(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シールドパイプが、軸方向に沿って分割された一対の分割体を合体することにより前記単芯線を内部に挿通可能な筒形状に構成されるものである請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のシールド導電路。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
本発明のシールド導電路は、前記スペーサが、前記シールドパイプのうち曲げ加工された曲げ部に嵌合されているものとしてもよい。このような構成によれば、単芯線の位置が最も変位しやすいシールドパイプの曲げ部において単芯線の位置が固定されるから、単芯線の位置を効果的に定めることができる。
【0012】
また、本発明のシールド導電路は、前記スペーサが、前記単芯線を間に挟んで合体する一対の分割体を有しているものとしてもよい。このような構成によれば、単芯線の所定の位置において単芯線を挟むようにして一対の分割体を合体することで、スペーサが所定の位置に取り付けられるから、単芯線の一端から所定の位置までスペーサを通すのに比して、スペーサの取り付け作業を容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明のシールド導電路は、前記シールドパイプが、軸方向に沿って分割された一対の分割体を合体することにより前記単芯線を内部に挿通可能な筒形状に構成されるものとしてもよい。このような構成によれば、一方の分割体にスペーサおよび単芯線をセットして他方の分割体を合体することで、シールドパイプ内にスペーサおよび単芯線が配された状態になる。したがって、予め所定の位置にスペーサが取り付けられたスペーサ付き単芯線を、シールドパイプの一端側から他端側まで挿通するのに比して、その作業を容易に行うことができる。
【0015】
<
参考例>
以下、本発明を具体化した
参考例について、
図1〜
図4を参照しつつ詳細に説明する。
本実施例におけるシールド導電路Wは、ハイブリッド車等の車両Bにおいて、
図1に示すように、例えば車両Bの後部に備えられた高圧バッテリ等の機器M1と、車両Bの前部に備えられたインバータやヒューズボックス等の機器M2とを接続するべく、車両Bの床下に配索されるものである。なお、各機器M1,M2は、導電性のシールドケース内に収容されている。
【0016】
本実施例のシールド導電路Wは、複数本(本実施例では2本)の単芯線10を、シールドパイプ20の内部に挿通して電磁シールドするものである。
単芯線10は、1本の金属棒である導体11の外周を絶縁被覆12で包囲してなるノンシールド電線である(
図4参照)。単芯線10の導体11は、銅あるいは銅合金、アルミあるいはアルミ合金によって断面円形状に形成され、比較的剛性が高く撓みにくいものとされている。
【0017】
単芯線10の両端部は、
図2に示すように、シールドパイプ20から外側に導出されている。なお、以下では、単芯線10のうちシールドパイプ20の内部に配される部分を主要部10M、シールドパイプ20から外側に出る部分を導出部10Lと称する。単芯線10の導出部10Lの長さ寸法は、2本の単芯線10において異なるものとされている。
【0018】
各単芯線10の導出部10Lの端部は、
図3に示すように、所定長さ範囲に亘って絶縁被覆12が剥がされ、導体11が露出されている。露出された導体11は、一方から圧潰されて平板状に形成された圧潰部13とされている。圧潰部13には、撚り線30の端末部が接続されている。
【0019】
撚り線30は、複数本の素線を螺旋状に撚り合わせた芯線31の外周を絶縁被覆32で包囲してなるノンシールド電線である。各素線は銅あるいは銅合金、アルミあるいはアルミ合金によって形成されている。撚り線30の芯線31は、剛性が低く撓みやすいものとされている。
【0020】
撚り線30の両端部はそれぞれ所定長さ範囲に亘って絶縁被覆32が剥がされ、芯線31が露出されている(
