(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被処理流体が前記供給流体側ラインF1から前記分離膜ユニットコンポーネントに供給される流れと前記被処理流体が前記供給流体側ラインF2から前記分離膜ユニットコンポーネントまたは分離膜サブユニットに供給される流れとを三方弁によって切り替えることを特徴とする請求項1に記載の膜分離装置。
前記分離膜ユニットが前記分離膜ユニットコンポーネントを少なくとも3つ備えるとともに、前記被処理流体を最初に処理する単数または複数の分離膜ユニットコンポーネントをサブユニット(A)とするとき、該サブユニット(A)から排出される濃縮流体が、他の単数または複数の分離膜ユニットコンポーネントからなるサブユニット(B)への供給流体となり、前記サブユニット(B)から排出される濃縮流体が、さらに別の単数または複数の分離膜ユニットコンポーネントからなるサブユニット(C)への供給流体となるように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の膜分離装置。
前記被処理流体を供給流体側ラインF1から供給する場合に被処理流体が前記サブユニット(A)、(B)および(C)で処理されるときのユニット構成と、前記被処理流体を供給流体側ラインF2から供給する場合に被処理流体が前記サブユニット(C)、(B)および(A)で処理されるときのユニット構成が同じであることを特徴とする請求項4または5に記載の膜分離装置。
さらに別の単数または複数の分離膜ユニットコンポーネントからなるサブユニット(D)を備え、該サブユニット(D)は、少なくとも1つの前記分離膜ユニットコンポーネントから排出される前記透過流体が供給され、膜分離して得られた透過流体を前記透過流体ラインPに排出し、その濃縮流体を系外に排出し、かつ供給流体側ラインF3およびF4を有し、該供給流体側ラインF3,F4のいずれかから前記透過流体を供給した場合にもう1つの供給流体側ラインからその濃縮流体が排出されるように構成され、前記透過流体が前記供給流体側ラインF3,F4のいずれかから前記サブユニット(D)に供給されるように流れ方向を切り替え可能な機構を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の膜分離装置。
1つの分離膜ユニットコンポーネントにおける供給流体の圧力と濃縮流体の圧力の差から計算される圧力損失、または、複数の分離膜ユニットコンポーネントが直列に配置されたサブユニットにおける供給流体の圧力と濃縮流体の圧力の差から計算される圧力損失を測定し、その変化に基づいて前記被処理流体の供給方向を変えることを特徴とする請求項8に記載の膜分離装置の運転方法。
【背景技術】
【0002】
近年、気体分離膜、逆浸透膜、ナノ濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等、様々な分離膜を用いた流体分離技術は、高精度で省エネルギーの処理プロセスとして注目され、各種流体処理への適用が進められている。たとえば、逆浸透膜を用いた逆浸透分離法では、塩分等の溶質を含んだ溶液を該溶液の浸透圧以上の圧力で逆浸透膜を透過させることで、塩分等の溶質の濃度が低減された液体を得ることが可能であり、例えば海水やかん水の淡水化、超純水の製造、有価物の濃縮回収など幅広く用いられている。
【0003】
これらの分離膜を効率的に運用するに当たって、最も大きな問題がファウリングと呼ばれる膜表面の汚染である。これは、被処理流体に含有する不純物質が膜の表面や分離膜の流路に堆積もしくは吸着して、分離膜の性能を低下させるものである。これを防止するために、フィルターなどで前処理を行って、不純物質を予め除去しておいたり、不純物質が堆積しにくいように分離膜モジュール流路に乱流を起こしたりするといった工夫がなされており、それでも汚染した場合には、薬液で洗浄するなどして回復させる方法が適用されている。しかし、前処理が不十分であったり、不純物が多量に含まれていたりすると、ファウリング原因物質の分離膜への侵入を防げない場合が多々ある。また、薬液洗浄は、一般に運転を停止する必要があり、薬液コスト、薬液による分離膜の劣化など、なるべく実施しないことが好ましい。そこで、薬液洗浄に至る前に、被処理原水や透過水を膜の原水側に高流束で流すフラッシング、膜の透過側から逆圧力をかけて透過水を膜の原水側に逆流させて付着ファウリング物質を浮き上がらせて除去する逆圧洗浄といった物理洗浄と呼ばれる手法が適用されていることが多い。
【0004】
また、分離膜は、平膜、管状膜、中空糸膜など様々な形態を有するが、平膜の場合、スパイラル型分離膜エレメントという形態で用いられることが多い。従来のスパイラル型分離膜エレメントの構造としては、たとえば特許文献1に示すように、供給流体と透過流体の混合が生じないように端部が封止された構造の分離膜、供給側流路部材及び透過側流路部材の積層体の単数または複数が、有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、その分離膜巻回体の両端にテレスコープ防止板が設置されている。
【0005】
この分離膜エレメントは、被処理流体が一端面より供給され、供給側流路部材に沿って流動しながら成分の一部(例えば、海水淡水化の場合は水)が分離膜を透過することにより分離される。その後、分離膜を透過した成分(透過水)は、透過側流路部材に沿って流動して、中心管内へとその側面の孔から流入し、中心管内を流動し、透過流体として取り出される。一方、非透過成分(海水淡水化の場合は塩分)を高濃度に含有する処理水は、分離膜エレメントの他端面より濃縮水として取り出される。このようなスパイラル型分離膜エレメントは、被処理流体の流路が均一に配置され、偏流が生じにくいという利点を持っているが、前処理が不十分だった場合、被処理流体が供給される端面にファウリング物質が蓄積しやすいという問題点を有している。
【0006】
