(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャビティが、前記導電板が格納される第1キャビティと、前記第1キャビティと繋がり前記半導体チップが格納され前記第1キャビティより開口部の小さな第2キャビティとから構成される請求項1記載の半導体装置。
【背景技術】
【0002】
図19は、パワー半導体装置の要部断面図である。ここではパワー半導体装置1000として、多数(例えば、20個など)の半導体チップが搭載されたパワー半導体装置の例を挙げた。但し、
図19では、半導体チップは1個で代表させている。
【0003】
このパワー半導体装置1000は、絶縁基板64、半導体チップ66、ベース板70およびケース68を備えている。
絶縁基板64は、絶縁板61、回路板62および金属板63が積層されて構成されており、回路板62にハンダなどの接合材65を介して半導体チップ66が固定されている。また、半導体チップ66は、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)チップやダイオードチップなどのパワー半導体チップである。
【0004】
この半導体チップ66にはボンディングワイヤ67を用いて、ケース68の外部端子69が配線されている。絶縁基板64の裏面は接合材65を用いてベース板70に固定されている。ケース68の内部はゲルなどの封止樹脂71が充填され、ケース68の開口部は上蓋72で覆われている。
【0005】
また、近年、キャビティを有するセラミックケースにIC(Integrated Circuit)チップを格納して、集積回路装置の小型化が図られている。この集積回路装置は、端子が埋設されキャビティを有するセラミックケースと、このキャビティに格納されたICチップで構成され、キャビティパッケージと呼ばれている。ICチップの通電電流は小さいため、通常、キャビティパッケージ内に埋設される端子の厚さは10μm〜20μm程度である。
【0006】
また、特許文献1には、段差を有する回路基板の段差部にパワー半導体チップが配置され、段差部とは反対側の面に回路素子が設けられることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パワー半導体装置1000では、つぎの課題があった。
(1)外部端子69は半導体チップ66の上部に配置するのが困難であり、ケース68など外周部に配置せざるを得ず、筐体の小型化が困難である。
(2)封止樹脂71は通常ゲルであることから、外形維持のため、ケース68や上蓋72が別途必要になる。
(3)半導体チップ66の搭載数が20個程度であるとすると、各半導体チップ66にそれぞれ10本程度のボンディングワイヤ67を配線するには、ボンディングワイヤ67の数は相当な本数になり、配線工程に時間がかかる。
【0009】
また、キャビティパッケージにICチップではなく、パワー半導体チップを格納した例は見当たらない。これは、パワー半導体チップでは電流容量の仕様上、端子の厚さを100μm以上にする必要があるが、このような厚い端子を埋設したキャビティパッケージを製造することが困難であるためと推測される。
【0010】
また、特許文献1には、回路基板のみでパワー半導体装置の筐体とすることは記載されていない。さらに特許文献1には、パワー半導体チップの裏面電極に対応した端子を筐体上面に引き出すことなどについても記載されていない。
【0011】
この発明は、このような課題を解決して、組立工程が少なく、製造コストが安く、信頼性の高い、小型の半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る半導体装置の一態様は、おもて面電極および裏面電極を有する半導体チップと、主面に
前記裏面電極が接続される導電板と
、前記主面と反対側の面に固定される絶縁板と、埋設された第1端子および第2端子と、前記半導体チップ、前記導電板および前記絶縁板が格納されるキャビティと、前記キャビティの開口部と反対側に位置する電極面を有するセラミックケースと、を備え、前記第1端子の一端が
前記おもて面電極と接続されるとともに、他端が前記電極面から露出し、前記第2端子の一端
が前記主面と接続されるとともに、他端が前記電極面から露出し、
前記キャビティ内における前記半導体チップ、前記導電板および前記絶縁板と、前記セラミックケースとの隙間と、前記開口部の開口端に形成されて、前記隙間に通じる注入口とが封止材で埋められて、前記セラミックケースおよび前記絶縁板で筐体を構成する。
【0013】
