(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1に示すように、1は、本発明を適用した建設機械の一例としての油圧ショベルである。この油圧ショベル1は、上部旋回体3が後方小旋回型である小型機種であり、クローラ式の下部走行体2と、その上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前部側に搖動可能に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。作業装置4は、ブーム4aと、ブーム4aの先端部に連結されたアーム4bと、アーム4bの先端部に連結されたバケット4c及びこれらを伸縮によって作動させる油圧シリンダ4dで主に構成されている。なお、
図1等に示すように、以下において上下左右等の方向は上部旋回体3を基準に説明する。
【0023】
上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム6を有し、該旋回フレーム6上に運転席
7が設けられている。また、旋回フレーム6の後部には、高重量のカウンタウエイト5が設置されている。そして、カウンタウエイト5と運転席7の間における旋回フレーム6上にエンジン15が組付けられている。
【0024】
図2に示すように、上部旋回体3の旋回フレーム6は、厚肉な平板で形成された底板8と、底板8上に立設され、相対して前後方向に延びる一対の縦板9,9と、この一対の縦板9,9間に立設されて左右方向に延びる横板10を備える。
【0025】
図2に示すように、エンジン15は、旋回フレーム6の後部に搭載され、左前A、右前B、右後C、左後Dの4箇所(
図4(a)参照)において、それぞれ支持機構を介して旋回フレーム6に支持されている。実施形態1では、一対の縦板9,9間に位置し、最も作業スペースを確保しにくい左前Aの箇所に用いる支持機構20に本発明を適用した例を示す。それ以外の箇所においては、一般的に周知な構造からなる支持機構を採用しているので、この周知な支持機構についての図示及び説明は省略する。
【0026】
図2ないし
図5に示すように、エンジン15の支持機構20は、エンジン側支持体21と上部旋回体側支持体51とで構成されている。なお、
図3及び
図4において、エンジン15は全体の詳細構造を省略化した箱形状で表す。
【0027】
エンジン側支持体21は、取付プレート22と、防振部材25と、第1連結プレート40とを備える。取付プレート22は、略鉛直方向に延びる縦板部23と略水平方向に延びる横板部24とで断面略L字状に形成された金属製の板材からなり、縦板部23がエンジン15の左前部にボルトB1で取付けられる。また、横板部24には、マウント用ボルト36を挿通するためのマウント用ボルト孔24aが設けられ、横板部24と防振部材25とがマウント用ボルト36で締結される。
【0028】
防振部材25は、上下に相対して配置された上側防振メンバ26と下側防振メンバ31とからなる。上側防振メンバ26は、
図5に示すように、上側ゴム材27と、この上側ゴム材27の中心部に設けられ、鉛直方向に延びる円筒状の金属製スリーブ28と、このスリーブ28の上端に固定された上部押え板30と、上側ゴム材27の下部に形成された段部に沿って設けられた断面L字状の金属製リテーナ29を有する。下側防振メンバ31は、下側ゴム材32と、この下側ゴム材32の中心部に設けられ、鉛直方向に延びる円筒状の金属製スリーブ33と、このスリーブ33の下端に固定された下部押え板35と、下側ゴム材32の上部に形成された段部に沿って設けられた断面L字状の金属製リテーナ34を有する。
上側防振メンバ26及び下側防振メンバ31のそれぞれのスリーブ28、33の中空筒部28a、33aにマウント用ボルト36が挿通されるようになっている。上部押え板30及び下部押え板35の中心部には、それぞれ、マウント用ボルト36を挿通させる挿通孔30a、35aが設けられている。
【0029】
