、3本以上5本以下のものを「困難」、6本以上のものを「不適」と評価した。
【0047】
摩耗の評価は、画像密度1%のランダムチャートを1万枚採取した後、接触部3611が摩耗した部分の面積を計測することで評価した。面積が5平方マイクロメートル(μm2)以下のものを「優」、10平方マイクロメートル(μm2)以下のものを「良」、20平方マイクロメートル(μm2)以下のものを「困難」、20平方マイクロメートル(μm2)を超えるものを「不適」と評価した。
【0048】
2−3.試験結果
表1に示す通り、試験例1から5についての評価は、画質、摩耗ともに「優」または「良」であった。試験例1から5の構成は、いずれも、対向面F1の方向が下向きであり、像保持体31の側面を形成する第1材料が、摂氏28度で0.5ヘルツの振動を与えたときの損失正接が0.015以上、0.035以下であり、接触部3611を構成する第2材料について測定した100%モジュラスの値が7メガパスカル以上であった。
【0049】
なお、対向面F1の方向が下向きであるとは、対向面F1の法線ベクトルN1が、重力方向の上に向かう成分を含まないこと、すなわち、上述した条件bを満たすことを意味する。そして、表1において対向面F1の方向を下向きとした試験例については、全て上述した条件aを満たすように接触点Cの位置を決定した。
【0050】
一方、試験例6の構成は、第2材料について測定した100%モジュラスの値が7メガパスカル未満の「5.0メガパスカル」である。試験例6は、画質、摩耗ともに「不適」と評価された。試験例7の構成は、第1材料の損失正接が0.035を超える「0.040」である。試験例7は、画質、摩耗ともに「困難」と評価された。試験例11の構成は、第1材料の損失正接が0.015未満の「0.013」である。試験例11は、画質について「困難」と評価された。
【0051】
試験例8から10の構成は、対向面F1の方向が上向きである。試験例8から10は、試験例8の画質が「良」と評価されたことを除き、画質、摩耗ともに「困難」または「不適」と評価された。
【表1】
【0052】
以上の評価結果から、画像形成装置1の構成は、対向面F1が向く方向が下向きであり、像保持体31の側面を形成する第1材料が、摂氏28度で0.5ヘルツの振動を与えたときの損失正接が0.015以上、0.035以下であり、接触部3611を構成する第2材料について測定した100%モジュラスの値が7メガパスカル以上であると、画質の劣化および摩耗が抑えられることがわかった。
【0053】
3.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
3−1.変形例1
上述した実施形態において画像形成装置1は、現像部13を1つだけ有していたが、複数の現像部13を有していてもよい。この場合、画像形成装置1は、複数の現像部13のそれぞれに、対応する像保持体31と、帯電器32と、露光装置33と、現像装置34と、一次転写ロール35と、ドラムクリーナ36とを有していればよい。また、複数の現像部13は、それぞれ異なる色のトナー像を形成してもよい。この場合、中間転写ベルト41に異なる色のトナー像が重ねて転写され、用紙Pなどの媒体にカラー画像が形成される。
【0054】
3−2.変形例2
上述した実施形態において除去部材361は、ドラムクリーナ36に用いられていたが、ベルトクリーナ49に用いられてもよい。この場合、除去部材361は、像保持体31に代えて中間転写ベルト41に付着した物質を除去すればよい。なお、像保持体31および中間転写ベルト41は、いずれも媒体に形成される像を保持する像保持体の一例である。
【0055】
3−3.変形例3
上述した実施形態において、除去部材361の接触部3611と支持部3612とは、図2に示すように長さが同じであったが、異なる長さや形状であってもよい。
図5は、この変形例におけるドラムクリーナ36の構成を示す図である。図5に示すように、接触部3611は、支持部3612よりも短い部材であってもよい。
【0056】
3−4.変形例4
上述した実施形態において、像保持体31の軸方向から見て接触部3611および支持部3612は矩形であったが、これらの形状は矩形に限られず、例えば三角形や扇型であってもよい。図6は、この変形例におけるドラムクリーナ36の構成を示す図である。この場合であっても、条件aおよび条件bを満たすように、除去部材361の配置が定められていればよい。
【0057】
3−5.変形例5
上述した実施形態において除去部材361は、条件aおよび条件bを満たすように配置されていたが、除去部材361の配置は、条件aを満たさなくてもよい。除去部材361は、少なくとも条件bを満たすように配置されていればよい。すなわち、除去部材361の対向面F1は、下向きの面であればよい。
【0058】
3−6.変形例6
上述した実施形態および変形例において除去部材361は、少なくとも条件bを満たすように配置されていたが、さらに以下の条件cを満たすように配置されてもよい。
(条件c)接触点Cにおける像保持体31の側面の法線ベクトルを「法線ベクトルN0」とすると、この法線ベクトルN0は、重力方向の(+z方向)に向かう成分を含まない。すなわち、接触点Cは像保持体31の側面のうち、下半分の範囲内にある。
条件cにより、接触点Cは、像保持体31の下半分の側面にあるので、図4に示す領域R3の範囲内にある。これにより、除去部材361により像保持体31の側面から除去された物質が落下し易くなり、この側面上に堆積し難くなると推測される。
条件a、条件b、および条件cをいずれも満たす場合、除去部材361は、領域R1、領域R2、および領域R3が重なる領域にある接触点Cと接触する。つまり、図4においては、除去部材361−3から除去部材361−5までが、上記の条件を満たす除去部材361である。
【符号の説明】
【0059】
1…画像形成装置、13…現像部、14…転写部、15…定着部、16…搬送部、31…像保持体、32…帯電器、33…露光装置、34…現像装置、35…一次転写ロール、36…ドラムクリーナ、360…ケース、361…除去部材、3611…接触部、3612…支持部、362…保持部材、41…中間転写ベルト、42…二次転写ロール、43…ベルト搬送ロール、44…バックアップロール、49…ベルトクリーナ、C…接触点、D13…矢線、F0…側面、F1…対向面、N0…法線ベクトル、N1…法線ベクトル、P…用紙、R1…領域、R2…領域、R3…領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6