特許第6149912号(P6149912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149912
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ式加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   F25B1/00 351T
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-205058(P2015-205058)
(22)【出願日】2015年10月16日
(65)【公開番号】特開2017-75763(P2017-75763A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 照男
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晋司
(72)【発明者】
【氏名】松坂 幸雄
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−196647(JP,A)
【文献】 特開2014−145572(JP,A)
【文献】 特開2014−222145(JP,A)
【文献】 特開2012−021744(JP,A)
【文献】 特開2002−310520(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125111(WO,A1)
【文献】 特開平08−327165(JP,A)
【文献】 特開平07−019617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、熱源側熱交換器、電動弁および利用側熱交換器が設けられた冷媒回路と、
前記熱源側熱交換器のための室外ファンとを備え、
前記利用側熱交換器は、外部から供給される流体を冷媒により加熱可能に構成され、
圧縮機起動時の室外ファンの回転数は、前記利用側熱交換器に供給される流体温度と外気温度との差が所定温度差以上の場合の方が、前記利用側熱交換器に供給される流体温度と外気温度との差が所定温度差より小さい場合より小さいことを特徴とするヒートポンプ式加熱装置。
【請求項2】
前記利用側熱交換器に供給される流体温度と外気温度との差が所定温度差以上の場合に、圧縮機起動時の室外ファンの回転数を小さくする回転数減少制御は、前記圧縮機の吐出温度が所定温度以下である場合に行われることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式加熱装置。
【請求項3】
前記利用側熱交換器に供給される流体温度と外気温度との差が所定温度差以上の場合に、圧縮機起動時の室外ファンの回転数を小さくする回転数減少制御は、前記圧縮機の吐出温度が前記利用側熱交換器の凝縮温度より高い場合に終了されることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートポンプ式加熱装置。
【請求項4】
前記利用側熱交換器に供給される流体温度と外気温度との差が所定温度差以上の場合に、圧縮機起動時の室外ファンの回転数を小さくする回転数減少制御は、前記熱源側熱交換器の温度が外気温度より低い場合に終了されることを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載のヒートポンプ式加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房用熱交換器等を備えるヒートポンプ式加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、ヒートポンプユニットと、ヒートポンプユニットにより加熱された温水が流れる暖房回路とを有するヒートポンプ暖房装置がある。このヒートポンプ暖房装置において、ヒートポンプユニットは、暖房回路を流れる温水を加熱する暖房用熱交換器を有している。したがって、暖房用熱交換器において、暖房回路を流れる温水が、ヒートポンプユニットの圧縮機から吐出された冷媒により加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5712196号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のヒートポンプ暖房装置において、圧縮機が起動されるときに、暖房用熱交換器に流入する温水の入水温度が高い場合、圧縮機のドーム内において冷媒が凝縮し、圧縮機内の油が冷媒と共に吐出されやすく、圧縮機内の油面が低下する問題がある。