図3参照)。撚り線30の両端部のうち一端側の端部は、単芯線10の圧潰部13と半田付けや溶接等によって接合され、他端側の端部は、図示しない端子金具に接続されている。端子金具はそれぞれコネクタCに収容され、このコネクタCが機器M1またはM2のコネクタと嵌合することで機器M1またはM2側との電気的接続がとられている。
【0021】
単芯線10と撚り線30との接続部は、
図3に示すように、熱収縮チューブTによって全周を覆われている。熱収縮チューブTは、単芯線10の絶縁被覆12と撚り線30の絶縁被覆32との間に架け渡されるように被せ付けられている。これにより、単芯線10と撚り線30との接続部は、絶縁状態およびシール状態に保持される。
【0022】
単芯線10の導出部10Lと、撚り線30のうちコネクタCから導出された部分とは、
図3に示すように、編組部材Hにより一括して包囲されている。編組部材Hは、導電性の金属細線(例えば、銅)をメッシュ状に編み込んで筒状に形成したものである。なお、編組部材Hのかわりに金属箔や金属箔にスリットを形成したもので包囲してもよい。
編組部材Hの一端側は、シールドパイプ20の外周面に金属バンドKによってカシメ付けられて導通可能に固着され、また他端側はコネクタCに導通可能に固着されている。
【0023】
シールドパイプ20は金属製(鉄、アルミニウム、銅、ステンレス等)であって、
図1に示すように、単芯線10の配索経路に沿って3次元方向に屈曲された形状に形成される。なお、シールドパイプ20は、金属製シールドパイプ以外に導電性の樹脂管であってもよい。
【0024】
シールドパイプ20は、軸方向に沿って略半分に分割された一対の分割体(以下、パイプ分割体21と称する)を合体することにより単芯線10を内部に挿通可能な筒形状になるものである(
図4参照)。一対のパイプ分割体21は互いに同形状とされ、それぞれ押出成形によって形成されている。
【0025】
一対のパイプ分割体21は、各パイプ分割体21の周方向における両端縁部のうち一方の縁部(以下、第1縁部22と称する)と他方の縁部(以下、第2縁部23と称する)とが逆向きになるように、言い換えると一方のパイプ分割体21の第1縁部22と他方のパイプ分割体21の第2縁部23、一方のパイプ分割体21の第2縁部23と他方のパイプ分割体21の第1縁部22とがそれぞれ合わさるようにして合体される。
【0026】
一対のパイプ分割体21には、合体時に内外方向に重なり合って嵌り合う第1ラップ嵌合部24と第2ラップ嵌合部25とを備えられている。第1ラップ嵌合部24および第2ラップ嵌合部25はいずれもシールドパイプ20の内周側に形成されている。
【0027】
第1ラップ嵌合部24は、各パイプ分割体21の第1縁部22側に設けられている。第1ラップ嵌合部24は、一対のパイプ分割体21の合体方向に突出して設けられ、その合体時には、相手側のパイプ分割体21の第2縁部23の内側に嵌合する。
【0028】
第2ラップ嵌合部25は、各パイプ分割体21の第2縁部23側に設けられている。第2ラップ嵌合部25は、第2縁部23との間に第1ラップ嵌合部24が嵌合可能な間隔をあけてパイプ分割体21の合体方向に向かって突出する平板状をなしている。第2ラップ嵌合部25は、第1ラップ嵌合部24の内側全体を覆うとともに、一対のパイプ分割体21の合わせ部分の隙間を塞ぐものとされている。第2ラップ嵌合部25の先端(突出端)は、相手側のパイプ分割体21の内周面に当接もしくは近接するものとされている。第1ラップ嵌合部24および第2ラップ嵌合部25は、パイプ分割体21の全長にわたり連続して設けられている。
【0029】
シールドパイプ20の内部は、2本の単芯線10が一括して挿通される電線挿通部26とされている。電線挿通部26は、シールドパイプ20の内周面のうち円弧形状をなす部分(以下、曲部27と称する)と、一対の第2ラップ嵌合部25の内側面であって平らな部分(以下、平部28と称する)とによって囲まれてなる。一対の曲部27と一対の平部28とによって、電線挿通部26の断面形状は略長円形状に形成されている。
