(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の細部について記載される。しかしながら、かかる特定の細部がなくても1つ以上の実施形態が実施できることは明らかである。他にも、図面を簡潔するために、周知の構造及び装置が略図で示されている。
【0009】
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1において、(a)は、本発明の一実施形態におけるワイヤレスセンサ付き軸受1の一例を示す分解斜視図、(b)は軸受本体の要部を示す構成図である。
ここでは、ワイヤレスセンサを、転がり軸受に組み込んだ場合について説明するが、滑り軸受に組み込むことも可能である。
【0010】
図1に示すように、ワイヤレスセンサ付き軸受1は、トーンリング2と、センサユニット3と、カバー4と、軸受本体5とを備える。
軸受本体5の内輪51の端面内周側と外輪52の端面外周側とにそれぞれ溝51a、52aが形成されており、内輪51の端面内周側の溝51aに、円筒状のトーンリング2が取り付けられ、外輪52の端面外周側の溝52aにカバー4が設けられる。
【0011】
トーンリング2は外周に周期的な凹凸が形成されている。
センサユニット3は、後述の検出センサや無線送信部等が実装されたセンサ基板31と、磁性体で形成されたヨーク32の周りに導体ワイヤを巻いたコイル33が複数配置されたコイル部34と、を備え、センサ基板31及びコイル部34は、円環の一部をなすように円弧状に形成される。
【0012】
トーンリング2はセンサユニット3の中空部に配置され、トーンリング2の外周の凹凸と、センサユニット3のコイル33とが対向するように配置される。
カバー4は、円筒状に形成され、円筒の一方の面は開放され、他方の面は円環状に形成されてセンサユニット3の取り付け面41を形成している。カバー4の開放面側が軸受本体5の外輪52の端面外周側に形成された溝52aに嵌め合わされている。
【0013】
センサ基板31及びコイル部34は、カバー4の内側に、取り付け面41の円環に沿って隣接して配置され、ねじ止め等により固定される。
センサ基板31及びコイル部34を取り付け面41に固定した状態で、カバー4を軸受本体5の外輪52の溝52aに嵌め合わせることによって、センサユニット3がカバー4と軸受本体5との間に収納されるようになっている。なお、カバー4の取りつけ方法としては、圧入、カシメ、或いは接着等の方法を適用することができる。
【0014】
軸受本体5の内輪51と外輪52との間には複数の転動体53が介在している。この転動体53は、電食を防ぐためセラミック製の玉であることが望ましい。
そして、外輪52が固定され内輪51が回転することによって、内輪51と共にトーンリング2が回転し、トーンリング2とコイル部34とが相対的に回転することによって、トーンリング2の外周の凹凸と向かい合うコイル部34の位置が変化する。このため、トーンリング2の外周の凹凸により、コイル部34とトーンリング2の外周との距離が周期的に変化することによって、各コイル33に生じる磁束密度が変化し、この磁束密度の変化に伴い、各コイル33に交流電圧が発生する。この発生した交流電圧は、直流電圧に変換されてセンサユニット3の各部に動作電力として供給される。なお、ここでは、電磁誘導方式で発電を行う場合について説明しているが、静電誘導方式で発電させてもよく、発電方法はどのような手段であってもよい。
また、ここでは、外輪52を固定し、内輪51を回転させる場合について説明したが、これに限るものではなく、内輪51を固定し、外輪52を回転させる場合であっても適用することができる。
【0015】
図2は、センサユニット3の一例を示すブロック図である。
センサユニット3は、発電部11、充電回路12、二次電池13、検出センサ14及び無線送信部15を備える。
発電部11で発電された交流電圧は、充電回路12により直流電圧に変換されて、検出センサ14及び無線送信部15に給電されると共に、余剰分は二次電池13に蓄電される。検出センサ14及び無線送信部15は充電回路12及び二次電池13からの給電を受けて動作する。
図1におけるトーンリング2及びコイル33が発電部11に対応する。
【0016】
検出センサ14は、例えば、軸受本体5の回転数を検出する回転センサ、軸受本体5の周囲温度を検出する温度センサ、軸受本体5の振動を検出する振動センサ、軸受本体5の周囲湿度を検出する湿度センサ、軸受本体5の潤滑油の酸化劣化に伴って生じるガス状の炭化水素、硫化水素、アンモニア等を検出するガスセンサ、軸受本体5において生じる摩擦音を検出する超音波センサ等、軸受本体5の動作や性能等に影響を与える、軸受本体5に関する物理量を検出する各種センサのうち、いずれか1つ又は複数のセンサを備える。ここでは簡単のために、検出センサ14として1つのセンサを備える場合について説明する。