【0005】
そこで、この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、圧縮機内の油面が低下するのを防止できるヒートポンプ式加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係るヒートポンプ式加熱装置は、圧縮機、熱源側熱交換器、電動弁および利用側熱交換器が設けられた冷媒回路と、前記熱源側熱交換器のための室外ファンとを備え、前記利用側熱交換器は、外部から供給される流体を冷媒により加熱可能に構成され、圧縮機起動時の室外ファンの回転数は、前記利用側熱交換器に供給される流体温度と外気温度との差が所定温度差以上の場合の方が、前記利用側熱交換器に供給される流体温度と外気温度との差が所定温度差より小さい場合より小さいことを特徴とする。
【0007】
このヒートポンプ式加熱装置では、圧縮機起動時の室外ファンの回転数が、利用側熱交換器に供給される流体温度と外気温度との差が所定温度差以上の場合に小さく制御されることから、圧縮機のドーム内において冷媒が凝縮するのが抑制される。したがって、圧縮機の起動時において、圧縮機内の油面が低下するのを防止できる。
【0008】
第2の発明に係るヒートポンプ式加熱装置は、第1の発明において、前記利用側熱交換器に供給される流体温度と外気温度との差が所定温度差以上の場合に、圧縮機起動時の室外ファンの回転数を小さくする回転数減少制御は、前記圧縮機の吐出温度が所定以下である場合に行われることを特徴とする。
このヒートポンプ式加熱装置では、回転数減少制御が、圧縮機の吐出温度が所定以下である場合にだけ行われることから、圧縮機の起動時に、圧縮機のドーム内において冷媒が凝縮しない場合に、室外ファンの回転数が小さくされるのを防止できる。
【0009】
第3の発明に係るヒートポンプ式加熱装置は、第1または第2の発明において、前記利用側熱交換器に供給される流体温度と外気温度との差が所定温度差以上の場合に、圧縮機起動時の室外ファンの回転数を小さくする回転数減少制御は、前記圧縮機の吐出温度が前記利用側熱交換器の凝縮温度より高い場合に終了されることを特徴とする。
このヒートポンプ式加熱装置では、圧縮機の吐出温度が利用側熱交換器の凝縮温度より高くなり、圧縮機のドーム内において冷媒が凝縮しなくなったときに、回転数減少制御を終了することができる。
【0010】
第4の発明に係るヒートポンプ式加熱装置は、第1−第3のいずれかの発明において、前記利用側熱交換器に供給される流体温度と外気温度との差が所定温度差以上の場合に、圧縮機起動時の室外ファンの回転数を小さくする回転数減少制御は、前記熱源側熱交換器の温度が外気温度より低い場合に終了されることを特徴とする。
このヒートポンプ式加熱装置では、熱源側熱交換器の温度が外気温度より低くなり、圧縮機のドーム内において冷媒が凝縮しなくなったときに、回転数減少制御を終了することができる。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明では、圧縮機起動時の室外ファンの回転数が、利用側熱交換器に供給される流体温度と外気温度との差が所定温度差以上の場合に小さく制御されることから、圧縮機のドーム内において冷媒が凝縮するのが抑制される。したがって、圧縮機の起動時において、圧縮機内の油面が低下するのを防止できる。
第2の発明では、回転数減少制御が、圧縮機の吐出温度が所定以下である場合にだけ行われることから、圧縮機の起動時に、圧縮機のドーム内において冷媒が凝縮しない場合に、室外ファンの回転数が小さくされるのを防止できる。
第3の発明では、圧縮機の吐出温度が利用側熱交換器の温度より高くなり、圧縮機のドーム内において冷媒が凝縮しなくなったときに、回転数減少制御を終了することができる。
第4の発明では、熱源側熱交換器の温度が外気温度より低くなり、圧縮機のドーム内において冷媒が凝縮しなくなったときに、回転数減少制御を終了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態のヒートポンプ式加熱装置を示す構成図である。
図2図1のヒートポンプ式加熱装置に含まれる室外機の正面図である。
図3図3(a)は、室外機を正面から見たときのヒートポンプ部および水ユニットの内部構成を説明する部分破断図であり、図3(b)は、室外機を上方から見たときの水ユニットの内部構成を説明する部分破断図であり、図3(c)は、室外機を右側面から見たときの給湯用水配管接続部および暖房用水配管接続部の配置を説明する部分破断図である。