【0030】
シールドパイプ20の内部には、単芯線10の位置を固定するスペーサ40が嵌合されている。スペーサ40は合成樹脂製であって、シールドパイプ20の電線挿通部26の断面形状に整合する外形形状をなし、シールドパイプ20の内部にほぼ隙間なく嵌合している。
【0031】
スペーサ40の外周面には、シールドパイプ20の第2ラップ嵌合部25に沿うように平坦な面(以下、平面41と称する)が一対形成され、互いに略平行をなしている。また、スペーサ40の外周面には、シールドパイプ20の曲部27に沿うように滑らかに曲がった曲面42が一対形成されている。
【0032】
そして、スペーサ40は、一対の平面41がシールドパイプ20の平部28にそれぞれ当接することで、その当接方向の移動および周方向の回転が制限される。また、スペーサ40は、一対の曲面42がシールドパイプ20の曲部27の内周面にそれぞれ当接することで、その当接方向の移動が制限される。こうして、スペーサ40は、四方への変位(シールドパイプ20の軸方向と直交する方向の変位)を制限された状態で、シールドパイプ20の内部に嵌合される。
【0033】
スペーサ40は、
図4に示すように、単芯線10が個別に挿通される挿通穴43を有している。挿通穴43は、シールドパイプ20に挿通される単芯線10と同数が設けられ、それぞれスペーサ40を前後方向に貫通している。本実施例では、スペーサ40には2つの挿通穴43が設けられ、それらは、スペーサ40の長手方向に並んで配されている。
【0034】
各挿通穴43の断面形状は、単芯線10の外周面に沿う円形状とされている。各挿通穴43の内径は、単芯線10の外径にできるだけ近い寸法とされ、各挿通穴43には単芯線10を挿通可能な最小限の隙間が確保されている。
【0035】
スペーサ40は、シールドパイプ20のうち曲げ加工された曲げ部20Rの近辺に複数個ずつ嵌合されている。スペーサ40は、曲げ部20Rの中心、すなわち屈曲した部分の軸方向における中心と、曲げ部20Rに隣接した前後両側とに配置されている。なお、シールドパイプ20に嵌合されたすべてのスペーサ40は同形状とされている。
【0036】
次に、本実施例のシールド導電路Wの製造作業の一例について説明する。
まず、単芯線10を、所定の長さ寸法に切断する。3本の単芯線10の長さ寸法を、シールドパイプ20の曲げ加工後に想定される各単芯線10の配索経路の長さ寸法(配索経路長)に基づいて算出する。ここで、シールドパイプ20の曲げ部20Rにおいて内側に配される単芯線10の配索経路長は、外側に配される単芯線10の配索経路長よりも短くなる。そして、予め想定される各曲げ部20Rの曲げ方向と各単芯線10の位置とから、各単芯線10の配索経路長をそれぞれ算出し、それに各単芯線10の直線部分の配索経路長を加算する。これにより、各単芯線10の主要部10Mの長さ寸法が、単芯線10毎に算出される。次いで、単芯線10毎に、主要部10Mの長さ寸法に導出部10Lの長さ寸法を加算して全長を算出する。そして、各単芯線10が、算出された長さ寸法を有するように切断する。
【0037】
次に、3本の単芯線10にスペーサ40を装着する。各挿通穴43にそれぞれ対応する長さの単芯線10が挿入されるようにして、単芯線10の一端側からスペーサ40を通し、所定の位置(シールドパイプ20の曲げ部20Rの近辺に配される位置)にセットする。すべてのスペーサ40を順に装着し、3本の単芯線10の所定の位置にスペーサ40が装着されてなるスペーサ付き単芯線14を形成する。
【0038】
次に、シールドパイプ20にスペーサ付き単芯線14を挿通する。
まず、一対のパイプ分割体21のうち一方のパイプ分割体21にスペーサ付き単芯線14を収容する。その際には、単芯線10の一端側を、所定の長さ寸法(予め想定した導出部10Lの長さ寸法)だけそれぞれシールドパイプ20から導出させる。
【0039】