また、本発明に係る半導体装置の別の一態様は、おもて面電極および裏面電極を有する半導体チップと
、導電性の配線板
がおもて面から露出する、前記配線板の露出面と、前記おもて面であって前記配線板を取り囲む主面とが同一平面となるように埋設され、
前記露出面に
前記裏面電極が接続される配線基板と、
前記主面上に配置され、埋設された第1端子および第2端子と、前記半導体チップが格納されるキャビティと、前記キャビティの開口部と反対側に位置する電極面を有するセラミックケースと、を備え、前記第1端子の一端が
前記おもて面電極と接続されるとともに、他端が前記電極面から露出し、前記第2端子の一端が
前記露出面と接続されるとともに、他端が前記電極面から露出し、前記セラミックケースおよび前記配線基板で筐体を構成する。
【0014】
また、本発明に係る半導体装置の別の一態様は、おもて面電極および裏面電極を有する半導体チップと
、導電性の配線板
がおもて面から露出する、前記配線板の露出面と、前記おもて面であって前記配線板を取り囲む主面とが同一平面になるように埋設され、
前記露出面に
前記裏面電極が接続される配線基板と、
前記主面上に配置され、埋設された第1端子および第2端子と、前記半導体チップが格納されるキャビティと、前記キャビティの開口部と反対側に位置する電極面を有するセラミックケースと、を備え、前記第1端子の一端が
前記おもて面電極と接続されるとともに、他端が前記電極面から露出し、前記第2端子の一端が
前記露出面と接続されるとともに、他端が前記電極面と直交する面から突出し、前記セラミックケースおよび前記配線基板で筐体を構成する。
【発明の効果】
【0015】
この発明により、組立工程が少なく、製造コストが安く、信頼性の高い、小型の半導体装置を提供する。
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は本発明の例として好ましい実施の形態を表す添付の図面と関連した以下の説明により明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態を以下の実施例で説明する。
なお、以下に用いられる「電気的かつ機械的に接続されている」という用語は、対象物同士が直接接合により接続されている場合に限らず、ハンダや金属焼結材などの導電性の接合材を介して対象物同士が接続されている場合も含むものとする。
<第1実施例>
図1は、第1実施例のパワー半導体装置の構成図である。
図1(a)は平面図、
図1(b)は
図1(a)のX−X線で切断した断面図である。また、
図1(a)は、
図1(b)の矢印A方向から見た透視平面図である。
【0018】
このパワー半導体装置100は、半導体チップ2と、導電板1と、絶縁板4と、セラミックケース11とを備え、セラミックケース11および絶縁板4で筐体を構成している。さらに、封止材15も備えている。
【0019】
半導体チップ2は、例えばIGBTやパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)といった縦型のスイッチング素子であり、おもて面電極2aおよび裏面電極2bを有している。そして半導体チップ2の裏面電極2bが導電板1の主面1aに、ハンダなどの導電性の接合材3を用いて電気的かつ機械的に接続されている。また、導電板1の主面1aと反対側の面1bに、絶縁板4が固定されている。
【0020】
セラミックケース11は、セラミック20を備え、第2端子6および第1端子7,8が埋設されている。またセラミックケース11は、凹形状である第1キャビティ9および第2キャビティ10を有している。第1キャビティ9の開口部9aに比べて、第2キャビティ10は開口部10aが小さい。さらにセラミックケース11は、第1キャビティ9および第2キャビティ10の開口部9a,10aと反対側に位置する電極面11aを有する。
【0021】
そして、第1キャビティ9には導電板1と絶縁板4が格納され、第2キャビティ10には半導体チップ2が格納されている。そして、これらの間の隙間14には、封止材15が配置されている。
【0022】
隙間14の幅は、格納される対象を良好に位置合わせでき、また、封止材15が侵入できる大きさにする。隙間14の幅が50μm未満になると、封止材15が侵入し難くなるので、隙間14の幅は50μm未満になることは避けた方がよい。隙間14の幅としては0.1mm〜0.2mm程度が好適である。
【0023】