第1連結プレート40は、防振部材25の上下方向中間位置、即ち上側防振メンバ26と下側防振メンバ31との合わせ部分において、略水平方向に延びるように配置されている。第1連結プレート40は金属製の板材からなり、略中央部に、上側防振メンバ26の上側ゴム材27のリテーナ29及び下側防振メンバ31の下側ゴム材32のリテーナ34が嵌入される上下方向に貫通した嵌入孔41を備えている。また、第1連結プレート40は、嵌入孔41周辺における前側に連結部42を備えている。この連結部42が、上部旋回体3の旋回フレーム6に取り付けられる後述の第2連結プレート52と連結される。連結部42には、3本の連結用ボルトB2をそれぞれ挿通する3つのボルト孔42a,42a,42aが上下方向に貫通して設けられている。すなわち、これらのボルト孔42a,42a,42aと嵌入孔41とは、第1連結プレート40に隣接して設けられている。
【0030】
図4に示すように、上部旋回体側支持体51は、上部旋回体3の旋回フレーム6に取り付けられる金属製の第2連結プレート52を有する。この第2連結プレート52は、旋回フレーム6に接合され、相対する一対の側壁53,53と、これらの側壁53,53の上端に掛け渡された連結壁55とで断面略コ字状に形成されている。連結壁55には、下側防振メンバ31の下側ゴム材32の下部が遊嵌する遊嵌孔54が上下方向に貫通して設けられている。連結壁55の遊嵌孔54周辺における前側には、第1連結プレート40の連結部42に連結する連結部56が設けられている。連結部56には、3本の連結用ボルトB2をそれぞれ挿通する3つのボルト孔56a,56a,56aが上下方向に貫通して設けられている。すなわち、これらのボルト孔56a,56a,56aと遊嵌孔54とは、第2連結プレート52に隣接して設けられている。また、第2連結プレート52の下面には、各ボルト孔56aに適合するナットN1が溶着されている。
【0031】
なお、本発明で、「遊嵌」とは、遊嵌孔54の内径と、挿入される部分(例えば、下側ゴム材32や下部押え板35)の外径との間に、数ミリメートル程度の隙間を介して挿入されている状態をいう。
【0032】
図5に示すように、連結部42の下面を含む第1連結プレート40の下面が、第1連結プレート40の当接部43を構成し、連結部56の上面を含む第2連結プレート52の上面が、第2連結プレート52の当接部57を構成している。
【0033】
エンジン側支持体21を構成する第1連結プレート40の当接部43と、上部旋回体側支持体51を構成する第2連結プレート52の当接部57とが当接して、連結用ボルトB2と上記ナットN1とで第1連結プレート40と第2連結プレート52とが締結されて、エンジン15が上部旋回体3の旋回フレーム6に組付けられる。
次に、支持機構20のエンジン側支持体21及び上部旋回体側支持体51の組立工程を
図3及び
図4に基づいて説明する。
【0034】
エンジン側支持体21の組立に際しては、第1連結プレートの嵌入孔41に、上下から上側ゴム材27のリテーナ29及び下側ゴム材32のリテーナ34を嵌めて、上側ゴム材27の上に上部押え板30を当てて、下側ゴム材32の下側に下部押え板35を当てて、これらを取付プレート22の下側に配置する。そして、マウント用ボルト36をマウント用ボルト孔24a、上部押え板30の挿通孔30a、スリーブ28、33の中空筒部28a、33a、及び下部押え板35の挿通孔35aに上方から挿通する。そして、マウント用ボルト36の先端にワッシャ37を通し、上側ゴム材27及び下側ゴム材32に圧縮荷重をかけてナット38を螺合することで第1連結プレート40が防振部材25に弾力的に支持される。それとともに取付プレート22に防振部材25が取付けられてエンジン側支持体21が組立てられる。
【0035】
図3(b)に示すように、このように組立てられたエンジン側支持体21の取付プレート22の縦板部23をエンジン15にボルトB1で締結して、エンジン側支持体21をエンジン15に組付ける。なお、エンジン15への取付方法は、ボルト締結に限られず、他の方法でもよい。
【0036】
次に、
図4(a)に示すように、一体となったエンジン15及びエンジン側支持体21を、上部旋回体3の旋回フレーム6上に運ぶ。そして、
図4(b)に示すように、エンジン15を旋回フレーム6上に載置する。この時に、下側ゴム材32の下部が、
