特許第6149875号(P6149875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6149875建設機械のエンジン支持構造及びその組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149875
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】建設機械のエンジン支持構造及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 5/12 20060101AFI20170612BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20170612BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20170612BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20170612BHJP
   F16F 1/387 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   B60K5/12 F
   E02F9/00 D
   F16F15/08 W
   F16F1/38 S
   F16F1/387 A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-12496(P2015-12496)
(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-137760(P2016-137760A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2016年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】垰 寛明
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】白石 竜也
(72)【発明者】
【氏名】武田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 健一
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−185634(JP,A)
【文献】 特開2007−168488(JP,A)
【文献】 特開2015−021504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 5/12
E02F 9/00
F16F 1/38
F16F 1/387
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と上部旋回体を有する建設機械の該上部旋回体に、複数の支持機構を介してエンジンを支持する建設機械のエンジン支持構造において、
上記複数の支持機構のうち少なくとも1つが、上記エンジンに取付けられるエンジン側支持体と、上記上部旋回体に取付けられる上部旋回体側支持体とを備え、
上記エンジン側支持体は、取付プレートと、防振部材と、第1連結プレートとを備え、
上記取付プレートは、鉛直方向に延びる縦板部と、該縦板部の下部から水平方向に延びる横板部とを備え、
上記縦板部が上記エンジンに取付けられるとともに上記横板部が上記防振部材と締結され、
上記防振部材の上下方向中間位置に上記第1連結プレートが設けられ、該第1連結プレートは該防振部材の上部と下部によって上記取付プレートの上記横板部に弾性的に支持され、
上記上部旋回体側支持体は、第2連結プレートを備え、
上記第2連結プレートは、上記エンジン側支持体に上記エンジンが取り付けられた状態で、上記防振部材の上記下部が遊嵌される遊嵌孔又は切欠きを備え、該遊嵌孔又は該切欠きの周辺で、かつ、該遊嵌孔又は該切欠きに遊嵌された該防振部材を挟んで上記取付プレートの上記縦板部と対向する位置上記第1連結プレートと連結される連結部を備え、
上記エンジン側支持体の上記防振部材の上記下部が、上記上部旋回体側支持体の上記第2連結プレートの上記遊嵌孔又は上記切欠きに遊嵌され、上記第1連結プレートが上記第2連結プレートに当接し、該両連結プレートが上記連結部で上方又は下方から締結されていることを特徴とする建設機械のエンジン支持構造。