図4図4(a)および図4(b)は、給湯用熱交換器および暖房用熱交換器の斜視図および側面図である。
図5図1のヒートポンプ式加熱装置の制御部のブロック図である。
図6図1のヒートポンプ式加熱装置の運転停止動作についてのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0014】
ヒートポンプ式加熱装置(室外機)1は、図1および図2に示すように、ヒートポンプ部2と、ヒートポンプ部2の上方に配置された水ユニット部3とを有している。ヒートポンプ部2には、圧縮機10と、室外熱交換器(熱源側熱交換器)11と、電動弁12と、室外ファン13とが収容されている。水ユニット部3には、給湯用熱交換器(利用側熱交換器)16Aと、暖房用熱交換器(利用側熱交換器)16Bと、給水ポンプ17とが収容されている。
【0015】
室外機1の内部において、冷媒が循環する冷媒回路(ヒートポンプ)が構成されている。この冷媒回路は、主流路23と第1流路24と第2流路25と低圧流路26とを有する。主流路23には、圧縮機10、室外熱交換器11、および電動弁12が順に設けられている。室外熱交換器11の一端側に配置された圧縮機10の吐出側には、四路切換弁18が接続されている。
【0016】
第1流路24と第2流路25とは、圧縮機10の吐出側に配置された四路切換弁18において分岐し、室外熱交換器11の他端側に配置された合流部19において合流する。主流路23の合流部19と電動弁12との間には、冷媒回路と連通するサービスポート41が配設されている。サービスポート41は、例えばメンテナンス時に外部から冷媒回路に冷媒を注入したり、冷媒回路から外部に冷媒を排出するために使用される。
【0017】
第1流路24は加熱運転時、主流路23の圧縮機10の下流側に設けられた四路切換弁18と、電動弁12の上流側に設けられた合流部19とを接続する。また第1流路24には、給湯用熱交換器16Aと、給湯用熱交換器16Aと合流部19との間に配置された第1逆止弁44とが設けられている。第1逆止弁44は、給湯用熱交換器16Aから合流部19への冷媒の流れを許容するが、合流部19から給湯用熱交換器16A(第1流路24)への冷媒の流れを遮断する。
【0018】
第2流路25は、四路切換弁18と合流部19とを第1流路24と並列に接続する。また第2流路25には、暖房用熱交換器16Bと、レシーバ46と、第2逆止弁48とが設けられている。第2逆止弁48は、暖房用熱交換器16Bから合流部19への冷媒の流れを許容するが、合流部19から暖房用熱交換器16B(第2流路25)への冷媒の流れを遮断する。
【0019】
レシーバ46は冷媒を貯留する容器であり、第1流路24および第2流路25のうち、冷媒容量の小さい第2流路25の暖房用熱交換器16Bと第2逆止弁48との間に設けられている。
【0020】
第2逆止弁48は、暖房用熱交換器16Bと合流部19との間(暖房用熱交換器16Bの下流側かつ合流部19の上流側)に配置されている。
【0021】
低圧流路26は、四路切換弁18と、圧縮機10の吸入側とを接続している。圧縮機10の吸入側とは電動弁12と圧縮機10との間を指すが、低圧流路26は特に、圧縮機10と室外熱交換器11との間に接続されている。
【0022】
給水ポンプ17は、給湯タンク5から流出した給湯用温水を給湯用熱交換器16Aに供給し、給湯タンク5に供給される給湯用温水を循環させる。
【0023】
ヒートポンプ式加熱装置1は、圧縮機10の吐出温度を検出する吐出温度センサ61と、給湯用熱交換器(利用側熱交換器)16Aの入水温度を検出する給湯入水温度センサ62と、暖房用熱交換器(利用側熱交換器)16Bの入水温度を検出する暖房入水温度センサ63と、給湯用熱交換器(利用側熱交換器)16Aの凝縮温度を検出する給湯熱交温度センサ64と、暖房用熱交換器(利用側熱交換器)16Bの凝縮温度を検出する暖房熱交温度センサ65と、室外熱交換器11の温度を検出する室外熱交温度センサ66と、外気温度を検出する外気温度センサ67とを有している。
【0024】
上述した冷媒回路では、圧縮機10から吐出された冷媒が第1流路24および第2流路25のいずれか一方の流路に流れて他方の流路には流れないように、四路切換弁18により後述する第1状態と第2状態とに切り換えられる。
【0025】
第1状態では、圧縮機10から吐出された冷媒が第1流路24に流れて第2流路25に流れず、第2流路25が主流路23の低圧側に接続される。具体的には冷媒が流れる給湯用熱交換器16Aに関し、第1流路24の冷媒流入口には、四路切換弁18を介して圧縮機10の吐出側が接続され、第1流路24の冷媒流出口には、電動弁12が接続されている。冷媒が流れない第2流路25に関しては、一端部が四路切換弁18を介して低圧流路26に接続され、他方の端部が合流部19に接続されている。