図5に示すように、第2連結プレート52の遊嵌孔54に案内されつつ挿入される。このことで、エンジン15の組付箇所の1つである左前Aの位置(支持機構20の位置)が仮決めできるので、他の組付箇所B、C、D(
図4(a)参照)への位置合わせが容易となる。遊嵌孔54の内径は、挿入される下側ゴム材32の下部の外径よりも大きく形成されているので、組付箇所に案内されやすい。
【0037】
エンジン15が所定の位置に載置されると、
図5に示すように、下側ゴム材32の下部が第2連結プレート52の遊嵌孔54に遊嵌しつつ第1連結プレート40の当接部43と第2連結プレート52の当接部57とが当接し、第1連結プレート40の連結部42の3つのボルト孔42aと第2連結プレート52の連結部56の3つのボルト孔56aの位置がほぼ一致した状態となる。
【0038】
そして、
図5に示すように、第1連結プレート40及び第2連結プレート52に3つずつ設けられたボルト孔42a、56aに締結部材である3本の連結用ボルトB2をそれぞれ上方から挿通して、連結用ボルトB2の先端を第2連結プレート52の下面に溶着されたナットN1に螺合する。このことで、第1連結プレート40と第2連結プレート52とが当接した状態で連結される。その結果、第2連結プレート52を備える上部旋回体側支持体51とエンジン側支持体21とが防振部材25を介して組付けられる。
【0039】
この実施形態1では、下側ゴム材32の下部が上部旋回体側支持体51の遊嵌孔54に挿入されているので、エンジン15の振動等で防振部材25が横方向に揺れた場合でも、下側ゴム材32が遊嵌孔54の内壁に接触することで動きを規制でき、大きな揺れを防止できる。
【0040】
なお、遊嵌孔54は孔に限らず、切欠きでもよい。「切欠き」とは、第2連結プレート52の端部から中央部にかけて切り欠いたものをいう。この場合、連結部56を確保するために、連結部56が設けられていない端部から中央部にかけて切り欠くことが好ましい。
【0041】
このように、第2連結プレート52に遊嵌孔54又は切欠きを設けることで、エンジン側支持体21を上部旋回体側支持体51への組付け位置に容易に案内でき、かつ遊嵌孔54又は切欠きの周囲においては第1連結プレート40との当接面積を確保できるので、第1連結プレート40と第2連結プレート52との連結を強固にできる。遊嵌孔54であれば、第1連結プレート40との当接部57を、遊嵌孔54の全周回りに形成でき、切欠きであれば、切欠き以外の約3/4周回りに形成できるので、エンジン15の載置によって荷重がかかる防振部材25の近傍を支持することができ、エンジン15を支持機構20で安定して支持できる。
【0042】
以上のように、本実施形態1では、先に、防振部材25を取付プレート22に取り付けることで、エンジン15を上部旋回体3の旋回フレーム6に組付ける時に、上部旋回体3上で防振部材25を組み立てる複雑な作業を行わなくてよいので、組付作業が容易となる。
【0043】
また、エンジン側支持体21を取付けたエンジン15を上部旋回体側支持体51(即ち、上部旋回体3の旋回フレーム6)に組付ける時に、エンジン側支持体21の防振部材25の下部を、上部旋回体側支持体51の第2連結プレート52の遊嵌孔54に挿入することで、エンジン15の組付箇所の仮の位置決めができるので、組付作業がより容易である。
【0044】
更に、エンジン15の組付け時に、連結用ボルトB2を上方から挿入して、その先端を第2連結プレートに溶着されたナットN1に螺合することで、上方からのみの作業で締結できるので、組付作業が容易である。特に、本実施形態1のように一対の縦板9,9との間に位置するような狭い組付箇所においては、下方から締結作業を行うことが困難なため、本発明の支持構造が有用である。
【0045】
なお、本実施形態1では、連結用ボルトB2を上方から組付けるようにしているが、この方向に限られるものではなく、下方からでもよい。なお、エンジン15を上方から旋回フレーム6に搭載するので、上方から連結用ボルトB2を締結する方が作業効率上好ましい。この場合に、上方とは、鉛直方向に限られるものではなく、僅かに斜めになっていてもよい。