【請求項2】
請求項1において、
上記第2連結プレートは、水平方向に延びる連結壁及び該連結壁の両端から下方に延びて上記上部旋回体に接合される一対の側壁を備え、
上記連結壁に上記遊嵌孔又は上記切欠きを備えることを特徴とする建設機械のエンジン支持構造。
【請求項3】
請求項2において、
上記第1連結プレートは、上記第2連結プレートの上記連結壁に上方から当接する上部当接壁と、上記第2連結プレートの上記側壁に側方から当接する側部当接壁とを備え、
上記連結壁と上記上部当接壁とを上方から締結するとともに、上記側壁と上記側部当接壁とを側方から締結することを特徴とする建設機械のエンジン支持構造。
【請求項4】
請求項1において、
上記第2連結プレートは、水平方向に延びる連結壁及び該連結壁の両端から下方に延びる一対の側壁を備え、
上記一対の側壁同士を接続する補強部材を備えたことを特徴とする建設機械のエンジン支持構造。
【請求項5】
下部走行体と上部旋回体を有する建設機械の該上部旋回体に、複数の支持機構を介してエンジンを支持する建設機械のエンジン支持機構の組立方法において、
上記複数の支持機構のうち少なくとも1つが、上記エンジンに取付けられるエンジン側支持体と、上記上部旋回体に取付けられる上部旋回体側支持体とを備え、
上記エンジン側支持体は、上記エンジンに取付けられる取付プレートと、該取付プレートに締結される防振部材と、該防振部材の上下方向中間位置に設けられ、該防振部材の上部と下部によって該取付プレートに弾性的に支持される第1連結プレートとを備え、
上記上部旋回体側支持体は、遊嵌孔又は切欠きを備え該遊嵌孔又は該切欠きの周辺に上記第1連結プレートと連結される連結部を有する第2連結プレートを備え、
上記取付プレートに上記防振部材が締結されるとともに、上記第1連結プレートが該防振部材の上部と下部によって該取付プレートに弾性的に支持され、
上記取付プレートが、上記エンジンに取付けられ、
次に、一体となった上記エンジンと上記エンジン側支持体とを、上記上部旋回体上に運んでから、上記防振部材の上記下部を、上記上部旋回体側支持体の上記第2連結プレートの上記遊嵌孔又は上記切欠きに遊嵌させて上記エンジンの位置を仮決めし、
その後、当接した上記第1連結プレートが上記第2連結プレートとが上記遊嵌孔又は上記切欠きの周辺に設けられた上記連結部で上方又は下方から締結されることを特徴とする建設機械のエンジン支持機構の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部走行体と上部旋回体を有する建設機械の上部旋回体に支持機構を介して
エンジンを支持するエンジン支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば油圧ショベルや油圧クレーン等の建設機械は、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部側に搖動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。上部旋回体は、ベースとなる旋回フレームを有し、この旋回フレーム上には運転席が設けられ、旋回フレームの後端部にはカウンタウエイトが設けられている。また、旋回フレーム上には、運転席とカウンタウエイトとの間に位置してエンジンが搭載されている。エンジンは複数の支持機構を介して旋回フレームに支持され、該支持機構には、エンジンの作動時に発生する振動を緩和するためにゴム等の弾性体を有する防振部材を設けることが通常に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1は、エンジンの複数箇所を、防振部材を有する支持機構を介して機体フレーム(旋回フレーム)に組み付けるエンジン支持構造において、支持機構が、エンジンに取付けられる取付プレート、防振部材、連結プレートを備えている。連結プレートは、細長い板材からなり、長手方向一端側に、防振部材に締結される防振側締結部を有し、他端側に旋回フレームの上面部及び側面部に固定される略L字状のフレーム側締結部を有している。予め、エンジンに固定された取付プレートの下側に防振部材を配置し、この防振部材の下側に連結プレートの防振側締結部を配置して、これらに上方からボルトを挿通して、下方から防振部材を予圧してナットで螺合しておく。その後、防振部材を介してエンジンに取付けられた連結プレートのフレーム側締結部を旋回フレームに固定する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−104243号公報(特に段落0006、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によると、取付プレート、防振部材、連結プレートを予めエンジンに取り付けてから、連結プレートを旋回フレームに固定するようになっているので、エンジンを旋回フレームに組付ける作業が容易になっている。