そして、他方のパイプ分割体21を一方のパイプ分割体21に合体させる。互いの第1縁部22と第2縁部23とを向き合わせて一対のパイプ分割体21を嵌め合わせると、一対のパイプ分割体21の内部において第1ラップ嵌合部24と第2ラップ嵌合部25とがほぼ隙間なく重なって嵌合する。一対のパイプ分割体21が合体すると、円筒形状のシールドパイプ20が形成され、その電線挿通部26にスペーサ付き単芯線14が通された状態、すなわちシールドパイプ20に3本の単芯線10が挿通されるとともに、その所定の位置にスペーサ40が内嵌された状態となる。そして、シールドパイプ20から所定の長さ寸法だけ導出された単芯線10の一端側の導出部10Lを、曲げ加工時にシールドパイプ20内に引き込まれないよう固定する。
【0040】
次に、単芯線10が通されたシールドパイプ20を所定の形状に曲げ加工する。各単芯線10は、スペーサ40によってそれぞれの位置が固定されているから、シールドパイプ20の曲げ加工に伴って各単芯線10は位置が入れ替わることなくほぼ想定通りに屈曲する。また、シールドパイプ20の曲げ部20Rにスペーサ40が内嵌されていることにより、シールドパイプ20の曲げ部20Rが潰れて偏平してしまうことが防止される。
【0041】
そして、単芯線10の他端側(固定されていない側)は、曲げ加工に伴ってシールドパイプ20内に引き込まれる。単芯線10は、それぞれ各スペーサ40の挿通穴43を滑ってスペーサ40に対して相対変位する。このとき、シールドパイプ20の曲げ部20Rにおいて外側に位置する部分が多い単芯線10は、内側に位置する部分が多い単芯線10よりも大きく引き込まれる。こうして、シールドパイプ20の他端側における各単芯線10の導出部10Lが、予め想定した長さ寸法を有してシールドパイプ20から出た状態になり、単芯線10の両端部において導出部10Lの長さ寸法が予め想定した長さ寸法になる。
【0042】
次に、単芯線10の両端部に撚り線30を接続する。このとき、単芯線10の端部の位置、すなわち撚り線30との接続位置が段階的に軸方向にずれているから、接続作業を容易に行うことができる。また、接続部の位置が軸方向に揃って横並びしないから、この部位においてシールド導電路Wの幅寸法が増す(シールド導電路Wが膨らむ)ことを防ぐことができる。
以上によりシールド導電路Wの製造作業が完了する。
【0043】
次に、上記のように構成された
参考例の作用および効果について説明する。
本実施例のシールド導電路Wは、芯線が一本の導体11である単芯線10を内部に複数本挿通して電磁シールドするシールドパイプ20を有し、シールドパイプ20の内部には、シールドパイプ20の軸方向と直交する方向の変位を制限された状態で、単芯線10が個別に挿通される挿通穴43を有するスペーサ40が嵌合されている。
【0044】
この構成によれば、単芯線10のシールドパイプ20の軸方向と直交する方向の位置が固定されるから、曲げ加工後のシールドパイプ20から外側に出る部分の長さ寸法を予め予測しやすいので、単芯線10のシールドパイプ20から外側に出る部分の長さ寸法を容易に管理することができる。
【0045】
また、単芯線10が、スペーサ40によってシールドパイプ20の内周面から離れて配される。したがって、仮に一対のパイプ分割体21の間に隙間ができ、そこからシールドパイプ20の内部に砂等の異物が入り込んだとしても、単芯線10がシールドパイプ20の内周面に接触することが防がれているから、単芯線10が砂等の異物とともにシールドパイプ20の内周面に擦れて絶縁被覆12が削れてしまうことを防ぐことができる。
【0046】
また、スペーサ40が、シールドパイプ20のうち曲げ加工された曲げ部20Rに嵌合されている。この構成によれば、単芯線10の位置が最も変位しやすいシールドパイプ20の曲げ部20Rにおいて単芯線10の位置が固定されるから、単芯線10の位置を効果的に定めることができる。
【0047】