とくに、スパイラル型分離膜エレメントは、通常1もしくは複数の分離膜エレメントを直列して、1つの圧力容器に装填して用いることが多いが、この場合、上述のファウリングは、先頭の分離膜エレメントのとくに先頭部分で顕著に生じる。さらに、海水淡水化の場合は、浸透圧の影響によって、濃度の低い先頭エレメントでは透過流束が大きく、膜面にファウリング物質が運ばれやすいため、ファウリングを促進する。一方、濃縮に伴って浸透圧が上昇した最後方の分離膜エレメントでは、透過流束が小さいため、ファウリングも起こりにくい。逆に、後方の分離膜エレメントは、透過によって被処理流体の流量が減少して、膜面のフラッシング効果が低下するため、一度膜面にファウリング物質が蓄積すると、膜面から剥がすのが困難という特性も有している。被処理流体の流量を維持するために、
図18に示すように、複数の分離膜ユニットコンポーネント8a,8b,8cをツリー上に構成して流量減少に見合うように、後方の分離膜ユニットコンポーネント8cの数を減らすことで、分離膜ユニットコンポーネントに供給される流量を維持させる方法を採用することも少なくない。なお
図18において、7aはバルブ、26は被処理流体、27は透過流体、28は濃縮流体を表わす。
【0007】
以上の課題や特性を鑑み、例えば、特許文献1に示すように、定期的に濃縮水出口から透過水を供給し、被処理流体と逆方向にフラッシングする方法や、特許文献2に示すように、被処理流体側を正方向と逆方向に切り替えながら流してフラッシングする方法が提案されている。これによって、分離膜エレメント端部に蓄積したファウリング物質を除去するとともに、正方向の流れの時には、膜面のフラッシング効果が小さくなりやすい後方の分離膜エレメントに蓄積したファウリング物質を除去することが可能となる。さらに、特許文献3、特許文献5に示されるように運転中に被処理流体の流れる方向を逆にすることで、運転停止時間をほとんど生じさせることなく、分離膜面に蓄積したファウリング物質を除去する方法が提案されており、これは、特許文献4に示されるように、ツリー上に構成された複数の分離膜ユニットコンポーネントにも適用し、それぞれの被処理流体の流れ方向を逆にすることが可能にすることが提案されている。
【0008】
しかし、これらの方法は、中空糸膜モジュールなど供給水入口から濃縮水出口まで実質的に同様の構造であって逆流させても性能変化がない場合は適用可能であるが、上述のスパイラル型分離膜エレメントの場合には、分離膜エレメントを容器に装填する際に、一方向の流れのみ有効に機能するシール部材を使用するため、逆流運転させるとシール不良が生じるため、逆圧洗浄の場合は許容できても、被処理流体を長期間の逆流させる運転においては、エネルギーロスなど処理効率の低下を招いてしまっていた。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において、分離膜ユニットは、少なくとも1つの分離膜ユニットコンポーネント、供給流体側ラインF1,F2、透過流体ラインPを有する。すなわち分離膜ユニットは、単数または複数の分離膜ユニットコンポーネントにより構成することができる。分離膜ユニットが複数の分離膜ユニットコンポーネントからなるとき、これらを複数のサブユニットに分けて構成することができる。このサブユニットは、少なくとも1つの分離膜ユニットコンポーネントにより構成され、後述するように、被処理流体の供給方向に応じて、適宜、構成する分離膜ユニットコンポーネントまたはその組み合わせを変更することができる。ここで分離膜ユニットコンポーネントは、少なくとも1つの分離膜モジュールを有する。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれら図面に示す実施態様に限定されるものではない。
【0027】
図1は、本発明を構成するスパイラル型分離膜エレメントの実施形態の一例を示す部分破断斜視図である。
【0028】
図1において、分離膜エレメント20は、供給流体と透過流体の混合が生じないように端部が封止された構造の分離膜21、供給側流路部材23及び透過側流路部材22の積層体の単数または複数が、有孔の中心管24の周囲にスパイラル状に巻回され、その分離膜巻回体の外周が外層体で覆われ、この膜巻体及び外装体の少なくとも片端にテレスコープ防止板25が設置されている。テレスコープ防止板25の外周には、少なくとも1つの周回溝251が設けられ、図示しない被処理流体シール部材が配置される。
【0029】
この分離膜エレメント20は、被処理流体26が一端面より供給され、供給側流路部材23に沿って流動しながら成分の一部(例えば、海水淡水化の場合は水)が分離膜21を透過することにより、透過流体と濃縮流体とに分離される。その後、分離膜を透過した成分(透過水)は、透過側流路部材22に沿って流動して、中心管24内へとその側面の孔から流入し、中心管24内を流動し、透過流体27として取り出される。一方、非透過成分(海水淡水化の場合は塩分)を高濃度に含有する処理水は、分離膜エレメント20の他端面より濃縮流体28(濃縮水)として排出される。
【0030】
本発明では、
図1に例示したスパイラル型膜エレメントを、
図2に示すように、筒状圧力容器46に一つもしくは複数装填して、分離膜モジュール47を構成する。複数の分離膜エレメント39(39a,39b,39c,39d,39e,39f)を、筒状圧力容器46内に装填することにより、分離膜モジュール47を構成する。分離膜エレメント39を構成する少なくとも片端に設けられたテレスコープ防止板の少なくとも1つの外周と筒状圧力容器46の内周面の間に、被処理流体シール部材45(45a1,45a2,45b1〜45e2,45f1,45f2)が配置される。被処理流体シール部材45は、分離膜エレメント39が筒状圧力容器46内で実質的に両方向に移動可能であるように設けられている。
【0031】
この被処理流体シール部材45を設けることにより、
図1に例示するようなスパイラル型分離膜エレメント20であって、被処理流体を
図1に示すように原水26の方向に流すこともできれば、
図1で濃縮水28と示されている方向から被処理流体を供給することも可能な構造になっている。
【0032】
図2では、符号39a〜39fがそれぞれ
図1に示す分離膜エレメント20を示している。被処理流体は、被処理流体供給口38(被処理流体の流れ方向を逆向きにするときは40)から供給され、第1の分離膜エレメント39aの端部に供給される。第1の分離膜エレメントで処理された濃縮水(濃縮流体)は、第2の分離膜エレメント39bに供給されその後、順次39c,39d,39e,39fに供給、処理された後、最終的に濃縮水排出口40(被処理流体の流れ方向を逆向きにするときは38)から排出される。それぞれの分離膜エレメント39a〜39fの中心パイプは、それぞれコネクター41で連接されるとともに、端板42a,42bに設けられた透過流体(透過水)取出口43a,43bに接続されており、それぞれの分離膜エレメントで得られた透過流体(透過水)が集められ、系外に取り出される。