【0006】
しかし、特許文献1では、防振部材に締結される連結プレート一端側の防振側締結部がエンジンの側方に位置し、旋回フレームに固定される連結プレート他端側のフレーム側締結部がオイルパンの下部近傍に位置しており、防振側締結部とフレーム側締結部とが上下左右方向に離れている。その結果、連結プレートが長いものとなっており、支持機構をコンパクトにすることができない。また、防振側締結部とフレーム側締結部とが離れていることによって、防振側締結部とフレーム側締結部との間にも振動が発生しやすく、この振動も考慮する必要性があり、防振対策が複雑になっている。
【0007】
ところで、最近の建設機械においては、例えば、SCR触媒やDPF等の排ガス後処理システム機器や他の各種機器等が搭載され、エンジン回りのスペースが確保しにくくなっており、上部旋回体の旋回フレームに支持機構を介してエンジンを組付ける時の作業性に影響を及ぼしている。特に、防振部材を介して、エンジンを旋回フレームに組付ける際の作業スペースが十分に取れなくなってきており、支持機構をコンパクトにしたエンジン支持構造にしたいという要望が強くなってきている。上記特許文献1では、連結プレートの一端側の防振側締結部と他端側のフレーム側締結部とが離れて設けられているため、この要望に応えられない可能性が高い。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、上部旋回体の旋回フレームに支持機構を介してエンジンを組付ける時の作業性を向上させ、且つ支持機構をコンパクトな構造とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、支持機構を介して、エンジンを上部旋回体の旋回フレームに組付けるエンジン支持構造において、支持機構の防振部材を予めエンジンに組付けてから、上部旋回体の旋回フレームに組み付けるようにするとともに、支持機構をコンパクトにすることができる構造とした。
【0010】
具体的には、第1の発明では、下部走行体と上部旋回体を有する建設機械の該上部旋回体に、複数の支持機構を介してエンジンを支持する建設機械のエンジン支持構造を前提とする。そして、上記複数の支持機構のうち少なくとも1つが、上記エンジンに取付けられるエンジン側支持体と、上記上部旋回体に取付けられる上部旋回体側支持体とを備え、上記エンジン側支持体は、取付プレートと、防振部材と、第1連結プレートとを備え、上記取付プレートは、鉛直方向に延びる縦板部と、該縦板部の下部から水平方向に延びる横板部とを備え、上記縦板部が上記エンジンに取付けられるとともに上記横板部が上記防振部材と締結され、上記防振部材の上下方向中間位置に上記第1連結プレートが設けられ、該第1連結プレートは該防振部材の上部と下部によって上記取付プレートの上記横板部に弾性的に支持され、上記上部旋回体側支持体は、第2連結プレートを備え、上記第2連結プレートは、上記エンジン側支持体に上記エンジンが取り付けられた状態で、上記防振部材の上記下部が遊嵌される遊嵌孔又は切欠きを備え、該遊嵌孔又は該切欠きの周辺で、かつ、該遊嵌孔又は該切欠きに遊嵌された該防振部材を挟んで上記取付プレートの上記縦板部と対向する位置上記第1連結プレートと連結される連結部を備え、上記エンジン側支持体の上記防振部材の上記下部が、上記上部旋回体側支持体の上記第2連結プレートの上記遊嵌孔又は上記切欠きに遊嵌され、上記第1連結プレートが上記第2連結プレートに当接し、該両連結プレートが上記連結部で上方又は下方から締結されていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記第2連結プレートは、水平方向に延びる連結壁及び該連結壁の両端から下方に延び、上記上部旋回体に接合される一対の側壁を備え、上記連結壁に上記遊嵌孔又は上記切欠きを備えることを