【0017】
検出センサ14による検出情報は、無線送信部15によって無線通信により送信され、例えば受信側装置に設けられた無線受信部50で受信される。
無線送信部15は、例えば、信号処理部15aと送信処理部15bとを備え、信号処理部15aは、各種検出情報毎に予め設定されている閾値と、検出センサ14で検出された検出情報とを比較する。
【0018】
前記閾値は、正常と判断されるときの検出情報の値である正常値と、異常と判断されるときの検出情報の値である非正常値との境界値よりも、正常値側の値に設定される値であって、異常ではないが、検出情報が非正常値に至る可能性があると予測される値であり、今後検出情報が非正常値に至る可能性があると予測される検出情報の取り得る範囲と、そうでない検出情報の取り得る範囲との境界の値である。ここでは、閾値よりも正常値側の値を取る領域を正常領域とし、閾値を含む、閾値よりも非正常値側の値を取る領域を注意喚起領域とする。
【0019】
信号処理部15aは、検出センサ14による検出情報が、正常領域の値である場合には、この検出情報を予め設定された第一の送信間隔で、送信処理部15bを介して送信する。逆に検出センサ14による検出情報が注意喚起領域の値である場合には第一の送信間隔よりも、周期の短い第二の送信間隔で、送信処理部15bを介して検出情報を送信する。
第一の送信間隔及び第二の送信間隔は、検出情報の種類等に応じて設定すればよい。例えば、第二の送信間隔は、検出情報が、その異常を速やかに検出し、異常に対して速やかに対処すべきものである場合、或いは、検出情報の変化速度が比較的大きい特性を有する検出情報の場合には、比較的短い送信間隔となるように設定する等、検出センサ14による検出対象、この場合には軸受本体5やこの軸受本体5が組み込まれている装置やシステム、また、検出対象の物理量に応じて設定すればよく、第一の送信間隔よりも短い送信間隔であればよい。
【0020】
なお、検出センサ14として検出対象の物理量が異なる複数のセンサを有する場合には、検出センサ14としての複数のセンサの検出情報を、検出センサ14の検出情報として一度にまとめて送信するようにしてもよく、各種検出情報ごと、或いは複数の検出情報ごとに送信するようにしてもよい。
各種検出情報ごとに送信する場合には、各種検出情報ごとに閾値を設定し、対応する閾値に基づいて、検出情報ごとに送信間隔を変更すればよい。また、複数の検出情報をまとめて送信する場合には、例えば、各種検出情報ごとに閾値を設定し、いずれか1つ、又は複数の検出情報がその閾値を超えたとき、もしくは複数の検出情報に応じた検出情報相当値を加算又は乗算すること等により得た検出情報評価値がその閾値を超えたときに、検出情報又は検出情報評価値等に合わせて送信間隔を変更し、且つ変更した送信間隔で、複数の検出情報を送信すればよい。
【0021】
なお、送信すべき検出情報が複数ある場合の、閾値や送信間隔の設定方法、また、送信間隔の変更方法等は、上述の方法に限るものではなく、各種検出情報の種類や、各種検出情報に異常が生じた場合の対処の緊急度合い等に基づいて設定すればよい。
このような構成を有するワイヤレスセンサ付き軸受1において、検出センサ14で検出される検出情報が正常値である場合には、無線送信部15では検出情報を、比較的送信間隔の長い第一の送信間隔で送信する。
この状態から、軸受本体5に異常が生じ、検出センサ14の検出情報が正常領域から注意喚起領域の値に変化すると、無線送信部15では、第一の送信間隔よりも、送信間隔がより短い第二の送信間隔で検出情報を送信する。
【0022】
無線受信部50を介して検出情報を取得する受信側装置では、送信間隔がより短い第二の送信間隔で検出情報を取得するため、検出情報の変化状況をより詳細に把握し、軸受本体5の状態をより詳細に把握することが可能となる。そのため、より速い段階、すなわち異常の初期の段階で検出情報の異常を検出し、対処することができる。その結果、軸受本体5が異常状態で動作することを抑制し、長期間の安定した使用を実現することができる。
【0023】
また、閾値として、異常である可能性があると判定される検出情報の取り得る範囲と、正常である検出情報の取り得る範囲との境界の値を設定しており、実際に検出情報が異常な値となる以前の段階で、検出情報の送信間隔を短くするようにしている。そのため、受信側装置では、実際に検出情報が異常な値となる以前の段階から、検出情報の変化状況を詳細に把握することができる。その結果、異常の初期の段階で検出情報の異常を把握することができ、検出情報の異常がより進む前の段階で対処することができる。