【0033】
なお、
図1では、被処理流体供給口38(流れ方向を逆向きにするときは40)と濃縮水排出口40(流れ方向を逆向きにするときは38)が、端板に備えられているが、耐圧容器胴部44の端板近傍(すなわち、被処理流体供給口38が端板42aと第1の分離膜エレメント39aの間、濃縮水排出口40が端板42bと最終分離膜エレメント39fの間)に備えられていても差し支えない。圧力容器46と分離膜エレメント39の間には、被処理流体が通って性能低下を生じないように、シールすることが必要である。具体的には、それぞれの分離膜エレメント39a〜39fのテレスコープ防止板25の外周部には周回溝251を有しており、被処理流体シール部材(以下、単に「シール部材」ということがある。)45a1〜45f2を装填できることが好ましい。テレスコープ防止板25部分にシール部材45a1,45a2〜45f1,45f2が備えられ、それぞれの分離膜エレメントの被処理流体と濃縮水が隔離されている。
【0034】
なお、
図2では、それぞれの分離膜エレメント39a〜39fの両側にシール部材が備えられているが、片側(すなわち、45a1,45b1,45c1〜45f1もしくは45a2,45b2,45c2〜45f2)とすることも可能である。両方備えた方がシール性は向上するが、装填、取り出し時に困難度が増すこと、また、隣接するシール部材間(例えば、45a1と45a2の間)にデッドスペースを生じやすくなるため、例えば、ジュースの濃縮など濃縮水が汚染されると問題となる場合は、好ましくない。
【0035】
図3は、本発明を適用した水処理用の膜分離装置の実施形態の一例を示すフロー図である。
【0036】
図3において、被処理流体供給ユニットが、原水タンク2、原水供給ポンプ3、必要に応じて前処理ユニット4、前処理水槽5、昇圧ポンプ6から構成される。原水1は原水タンク2に供給された後、原水供給ポンプ3で取水され、必要に応じて、前処理ユニット4で処理した後、前処理水槽5に貯留される。前処理された水は、昇圧ポンプ6によって分離膜ユニットAに供給される。
図3の例では、分離膜ユニットAは、1つの分離膜ユニットコンポーネント8を有する。また分離膜ユニットコンポーネントは、
図2で例示した複数の分離膜エレメント39を筒状圧力容器内46に装填した、分離膜モジュール47の単数もしくは複数から構成される。分離膜ユニットAは、単数または複数の分離膜ユニットコンポーネントを有することができる。
【0037】
また分離膜ユニットAは、前処理水の供給もしくは、濃縮水の排出に用いることができる供給流体側ライン(以下、「供給水側ライン」ということがある。)F1,F2、および透過流体ライン(以下、「透過水ライン」ということがある。)Pを有する。このうち、供給水側ラインF1とF2はバルブ7a〜7dを有し、供給水側ラインF1,F2のいずれかが昇圧ポンプ6と連通し、もう片方が排水ライン12に連通するように構成されている。すなわち、
図3において黒塗りしてあるバルブ7a、7cを閉、白抜きにしてあるバルブ7b,7dを開にした場合、昇圧ポンプ6で昇圧された被処理流体は、供給水側ラインF1から分離膜ユニットAに供給され、濃縮流体(以下、「濃縮水」ということがある。)が供給水側ラインF2から排出される。反対に、バルブ7a、7cを開にして、バルブ7b、7dを閉にすることによって、被処理流体を供給水側ラインF2から供給し、濃縮水を供給水側ラインF1から排出する、すなわち、分離膜ユニットAの中の被処理流体の流れを、供給水側ラインF1からF2、または供給水側ラインF2からF1に切り替えることが出来る機構を有する。ここで、濃縮水は、必要に応じて、エネルギー回収ユニット11を通してエネルギー回収させることが可能である。
【0038】
図3では、バルブ7a〜7dの4つのバルブを用いて切り替えているが、
図4に例示するように三方弁13a,13bからなる機構を用いて、供給水側ラインF1およびF2の一方を被処理流体供給側、他方を濃縮流体排出側に切り替えることが可能である。
【0039】
図3および
図4に示す分離膜ユニットAは、1つの分離膜ユニットコンポーネント8を有する実施形態の例である。これに対し、分離膜ユニットAを複数の分離膜ユニットコンポーネントの組み合わせで構成することができる。本明細書において、被処理流体を最初に処理する単数または複数の分離膜ユニットコンポーネントを「サブユニット(A)」とし、このサブユニット(A)から排出された濃縮水を次に処理する単数または複数の分離膜ユニットコンポーネントを「サブユニット(B)」とする。また、サブユニット(B)から排出された濃縮水を次に処理する単数または複数の分離膜ユニットコンポーネントを「サブユニット(C)」とする。さらに、被処理流体をF1から供給するときのユニット構成をサブユニット(A)(B)(C)と表し、被処理流体をF2から供給するときのユニット構成をサブユニット(A′)(B′)(C′)と表すものとする。
【0040】
図5において、分離膜ユニットは、分離膜ユニットコンポーネント8a,8b,8cを有し、これら分離膜ユニットコンポーネント8a〜8cによりサブユニット(A)および(B)が構成される。被処理流体をF1から供給する第1の実施形態では、サブユニット(A)が分離膜ユニットコンポーネント8a,8b、サブユニット(B)が分離膜ユニットコンポーネント8cで構成される。また被処理流体をF2から供給する第2の実施形態では、サブユニット(A′)が分離膜ユニットコンポーネント8c,8b、サブユニット(B′)が分離膜ユニットコンポーネント8aで構成される。なお、各分離膜ユニットコンポーネントの膜面積を説明するため、分離膜ユニットコンポーネント8a,8bおよび8cを分離膜ユニットコンポーネントX1,X2およびYと記すことがある。
【0041】
図3または4に記載された破線で囲まれた分離膜ユニットAを、
図5の構成に置き換えることができる。後述する
図6〜13に記載された分離膜ユニットについても、
図3または4に記載された分離膜装置に組み入れることができる。