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、上記第1連結プレートは、上記第2連結プレートの上記連結壁に上方から当接する上部当接壁と、上記第2連結プレートの上記側壁に側方から当接する側部当接壁とを備え、上記連結壁と上記上部当接壁とを上方から締結するとともに、上記側壁と上記側部当接壁とを側方から締結することを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、第1の発明において、上記第2連結プレートは、水平方向に延びる連結壁及び該連結壁の両端から下方に延びる一対の側壁を備え、上記一対の側壁同士を接続する補強部材を備えたことを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、下部走行体と上部旋回体を有する建設機械の該上部旋回体に、複数の支持機構を介してエンジンを支持する建設機械のエンジン支持機構の組立方法において、上記複数の支持機構のうち少なくとも1つが、上記エンジンに取付けられるエンジン側支持体と、上記上部旋回体に取付けられる上部旋回体側支持体とを備え、上記エンジン側支持体は、上記エンジンに取付けられる取付プレートと、該取付プレートに締結される防振部材と、該防振部材の上下方向中間位置に設けられ、該防振部材の上部と下部によって該取付プレートに弾性的に支持される第1連結プレートとを備え、上記上部旋回体側支持体は、遊嵌孔又は切欠きを備え該遊嵌孔又は該切欠きの周辺に上記第1連結プレートと連結される連結部を有する第2連結プレートを備え、上記取付プレートに上記防振部材が締結されるとともに、上記第1連結プレートが該防振部材の上部と下部によって該取付プレートに弾性的に支持され、上記取付プレートが、上記エンジンに取付けられ、次に、一体となった上記エンジンと上記エンジン側支持体とを、上記上部旋回体上に運んでから、上記防振部材の上記下部を、上記上部旋回体側支持体の上記第2連結プレートの上記遊嵌孔又は上記切欠きに遊嵌させて上記エンジンの位置を仮決めし、その後、当接した上記第1連結プレートが上記第2連結プレートとが上記遊嵌孔又は上記切欠きの周辺に設けられた上記連結部で上方又は下方から締結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、第1の発明によると、予め、取付プレート、防振部材、第1連結プレートからなるエンジン側支持体をエンジン側に取付けておくことができるので、エンジンを上部旋回体に組付ける作業中に複数の部品を組立てる複雑な作業を行う必要がなく、組付作業が容易になる。また、エンジンを上部旋回体に組付ける時に、防振部材の下部を第2連結プレートの遊嵌孔又は切欠きに遊嵌させることで、仮の位置決めができるので、組付作業性が向上する。さらに、第2連結プレートの遊嵌孔又は切欠きの周辺に設けられた連結部において第1連結プレートと第2連結プレートとを締結するようにしたので、エンジン支持機構全体をコンパクトな構造にすることができる。
【0016】
第2の発明によると、第2連結プレートが連結壁及び側壁を備え、連結壁に遊嵌孔又は切欠きを備えるので、側壁によって連結壁の強度を高めることができ、仮位置決め時に、安定して支持することができる。
【0017】
の発明によると、第1連結プレートと第2連結プレートとを上方及び側方から締結することができるので、簡単な作業でより強固にエンジンを上部旋回体に固定することができる。
【0018】
の発明によると、一対の側壁を補強部材で接続することで、上部旋回体側支持体の変形等が抑制できるので、強度が向上する。
【0019】
第5の発明によると、この組立方法とすることで、防振部材をエンジンに組み付けた状態で防振部材の下部を第2連結プレートの遊嵌孔又は切欠きに遊嵌させて、エンジンの位置を仮決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態1にかかる油圧ショベルを示す概略側面図である。
図2図2は、本発明の実施形態1にかかるエンジン支持部構造を示す斜視図である。
図3図3は、図2のうちエンジン側に取付けられる部材を示す斜視図であり、(a)は分解状態、(b)は組み立てた状態を示す図である。
図4図4は、エンジンを旋回フレームに組付ける状態を示す斜視図であり、(a)は組付け前、(b)は組付け後を示す図である。