【0024】
また、このとき、検出センサ14の検出情報が正常領域にあるときには、送信間隔がより長い第一の送信間隔で送信している。つまり、検出センサ14の検出情報が正常値である場合には、検出情報の次の送信タイミングに達するまでの間に、検出情報が非正常値方向に大きく変化することは考えにくい。そのため、検出情報の送信間隔が比較的長くても検出情報が非正常値方向に大きく変化することはない、と予測されるときには、検出情報の送信間隔を長くすることによって、その分電力消費量の低減等を図ることができ、また、検出情報の受信側装置でも、受信した検出情報に対する処理負荷を軽減することができる。
【0025】
特に、工作機械や産業機械、車両等に用いられる軸受に適用する場合、これら軸受は運動することによって振動を生じたり、摩擦によって発熱したりし、これらの振動や温度は軸受の寿命に影響する。そのため、特に装置の内部などの点検が難しい部分に取り付けられている軸受については、上位装置では、振動や温度等の周囲環境を検出して監視する必要がある。
上述のように、本発明の一実施形態におけるワイヤレスセンサ付き軸受1は、安全性を確保しつつ長期使用が可能であるため、特に、工作機械や産業機械、車両等に用いられる軸受に適用することによって、信頼性を確保しつつ、軸受や、工作機械や産業機械、車両等の長期使用を可能とすることができる。
【0026】
図3は、信号処理部15aでの処理手順の一例を示すフローチャートである。
信号処理部15aは、例えば上位装置等の検出情報の受信側装置から、検出センサ14による検出動作の開始を指示する開始信号を受信すると、検出センサ14を予め設定した一定の時間間隔で作動させ、温度等の各種検出情報を取得する(ステップS1)。そして、取得した、検出情報と閾値とを比較する(ステップS2)。
検出情報が閾値よりも小さく正常領域の値である場合にはステップS3に移行し、第一の送信間隔で検出情報を送信する。逆に検出情報が閾値以上であり注意喚起領域の値である場合にはステップS4に移行し、第一の送信間隔よりも送信間隔がより短い第二の送信間隔で検出情報を送信する。
【0027】
このステップS1からステップS3又はステップS4までの処理を、検出情報の受信側装置から検出動作の終了を指示する検出終了信号を受信するまで繰り返し行う(ステップS5)。
なお、第二の送信間隔で検出情報を送信するとき、つまり、検出情報が注意喚起領域の値であるときには、検出情報と共に、注意喚起領域の値であることを表すアラーム信号を、検出情報と共に送信するようにしてもよい。
【0028】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
この第2の実施形態は、無線送信部15での処理手順が異なること以外は上記第1の実施形態と同様である。
すなわち、この第2の実施形態では、信号処理部15aは、検出情報の値と予め設定した複数の閾値との関係によって、送信間隔を変化させる。
【0029】
例えば、検出情報として軸受本体5の内部温度を例にとって説明する。
検出情報すなわち内部温度の閾値として、
図4に示すように、複数の閾値T1〜T6を設定し、内部温度が高温になるほど、すなわち非正常値方向に大きくなるほど、検出情報の送信間隔が短くなるように、閾値と送信間隔とを対応付ける。
図4の場合には、内部温度がT1より低い場合には送信間隔はf6に設定され、内部温度がT1以上T2より低い場合には送信間隔はf5に設定される。また、内部温度がT2以上T3より低い場合には送信間隔はf4、内部温度がT3以上T4より低い場合には送信間隔はf3、内部温度がT4以上T5より低い場合には送信間隔はf2、内部温度がT5以上T6より低い場合には送信間隔はf1、内部温度がT6以上である場合は送信間隔はf0に設定される。これら送信間隔は、f0<f1<f2<f3<f4<f5<f6の関係を満足し、内部温度が高くなるほど、つまり内部温度が非正常値方向に大きくなるほど、送信間隔は短くなるように設定され、さらに、内部温度が高くなるほど内部温度の変化量に対する、送信間隔の変化量がより大きくなるように設定される。また、最小の閾値(
図4の場合にはT1)は、実際に異常が生じたとみなすことのできる内部温度(検出情報)よりも低い値であり、異常が生じる可能性があると予測される値に設定される。
【0030】
そして、検出センサ14で検出される内部温度が正常値であって閾値T1より低い場合には、
図4の特性図から、送信間隔は、比較的長いf6に設定される。何らかにより内部温度が上昇し始めると内部温度の上昇に伴って、送信間隔がf6からf5に変更され、閾値T1〜T6を跨ぐタイミングで送信間隔が順次切り替わり、より短い送信間隔で検出情報が受信側装置に送信されることになる。