また、シールドパイプ20が、軸方向に沿って分割された一対のパイプ分割体21を合体することにより単芯線10を内部に挿通可能な筒形状に構成されるものである。この構成によれば、一方のパイプ分割体21にスペーサ付き単芯線14をセットして他方のパイプ分割体21を合体することで、シールドパイプ20内にスペーサ40および単芯線10が配された状態になるから、スペーサ付き単芯線14を、シールドパイプ20の一端側から他端側まで挿通するのに比して、その作業を容易に行うことができる。
【0048】
<
実施例1>
次に、本発明を具体化した実施例
1に係るシールド導電路50を
図5によって説明する。
本実施例のシールド導電路50は、シールドパイプ51の断面形状が、車両Bに設置したときに水平方向に長い偏平な形状とされている点で、
参考例とは相違する。なお、
参考例と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0049】
本実施例のシールド導電路50は、
参考例と同様、芯線が一本の導体11である単芯線10を内部に2本挿通して電磁シールドするシールドパイプ51を備え、スペーサ40は、単芯線10が個別に挿通される挿通穴43を有してシールドパイプ51の軸方向と直交する方向の変位を制限された状態でシールドパイプ51の内部に嵌合されている。スペーサ40は、
参考例と同様に、シールドパイプ51のうち曲げ加工された部分に嵌合されている。
【0050】
シールドパイプ51は、
参考例と同様、金属製であって、単芯線10の配索経路に沿って3次元方向に屈曲された形状に形成され、その内部は、2本の単芯線10が一括して挿通される略長円形状をなす電線挿通部26とされている。なお、シールドパイプ51は、金属製シールドパイプ以外に導電性の樹脂管であってもよい。
【0051】
シールドパイプ51は、押出成形により全体が一体に成形され、その断面形状は、真円形状をなすシールドパイプにおいて、車両Bに設置したときに上側および下側となる部分をともに切り欠いた形状とされている。シールドパイプ51のうち切り欠かれた部分(以下、切欠き部52と称する)は、シールドパイプ51の軸方向における一端から他端にわたる全長に形成されている。シールドパイプ51の上側および下側の切欠き量は同等とされている。
【0052】
シールドパイプ51の周壁のうち切欠き部52に配された部分(以下、切欠壁53と称する)は互いに略平行をなしている。またシールドパイプ51の周壁のうち上下の切欠壁53の間を繋ぐ部分は、円弧形状をなす円弧壁54とされている。
【0053】
このシールド導電路50の製造においては、スペーサ付き単芯線14は、シールドパイプ51の一端側から挿入される。このため、各単芯線10のうち挿通穴43の前後に位置する部分にテープを巻き付ける等により、シールドパイプ51への挿通作業に伴ってスペーサ40が単芯線10の所定の位置からずれないようにしておく。
【0054】
以上のように本実施例においては、単芯線10を内部に2本挿通して電磁シールドするシールドパイプ51の内部に、単芯線10が個別に挿通される挿通穴43を有してシールドパイプ51の軸方向と直交する方向の変位を制限された状態でスペーサ40が嵌合されている。これにより、
参考例と同様に、単芯線10のシールドパイプ51の軸方向と直交する方向の位置が固定されるから、曲げ加工後の単芯線10の導出部10Lの長さ寸法を予め予測しやすいので、単芯線10の導出部10Lの長さ寸法を容易に管理することができる。
【0055】
加えて、シールドパイプ51の断面形状が、車両Bに設置したときに水平方向に長い偏平な形状とされているから、シールドパイプ51の高さ寸法を小さくすることができる。
【0056】
また、シールドパイプ51の断面形状は、真円形状をなすシールドパイプにおいて、車両Bに設置したときに上側および下側となる部分をともに切り欠いた形状とされているから、上側および下側の両方が切り欠かれた分だけ真円形状のシールドパイプよりも高さ寸法が小さくなり、かつ他の部分は略真円形状をなしているから、シールドパイプ51の曲げ加工に、従来の真円形状をなすシールドパイプを曲げ加工する際に使用していたベンダー機を使用することができる。
【0057】
<実施例
2>
次に、本発明を具体化した実施例