【0042】
図5に例示するように、被処理流体をF1から供給し、最初に処理するユニットコンポーネント群(X1,X2)で編成される前段のサブユニット(A)に同時に供給され、膜処理される。この前段のサブユニット(A)の濃縮水が、次段のユニットコンポーネント(Y)で編成される次段のサブユニット(B)の供給水となり、膜処理され、その濃縮水がF2から排出し、透過水が透過流体ラインPから排出する。
図5において、被処理流体の供給方向を逆向きにする場合、すなわち、被処理流体をF2から供給する場合は、前段のサブユニット(A′)および次段のサブユニット(B′)を構成する分離膜ユニットコンポーネント8a,8b,8cについて流路の組み替えを行う。
図5の例では、被処理流体を、最初に処理するサブユニット(A′)として、分離膜ユニットコンポーネント8b,8cに同時に供給するようにし、次段のサブユニット(B′)が分離膜ユニットコンポーネント8aになるように変更することが好ましい。
【0043】
このとき、次段のサブユニット(B)の膜面積が前段のサブユニット(A)の膜面積の合計よりも大きくならないようにすることが好ましく、さらに好ましくは、次段のサブユニット(B)の総膜面積が前段のサブユニット(A)の総膜面積よりも小さいことが好ましい。また被処理流体を供給水側ラインF1から供給した場合も供給水側ラインF2から供給した場合にもこのような関係が成立するとよい。
【0044】
このためには、少なくとも、被処理流体を2段に処理するように、複数の分離膜ユニットコンポーネントを組み合わせて構成する。例えば供給水側ラインF1から供給する場合、前段のユニットコンポーネント群(X1,X2)で編成されるサブユニット(A)に被処理流体を供給し、サブユニット(A)の濃縮水が、他のユニットコンポーネント(Y)で編成されるサブユニット(B)の供給水となるように構成する。さらに、サブユニット(A)の総膜面積をSa(=X1の膜面積Sx1+X2の膜面積Sx2)、サブユニット(B)の総膜面積をSb(=Yの膜面積Sy)とするとき、総膜面積SaがSbより大きいことが好ましい[すなわち、(Sx1+Sx2)>Sy]。
【0045】
また被処理流体を供給水側ラインF2から供給する場合は、ユニットコンポーネント(Y)と(X2)を並列接続してサブユニット(A′)を編成し、最初に被処理流体をユニットコンポーネント(Y)および(X2)からなるサブユニット(A′)に供給し、これらのユニットコンポーネント群(Y)と(X2)の濃縮水をユニットコンポーネント(X1)で編成されるサブユニット(B′)に供給し、処理することができる。これによって、被処理流体を最初に処理するサブユニット(A′)の総膜面積Sa(=Yの膜面積Sy+X2の膜面積Sx2)が、次に処理するサブユニット(B′)の総膜面積Sb(=X1の膜面積Sx1)より大きいことが好ましい[(Sy+Sx2)>Sx1]。
【0046】
例えば、
図5の場合は、ユニットコンポーネント(X1)として8a、ユニットコンポーネント(X2)として8b、ユニットコンポーネント(Y)として8cの分離膜ユニットコンポーネント群から構成され、供給水側ラインF1から被処理流体を供給する場合は、バルブ7a、7cを開、バルブ7b、7d、を閉とすれば、前段のサブユニット(A)では、8a、8bに並行して被処理流体が供給され、それらの濃縮水が次段のサブユニット(B)である8cに供給処理されることになる。逆に、供給水側ラインF2から被処理流体を供給する場合は、バルブ7a、7cを閉、バルブ7b、7dを開とすれば、供給水側ラインF2から最初に前段に相当するサブユニット(A′)を構成する8b、8cに並行して、しかもそれぞれの分離膜ユニットコンポーネントにおいて、被処理流体が逆向きに供給され、それらの濃縮水がサブユニット(B′)を構成する8aに逆向きに供給処理されることになる。また供給水側ラインF1、F2のどちらから被処理流体を供給したときも、膜分離装置全体で被処理流体を処理する前段−次段のサブユニットを構成する分離膜ユニットコンポーネントの数が2−1となるように構成することが出来る。
【0047】
さらに被処理流体を3段に処理することもできる。すなわち、上述したサブユニット(A)、(B)の次段にサブユニット(C)を加え、サブユニット(C)として、サブユニット(B)から排出された濃縮水を次に処理する単数または複数の分離膜ユニットコンポーネントで構成することができる。
【0048】
図6に示すように、供給水側ラインF1から供給する場合、まず、前段のユニットコンポーネント群(X1,X2)で編成されるサブユニット(A)に被処理流体を供給し、サブユニット(A)の濃縮水が、ユニットコンポーネント(Y)からなる次段のサブユニット(B)の供給水となり、さらにサブユニット(B)の濃縮水がユニットコンポーネント(Z)からなる残りのサブユニット(C)の供給水となる様に構成する。
【0049】
さらに、サブユニット(A)の総膜面積をSa(=Sx1+Sx2)、サブユニット(B)の総膜面積をSb(=Sy),サブユニット(C)の総膜面積をSc(=Sz)とするとき、総膜面積SaがSbよりも大きくなる[(Sx1+Sx2)>Sy]。また総膜面積SbがSc以上であること[Sy≧Sz]が好ましい(すなわち、Sa>Sb≧Sc)。
【0050】
ここで、被処理流体を供給水側ラインF2から供給する場合は、ユニットコンポーネント(Y)と(Z)を並列接続してサブユニット(A′)とし、最初に被処理流体をサブユニット(A′)に供給し、サブユニット(A′)の濃縮水をユニットコンポーネント(X2)で編成されるサブユニット(B′)に供給し、処理した後、その濃縮水をユニットコンポーネント(X1)で編成されるサブユニット(C′)に供給し、処理することができる。これによって、被処理流体を最初に処理するサブユニット(A′)総膜面積Sa(=Yの膜面積Sy+Zの膜面積Sz)が、次に処理するサブユニット(B′)の総膜面積Sb(=X2の膜面積Sx2)より大きくなる[(Sy+Sz)>Sx2]。また総膜面積Sbは、更に次に処理するサブユニット(C′)の総膜面積Sc(=X1の膜面積Sx1)以上になる(Sx2≧Sx1)。
【0051】
さらに、被処理流体の流れ方向が正方向、逆方向のどちらでも、上述した構成を満たすようにするためには、(A)の総膜面積=(B)の総膜面積+(C)の総膜面積、すなわち(Sx1+Sx2=Sy+Sz)となっており、さらに、ユニットコンポーネント群(X1+X2)がユニットコンポーネント(Y)と(Z)と同じ構成からなることが最も好ましい。