【0046】
(実施形態2)
本発明の実施形態2について、
図6(a)及び(b)に基づいて説明する。なお、実施形態2においては、実施形態1と異なる部分のみを説明する。実施形態2は、実施形態1に対して、第1連結プレート40と第2連結プレート52との連結部分の強化を図ったものである。なお、
図6(b)の要部拡大図では、分かりやすいように取付プレート22を省略した状態で示す。
【0047】
図6(a)及び(b)に示すように、第1連結プレート40の連結部42は、略水平方向に延びる上部当接壁44と、上部当接壁44から下方に延びる側部当接壁45とで略L字形状に形成されている。側部当接壁45には、ボルト孔45aが2つ設けられている。なお、ボルト孔45aの数は2つに限られるものではなく、それより多くてもよいし、1つでもよい。
【0048】
旋回フレーム6に取付けられた第2連結プレート52の側壁53には、ボルト孔53aが2つ設けられている。側壁53の内側面には、ボルト孔53aに適合するようにナットN2が溶着されている。
【0049】
エンジン15を上部旋回体3の旋回フレーム6に組付ける時は、第1連結プレート40の上部当接壁44を第2連結プレート52の連結壁55に、第1連結プレート40の側部当接壁45を第2連結プレート52の側壁53に当接させる。そして、連結用ボルトB2で上方から締結するとともに、第1連結プレート40のボルト孔45aと第2連結プレート52のボルト孔53aに連結用ボルトB3を側方から挿入して締結するようになっている。なお、この実施形態2は、上方からに加えて側方からの締結作業を行うため、側方にも作業スペースを必要とするが、このようなスペースを確保できる場合には、第1連結プレート40と第2連結プレート52とをより強固に連結できるので有効な実施形態である。
【0050】
(実施形態3)
本発明の実施形態3について、
図7(a)及び(b)に基づいて説明する。なお、実施形態3においては、実施形態1と異なる部分のみを説明する。実施形態3は、実施形態1に対して、第2連結プレート52の強度向上を図ったものである。なお、
図7(a)及び(b)では、分かりやすいように取付プレート22を省略した状態で示す。
【0051】
図7(a)及び(b)に示すように、第2連結プレート52の両側壁53,53間に、補強部材を設ける。具体的には、補強部材として金属製からなる矩形状の補強板59の一端を左の側壁53に溶接し、他端を右の側板53に溶接して設ける。この補強板59によって、両側壁53,53の剛性を高めることができ、上部旋回体側支持部材51の強度を向上させることができる。
【0052】
なお、補強板59の形状、大きさ及び取付位置は、第2連結プレート52の遊嵌孔54に挿入された防振部材25に干渉しないものであればよく、例えば、補強板59の上端が連結壁55の下面に接合するように設けてもよい。また、補強板59を旋回フレーム6に固定するように設ければ更に補強効果が向上する。
(その他の実施形態)
なお、本実施形態1ないし3では、エンジン15が搭載される建設機械として油圧ショベル1を例に挙げている。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧クレーン、ホイールローダ、ブルドーザ等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【0053】
また、本実施形態1ないし3では、本発明にかかる支持構造を左前Aの組付箇所に用いる支持機構20に適用したが、この箇所に限られるものではなく、他の組付箇所に適用してもよい。
【0054】
また、本実施形態1ないし3では、第1連結プレート40及び第2連結プレート52の連結部42、56をそれぞれ連結プレート52の前側に設けたが、この場所に限られるものではなく、嵌入孔41及び遊嵌孔54の周辺に設ければよいものである。例えば、嵌入孔41及び遊嵌孔54の右側や左側に設けてもよい。また、ボルト孔42a、56aの数は3つに限られるものではなく、これより多くても少なくてもよい。
【0055】
また、本実施形態2と本実施形態3とを組み合わせた支持構造としてもよい。