図5図5は、図4のV−V線概略断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態2にかかる図4(b)相当図であり、(a)は全体図、(b)は要部拡大図である。
図7図7は、本発明の実施形態3にかかる要部拡大図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1に示すように、1は、本発明を適用した建設機械の一例としての油圧ショベルである。この油圧ショベル1は、上部旋回体3が後方小旋回型である小型機種であり、クローラ式の下部走行体2と、その上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前部側に搖動可能に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。作業装置4は、ブーム4aと、ブーム4aの先端部に連結されたアーム4bと、アーム4bの先端部に連結されたバケット4c及びこれらを伸縮によって作動させる油圧シリンダ4dで主に構成されている。なお、図1等に示すように、以下において上下左右等の方向は上部旋回体3を基準に説明する。
【0023】
上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム6を有し、該旋回フレーム6上に運転席
7が設けられている。また、旋回フレーム6の後部には、高重量のカウンタウエイト5が設置されている。そして、カウンタウエイト5と運転席7の間における旋回フレーム6上にエンジン15が組付けられている。
【0024】
図2に示すように、上部旋回体3の旋回フレーム6は、厚肉な平板で形成された底板8と、底板8上に立設され、相対して前後方向に延びる一対の縦板9,9と、この一対の縦板9,9間に立設されて左右方向に延びる横板10を備える。
【0025】
図2に示すように、エンジン15は、旋回フレーム6の後部に搭載され、左前A、右前B、右後C、左後Dの4箇所(図4(a)参照)において、それぞれ支持機構を介して旋回フレーム6に支持されている。実施形態1では、一対の縦板9,9間に位置し、最も作業スペースを確保しにくい左前Aの箇所に用いる支持機構20に本発明を適用した例を示す。それ以外の箇所においては、一般的に周知な構造からなる支持機構を採用しているので、この周知な支持機構についての図示及び説明は省略する。
【0026】
図2ないし図5に示すように、エンジン15の支持機構20は、エンジン側支持体21と上部旋回体側支持体51とで構成されている。なお、図3及び図4において、エンジン15は全体の詳細構造を省略化した箱形状で表す。
【0027】
エンジン側支持体21は、取付プレート22と、防振部材25と、第1連結プレート40とを備える。取付プレート22は、略鉛直方向に延びる縦板部23と略水平方向に延びる横板部24とで断面略L字状に形成された金属製の板材からなり、縦板部23がエンジン15の左前部にボルトB1で取付けられる。また、横板部24には、マウント用ボルト36を挿通するためのマウント用ボルト孔24aが設けられ、横板部24と防振部材25とがマウント用ボルト36で締結される。
【0028】
防振部材25は、上下に相対して配置された上側防振メンバ26と下側防振メンバ31とからなる。上側防振メンバ26は、図5に示すように、上側ゴム材27と、この上側ゴム材27の中心部に設けられ、鉛直方向に延びる円筒状の金属製スリーブ28と、このスリーブ28の上端に固定された上部押え板30と、上側ゴム材27の下部に形成された段部に沿って設けられた断面L字状の金属製リテーナ29を有する。下側防振メンバ31は、下側ゴム材32と、この下側ゴム材32の中心部に設けられ、鉛直方向に延びる円筒状の金属製スリーブ33と、このスリーブ33の下端に固定された下部押え板35と、下側ゴム材32の上部に形成された段部に沿って設けられた断面L字状の金属製リテーナ34を有する。
上側防振メンバ26及び下側防振メンバ31のそれぞれのスリーブ28、33の中空筒部28a、33aにマウント用ボルト36が挿通されるようになっている。上部押え板30及び下部押え板35の中心部には、それぞれ、マウント用ボルト36を挿通させる挿通孔30a、35aが設けられている。
【0029】