【0026】
第1状態では図1中、実線で示すように、圧縮機10から吐出された冷媒が、四路切換弁18を介して第1流路24に流入する。そして、給湯用熱交換器16Aで水と熱交換をした後、合流部19を介して電動弁12に到達する。一方、第2流路25内の冷媒は四路切換弁18を介して低圧流路26に流入し、圧縮機10に吸入される。しかし第2流路25内の冷媒が圧縮機10に吸入された後は、第2逆止弁48があるため、第2逆止弁48より合流部側19にある冷媒が圧縮機10に吸入されることはない。
【0027】
第2状態では、圧縮機10から吐出された冷媒が第2流路25に流れて第1流路24に流れず、第1流路24が主流路23の低圧側に接続される。具体的には冷媒が流れる暖房用熱交換器16Bに関し、第2流路25の冷媒流入口には、四路切換弁18を介して圧縮機10の吐出側が接続され、第2流路25の冷媒流出口には、電動弁12が接続されている。冷媒が流れない第1流路24に関しては、一端部が四路切換弁18を介して低圧流路26に接続され、他方の端部が合流部19に接続されている。
【0028】
第2状態では図1中、点線で示すように、圧縮機10から吐出された冷媒が、四路切換弁18を介して第2流路25に流入する。そして、暖房用熱交換器16Bで水と熱交換をした後、合流部19を介して電動弁12に到達する。一方、第1流路24内の冷媒は四路切換弁18を介して低圧流路26に流入し、圧縮機10に吸入される。しかし第1流路24内の冷媒が圧縮機10に吸入された後は、第1逆止弁44があるため、第1逆止弁44より合流部側19にある冷媒が圧縮機10に吸入されることはない。
【0029】
水ユニット部3は、給湯用水配管接続部20と、暖房用水配管接続部21とを有している。給湯用水配管接続部20は、往き接続部20aと、戻り接続部20bとを有しており、暖房用水配管接続部21は、往き接続部21aと、戻り接続部21bとを有している。
【0030】
水ユニット部3の内部において、給湯用水配管接続部20の往き接続部20aは第1状態で、給湯用熱交換器16Aの水流出口に接続され、給湯用水配管接続部20の戻り接続部20bは、給湯用熱交換器16Aの水流入口に接続されている。したがって、給湯用熱交換器16Aと給湯タンク5と給湯ポンプ17が接続されることにより、給湯回路が構成される。
【0031】
給湯用熱交換器16Aでは、第1状態において圧縮機10の吐出側の四路切換弁18から流入した冷媒と、給湯用水配管接続部20の戻り接続部20bから流入した給湯用温水との間で熱交換されることによって、給湯用温水が加熱されて、その加熱された給湯用温水が、給湯用水配管接続部20の往き接続部20aに向かって流出する。
【0032】
水ユニット部3の内部において、暖房用水配管接続部21の往き接続部21aは第2状態で、暖房用熱交換器16Bの水流出口に接続され、暖房用水配管接続部21の戻り接続部21bは、暖房用熱交換器16Bの水流入口に接続されている。したがって、暖房用熱交換器16Bとガスボイラ6と暖房端末7とポンプ8が接続されることにより、暖房回路が構成される。
【0033】
暖房用熱交換器16Bでは、第2状態において圧縮機10の吐出側の四路切換弁18から流入した冷媒と、暖房用水配管接続部21の戻り接続部21bから流入した暖房用温水との間で熱交換されることによって、暖房用温水が加熱されて、その加熱された暖房用温水が、暖房用水配管接続部21の往き接続部21aに向かって流出する。本実施形態のヒートポンプ式加熱装置では、室外機1は、給湯用温水および暖房用温水のいずれか一方を加熱可能である。
【0034】
本実施形態のヒートポンプ式加熱装置1は、利用側装置4に接続されている。利用側装置4は、給湯タンク5と、ガスボイラ6と、床暖房パネル等の暖房端末7と、ポンプ8とを有している。ガスボイラ6は、加熱器6aを有しており、暖房端末7と給湯端末9に接続されている。したがって、ガスボイラ6は、給湯タンク5から供給された給湯用温水を給湯端末9に供給される前に加熱したり、室外機1から供給された暖房用温水を暖房端末7に供給される前に加熱できる。ポンプ8は、暖房端末7から流出した暖房用温水を暖房用熱交換器16Bに供給し、暖房端末7に供給される暖房用温水を循環させるものである。
【0035】
図3(a)は、室外機1を正面から見たときのヒートポンプ部2および水ユニット部3の内部構成を説明する部分破断図であり、図3(b)は、室外機1を上方から見たときの水ユニット部3の内部構成を説明する部分破断図であり、図3(c)は、室外機1を右側面から見たときの給湯用水配管接続部20および暖房用水配管接続部21の配置を説明する部分破断図である。図3(a)に示すように、四路切換弁18はヒートポンプ部2に配置されている。