【0052】
また、上記の構成例として、
図6の場合は、ユニットコンポーネント(X1)として8a、ユニットコンポーネント(X2)として8b、ユニットコンポーネント(Y)として8c、ユニットコンポーネント(Z)として8dの分離膜ユニットコンポーネントから構成され、供給水側ラインF1から被処理流体を供給する場合は、バルブ7a、7c、7eを開、バルブ7b、7d、7fを閉とすれば、前段のサブユニット(A)では、8a、8bに並行して被処理流体が供給され、それらの濃縮水が次段のサブユニット(B)である8cに供給され、8cの濃縮水がサブユニット(C)の8dに供給処理されることになる。逆に、供給水側ラインF2から被処理流体を供給する場合は、バルブ7a、7c、7eを閉、バルブ7b、7d、7fを開とすれば、供給水側ラインF2から最初に前段のサブユニット(A′)を構成する8c、8dに並行して、しかもそれぞれの分離膜ユニットコンポーネント8c、8dにおいて、被処理流体が逆向きに供給され、処理される。これらにより得られた濃縮水がサブユニット(B′)を構成する8bに逆向きに供給され、その濃縮水がサブユニット(C′)を構成する8aに逆向きに供給処理されることになる。また供給水側ラインF1、F2のどちらから被処理流体を供給したときも、膜分離装置全体で被処理流体を処理するサブユニット(A)−(B)−(C)を構成する分離膜ユニットコンポーネントの数が2−1−1となるように構成することが出来る。
【0053】
さらに他の構成例として、サブユニット(A)(A′)を3つの分離膜ユニットコンポーネントで編成し、サブユニット(B)(B′)を2つの分離膜ユニットコンポーネントで編成し、サブユニット(C)(C′)を1つの分離膜ユニットコンポーネントで編成することができる。
図7では、ユニットコンポーネント(X1)として8a、ユニットコンポーネント(X2)として8b,8c、ユニットコンポーネント(Y)として8d,8e、ユニットコンポーネント(Z)として8fで示す単数または複数の分離膜ユニットコンポーネントから構成される。供給水側ラインF1から被処理流体を供給する場合は、バルブ7a、7b、7e、7g、7hを開、他のバルブを閉とすることによって、被処理水が最初に供給される前段のサブユニット(A)として8a,8b,8cに並行して被処理流体が供給され、それらの濃縮水がサブユニット(B)を構成する8d,8eに供給され、サブユニット(B)の濃縮水がサブユニット(C)を構成する8fに供給処理されることになる。逆に、供給水側ラインF2から被処理流体を供給する場合は、バルブ7c,7d,7f,7i,7jを開、他のバルブを閉とすることによって、最初に被処理水が前段のサブニット(A′)として8d,8e,8fに並行して供給され、それらの濃縮水がサブユニット(B′)を構成する8b,8cに供給され、その濃縮水がサブユニット(C′)を構成する8aに供給処理されることになる。この構成例においても、サブユニットの総膜面積がSb≧ScおよびSa=Sb+Scの関係を満たす。また供給水側ラインF1、F2のどちらから被処理流体を供給してもサブユニット(A)−(B)−(C)を構成する分離膜ユニットコンポーネントが3−2−1となるように構成することが出来る。
【0054】
さらに
図8の場合も同様である。
図8において、サブユニット(A)(A′)を5つの分離膜ユニットコンポーネントで編成し、サブユニット(B)(B′)を3つの分離膜ユニットコンポーネントで編成し、サブユニット(C)(C′)を2つの分離膜ユニットコンポーネントで編成することができる。供給水側ラインF1から被処理流体を供給する場合は、バルブ7a,7b,7c,7h,7i,7l,7m,7n,7oを開、他のバルブを閉とすることによって、最初に被処理水が供給される前段のサブユニット(A)として8a,8b,8c,8d,8eに並行して被処理水が供給され、それらの濃縮水がサブユニット(B)を構成する8f,8g,8hに供給され、更にそれらの濃縮水がサブユニット(C)を構成する8iおよび8jに供給処理されることになる。逆に、供給水側ラインF2から被処理流体を供給する場合は、バルブ7d,7e,7f,7g,7j,7k,7p,7q,7rを開、他のバルブを閉とすることによって、最初に被処理水が前段のサブニット(A′)として8i,8j,8f,8g、8hに並行して供給され、それらの濃縮水がサブユニット(B′)を構成する8c,8d,8eに供給され、その濃縮水がサブユニット(C′)を構成する8aおよび8bに供給処理されることになる。この構成例においても、サブユニットの総膜面積がSb≧ScおよびSa=Sb+Scの関係を満たす。また供給水側ラインF1、F2のどちらから被処理流体を供給してもサブユニット(A)−(B)−(C)を構成する分離膜ユニットコンポーネントが5−3−2に構成することが出来る。本発明は、
図5に例示する2段のユニットや、
図6〜
図8に例示するような3段のユニットに限られるものではなく、4段以上にも適用することが可能である。
【0055】
さらに、本発明は、任意の分離膜ユニットコンポーネントからの透過水を再度、別の単数または複数の分離膜ユニットコンポーネントで処理する、いわゆる透過水二段法にも適用することが可能である。すなわち、例えば、
図9に例示するように、
図5で示したフロー図の構成に、透過水を再度処理するサブユニット(D)を加え、透過水二段法にすることができる。
図9では、分離膜ユニットコンポーネント8a、8b、8cの透過水が、二段目のサブユニット(D)として分離膜ユニットコンポーネント8dで処理される。ここで、サブユニット(D)においても、被処理流体が流れる方向を適宜逆流させることが好ましい。例えば
図9において、バルブ7f、7gを閉、バルブ7e、7hを開にすることにより、分離膜ユニットコンポーネント8a、8b、8cの透過水が、供給水側ラインF3から分離膜ユニットコンポーネント8dに供給される。もしくはバルブ7f、7gを開、バルブ7e、7hを閉にすることにより、分離膜ユニットコンポーネント8a、8b、8cの透過水が、供給水側ラインF4から分離膜ユニットコンポーネント8dに供給される。すなわち、バルブ7f、7gおよびバルブ7e、7hの開閉を操作することにより、供給水側ラインF3とF4との間で切り替える機構を有することによって、サブユニット(D)における被処理流体の流れ方向を切り替えることが出来る。