第1連結プレート40は、防振部材25の上下方向中間位置、即ち上側防振メンバ26と下側防振メンバ31との合わせ部分において、略水平方向に延びるように配置されている。第1連結プレート40は金属製の板材からなり、略中央部に、上側防振メンバ26の上側ゴム材27のリテーナ29及び下側防振メンバ31の下側ゴム材32のリテーナ34が嵌入される上下方向に貫通した嵌入孔41を備えている。また、第1連結プレート40は、嵌入孔41周辺における前側に連結部42を備えている。この連結部42が、上部旋回体3の旋回フレーム6に取り付けられる後述の第2連結プレート52と連結される。連結部42には、3本の連結用ボルトB2をそれぞれ挿通する3つのボルト孔42a,42a,42aが上下方向に貫通して設けられている。すなわち、これらのボルト孔42a,42a,42aと嵌入孔41とは、第1連結プレート40に隣接して設けられている。
【0030】
図4に示すように、上部旋回体側支持体51は、上部旋回体3の旋回フレーム6に取り付けられる金属製の第2連結プレート52を有する。この第2連結プレート52は、旋回フレーム6に接合され、相対する一対の側壁53,53と、これらの側壁53,53の上端に掛け渡された連結壁55とで断面略コ字状に形成されている。連結壁55には、下側防振メンバ31の下側ゴム材32の下部が遊嵌する遊嵌孔54が上下方向に貫通して設けられている。連結壁55の遊嵌孔54周辺における前側には、第1連結プレート40の連結部42に連結する連結部56が設けられている。連結部56には、3本の連結用ボルトB2をそれぞれ挿通する3つのボルト孔56a,56a,56aが上下方向に貫通して設けられている。すなわち、これらのボルト孔56a,56a,56aと遊嵌孔54とは、第2連結プレート52に隣接して設けられている。また、第2連結プレート52の下面には、各ボルト孔56aに適合するナットN1が溶着されている。
【0031】
なお、本発明で、「遊嵌」とは、遊嵌孔54の内径と、挿入される部分(例えば、下側ゴム材32や下部押え板35)の外径との間に、数ミリメートル程度の隙間を介して挿入されている状態をいう。
【0032】
図5に示すように、連結部42の下面を含む第1連結プレート40の下面が、第1連結プレート40の当接部43を構成し、連結部56の上面を含む第2連結プレート52の上面が、第2連結プレート52の当接部57を構成している。
【0033】
エンジン側支持体21を構成する第1連結プレート40の当接部43と、上部旋回体側支持体51を構成する第2連結プレート52の当接部57とが当接して、連結用ボルトB2と上記ナットN1とで第1連結プレート40と第2連結プレート52とが締結されて、エンジン15が上部旋回体3の旋回フレーム6に組付けられる。
次に、支持機構20のエンジン側支持体21及び上部旋回体側支持体51の組立工程を図3及び図4に基づいて説明する。
【0034】
エンジン側支持体21の組立に際しては、第1連結プレートの嵌入孔41に、上下から上側ゴム材27のリテーナ29及び下側ゴム材32のリテーナ34を嵌めて、上側ゴム材27の上に上部押え板30を当てて、下側ゴム材32の下側に下部押え板35を当てて、これらを取付プレート22の下側に配置する。そして、マウント用ボルト36をマウント用ボルト孔24a、上部押え板30の挿通孔30a、スリーブ28、33の中空筒部28a、33a、及び下部押え板35の挿通孔35aに上方から挿通する。そして、マウント用ボルト36の先端にワッシャ37を通し、上側ゴム材27及び下側ゴム材32に圧縮荷重をかけてナット38を螺合することで第1連結プレート40が防振部材25に弾力的に支持される。それとともに取付プレート22に防振部材25が取付けられてエンジン側支持体21が組立てられる。
【0035】
図3(b)に示すように、このように組立てられたエンジン側支持体21の取付プレート22の縦板部23をエンジン15にボルトB1で締結して、エンジン側支持体21をエンジン15に組付ける。なお、エンジン15への取付方法は、ボルト締結に限られず、他の方法でもよい。
【0036】
次に、図4(a)に示すように、一体となったエンジン15及びエンジン側支持体21を、上部旋回体3の旋回フレーム6上に運ぶ。そして、図4(b)に示すように、エンジン15を旋回フレーム6上に載置する。この時に、下側ゴム材32の下部が、図5に示すように、第2連結プレート52の遊嵌孔54に案内されつつ挿入される。このことで、エンジン15の組付箇所の1つである左前Aの位置(支持機構20の位置)が仮決めできるので、他の組付箇所B、C、D(図4(a)参照)への位置合わせが容易となる。遊嵌孔54の内径は、挿入される下側ゴム材32の下部の外径よりも大きく形成されているので、組付箇所に案内されやすい。