【0031】
そのため、受信側装置では、内部温度が高温となるほど、すなわち内部温度が非正常値方向に大きくなるほど、より詳細に内部温度の変化状況を把握することができ、且つ内部温度が上昇し、内部温度の変化に対して注意をより払わなければならないときほど、内部温度の変化状態をより短い周期で認識することができる。そのため、内部温度の変化に対する対処をより早い段階でより的確に行うことができる。また、この場合も、内部温度が正常値であるときには検出情報の送信間隔は長いため、不要な検出情報を受信側装置に送信することを抑制し、受信側装置の負荷軽減を図ることができる。
【0032】
また、最小の閾値T1として、実際に異常が生じたとみなすことのできる内部温度(検出情報)よりも、より低い内部温度であり、異常が生じる可能性があると予測される値を設定しており、実際に異常が生じる前の、段階から送信間隔をより短くなるようにしているため、受信側装置では、異常が生じる前の段階から検出情報の変化状況を把握することができ、すなわちより早い段階で検出情報の異常の有無を検出することができる。
【0033】
また、検出情報が、異常が生じているとみなすことはできないが、異常が生じる可能性があるとみなされる閾値T1相当の値であるときには、送信間隔はf5となり、検出情報が正常であるとみなされるときの送信間隔f6よりも送信間隔が短い。そのため、例えば正常な値から一時的な変化で検出情報が閾値T1を超えたような場合には送信間隔はf6から、より送信間隔の短いf5に変更されるが、送信間隔の変化量は比較的小さいため、この変更に伴う受信側装置における負荷の増加量は小さくてすむ。そのため、検出情報が、異常な値ではないが、異常が生じる可能性があるとみなされる値にあるときの、受信側装置における負荷の増加を抑制しつつ、実際に異常が生じた場合には、速やかに異常に対する対処を行うことができる。
また、この場合も、検出情報が閾値T1以上となったとき、或いは、明らかに異常とみなすことのできる閾値以上となったとき等に、非正常時の値であることを表すアラーム信号を、検出情報と共に送信するようにしてもよい。
【0034】
図5は、第2の実施形態における信号処理部15aでの処理手順の一例を示すフローチャートである。
信号処理部15aは、例えば上位装置から、検出センサ14による検出動作の開始を指示する開始信号を受信すると、検出センサ14を予め設定した一定の時間間隔で作動させ、検出センサ14から温度等の各種検出情報を取得する(ステップS11)。そして、取得した検出センサ14の検出情報と閾値とを順に比較して、検出情報が、閾値T1〜T6で区切られるどの温度範囲に存在するかを判定する。つまり、T1未満、或いはT6以上であるのか、或いはT1〜T6のいずれの閾値の間に存在するかを判断する(ステップS12)。
【0035】
そして、検出した温度範囲に応じた送信間隔を
図4の特性線から特定し(ステップS13)、特定した送信間隔で検出情報を送信する(ステップS14)。つまり、前回検出情報を送信した時点から、特定した送信間隔が経過した時点で検出情報を送信する。
このステップS11からステップS14までの処理を、検出情報の受信側装置から検出動作の終了を指示する検出終了信号を受信するまで繰り返し行う(ステップS15)。
【0036】
なお、上記第2実施形態では、温度に応じて送信間隔を段階的に変化させる場合について説明したが、これに限るものではない。
例えば
図4中に特性線Lで示すように、温度の変化に応じて送信間隔を連続的に変化させるようにしてもよく、さらに、温度が高くなるほど送信間隔の変化量が大きくなるように設定してもよい。
この場合には、例えば
図4に示す特性線Lを表す、温度と送信間隔との対応を表す温度−送信間隔関数を無線送信部15で記憶しておき、検出センサ14からの検出情報をもとに、温度−送信間隔関数から、対応する送信間隔を特定し、特定した送信間隔で送信するようにすればよい。
【0037】
なお、本発明の一実施形態におけるワイヤレスセンサ付き軸受1は、産業機械用軸受や車両用軸受等の各種軸受に適用することができると共に、軸受を備えた軸受側装置と、この軸受側装置から検出センサ14の検出情報を受信する受信側装置とを備えた、管理装置やモニタリング装置等に適用することも可能である。
また、上記実施形態では、トーンリング2とコイル33とを用いて発電を行う場合について説明したが、発電方法はこれに限るものではなく、他の発電方法であってもよい。
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例又は実施形態も網羅すると解すべきである。