【0036】
図4(a)および図4(b)は、給湯用熱交換器16Aおよび暖房用熱交換器16Bの斜視図および側面図である。室外機1の水ユニット部3の内部において、給湯用熱交換器16Aおよび暖房用熱交換器16Bは、図4(a)に示すように、上下方向に積層された状態で配置されている。
【0037】
暖房用熱交換器16Bは、上下方向に2段に積層されるように巻回される暖房用水配管32を有しており、給湯用熱交換器16Aは、上下方向に2段に積層されるように巻回される給湯用水配管31を有している。この給湯用水配管31および暖房用水配管32は、平面視において、それぞれの段において略渦巻き状に巻回されている。
【0038】
給湯用熱交換器16Aの水流入口には、給水ポンプ17(給湯用水配管接続部20の戻り接続部20b)から延在する給湯用戻り連絡配管31aが接続され、給湯用熱交換器16Aの水流出口には、給湯用水配管接続部20の往き接続部20aから延在する給湯用往き連絡配管31bが接続されている。また、暖房用熱交換器16Bの水流入口には、暖房用水配管接続部21の戻り接続部21bから延在する暖房用戻り連絡配管32aが接続され、暖房用熱交換器16Bの水流出口には、暖房用水配管接続部21の往き接続部21aから延在する暖房用往き連絡配管32bが接続されている。
【0039】
給湯用熱交換器16Aにおいて、給湯用水配管31の外周には、給湯用冷媒配管33が螺旋状に巻回され、暖房用熱交換器16Bにおいて、暖房用水配管32の外周には、暖房用冷媒配管34が螺旋状に巻回されている。給湯用熱交換器16Aの冷媒流入口には、圧縮機10の吐出側の分岐部18から延在する給湯用連絡配管33aが接続され、給湯用熱交換器16Aの冷媒流出口には、電動弁12から延在する給湯用連絡配管33bが接続されている。また、暖房用熱交換器16Bの冷媒流入口には、圧縮機10の吐出側の分岐部18から延在する暖房用連絡配管34aが接続され、暖房用熱交換器16Bの冷媒流出口には、電動弁12から延在する暖房用連絡配管34bが接続されている。
【0040】
本実施形態において、給湯用熱交換器16Aは、給湯用水配管31の外周に給湯用冷媒配管33が螺旋状に巻回された部分とし、暖房用熱交換器16Bは、暖房用水配管32の外周に暖房用冷媒配管34が螺旋状に巻回された部分とする。
【0041】
給湯用熱交換器16Aの給湯用水配管31は、上下方向に2段に積層されるように巻回されたものであって、給湯用戻り連絡配管31aから、下側に配置された段にある配管に給湯用温水が流入するとともに、上側に配置された段にある配管から、給湯用往き連絡配管31bに給湯用温水が流出するように構成されている。暖房用熱交換器16Bの暖房用水配管32は、上下方向に2段に積層されるように巻回されたものであって、暖房用戻り連絡配管32aから、下側に配置された段にある配管に暖房用温水が流入するとともに、上側に配置された段にある配管から、暖房用往き連絡配管32bに暖房用温水が流出するように構成されている。
【0042】
このように構成された給湯用熱交換器16Aの給湯用水配管31と、暖房用熱交換器16Bの暖房用水配管32とは、水ユニット3の内部において積層されている。詳しくは、給湯用熱交換器16Aは、2段に積層されるように巻回され、最も上側に配置された段にある配管(外側配管)から給湯用温水が流出するように構成されており、暖房用熱交換器16Bは、給湯用熱交換器16Aの上方に積層されている(給湯用水配管31において最も上側に配置された段にある配管(外側配管)に近接するように、給湯用熱交換器16Aに積層されている。)
【0043】
給湯用熱交換器16Aには、水連絡配管(給湯用戻り連絡配管31aおよび給湯用往き連絡配管31b)と、冷媒連絡配管(給湯用連絡配管33aおよび給湯用連絡配管33b)とが接続されており、暖房用熱交換器16Bには、水連絡配管(暖房用戻り連絡配管32aおよび暖房用往き連絡配管32b)と、冷媒連絡配管(暖房用連絡配管34aおよび暖房用連絡配管34b)とが接続されている。
【0044】
図5に示すように、ヒートポンプ式加熱装置1の制御部56は、圧縮機10と、電動弁12と、室外ファン13と、利用側装置4のコントローラ4aと、吐出温度センサ61と、給湯入水温度センサ62と、暖房入水温度センサ63と、給湯熱交温度センサ64と、暖房熱交温度センサ65と、室外熱交温度センサ66と、外気温度センサ67とに接続されている。
【0045】