【0037】
エンジン15が所定の位置に載置されると、図5に示すように、下側ゴム材32の下部が第2連結プレート52の遊嵌孔54に遊嵌しつつ第1連結プレート40の当接部43と第2連結プレート52の当接部57とが当接し、第1連結プレート40の連結部42の3つのボルト孔42aと第2連結プレート52の連結部56の3つのボルト孔56aの位置がほぼ一致した状態となる。
【0038】
そして、図5に示すように、第1連結プレート40及び第2連結プレート52に3つずつ設けられたボルト孔42a、56aに締結部材である3本の連結用ボルトB2をそれぞれ上方から挿通して、連結用ボルトB2の先端を第2連結プレート52の下面に溶着されたナットN1に螺合する。このことで、第1連結プレート40と第2連結プレート52とが当接した状態で連結される。その結果、第2連結プレート52を備える上部旋回体側支持体51とエンジン側支持体21とが防振部材25を介して組付けられる。
【0039】
この実施形態1では、下側ゴム材32の下部が上部旋回体側支持体51の遊嵌孔54に挿入されているので、エンジン15の振動等で防振部材25が横方向に揺れた場合でも、下側ゴム材32が遊嵌孔54の内壁に接触することで動きを規制でき、大きな揺れを防止できる。
【0040】
なお、遊嵌孔54は孔に限らず、切欠きでもよい。「切欠き」とは、第2連結プレート52の端部から中央部にかけて切り欠いたものをいう。この場合、連結部56を確保するために、連結部56が設けられていない端部から中央部にかけて切り欠くことが好ましい。
【0041】
このように、第2連結プレート52に遊嵌孔54又は切欠きを設けることで、エンジン側支持体21を上部旋回体側支持体51への組付け位置に容易に案内でき、かつ遊嵌孔54又は切欠きの周囲においては第1連結プレート40との当接面積を確保できるので、第1連結プレート40と第2連結プレート52との連結を強固にできる。遊嵌孔54であれば、第1連結プレート40との当接部57を、遊嵌孔54の全周回りに形成でき、切欠きであれば、切欠き以外の約3/4周回りに形成できるので、エンジン15の載置によって荷重がかかる防振部材25の近傍を支持することができ、エンジン15を支持機構20で安定して支持できる。
【0042】
以上のように、本実施形態1では、先に、防振部材25を取付プレート22に取り付けることで、エンジン15を上部旋回体3の旋回フレーム6に組付ける時に、上部旋回体3上で防振部材25を組み立てる複雑な作業を行わなくてよいので、組付作業が容易となる。
【0043】
また、エンジン側支持体21を取付けたエンジン15を上部旋回体側支持体51(即ち、上部旋回体3の旋回フレーム6)に組付ける時に、エンジン側支持体21の防振部材25の下部を、上部旋回体側支持体51の第2連結プレート52の遊嵌孔54に挿入することで、エンジン15の組付箇所の仮の位置決めができるので、組付作業がより容易である。
【0044】
更に、エンジン15の組付け時に、連結用ボルトB2を上方から挿入して、その先端を第2連結プレートに溶着されたナットN1に螺合することで、上方からのみの作業で締結できるので、組付作業が容易である。特に、本実施形態1のように一対の縦板9,9との間に位置するような狭い組付箇所においては、下方から締結作業を行うことが困難なため、本発明の支持構造が有用である。
【0045】
なお、本実施形態1では、連結用ボルトB2を上方から組付けるようにしているが、この方向に限られるものではなく、下方からでもよい。なお、エンジン15を上方から旋回フレーム6に搭載するので、上方から連結用ボルトB2を締結する方が作業効率上好ましい。この場合に、上方とは、鉛直方向に限られるものではなく、僅かに斜めになっていてもよい。
【0046】
(実施形態2)
本発明の実施形態2について、図6(a)及び(b)に基づいて説明する。なお、実施形態2においては、実施形態1と異なる部分のみを説明する。実施形態2は、実施形態1に対して、第1連結プレート40と第2連結プレート52との連結部分の強化を図ったものである。なお、図6(b)の要部拡大図では、分かりやすいように取付プレート22を省略した状態で示す。
【0047】