【0056】
また、他の実施態様として例として
図10に例示するように、
図6で示したフロー図の構成に、透過水を再度処理するサブユニット(D)を加えた透過水二段法にすることができる。
図10では、分離膜ユニットコンポーネント8a、8b、8cおよび8dの透過水が、二段目のサブユニット(D)として分離膜ユニットコンポーネント8eで処理される。ここで、サブユニット(D)においても、被処理流体が流れる方向を適宜逆流させることが好ましい。すなわち、
図10において、バルブ7g、7iを閉、バルブ7h、7jを開にすること、もしくはバルブ7g、7iを開、バルブ7h、7jを閉にすることとの間で切り替える機構を有することによって、サブユニット(D)における被処理流体の流れ方向を、供給水側ラインF3から供給するか、供給水側ラインF4から供給するかとの間で切り替えることが出来る。
【0057】
さらに、1段目のサブユニット(A)、または1段目および2段目のサブユニット(A)および(B)からの透過水を処理せずにとくに、透過水の水質が相対的に悪い後方(
図9では2段目のサブユニット(B)、
図10では3段目のサブユニット(C))のサブユニットからの透過水のみを透過水二段法のサブユニット(D)で処理する場合は、
図11,12および13に示すような構成にすることができる。
【0058】
図11は、
図5で示したフロー図の構成に、透過水の一部を再度処理するサブユニット(D)を加えた透過水二段法を例示する。
図11の例では、供給水側ラインF1から被処理流体を供給する場合は、バルブ7a、7c、7f、7g、7iを開、他のバルブを閉にすることにより、2段目のサブユニット(B)を構成するユニットコンポーネント8cからの透過水のみを、供給水側ラインF4から透過水二段法のサブユニット(D)を構成するユニットコンポーネント8dへ、供給し処理することができる。また供給水側ラインF2から供給する場合は、バルブ7b、7d、7e、7h、7jを開、他のバルブを閉にすることにより、2段目のサブユニット(B′)を構成するユニットコンポーネント8aからの透過水のみを供給水側ラインF3から、透過水二段法のサブユニット(D)を構成する8dへ供給し、被処理流体の供給方向を変えながら処理することが出来る。
【0059】
また
図12は、
図6で示したフロー図の構成に、透過水の一部を再度処理するサブユニット(D)を加えた透過水二段法を例示する。
図12において、供給水側ラインF1から被処理流体を供給する場合は、バルブ7a、7c、7e、7g、7i、7kを開、他のバルブを閉にすることにより、3段目のサブユニット(C)を構成するユニットコンポーネント8dからの透過水のみを、供給水側ラインF4から透過水二段法のサブユニット(D)を構成するユニットコンポーネント8eへ供給し処理することができる。また供給水側ラインF2から供給する場合は、バルブ7b、7d、7f、7h、7j、7lを開、他のバルブを閉にすることにより、3段目のサブユニット(C′)を構成するユニットコンポーネント8aからの透過水のみを供給水側ラインF3から供給し、透過水二段法のサブユニット(D)を構成するユニットコンポーネント8eへの被処理流体の供給方向を変えながら処理することが出来、非常に好ましい態様である。もちろん、
図12で3段目のサブユニット(C)から排出する透過水のみならず、2段目のサブユニット(B)から排出する透過水も透過水二段法のサブユニット(D)で処理したい場合など、
図13に例示するようにバルブ7k,7lの位置を変えることによって対応することが可能である。さらに、
図9、
図10、
図11、
図12、
図13のサブユニット(D)から排出される二段目濃縮水9は、通常被処理流体よりも水質が良好な場合が多いので、供給水側ラインF1、F2の被処理水供給側に還流することも好ましい実施態様である。
【0060】
以上の、被処理流体の供給方向の制御については、特に制約はないが、分離膜ユニットコンポーネントの汚染を抑制する目的を鑑みるに、定期的、もしくは、汚染状態を監視しつつ、被処理流体の供給方向を供給流体側ラインF1とF2とで交互に切り替えて処理することが好ましい。
【0061】
とくに、被処理流体の供給方向を定期的に切り替える場合は、例えば、深夜電力のみで運転するような場合など装置の停機に併せて切り替えると無駄がなく効率的である。また、定期的な洗浄を、被処理流体の供給方向を逆方向にすることで行うことも好適である。一方、汚染状態を監視する場合は、被処理流体(供給水)と濃縮水の間の圧力損失、供給水側と透過水側の圧力差、濃縮水の汚染物質(例えば、微生物、スケール、油分)の濃度、また、ダミーの膜や汚れ評価ユニットを併設してその汚れ状態を監視し、値が設定値を超えた場合に切り替える方式を採ることが出来る。もちろん、これらの値は被処理流体の状態(濃度、温度、pH等)によっても変動するため、圧力損失などの測定値を適宜補正することが好ましい。とりわけ、1つの分離膜ユニットコンポーネントにおける供給流体の圧力と濃縮流体の圧力の差から計算される圧力損失、または複数の分離膜ユニットコンポーネントが直列に配置されたサブユニットにおける最初に供給する被処理流体の圧力と最後尾のサブユニットからの濃縮流体の圧力との差から計算される圧力損失、もしくは、複数のサブユニットの一部の圧力差から計算される圧力損失を測定し、その変化に基づいて前記被処理流体の供給方向を変えることが好ましい。とくに、先頭と最後尾のサブユニットにおいて、ファウリングによる圧力損失が生じやすいため、それらの圧力損失を単独もしくは、含めて測定することが特に好ましい。
【0062】
本発明において、被処理流体シール部材(シール部材)としては、分離膜モジュール47の被処理流体供給口が、
図2に示すように符号38と40で入れ替わるため、被処理流体の流れ方向を逆向きにさせるのに差し支えない構造になっていることが求められる。一般には、被処理流体供給が一方向であるため、シール部材としてU−カップリングシールもしくはV−カップリングシールが考案され広く使用されている。このU−カップリングシールは、弾性樹脂を用い、U字状の開いた部分が被処理流体を供給する側(原水側)に向くように分離膜エレメントのテレスコープ防止板にセットされている。このU−カップシールは、原水側から水が供給された時に、その水圧でU字が開き、U−カップシールと圧力容器との隙間を埋める構造になっている。V−カップリングシールも同様である。