圧縮機10は、給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの負荷に基づいた運転周波数に制御され、停止される場合を除いて、最低運転周波数以上の運転周波数に制御される。電動弁12は、給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの負荷に基づいた運転周波数に圧縮機10が制御された状態で、電動弁12の最低開度以上であり且つ全開開度以下の開度に制御される。室外ファン13は、通常制御時は、外気温度および圧縮機周波数に基づいた回転数に制御され、回転数減少制御時は、外気温度および圧縮機周波数にかかわらず、停止状態となる。
【0046】
コントローラ4aは、利用側装置4のコントローラであり、暖房端末7や給湯端末9についての運転開始指示や運転停止指示の操作が行われる。コントローラ4aに対し、運転開始指示や運転停止指示の操作が行われた場合、その指示が制御部56に送られる。
【0047】
以下、本実施形態のヒートポンプ式加熱装置1の運転開始動作について詳述する。図6は、ヒートポンプ式加熱装置の運転開始動作についてのフローチャートである。
【0048】
ステップS1では、制御部56において、コントローラ4aに対し、暖房端末7や給湯端末9についての運転開始指示の操作が行われたかに基づいて運転開始指示があったか否かを判断する。ステップS1において、運転開始指示があったと判断された場合、ステップS2に進み、給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの入水温度と外気温度との差が所定温度差以上か否かを判断する。
【0049】
ここで、ステップS2において、第1状態では、圧縮機10から吐出された冷媒が、四路切換弁18を介して第1流路24に流入することから、給湯用熱交換器16Aの入水温度と外気温度との差が所定温度差以上か否かを判断し、第2状態では、圧縮機10から吐出された冷媒が、四路切換弁18を介して第2流路25に流入することから、給湯用熱交換器16Aの入水温度と外気温度との差が所定温度差以上か否かを判断する。
【0050】
ステップS2において、給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの入水温度と外気温度との差が所定温度差以上であると判断された場合、ステップS3に進み、圧縮機10の吐出温度が所定温度以下か否かを判断する。ステップS3において、圧縮機10の吐出温度が所定温度以下であると判断された場合、ステップS4に進み、ヒートポンプ式加熱装置1が圧縮機10を起動し、加熱運転を開始する。このとき、圧縮機10の起動時の回転数減少制御が行われる。
【0051】
ステップS4の回転数減少制御では、圧縮機10の運転周波数は、給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの負荷に基づいた運転周波数に向かって段階的に増加し、電動弁12の開度は、給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの負荷に基づいた開度に制御される
【0052】
このとき、室外ファン13の回転数は、外気温度および圧縮機周波数にかかわらず、停止状態に制御される。
【0053】
ステップS2において、給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの入水温度と外気温度との差が所定温度差以上であると判断されない場合、および、ステップS3において、圧縮機10の吐出温度が所定温度以下であると判断されない場合、ステップS7に進み、圧縮機10の起動時の通常制御を行う。
【0054】
ここで、ステップS7の通常制御では、圧縮機10の運転周波数は、給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの負荷に基づいた運転周波数に向かって段階的に増加し、室外ファン13の回転数は、外気温度および圧縮機周波数に基づいた回転数に制御される。
【0055】
ステップS4において、回転数減少制御が開始された後、ステップS5では、圧縮機10の吐出温度が給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの凝縮温度より高いか否か判断する。ここで、ステップS4において、第1状態では、圧縮機10から吐出された冷媒が、四路切換弁18を介して第1流路24に流入することから、圧縮機10の吐出温度が給湯用熱交換器16Aの凝縮温度より高いか否かを判断し、第2状態では、圧縮機10から吐出された冷媒が、四路切換弁18を介して第2流路25に流入することから、圧縮機10の吐出温度が暖房用熱交換器16Bの凝縮温度より高いか否かを判断する。