そして、第2キャビティ10に格納された半導体チップ2のおもて面電極2aと、セラミックケース11に埋設された第1端子7,8の一端(端面7a,8a)が、導電性の接合材12を用いて電気的かつ機械的に接続される。例えば半導体チップ2がIGBTである場合、第1端子7はエミッタ電極に接続され、第1端子8はゲート電極に接続される。また、第1端子7,8の他端(端面7b,8b)は、セラミックケース11の電極面11aから露出している。
【0024】
また、第1キャビティ9に格納された導電板1の主面1aと、セラミックケース11に埋設された第2端子6の一端(端面6a)が、導電性の接合材12を用いて電気的かつ機械的に接続される。すなわち、第2端子6と、半導体チップ2の裏面電極(IGBTの場合コレクタ電極)が電気的に接続される。また、第2端子6の他端(端面6b)は、セラミックケース11の電極面11aから露出している。
【0025】
セラミックケース11に埋設される第1端子7,8および第2端子6は、垂直方向に配置される場合と水平方向に配置される場合がある。水平方向にも配置される第1端子8は
図1では1層の場合を示したが、多層に配置されることもある。第1端子8の水平に配置される部分は、数100μm程度の厚さで、幅が数mm程度である。
【0026】
第1端子7,8と半導体チップ2の間、および第2端子6と導電板1の間を接合材12で固定した後、封止材15がセラミックケース11に設けられた注入口17から、隙間14に注入される。注入された封止材15は、毛細管現象により隙間14の全域に侵入して、半導体チップ2や導電板1の周囲を被覆する。
【0027】
封止材15は、半導体チップ2や導電板1の封止と電気的絶縁および表面保護の機能を有する。また、封止材15は、接合材3,12への湿気の侵入を防止し、接合材3,12の劣化を防ぐ機能を有する。さらに、セラミックケース11と、半導体チップ2、導電板1との間を固定する機能を有する。そのため、封止材15は、電気的絶縁性や接着性に優れ、硬化前は粘性が高く、毛細管現象で隙間14に入り込みやすい材質を選定する。封止材15としては、例えば、エポキシ樹脂が好適である。
【0028】
また、半導体チップ2や導電板1を封止材15で確実に被覆できるように、第1キャビティ9や第2キャビティ10の内壁に0.1mm〜0.2mm程度の図示しない突起を設け、隙間14を確保するとよい。
【0029】
また、導電板1は、半導体チップ2の裏面電極2bから第2端子6へ電流を流す機能と、半導体チップ2で発生した熱を絶縁板4を介して外部(図示しない放熱ベースなど)へ効果的に逃がす機能と、半導体チップ2を支持する機能を有する。導電板1の材質は、銅やアルミニウムなどである。また、導電板1が銅板の場合には、ニッケルめっきを施して酸化を防止するとよい。
【0030】
絶縁板4は電気的絶縁性と熱伝導性に優れた材質がよく、例えば、0.2mm程度の厚さのアルミナや窒化珪素、窒化アルミなどのセラミック板が適している。また、ポリイミドなどの絶縁樹脂を用いてもよい。
【0031】
また、セラミックケース11の底面11bと、絶縁板4の裏面4bを略同一平面にすることで、絶縁板4の裏面4bに配置されるベース板との密着性を良好に確保できる。
本実施例のパワー半導体装置100は、半導体チップ2が格納されるセラミックケース11に第1端子7,8および第2端子6を配置することで、外部との接続端子を半導体チップ2直上に配置することができる。また、セラミックケース11の第1キャビティ9および第2キャビティ10に半導体チップ2と導電板1を格納するため、パワー半導体装置100の占有面積を小さくすることができる。また、セラミックケース11に第1端子7,8および第2端子6を埋設させ、この第1端子7,8及び第2端子6を直接半導体チップ2や導電板1に電気的かつ機械的に接続している。そのため、パワー半導体装置100の厚さを数mm程度に薄くすることができる。これらにより、パワー半導体装置100の小型化を図ることができる。
【0032】
パワー半導体装置1000(
図19)では、外部との接続端子をケース68の外周に配置している。一方、パワー半導体装置100では、セラミックケース11の電極面11aの任意の箇所に、外部との接続に用いる第1端子7,8および第2端子6の端部(端面7b,8b,6b)を設けることができる。これにより、パワー半導体装置100が小型化され、配線長を大幅に短縮することができる。またさらに、ボンディングワイヤ67(
図19)に比べて、配線の断面積も大きくすることができる。その結果、配線のインダクタンスが低減され、また配線で発生するジュール熱を大幅に低減することができる。
【0033】
つぎに、セラミックケース11の製造方法について、