【0063】
図14は、分離膜エレメントが圧力容器内に装填された状態において、U−カップシール33がテレスコープ防止板の外周部30の周回溝251に嵌着され、テレスコープ防止板の外周と圧力容器の内周面との間でシールする状態を示すものであって、U−カップシール装着部分の近傍を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【0064】
図14において、U−カップシール33は、圧力容器の内壁29との接触面積は比較的小さいが、前述したとおり、被処理流体(原水)上流から下流(
図14の矢印Fで示すように左から右への方向)に流れる水に対してはシール機能が発揮される。また、圧力容器内で分離膜エレメントを移動させる場合は、
図14の左から右に摺動させれば、比較的小さな抵抗で移動させることが可能である。しかしながら、分離膜エレメントを右から左に移動させるのは難しい。本発明では被処理流体を両側から供給できるようにしなければならないため、U−カップシールやV−カップシールは適していない。
【0065】
一方、従来技術として、O−リングシールを使用する場合もあり、テレスコープ防止板の外周側の周回溝に嵌着されたO−リングシールが、圧力容器の内壁と接触し、O−リングシールがつぶれて変形することで、分離膜エレメントと圧力容器内との隙間を埋めているため、両側からの被処理流体の供給に対して、良好なシール性を発揮することが出来る。
図15は、分離膜エレメントが圧力容器内に装填された状態において、O−リングシール32がテレスコープ防止板25の外周部30の周回溝251に嵌着された、テレスコープ防止板の外周と圧力容器の内周面との間でシールする状態を示すものであって、O−リングシール装着部分の近傍を拡大して模式的に示す部分拡大断面図である。
【0066】
図15において、O−リングシール32は、圧力容器の内壁29と圧接している部分において変形し、圧力容器の内壁29との接触面積が大きくなっている。さらに、O−リングシール32は弾性樹脂で構成されているので圧力容器の内壁29との摺動摩擦が大きいため、圧力容器内の分離膜エレメントの移動が容易でないという欠点を有している。
【0067】
O−リングシールとU−カップシールの欠点を解決する方法として、例えば、
図16に示すようなスプリットリング状のシール部材(以下、「スプリットリングシール」という)を用いることが好ましい。スプリットリングシール34は、国際公開第2011/046944号に記載されている。スプリットリングシール34は、環状シールが1箇所以上で切断・分割された如き形状を有するものである。例えば、
図16(a)(平面図)に示すようにスプリット部35が1箇所存在するものが好ましいが、環状シールが2箇所で切断・分割された如き半円弧状スプリットリングシールを2つ用いてもよい。スプリットリングシールの横断面形状は、特に限定されるものでは無いが、テレスコープ防止板の外周部30の周回溝251に収まり、移動しない構造であればよく、例えば、
図16(b)(
図16(a)の矢視b−bでの断面図)に示すように略四角形でもよいし、略多角形でもよい。また、スプリットリングシールの外周部の長さ(外周長)は、そのスプリットリングシール34のスプリット部35を繋げて環状にした時の外周直径37が、圧力容器の内壁の直径サイズよりも少し大きくなるように設計し、実際に分離膜エレメントのテレスコープ防止板に装着して圧力容器内に装填された時には、そのスプリット部の隙間が縮まり、スプリットリングシールが圧力容器の内壁と密接する構造となるようにする。また、スプリットリングシールの内周部長さ(内周長)は、そのスプリットリングシール34のスプリット部35を繋げて環状にした時の内周直径36が、テレスコープ防止板の外周部30の周回溝251内に、隙間無く収まる大きさであれば良い。スプリットリングシール34の大きさは、エレメントの外径や材質等により最適化すればよいが、例えば、シールの径方向幅(即ち、外周直径37と内周直径36との差の半分)が5〜10mm程度、シールの厚み3〜10mm程度を採用することができる。
【0068】
このようなスプリットリングシール34は、
図16(b)に示すように断面形状が矩形であるため、摺動面とシール部材が並行もしくは両方向対称に接触することができ、これによって、分離膜モジュール47の両側(38,40)から被処理流体を供給することが可能となり、しかも、スパイラル型分離膜エレメントを筒状圧力容器内に装填する時も、また、分離膜エレメントを圧力容器から抜き取る時も、容易に分離膜エレメントを圧力容器内で移動させることができるようになる。とくに、
図5〜
図13のように分離膜ユニットコンポーネントを複数構成する場合、レイアウトによってはエレメントの差し入れが制限される場合も少なくないため、例え圧力容器に装填されるエレメントの本数が一つであっても、両側からの装填や抜き取りが出来る本発明の構造は非常に好ましいものである。
【0069】
本発明に適用可能なシール部材の特性としては、分離膜エレメントのどちらから被処理流体を供給しても十分なシール性を発現することができる。このような特性を有するシール部材の形状としては、前述のスプリットリング状、もしくはシール接触面がとがった、すなわち、断面がたとえば三角形になっているデルタリング状や断面がOではなく凸レンズ状、また、接触面が凹凸を保った波板状が適用可能である。さらに、摺動性の問題はあるもののO−リング状も適用することは可能ではある。O−リングやデルタリングなどの場合、弾性材製シール部材を用いるとシール製が高くなるため好ましいが、摺動性が損なわれやすいため、注意が必要である。摺動性を重視するため、弾性材製シール材で一般に考慮する潰し代(弾性材を用いたO−リングなどで密着性を上げるため、使用時に圧縮変形させる割合)を小さくすることが重要である。具体的には、通常8〜30%とされている潰し代を、10%以下、より好ましくは5%以下にすることによって、圧力容器内での良好な摺動性を保つことが可能となるが、高い精度が必要となるため、適用に当たっては、注意が必要である。
【0070】