【0056】
ステップS5において、圧縮機10の吐出温度が給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの凝縮温度より高いと判断された場合、ステップS6に進み、外気温度が室外熱交温度より高いか否か判断する。ステップS6において、外気温度が室外熱交温度より高いと判断された場合、ステップS7に進み、圧縮機10の起動時の通常制御を行う。
【0057】
ステップS5において、圧縮機10の吐出温度が給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの凝縮温度より高いと判断された場合、ステップS4の回転数減少制御を継続する。
【0058】
ステップS6において、外気温度が室外熱交温度より高いと判断された場合、ステップS4の回転数減少制御を継続する。
【0059】
[本実施形態のヒートポンプ式加熱装置の特徴]
本実施形態のヒートポンプ式加熱装置には以下の特徴がある。
【0060】
本発明のヒートポンプ式加熱装置1では、給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの入水温度と外気温度との差が所定温度差以上である場合に、圧縮機10の起動時に室外ファン13が停止状態となることから、圧縮機のドーム内において冷媒が凝縮するのが抑制される。したがって、圧縮機10の起動時において、圧縮機内の油面が低下するのを防止できる。
【0061】
本発明のヒートポンプ式加熱装置1では、回転数減少制御が、圧縮機10の吐出温度が所定温度以下である場合にだけ行われることから、圧縮機10の起動時に、圧縮機10のドーム内において冷媒が凝縮しない場合に、室外ファン13が停止状態に制御されるのを防止できる。
【0062】
本発明のヒートポンプ式加熱装置1では、圧縮機10の吐出温度が給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの凝縮温度より高くなり、圧縮機10のドーム内において冷媒が凝縮しなくなったときに、回転数減少制御を終了することができる。
【0063】
本発明のヒートポンプ式加熱装置1では、室外熱交換器11の温度が外気温度より低くなり、圧縮機10のドーム内において冷媒が凝縮しなくなったときに、回転数減少制御を終了することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0065】
上述の実施形態では、回転数減少制御が、圧縮機10の吐出温度が所定温度以下である場合にだけ行われる場合を説明したが、回転数減少制御が、圧縮機10の吐出温度にかかわらず行われてよい。本発明において、回転数減少制御では、室外ファンを停止状態とする場合に限られず、通常制御(外気温度および圧縮機周波数に基づいた回転数)より小さい回転数であってよい。
【0066】
上述の実施形態では、圧縮機10の吐出温度が給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bの凝縮温度より高くなり、且つ、室外熱交換器11の温度が外気温度より低くなったときに、回転数減少制御を終了する場合を説明したが、回転数減少制御の終了方法は変更してよい。
【0067】
上述の実施形態では、利用側熱交換器が給湯端末または暖房端末に供給される温水を加熱する給湯用熱交換器16Aまたは暖房用熱交換器16Bである場合を説明したが、利用側熱交換器が、室内に配置された室内熱交換器であり、室内熱交換器において室内空気を冷媒により加熱するものであったよい。この場合、本発明では、圧縮機起動時の室外ファンの回転数は、室内熱交換器(利用側熱交換器)に供給される室内空気の温度(流体温度)と外気温度との差が所定温度差以上の場合の方が、室内熱交換器(室内熱交換器)に供給される室内空気の温度(流体温度)と外気温度との差が所定温度差より小さい場合より小さい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明を利用すれば、圧縮機内の油面が低下するのを防止できる。
【符号の説明】
【0069】
1 ヒートポンプ式加熱装置
10 圧縮機
11 室外熱交換器(熱源側熱交換器)
12 電動弁
13 室外ファン
16A 給湯用熱交換器(利用側熱交換器)
16B 暖房用熱交換器(利用側熱交換器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6