2に係るシールド導電路を
図6によって説明する。
本実施例のシールド導電路は、スペーサ60が、単芯線10を間に挟んで合体する一対のスペーサ分割体(分割体)62を有している点で、
参考例とは相違する。なお、
参考例と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0058】
本実施例のシールド導電路は、
参考例と同様、芯線が一本の導体11である単芯線10を内部に2本挿通して電磁シールドするシールドパイプ20を備え、スペーサ60は、単芯線10が個別に挿通される挿通穴61を有してシールドパイプ20の軸方向と直交する方向の変位を制限された状態でシールドパイプ20の内部に嵌合されている。スペーサ60は、
参考例と同様に、シールドパイプ20のうち少なくとも曲げ加工された曲げ部20Rに嵌合されている。
【0059】
スペーサ60は、単芯線10を間に挟んで合体する一対のスペーサ分割体62を有している。一対のスペーサ分割体62は、挿通穴61を略半分に分けるように分割された形態をなし、互いに同形状とされている。
【0060】
各スペーサ分割体62には、合体すると挿通穴61を構成する凹部63が一対ずつ設けられている。各凹部63は、一対のスペーサ分割体62の合体時に突合せられる突合せ面64に、それぞれ半円形状をなして凹み形成されている。
【0061】
一対のスペーサ分割体62は、ヒンジ65で連結されている。ヒンジ65は、スペーサ分割体62の幅方向の一端側に設けられている。
また、一対のスペーサ分割体62は、合体時に互いに係止して、一対のスペーサ分割体62を合体状態に保持するロック部66を有している。ロック部66は、スペーサ分割体62の幅方向におけるヒンジ65とは反対側の端部に設けられている。
【0062】
ロック部66は、一対のスペーサ分割体62のうち一方のスペーサ分割体62に設けられたロック凸部67と、他方のスペーサ分割体62に設けられたロック凹部68とを有している。ロック凸部67は、一方のスペーサ分割体62の突合せ面64から一対のスペーサ分割体62の合体方向に突出して設けられ、その先端部に係止爪67Kが備えられている。ロック凹部68は、他方のスペーサ分割体62の突合せ面64に凹み形成され、ロック凸部67が差し入れ可能とされている。ロック凹部68には、差し入れられたロック凸部67の係止爪67Kが、一対のスペーサ分割体62の離間方向に係止する係止受け部68Kが設けられている。
【0063】
以上のように本実施例においては、単芯線10を内部に2本挿通して電磁シールドするシールドパイプ20の内部に、単芯線10が個別に挿通される挿通穴61を有してシールドパイプ20の軸方向と直交する方向の変位を制限された状態でスペーサ60が嵌合されているから、
参考例と同様に、単芯線10のシールドパイプ20の軸方向と直交する方向の位置が固定されるから、曲げ加工後の単芯線10の導出部10Lの長さ寸法を予め予測しやすいので、単芯線10の導出部10Lの長さ寸法を容易に管理することができる。
【0064】
さらに、スペーサ60が、単芯線10を間に挟んで合体する一対のスペーサ分割体62を有しているから、単芯線10の所定の位置において単芯線10を挟むようにして一対のスペーサ分割体62を合体することで、スペーサ60が所定の位置に取り付けられるので、単芯線10の一端から所定の位置までスペーサ40を通すのに比して、スペーサ60の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0065】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記
参考例及び実施例では、2本の単芯線10をシールドパイプ20(51)内に挿通する場合について説明したが、これに限らず、3本以上の単芯線をシールドパイプ内に挿通するものとしてもよく、その場合には、各スペーサに単芯線と同数の挿通穴を設ければよい。また、シールドパイプ内に挿通される複数本の単芯線において機能の異なる電線が混在する場合、例えば、複数本の単芯線が高圧回路を構成するものと、低圧回路を構成するものとで構成される場合には、高圧回路のノイズの影響を防ぐべく、低圧のシールド電線やノンシールド電線の外周に、編組部材や金属箔等からなるシールド部材を被せるものとしてもよい。