図2を用いて説明する。
図2は、第1実施例のキャビティおよび端子を有するセラミックケースの製造方法を示す図である。
【0034】
セラミックケース11は、例えば、低温同時焼成セラミック(Low Temperature Cofired Ceramic)シート(以下、単にシートと称す)を積層し、所定の開口部を導電ペーストで充填し、焼結することで得られる。なお、低温同時焼成セラミックとは、ガラスとアルミナを同時に焼結して、焼結温度を1000℃以下の低温にしたセラミックのことである。
【0035】
まず、複数枚(例えば4枚)のシート21〜24に、開口面積の異なる第1〜第5開口部25〜29を形成する(
図2(a))。ここで、シート21とシート22に形成される第1開口部25は第1キャビティ9になり、シート23に形成される第2開口部26は第2キャビティ10になる。また、第3〜第5開口部27〜29は導電ペースト30が充填され、第1端子7,8および第2端子6になる。開口部25〜29は、例えば、型による打ち抜きなどで形成することができる。
【0036】
つぎに、第3〜第5開口部27〜29に銅ペーストや銀ペーストなどの導電ペースト30を充填する(
図2(b))。これは印刷工程などを用いてもよい。
つぎに、シート21〜24を積層する(
図2(c))。
【0037】
つぎに、積層されたシート21〜24を焼結する(
図2(d))。これにより、シート同士が固着すると同時に、導電ペースト30が焼結されて第1端子7,8および第2端子6が形成される。こうして第1端子7,8および第2端子6が埋設され、第1,第2キャビティ9,10を有するセラミックケース11が完成する。
【0038】
このセラミックケース11の大きさや厚さは任意に決定できる。また、第1端子7,8および第2端子6は、シートの厚さと積層するシートの枚数を変更することにより、様々な形状を形成可能である。セラミックケース11内に水平方向に走る第1端子8の水平方向の厚さは、電流容量の点から、例えば、0.2mm〜1mm程度にするとよい。
【0039】
つぎに、第1実施例のパワー半導体装置100の変形例について説明する。
(第1変形例)
図3は、第1変形例であるパワー半導体装置の断面図である。
【0040】
パワー半導体装置101のパワー半導体装置100との違いは、第1キャビティ9の深さが浅く、絶縁板4の裏面4bがセラミックケース11からわずかに突出している点である。わずかに(例えば、0.1mm程度)突出させることで、絶縁板4の裏面4bに配置されるベース板との密着性が高まり、接触熱抵抗を小さくすることができる。このため、半導体チップ2からの放熱特性を改善することができる。
(第2変形例)
図4は、第2変形例であるパワー半導体装置の断面図である。
【0041】
パワー半導体装置102のパワー半導体装置100との違いは、第2キャビティ10を形成しないで、第1キャビティ9を深くして1段のキャビティにした点である。キャビティを1段にすることにより、キャビティ形成用のシート枚数が少なくて済むため、製造コストを低減することができる。
【0042】
1段の深い第1キャビティ9の内部に、半導体チップ2、導電板1および絶縁板4が格納されている。そのため、導電板1の主面1aと第2端子6の端面6aとの間に、半導体チップ2の厚み分に相当する大きな隙間Pができる。そこで、厚くした接合材12aを配置するか、もしくは導電ブロックなど別途配置すればよい。
(第3変形例)
図5は、第3変形例であるパワー半導体装置の断面図である。
【0043】
パワー半導体装置103のパワー半導体装置100との違いは、第1キャビティ9内の絶縁板4に、さらに銅などの金属板5を追加した点である。すなわち、導電板1、絶縁板4および金属板5を、DCB(Direct Copper Bonding)基板18に置き換えることができる。金属板5を追加することにより、金属板5の底面に配置されるベース板との接合にハンダを用いることができるため、熱抵抗をさらに低減することができる。
<第2実施例>
図6〜
図9は、第2実施例のパワー半導体装置の製造工程を示す図である。
【0044】
まず、導電板1の主面1aと、半導体チップ2の裏面電極2bとを導電性の接合材3で接合する。また、導電板1の主面1aと反対側の面1bに絶縁板4を接合する(
図6(a))。また、
図2で示した製造方法で、セラミックケース11を準備する(
図6(b))。
【0045】
つぎに、支持台40上にセラミックケース11を第1キャビティ9の開口部9aを上にして載置する。そして、第1,第2キャビティ9,10内に露出した第1端子7,8の端面7a,8aおよび第2端子6の端面6aの表面に、ハンダ板などの接合材12を載置する(