図6(a)及び(b)に示すように、第1連結プレート40の連結部42は、略水平方向に延びる上部当接壁44と、上部当接壁44から下方に延びる側部当接壁45とで略L字形状に形成されている。側部当接壁45には、ボルト孔45aが2つ設けられている。なお、ボルト孔45aの数は2つに限られるものではなく、それより多くてもよいし、1つでもよい。
【0048】
旋回フレーム6に取付けられた第2連結プレート52の側壁53には、ボルト孔53aが2つ設けられている。側壁53の内側面には、ボルト孔53aに適合するようにナットN2が溶着されている。
【0049】
エンジン15を上部旋回体3の旋回フレーム6に組付ける時は、第1連結プレート40の上部当接壁44を第2連結プレート52の連結壁55に、第1連結プレート40の側部当接壁45を第2連結プレート52の側壁53に当接させる。そして、連結用ボルトB2で上方から締結するとともに、第1連結プレート40のボルト孔45aと第2連結プレート52のボルト孔53aに連結用ボルトB3を側方から挿入して締結するようになっている。なお、この実施形態2は、上方からに加えて側方からの締結作業を行うため、側方にも作業スペースを必要とするが、このようなスペースを確保できる場合には、第1連結プレート40と第2連結プレート52とをより強固に連結できるので有効な実施形態である。
【0050】
(実施形態3)
本発明の実施形態3について、図7(a)及び(b)に基づいて説明する。なお、実施形態3においては、実施形態1と異なる部分のみを説明する。実施形態3は、実施形態1に対して、第2連結プレート52の強度向上を図ったものである。なお、図7(a)及び(b)では、分かりやすいように取付プレート22を省略した状態で示す。
【0051】
図7(a)及び(b)に示すように、第2連結プレート52の両側壁53,53間に、補強部材を設ける。具体的には、補強部材として金属製からなる矩形状の補強板59の一端を左の側壁53に溶接し、他端を右の側板53に溶接して設ける。この補強板59によって、両側壁53,53の剛性を高めることができ、上部旋回体側支持部材51の強度を向上させることができる。
【0052】
なお、補強板59の形状、大きさ及び取付位置は、第2連結プレート52の遊嵌孔54に挿入された防振部材25に干渉しないものであればよく、例えば、補強板59の上端が連結壁55の下面に接合するように設けてもよい。また、補強板59を旋回フレーム6に固定するように設ければ更に補強効果が向上する。
(その他の実施形態)
なお、本実施形態1ないし3では、エンジン15が搭載される建設機械として油圧ショベル1を例に挙げている。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧クレーン、ホイールローダ、ブルドーザ等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【0053】
また、本実施形態1ないし3では、本発明にかかる支持構造を左前Aの組付箇所に用いる支持機構20に適用したが、この箇所に限られるものではなく、他の組付箇所に適用してもよい。
【0054】
また、本実施形態1ないし3では、第1連結プレート40及び第2連結プレート52の連結部42、56をそれぞれ連結プレート52の前側に設けたが、この場所に限られるものではなく、嵌入孔41及び遊嵌孔54の周辺に設ければよいものである。例えば、嵌入孔41及び遊嵌孔54の右側や左側に設けてもよい。また、ボルト孔42a、56aの数は3つに限られるものではなく、これより多くても少なくてもよい。
【0055】
また、本実施形態2と本実施形態3とを組み合わせた支持構造としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、下部走行体と上部旋回体からなる建設機械の上部旋回体にエンジン支持機構を介してエンジンを支持するエンジン支持構造に極めて有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 建設機械(油圧ショベル)
2 下部走行体
3 上部旋回体
6 旋回フレーム
15 エンジン
20 支持機構
21 エンジン側支持体
22 取付プレート
25 防振部材
40 第1連結プレ−ト
42 連結部
44 上部当接壁
45 側部当接壁
51 上部旋回体側支持体
52 第2連結プレート
53 側壁
54 遊嵌孔
55 連結壁
56 連結部
59 補強板(補強部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7