(2)上記
参考例では、シールドパイプ20とスペーサ40とが平坦な面を有して互いに整合する形状とされることで、スペーサ40の回り止めがなされているが、回り止めの手段はこれに限らず、例えば、シールドパイプの内周面またはスペーサの外周面に回り止め用の突起を設ける等してもよい。
(3)上記
参考例では、挿通穴43は円形断面をなすものとされているが、これに限らず、挿通穴43の断面形状は任意の形状とすることができ、例えば単芯線10の外径と同等の幅寸法を有する四角形状や楕円形状等、様々な形状とすることができる。
(4)上記
参考例では、スペーサ40は、電線挿通部26に整合する外形形状をなすものとされているが、これに限らず、スペーサの形状は任意に変更することができ、例えばスペーサは、単芯線が個別に挿通される挿通穴を内側に有する複数の筒状部と、それらを互いに連結する連結部と、筒状部から外側に突出してシールドパイプの内周面に当接し、シールドパイプ内における筒状部の位置を所定の位置に支持する支持部とを有するものとしてもよい。
(5)上記
参考例では、スペーサ40は各曲げ部20Rの近辺に複数個ずつ嵌合されているが、これに限らず、スペーサの設置数および設置位置は適宜変更することができ、またシールドパイプの直線部分にも適宜嵌合することができる。
(6)上記
参考例では、複数本の単芯線10の導出部10Lの長さ寸法が段階的に異なるものとされているが、これに限らず、単芯線の導出部の長さ寸法は適宜設定することができる。
(7)上記
参考例では、シールド導電路Wは、単芯線10の両端部に接続された撚り線30を介して機器M1,M2に接続されているが、これに限らず、例えば、シールド導電路が比較的振動の少ない機器に接続される場合には、その機器に接続される側においては、撚り線を介すことなく、単芯線の端部を機器に直接的に接続してもよい。これにより、例えば、単芯線の端部に撚り線を接続し、その撚り線を介して機器に接続する場合に比して、撚り線と単芯線とを接続する作業が不要となるから、コストを低減することができる。
(8)上記
参考例では、予めスペーサ40が所定の位置に装着されたスペーサ付き単芯線14を一対のパイプ分割体21に挟み込むものとしているが、これに限らず、スペーサを一方のパイプ分割体の所定の位置にセットしてから、各スペーサの挿通穴に単芯線を通すようにしてもよい。
(9)上記
参考例では、スペーサ40に設けられた挿通穴43はそれぞれ周方向に閉じられた形態とされているが、これに限らず、各挿通穴は単芯線を個別に保持可能であれば、周方向における一部が開口していてもよい。
(10)上記
参考例では、シールドパイプ20の外形形状を真円形状としているが、これに限らず、シールドパイプの外形形状は、楕円形、長円形、角形等、任意の形状としてもよい。
(11)上記実施例
1では、シールドパイプ20の断面形状を、車両Bに設置したときに上側および下側となる部分が切り欠かれた形状としたが、これに限らず、上側または下側のいずれか一方のみを切り欠かれた形状としてもよい。
(12)上記実施例
1では、シールドパイプ20の周壁部に、平坦な切欠壁53と真円形状に沿う円弧状をなす円弧壁54とが設けられているが、これに限らず、シールドパイプは扁平な形状であればどのような形状であってもよく、例えば楕円形状、長円形状または長方形状等であってもよい。
(13)上記実施例
2では、スペーサ60が、一対のスペーサ分割体62を合体状態に保持するロック部66を有しているが、これに限らず、例えば接着等により一対のスペーサ分割体を合体状態に保持するものとしてもよい。
(14)上記実施例
2では、スペーサ60が、一対のスペーサ分割体62を連結するヒンジ65を有しているが、これに限らず、一対のスペーサ分割体は連結されていなくてもよい。