図7)。
【0046】
つぎに、
図6(a)の半導体チップ2、導電板1、絶縁板4からなるユニットを裏返してセラミックケース11の第1,第2キャビティ9,10に嵌合する(
図8)。この際、前述の隙間14が0.1mm〜0.2mm程度になるようにする。また、この際、第2端子6の端面6aと、導電板1の主面1aを、接合材12を介して当接させる。さらに、第1端子7,8の端面7a,8aと、半導体チップ2のおもて面電極(図示を省略)を、接合材12を介してそれぞれ当接させる。続いて、上記構成部材の全体をリフロー炉13に入れて、脱泡雰囲気の中でリフロー処理し、各当接箇所を接合材12で接合する。
【0047】
つぎに、上記ユニットとセラミックケース11の間の隙間14に、ディスペンサ16を用いて、封止材15を注入口17から流し込む(
図9)。最後に、隙間14を埋めた封止材15を熱処理などにより硬化させて、
図1に示すパワー半導体装置100が完成する。
【0048】
図10は、第2実施例のパワー半導体装置の封止材を注入する注入口を示す図である。この図は、セラミックケース11の底面11bからみた平面図である。
パワー半導体装置1000(
図19)では、ジュール熱の発生が大きくなるため、半導体チップ66のおもて面電極に複数本のボンディングワイヤ67を配置していた。一方、本実施例のパワー半導体装置100では、第1端子7,8および第2端子6の断面積を大きくできるため、半導体チップ2のおもて面電極2aに1つの端子を設ければよく、組み立てを単純化することができる。このため、組立時間の短縮、歩留まりの改善、品質管理項目の削減などを図ることができ、パワー半導体装置100の低コスト化を実現できる。
<第3実施例>
図11は、第3実施例のパワー半導体装置の断面図である。
【0049】
パワー半導体装置200のパワー半導体装置100との違いは、1つの導電板に2つの半導体チップ2が固定されている点である。
2つの半導体チップ2は、例えば、IGBTチップと還流ダイオード(FWD)チップである。IGBTチップのコレクタ電極とFWDチップのカソード電極は導電板1に電気的かつ機械的に接続されている。また、IGBTチップのエミッタ電極とFWD
チップのアノード電極は、セラミックケース11に埋設された2本の第1端子7の一端にそれぞれ電気的かつ機械的に接続されている。そして、2本の第1端子7の他端を電気的に接続することにより、IGBTとFWDの逆並列回路を構成することができる。
【0050】
パワー半導体装置300は、2組の第1,第2キャビティ9,10を有するセラミックケース11と、それぞれの第1,第2キャビティ9,10に格納される上記のユニットを備える。ここでは第1,第2キャビティ9,10が2組の場合を示したが、これに限ることはない。また、
図12では、一方の導電板1には1つの半導体チップ2、他方の導電板1には2つの半導体チップ2が固着した場合を示している。
【0051】
本実施例のように一つのセラミックケース11に複数組の第1,第2キャビティ9,10を設け、複数組のユニットを搭載することにより、複雑な回路構成のパワー半導体装置300を、コンパクトかつ安価に提供することができる。
<第5実施例>
図13は、第5実施例のパワー半導体装置の断面図である。
【0052】
パワー半導体装置400は、2つのパワー半導体装置100のセラミックケース11をアタッチメント19で連結することで、2つのパワー半導体装置100が一体化されている。アタッチメント19の本体は絶縁体であるが、第1端子7,8および第2端子6と電気的に接続する導体19aが埋設されている。ここでは2つのパワー半導体装置100を一体化した例を示したが、一体化するパワー半導体装置100の数は任意である。これにより、系列数を増やすことなく、様々な定格のパワー半導体装置400が可能となる。
<第6実施例>
図14は、第6実施例のパワー半導体装置の断面図である。
図1に示したパワー半導体装置100と同一の部材については同一の符号を付しており、以下では重複する記載を省略する。
【0053】
パワー半導体装置500は、半導体チップ2と、配線基板32と、セラミックケース31とを備え、セラミックケース31および配線基板32で筐体を構成している。さらに、封止材15も備えている。
【0054】
配線基板32は、埋設された導電性の配線板33を有している。そして、配線板33の露出面33aに、半導体チップ2の裏面電極2bが電気的かつ機械的に接続されている。