スプリットリングシールにおけるスプリット部の形状は、特に限定されるものではないが、一例として、
図16に示すように、シール長手方向に直角に切断した場合(
図17(a))、シール長手方向に対し斜めに切断した場合(
図17(b))、シール長手方向に対し階段状に切断した場合(
図17(c))が挙げられる。
【0071】
特に、シール長手方向に対し斜めに切断した場合(
図17(b))、シール長手方向に対し階段状に切断した場合(
図17(c))のスプリットリングシールを用いた時には、実際に被処理流体が圧力容器内を流れる際の圧力でもってスプリットリング端部同士が押し付けられ、スプリットリング端部の隙間がほとんど無い状態となる。この結果、スプリット端部同士の接合部分でもシール効果はほぼ保たれ、被処理流体が分離膜エレメントの外側をバイパスする量はかなり少なく、効率的な水処理を行うことができる。
【0072】
スプリットリングシールを、分離膜エレメントのテレスコープ防止板の外周部に装着した後、そのスプリット部どうしは単に接触するように配置することでもよいし、スプリット部どうしを接合しても良い。その際の接合の方法としては、熱融着接合や接着剤を用いる強固な接合でも良いし、スプリットリングシールのスプリット部の一片と他方とが凹凸嵌合により組み合わさった接合でもよい。スプリット端部同士を凹凸嵌合させて接合することで、取り扱い時の衝撃でスプリットリングシールの脱落を阻止することができる。
【0073】
スプリットリングシールを、テレスコープ防止板の外周に装着するにあたって、1もしくは複数のシール部材を装着してもよい。複数個のシール部材を装着する場合は、スプリット部の位置を相互に異なる位置にすることが好ましく、これにより原水が分離膜エレメントの外側を通り抜ける量をより少なくすることができる。
【0074】
スプリットリングを構成する素材は、非弾性体、弾性体のいずれでもよく、非弾性材を用いることが好ましい。有機材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレンを始めとする、様々な硬質プラスチック、無機材料としても、鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、チタンやそれらの合金を使うこともできれば、セラミック、黒鉛、石綿も用いることができるし、また、FRPなどのように有機無機複合体や以上の素材の複層品を用いることも可能である。
【0075】
弾性材としては、特に制約はなく、ニトリルゴム、スチロールゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなど、一般に多用されるシール材を用いることができる。
【0076】
なお、これらの素材は、分離膜モジュール47の対象となる被処理流体に耐久性があることが好ましい。たとえば、海水を対象にする場合は、鉄合金を用いると腐食しやすく、また、有機溶媒を含む場合は、耐久性が不十分な樹脂を使うと劣化しやすいので注意を要する。
【0077】
従って、本発明の適用にあたっては、被処理流体シール部材(
図2の45a1〜45f1、45a2〜45f2)については、すべて、
図16および17に示すシール部材、とくに、スプリットリング状のシール部材を使用することによって本発明の目的を達成することが出来る。また、逆流させた場合にシール性がU−カップシールリングやV−カップシールリングを併用することによって、分離膜エレメントの移動は一方向になるが、より確実なシール性を実現することが出来るため好ましい実施態様である。
【0078】
本発明を適用可能なスパイラル型膜エレメントに用いられる分離膜21は平膜状の分離膜であって、逆浸透膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜、ガス分離膜、脱ガス膜などが使用できる。供給側流路部材23には、ネット状材料、メッシュ状材料、溝付シート、波形シート等が使用できる。透過側流路部材22には、ネット状材料、メッシュ状材料、溝付シート、波形シート等が使用できる。いずれも、分離膜と独立したネットやシートでも構わないし、接着や融着するなどして一体化したものでも差し支えない。
【0079】
テレスコープ防止板25は、分離膜巻回体が通過する流体の圧力により筒状に変形すること(テレスコープ現象)を防止するために設置された、空隙を有する板状物であり、外周側にはシール材を装填するための周回溝251を有していることが好ましい。テレスコープ防止板25は変形防止の機能を有すれば、その材質は特に制約はない。ただし、用途に応じて、耐薬品性や耐熱性など必要になる場合は、要求仕様に応じて適宜選択することが可能である。一般には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、耐熱性樹脂などの樹脂材が好適である。また、このテレスコープ防止板25は、原水の流れをなるべく妨げずに強度を維持する目的から、外周環状部と内周環状部と放射状スポーク部とを有するスポーク型構造であることが好ましい。
【0080】
中心管24は、管の側面に複数の孔を有するものであり、中心管24の材質は、樹脂、金属など何れでもよいが、コスト、耐久性を鑑みて、ノリル樹脂、ABS樹脂等のプラスチックが通常使用されることが一般的である。
【0081】
分離膜21の端部を封止するための手段としては、接着法が好適に用いられる。接着剤としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ホットメルト接着剤等、公知の何れの接着剤も使用することができる。
【0082】
また、スパイラル型分離膜エレメントは、分離膜巻回体の外周部が外装材により拘束されて拡径しない構造になっていることも好ましい。外装材は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどからなるシートや、硬化性樹脂を塗ったガラス繊維などからなるもので、分離膜巻回体の外周表面に、かかるシートや繊維を巻回して分離膜エレメントが拡径しないように拘束する。
【0083】
本発明を適用可能な被処理流体は特に、制限されるものではなく、河川水、海水、下水処理水、雨水、工業用水、工業廃水など、いろいろな被処理流体を挙げることができるが、被処理流体に様々な有機物や無機物が含まれている流体に好適である。