セラミックケース31は、セラミック20を備え、第1端子7,8および第2端子6が埋設されている。また、セラミックケース31は、凹形状である第2キャビティ10を有している。さらにセラミックケース31は、第2キャビティ10の開口部と反対側に位置する電極面31aを有する。
【0055】
そして、第2キャビティ10には半導体チップ2が格納されている。そして、これらの間の隙間14には、封止材15が配置されている。
そして、第2キャビティ10に格納された半導体チップ2のおもて面電極2aと、セラミックケース31に埋設された第1端子7,8の一端(端面7a,8a)が、電気的かつ機械的に接続されている。また、第1端子7,8の他端は、セラミックケース31の電極面31aから露出している。
【0056】
また、配線板33の露出面33aと、セラミックケース31に埋設された第2端子6の一端(端面6a)が、電気的かつ機械的に接続される。すなわち、第2端子6と、半導体チップ2の裏面電極が電気的に接続される。また、第2端子6の他端は、セラミックケース31の電極面31aから露出している。
【0057】
封止材15はセラミックケース31に配置された注入口17から注入され、全域の隙間14を埋めている。そして、セラミックケース31と配線基板32の固定にも、封止材15が用いられている。なお、セラミックケース31と配線基板32の固定には、封止材15とは異なる接着剤を用いても構わない。また、封止材15の注入口17は、配線基板32に設けてもよい。
【0058】
本実施形態のように、半導体チップ2の裏面電極2b側の配線に配線基板32を用いることにより、さらに高い電圧にも対応することができる。
つぎに、パワー半導体装置500の変形例について説明する。
(第4変形例)
図15は、第4変形例であるパワー半導体装置の断面図である。
【0059】
パワー半導体装置501のパワー半導体装置500との違いは、セラミックケース31と配線基板32にダミー導電膜34を配置し、このダミー導電膜34の間をハンダなどの接合材12を介して接合した点である。
【0060】
本変形例においては、ダミー導電膜34の埋設工程は、第1端子7,8および第2端子6や配線板33の埋設工程と同時に行うことができ、また上記リフロー工程で接合材12を一括して形成できるため、追加の工程は必要無い。しかも、セラミックケース31と配線基板32の接合強度を高めることができるので、信頼性を向上させることができる。
(第5変形例)
図16は、第5変形例であるパワー半導体装置の断面図である。
【0061】
パワー半導体装置502のパワー半導体装置500との違いは、セラミックケース31に凹部35を設け、配線基板32に凹部35に対応する凸部36を設け、それらを互いに嵌合しながらセラミックケース31と配線基板32を固定した点である。例えば、半導体チップ2を取り囲むように凹部35、凸部36を環状に設けることで、セラミックケース31と配線基板32が接触する界面37の長さを長くできる。その結果、界面37からの湿気や異物の侵入を阻止する機能を強化することができる。また界面37での沿面放電を弱める効果もある。
<第7実施例>
図17は、第7実施例のパワー半導体装置の構成図である。
図17(a)は平面図、
図17(b)は
図17(a)のX−X線で切断した断面図である。
図17(a)は
図17(b)を矢印Aから見た平面図である。
【0062】
パワー半導体装置600は、キャビティ10を有するセラミックケース31と、キャビティ38を有する配線基板32と、キャビティ38および第2キャビティ10に格納される半導体チップ2とを備える。配線基板32に埋設された配線板33は、キャビティ38の底面から露出面33aが露出している。
<第8実施例>
図18は、第8実施例のパワー半導体装置の断面図である。
【0063】
パワー半導体装置700のパワー半導体装置500との違いは、セラミックケース31に埋設され、セラミックケース31の電極面31aと直交する側面31cから突出させた第2端子39を配置した点である。そして第2端子39は、配線基板32の配線板33と、ハンダなどの接合材12を用いて電気的かつ機械的に接続されている。
【0064】
第2端子39をセラミックケース31の側面31cから突出させることで、パワー半導体装置700が用いられる電力変換装置が組立易くなる場合がある。この第2端子39の厚みWは電流容量の観点から1mm程度以上の厚さにするとよい。
【0065】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。